SaaS起業家がバイオ生産に挑むbaCta:「空気と水からあらゆる分子を作る」構想と、アスタキサンチンから始める理由
東京大学FoundXFoundX Review Startup IdeaCastは、海外のスタートアップのアイデアをAIで分析し、起業を考える人の参考として紹介する番組である。番組冒頭では、AIで情報を整理しているため一部が古いか誤っている可能性があり、事実を重視する場合は各自で確認してほしいという断りが入る。今回取り上げたのは、フランス・パリ拠点のbaCta(バクタ)だ。紹介者がこの会社を選んだ理由は二つある。バイオものづくりに個人的な関心があったこと、そして行政向けSaaSの創業者がAIを武器にディープテックへ参入している点が面白いと感じたことである。回の中心にある問いは、巨大なビジョンを掲げる会社が最初にどの市場から入るのか、そしてソフトウェア出身の起業家がバイオ領域で何を武器にできるのか、という点だ。
前置き:スケールを阻むのは資金不足ではなく需要不足
本題の前に、話者の一人が欧州の大学に関するレポートの感想を話した。欧州のスタートアップが競争力を高め、自立するうえで大学がどんな役割を担えるかを論じた内容である。話者が面白いと感じたのは、スケールが難しい原因を資金不足ではなく需要の欠如に求めている点だった。レポートによれば、大学のアクセラレーターは支援先の資金調達を手伝うだけでは足りない。誰が最初の顧客になるのか、実証の後に誰が買うのかまで設計し、学内外の企業や部門を巻き込む必要がある。
レポートはこの考え方を「ベンチャーカスタマージャーニー」と呼び、補助金にとどまらず、研究開発、試作、初期導入までを一続きで支援し、公的機関が最初の顧客になる仕組みを提案している。話者は、顧客のところまでマネジメントできている支援はまだ少なく、こうした仕組みが必要だと感じたという。このレポートは、FoundXのスタッフ向けにAI経由で届く資料の中から見つけたもので、自分では絶対に見つけられなかったと話者は振り返る。聞き手は、顧客を重視する姿勢はFoundXが創業当初から言い続けてきたことであり、欧州のディープテックでも同じ課題があるのだと受け止めた。
baCtaの概要:微生物を「プログラム可能な分子工場」に
番組の紹介によれば、baCtaはAIと遺伝子組み換え技術を使い、コードで設計した精密発酵に取り組むバイオものづくり企業である。設立は2024年1月で、2026年3月時点のシードラウンドで700万ユーロを調達し、累計調達額は1,030万ユーロに達している。
同社は「ソフトウェアとハードウェアの融合」を掲げ、微生物をプログラム可能な分子工場に変えることを目指す。特徴として紹介されたのが「ゲノムからファクトリーまで」を一気通貫で最適化するという考え方である。聞き手がこの言葉の意味を尋ねると、紹介者は次のように説明した。実験室で優秀な菌株のゲノムを設計するだけでは終わらせず、その菌株が工場の大型タンクという環境でも狙いどおりに機能し、量産できるところまでをAIで予測し、最適化する、という意味だという。
今がタイミングだとされる理由は二つ挙げられた。一つは、気候変動や地政学リスクによって、石油や希少資源に依存する既存のサプライチェーンの脆弱さが表面化していること。もう一つは、AIモデルと合成生物学の組み合わせによって、菌株開発における予測のスループットが向上していることである。スループットが上がる理由を聞かれた紹介者は、機械学習モデリングの進化とラボの自動化・ロボティクスを組み合わせることで、過去のデータから有望な菌株を他社より少ない試行回数で見つけられる土台が整った、と説明した。同社の狙いは、ディープテックのバイオ生産にSaaS的なアジャイル開発とデータ駆動を持ち込み、従来かかっていた膨大な試行錯誤のコストを減らすことにある。
課題:合成品の環境負荷と天然品の高コスト
現時点でbaCtaが提供しようとしているのはアスタキサンチンである。ターゲット顧客は、化粧品、サプリメント、動物用飼料などを展開するグローバルブランドの原料調達担当者とされる。アスタキサンチンは抗酸化作用が強く、化粧品、サプリメント、ペットフードのほか、サーモンの色付けのために養殖にも使われている。
既存の製法には二つある。石油由来の合成品は安価だが、製造時の環境負荷が高く、クリーンラベルや自然志向を求める消費者のニーズに合わない。一方、微細藻類から作る天然品は自然由来でプレミアム感があるものの、設備投資(CAPEX)も運用コスト(OPEX)も重く、高コストになる。baCtaは、合成品の環境負荷と天然品の高コストという業界のトレードオフを解消しようとしている。
微細藻類からの抽出がなぜ高いのかという問いに対し、紹介者は次のように説明した。藻類の培養には広い敷地が必要で、光や気候環境の制御も求められる。さらに、目的成分を抽出・精製する下流工程(DSP:ダウンストリームプロセス)にも設備投資と運用コストがかかる。収量について紹介者は、藻類では1リットルあたり5g取れるかどうかという水準であるのに対し、baCtaでは1リットルあたり100g程度と大幅に多く取れ、設備も減らせるようだと述べた。ただし、この数字を口にする際には言い直しがあり、紹介者自身も確信を持った言い方ではなかった。
グローバルブランドのクリーンラベルへの支払い意欲は本当に高いのか、という質問も出た。紹介者は、しっかり確認できた部分ではないと断ったうえで、次のような見立てを示した。大量消費される飼料向けでは価格が最優先されるが、化粧品や体内に取り込むサプリメントといった高付加価値の領域では、天然由来やサステナビリティがブランド価値に直結するため、一定のプレミアムを払う意欲はあるのではないか。
解決策:天然品質を合成品並みのコストで
baCtaの価値提案の核は、天然品と同等の品質を合成品と同等のコストで提供する「ドロップイン代替品」である。その中核技術として、AIによる学習・設計とロボティクスによる構築・評価を組み合わせた独自プラットフォーム(説明欄の表記ではBACTA4C)を開発しているという。
技術的な差別化として二点が紹介された。一点目は、AIモデルでゲノム領域の「暗黒物質」と呼ばれる未解明の部分まで探索し、菌株の遺伝子組み換えを高速に進めて開発サイクルを短縮すること。二点目は、培養という上流工程だけでなく、経済性を左右する抽出・精製の下流工程(DSP)の低コスト化まで含めて全体を設計していることである。DSPがなぜ重要なのかについて、紹介者は、アスタキサンチンのような機能性分子の製造では、収益性を大きく左右するのは発酵そのものではなく、できた成分を抽出・精製し安定化する工程のコストであり、そこを最適化しなければ利益が出ないからだと説明した。
