「SaaS is dead」は本当か:転職系YouTuberが語る、AIエージェント時代のSaaS業界と営業職の行方

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概要

「AIによってSaaSは死ぬ」という言説が、メディアやSNSで広がっている。転職情報を発信するこのチャンネルにも「SaaS業界に転職して大丈夫か」という心配のコメントが届くようになったという。話者は5年ほど前からSaaS業界への転職を勧めてきた立場から、この問いに答える。結論は「SaaSは死なない。弱肉強食になるだけ」である。そのうえで、AI時代にSaaSへ転職するなら知っておくべき4つのポイントとして、株価、AIエージェントの影響、勝ち組の条件、営業職の変化を解説している。

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「SaaS is dead」はどこから来たのか

話者によれば、「SaaS is dead」と言われ始めたのは2024年11月から12月頃である。MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラ氏の発言がきっかけだった。ただ、ナデラ氏自身は「SaaSは死ぬ」と言ったわけではない。話者の理解では、ナデラ氏の趣旨は「現在は期待が集まりすぎているSaaSも、AIエージェントによって今後は評価が少し下がるだろう」というものだった。それを各種メディアが「SaaS is dead」というキャッチーな見出しにして広めた、と話者は見ている。

話者は、「SaaS is dead」を見出しにした記事でも、最後まで読むと「こういう展開になれば死ぬ」「こういうSaaSに限っては危ない」といった条件付きの議論になっていることが多いと指摘する。本気で「SaaSはすべて死ぬ」と言っているメディアはほぼない、というのが話者の認識である。

話者は自分の立場についても率直に語っている。自分はSaaS企業の経営者でもサービス提供者でもなく、ただのYouTuberなので、SaaSが死んでも困らない。むしろ「次はこの業界だ」という新しいネタを発信できる方がありがたく、5年もSaaSの話を続けてきたので自分でも飽きている、とまで言う。それでも、普通に考えればSaaSは死なないと思う。これが話者の出発点である。

結論:SaaSは死なず、弱肉強食が加速する

話者は、SaaSが難しい局面にあることは認める。ただし起きているのは「SaaSの死」ではなく「弱肉強食」だという。強い企業はAIを活用してさらに伸び、弱い企業は駆逐される。話者はこれを2年前から動画で言い続けてきたと強調する。SaaSならどこでもよいわけではなく、弱いところはすぐ死ぬ。その流れがAIによって加速するだけ、という整理である。

話者の見立てでは、強いのは「マストハブ(must have)」のSaaS、つまりなければ困るSaaSである。具体的には、お金周りや人事周りといった基幹データを持つSaaSと、法規制に深く関わるSaaSを挙げる。反対に「ナイストゥハブ(nice to have)」、あれば便利だがなくてもそれほど困らない浅いSaaSは駆逐されていくと見る。最も危ないのはBIツール系で、チャットツール系、タスク管理系、営業ツール系、マーケティングツール系もうまくやらないと厳しい、というのが話者の予想である。

この話を誰に伝えたいのか

話者は「SaaS is dead」という議論そのものを否定していない。面白い話題であり、盛り上がるのはかまわないという立場だ。話者が危険視しているのは、SaaSへの転職を考えていて内定の可能性もある人が、この言説を聞いて尻込みしてしまうことである。転職は人生を左右する意思決定であり、そこで立ち止まれば「あの時動いておけばよかった」と後悔することになる、と話者は言う。

特に話者が気にしているのは内定の取りやすさである。まだ採用難易度は上がっていないが、今後上がる可能性があると話者は見ている。この懸念は以前から言われ続けてきた一方で、業績が伸びているため採用の間口は広いままだった。それでも話者は、インサイドセールスのポテンシャル採用は今後閉じていくのではないかと予想する。だから「SaaSが死ぬかどうか」より「SaaS業界の内定を取れるかどうか」を心配する方が本質的だ、というのが話者の主張である。

