gootの新しいアナログ温調はんだこてPX-211は、デジタル機PX-280の代わりになるか
イチケン / ICHIKEN太洋電機産業(gootブランド)が、温度調整だけに機能を絞ったアナログ制御のはんだこて「PX-211」を発売した。同社は2022年に、デジタル温調のペン型はんだこて「PX-280」を出している。それなのに、今回はあえて機能を削ってアナログ制御の製品を出したことになる。電子工作系YouTuberのイチケンは、デジタルとアナログで使い勝手がどれほど変わるのかという問いを立て、旧機種PX-201とPX-280を並べて比較し、実際にはんだ付けを試している。なお、この動画は太洋電機産業の提供である。
比較対象となる3機種
比較するのはPX-201、PX-280、PX-211の3機種で、いずれもセラミックヒーターを使い、温度調整ができるはんだこてである。
PX-201は2003年発売のロングセラーで、話者は今も現役で使っている人が多いだろうと話す。PX-280はイチケン自身が愛用している機種だ。撮影スペースや作業スペースを増やすたびに買い足し、これまでに3台を購入して、いずれも今も動いているという。発売当時は、ステーション型とほぼ同じ機能がペン型の本体に収まっている点が画期的だったと評価している。発売直後に公開したレビュー動画をきっかけにAmazonで品切れが続き、太洋電機産業の担当者からも動画を機に相当な数が売れたと聞いた、というエピソードも紹介されている。
PX-201との比較:実質的な後継機としての改良
イチケンは、PX-211をPX-201の後継機種のような位置づけだと考えている。
外見で目立つ違いはヒーター部分の長さである。PX-201はヒーター部が長く、はんだ付けはできるものの少しやりにくい。握る位置からこて先までの距離が短いほうがはんだ付けはしやすいので、この点ではPX-211が有利だと話者は説明する。
標準で付くこて先も異なる。PX-201は円錐形のB型で、悪くはないが実は少しはんだ付けしにくい。PX-211には標準でC型が付いている。対象にもよるが、このような形状のほうがはんだ付けしやすいため、最初からこれが付いているのは良いという評価である。
ヒーターからこて先への熱の伝わり方にも差がある。こて先を交換できる構造上、ヒーターとこて先のあいだにはどうしてもクリアランスが必要になる。PX-201はこの隙間がやや大きく、そのぶん熱を伝える効率が落ちる。PX-211も隙間はあるがかなり小さく、ヒーターとこて先がよく密着しているため、熱の伝達効率が高いと話者は見ている。
温度調整はどちらもダイヤル式だが、PX-201はダイヤルが小さく回しにくい。温度は頻繁に変えるものではないものの、こて先の熱容量だけでは足りないほど対象の熱容量が大きいときには、温度を上げることもある。そうした場面では、ダイヤルの大きいPX-211のほうが操作しやすい。ダイヤルはやや固めに作られていて、話者は手が触れたときに温度が簡単に変わらないようにするためだろうと推測している。
仕様面では、温度範囲がPX-201の250〜450℃からPX-211では200〜500℃に広がった。消費電力も70Wから80Wに上がっており、熱を奪われやすい対象にもより多くの熱を送れるようになったと説明されている。
PX-280との比較:本体サイズとケーブルの違い
PX-211には、最初からこて先用の耐熱キャップが付属するモデルもある。柔らかい素材でできていて簡単にはめられ、PX-280にも流用できる。
形状の違いは、ディスプレイの有無と操作部がデジタルかアナログかだけのように見える。しかし実際には本体がかなり小さくなっており、話者はこれが操作感に大きく影響すると指摘する。PX-280は本体がやや重いうえ、電源コードの出口が握る位置から離れているため、作業中にコードに引っ張られる感覚が少しある。ケーブルの付け根を見ると、PX-211のほうがグレードの高いケーブルガイドを使っているという。握る部分もPX-211のほうが細い。話者は、アナログ回路で機能を絞ったからここまで細くできたのだと説明している。
はんだ付け性能については、PX-211の開発者から「デジタルかアナログかの制御の違いはあるが、はんだ付け性能はほとんど同じにしている」という趣旨の説明を受けたと紹介している。2機種は同じシリーズなので、こて先も共通で使える。
