技術ではなく「施工成果」を売る:TerraFirmaが建設会社として自律重機に取り組む理由

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概要

FoundXの番組「FoundX Review Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介している。今回取り上げたのは、SpaceX出身の2人が創業した建設スタートアップTerraFirmaである。番組の冒頭では、AIで情報を整理しているため一部に誤りがある可能性があり、事実を重視する場合は各自で一次情報を確認してほしいという断りが入っている。

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TerraFirmaは「地球のインフラを再構築し、最終的には火星にも対応した建設会社をつくる」と掲げている。解説役は、火星についてどこまで本気で考えているかは分からないと留保したうえで、この会社を選んだ理由を2つ挙げた。建設業界の課題に正面から取り組んでいること、そして垂直統合というモデルが面白いことである。番組の問いは、TerraFirmaがなぜロボットや自律化技術を売らずに自ら施工を請け負うのか、そのモデルは成り立つのか、という点にある。

現代の建設はなぜ遅くなったのか

解説役によれば、収録の数時間前に創業者と投資家が対談するYouTube動画が公開されていた。その冒頭では、パナマ運河の建設は10年、フーバーダムは4年、エンパイア・ステート・ビルは13カ月で完成したのに、今では同じような建設に7〜8年かかる、という対比が語られていたという。現代の建設が遅くなったことを問題の出発点に置いているわけだ。

背景として解説役は、米国で建設業の労働生産性が1965年以降、年率0.6%で低下してきたという数字を紹介した。熟練労働者の枯渇も進んでおり、2031年までに建設労働者の41%が引退する見込みだという。日本と似た状況だが、規模の大きさに解説役は驚いていた。

一方で、米国はいま建設ラッシュにある。老朽インフラの更新、再工業化、そしてデータセンター建設が重なっている。データセンター1棟の建設には数百人から数千人規模の人手が必要になることもあり、そこがボトルネックになりつつあるという。創業者はSpaceX出身で、ロケットと同じくらいインフラをどれだけ早く建設できるかが重要だという問題意識から、建設業を再構築しようと考えたと解説役は説明した。

技術が進歩したのに建設が速くならない理由として、解説役は人手不足と断片化を挙げた。人が足りないと、1人が複数の会社や工程を掛け持ちする。その結果として断片化が進み、調整が遅れ、待機や手戻りが増え、さらに人が必要になる。この悪循環を統合によって断ち切るのがTerraFirmaの大きな構想だ、というのが解説役の見立てである。火星を掲げる理由については、将来の宇宙での建設需要に向けて建設の自動化を進めたいという面と、いま注目されている宇宙のナラティブを資金調達や人材獲得に使いたいという面があるのではないか、と推測していた。

TerraFirmaが一言で何をしている会社かというと、土工・造成・解体である。自社で建設機械に後付けの装置を加えて半自動化し、その機械で作業する。ただし顧客への納品物は、あくまで土工や解体の最終成果だ。

課題の中心は「オーケストレーションの失敗」

解説役は、TerraFirmaが取り組む課題の核心を「オーケストレーションの失敗」と表現した。建設現場には元請、協力会社、運送会社、測量会社、地下設備の業者、重機レンタル会社など多くの主体が関わる。これらがうまく連動すれば工事は早く進むが、失敗すると大幅に遅れる。発注や外部委託で接点が増えるほど、指示待ちや重機待ちのロス、作業場所の競合、伝達ミスによる再施工などが起こりやすくなり、遅れが積み重なっていく。

このため人手不足は、単にオペレーターの人数が足りないという話にとどまらない。熟練者が複数の現場を移動する、現場監督に判断が集中する、協力会社との調整が遅れる、といった問題が重なり、オーケストレーションが回らなくなっている。

土工や造成は、建物、道路、変電所、工場など多くのプロジェクトの最初の工程になる。ここが遅れると後工程がすべて止まるため、プロジェクト全体への影響が大きい。重機はレンタルで増やせるが、それを安全かつ効率的に動かせる熟練者は増やせない。その結果、予算超過も起きる。TerraFirmaの狙いは、自動化・半自動化とオーケストレーションによって、熟練者1人が生み出せる施工量を増やすことだと解説役はまとめた。

