停電、建築、テロ、セロハンテープ――偶然と環境が明かした発見をめぐるうんちくクイズ

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概要

ゆる言語学ラジオの企画「うんちくエウレーカクイズ」の回である。堀元見と水野太貴が、かつて東海高校時代に同じ企画で出題してくれた水谷君らを出題者として再び迎え、視聴者投稿と出題者自作の問題に挑んだ。この回に並んだ問題には、狙った研究ではなく偶然の出来事や周囲の環境が発見や文化の変化を生んだ、という共通点がある。二人は質問で範囲を絞りながら答えにたどり着き、途中でそれぞれが知っている似た事例を持ち出していく。

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マツカサウオの発光は水族館の停電で見つかった

1問目は視聴者からの出題で、「マツカサウオにはある際立った特徴があるが、それは研究ではなく水族館での偶然の出来事によって発見された。その出来事とは何か」というものだった。

水野は最初、観客の存在が関係するのではと考えた。コロナ禍で飼育員が出勤できなくなり、水族館のマンボウが体調を崩したが、水槽に飼育員の制服を貼り付けたところ回復した、という話を思い出したからだという。出題者によれば観客は無関係で、水野はこの話を披露したかっただけだと笑いながら認めた。

二人は、特徴が見た目に関するものか、光ることか、と質問を重ねた。「光る」の確認が取れると、堀元は不自然なほど早く正解に近づき、カンニングを疑われながらこう推理した。水族館はもともと真っ暗にする設計ではなく、常に照明がついていたので光っていても気づかれなかった。停電などで暗くなったときに初めて光っていることが分かったのではないか。これが正解だった。

出題者の解説では、富山県の魚津水族館が1914年に暴風で停電した際、職員がマツカサウオの発光に気づいた。マツカサウオが発光器を持つことが世界で初めて確認された瞬間だという。

音楽の変化を左右したのは「建物」だった

2問目も視聴者からの出題である。18世紀前半のバッハ、同世紀後半のモーツァルトによる革新、19世紀のジャズの登場、20世紀にはU2の曲に観客が沸く。こうした音楽の変化には、音楽家個人の才能ともう一つ何が大きく関わっているか、という問いだった。

二人は、電気技術がテクノを生んだような技術の発展、王家に仕えた音楽家にとっての王の芸術観、人口動態、戦争、地球温暖化などの気候を順に挙げたが、どれも不正解だった。堀元は、答えが面白くなるように逆算して奇抜な候補を出していると自分で認め、「地球温暖化のせいで今ロックが流行っている」のような新書を書きたくなる発想だと冗談を言った。この要因は16世紀でも14世紀でも成立し、目で見ることができ、身近にあり、金属製の場合も木製の場合もある。ここまでヒントが出たところで「建物ですか」と尋ね、正解になった。

解説によると、大聖堂で演奏されていたのは単調な長い音だけでできた宗教音楽だった。バッハが活動したのはもっと小さな教会で、不協和音を気にせずに複雑な音楽を書けた。モーツァルトが活動した宮廷の一室は教会よりさらに小さく、より装飾的な音楽が書けた。19世紀末には人でごった返す騒がしいクラブで演奏する必要があり、即興やアンコールの掛け声も入るので大音量で演奏したことから、ジャズが生まれた。20世紀以降のポップスやロックは大量の観客を集めるスタジアムで演奏されるようになり、ミディアムテンポのバラードのような曲が多くなったという。堀元は、言われてみれば建物によって最適な音楽は変わるはずだと納得した。

ヘビーメタルの高音とペンライトの起源

この問題から、水野は音楽が音楽以外の要因で決まった例を二つ紹介した。

一つ目は、X JAPANのようなヘビーメタルのボーカルが高音を多用する理由である。堀元はその方が盛り上がるからだと答えたが、水野によれば、演奏の手数が多いために低音だと声が埋もれてしまい、高音でなければ聞かせられないからだという。