デジタル制御にしかできないこと
PX-280にあってPX-211にない機能は、1℃単位の温度調整、スリープ機能、自動シャットダウンの3つである。話者は、こうした機能を持たせられることがデジタル制御の利点だとしている。
特に大きいのが温度の表示だ。PX-280は、厳密にはこて先ではなくヒーターの温度をリアルタイムで表示する。話者は「真似しないでほしい」と断ったうえで、こて先を急冷すると表示温度が下がる様子を見せた。熱容量の大きな対象をはんだ付けするとこて先温度はかなり下がるが、PX-280ならそれを数値で確認できる。PX-211はLEDが点滅するだけなので、設定温度は分かっても実際の温度は分からない。使う場面によってはPX-280のほうが良さそうだ、というのが話者の見方である。デジタル表示があるぶん「何かやってる感」も出る、とも付け加えている。
スリープ機能と自動シャットダウンも、意外と使う頻度が高いという。たとえば電子工作でデバッグしながらはんだこてを使うときは、電源は入っていても、実際にはんだ付けしていない時間のほうが長い。その間にスリープに入れば、こて先の酸化を防げる。電源を抜き忘れても、シャットダウン機能が自動で電力供給を止める。こうした点から、話者はPX-280のほうがより安心して使えるとしている。
価格と他社製品との関係
機能を絞ったぶん、PX-211は価格が安い。話者によれば、Amazonでの実売価格はPX-211が5,000円程度、PX-280が5,000円台後半である。
同クラスの他社製品としては、HAKKOのFX-600が挙げられた。直接の比較テストは行っていない。スペックで比べられるのは熱回復と電力で、PX-211は80W、FX-600は50Wである。ただし話者は、電力が大きいからといってはんだ付け性能が高いとは限らず、実際に使ってみないと何とも言えないと注意を促している。
両社の関係について、話者は興味深い点を挙げている。ペン型のデジタル温調はんだこてはPX-280が先に出し、その後HAKKOが似たデジタル版のFX-600Dを出した。話者はFX-600DがPX-280をかなり意識していると見ている。一方、アナログ温調の分野では、今回のPX-211のほうがHAKKOのFX-600シリーズをかなり意識した製品に見える、というのが話者の感想である。
加熱速度と温度精度の測定
実際の検証では、すべて鉛フリーはんだを使い、温度はすべて350℃に設定した。
最初は立ち上がりの速さのテストである。こて先にはんだを巻き付け、電源を入れてから溶けるまでの時間を比べた。PX-280とPX-211はほぼ同じ結果で、PX-201は少し遅かった。話者はその理由として、ヒーターの電力がやや小さいことと、こて先が大きく熱容量も大きめなことを挙げている。
次に温度計でこて先温度を測った。PX-201は368℃とやや高めだった。PX-280は表示も温度計も350℃前後で正確だった。PX-211は352℃で、こちらも良好だった。話者は、温度調整はやはりデジタルのほうが良いとしつつ、アナログも今回の実験では合っていたと述べる。そのうえで、実際に手元で使う分には±5〜10℃程度の範囲に収まっていれば問題ないだろうという考えを示した。
生基板テスト:こて先選びの誤りをあえて見せる
続いて、全面に銅箔が張られた生基板へのはんだ付けを試した。熱がどんどん逃げるため、かなり厳しい条件である。このテストでは、対象にどれだけ多くの熱を与えられるかを見られる。
PX-201はなかなかはんだが溶けず、溶けてもすぐ固まってしまった。予熱してから試しても、基板の温度がなかなか上がらず、はんだは濡れ広がらなかった。PX-280では、はんだ付け自体はできたものの、やはり濡れ広がりは悪かった。こて先を長めに当てて予熱しても大きくは変わらず、話者はこて先が対象に対して細すぎ、熱容量が足りないと説明する。PX-211も結果はPX-280とほぼ同じだった。
ここで話者は、今回はこて先の選び方が「完全に間違っている」と明かし、熱容量の大きいこて先に交換した。すると、はんだが大きく濡れ広がり、「全然別物」と言うほどの違いが出た。PX-211でも同じようによく濡れ広がり、仕上がりは交換前とはまったく違った。