トラクションとしては、設立から短期間でミリリットル規模からリットル規模の検証を終え、現在はフランス国内のパートナーと提携してパイロット規模に拡大しようとしている段階だという。スケールアップのリスクについて紹介者は、微生物発酵では規模が大きくなると環境要因が変わり、収率や品質が急に落ちることが多く、そこが乗り越えるべき壁になると述べた。
市場:1,600億円のアスタキサンチンから400億ドルの天然ゴムへ
番組の紹介では、初期ターゲットであるアスタキサンチンの市場規模は世界で16億ユーロ(日本円で1,600億円以上)とされる。将来の拡張先は天然ゴムなどの産業用原料で、こちらは400億ドル規模の市場とされた。市場成長のドライバーとしては、EUを中心とした脱炭素・脱石油の規制強化、消費者の「脱石油化学」ラベルへの需要シフト、気候変動や地政学リスクによるサプライチェーンの不安定化の三点が挙げられた。
なぜいきなり天然ゴムを狙わないのか。紹介者によれば、baCtaは当初は天然ゴム市場を狙うと言っていた。しかし天然ゴムのようなバルク素材では、必要な量が桁違いに多く、価格も1銭単位の競争になる。そうなると初期のスケールアップのリスクと負担が大きくなりすぎるため、まずは小ロットで高単価のアスタキサンチンに着目したという。アスタキサンチンの用途の中でも、養殖向けは価格競争になりやすいため、まずはサプリメントと化粧品を狙っているとも説明された。
ビジネスモデルと戦略:CAPEXライトとプラットフォーム型
収益源は、化粧品、栄養補助食品、食品メーカーへのBtoB原料販売で、最終的には合成品と同等のユニットエコノミクスを目指す。コスト面ではCAPEXライト戦略を採り、自社で巨大な発酵設備を急いで建てるのではなく、パートナーの既存設備や委託生産を使って初期の固定費を抑えている。紹介者が面白い点として挙げたのは、多くのバイオスタートアップが陥りがちな「自社工場を建ててCAPEXが膨らむ」という罠を避けていることだった。さらに、最初の分子であるアスタキサンチンでプラットフォームと下流工程のノウハウを確立すれば、二つ目、三つ目の分子を開発するときの限界費用が下がっていくモデルだという。
パートナー設備を使うデメリットについて聞かれた紹介者は、設備のカスタマイズ性が下がること、製造スケジュールがパートナーに依存すること、中長期的には自社生産より利益率が下がることが、現時点で想定されるリスクだろうと答えた。
戦略面では、単一製品のメーカーではなく、あらゆる分子を合成できる基盤を作るプラットフォーム型を狙い、その最初の証明としてアスタキサンチンを選んだ。AIを使った菌株設計や研究開発は自社で内製し、量産は外部の産業パートナーに任せるハイブリッド型で、リスクとコストを分散させている。10〜20年後の理想像は、空気、水、炭素といった持続可能な資源から、あらゆる産業用分子をオンデマンドで合成する「バイオベースのシンセサイザー」が世界中に普及した状態だという。紹介者はこれを、ITの世界でソフトウェア基盤が普及したように、微生物に特定のDNAプログラムを組み込むだけで、必要な化学物質をいつでもどこでもクリーンに量産できる生産基盤のことだと説明した。
AIを強みにする会社は他にも多いが、容易に真似されない仕組みはあるのか、という質問も出た。紹介者の答えは、baCtaはAIのアルゴリズムだけでなく、ラボの自動化と工場での実データをループさせて学習する独自のデータ収集の仕組みを構想している、というものだった。ただし詳細な情報はあまり得られなかったとも付け加えている。
ロードマップ:3フェーズで段階的に拡大
戦略の基本は、少量・高単価の分子で生産、規制クリア、販売のサイクルをいち早く回し、ノウハウと資本を蓄積してから巨大市場に挑むことである。フェーズ1ではリットル規模での実証、独自DSPの確立、ハードルの高い認証プロセスの開始を進め、自社のAI駆動型バイオ生産プラットフォームが合成品に勝てるコストとスピードで機能することを証明する。フェーズ2では産業パートナーと組んで100立米規模のタンクでパイロット生産と商業生産を始め、ユニットエコノミクスの黒字化を狙う。フェーズ3では、プラットフォームの実証を終えたうえで、本来のビジョンである天然ゴムなどのバルク市場への本格展開とグローバル化を目指す。
認証の難しさについて紹介者は、特に欧州では食品・サプリ用途で「何由来か」が厳しく問われ、新規の微生物由来成分は安全性の証明に長い時間とコストがかかるため、大きな障壁になっていると説明した。天然ゴムへの展開時期については、公開情報では具体的な時期や大規模生産のロードマップは開示されていない。アスタキサンチン事業が成功した後に段階的に進むのではないか、というのは紹介者の推測である。
100立米がどの程度の規模かという質問には、紹介者は10万リットルの水量で、25mプールより少し大きいくらいとたとえた。研究室のフラスコが数リットルであることを考えると、次元の異なる工場レベルのタンクになるという。
競合とモート:発酵で作れるだけでは勝てない
ポジショニングを整理すると、既存の微細藻類由来品は環境負荷が低いが高コスト、合成品は低コストだが環境負荷が高い。baCtaはその間で、低コストかつ低環境負荷の位置を狙う。差別化要素は五つ挙げられた。
- AIによる予測スループットの向上で開発期間を短くすること
- 独自のDSPで抽出・精製工程を最適化し、低コスト化すること
- 法規制や消費者感情に配慮した非GMO対応
- アセットライト戦略
- SaaS出身の起業家とバイオの専門家からなるチーム
一方で、まだ初期段階で量産実績が確定していないことが今後の課題だと紹介者は指摘する。北米には発酵・酵母由来で先行する競合(字幕では「ネクストファーム」「LCY」と聞こえる企業)もあり、単に発酵で作れるというだけでは勝負にならない。紹介者の見立てでは、先行企業によって発酵でアスタキサンチンを作る市場が成立しうることはすでに証明されている。そのため、baCtaはより低いコスト、より速いスケール、明確な規制クリアで勝負する必要がある。baCta自身は勝てる理由として、AIによる開発スピード、下流工程を含めたコスト競争力、資本効率のよいアセットライト戦略を打ち出しているという。
