キーボード一体型「Raspberry Pi 500+」をRaspberry Pi 5と比べる:使いどころ、コスト、分解

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概要

電子工作系YouTubeチャンネル「イチケン」は、これまでRaspberry Pi 4やPi 5などのカード型の機種をレビューしてきた。普段の工作でも、マイコンではできない処理をさせたいときにラズパイを使っているという。今回取り上げたのは、キーボードの形をした「Raspberry Pi 500+」である。電源とディスプレイをつなぐだけで使えるこの機種を実際に使い、使用感、使いどころ、中身の構成を確認している。イチケンの結論は、500+は学習・教育向けの完成品であり、装置への組み込みには通常のRaspberry Pi 5を選べばよい、というものだ。

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Raspberry Pi 500+の位置づけとスペック

レビュー機はDigiKeyで購入したものだ。500+は2025年9月25日に発売された製品で、撮影時のDigiKeyでの販売価格は税込みで約3.5万円だった。イチケンは、国内の業者から買っても価格はほぼ同じだろうと見ている。

中身は基本的にRaspberry Pi 5の16GB版と同じだが、ストレージが強化されており、256GBのSSDが最初から内蔵されている。従来のラズパイはmicroSDからブートするのが一般的だったため、イチケンは起動時間や日常の使い勝手が大きく向上していそうだと述べる。

Raspberry Pi財団はこれまでもキーボード型の機種を出してきた。Pi 4の時代にはRaspberry Pi 400、Pi 5世代ではRaspberry Pi 500が出ている。イチケンは500+を500の後継機、あるいはアップデート版のような扱いだと捉えている。

技適マークがない問題

500+は海外ではすでに発売されているが、日本では技適の関係で発売時期が決まっていない。DigiKeyで購入した個体にはFCCマークはあったが技適マークはなかった。そのため今回は「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」に申請して使っている。

イチケンによると、以前DigiKeyで買ったRaspberry Pi 5は、発売から半年ほど後に購入したものには技適マークが付いていた。500+も時間が経てば技適マークが付く可能性はあるが、正確な時期はわからないとしている。

インターフェースの違い:PCIeは内部SSDに使われている

背面の端子は基本的にPi 5と大きく変わらない。microSDカードリーダー、電源用のUSB-C、Micro HDMIが2つ、GPIO端子、LAN用のRJ45が1つ並ぶ。一方でUSB-Aは1つ減っている。

大きな違いは、Pi 5にあったPCIeケーブルやフラットケーブルをつなぐ端子がなくなっていることだ。PCIeは内部のNVMe SSDに使われているためである。その結果、500+は外部と接続するためのインターフェースが少し少なくなっている。

使いどころの比較:組み込みのPi 5、学習の500+

イチケンは両機種の使いどころを次のように比べる。

通常のPi 5は非常に小型だ。初代ラズパイの登場時には、このサイズのシングルボードコンピュータが出たことで大きく盛り上がった記憶があるとイチケンは振り返る。最近はミニPCも出てきて、こうしたコンピュータは身近になった。そのなかでPi 5は、昔のラズパイと比べて性能がかなり上がっている。

Pi 5はキーボードを後から付ける前提で、ストレージもmicroSDなので、最小構成から始められる。RAMは1GB、2GB、4GB、8GB、16GBの5種類から選べる。たとえば装置にPi 5を組み込むなら、動作に必要な最低限のメモリとmicroSD容量を選び、コストを最小に抑えられる。イチケンはこの点から、Pi 5は学習用はもちろん、装置への組み込みにも使える設計だとまとめる。

500+はキーボードが一体になっており、ストレージも最初から強化されている。ただし、Pi 5のように小型で装置に組み込めるという利点はなくなった。RAMとSSDの容量も固定なので、ラズパイ部分にかけるコストを調整する使い方もできない。そのためイチケンは、500+は学習目的の場面に向いていると考えている。ただし、学習用途は通常のPi 5でもこなせるとも付け加えている。

同じスペックにそろえた場合のコスト

次に、Pi 5を500+と同じスペックにそろえた場合の費用を試算している。Pi 5のRAM 16GB版は145ドル。500+と同じくSSDを使うには拡張カードが必要になる。拡張カード自体は12ドルと安いが、SSDの費用がかかる。SSDがセットになった拡張ボードは55ドルだ。合計すると、Pi 5でSSDを使う構成は200ドル近くになる。

