gootの新しいアナログ温調はんだこてPX-211は、デジタル機PX-280の代わりになるか

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概要

太洋電機産業(gootブランド)が、温度調整だけに機能を絞ったアナログ制御のはんだこて「PX-211」を発売した。同社は2022年に、デジタル温調のペン型はんだこて「PX-280」を出している。それなのに、今回はあえて機能を削ってアナログ制御の製品を出したことになる。電子工作系YouTuberのイチケンは、デジタルとアナログで使い勝手がどれほど変わるのかという問いを立て、旧機種PX-201とPX-280を並べて比較し、実際にはんだ付けを試している。なお、この動画は太洋電機産業の提供である。

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比較対象となる3機種

比較するのはPX-201、PX-280、PX-211の3機種で、いずれもセラミックヒーターを使い、温度調整ができるはんだこてである。

PX-201は2003年発売のロングセラーで、話者は今も現役で使っている人が多いだろうと話す。PX-280はイチケン自身が愛用している機種だ。撮影スペースや作業スペースを増やすたびに買い足し、これまでに3台を購入して、いずれも今も動いているという。発売当時は、ステーション型とほぼ同じ機能がペン型の本体に収まっている点が画期的だったと評価している。発売直後に公開したレビュー動画をきっかけにAmazonで品切れが続き、太洋電機産業の担当者からも動画を機に相当な数が売れたと聞いた、というエピソードも紹介されている。

PX-201との比較:実質的な後継機としての改良

イチケンは、PX-211をPX-201の後継機種のような位置づけだと考えている。

外見で目立つ違いはヒーター部分の長さである。PX-201はヒーター部が長く、はんだ付けはできるものの少しやりにくい。握る位置からこて先までの距離が短いほうがはんだ付けはしやすいので、この点ではPX-211が有利だと話者は説明する。

標準で付くこて先も異なる。PX-201は円錐形のB型で、悪くはないが実は少しはんだ付けしにくい。PX-211には標準でC型が付いている。対象にもよるが、このような形状のほうがはんだ付けしやすいため、最初からこれが付いているのは良いという評価である。

ヒーターからこて先への熱の伝わり方にも差がある。こて先を交換できる構造上、ヒーターとこて先のあいだにはどうしてもクリアランスが必要になる。PX-201はこの隙間がやや大きく、そのぶん熱を伝える効率が落ちる。PX-211も隙間はあるがかなり小さく、ヒーターとこて先がよく密着しているため、熱の伝達効率が高いと話者は見ている。

温度調整はどちらもダイヤル式だが、PX-201はダイヤルが小さく回しにくい。温度は頻繁に変えるものではないものの、こて先の熱容量だけでは足りないほど対象の熱容量が大きいときには、温度を上げることもある。そうした場面では、ダイヤルの大きいPX-211のほうが操作しやすい。ダイヤルはやや固めに作られていて、話者は手が触れたときに温度が簡単に変わらないようにするためだろうと推測している。

仕様面では、温度範囲がPX-201の250〜450℃からPX-211では200〜500℃に広がった。消費電力も70Wから80Wに上がっており、熱を奪われやすい対象にもより多くの熱を送れるようになったと説明されている。

PX-280との比較:本体サイズとケーブルの違い

PX-211には、最初からこて先用の耐熱キャップが付属するモデルもある。柔らかい素材でできていて簡単にはめられ、PX-280にも流用できる。

形状の違いは、ディスプレイの有無と操作部がデジタルかアナログかだけのように見える。しかし実際には本体がかなり小さくなっており、話者はこれが操作感に大きく影響すると指摘する。PX-280は本体がやや重いうえ、電源コードの出口が握る位置から離れているため、作業中にコードに引っ張られる感覚が少しある。ケーブルの付け根を見ると、PX-211のほうがグレードの高いケーブルガイドを使っているという。握る部分もPX-211のほうが細い。話者は、アナログ回路で機能を絞ったからここまで細くできたのだと説明している。

はんだ付け性能については、PX-211の開発者から「デジタルかアナログかの制御の違いはあるが、はんだ付け性能はほとんど同じにしている」という趣旨の説明を受けたと紹介している。2機種は同じシリーズなので、こて先も共通で使える。

デジタル制御にしかできないこと

PX-280にあってPX-211にない機能は、1℃単位の温度調整、スリープ機能、自動シャットダウンの3つである。話者は、こうした機能を持たせられることがデジタル制御の利点だとしている。