話者はこの実験をあえて行った意図を、はんだ付けする箇所に合ったこて先を選ぶべきだと示すためだと説明している。基本的には熱容量が大きい、つまり太めのこて先のほうがはんだ付けはしやすい。小さい部品だからとこて先まで小さくすると、かえってやりにくくなることもあるという。
プリント基板へのスルーホール部品のはんだ付け
ここからはPX-211だけを使う。通常のスルーホール部品は、こてを当ててはんだを供給するだけで問題なく溶け、きれいに仕上がった。
次に、部品が大きく銅箔面積も広い、熱容量の大きなスルーホール部品を試した。熱容量が比較的小さい2番ピンは、少し予熱すれば先ほどよりやや溶けにくいもののはんだ付けできた。部品面までしっかりはんだが上がっていた。熱容量の大きい1番ピンは、はんだが溶けにくく濡れ広がりも悪かった。長くこて先を当てたにもかかわらず、部品面まではんだは上がらなかった。
そこで、イチケンがよく使う3BCに交換した。3BCはこて先の熱容量と先端の細さのバランスが良く、扱いやすいこて先だという。交換後は熱がよく伝わり、2番ピンはよく溶け、1番ピンも先ほどよりだいぶ溶けやすくなった。部品面にもしっかりはんだが上がった。話者は、こて先温度が下がらないように熱容量を大きくすることが、はんだ付けにとって非常に大事だと強調している。
直角型の新しいこて先
gootが最近出した変わった形のこて先も紹介された。先端が直角に曲がっていて、銅箔と部品の足の両方に効率よく熱を伝えられる形状である。
実際に当ててみると、銅箔と足の両方にきちんと接触した。こて先自体が非常に大きく熱容量も高いので、予熱が少なくて済み、はんだが溶けるスピードもとても速いと話者は評価している。はんだ面にも部品面にも問題はなかった。話者はスルーホール部品について、ある程度太めでしっかり熱を伝えられるこて先を勧めている。
表面実装部品のはんだ付け
表面実装部品として、抵抗とICを付けた。抵抗は、フラックスを軽く塗り、こて先に少しはんだを乗せてから、部品を滑らせるように置いて片側を仮付けする。反対側をはんだ付けしたあと、仮付けした側をもう一度加熱して完了させる。標準のこて先でも、手はんだならこれくらいできれば問題ない仕上がりだという。
ただし話者は、表面実装部品でもこて先を変えたほうがやりやすいとして、マイナスドライバーの先端のような形のD型を紹介した。D型のほうがはんだ量を調整しやすく、仕上がりもきれいになる。一方で、交換が面倒なときは太いC型やBC型をそのまま使うこともあるという。はんだこてを複数台持っているなら、用途ごとにこて先を変えたものを揃えておくと良いと勧めている。D型でも同じ手順で抵抗をはんだ付けした。
ICも基本の手順は同じである。仮止めしてフラックスを塗り、こて先に少量のはんだを乗せて足に押し当てていく。途中で少しブリッジしたが、解消して作業を終えた。標準のこて先でも問題なくできるものの、こて先に少しこだわると一段上のはんだ付けができる、というのが話者のまとめである。
この一連の作業を通じて、話者は普段使っているPX-280とPX-211で、はんだ付け性能の違いは感じ取れないと話す。一方で取り回しについては、握りが長めで太いPX-280より、細く握りやすいPX-211のほうが上だと評価している。
分解して内部を確認
分解すると、中にはプリント基板が1枚あるだけで、本当にアナログ回路だけで温度調整していることが分かった。話者はかなりシンプルな作りだとし、このくらい単純なほうが壊れにくく寿命も長いような気がすると述べている。
温度調整用の可変抵抗には「SH」の刻印があったが、メーカーは分からなかった。話者は、最初に壊れるとすれば可変抵抗の抵抗体が擦り切れる場合くらいだろうと見ている。ただし、ダイヤルを頻繁に回さなければ擦り切れないので、あまり心配はいらないという。ダイヤルは外すと向きが分かりにくくなるので注意が必要だと付け加えた。
電解コンデンサには「SUNCON」の表記があり、サン電子製だと話者は判断している。基板上のフラックスの残り方から、表面実装部品はリフローで、スルーホール部品は別工程ではんだ付けされていると推測した。太洋電機産業に確認したところ、スルーホール部品はロボットではんだ付けしているという回答だった。セラミックヒーターは単体で販売されているため、壊れても交換できる。
結論:性能は同等、取り回しと価格でPX-211も十分選択肢