聞き手から「人手不足と管理の問題のどちらに特に注力しているのか」と問われると、解説役は、おそらく現場管理とオーケストレーションの比重が大きいと答えた。少ない人数で多数の会社と工程を調整するところで非効率が増幅される、とTerraFirmaは見ている。だから半自動化だけでなく、計画の立て方や指示の出し方、機械の割り当てまで手がけようとしている。人数を減らすこと自体より、少人数で全体を動かせる仕組みをつくることが彼らの課題設定だ、というのが解説役の理解である。

最初の市場に土工・造成を選んだ理由

最初の市場を土工・造成にした理由について、解説役はプロジェクトの最初の工程であること以外にもいくつか挙げた。掘る、運ぶ、ならすといった反復作業が多く、自動化しやすい。土量、距離、標高差、勾配などで成果を測りやすい。遅れると後工程全体が止まるので、顧客にとっての痛みと価値が明確である。さらに、日本でも重機の遠隔操作の取り組みがいくつかあるように、既存の機械に後付けして試しやすい。こうした条件がそろっているため、最初に入る市場として土工が選ばれたのだろう、と解説役は述べた。

計画・遠隔管制・半自律重機の3層を統合する

解決策として、TerraFirmaは大きく3つの層を統合したシステムを構築している。

1つ目は「Mission Planner」で、AIを使った事前の施工計画ソフトウェアである。入札、積算、施工計画、シミュレーション、作業指示までを担う。解説役は、建設会社の利益は現場で早く作業することだけでなく、最初の見積もりを外さないことで決まる面が大きいため、入札と積算から手がけているのだと説明した。

2つ目は「Mission Control」で、施工中の管制を行う遠隔管制センターである。複数の重機、オペレーター、工程を、1人の熟練者が遠隔から管理する。

3つ目は「Accelerated Operations」で、既存の油圧ショベル、ブルドーザー、ローダー、ローラーなどに後付けの装置を取り付けて半自律化する取り組みだ。

この3層をフルスタックで垂直統合している点が特徴である。解説役によれば、前述の対談動画で創業者は、Caterpillarなどの機械そのものは問題ではなく、問題はオーケストレーションにあると語っていた。世界中のディーラーやレンタル拠点にはすでに大量の重機が配置されているので、それを使えば自社で車両を量産せずに展開できる、とも述べていたという。TerraFirmaが追加するのはセンサー、遠隔制御、安全停止、作業指示、半自律化といった知能と制御の部分であり、既存のOEMを敵に回さず、既存の整備網や機械を活用できる構造になっている。

聞き手は、後付けの半自律化に取り組む会社は日本にもあるので、PlannerとControlが特徴的に見えるとしたうえで、どこが特に重要かを尋ねた。解説役はPlannerの重要性を挙げた。Controlだけでは不十分で、Plannerが適切な工程を設計し、現場の重機がその指示どおりに実行して初めて価値になる。計画、管制、実行の閉ループをつくることが重要であり、遠隔操作そのものより、現場全体の待ち時間と干渉を減らすことに意味がある、というのが解説役の見方だ。

重機メーカーとは競合するのか

既存の重機メーカーが機械に知能を追加し始めたら競合になるのか、という質問に対して、解説役は、技術的には競合しうるし、技術販売の勝負ならOEMのほうが有利かもしれないと答えた。

ただしTerraFirmaには2つの対抗策がある。複数メーカーの機器に対応すること、そして技術ではなく施工成果を提供することだ。OEMはあくまで機械単位で見ている。上流に進出してくる可能性もなくはないが、おそらく機械単位の制御までにとどまるだろう。一方TerraFirmaはPlannerを持っているので、現場全体を最適化できる立場にある、と解説役は分析した。もっとも、競合関係が強まるとOEMとの関係が悪化し、APIを提供してもらえなくなるといったリスクはあるという。

なお宇宙については、ディーゼルエンジンが使えないため、専用の機械を開発する必要が出てくるだろうという話が動画の中で触れられていたと解説役は紹介した。

市場規模とテキサスから始める理由

市場規模について解説役は、最終的に狙うのは世界の建設市場全体だと述べた。11.39兆、16.11兆(2030年予測)という数字を挙げ、円に換算すると2000兆円規模になると話した。もちろんそのすべてがTerraFirmaの対象になるわけではない。当面の対象市場は米国の土工やインフラ造成といった巨大なインフラ更新需要で、最初に取りにいくのはテキサス州を中心とした商業施設や工業施設の単純な土工、敷地準備、解体である。住宅、エネルギー、輸送、製造、教育分野の案件にも取り組んでいるという。大きな受注残があるとも言っているが、案件数などは公表されていない。