特に大きいのが温度の表示だ。PX-280は、厳密にはこて先ではなくヒーターの温度をリアルタイムで表示する。話者は「真似しないでほしい」と断ったうえで、こて先を急冷すると表示温度が下がる様子を見せた。熱容量の大きな対象をはんだ付けするとこて先温度はかなり下がるが、PX-280ならそれを数値で確認できる。PX-211はLEDが点滅するだけなので、設定温度は分かっても実際の温度は分からない。使う場面によってはPX-280のほうが良さそうだ、というのが話者の見方である。デジタル表示があるぶん「何かやってる感」も出る、とも付け加えている。

スリープ機能と自動シャットダウンも、意外と使う頻度が高いという。たとえば電子工作でデバッグしながらはんだこてを使うときは、電源は入っていても、実際にはんだ付けしていない時間のほうが長い。その間にスリープに入れば、こて先の酸化を防げる。電源を抜き忘れても、シャットダウン機能が自動で電力供給を止める。こうした点から、話者はPX-280のほうがより安心して使えるとしている。

価格と他社製品との関係

機能を絞ったぶん、PX-211は価格が安い。話者によれば、Amazonでの実売価格はPX-211が5,000円程度、PX-280が5,000円台後半である。

同クラスの他社製品としては、HAKKOのFX-600が挙げられた。直接の比較テストは行っていない。スペックで比べられるのは熱回復と電力で、PX-211は80W、FX-600は50Wである。ただし話者は、電力が大きいからといってはんだ付け性能が高いとは限らず、実際に使ってみないと何とも言えないと注意を促している。

両社の関係について、話者は興味深い点を挙げている。ペン型のデジタル温調はんだこてはPX-280が先に出し、その後HAKKOが似たデジタル版のFX-600Dを出した。話者はFX-600DがPX-280をかなり意識していると見ている。一方、アナログ温調の分野では、今回のPX-211のほうがHAKKOのFX-600シリーズをかなり意識した製品に見える、というのが話者の感想である。

加熱速度と温度精度の測定

実際の検証では、すべて鉛フリーはんだを使い、温度はすべて350℃に設定した。

最初は立ち上がりの速さのテストである。こて先にはんだを巻き付け、電源を入れてから溶けるまでの時間を比べた。PX-280とPX-211はほぼ同じ結果で、PX-201は少し遅かった。話者はその理由として、ヒーターの電力がやや小さいことと、こて先が大きく熱容量も大きめなことを挙げている。

次に温度計でこて先温度を測った。PX-201は368℃とやや高めだった。PX-280は表示も温度計も350℃前後で正確だった。PX-211は352℃で、こちらも良好だった。話者は、温度調整はやはりデジタルのほうが良いとしつつ、アナログも今回の実験では合っていたと述べる。そのうえで、実際に手元で使う分には±5〜10℃程度の範囲に収まっていれば問題ないだろうという考えを示した。

生基板テスト:こて先選びの誤りをあえて見せる

続いて、全面に銅箔が張られた生基板へのはんだ付けを試した。熱がどんどん逃げるため、かなり厳しい条件である。このテストでは、対象にどれだけ多くの熱を与えられるかを見られる。

PX-201はなかなかはんだが溶けず、溶けてもすぐ固まってしまった。予熱してから試しても、基板の温度がなかなか上がらず、はんだは濡れ広がらなかった。PX-280では、はんだ付け自体はできたものの、やはり濡れ広がりは悪かった。こて先を長めに当てて予熱しても大きくは変わらず、話者はこて先が対象に対して細すぎ、熱容量が足りないと説明する。PX-211も結果はPX-280とほぼ同じだった。

ここで話者は、今回はこて先の選び方が「完全に間違っている」と明かし、熱容量の大きいこて先に交換した。すると、はんだが大きく濡れ広がり、「全然別物」と言うほどの違いが出た。PX-211でも同じようによく濡れ広がり、仕上がりは交換前とはまったく違った。

話者はこの実験をあえて行った意図を、はんだ付けする箇所に合ったこて先を選ぶべきだと示すためだと説明している。基本的には熱容量が大きい、つまり太めのこて先のほうがはんだ付けはしやすい。小さい部品だからとこて先まで小さくすると、かえってやりにくくなることもあるという。

プリント基板へのスルーホール部品のはんだ付け

ここからはPX-211だけを使う。通常のスルーホール部品は、こてを当ててはんだを供給するだけで問題なく溶け、きれいに仕上がった。

次に、部品が大きく銅箔面積も広い、熱容量の大きなスルーホール部品を試した。熱容量が比較的小さい2番ピンは、少し予熱すれば先ほどよりやや溶けにくいもののはんだ付けできた。部品面までしっかりはんだが上がっていた。熱容量の大きい1番ピンは、はんだが溶けにくく濡れ広がりも悪かった。長くこて先を当てたにもかかわらず、部品面まではんだは上がらなかった。