参入戦略:高価格帯の化粧品・サプリブランドから
初期ターゲットは化粧品と高価格帯サプリメントのブランドである。クリーンラベルや天然由来への支払い意欲が高く、初期のやや高い製造コストを吸収しやすいことが選定理由とされた。製品形態としては、大量消費・低単価の飼料向けではなく、付加価値の高い酵母由来の「フリーフォーム」アスタキサンチンを選んだという。フリーフォームの意味を聞かれた紹介者は、自分も詳しくは分かっていないと断ったうえで、アスタキサンチンが脂肪酸と結合していない状態を指し、酵母由来の特徴として語られることがあると説明した。形態の違いによって吸収率などが変わり、製品設計やブランドの訴求に影響するという。
初期顧客の獲得に向けては、フランス国内の産業パートナーとの提携を通じて、製造設備と既存サプライチェーンへのアクセスを確保した。PMFの指標は、顧客の要求を満たしつつ合成品並みのユニットエコノミクスを達成できるか、主要ブランドと長期供給のコミットメントを結べるか、の二点とされる。パートナー企業側が組む動機について紹介者は、詳しくは語られていないと前置きしたうえで、一般論として、既存設備を有効に稼働できること、新しいサステナブル素材の最先端技術に触れられること、将来の供給元としてのポジションを確保できることを挙げた。
創業チーム:独学でバイオを学んだSaaS起業家
番組が特に面白いと強調したのが、創業チームの補完性である。CEOのマシュ・ノエ氏(字幕表記に基づく)は行政向けSaaSを創業して売却まで経験した人物で、ソフトウェア的な事業構築、資金調達、AIの応用を得意とする。共同創業者のマリー氏はエコール・ポリテクニック出身のPhDで、合成生物学の知見に加え、規制対応やラボマネジメントの経験も持つという。
紹介者によると、ノエ氏はイグジット後、生活水準を下げずに環境負荷を減らす豊かさを実現するため、エネルギーや原材料の分野で起業したいと考えていた。その中で合成生物学や、コロナ禍で注目されたmRNAワクチンに出会い、調べ込むうちにバイオものづくりにたどり着いた。バイオのバックグラウンドはなかったため、オンラインのオープンコース、YouTube、論文で生物学と化学を独学したという。その後、フランス国立保健医学研究所などの研究機関と連携して技術的な接点を得て、「バイオ生産のボトルネックはAIによる予測とアセットライト化で解決できる」という仮説を立て、マリー氏と組んで創業に至った。自前のラボがない状態から、研究機関との連携で仮説検証を進めたとされる。
ノエ氏は自らを単なるバイオ研究者やAI開発者ではなく、「細胞というハードウェアに、AIで最適化したDNAというソフトウェアを実装する起業家」と位置づけ、IT業界で培った効率化やデータ活用の手法を持ち込んでいるという。聞き手が「ビジネスサイドの人がものすごく勉強して研究者を巻き込んだパターンか」と尋ねると、紹介者はそのパターンだと答え、何をどう勉強したのかは個人的にも気になると述べた。IT出身者が加わる利点については、AI企業の創業者がエンジェル投資家に名を連ねていることから、アジャイル開発やデータ駆動という考え方を時間のかかるバイオ業界に持ち込む新規性が評価されているのではないか、と紹介者は見る。優秀な科学者を共同創業者に迎えたことも、チームへの信頼につながっていると考えている。
ピボット:天然ゴムからアスタキサンチンへ
創業当初の2024年、baCtaは天然ゴムの代替という大きなインパクトを前面に出していた。しかし量産や規制のハードルを学ぶ中で方針を転換する。ゴムのような素材は量と規制のハードルが非常に高いため、短期間で市場投入し収益化できる高価値分子の商業化にシフトした。あわせて、ディープテック企業が陥る「死の谷」を避けるため、既存の産業パートナーと連携するCAPEXライトの方向へ舵を切ったという。マイルストーンとしては、2024年1月に設立、同年10月にプレシード調達、2026年3月にシード調達となっている。
このピボットは失敗による方向転換なのか、という質問に対し、紹介者は、公開情報を見る限り失敗というより、天然ゴムという究極の目標は変えずに、最初に商業化して利益と実績を出す対象を、より現実的な高価値分子に設計し直したと説明されている、と答えた。VCの記事の中には同社を天然ゴムの代替品として紹介しているものもあり、プレシードの時点では天然ゴムを掲げて調達したのだろうと紹介者は推測する。投資家の受け止め方については、投資家はアスタキサンチンや天然ゴムそのものではなく、AIによるバイオ生産プラットフォームの構築に共感しているため、最初のターゲットの変更は事業リスクを下げる賢明な判断として受け取られたようだという。聞き手はこれを「最後に登りたい山が変わっていないならよい、ということか」と言い換え、紹介者もそれに同意した。
資金調達:累計約16億円、Mistral AI創業者も参加
調達額は、2024年のプレシードで330万ユーロ、2026年3月のシードで700万ユーロで、累計は日本円で約16億円に達する。紹介者は、アーリーステージのディープテックとしては強い資金基盤だと評価する。成功要因については、単なる精密発酵ではなく、生成AIによって産業バイオの開発速度と成功確率を変えるプラットフォームというナラティブが評価されたのだろうと推測している。
投資家には著名VCのほか、Mistral AIの創業者などAI領域のエンジェル投資家も参加している。紹介者は、フランス発の有力な生成AI企業の創業者が参加していることを、baCtaのAIアプローチが技術的にも評価され、欧州のAIエコシステムから支援を受けているシグナルと受け取れると述べた。現在はラボレベルから100立米規模のパイロット・商業レベルへ移り、スケールアップに挑む段階にある。
日本で同じアイデアをやるなら
番組恒例の「日本で同じアイデアで起業するなら」のパートは、AIによる分析結果として紹介された。AIの見立てでは、日本には発酵と下流工程の伝統的な職人技と長年のデータの蓄積があり、より高い水準で勝負できる可能性がある。展開の順序としては、まず巨大市場ではなく、化粧品原料や機能性素材、たとえば漢方成分や和素材の代替といった高付加価値の物質を選んでAIラボを構築する。次に自社工場を持たず、国内メーカーの既存発酵設備を発掘してPoCを行う。そのうえで、ブランド企業や素材メーカーと早期から共同開発を進め、初期の納入につなげる、という流れが示された。