イチケンの結論は、はんだ付け性能はデジタル制御のPX-280と比べて「正直ほとんど同じ」というものだ。そのうえで、全体の取り回しはPX-211のほうが使いやすいとしている。本体が軽くなり、握りが細くなって鉛筆に近い感覚で持てる。握る位置から電源コードまでの距離も短くなり、コードに引っ張られる感覚が減った。
一方で、実際のこて先温度の表示、スリープ、自動シャットダウンといったPX-280の機能は、デバッグ作業や電源の抜き忘れなどの場面で意味がある、というのも話者自身が挙げた点である。こうした機能差を踏まえつつ、話者は使い勝手と価格を考えればPX-211を選ぶのは「全然あり」だと締めくくった。
この動画はgootはんだこての太洋電機産業の提供でお送りします。
こんにちは。今日はgootブランドで有名な太洋電機産業から新しいはんだこてが出たので紹介していきます。こちらです。PX-211温調はんだこてです。最近のはんだこてとしてはかなりシンプルな、温度調整だけに機能を絞ったものとなっています。
実は太洋電機産業は2022年にPX-280というデジタル温調はんだこてを出しています。そのような経緯がある中で、今回のPX-211ではあえて機能を削ぎ落として、アナログ制御の温調はんだこてをリリースしてきたわけです。デジタルとアナログの2種類あるわけですが、使い勝手がどれくらい変わるのか、実際どうなのというところで、使いながらレビューしていきます。
まずはgootの製品ラインナップの中で似たような製品がいくつかありますので、それらを見ていきます。こちらです。PX-201、PX-280、そしてPX-211です。これらは全てセラミックヒーターを使っていて、温度調整ができるはんだこてです。
まずはPX-201です。PX-201については、現役で使っている人も多いのではないでしょうか。この製品自体は2003年に発売されたもので、かなり息の長いロングセラーの製品となっています。
そして次はこちら、PX-280です。実はイチケンも現役で愛用している製品です。撮影スペースとか作業スペースの増設に伴って、これまで3台買っていますが、全て現役で動いています。
この製品が出た当時は、ステーション型とほとんど同じ機能がこの中に全部入っているのは非常に画期的でした。
PX-280については発売直後にレビュー動画も撮影しています。その動画を公開した直後はAmazonでも飛ぶように売れて、在庫を補充してもすぐに売り切れてしまうという状態がしばらくの間続いていました。
太洋電機産業の人とも定期的にコンタクトは取っているのですが、動画がきっかけでものすごい数が売れたのは聞いています。実際担当者の顔も結構にやけていましたからね。実際に使っていても非常に素晴らしい製品かと思います。
そしてこちらが新発売のPX-211です。ここからはこれまでの製品と比べて、どのような点が変わったのかというのを見ていきます。
まずはPX-201との比較です。基本的にPX-211は、PX-201の後継機種のような位置づけかとイチケンは考えています。
外見的な違いについては、PX-201はヒーターの部分が長くなっていて、はんだ付け自体はできるのですが、若干やりにくいです。はんだ付けについては、基本的には握る位置からこて先までの距離が短い方が、はんだ付けはしやすくなります。そのため、はんだ付けのやりやすさについてはPX-211の方が有利です。
また標準で付いているこて先についても、違ったものが使われています。PX-201については、B型と呼ばれる円錐形状のものが使われていました。これは悪くはないのですが、実は少しはんだ付けはやりにくいです。PX-211ではC型のこて先が標準で付いています。はんだ付け対象にもよりますが、実はこのような形状のこて先の方がはんだ付けはやりやすいです。標準でこのようにはんだ付けがやりやすいものが付いているのは良いです。
またヒーターからこて先への熱の伝わり具合についても、少し変化があるようです。こて先を交換するときに、セラミックヒーターとこて先がこのように見えます。こて先を交換するために、ヒーターとこて先にどうしてもこういうクリアランスの部分が必要になってきます。PX-201はこのクリアランスが少し大きめなんですよね。要するにこて先へ熱が伝わる効率が落ちるということです。一方で新発売のPX-211はどうなっているかというと、このようにクリアランス自体はあるのですが、かなり少なくなっています。つまりヒーターとこて先がよく密着していて、熱を伝える効率が高いということです。
