女性だけに売れた「本」、盗まれた駅名、お尻のQRコード:広告プランナーが出す「うんちくエウレーカクイズ」広告編

YouTubeで開く ↗
概要

ゆる言語学ラジオの「うんちくエウレーカクイズ」は、出題者に「はい/いいえ」で答えられる質問を重ねて答えを探る水平思考型のクイズである。今回は前回に続く広告編で、若手の広告プランナーである下田君が出題した。回答するのは堀元見と水野太貴の二人である。出題されたのは、税制を逆手に取った本、駅名を使った屋外広告、初日の出を使った懸賞、ビーチバレーのユニフォーム、偽名のクレジットカードの5問だった。どれも「なぜその仕掛けが効いたのか」を解きほぐすと広告の設計思想が見えてくる事例で、回答者たちはたびたび脱線しながら正解にたどり着いていく。

13分で読めます

第1問:ドイツで女性に売れた「本」の正体

最初の問題は、ドイツで女性に大量に売れた本があるというものだった。初版はわずか1日で、第2版も1週間で売り切れ、これまでに1万部が発売されたという。翻訳はされていないが、日本人が読んでも趣旨はピンとくる類の本だと出題者は説明した。

回答者の一人はまず、「男がセックス以外について考えていること」というタイトルで中身が白紙の本を例に挙げ、そういう一発ネタの本かと尋ねた。出題者は白紙の本は近いと認めつつ、「本として機能しているかというと少し難しい」と付け加えた。ここで堀元は、法律上の優遇を利用して「本の体裁で本ではないものを売る」手法だと見当をつけた。日本でも、宝島社がコンビニに置いてもらうために雑誌より大きな付録をつけて本を売ったことを引き合いに出した。質問を重ねるうちに、ドイツでは税率の面で本が優遇されていること、別の用途のものを本として売っていること、「おまけ」が関係することがわかった。最後に「女性」という条件から生理用品に思い至り、「生理用品を普通に売ると高い税率になるところを、本のおまけとして売った」という答えで正解となった。答えの核心近くまで詰めた側と、最後に答えを言い切った側とで、手柄をめぐる軽い言い合いにもなった。

下田君の解説によれば、本の名前は「タンポンブック」である。ドイツの消費税率は基本的に19%で、食品などの生活必需品は7%に引き下げられている。しかし生理用品はこの生活必需品に含まれていない。ドイツの衛生用品ブランド「ザ・フィメール・カンパニー」は、この問題を広く知らせて多くの人に考えてもらうキャンペーンとしてこの本を作った。外見はハードカバーだが、中をくり抜いてタンポン15本を収め、女性の体についてのイラスト入りの解説も添えた。生理用品として売れば19%かかるところを、本として売ることで7%の課税で済ませたわけである。

堀元はこれを受けて、いい広告手法には「現代アート感」があると評した。制度をうまくハックすることで人に考えさせる、という点を指している。

消費税をめぐる脱線:新聞、Amazon、ユニクロ

この問題から、税金にまつわる話題がいくつか続いた。水野は、日本では新聞が軽減税率の対象に含まれていて、新聞がそれを批判する報道をしないことを問題視する声があると紹介した。そのうえで堀元に、新聞に付録をつけて何か売ってみてはどうかと冗談を振った。ただし日本の標準税率と軽減税率の差は2%しかなく、ドイツの12%の差に比べると小さすぎてやる意味が薄い、という話になった。

一人はAmazonの例も持ち出した。消費税が州内での販売にしかかからないため、Amazonは実際の拠点であるシアトルではなく、顧客があまりいなさそうな別の州で登記した、という話が有名だと語っている。堀元は最近「脱・税理士スガワラくん」というYouTubeチャンネルをとても気に入っていると話し、税理士本人が「20年ぐらい前に担当のお客さんが粉飾決算していた」と普通に語っていて驚いたという回想も披露した。