紹介者が個人的に面白いと感じたのは、AIが出した案の一つだった。日本酒や醤油などの蔵元で遊休の発酵タンクがあれば、そのインフラを活用することでCAPEXライトにできるのではないか、というものである。聞き手が「本当にできるのか、全然違う気もする」と疑問を示すと、紹介者は、どの程度の改造が必要かは分からないと認めた。無菌性、撹拌、通気といった微生物培養の条件に適合するかの検証や設備の改修は必要になるが、ゼロから建てるよりはよいかもしれない、という程度だという。そのうえで、ここは計算できないと留保した。
baCtaから学べる三つのポイント
最後に紹介者は、baCtaから学べる点を三つにまとめた。一つ目はローンチ戦略の徹底である。「空気と水から何でも作る」という壮大なビジョンを持ちながら、実際の入口には高利益率の分子を冷静に選んでいる。二つ目はR&Dのソフトウェア化で、AIや自動化を単なる業務効率化にとどめず、工場で量産できる確率を上げるという競争優位の源泉にまで高めている。三つ目はアセットライトなスケールで、ディープテックにつきものの重い設備投資を避け、既存インフラやパートナーシップを使って成長への道筋を描いている。
実践への示唆として紹介者が挙げたのは、解決したい巨大な課題と、明日からでも売れる製品とを分けて考えることだった。最初から巨大な課題に挑むのではなく、そこからバックキャストして今何ができるかを順序立てて考える、という意味である。また、微生物を生き物ではなく、入力と出力を持つプログラム可能な工場として捉える発想は、他の企業にも当てはまるかもしれないと述べた。
聞き手は締めくくりに、まったく違うITの起業家が猛勉強してバイオものづくりに入り、最初のターゲットを変えながらも大きな山を登り続けている姿は、今まさに日本でも求められているアプローチではないかと感想を語った。紹介者も、猛勉強すれば案外つながれるというのは学べるポイントだと応じ、回を終えた。
皆さん、こんにちは。FoundXの馬田です。
はい、同じく富田です。今日は私が雑談をできたらと思うんですが、今日はデマック大学のロムストラテジアクションというレポートの感想をお話しできたらと思います。
このレポートが、欧州のスタートアップがより競争力を強めたり自立するという時において、大学がどういう役割ができるかを論じたようなレポートになっているんですが、面白かった点というのは、スケールが難しいのは資金不足じゃなくて需要がないという点を説いていて、なので大学のアクセラレーターや大学としては、支援するような会社さんに対して、資金調達とかだけではなくて、誰が最初の顧客になるか、実証した後に誰が買うかといったところで、学内外の企業さんとか部門さんをどう巻き込むかまで設計しないといけないというお話を書いています。
それで言っているのがベンチャーカスタマージャーニーという考え方というか単語を出していて、これは何かというと、補助金だけじゃなくて、R&Dして試作して初期導入までをやっていって、公的機関が最初に顧客になるような仕組みを提案しているとか構想しているんですね。なかなか顧客までをマネジメントするのはできていないなというのは思うところで、そういうのが必要なんだろうなと思ったという感想になります。はい。
どこで見つけてきたんですか、これ?
これはFoundXのスタッフ用にレポートがAI経由で入ってくるんですけど、そこで見て、探したというか見つけたようなものになります。
AIが役立ってますと。
そうですね。このレポートは多分自分では絶対見つけられないので、というのが。はい。
顧客というお話は、FoundXの創業というか最初から馬田さんも言っているところですけど、そこはディープテックというか、ヨーロッパでも同様なんだなというのは思いました。というところで、アイデアキャストのコーナーに入っていけたらと思います。
FoundX Review Startup IdeaCastは海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介する番組になります。これからアイデアを考える方たちのご参考になればと思います。最初にディスクレーマーです。AIを活用して情報を整理しているので、一部の情報は古かったり間違ったりしている場合があります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べていただくようお願いいたします。このポッドキャストはあくまでそこからご自身のアイデアの参考情報とか考え方を引き出すことを目的としています。
はい。今日紹介するスタートアップですが、baCtaというものになります。
こちらは今回はなぜ選んだんでしょうか?
ちょっとバイオものづくり系の文脈で個人的に興味があったというところと、創業者の方がSaaS出身の方でして、この人がAIを用いてディープテックに参入するというところが結構面白いなと思って選びました。というところで、早速紹介に入っていけたらと思います。そうですね。
今回ですが、このbaCtaはフランスのパリが拠点になります。AIと遺伝子組み換え技術によって、コードにプログラミングされた発酵技術、精密発酵の会社で、バイオものづくり系のことをやっているところになります。2024年の1月に設立されて、2026年3月時点で、シードラウンドとして700万ユーロ、全体では1030万ユーロを調達した勢いのある企業になっています。
では全体像についてお話しします。全体像ですが、baCtaは、ソフトウェアとハードウェアの融合を掲げて、微生物をプログラム可能な分子工場に変えるというような構想です。菌株レベルではなくて、ゲノム・トゥ・ファクトリー、ゲノムから工場までを一気通貫で最適化するような思想を持っています。はい。
というところで、気候変動とか地政学リスクによって、石油価格あるいは希少資源に依存する既存サプライチェーンの脆弱性が顕在化しているというところから、タイミングがいいというところになっています。また、技術的な背景として、AIモデルと合成生物学の組み合わせによって菌株を開発する予測スループットが向上しているというところも理由に挙げられます。インサイトとしては、ディープテックのバイオ生産にSaaS的なアジャイル開発、データ駆動を持ち込むというところで、従来かかっていた膨大な試行錯誤のコストを減らそうというところになります。
このゲノム・トゥ・ファクトリーって初めて聞いた気もするんですが、具体的にはどういう意味なんでしょうか?