温度調整部分について見ていきます。温度調整については、どちらもダイヤルを回しての対応となります。しかしPX-201は調整のダイヤルが小さいので調整しにくいです。温度についてはそこまで頻繁に変えるものでもありませんが、こて先の熱容量の大きさだけでは対応できないぐらい、はんだ付け対象の熱容量が大きい場合には温度を高くすることもあります。そのようなときにPX-211は調整ダイヤルが大きいので操作はしやすいです。
ダイヤルの操作感は少し固めに作られています。これは手で擦れたときに温度が簡単に変わらないようにするためかと思います。
ちなみに温度調整の範囲も、PX-201は250℃~450℃でしたが、PX-211については200℃~500℃に拡張されています。消費電力については、70Wからこのように80Wにアップしています。より熱を奪われやすいはんだ付け対象でも、多くの熱を伝えられるようになっています。
次はこちら、PX-280とPX-211の比較です。付属品についてですが、PX-211の方は最初からこて先の耐熱キャップが付いているモデルもあります。このように柔らかい素材でできていて、簡単にパチッとはまります。ちなみにこの耐熱こて先キャップはPX-280へも流用可能です。
形状については、ディスプレイの有無と操作部分がデジタルかアナログかの違いだけかと思いきや、実は本体のサイズも結構小さくなっています。これは操作感にかなり影響する部分です。PX-280については本体が若干重いことと、あとは電源コードが握る部分から離れているので、操作しているときに少しコードに引っ張られるような感覚があります。
ちなみにケーブルの付け根部分を見てみると、PX-211の方がケーブルガイドにはよりグレードの高いものを使っています。このあたりが使い勝手にどう影響するのかも楽しみです。
また握る部分の形状については、PX-211の方が少し細くなっていて握りやすいです。アナログ回路で機能を絞っているので、ここまで細くできるということです。
はんだ付けの性能については、PX-211の開発者曰く、制御がデジタルかアナログかの違いはあるものの、はんだ付け性能についてはほとんど同じにしているとのことです。PX-280とPX-211では同じシリーズなので、こて先についても同じものを使い回せるように出来ています。
また機能面で見ると、PX-280でできてPX-211でできないものは、1℃単位の温度調整、スリープ機能、自動シャットダウンです。このような機能を持たせることができるのが、デジタル制御のメリットではあります。
特に温度については、PX-280は実はこて先の温度というか、ヒーターの温度をリアルタイムでモニターできます。これは真似しないで欲しいのですが、このようにこて先を急冷すると、表示されている温度が低下します。PX-211ではLEDが点滅するだけなので、設定温度は分かるけど、実際の温度は分からないというデメリットはあります。
PX-280のメリットは、特に熱容量の大きな物体をはんだ付けすると、こて先温度は結構下がります。それが数値でわかるというのが大きいです。PX-211のデメリットは、それが分からないということです。使う場所によってはPX-280の方が良さそうです。あとは、このようにデジタルで表示されている分、PX-280の方が何かやってる感は出ていますよね。
またPX-280に付いているスリープ機能とシャットダウン機能は、意外と使う頻度は高いです。例えば電子工作でデバッグをしながらはんだこてを使うときなどは、はんだこての電源を入れてはいますが、実際ははんだ付けをしていない時間の方が長いです。そんなときにスリープモードに入って、こて先の酸化を防いでくれます。また電源を抜き忘れたときには、シャットダウン機能で自動的に電力供給を止めるようになっています。そう考えるとPX-280の方が、より安心して使えるようにはできています。
PX-211は温度調整だけに機能を絞っているので、当然機能を絞ったことによって価格的には安くなっています。Amazonでの実売価格は、PX-211は5,000円程度、PX-280は5,000円台後半となっています。