話者がSaaS業界を勧めてきた理由

話者が主な対象として想定しているのは、このチャンネルの視聴者に多い営業職志望の人である。話者によれば、SaaS業界の魅力は総合的なバランスの良さにある。採用間口が広く、ワークライフバランスが良く、年収レンジが高めで、本質的な営業スキルが身につく。

採用間口については、法人営業の経験が少しでもあれば内定のチャンスがあり、ポテンシャル次第では個人向けの接客業出身者でも内定を取れるパターンがあると話者は説明する。ワークライフバランスについては、成長業界でありながら残業時間は大半の人が月20時間未満に収まっているという。年収は、一般社員で500万〜700万円程度、管理職として出世していくと800万〜1,000万円超が見えてくる水準だと話者は紹介する。年収だけを上げたいならコンサル業界、M&A業界、キーエンスのような高単価商材のメーカーの方がよいが、一般的に幸せに生きるならSaaSの年収は「ちょうどいい」というのが話者の評価である。これだけ総合的に良い業界はほかになかなかない。だから自分はSaaSの話ばかりしてしまう、と話者は言う。

不安の対象は業界ではなく「自分」

話者が今回最も伝えたいのは、4つ目の魅力である「本質的な営業スキル」についてだ。話者は、いくら「SaaSは死なない」と言っても、根本的な不安は消えないだろうと考える。そうした人が本当に不安に思っているのは業界の行く末ではなく、自分自身である。自分への不安が形を変えて「SaaS業界に行って大丈夫か」という不安になっている、というのが話者の分析である。

そういう人に大丈夫だと言っても、「でも10年後に万が一死ぬ可能性もあるでしょう」となる。話者はそれ自体は正しいと認める。地球上のすべての企業がそうであり、今AI業界で勢いのあるChatGPTのOpenAIですら10年後どうなっているかは分からない。大事なのは、普通に進めばこうなるというメインシナリオを予測しておくことだ。万が一のリスクも考えておくが、そこに執着しすぎると意思決定がぶれる、と話者は言う。

そのうえで話者は、「SaaSの死は、あなたのキャリアの死ではない」と強調する。SaaSが死んでも問題ないくらい、ビジネスパーソンとしての価値を高めることが大事で、営業職なら本質的な営業スキルを身につけることが何より重要だ。SaaS業界は企業間の競争が厳しくなるため、働く人に高いレベルが求められる。だからこそ鍛えられる、というのが話者の論理である。仮にSaaSが死んだとしても、それはどこか別の領域が伸びているということなので、身につけたスキルを持ってそちらへ転職すればいい、と話者は述べる。

話者によれば、SaaSの仕事の難しさは外部にはあまり伝わっていない。現役社員への取材を重ねている話者は、仕事が厳しいのはAI時代に始まった話ではなく、2〜3年前からずっとそうだと言う。この具体的な中身は、後半の4つ目のポイントで詳しく語られる。

ポイント1:株価フィーバーは一旦終了

ここから話者は、AI時代にSaaSへ転職するなら知っておくべき4つのポイントに移る。1つ目は、SaaS企業の売上は伸び続けているが、株価は下がっているという事実である。

話者の説明では、SaaSの株価はこれまで上がりすぎていた。SaaSの成長率を超える業界がなかなかなかったため、大きな投資マネーがSaaSに集まり続けていた。しかし今はAIという新しいトレンドがあり、資金がそちらに分散している。その結果、SaaSの株価は是正されていく、と話者は見る。

具体例として話者はSalesforceを挙げる。株価は2025年1月頃がピークで、そこからじわじわ下がり続けている。一方で売上は伸びている。ただし以前ほどの成長率はない。投資家にとっては「成長しているが大きな期待はできない」銘柄になり、成長業界から成熟業界へ移ったと見られている。そこにAIエージェントの登場が重なった。