テキサスを選んだ理由について解説役は、拠点がテキサスにあること、太陽光発電やデータセンターなどで建設需要が大きいことを挙げた。さらに初期のターゲットとして、作業が反復的で、成果を測りやすく、他業者との干渉が比較的少ない案件を狙っていることも挙げ、その条件とテキサスの相性が良いのかもしれないと述べた。

市場に対する仮説が崩れるとすればどんな場合か、という問いには、次のような可能性を挙げた。土工の単価が低く、後付け機器や遠隔管制のコストを回収できない。案件ごとの条件がばらばらで標準化できない。機械の輸送や整備のコストが人件費の削減分を上回る。オーケストレーション自体はうまくいったとしても、価格や現場の物理的な状況といった外部との接点にリスクが残る、というのが解説役の見方である。

ビジネスモデル:SaaSではなく施工を請け負う

ビジネスモデルは典型的なSaaSとは異なる。支払うのはプロジェクト発注者や元請で、一括請負、あるいは土量や時間に基づく単価契約で対価を受け取る。従来の下請と同じ契約形態である。

伝統的なSaaSであれば、建設会社にソフトウェアを販売し、導入、教育、運用は顧客側が担う。TerraFirmaは自社で工事を請け負い、顧客に行動変容を求めずに、自動化、制御、計画によって自分たちの原価構造を変える。解説役は統合の利点を2つ挙げた。1つは、技術が生む経済的な価値を、利用料ではなく案件の利益として取り込めること。もう1つは、ソフトウェア会社、重機会社、オペレーター、施工会社といった会社間のインターフェースを社内に取り込み、別々に調整する手間を減らせることである。

TerraFirmaは、少人数の人間が多数のロボットをオーケストレーションする会社を目指していると語っている。将来、地下配管や配電といった新しい作業が必要になれば、それをロボットのモジュールとしてつくり、共通の管制システムに追加していく構想もあるという。解説役はこれを、計画・管制の層と作業の層を分け、前者はデータで回し、後者は掘削や運搬などの個別モジュール(OEMの機械も含む)で対応する構造だと理解していた。

実績として、熟練オペレーター1人が3〜5台を監督し、人件費を抑えつつ機械を連続稼働させることで、オペレーター1人当たり最大300%の生産性向上を実現したとTerraFirmaは主張している。解説役は、これはあくまで最大値であり、平均的な案件の実績とは限らないと注意を促した。そのうえで、今後AIの自律性が高まって1人が同時に監督できる台数が増えれば、限界利益率が大きく向上するかもしれない、重機のエージェントがどんどん動くようなイメージが最終形ではないか、と述べた。

弱点は、ソフトウェア企業とは異なるコストと責任を負うことである。重機の改造、故障の修理、現場の人員の動員、保険、燃料などがすべて自社のリスクになる。聞き手が施工会社になることで特に負担になる点を尋ねると、解説役は事故、故障、天候、場合によっては再施工といった外部要因を自社で負わなければならないことを挙げた。仮に技術が完成したとしても、ソフトウェア会社とは異なるリスクを抱える。高い利益率が出るかどうかは、実際に単価や原価が下がっているかを見ていく必要がある、と解説役は述べた。

Human-in-the-Loopで「今すぐ現場に入れる」

最終的に目指すのはフルスタックで垂直統合された自律型の建設だが、現実にはHuman-in-the-Loopで進めている。建設現場では事前にすべてを予測できない。未知の埋設物、天候の変化、図面と現況の食い違いがよく起きる。あらゆる例外をAIだけで解決しようとすると、少数の難しい事例のせいで商用化が止まってしまう。そこでTerraFirmaは一般的な作業を自動化し、AIが迷ったら安全に停止させ、人間が遠隔から介入するモデルを採用した。その結果、今すぐできることから始められる。