そうですね、baCtaは、実験室で優秀なゲノムを設計するというだけではなくて、それが実際の工場の大型のタンクの環境でも思い通りに機能し量産できるところまでを見据えて、AIで予測・最適化するというところを唱えているそうです。
この後説明があるかもしれませんが、なぜ予測スループットの劇的な向上というものが見込めるんでしょう。
そうですね。機械学習のモデリングの進化と、ラボの自動化、ロボティクスを組み合わせることで、過去のデータから有望な菌株を他社さんより少ない試行回数で見つけられるような土壌が整ったというところがあるようです。
baCtaの課題についてです。ターゲット顧客ですが、今のところはというところなんですが、化粧品、サプリメント、動物用飼料などを展開するグローバルブランドの原料調達担当者になっています。課題ですが、baCtaは現在アスタキサンチンを提供しようとしています。このアスタキサンチンなんですが、高価値な天然アスタキサンチンの調達コストは高くなっているところに加えて供給の不安があります。アスタキサンチンは抗酸化作用があって、化粧品とかサプリメント、あとは飼料にも使われているそうなんですが、既存のソリューション、今どうやって作っているかというところでは、まず合成品、石油由来の合成品だと安価ではありますと。一方で作る時にかかる環境負荷が高く、消費者のクリーンラベル、自然志向・由来に合致しないというところがあります。一方で天然のものから作ることもできますと。それは微細藻類から作ることになるんですが、これは自然由来でプレミアム感もあるんですが、バイオとか抽出などの設備、CAPEX、またOPEXも非常に重くて、高コストになってしまうというところがあるそうです。
baCtaはこのアスタキサンチンが抱える合成品の環境負荷と天然品のコスト高という業界のトレードオフを解消しようとしているというところになるそうです。
まずはアスタキサンチン、サプリメントとかに使われているあれですよね。
そうですね。
から入っていくって感じなんですね。
はい。この後ちょっとお話しするんですけど、狙うところとしては天然ゴムを目指しているということのようです。
グローバルブランドのクリーンラベルへの支払い意欲。これ本当にEUは高いんですかね?
いや、そうなんですよ。そこはきちっと確認できているところではないかなとは思うんですが、ただ飼料向け、大量消費されるような飼料向けだと価格が最優先されるんですが、化粧品あるいはサプリメント、体に入れるというものの高付加価値の領域だと、天然由来とかサステナビリティがブランドの価値にも直結するので、一定のプレミアムを払う意欲はあるのではないかなと思います。
微細藻類とも比較されてましたが、微細藻類からの抽出が高価な理由は何なんでしょう?
微細藻類を培養するために敷地も必要ですし、光とか気候環境の制御というところが必要になってくるというところがCAPEXみたいなところで、プラスその目的の成分を抽出して精製するダウンストリームプロセス、DSPというところにも設備投資と運用コストがかかるそうです。ちょっと1Lあたり5g取れるかぐらいの感じらしくて、それがbaCtaだと1Lで、すみません、100gとかというところで、すごく多く取れて、設備も減らせるというところのようです。
こういった課題に対して解決策をこのように唱えています。baCtaですが、価値提案の核としては、天然と同等の品質を合成のものと同等のコストで提供するドロップインの代替品を実現しようとしています。その際のコアテクノロジーですが、BACTA4Cと言われるプラットフォームを作っていまして、AIで学習・設計して、プラスロボティクスで構築・評価を行うという独自のものを作っているそうです。
技術の差別化の要素としては、1点目がAIですね。AIのモデルでゲノム領域の暗黒物質というところまで探索して、圧倒的なスピードで菌株の遺伝子組み換えを行って開発サイクルを短縮するというところが差別化の要素になっているそうです。また2点目ですが、上流の培養するところだけではなくて、経済性を左右するような抽出・精製の下流の工程ですね。DSPを低コスト化するというところまで含めて全体を設計しているというところになるそうです。実際トラクションとしては、設立から短期間でミリリットルからリットル規模の検証は終了させていて、累計で1030万ユーロの資金調達をしているそうです。現在、フランス国内のパートナーと連携して、立米規模のパイロット規模に拡大しようとしているというところに当たるそうです。
この下流工程DSPの最適化が重要なのはどういった理由なんでしょうね。
アスタキサンチンなどの機能性分子の製造においては、経済性、収益性を大きく左右するのが、作るという発酵の工程ではなくて、できた成分を抽出・精製・安定化するところのコストが大きくなっているそうで、そこを最適化するのが収益を上げるために必要ということのようです。
ラボレベルから次のスケールアップは結構大きい感じがしますが、どういったところがリスクになってくるんでしょう?
いや、そうですよね。かなり規模が変わってくるので、そうなんですよね。微生物の発酵、酵母の発酵で生成しているんですが、これがスケールアップする時に環境の要因が変わってくるので、収率あるいは品質というところが急激に低下することが多いそうなんですね。ここがちょっと乗り越えるべき壁になるというか、リスクになると考えられています。
市場です。先ほどもお伝えしたんですが、初期のターゲット市場としてはアスタキサンチンの市場を選定しています。この市場規模自体はグローバルで16億ユーロ、日本円だと1600億円以上の規模があると言われています。将来的な拡張先としては、天然ゴムとかあるいはその他の産業用の原料市場を狙っているそうで、こちらは400億ドル規模になるような市場になっているようです。これらの市場の成長のドライバーですが、3点ありますと。1点目がEUを中心とした環境規制の強化ですね。脱炭素化とか脱石油化の要請です。2点目が消費者の脱石油化学ラベルへの需要のシフトです。3点目が気候変動、地政学的なリスクに伴うサプライチェーンの不安定化、既存のサプライチェーンから違ったものを模索していくことになります。
いきなり400億ドルの天然ゴム市場を狙わない理由とかあるんでしょうか?