話者の説明によると、AIエージェントとはChatGPTやGeminiのようにチャットで依頼して返答を受け取るのではなく、自律的に動くAIである。2025年1月頃にOpenAIが「Operator」を出し、メディアで「AIエージェント元年」と言われるようになった。自分で動くAIならSaaSのようなITサービスも作ってしまえるのではないか。人間の操作を前提に作られたSaaSではなく、AIエージェントが操作することを前提としたSaaSが必要になるのではないか。こうした不安が、2025年からのSalesforceの株価下落につながったと話者は説明する。

日本の大手SaaSにも波及した下落

2026年になると、この流れは日本の大手SaaSにも波及したと話者は言う。ラクス、Sansan、freeeといった日本を代表するSaaS企業の株価が軒並み10〜15%ほど下がった。しかし売上は好調で、話者の示した数字では、ラクスとSansanは約25%増、freeeは約30%伸びている。アメリカのSalesforceやAdobeのような大手は成長率が鈍化しているが、日本のSaaSは実際にはそれほど鈍化していない、と話者は指摘する。

それでも株価が下がった理由を、話者は2つ挙げる。1つは、SaaSの先進国であるアメリカがたどった道を日本もたどり、成長が鈍化して成熟業界になるだろうという予測である。もう1つはAIエージェントの影響だ。2026年にはClaudeのCoworkやClaude Codeが登場した。話者自身も使っており、「プログラミングの"プ"の字も知らない」自分でも簡単な効率化ツールを作れたという。例えば、会議を録画しておけば、会議終了後に自動で議事録を作り、自分がやるべきタスクをSlackに送ってくれるツールである。X上でも「こんなものを作れた」という投稿が盛り上がり、その中には「これはSansanでは」「これはfreeeでは」と思えるものもあった。この懸念が株価下落につながったと話者は見ている。

株価の今後について、話者は、PER(株価収益率)で表される期待値が高すぎたため、適正な水準に落ち着き、そこで下げ止まると予想する。売上と利益はしっかり出ているからだ。ただし回復には時間がかかり、早くても1〜2年はかかるのではないかという。回復のシナリオとして話者が考えているのは、強いSaaS企業がAIを十分に活用し、投資家が「SaaS対AIだと思っていたが、このSaaSはAIをかなり活用しているからAI銘柄だ」と気づいて、再び資金が集まる展開である。

株価と転職先選びは別の物差し

話者は、株価の下落は良い話ではないとしつつ、転職先選びにとって致命的ではないと強調する。投資と転職では判断基準が異なるからだ。

投資なら分散できるし、お金を入れるだけで済む。値動きの激しいAI銘柄に分散投資し、1〜2社でも30倍、40倍になれば御の字、という考え方は投資としては合理的だと話者は言う。しかし働く場合は、1社だけに「身を投じる」ことになる。だから大事なのは、ビジネスモデルと社内の仕組みが安定し、売上と利益が安定していること、そしてそこで働くことでスキルアップでき、仮にその会社がなくなってもスキルを次に活かせることだ、と話者は説明する。株価が大きく伸びているかどうかは参考程度にすればよい、というのが話者の立場である。

ポイント2:逃れられないAIエージェントの3つの影響

2つ目のポイントとして、話者はAIエージェントの登場によってSaaSが直面する3つの問題を挙げる。前提として、この影響はどのSaaSも受ける。ただし勝ち組SaaSにとっては解決可能な課題であり、負け組SaaSにとっては致命傷となって、じわじわ死んでいく。これが話者の整理である。

1つ目は「自分たちで作れそう問題」だ。AIエージェントがプログラマーやエンジニアのように動くなら、SaaSを使わず自社で作ればいいのではないか、という懸念である。