解説役は、Human-in-the-Loopは自律化に失敗した結果ではなく、現在のAIを現場で使えるものにし、そこから学ぶための意図的な設計だと強調した。将来的には1人の人間が大量のロボットをオーケストレーションし、地球から火星の建設を管制するところまで構想しているという。ソフトウェア業界でエンジニアがAIエージェントの管理者になりつつある構造を、物理世界、特に建設・土木に持ち込む発想だ、と解説役はたとえた。熟練オペレーターの判断を切り捨てるのではなく、その能力を拡張するツールになっている点も大きいという。

自律性の高さは、人間の注意時間をどれだけ節約できるか、人間なしで機械がどこまで走れるかで決まる。遠隔介入が必要になった場面は、AIが苦手とする例外処理のケースであり、それが学習データになってAIが賢くなっていく、というシナリオもありうる。半自律化した重機を現場に投入することで、他では手に入らない現場データを取りにいく戦略でもある、と解説役は解釈した。聞き手も、今できることから急いで始めているのはデータを取るためだと考えると納得がいく、と応じた。

完全にAIだけで施工することを目指すのか、という問いに対して、解説役は、基本的には目指しているだろうとしつつ、物理世界では例外が多いため、99%は自動で進み残り1%で人間が替わる、という形は残るのではないかと答えた。責任が伴う判断や他業者との調整など、人間的な部分も残るため完全自律は難しいかもしれない。それでも、より自律性の高い状態を目指して、人間と機械の最も効率的な分担を探っていくのだろう、という見方だ。

戦略上の難所として、解説役は通信の問題も挙げた。重機の遠隔操作では通信や映像の遅延がどうしても発生しそうである。通信が切れたときの自動停止、複数回線の確保、現場への立ち入り管理、場合によってはサイバーセキュリティも必要になる。これらのリスクをどう軽減するかが問われるという。

「文明の基本工種」を順番に獲得するロードマップ

ロードマップの出発点は、テキサスでの土工・造成の請負である。解説役が面白いと感じたのは、創業者が語る「文明をつくるための基本要素」という考え方だ。土、水道・電気・ガスなどの地下設備、その上のコンクリートと鉄骨。これらを組み合わせれば、道路も工場も発電所も学校も病院も都市もつくれる、と創業者は言う。解説役はこれを、製品ラインを増やす戦略というより、文明を構成する基本的な工種を順番に獲得していく戦略だと捉えた。

フェーズ1の土工は、最も反復的で成果が分かりやすく、既存の重機を使いやすい。ここで既存重機を後付け改造し、遠隔管制と半自律化の運用データを蓄積しながら、着実にキャッシュを稼ぐ。フェーズ2では地下設備、コンクリート、構造用の鋼材など、土工以外のボトルネックへ対象を広げ、米国政府の海外案件や重要インフラにも展開する。フェーズ3は海外展開、そして月面や火星での遠隔によるインフラ建設である。解説役は「フェーズ3はいつ来るのか」とこぼしつつも、最も反復的で自律化しやすい土工でデータと収益を稼ぎ、徐々に複雑な工程へ移る堅実なアプローチだと評価した。

聞き手が土工の次にどう進むのかを尋ねると、解説役は、現場内の運搬や基礎の周辺など、土工に隣接する工程ではないかと答えた。地下設備は市場としては大きいかもしれないが、既設の埋設物に関わるリスクや責任が大きいので、いきなり入るより周辺から進めるのだろうという。

宇宙向けの事業がいつ始まるかについては、解説役は「今の自分には分からない」と率直に答えた。宇宙機関や輸送企業から具体的な要件が出た段階で対応していく形になるのではないか、まずは地球上で案件をこなすことが大事だろう、と述べている。既存のディーゼル駆動の建設機械は宇宙では動かないので、自社で機械をつくる必要があるはずだ。ただ、対談動画では火星での建設対象として、道路、鉱山、地下工場、発射台、発電所などに言及していたので、一応は考えているのだろうという。創業者NoahがSpaceXで得た洞察として、宇宙に行く前も行った後もボトルネックは建設にある、という発言も紹介された。

競争優位:施工責任、マルチOEM、現場データの組み合わせ

ポジショニングについて解説役は、TerraFirmaの最大の特徴は技術を提供する会社ではなく、施工成果を自ら提供する垂直統合型である点だと述べた。自律化技術の高さではなく、工事の責任を負うことが違いを生む。多くのロボット企業は建設会社にロボットや技術を販売しているので、そこが大きく異なる。