そうですね。当初は天然ゴム市場を狙っていると言っていたそうなんですが、ただ天然ゴムのようなバルク素材だと必要な量が桁違いに多い、プラスその価格も1銭単位で競争することになると。そうなると初期のスケールアップのリスクと負担がすごく大きくなってしまうといったところがあったそうで、なのでまずは小ロットで高単価なアスタキサンチンに着目したそうです。
アスタキサンチン、サプリメントとかに使われているという話にさっき触れましたけれども、他にはどういったところに使われているんでしょう?
そうですね。抗酸化作用というのが強いらしくて、化粧品とかサプリメント、ペットフードとかに加えて、サーモンの色をつけるために養殖にも使われているそうです。
だからマーケットがそこそこあるってことなんですね。
ですね。養殖のところはただ結構価格競争になってしまうので、サプリメント、化粧品というところをまずは狙っているそうです。
baCtaのビジネスモデルです。収益構造は、化粧品、栄養補助食品、食品メーカーへのBtoB原料販売になります。最終的には合成品と同等のユニットエコノミクスを目指しているそうです。コスト構造ですが、CAPEX-Lightの戦略を採用しています。自社で巨大な発酵設備を急いで建設するのではなくて、パートナーの既存の設備あるいは委託生産を活用することで初期の固定費を抑えているそうです。収益性が変化するところがありまして、最初の物質アスタキサンチンでプラットフォームと下流工程のノウハウを確立すれば、次の2つ目、3つ目の分子の開発時には限界費用がより減ってくるというモデルを取っているそうです。面白いのが、多くのバイオ系スタートアップが陥りがちな、自社工場を建設することによってCAPEXが大きくなってしまうというところを回避しているという点になります。
とはいえパートナーの既存設備を使うことにはデメリットもそれなりにあると思うんですが、どういったことを想定されているんですかね。
ですね、設備のカスタマイズ性が下がってしまうというところと、製造のスケジュールがパートナーに依存してしまうところ、また中長期的には自社で作った時よりも利益率が下がるというところが、今のところはリスクとして考えられているのではないかと思います。
戦略です。戦略型なんですが、プラットフォーム型を狙っています。単一製品のメーカーではなくて、あらゆる分子を合成できる基盤を構築して、その最初の証明、ウェッジとしてアスタキサンチンを選定しています。内部・外部活用というところでハイブリッド戦略を取っていて、AIを活用した菌株の設計とか研究開発R&Dは自社で内製しますが、一方で量産するところは外部の産業パートナーを活用することにしています。そうやってリスクとコストを分散させているということのようです。理想像、10年20年後としては、空気、水、炭素といった持続可能な資源から、あらゆる産業用分子をオンデマンドで合成するバイオベースのシンセサイザーが世界中に普及したような状態を描いているそうです。
このバイオベースのシンセサイザー、具体的にはどういう
そうですよね。baCtaが唱えているところで言うと、ITの世界でソフトウェアの基盤が普及したように、様々な微生物に特定のDNAプログラムを組み込むだけで、必要な化学物質がいつでもどこでもクリーンに量産できるような生産基盤のことを言っているそうです。
あとはR&Dで、AIみたいなことを強みとして挙げられているみたいですけれども、結構他のところも言っているのかなと思っていて、容易に真似されない仕組みとかあるんでしょうか?
baCtaは、AIのアルゴリズムだけではなくて、ラボの自動化と工場の実データをループさせて学習するような独自のデータ収集基盤を構築しているそうなんですが、ちょっと詳細な情報はあまり分からなかったんですが、一応そういった構想はあるということのようです。
ロードマップです。戦略的なアプローチとしては、少量高単価な分子で、生産、規制クリア、販売のサイクルをいち早く回して、ノウハウと資本を蓄積してから、その後に巨大な市場に挑むようなアプローチになっています。まずフェーズ1としては、電池規模での実証、独自の下流工程DSPの確立、そしてハードルの高い認証プロセスを開始するというところになります。ここでは自社のAI駆動型バイオ生産プラットフォームBACTA4Cが合成品に勝てるコストとスピードで機能することを証明しようとしています。そしてフェーズ2ですが、ここでは拡販・コスト最適化というところを狙っていて、産業パートナーとの連携による100立米タンクでのパイロット及び商業生産の開始です。ここでユニットエコノミクスの黒字化を狙っています。将来的にフェーズ3では、プラットフォームが実証できた後に、本来の巨大なビジョンである天然ゴムといったバルク市場への本格展開とグローバル化を狙っているそうです。
そのフェーズ1のFDAの認証に関して、どういう風に難しいんですかね?
そうですね。特に欧州だと、食品・サプリ用途において何由来のものかというところが厳しく問われるそうで、新規の微生物由来の成分というのは安全性の証明に長い時間とコストがかかるというところで、大きな障壁になっているところがあるようです。
天然ゴムへの展開時期というのは大体どれぐらいという
そうなんですよね。そこは今のところの公開情報だと、具体的な時期とか、大きな数万規模でのロードマップというところは開示されていません。ですので推測ではあるんですが、まずはアスタキサンチンの事業化が成功した後に段階的に進められるのではないかなと思います。
競合についてです。まず、マトリックスにおける優位性です。既存の微細藻類は低環境負荷ですが高コストです。一方で合成品は低コストですが環境負荷が高いというところで、間を取って、生産コストも低くて環境負荷も低いというポジションを取っています。これを可能にする差別化の要素として5点挙げられます。1点目がAIの予測スループットの向上で開発スピードが短くなる。2点目が独自のダウンストリームプロセスによって、抽出・精製工程を最適化することで低コスト化する。3点目がGMO適合で、法規制とか消費者感情への配慮というところになります。4点目が先ほどのアセットライトな戦略。5点目がチームですね。SaaS出身の起業家とバイオの専門家からなるチームになっています。優位性とポジショニングについては、藻類の天然ストーリーと合成のコスト競争力の両取りを狙っています。一方でまだ初期ステージで量産実績が確定していないので、それは今後の課題になってくるかと思います。ただ、発酵とか酵母由来の競合として、北米に先行してネクストファーム、あるいはLCYといったところもあるので、単に発酵で作れるというだけでなく、優位性も今後提示していかないと勝負を分けてしまうという風にも思われます。
発酵由来で先行している企業との勝敗の分かれ目というのはどういったところにあるんでしょう?