そこで、イチケンがよく使う3BCに交換した。3BCはこて先の熱容量と先端の細さのバランスが良く、扱いやすいこて先だという。交換後は熱がよく伝わり、2番ピンはよく溶け、1番ピンも先ほどよりだいぶ溶けやすくなった。部品面にもしっかりはんだが上がった。話者は、こて先温度が下がらないように熱容量を大きくすることが、はんだ付けにとって非常に大事だと強調している。

直角型の新しいこて先

gootが最近出した変わった形のこて先も紹介された。先端が直角に曲がっていて、銅箔と部品の足の両方に効率よく熱を伝えられる形状である。

実際に当ててみると、銅箔と足の両方にきちんと接触した。こて先自体が非常に大きく熱容量も高いので、予熱が少なくて済み、はんだが溶けるスピードもとても速いと話者は評価している。はんだ面にも部品面にも問題はなかった。話者はスルーホール部品について、ある程度太めでしっかり熱を伝えられるこて先を勧めている。

表面実装部品のはんだ付け

表面実装部品として、抵抗とICを付けた。抵抗は、フラックスを軽く塗り、こて先に少しはんだを乗せてから、部品を滑らせるように置いて片側を仮付けする。反対側をはんだ付けしたあと、仮付けした側をもう一度加熱して完了させる。標準のこて先でも、手はんだならこれくらいできれば問題ない仕上がりだという。

ただし話者は、表面実装部品でもこて先を変えたほうがやりやすいとして、マイナスドライバーの先端のような形のD型を紹介した。D型のほうがはんだ量を調整しやすく、仕上がりもきれいになる。一方で、交換が面倒なときは太いC型やBC型をそのまま使うこともあるという。はんだこてを複数台持っているなら、用途ごとにこて先を変えたものを揃えておくと良いと勧めている。D型でも同じ手順で抵抗をはんだ付けした。

ICも基本の手順は同じである。仮止めしてフラックスを塗り、こて先に少量のはんだを乗せて足に押し当てていく。途中で少しブリッジしたが、解消して作業を終えた。標準のこて先でも問題なくできるものの、こて先に少しこだわると一段上のはんだ付けができる、というのが話者のまとめである。

この一連の作業を通じて、話者は普段使っているPX-280とPX-211で、はんだ付け性能の違いは感じ取れないと話す。一方で取り回しについては、握りが長めで太いPX-280より、細く握りやすいPX-211のほうが上だと評価している。

分解して内部を確認

分解すると、中にはプリント基板が1枚あるだけで、本当にアナログ回路だけで温度調整していることが分かった。話者はかなりシンプルな作りだとし、このくらい単純なほうが壊れにくく寿命も長いような気がすると述べている。

温度調整用の可変抵抗には「SH」の刻印があったが、メーカーは分からなかった。話者は、最初に壊れるとすれば可変抵抗の抵抗体が擦り切れる場合くらいだろうと見ている。ただし、ダイヤルを頻繁に回さなければ擦り切れないので、あまり心配はいらないという。ダイヤルは外すと向きが分かりにくくなるので注意が必要だと付け加えた。

電解コンデンサには「SUNCON」の表記があり、サン電子製だと話者は判断している。基板上のフラックスの残り方から、表面実装部品はリフローで、スルーホール部品は別工程ではんだ付けされていると推測した。太洋電機産業に確認したところ、スルーホール部品はロボットではんだ付けしているという回答だった。セラミックヒーターは単体で販売されているため、壊れても交換できる。

結論:性能は同等、取り回しと価格でPX-211も十分選択肢

イチケンの結論は、はんだ付け性能はデジタル制御のPX-280と比べて「正直ほとんど同じ」というものだ。そのうえで、全体の取り回しはPX-211のほうが使いやすいとしている。本体が軽くなり、握りが細くなって鉛筆に近い感覚で持てる。握る位置から電源コードまでの距離も短くなり、コードに引っ張られる感覚が減った。

一方で、実際のこて先温度の表示、スリープ、自動シャットダウンといったPX-280の機能は、デバッグ作業や電源の抜き忘れなどの場面で意味がある、というのも話者自身が挙げた点である。こうした機能差を踏まえつつ、話者は使い勝手と価格を考えればPX-211を選ぶのは「全然あり」だと締めくくった。