2つ目は「UI(操作画面)が無意味になりそう問題」だ。SaaS企業はこれまで、人間にとって使いやすい操作画面づくりに命をかけてきた。しかしAIエージェントがSaaSを操作する時代になれば、それは不要になるのではないか。話者は営業支援SaaSを例に挙げる。これまでは営業日報を各営業担当者が入力していた。近い将来は、社員の録音やGPSによる行動記録をもとに、AIエージェントが自動で報告書を入力するようになるかもしれない。そうなれば人間にとっての使いやすさは不要になり、顧客はそこに高いお金を払いたくなくなる。

3つ目は「席数課金が減りそう問題」だ。SaaSは基本的に1人あたり月額で課金されており、営業担当者が100人いれば100人分を請求する。しかしログインする人数が減れば売上も減る。話者はその理由を2つ挙げる。1つは、AIによる業務効率化で働く人自体が減ること。もう1つは、AIエージェントがまとめて入力するなら、営業担当者が100人いてもAIエージェント1つ分のアカウントで足りてしまうことだ。

ポイント3:勝ち組は「深いSaaS」だけ

3つ目のポイントは、勝ち組になるのは深いSaaSだけ、という話である。話者の結論は、今まで強かったところが引き続き強い、というものだ。ラクス、Sansan、freee、SmartHR、LayerXといった企業は、AIエージェントによる課題も解決し、これまで以上に業績を伸ばす未来が見えると話者は言う。

一方で弱いのは、単機能の便利ツールである。話者は、名指しはかわいそうだとしつつ、公開情報を収集して分析するだけのBIツール系SaaSは、AIがなかった時代には便利だったが、今後は大きく駆逐されるだろうと予想する。チャットツール系、タスク管理系、機能の少ない営業ツール系やマーケティングツール系も、総合的な強みやデータ蓄積の強みがなければ厳しいという。

話者によれば、深いSaaSの特徴は、そのまま「内製できない理由」でもある。SaaSにとって最も怖いのは、AIエージェントのおかげで顧客が自社で簡単に作れてしまうことだ。しかし「深いデータ(基幹データ)を握っている」ことと「法規制に深く関わる」ことの2つがあれば、顧客は作れない。作ろうとすれば、SaaSを使うよりコストが跳ね上がる。

深いデータがAI時代の強みになる理由

深いデータについて、話者はSmartHRは雇用や人事周り、Sansanはほかがどこも集めていない名刺データ、freeeとLayerXはお金周りのデータを持っていると説明する。深いデータとは、100%の正確性と万全のセキュリティが求められるセンシティブなデータのことだ。それを構造化された形で保管しており、しかも1社分ではなく複数の顧客のデータを持っている。そのため、「このように保存・活用すると業務を効率化できる」という知見も導き出せる、と話者は言う。

AI時代には、このデータがAIに食べさせる「餌」になる、と話者は述べる。AIはパソコンのようなインフラであり、パソコンを持っていること自体は強みにならず、中に何が入っているかが大事だ。AIを活用するには、大量で、かつAIに読み込ませやすいデータが必要になる。例えばSmartHRなら、人事データをAIに与えて人事業務を効率化したり、売上アップにつながる提案をしたりできるようになる、と話者は見ている。技術力のある外資系AI企業でも、このデータは持っていないので追いつけない。こうしたデータは一朝一夕に集められず、歴史と信頼が重要になるため、新興企業や外資企業も入り込みにくいという。

話者はさらに、深いデータを複数持つとより強くなると補足する。人事データなら給与だけでなく、人事評価や組織図の変遷まで持つ。人事データに経費精算のデータを組み合わせ、お金周りにも領域を広げる。そうすれば組み合わせたサービスを提供できる。今の強いSaaS企業がマルチプロダクト化を進めてサービスを増やしているのはデータを集めに行っているからであり、今後はM&Aもかなり積極的になるだろう、と話者は予想する。