二つ目はアイドルのライブでペンライトを振る文化の起源だ。堀元は、推しのメンバーカラーで応援の気持ちを示すためではないかと考えたが、水野が見た説では、1970年代の西城秀樹のライブが始まりだという(諸説あるとも断っている)。西城秀樹が大阪球場で夜のライブを行った際、客席に照明のない球場でのライブは前例が少なく、観客の顔が見えないことを不安に思った。そこで前日のラジオで、懐中電灯で自分の顔を照らしてほしいと呼びかけた。観客が懐中電灯を持ち寄ったことで客席を光らせる文化が生まれたが、懐中電灯は重くて邪魔だったため、次のライブからはペンの中に豆電球を入れた自作のペンライトが持ち込まれるようになった。そこからビジネスが生まれ、現在のペンライト文化につながったという。

水野は、メンバーカラーのような理由は後から整理されたもので、出発点は会場の条件への対応だったと位置づけた。二人は、音楽は音楽性以外の理由で多くのことが決まり、社会や文化に形作られているのだと話し合った。

「下手から見てた」が削除される理由

ここで水野自身がクイズを出した。配信サービスSHOWROOMのアイドル配信で、ファンが「今日のライブはこの位置から見てたよ」という内容を書き込むと、自動で削除される場合があった。なぜか、という問題である。

堀元は、イベントで観客から見ていた位置を伝えられるとうれしいものだと前置きしたうえで、NGワードに引っかかっていると見当をつけた。「シネマのような席」の「シネ」が「死ね」と判定されるという案(キネマという言い方はシネマが「死ね」につながるのを避けたものだという雑学も付け加えた)、「上から見てた」が上から目線と受け取られる案、「2階から見てた」が「2階から目薬」になる案、「外れの席」が音程を外している意味に取られる案などを出した。最終的に「下手(しもて)から見てた」が「下手(へた)」と読まれて罵倒と判定されるのだと気づき、正解した。水野は、AIなどによる自動判定で「下手」が罵倒として扱われたのだろうと補足した。

飛行機雲の影響を検証できたのは9.11のとき

次は、以前にも採用されたことのある投稿者からの問題である。飛行機が温暖化など気象に影響を与えているのではという疑いは昔からあったが、ある事件をきっかけに、思いがけずその影響を検証できる機会が訪れた。その事件とは何か。

堀元は、コロナで飛行機の便数が一気に減り、比較できる機会が生まれたのではと答えた。不正解だったが、出題者はその考え方自体は近いと評価した。飛行機が大きく減ったタイミングを探せばよい。そう考えた堀元が、9.11のテロの後に飛行機は減っただろうか、と半信半疑で口にしたところ、それが正解だった。

解説によれば、事件翌日から3日間、アメリカの民間航空便はすべて運航を停止し、第一次世界大戦以来初めてアメリカ上空に飛行機雲がない状態が短期間生じた。『ネイチャー』に掲載された報告では、この期間の日中と夜間の気温差が、過去の平均より1.1度大きくなった。つまり飛行機雲があると1日の気温差が小さくなる。この報告は気温差について述べたものにとどまるが、飛行機が気象に影響することは確かめられた。出題者は、その後の研究で飛行機は地球温暖化の原因の一つだと確実視されるようになっていると説明した。

研究者が意外なデータに目をつける例

水野は、研究者が意外なデータに目をつけて主張を組み立てる話が好きだと語り、自著『会話の0.2秒を言語学する』で取り上げた例を紹介した。「させていただく」がどの地域でよく使われるかを調べるために、食べログのレビューを使った研究である。「堪能させていただきました」「味わわせていただきました」といった表現が大量に集まり、店舗の所在地と結びついているので、地域差を測れるのだという。

堀元は、研究者は飛行機雲が3日間出ない状況を偶然見つけたというより、常にアンテナを張っていたから捉えられたのかもしれないと述べた。水野も、どこかで飛行機が減ってくれないかと内心思っていたのだろうと応じた。