他社の同ランクの製品とも比べてみます。今回のPX-211では、HAKKOのFX-600あたりが同じくらいの製品です。直接の比較はしませんが、見られるところとしては熱回復と電力です。PX-211は80W、FX-600は50Wです。ここで注意してほしいのは、電力が大きいからといって、はんだ付け性能が高いというわけではない点です。これについては実際に使ってみないと何とも言えないところではあります。
ちなみにこの2社で興味深い点があります。このPX-280のようなペン型のデジタル温調はんだこてについては、実は太洋電機産業のPX-280が先に出してきて、その後にHAKKOも似たような製品で、デジタル版のFX-600Dを出してきています。HAKKOのFX-600DはPX-280をかなり意識していると思います。アナログ温調はんだこてについては、太洋電機産業は今回PX-211のような製品を出してきたわけですが、よく見てみるとHAKKOのFX-600シリーズをかなり意識している製品なのかなというのは見てて思います。
ここからは実際にはんだ付けをしてみて、どんな感じなのかっていうのを確認していきます。今日使うはんだは全て鉛フリーはんだです。まずはこのようにこて先にはんだを巻いて、溶けるまでの時間を測定します。こて先の温度設定は全て350℃に設定しています。これで何を見るかというと、こて先の温度の立ち上がりを見ます。電源を入れてからどれだけ早く使えるかを見るためのものです。
まずはPX-280。溶けました。PX-211です。溶けました。そしてPX-201。溶けました。
このようにPX-280とPX-211は、温度の立ち上がりについてはほとんど同じ結果になりました。一方でPX-201の方は少し立ち上がりが遅かったです。ヒーターの電力が少し少ないというのも効いているでしょうし、あとはこて先が大きいです。熱容量も少し大きめになるので、温度が上がるまでに時間がかかります。
こて先の温度についても見ていきます。これも全て350℃に設定しています。まずはPX-201。368℃といったところですね。少し高めですね。次はPX-280。結構正確ですね。こての方も350℃になっているのですが、温度計の方も350℃ぐらいになっています。PX-211です。こちらも良いですね。温度352℃となっています。
温度調整については、やはりデジタルの方が良いですよね。アナログの方は実験では合っていましたけれども、実際に皆さんの手元で使う場合は、±5℃~10℃くらいの範囲で合っていれば問題ないのではないかとは思います。
次は生基板へのはんだ付けです。銅箔が一面にありますので、熱がよく逃げていきます。はんだ付けの条件としてはかなり厳しいものです。こて先の形状やこて先の熱容量などにもよりますが、このテストでは、はんだ付け対象にどれだけ多くの熱を与えることができるかというのを見ることができます。
ではいきます。まずはPX-201です。なかなか溶けないですね。溶けましたけど、結構難しいな、これ。はんだが結構固まっちゃいますね。次のはんだ付けに移る前に、一応このように水で冷やすということはします。
次2つ目、少し温めてからやりましょうか。予熱します。そしてはんだを入れていくと、でもやはりこの生基板の温度が上がるのがなかなか遅いのか、はんだはあまり濡れていかないですね。なかなか厳しい条件かとは思います。このように、はんだがなかなか濡れ広がっていかないようなはんだ付けとなりました。
次はPX-280です。いきます。やはりこちらも少し厳しいかな。なかなか濡れ広がっていかない感じです。はんだ付け自体はできているのですが、濡れ広がっていかないですね。
次は少し予熱してやってみます。こて先を少し長い間当てて、そこにはんだを供給していくと、あまり濡れ広がっていかないですね。こて先が少しはんだ付け対象に対して細すぎる、熱容量が足りないというのがあります。PX-280でも、はんだの方はなかなか濡れ広がっていかないようなはんだ付けとなりました。
そして最後、PX-211です。そしてはんだを供給していくと、基本的にはPX-280と同じなので、やはりあまり変わらないですね。次は少し予熱を多くしてみて、その後にはんだを供給していきます。これもやはりPX-280と同じなので、こんな感じです。