そうですね。先行企業だと、発酵のプロセスでアスタキサンチンができるという市場自体の成立可能性はもう証明していますと。ですのでbaCtaはそこからさらに進めて、より低いコスト、より早いスケール、規制のクリアが明確にパスされるといったところで勝負する必要がありますと。baCta自身は、そういった他の企業に勝てる理由として、主にAIによる開発スピードの速さ、そして抽出工程を含めたコストの競争力、さらにアセットライトな資本効率のいいビジネス戦略というところを謳っているようです。
baCtaの参入戦略についてです。初期のターゲットは、化粧品及び高価格帯のサプリメントブランドでした。その選定理由ですが、クリーンラベル、天然由来であることに対する支払い意欲が高くて、初期のやや高くなってしまう製造コストを吸収しやすいというところになります。形態ですが、大量消費・低単価の飼料向けではなくて、付加価値の高い酵母由来のフリーフォームアスタキサンチンを選定したそうです。初期の顧客の獲得については、フランス国内の産業パートナーとの連携・提携を通じて、製造の設備と既存のサプライチェーンへのアクセスを確保しました。PMFの確認指標としては、顧客の要求を満たしつつ合成品と同等のユニットエコノミクスを達成できるか、そして主要ブランドと長期的な供給コミットメントを結べるかというところが指標になります。
そのフリーフォームというのはどういう意味なんでしょうか?
そうですね、これは私も詳しく分かっていないんですが、アスタキサンチンが脂肪酸と結合していない状態を指すそうで、酵母由来の特徴と言われることがあるそうです。この形態が違うことで、吸収率などが変わってきたり、製品設計、ブランドの訴求に影響してくるようです。
あとは顧客側で言うと、産業パートナー企業との提携みたいな話があったと思いますが、実際にどういうモチベーションでbaCtaと組むことになっているんでしょうね。
ここも多分細かくは述べられていないところではあるんですが、既存の設備を有効稼働できること、また新しいサステナブル素材の最先端の技術に触れて、将来の供給元としてのポジションが確保できるといったところが、一般的ではあるんですが、メリットになるかとは思います。
起業プロセスです。創業チームの補完性というところがちょっと面白いところになります。CEOのマシュー・ノエさんですが、この方は元々行政向けのSaaSを創業して売却まで経験したような方になります。ですので、ソフトウェア的な事業構築、資金調達、AI応用に長けているそうです。一方でCEOのマリーさんは、エコール・ポリテクニーク出身のPhDの方で、合成生物学の知見を持ち、さらに規制の対応とかラボマネジメントの経験も持っているそうです。
このCEOのマシューさんですが、この方がSaaSの起業家で、独学でもうめちゃくちゃバイオを学んだそうです。研究機関とのお話を通じて、バイオ生産のボトルネックはAIによる予測とアセットライト化で解決できるという仮説を持ったそうです。仮説を構築してマリーさんと組んで起業に至ったということのようです。マシュー・ノエさんですが、自身を単なるバイオ研究者とかAI開発者ではなくて、細胞というハードウェアにAIで最適化したDNAというソフトウェアを実装する起業家と考えていて、そういったところでIT業界で培った効率化、データ活用の構築といったノウハウを発揮しているということのようです。
IT系の方が加わることによって結構いろんなメリットがある感じなんですかね。
ええ、投資を受けている方のところにもAI企業の創業者のエンジェルの方とかもいるらしくて、なのでIT業界のアジャイル開発とかデータ駆動の思想を、時間がかかるようなバイオ業界に持ち込むといったような新規性は評価されているのではないかと思いますね。またAIの方だけではなくて、優秀な科学者の方も共同創業者として引き入れたという点から、チーム構成も信頼につながっているかなと思います。
どうやって最初の研究基盤とかラボを用意していったんでしょう。
そうですね。CEOの方が独学で基礎を固めたそうで、イグジットをした後、CEOの方が生活水準を下げずに環境負荷を減らすような豊かさを実現するため、エネルギーとか原材料の分野で起業したいと考えていたらしくて、そういったところを考えている際に、合成生物学とか、コロナの関係でmRNAワクチンというところに出会って、めっちゃ調べていたら生物学に出会って、そこからバックグラウンドとしてバイオ分野を持っていなかったので、オンラインのオープンコースとかYouTube、論文を読んで生物学、化学を勉強したそうですと。その後、フランス国立保健医学研究所といったような研究機関と連携して技術的な接点を得たそうです。そこから連携して、ラボがない状態から仮説の検証を進めていったということのようですね。
ビジネスサイドの人がむちゃくちゃ勉強して研究者を巻き込んでいったというパターンですかね。
ね、そのパターンだと思います。どういったところを勉強されたのかなというのは個人的にも気になります。
学びと初期の歩みです。仮説と学びですが、起業当初の2024年は、天然ゴムを代替するといった巨大なインパクトをまず前面に出していました。ただ量産とか規制のハードルを学習して、ピボットしたというところになります。ゴムのような素材は量産・規制のハードルが非常に高いので、短期間で市場投入・収益化が可能な高価値分子の商業化にシフトしました。ディープテック企業が陥る死の谷を回避するために、CAPEX-Lightな既存産業パートナーとの連携に舵を切ったそうです。マイルストーンとしては、2024年1月に設立して10月にプレシードの調達、そして2026年の3月にシードの調達をさせているところになります。
天然ゴムからアスタキサンチンへの変更というのは、完全な失敗によるピボットなんでしょうか?