500+は200ドルで、RAM 16GB、SSD 256GBに加えてキーボードも付いてくる。この比較からイチケンは、500+は意外とコスパの良い選択かもしれないと評価している。ただし、16GBものRAMが不要なら、Pi 5の8GBや4GBモデルを使えばさらに安く済むとも指摘する。

実際に起動して使ってみる

本体背面にUSB-Cを挿すと電源部分が光り、起動が始まる。ブートローダーはすぐに立ち上がり、30秒かからずに起動が終わった。イチケンは、microSDからのブートと比べてやはり速いと述べている。microSDスロットもあるので従来のラズパイと同じ使い方もできるが、SSDにOSがインストール済みなので、届いてすぐに使える。

撮影に使ったモニターはRaspberry Pi純正の15.6インチ液晶で、よくあるポータブルモニターのような製品だ。価格は100ドル、約1.5万円である。ただしイチケンは、このモニターである必要はまったくなく、もっと安いものを自分で探した方がよいと勧めている。

できることや性能はPi 5そのままで、基本的には通常のシングルボードコンピュータである。イチケンは、Pi 4のときは少し微妙だったが、Pi 5になってCPUとGPUの性能が上がり、普通のブラウジングができる程度の性能はあると評価する。発熱については、Pi 5ではSoCの発熱が大きく、ヒートシンクや冷却ファンが必要なほどだった。一方500+はそれほど熱くならず、内部にしっかりした冷却機構がある。そのため発熱はあまり心配しなくてよいだろうというのがイチケンの見方だ。

キーボード:メカニカルでクリック音は大きめ

イチケンが500+で一番気になっていたのはキーボードである。今回の機体はUS配列だ。日本語を含む他の言語の配列も用意されているが、在庫切れだった。他言語版は数が出ないので仕方ないとしつつ、DigiKeyのページでは日本語版のリードタイムが2026年2月2日と表示されていたという。

キーボードはメカニカル式で、光り方は好みに合わせて変更できる。打鍵音は「カチカチ」という感じで、押し心地と音は好みが分かれそうだとイチケンは言う。カチカチ感はわりと心地よく、ガジェットを操作している感覚があると評価する一方、個人的な感想としてはクリック音がそこそこ大きくうるさいので、静かなものの方がうれしいと述べている。職場で使うと騒音トラブルになりそうな音だという。スイッチは交換できないが、キーキャップは交換して楽しめる。

分解:アルミ板全体がヒートシンク

分解については、ストレージの交換などを想定して、Raspberry Pi公式がwikiに手順を載せている。付属品には開封用の工具も含まれており、イチケンはメーカーが分解を推奨している状態だと説明する。

ネジを外し、付属の工具で開封すると、キーボードはフラットケーブルで基板に接続されていた。内部は全体がアルミ板で覆われている。アルミ板の裏には熱伝導シートが貼られていてSoCに接触しており、板全体をヒートシンクとして使う構造だ。ヒートシンクの面積はかなり広く、イチケンはPi 5などと比べて放熱には余裕がありそうだと見ている。

SSDはRaspberry Pi純正品らしきものが載っていた。取り付け穴の位置を伸ばせるので、好きなサイズのSSDを挿せそうだという。同じタイプの拡張ボードも挿さるため、その点での拡張性はある。基板全体を見ても、Pi 5にあったフラットケーブル用の端子は見当たらず、PCIeはSSDに使われている。基板の端には部品のない領域があり、これはRJ45から給電するPoE関連の部品を載せるためのエリアだという。

なお、この個体では基板がきちんとはまっておらず、しなっていた。最初からこの状態だったが、イチケンはそれが良いのか悪いのかはわからないとしている。

まとめ:Pi 5との住み分け

イチケンは、キーボード一体型なので電源とディスプレイがあればすぐ使える点を500+の良さに挙げる。用途はほとんどが教育目的だろうと推測し、そのためRAMは選べる中で最大の16GB、ストレージは高速なSSDという仕様になっていると見ている。

一方で、RAMやストレージの容量を用途に合わせて選ぶという、Pi 5でできていたことは500+ではできない。サイズ的にも装置に組み込むのはかなり難しいだろう。ただしその用途にはPi 5があるので、両機種の住み分けはできているというのがイチケンの感想である。