機械メーカーとは正面衝突せず、複数メーカーの機械を束ねられることも利点に挙げた。既存重機もレンタル機も使え、特定のOEMに依存せずに現場全体を管理できる。ただし、OEMが高度な自律機能や管制機能を標準搭載すれば技術の層はコモディティ化する可能性がある。その場合、TerraFirmaの差別化要素は施工の請負能力、顧客との関係、見積もりの精度へと移っていくかもしれない、と解説役は見ている。一方で、今から土質、天候、機種、作業指示といったデータを蓄積すれば、それが堀になる可能性もあるという。

優位性の要素として解説役が挙げたのは次の点である。施工、介入、結果をすべて自社で持つことで改善の閉ループを回せること。技術リスクを顧客に負わせない請負モデルは、契約で縛れば顧客にとって安心材料になること。複数OEMの既存重機を使える柔軟性(ただしそのための仕組みは必要)。ソフトウェアと現場運用を一緒に最適化できること。例外処理を人間に任せる設計で高い稼働率を出せること。そして「ロボットネイティブな建設会社」という新しさで、これは大手投資家から出資を受けている理由の1つでもあるのではないか、と解説役は推測した。

聞き手に最も大きな差別化ポイントを問われると、解説役は「まさに組み合わせ」だと答えた。既存技術と既存機械の統合、現場の管制、ロボットを使った施工のノウハウ、請負契約、データ。技術単体なら競合に追いつかれる可能性があるので、結果を保証できる組織能力まで含めて初めて堀と言える、というのが解説役の考えである。

参入戦略:完成品を待たず、有償工事から学ぶ

参入戦略の特徴は、完成したロボット製品を待たず、製品開発や販売より先に施工会社として市場に入った点にある。ハードウェアを完成させてから売るのではなく、重機を改造して現場に投入し、そこで学習していく。

初期に手がけたのは、Starbucksのような商業施設の単純な敷地造成などだった。創業初期は市販の弁当箱やタッパーウェアのようなケースに基板を入れた手づくりの装置を使い、見栄えや量産性より、最低限の機能を現場で検証することを優先したという。最初の顧客の獲得方法も独特で、建物のオーナーに「建物を解体させてほしい」と頼み込み、実際の有償案件をつくった。解説役はこれを非常に面白いと評した。売ったのはロボットの精密さや新しい機械ではなく、所定の量の土を納期と予算の範囲内で動かせたかという結果であり、反復的で単純な作業を請け負って対価を得た入り方が大きかった、という評価である。

聞き手は、こうした初期案件は個別対応の受託になりやすいが、それを単発で終わらせないにはどうすればいいかと尋ねた。解説役は、初期に個別対応が発生するのは避けられないとしたうえで、いくつかの工夫を挙げた。変更が起きるたびに標準モジュール、作業手順、見積もりテンプレートを改善する。同じ地域、同じ機種、同じ工種など、学習のループが回りやすい環境で受注する。件数が増えても準備コストが下がらなければモデルに問題があると判断して改善する。複数の案件を効率よく回す仕組みを事前に考えたうえで受けることが大事だという。

創業チーム:SpaceX出身の2人のNoah

共同創業者は2人とも「Noah」という名前だ。プリンストン大学の航空宇宙系の専攻で、ロボットの授業の担当教員からラボパートナーを組むよう言われて出会った。一方が「マイネームイズノア」と名乗ると、もう一方が「ミートゥー」と返したという逸話も紹介された。

2人はその後SpaceXに入社した。一方はStarshieldに、もう一方はStarlinkを経てStarshipに携わった。CEOはStarshipの側で、ペイロード区画、つまり機体上部にある貨物室を担当していた。

SpaceXのStarbaseで2人が感じたのは、巨大なロケットは速く作れるのに周辺インフラの建設が遅いという問題だった。新しい工場や発射台に何年もかかり、発射場に続く道路の建設にはロケットを4〜5機作るより長い時間がかかったという。品質も良くなかった。工場は借り物のテントで、オフィスは蚊や蜂のいる輸送コンテナ、水や電力は安定せず、道路は雨で浸水した。ロケットは速く作れるようになったのに周りのインフラが遅れているという米国の状況に課題を感じ、ここがイノベーションの障害になっていると痛感したことが創業につながった、と解説役は説明した。