はんだ付けの様子を確認していますが、PX-211とPX-280ではほぼ変わらずです。今回の場合に関しては、こて先のチョイスが完全に間違っていますので、もっと熱容量の大きなこて先に変えてみます。実際こて先を変えると、このぐらい変わります。全然違いますね。はんだがよく濡れ広がっていってると思います。全然別物ですね。
こて先を変えてみると、PX-211についてもやはり同じような結果が期待できます。はんだを供給して、よく濡れ広がっていますね。良いのではないでしょうか。
実際にはんだ付けした箇所を見てもらうと、全く違いますよね。今回あえてこういう実験をしたのですが、はんだ付けする箇所に合ったこて先を選びましょうということです。基本的には熱容量の大きいこて先、つまり太めのこて先の方がはんだ付けはしやすいです。小さい部品にはんだ付けするからといってこて先も小さくしてしまうと、逆にはんだ付けがやりにくくなることもあります。
ここからはPX-211を使ってプリント基板のはんだ付けをしていきます。まずはこちら、スルーホールの部品をやっていきます。ではいきます。こてを当てて、はんだを供給すると、きちんと溶けていますね。隣も同じように、こてを当てて、はんだを供給と。全く問題ないです。こちらもこてを当てて、はんだを供給。良いですね。同じようにこてを当てて予熱、はんだを供給。OKです。
このように綺麗にはんだ付けができています。良いですね。
次はこちらの熱容量が大きなスルーホール部品もはんだ付けしてみます。部品自体も大きいですし、銅箔の面積もこのように広いです。ではいきます。2番の足の方が熱容量は少ないです。このように少し予熱して、はんだを供給。なるほど、先ほどより少し溶けにくいですね。はんだ付け自体はできています。そして次は1番の足です。こちらは熱容量が大きいのですが、どうでしょうか。予熱して、はんだを供給。さすがに少し溶けにくいですね。はんだの濡れ広がりが悪いです。そしてはんだを離すと、はんだ付け自体は問題なくできています。
2番の足を見てみると、このように部品面までしっかりとはんだが上がってきています。しかし熱容量の大きな1番の足を見てみると、先ほどより長い間こて先を当てていたにも関わらず、部品面まではんだは上がってきていないです。
次はイチケンがよく使う3BCのサイズで試してみます。3BCについてですが、こて先の熱容量と先端の細さのバランスが良くて、結構扱いやすいこて先です。では3BCでいきます。こて先を当てて、少し予熱、はんだを供給。良いですね。先ほどよりも熱がよく伝わっているのか、よく溶けます。そしてさらに熱容量の大きな1番。こて先を当てて予熱、そしてはんだを供給。先ほどよりもだいぶ溶けやすいです。やはりこて先温度が下がらないように、こて先の熱容量を大きくするのは、はんだ付けにとって非常に大事です。部品面にもしっかりとはんだが上がってきています。
さらにgootは最近このような面白いこて先も出してきています。このようにこて先が直角になっていて、銅箔と部品に効率よく熱を伝えられる形状のこて先です。実際に試してみます。こて先をこのように当てると、きちんと銅箔と部品の足に当たりますね。そしてはんだを供給。これは結構良いかもしれないです。当てて、そしてはんだを供給と。こて先自体がものすごく大きくて熱容量も高いんですね。予熱も少なくてすみますし、はんだが溶けるスピードもものすごく速いです。良いですね。
このように、はんだ面については問題ないですし、部品面についても見てみると、しっかりとはんだが上がってきています。このようにスルーホール部品については、ある程度こて先が太めで、しっかり熱を伝えられるものがおすすめです。
次は表面実装部品のはんだ付けです。抵抗とICをはんだ付けします。まずは抵抗からです。フラックスを軽く塗って、こて先には軽くはんだを供給しておきます。そこに部品を滑らせるようにして置いて、はんだ付けですね。OKです。反対側についても同じようにやります。はんだを供給して、そして部品にはんだ付け。最初にはんだ付けした方は仮はんだですので、もう一度このように加熱して、そして完了です。
実際のはんだ付けはこんな感じです。手はんだなので、これくらいできれば問題ないでしょうね。