下田君は税金に関連する広告事例として、ユニクロの話を付け加えた。税抜き価格での広告表示ができなくなり、税込み表示に変えなければならなくなった際、ユニクロは税抜き価格をそのまま税込み価格として据え置いた。つまり実質的な値下げである。そのとき出した新聞広告のコピーは「お客様を支えていくと強く誓った1年でした」で、締めには「3月12日からユニクロは全品お得な価格へ。1990円+サンクス」と書かれていたという。「プラスタックスをプラスサンクスにする」という表現に、出演者の一人は最初「鼻につく」と反応した。しかしもう一人がそれをたしなめると、すぐに「めっちゃかっこいい」と絶賛に転じ、その変わり身の早さが笑いを誘った。

第2問:「ルパンの娘」の屋外広告はなぜ郊外駅に出たのか

2問目は、フジテレビの木曜劇場「ルパンの娘」のプロモーションについての問題だった。新宿、東銀座、稲毛海岸、金沢文庫などの駅で屋外広告(OOH、アウト・オブ・ホーム)が展開された。このラインナップは視認率が高い駅、つまり人がたくさん来る駅ばかりではない。それでもプロモーションは話題を集め、高い効果を上げた。駅はどんな基準で選ばれたのか、という問いである。

回答者たちは、作中の舞台とは関係ないこと、広告の内容から逆算すると駅名に必然性があること、「ルパン=怪盗」という程度の知識で解けることを確認していった。そこで水野が、東銀座と金沢文庫には「金」と「銀」が入っているから、盗む対象を表す地名ではないかと気づいた。出題者は、それが「ほぼ合っている」と認めた。

難航したのは残りの二つである。「毛」を盗む、「宿」を盗むといった珍案や、「稲」「投げ」「ナゲット」といった区切り方の試行錯誤を経て、ようやく稲毛海岸の中の「絵画(かいが)」にたどり着いた。新宿についても「塾」「樹」「じゅ」とさまよった末に「真珠(しんじゅ)」が出て正解となった。どちらが決め手を言ったかをめぐって、「答えを盗んでいく」「ルパンの娘みたい」と冗談の応酬が続いた。ゴールの近くまで行って戻ってくる様子を、ゴルフでグリーンに乗せたボールを次の一打で元の場所に戻すようなものだと例える場面もあった。

解説によれば、正解は「駅名にルパンが盗むものが入っている駅を選んだ」である。各駅では駅名標を模した広告を掲示した。たとえば新宿なら駅名部分に張り紙をして「真珠はいただきました」と隠し、同様に「銀はいただきました」などと、駅名を盗むというコンセプトで展開した。下田君は、視認率ではなくコンセプトから掲出場所を選び、SNSをにぎわせた「二次拡散」の成功例と言われていると説明した。堀元は、稲毛海岸の広告枠は高くなかっただろうと推測している。他にも愛甲石田駅で「愛」が、宝町駅で「宝」が盗まれたという。水野は「(鹿児島の)財宝温泉の財宝は盗まれていないのか」と尋ね、「そこまでは見に行けない」と自分で言ったことで、鹿児島をばかにしたと堀元にからかわれた。

第3問:Jackeryが2024年正月に求めた「アクション」

3問目は、ポータブル電源メーカーのJackery(ジャクリ)についての問題である。Jackeryは2024年の正月に、あるアクションをした人に商品が当たるキャンペーンを実施し、それが同社の理念と機能を広めて話題になった。そのアクションとは何か。

水野は、Jackeryはアウトドア系YouTuberによく広告を出しているメーカーで、テントの中で暖房を使えるほどの大容量製品もあると説明した。堀元は、行動にインセンティブを与えるマーケティングの成功例として二つの話を挙げた。一つは、あるメーカーが自社製品の購入者から財布に余っているレシートを買い取った話で、購買行動のデータを大量に得たという。もう一つは、はなまるうどんが他店の期限切れのものでもいいからクーポンを1枚持ってくれば安くする、というキャンペーンでバズった話である。財布の中身は購買行動の情報の山だ、というのが堀元の見立てだったが、この問題では客の情報は取っていないと否定された。