初期チームは2人の創業者を中心に人材を集めて構成された。ハードウェア、ソフトウェア、現場運用を並行して回せ、第一原理思考を身につけた、組織の歯車にならないエンジニア集団をつくったという。建設業固有の知識は別途補ったようだ。

SpaceXの経験が建設業で生きる点として、解説役は次のものを挙げた。ハードウェア、ソフトウェア、運用を分断しない組織設計。実物を早く投入して現場や失敗から学ぶ姿勢。製造や運用のデータを次の設計に回す習慣。複雑な物理システムを第一原理思考で分解し、大きなミッションに取り組める人材であること。

逆に外部から補うべき点も挙げた。ロケットは比較的自社で管理できるものだが、建設現場には多くの関係者と明確な顧客がいて、地域も関わり、米国では州ごとに法令が異なる。技術性能より保守性、安さ、現場作業者の使いやすさが重視される場面もある。現場の暗黙知も補う必要がある。さらに、SpaceX流の速さを優先しすぎると、地上の工事で強く求められる安全と品質を損なうおそれがある、と解説役は指摘した。

学習の回し方:ハード・ソフト・現場を同時に改善する

TerraFirmaは当初から、完全な自律重機をつくることそのものではなく、建設を速く安くするという顧客の成果を基本仮説に置いていたようだ。現場から学んだのは、未知の埋設物、天候、他の作業員の立ち入りなど、例外が多すぎることだった。AIにすべての判断を任せると事業が停滞するので、人間を管制役としてループに残すのが最も現実的で最速の道だと判断したという。

解説役は、ハードウェア、ソフトウェア、現場オペレーションの3つすべてでBuild-Measure-Learnのループを回す必要があると述べた。TerraFirmaは既存重機への後付けによって新車両の設計や量産にかかる時間を省き、現場データを早く集めて運用とソフトウェアを改善している。計測するのは土量、労働時間、故障などさまざまな指標だ。タッパーウェア製の試作から始まったわずか4人のチームが、12カ月でプロトタイプを作り、オーナーから解体工事を受注し、実際の重機にレトロフィットし、遠隔操作センターを稼働させ、継続的な受注につなげた。短期間でループを回しながら案件も獲得した点を解説役は強調した。

聞き手が「完全自律ロボットから、建設を速く安くすることへのピボットと理解すればよいか」と尋ねると、解説役は、課題も解決策もそこまで大きく変わってはいないと思うと答えた。最初から完全自律の重機をどこまで作ろうとしていたかは分からず、人を含む施工システムを前提に、建設を速くするための自律重機を作ろうとしていたのではないか、という見方である。

ハードウェア企業が学習のループを速く回すために気をつけるべき点としては、対象の工種、地域、機種を絞り、1つの機材で学習を回すことを挙げた。介入、故障、品質、原価まで含めてデータ化しておくこと、同じ条件の案件を繰り返して変数を減らし、学びが次に生かされているかを確かめることもポイントだという。

資金調達と急拡大:Series Aで1億ドル

累計調達額は約1億1500万ドルで、Series Aで1億ドルを調達した。SpaceX、Anduril、Hadrianなどの関係者が個人投資家として参加しており、ディープテックやハードウェア系の人たちが多く入っているようだ。今後1年間で300人を採用する予定で、テキサス州に大規模な製造施設と遠隔管制センターを構築するという。技術開発だけでなく、建設会社としての規模拡大に資金を投じる急拡大フェーズに入っている、と解説役は説明した。

TerraFirmaは資本の軽いSaaS企業ではなく、現場の拠点、人員、設備、運転資金を必要とする。そのため、資金の使途はソフトウェア開発だけでなく、製造、現場オペレーション、建設チーム、半自律システムの開発者に広がっている。

聞き手が「1億ドル以上を調達しても、300人採用して開発もするなら十分ではないかもしれないのか」と尋ねると、解説役は、運転資金の問題があるうえ、複数案件を並行して回すことで学習のループが回ると考えればその分の資金も必要で、安全や品質を管理する部門も要るかもしれないと答えた。それでも、火星や文明、インフラをつくるという壮大なミッションに共感して集まる人はそれなりにいるだろう、とも述べた。