いや、そうなんですよね。公開されている情報だと、失敗というよりは、天然ゴムといったような究極の目標は変えないと。ただ最初に商業化して利益と実績を出すような対象を、より現実的な高付加価値分子に再設計した、洗練したとも言われているそうです。
プレシードの段階だと天然ゴムぐらいで、シードまでの1年半の間に結構戦略を変えていったって感じなんですかね。
おそらくそうですね。VCの記事だと、どういう風に紹介されているかというと、天然ゴムの代替品みたいに説明されているところもあるので、おそらく最初は天然ゴムで調達したんだろうなと思います。
投資家の皆さんは、そういう意味だと事業の方向性が変わったことをどう思っていたんでしょうね。
baCtaがやっているのは、アスタキサンチンを作るとか天然ゴムを作るというところではなくて、AIによるバイオ生産プラットフォームの構築といったところに共感をしているそうですと。ですので、最初のターゲットを変更すること、ピボットすることは、事業リスクを下げる賢明な判断として受け取られたようですね。
ある意味最後の登りたい山は変わっていないからいいじゃないと。大きな山であればってことですね。はい。
うん。というところだと思います。はい。ちょっと今資金調達のお話も出たので、資金調達についてお話しします。先ほどもお伝えしたんですが、2024年のプレシードラウンドで330万ユーロ、2026年3月のシードで700万ユーロを獲得しています。ですので、累計の調達額としては日本円で約16億円ぐらいに達していて、アーリーステージのディープテックとしては強い資金基盤を構築していると思います。その成功の要因ですが、単なる発酵技術、精密発酵ではなくて、生成AIと産業バイオロジーの開発速度と確率を変えるプラットフォームといったような物語というか、ナラティブが評価されたと考えられます。投資家陣も、著名なVCに加え、Mistral AIの創業者などAI領域のエンジェル投資家も参加していて、そこからAI文脈での期待値の高さも伺えます。現状ですが、ラボレベルから100立米のパイロット・商業レベルへ移行して、スケールアップに挑むフェーズに移っています。
Mistral AIの創業者が投資しているのはすごいですね。
そうですね。フランス発の有力な生成AIの企業ですので、その創業者が参加しているというところは、baCtaのAIモデルのアプローチが技術的にも高く評価されていて、欧州のAIエコシステムから支援を受けているというシグナルにも取れると思います。
さっきから100立米とか単位が出てますが、実際どれぐらいの規模感だと皆さんに分かってもらえるサイズ感ですかね。
10×10×10なので、25mプールよりちょっと大きいぐらいですかね。10万Lの水になるので。研究室はフラスコで数Lなので、そこからすると次元が異なってくるぐらいの大きさなので、工場レベルのタンクになる感じだと思います。
そして、日本で同じアイデアで起業するならというところです。日本の強みとして、発酵の技術というか、DSPの伝統的な職人技と長年のデータ蓄積があるので、より高いところで勝負できる可能性があるとAIは言っています。その展開のロードマップですが、まずは巨大な市場ではなくて、化粧品の原料とか機能性素材、そこで日本らしさというところかとは思うんですが、漢方の成分とか和漢成分の代替といったところの高付加価値な物質を選定してAIのラボを構築すると。2点目のフェーズとして、自社工場を持たずに既存の国内メーカーの発酵設備を発掘してPoCを行うということの予定です。3点目に、ブランド企業とか素材メーカーと早期から共同開発を行って初期の納入を実現するといいんじゃないかと言っています。個人的に面白いなと思ったのが、事業アイデアの方向性として出てきた案として、日本酒とか醤油とかといったところで、もし遊休発酵タンクが使われていなかったら、そういったインフラを活用するとCAPEX-Lightになるんじゃないかというところを見ていて、それちょっと面白いなというか、あんまり考えていなかったので、そういうのはもしかしたらできるかもなと思いました。
できるんですかね。なんか全然違う感じも
そうですよね。いや、本当にどれぐらいの改造をすればいいかというのがちょっと分からないんですが、微生物用の条件、無菌性とか撹拌・通気とかに適合するかといった検証も必要ですし、設備の改修が必要になるとは思いますと。ただ1から建てるよりはいいんじゃないかなぐらいかもしれないですね。どうなんですかね。ちょっとここは計算できないです。
最後にまとめになります。そうですね。baCtaから学べるポイントを3点挙げられますと。1点目がウェッジ戦略の徹底で、空気と水から何でも作るといった壮大なビジョンを持ちつつ、実際のビジネスの入り口は高利益率なウェッジを冷静に選んでいる点です。2点目がR&Dのソフトウェア化ですね。AIとか自動化の技術を業務効率化だけではなくて、工場で量産できる確率を上げるといった競争優位の源泉に昇華する点です。3点目はアセットライトなスケールですね。ディープテックの重い設備投資を避けて、既存インフラを活用したり、パートナーシップを使ってスケールへのパスを描くというところがあります。
そして実践のアクションの示唆としては、解決したい巨大な課題と、明日からでも売れるようなウェッジを切り離して考えるというか、切り離すというとあれですけど、最初から巨大な課題ではなくて、そこからバックキャストして、今何ができるかというところを順序立てて考えていくところになるかと思います。そうですね。示唆と面白い点としては、微生物を生き物ではなくて入力と出力を持つプログラム可能な工場であるという考え方は、面白いというか、他の企業にもしかしたら当てはまる点かもしれません。
というところで以上。今日はbaCtaをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
そうですね、全く違うITの起業家がむちゃくちゃ勉強してバイオものづくりの領域にこうやって入ってきて、しかも最初から少しピボットしても大きな山を登っていくみたいなところは、今まさに日本でも求められているアプローチかなというのを聞きながら思っていました。
そうですね。めちゃくちゃ勉強したら案外繋がれるというのは学べるポイントです。では以上になります。はい。FoundX Review Startup IdeaCastでは、今後も皆さんのアイデアのために最新のスタートアップの情報を紹介していきます。ご興味のある方は是非チャンネル登録をお願いいたします。ではまた次回よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
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