法規制に関わることも内製を難しくする

深いSaaSのもう1つの条件は、法規制に深く関わることである。SmartHRは雇用周りの規制に、freee、ラクス、LayerXは電子帳簿保存法やインボイス制度などお金周りの規制に関わる。話者はバーティカルSaaSも今後強いと見ており、建設業界特化のANDPADやスパイダープラス、介護業界特化のカイポケを例に挙げる。建設業界には特有の法律があり、介護業界には介護保険法や法定帳票がある。AI時代が来ても、後発企業が逆転するのは難しいという。

話者は、深いデータと法規制という2つの条件があると顧客が自社で作れない仕組みを、お金周りの例で説明する。請求書や経費精算のサービスを自社で作ろうとしても、センシティブなデータ自体は社内にあるかもしれないが、構造化されておらず、複数社のデータもない。一旦は作れても、そこから改善していくのが難しい。さらに、インボイス制度のように法規制はどんどん変わる。そのたびに改修するにはITエンジニアを自社で抱える必要が出てくる。結果として、SaaSに払うより高くつく。話者はここがクリティカルなポイントだと強調する。

勝ち組SaaSは残り2つの問題をどう乗り越えるか

「作れそう問題」が解決できれば、残り2つの問題もあまり影響しない、と話者は言う。UIについては、そもそもデータを握っていることが強みなので、顧客は簡単に乗り換えられない。強いSaaSは今後、AIエージェントが使いやすいUIに変えていくだけだという。

席数課金についても、話者は影響は小さいと見る。顧客が自社で作れないなら、強気で交渉できるからだ。話者があり得るパターンとして挙げるのは、AIを活用したサービスに生まれ変わる際に、席数課金から従量課金に切り替えることである。現在もAIサービスの多くは、使ったクレジット分を請求する方式になっている。SaaSもそうなれば、顧客が払う額は席数課金の時代より増え、SaaS企業の売上はむしろ上がる可能性すらある、と話者は述べる。

交渉の材料について、話者は2つの形を想定する。1つは「値上げが嫌なら内製しますか。ITエンジニアを雇ってずっとメンテナンスしてもらう方が高くつきますよ」という交渉である。もう1つは、データとAIを組み合わせた強力なサービスによる交渉だ。話者は例として、SmartHRが「当社のAIサービスを使えば総務のメンバーは半分で済むので、人件費を含めたトータルでは安くなる」と提案できるようになる、というシナリオを語る。営業ツールやマーケティングツールでも、AIをうまく活用して売上に直結するサービスが出てくれば、「請求額は増えたが、御社の売上は上がっている」という交渉ができる。だから席数課金が減ること自体はあまり関係がない、というのが話者の結論である。

ポイント4:営業職のコンサル化が加速する

最後のポイントは、営業職の仕事が高度化し、コンサル化していくという話である。話者によれば、SaaS業界が弱肉強食になる中で圧倒的なポジションを築くには、プロダクトだけでなく「人込み」で勝負する時代になる。長期的には、深いSaaSであるうえに、依頼すれば優秀な人も派遣してくれる、というサービス提供になるだろうと話者は予想する。その根拠として話者は、SmartHRの社長がインタビューで、今後はSaaSだけでなくコンサルティング領域に侵食していくべきだと語っていたことを挙げる。まだ仮説として語られている段階だが、社内ではコンサル領域もやっていこうという話になっているはずだ、と話者は推測している。

ただし話者は、これもAI時代に始まったことではなく、2〜3年前からそうなっていると繰り返す。インサイドセールス(IS)では、大量にアポを取ればよかった時代は4〜5年前に終わっているという。今はAIを使って顧客を濃密にリサーチし、フィールドセールスに単にアポを渡すのではなく、顧客自身が気づいていない課題に気づかせ、「このサービスに乗らないとまずい」と思わせるところまで求められる。ほぼクロージングまで担う仕事になっている、と話者は説明する。