日本への応用:災害復旧、遠隔オペレーター、技能継承

番組では、日本への応用案をAIに考えさせた結果も紹介した。前提として、TerraFirmaの米国モデルはそのままでは日本に適用できず、狭い土地、小型重機、高齢化、災害対応に合わせる必要があるとされた。

A案は災害復旧に特化したサブコンである。国土交通省の無人化施工の延長として参入しやすいという分析だが、平時の稼働率を維持しにくく、収益化が難しいという弱点が指摘された。B案は遠隔オペレーターのネットワークで、地方の人手不足の解消に効くとされる。解説役によれば日本でもいくつかスタートアップが出てきているが、通信インフラをどうするか、事故時の責任をどう分担するかが課題になる。C案は重機レンタル大手との協業で、車両と拠点をすぐに活用でき、スケールが速いという利点がある一方、利益率はそれほど高くないだろうとされた。

日本独自の勝ち筋としてAIが示したのは、広大な土地を前提とする米国型ではなく、狭い土地や地下埋設物の多さといった日本の特性に合わせて小型重機を半自律化し、「手戻りゼロの造成」として売る特化型サブコンという戦略だった。

解説役は、日本でも建設業の高齢化が進んでいることに触れた。国土交通省の資料では55歳以上が36.6%、29歳以下が11.6%とされている。遠隔化や熟練者の能力拡張は求められているのではないかという。聞き手が遠隔化をどうすれば現場にスムーズに受け入れてもらえるかを尋ねると、解説役は、人を置き換えるのではなく、熟練者の技能拡張や作業支援として提示し、そういうメッセージで伝える必要があると答えた。実際に熟練者を置き換えることはできず、むしろ熟練者の動きから学びたいはずなので、置き換えにはならないだろうという。遠隔化の範囲を段階的に広げるなど、やりようはいろいろあるとも述べた。

3つの教訓と残る論点

解説役はまとめとして3つの教訓を挙げた。

1つ目は、技術ではなく結果や成果を売ることだ。技術を部品として既存産業に入れてもらうのは難しいので、顧客の導入障壁を下げるために、自らレガシー産業のプレイヤーである請負業者になる。建設の問題はショベルの操縦だけではなく、人、会社、重機、工程のオーケストレーションにある。課題を個々の作業ではなくシステム全体で捉え、それに対して成果を売る、という視点である。

2つ目は、完璧なAIを待たないことだ。例外処理は人間に残し、反復作業の効率化だけですぐにキャッシュを稼げるMVPを作る。技術的な精密さより現場での実用性を優先する。既存の重機はすでに十分な性能があるので再開発はせず、足りない知能の部分だけを加え、例外には人間が入る。既存産業の強い部分を壊さず、不足部分だけを補う姿勢である。

3つ目は、壮大なビジョンが武器になりうることだ。インフラや文明の構築という大きな目標は、泥臭いビジネスで最高水準の資金と人材を引きつける。ビジョンは単なる比喩ではなく戦略的なツールでもある、と解説役は述べた。同時に、SpaceXで感じた「ロケットは速く作れるのにインフラは遅い」という足元の問題を、大きな課題としてきちんと捉えている点も大きいという。

解説役は、レガシー産業のDXというとソフトウェアの提供を考えがちだが、テクノロジーで武装した泥臭い新世代のプレイヤーが直接市場を取りにいく動きが、建設、特に土木にも入りつつあるのではないかと述べた。ソフトウェア開発のAIエージェントのように、物理世界のAIエージェントが入りやすいところから入ってくるのかもしれない、とも付け加えた。

聞き手は、既存の施工会社の一部に入り込むのではなく、非常に効率的な施工会社そのものになるという発想は他の領域でも使えそうだと感想を述べた。「文明を順番につくっていく」というナラティブも魅力的で、大きな物語と結びつけると人を引きつけやすいのだろう、とも話した。解説役はそれに同意したうえで、足元のニーズをしっかり見ていること、そして課題を単純な重機の自動化にとどめずオーケストレーションの問題として捉えていることにも面白さがある、と締めくくった。

番組内で答えが出なかった論点も残っている。土工の単価で後付け機器や遠隔管制のコストを回収できるのか。OEMが自律機能を標準搭載したときに差別化がどこに移るのか。遠隔操作の通信や安全の問題をどう乗り越えるのか。そして宇宙での建設がいつ始まるのか。これらはTerraFirmaが今後の実績で示していくことになる。