その後、ポータブル電源の「ある機能」を使うこと、光が関係すること、「正月っぽい」ことがわかった。水野が問題文にあった「正月」を聞き逃していたことが判明し、責められる場面もあった。水野はその流れで、自動販売機には災害時に「お金を入れると飲み物は出ずに明るくなる」モードがあり、明かりが欲しい人に重宝されるという聞いた話を持ち出したが、脱線でごまかそうとしていると突っ込まれた。

「ライトを集めて初日の出を作る」「初日の出かJackeryの光かを当てるクイズ画像を投稿させる」といった誤答の後、下田君は「光は関係あるが、ライトとは言っていない」と補足した。これを受けて、初日の出の光が関係すること、Jackeryの製品が太陽光で発電できることを確認した。「初日の出の光で充電する」という答えで正解となった。

解説によると、キャンペーンの内容は「初日の出でJackeryをソーラー充電し、その様子をSNSに投稿した人から抽選で商品をプレゼントする」というものだった。Jackeryは世界で初めてポータブルソーラーパネルを発売した会社で、「グリーンエネルギーをあらゆる人にあらゆる場所で提供する」ことを企業の使命に掲げているという。とれたての初日の出を電力に変えて持ち帰るという新しい習慣を提案した、というのが下田君の説明である。

公募コンペ出身のアイデアと、番組企画の「盗用」

下田君は、この施策の面白い点として、誰でも応募できる販促コンペ(業界でいう「公募」)で入賞した案が実際に実施された例だということを挙げた。そんないい案が公募から出るものなのかと問われると、結構レアなケースだと答えた。ただ、プロの広告プランナーも個人として公募に参加するという。

ここから番組内の話に移った。下田君が以前、自分はゆる言語学ラジオを寝落ちのときに聞いているので、寝る前にそのまま収録を回してみてはどうかと提案したことがあった。二人はその企画を下田君の名前を出さずに採用したと冗談めかして語り、「言われた2分後に偶然思いついた」ととぼけた。水野は、クライアントにこれをやられたら黙るしかないのが広告業界で、冗談のつもりが本当にある話だと反応した。ただしそんな会社はほとんどないとすぐに付け加えている。その寝落ち企画の動画は約3時間あった。公開から15分ほどで、二人がそれぞれ布団を直すシーンにタイムスタンプを付けたコメントがあったことに水野は引いた、という話も出た。

第4問:LUXがビーチバレーのユニフォームに載せたもの

4問目は、女性用ヘアケアブランドLUXを展開するユニリーバの事例である。ユニリーバは南アフリカのビーチバレー大会に協賛し、ブランドロゴではない「あるもの」をユニフォームの一部に載せた。その仕組みが社会的に評価されたという。何をどこに載せたかが問われた。

質問は細かく刻まれた。載せたものは文字でもイラストでも写真でもなく記号で、図形の組み合わせでできていて、誰が見てもある程度何のためのものかわかり、街中でよく目にするものだという。場所は背中側で、上半身ではなく下半身、つまりお尻だった。男性選手の尻に載せても今回の事例では意味がなく、女の子の選手なら意味があるということから、女性をめぐる問題だとわかる。見た人がLUXの広告だとわかるわけではないと聞いて、堀元は広告効果よりもソーシャルインパクトに意義を見出した事例だろうと推測した。

途中では、堀元がフランス国王(ルイ14世とされる)は忙しすぎて穴あき椅子に座ったまま用を足しながら公務をしていた、という「お尻にまつわる社会問題」を持ち出した。水野は、女性は腸の出口部分が長いため男性より痔になりやすく、代わりに男性は漏らしやすいという「トレードオフ」を披露した。どちらも正解には関係なかった。