話者はさらに細かく分けて、インバウンド対応(話者の言うSDR)は高度化する一方、アウトバウンド、つまり外部に次々と電話をかける飛び込み型の営業は、社内の人材でやらなくなる可能性があると見る。作業的で付加価値が低いため、AIエージェントで自動化するか、営業代行会社に外部委託するようになるという。話者は、後者はすでに大手SaaSで見られる動きだと述べる。セミナーやタクシー広告などのマーケティング経由で問い合わせてきた顧客は取りこぼせないため、社内で鍛えた人材が対応する。その結果、これまでアウトバウンドで新規開拓する人材として行われてきたISのポテンシャル採用が絞られる可能性がある、と話者は補足する。

フィールドセールスとカスタマーサクセスの変化

フィールドセールス(FS)について、話者は、かつてはデモ画面を見せて「こんなことができます」と説明するだけの営業もいたが、今は大きく高度化していると言う。顧客の社内政治を突破するレベルが必要で、稟議書を顧客と一緒に作るのは当たり前、キーマンを特定して攻略していく仕事になっている。そこには接待や会食のような泥臭い仕事も多い。SaaSの営業はずっと社内にいるスマートな仕事だと誤解されがちだが、実際には接待で関係を深めてから攻略するような「ザ・法人営業」もやっている、と話者は指摘する。その泥臭い力量が今後さらに求められるという。

カスタマーサクセス(CS)も、問い合わせに対応するヘルプデスクではなく、SaaSを使って顧客の業務を変革していくコンサル的な仕事になっていく。話者によれば、現在コンサルレベルの仕事ができているのは、大手企業の中でもさらに大手の顧客を担当するCSに限られるようだが、今後はこれが広がっていく。SaaSとコンサルの領域が一部重なってくるほど高度化する、と話者は見ている。

話者は、こうした泥臭い仕事はなかなかAIにはできないので、SaaSもSaaSの営業も死なないと言う。一方で、それは単に良い話ではなく、仕事はかなり難しくなる。年収が平均より高く成長業界と言われる領域で働く以上、AIも活用しながら仕事は高度化し、「脳みそに汗をかいて」働かなければじわじわ落ちていく、と話者は述べる。

結論:SaaSの死は、あなたのキャリアの死ではない

最後に話者は全体を振り返る。SaaSは死なず、弱肉強食になるだけで、それは2年前から変わらない。株価フィーバーは一旦終わり、AIエージェントの3つの影響からは逃れられないが、勝ち組である深いSaaSは対策できる。営業の仕事はコンサル化していく。

そのうえで、一番伝えたいのは冒頭と同じく「SaaSの死はあなたのキャリアの死ではない」ということだと話者は言う。今日挙げたような浅いSaaSに在籍している人にとっても、その企業の死はキャリアの死ではない。大事なのは、所属企業がどうなっても関係ないくらい自分の価値を高めることであり、営業職なら本質的な営業スキルを身につけることだ。SaaS業界は、しっかり働けばそれが身につく業界だと話者は言う。万が一SaaSが死んでも、それは別のどこかが伸びているということであり、新しく伸びる領域では必ず営業担当者が必要になる。

「営業すら要らなくなる世界が来るかもしれない」と心配する人に対して、話者は、ネガティブな妄想を膨らませるより働いてほしいと答える。本質的な営業スキルを持つ営業担当者が不要になるなら、ほぼ全員が不要になり、SaaS業界どうこうの話ではなくなる。そのときには転職情報をYouTubeで解説している自分のような存在が真っ先に消えるので、「みんなで仲良く山奥で農業でもしましょう」と話者は冗談めかして語る。

話者が改めて呼びかけるのは、転職するつもりがあり内定の可能性もある人、特に営業職志望の人である。SaaSは死なないが、採用難易度は急に上がる可能性がある。話者はISのポテンシャル採用の縮小がいつか来ると思って取材を続けてきたが、意外にもまだ来ていない。それでも、そろそろ大きな波が来てもおかしくない、というのが話者の見立てである。「SaaS is dead」が怖いというだけで尻込みすれば機会損失になる。これが、動画を通じて話者が伝えようとしたことである。