表面実装部品についても、やはりこて先は変えた方がやりやすくて、このようなDタイプといって、マイナスドライバーの先端みたいな形状をしたこて先があります。Dタイプを使う方がはんだの量の調整がしやすく、仕上がりは綺麗になります。ただ、こて先を変えるのが面倒くさいときは、太いC型やBC型をそのまま使うこともあります。はんだこてを複数台持っている場合は、用途に合わせてこて先を変えたものをいろいろ揃えておくのが良いでしょう。
D型でも試してみます。フラックスを塗って、こて先に少量のはんだを供給。部品を置いて、はんだ付け。反対側も同じように、こて先に少量のはんだを供給して、そしてはんだ付けですね。最初に付けた方は仮はんだなので、もう一度はんだ付けをして終了です。
IC系の部品についても、はんだ付けの工程は基本的には変わりません。今回の場合は仮止めして、フラックスを供給して、こて先に少量のはんだを供給。このように押し当てていくと、良いですね。はんだ付けできています。他の足の部分についても同じです。フラックスを供給、こて先にはんだを供給して、こんな感じではんだ付けをしていくと。はんだを供給して、このように当てていくと、少しはんだブリッジしましたけれど、良いですね。ブリッジ解除。残りの足についても、はんだを少しこて先に供給して、そしてこのようにやっていくと。
標準のこて先でも問題なくできるとは思うのですが、こて先に少しこだわると、さらにレベルアップしたはんだ付けができるようになります。
ここまではんだ付けしてきましたが、普段使っているPX-280と比べても、今回使ったPX-211は、はんだ付け性能の違いは感じ取れないです。ほとんど同じです。一方で取り回しについてですよね。PX-280はこの握る部分が少し長めで太いんですよね。それに比べてPX-211は、このようにPX-280より細くて握りやすいんですよ。そのため全体的な取り回しについてはPX-211の方が上ですね。
次は分解して中身を確認します。このようになっています。プリント基板1枚が入っていて、本当にアナログ制御だけではんだこての温度調整をしています。かなりシンプルな作りをしているかなと思います。このくらいシンプルな方が、いろいろ壊れにくくて寿命も長いような気がします。
使われている電子部品を見ていきます。こちらは温度調整用の可変抵抗、SHの刻印があります。メーカーはどこでしょうね。一番最初に壊れるとしたら、可変抵抗の抵抗体が擦り切れて壊れるくらいでしょうね。ただ温度のダイヤルを回さなければ擦り切れませんので、そこについてはそんなに心配する必要はなさそうです。ちなみにこのダイヤルは取り外すと向きが分かりにくくなるので要注意です。
内部に電解コンデンサも使われていました。SUNCONと書いてあるので、サン電子の電解コンデンサです。ここら辺については良いのではないでしょうか。
プリント基板のフラックスの残り方を見てみると、表面実装部品はリフローはんだでやって、スルーホール部品は別途はんだ付けをしているようです。実際に太洋電機産業の人に聞いてみたら、スルーホール部品についてはロボットではんだ付けをしているそうです。
あとセラミックヒーターについては、部品が単体で売っていますので、壊れたとしても交換できます。
というわけで、太洋電機産業から新しく発売されたはんだこて、PX-211についてレビューしてきました。はんだ付け性能については、デジタル制御の機種であるPX-280と比較してきましたが、正直ほとんど同じです。全体的な取り回しについては、PX-211の方が使いやすいと思います。軽くなったというのもありますし、こての握る部分が細くなって、より鉛筆に近い感覚で握れます。握る部分から電源コードまでの距離が短くなっているので、電源コードから引っ張られるような感覚も少なくなっています。使い勝手の部分と価格を考慮しても、PX-211を選ぶのは全然ありですね。
ちなみに太洋電機産業からは別の新発売製品が続々と送られてきているので、そちらのレビュー動画も近いうちに公開予定となっています。
動画の最後に太洋電機産業からプレゼントのお知らせがあります。今回新発売製品のコラボ記念ということで、こちらの新発売PX-211が抽選で当たります。応募については太洋電機産業の公式Xに詳細がありますので、そちらも併せてぜひチェックしてみてください。
ちなみに今日紹介した製品のAmazon購入リンクも概要欄にありますので、そちらもよろしくお願いします。
それでは最後まで動画のご視聴ありがとうございました。
記事公開