性的な問題であり、犯罪が関係し、覗きに近いが違う、と絞り込んで「盗撮」に行き着いた。回答者は、盗撮する気がなくなる記号を印刷したのではないかと答え、ほぼ正解とされたが、記号そのものを当てるよう求められた。水野は、本業で傘泥棒撃退法を考える企画をやったとき、傘に警察のマスコット「ピーポくん」のシールを貼ったことを思い出し、警察のマークではないかと答えたが外れた。最後に出題者が「その記号だけでは意味をなさず、その後に情報をくれる」と大きめのヒントを出し、「QRコード」で正解となった。

解説によれば、施策名は「Change the Angle」である。女性スポーツの中継を調べたところ、中継時間の17%がお尻を、20%が胸を映していたという。ユニリーバはこれを問題視し、選手のお尻にQRコードを載せた。カメラで読み込むと、この問題を説明する映像と施策の概要のページに飛ぶ仕組みである。

この問題を受けて、出演者たちは広告の作り方について感想を述べた。まずデータとそれに対する問題意識があり、次にQRコードという解決策を思いつくという、二段階のひらめきがある点が面白い、という評価である。自分たちが盗撮を抑止しようとしても「盗撮禁止」のポスターを貼るような、わかりやすいが面白くない案になりがちだ、とも話した。いい気づきをいい広告に昇華するのがプランナーの役割なのだろう、という感想も出た。

第5問:Mastercardが偽名のカードを勧めた相手

最後の問題は、世界的なクレジットカードブランドのMastercardが、ある理由を持つ人に対してだけ偽名のクレジットカードを持つことを勧めるプロモーションを行った、というものである。それはどんな人か。

回答者たちは、本名が知られると危険になる人かと尋ね、スパイではない、犯罪者でもないと確認した。途中で堀元は、アインシュタインがナチスから逃れて隠れて暮らしていたという話を持ち出し、「アインシュタイン用の偽名カード」と答えて外した。その後、職業ではなく特定の性質を持つグループであること、その性質は先天的な場合も後天的な場合もあることがわかった。ここで堀元がノンバイナリーの性別との関係を尋ねた。「戸籍上は男性名だが女性名を選びたい、というトランスジェンダーの人などのために作られたカード」と答えて正解となった。

解説によると、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々は、店頭でクレジットカードを提示する際、カードが本名表記のため、会計のときにトランスジェンダーであることが知られてしまうという思いをしなければならなかった。たとえば女性の風貌の人が男性名のカードを出すことになる。そこでMastercardは、そうした人に限って自分で選んだ名前でカードを発行できるサービス「True Name」を展開し、LGBTへの配慮に優れたプロモーションとして話題を集めた。偽名のカードを「本当の名前」と呼ぶところに皮肉が効いている、という感想も出た。

水野は、自分がカードを使っていて、マイノリティの人がこの仕組みで傷ついていることを知らなかったと言い、それもまた気づきだと話した。堀元は、名前を書かなければならない行政手続きなどがすべてストレスだという話を聞いたことがあったので、早く答えにたどり着けたと説明した。その一方で水野は、あれほど鮮やかな正解の直前に「アインシュタインのカード」という答えがあったことを思い出し、そんな相手に負けたのが悔しいと嘆いた。

広告の「脱構築」という作業

締めくくりに、こうした事例をいくらでも出せるのかと聞かれた下田君は、探せば発見のある施策はたくさんあると答えた。プランナーとして、世の中の広告がなぜそのように作られたのかを「キーファクトはここ、インサイトはここ、ターゲットはここ」と分解する、デコンストラクション(脱構築)という作業をしているという。堀元はこれを、商品を分解して仕組みを見るのと同じことを広告でやっているのだと受け止めた。事例がまた溜まったら出題してほしい、という呼びかけで回は終わった。