水野はもう一つ、最近「その切り口で論文が書けるのか」と感心した例として、秦正樹の論文「ドラマにおける『悪い政治家像』は現実政治にも投影されるか?」を挙げた。『半沢直樹』を題材にしたサーベイ実験で、ドラマに描かれる悪い政治家像に接すると現実の政治への不信感が喚起される、という結果が出ている。ただし、政治に無関心な層では、逆に『半沢直樹』の視聴が政界への信頼感を高めたという。水野は、論文をしっかり読まないと分からないと断ったうえで、無関心な層はこれはフィクションだと切り離して見ているのではないかと推測した。堀元は、政治に関心のある人の方がフィクションだと割り切りそうなもので、直感とは逆に感じると述べた。この論文はJ-STAGEでPDFをダウンロードできると水野は案内している。

グラフェン単離の意外な方法

最後の問題は、大学で物理を学ぶ水谷君が自分の分野から作ったものである。鉛筆の芯などに使われるグラファイトは、炭素が平面状に結合した2次元結晶が積み重なったものだ。その1層であるグラフェンを単離することは、不安定なため困難だと考えられていた。しかし2004年、アンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノボセロフが単離に成功し、ノーベル物理学賞を受賞した。その方法は何だったか。

堀元は、カッターで薄く削いだのではと答えたが不正解だった。水野は理科が苦手だと言い、炭素の結合の仕方で性質が変わる話と混同して「同位体」と口にし、堀元に「同素体」だと訂正された。

ここで水野が、うっすらした記憶を頼りに「その研究者はイグノーベル賞も受賞していないか」「カエルを浮かせて取ったのではないか」と尋ねると、どちらも当たっていた。水野によれば、カエルの体内の物質を磁石か何かで浮かせた研究だという。堀元もそのニュースは見た覚えがあり、アンドレ・ガイムの名前は「カエルを浮かせた人」として記憶していたと話した。ただ出題者によると、カエルの件とグラフェンの単離は関係がない。

さらに質問が続いた。単離は狙ったというより偶然に近い。物理的な操作ではあるが、「切り取る」ではない。放置した結果はがれたのでもない。二人は、放置から生まれた発見の例としてペニシリンやコーンフレークを挙げた。コーンフレークは、新しい病院食を作ろうとして作業途中で呼び出され、放置してカピカピになったものが美味しかったという話だと出演者の一人が紹介している。

操作自体は日常的に誰でもやることだが、趣味とまでは言えない。出題者はヒントとして、研究者たちは本業とは関係の薄い実験を金曜の夜に行うと決めていて、その中で成功したと明かした。大がかりな技術は必要なく、カッターで削ぐのと同じくらいの遊び心だったという。堀元は、デッサンで消しゴムの代わりにパンを使うことから連想して「パン」と答えたが外れた。重要なのは動作より道具で、その道具は現代にもある文房具であり、書くためのものではなく、接着を伴う。付箋でも糊でもないと絞り込んでいき、セロハンテープにたどり着いた。

解説によれば、セロハンテープでグラファイトをはがすと薄い層が取れ、何度もテープではがして遊んでいるうちに単離できてしまったという。二人は、そんなに簡単なことでノーベル賞につながったのかと驚き、狙って作られたものは意外と少ないのかもしれないと話した。堀元は、大がかりな実験なしで成果が出せるなら自分たちにもできそうな気がする、と冗談めかして言っている。

締めくくり

振り返りでは、この回は堀元が冴えていてカンニングを疑われたこと、それでも視聴者の記憶にはガイムが「カエルを浮かせた人」として残ってしまっただろうことが笑いの種になった。二人はまた、高校生のときに問題を出してくれた出題者たちが大学生になって再び出題してくれたことに時の流れを感じ、彼らもやがて社会人になっていくのだろうと語って回を終えた。