滋賀大学8年生・トマホークの28時間:撮影から編集完了まで1人で担う動画制作の舞台裏

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概要

インタビューチャンネル「トマホーク」を運営する滋賀大学8年生のトマホークが、自分の1日に密着した動画である。スタッフを置かず、機材の運搬、撮影のセッティング、聞き手、編集、サムネイル作成までを1人でこなす。この動画では、撮影したインタビューをその日のうちに編集し終えるまでの工程が記録されている。途中には、撮影に同席した人物からの率直な注文や、チャンネルの将来像についての議論も入る。

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登山バッグに詰め込む撮影機材

朝9時半、トマホークは撮影の準備から始める。機材は登山バッグにまとめて入れる。三脚が大きすぎて普通のカバンでは横からはみ出すため、登山バッグがちょうどいいのだという。

中身は、三脚付きの照明、複数の三脚、タコ足、ガンマイクである。最近はピンマイクも導入した。ガンマイクとピンマイクを両方使うのは、どちらかが壊れても大丈夫なようにするためだ。カメラは一眼レフ2台とビデオカメラ1台の3台体制をとる。一眼2台でゲストと聞き手をそれぞれ撮り、ビデオカメラで全体を撮る。バッテリーのなかには、コンセントにつないでいる限り電源が切れないタイプもある。照明の光を柔らかくするカバーや、角度を調整できる本格的な三脚も持っていく。DJIのOsmoも使う。全部そろえると数十万円はかかるだろうと本人は見積もり、「機材にはあまりお金を惜しまない」と話す。

バッグの重さを本人は15〜20kgくらいと見ていたが、出発前に量ってみると12kgだった。

髪型にも触れている。数年前からパーマをかけている。担当の美容師に「それでは外を歩かせられない」と言われたのがきっかけだった。パーマなら髪をきちんと整えなくてもそれらしく見える。その楽さが理由だという。撮影前には「ご飯を食べないとエネルギーが出ない」として親子丼の大盛を食べた。

1本目の撮影後、同席者からの2つの注文

スタジオに着くと機材を設置する。視聴者が見慣れている背景の裏側も映される。1本目の撮影が終わると、撮影によく同席している人物との会話になる。説明欄で「高田ふーみんとの雑談」として紹介されているのがこの人物である。彼はトマホーク軍団の団員を自称しており、このチャンネルのおかげでいろいろな有名人と知り合えたと感謝を述べる。動画で見るのと直接話を聞くのとでは違い、撮影に立ち会うのが楽しいという。

彼がトマホークの強みとして挙げたのは編集である。1時間のインタビューが30分ほど、つまり約半分になる。それでもストーリーが成立していることに感動するという。そのためには丁寧な作業が欠かせないはずだ、と彼は見る。トマホークは、視聴者に若者が多く、TikTokの時代に1時間の動画は見られないだろうと考えて短くすることを意識している、と応じた。

そのうえで彼は、本番の裏側について2つの注文を出した。

1つ目はアイスブレイクである。今日もテレビに出るような大物ゲストだったのに、トマホークはカメラの設定ばかり気にしていた。チャンネル主なのだから場を温めてほしい、チャンネル主がいる手前、自分のような同席者がぐいぐい行くわけにもいかない、と指摘する。トマホークは、以前にも別の人から同じことを言われたと認めた。そのうえで、1人で運営しているデメリットでもあると説明する。カメラを全部自分でスタンバイしているので、撮れていなかったらどうしようと気になってしまう。アイスブレイクで盛り上がっても映像が撮れていなければ意味がない、というわけだ。それでも最後は「これはマジで頑張ります」と答えている。自分の情報が少なすぎるとも言われていたため、どんなチャンネルかを伝える動画として今回の密着を撮った面もあるという。

2つ目は、撮影中にサムネイルの文言を気にしすぎている点である。例として挙がったのは、モテ幹事長が出演した回だ。トマホークは、ゲストが前にいた会社(マッキンゼー)でどのポジションまで行ったのかをしつこく聞いていた。辞めた会社の話は普通あまりしないものなのに、本当に興味があるのではなくサムネ狙いだろう、と彼は冗談まじりに突っ込んだ。トマホークは、部長や役員といった肩書きをサムネイルに書きたかったと認める。視聴者は数字やキャリアを見に来ているのではと考えていた、とも話した。同席者は、サムネイルは大事だと前置きしつつ、チャンネルの性格が昔とは変わってきているのでアップデートは必要ではないか、と述べた。一方で、自分は就職活動をしておらず企業のことを知らないので、これは自分の興味の問題かもしれないとも付け加えている。

「死んでから評価されるチャンネル」と「生き方のサンプル」

今後の目標を聞かれたトマホークは、難しいと前置きしてから「死んでから評価されるチャンネル」と答えた。教科書のように、自分の死後も残っていけば嬉しいという意味である。同席者はそれを「現代版の伝記」のようなものかと言い換え、今評価された方がよくないかと返した。

同席者の考えるこのチャンネルの価値は、生き方のサンプルの多さにある。大阪や淡路島の普通の高校生には、ゴールドマン・サックスへの入り方などわからない。しかしこのチャンネルには、ゴールドマン・サックス出身者がもしかすると累計で2桁出ている。10人分を見れば、どうすれば入れるのかというおおよその傾向がつかめる、と彼は言う。

彼は昔の回のなかでは、精神的な病気に苦しみながらも今は幸せだという人の回が好きだったと話す。病気には「なったら終わりだ」といったネガティブな連想がつきまとう。そんななかで、それを楽しんでいる人や人生を吹っ切った人を見ることに価値がある。自分の周りにはいないがYouTube上にはこういう人もいる、と知ることができるからだ。1人1人の人生に面白い部分があり、自分と境遇が近い人や憧れの姿など、どこかに参考になるところがある。そういう生き方の教科書なのだから、死後に評価されるより、今役立つ人がいればいいのではないか、と彼は言う。トマホークは、教科書も出してすぐ評価されるわけではないのでは、と一度は返したが、最終的には「それはそうっす」と同意した。

2本目の撮影と、健康を意識した夕食

2本目の撮影には、26歳で学部2年生のナツ・ミートが同席した。ゲストは「変態文学大学生」という肩書きで活動する吉行ゆきのである。

撮影を終えたのは18時ごろだった。夕食はパックご飯と納豆に、ビタミンC、クエン酸、鉄分、食物繊維などを添えたものだ。動画編集者は同じ姿勢でデスクワークを続けるため健康面がよくない。だから少しだけ健康に気を使っている、とトマホークは言う。食べるのがとても早いことにも本人が触れている。

食事をしながら、彼はチャンネル運営の現状も語った。社員はおらず、収入はGoogleからの広告収入だけだ。周囲からは、いつまでその生活を続けられるのか、社員を雇った方がいい、もう少しマネタイズした方がいい、と言われることもある。一方で、メモ少年やReHacQの高橋さんを見ると、30歳や40歳でもこういう活動を続けている人がいると驚くという。そのため、自分も意外と30歳くらいまではやれるのではないか、ひとまず30歳まではこれで走り切ろう、と考えている。

撮ったその日に編集する:自己記録は24時間

19時ごろから、その日に撮った吉行ゆきのの回の編集に入る。普段は撮影した当日にすぐ出すことはあまりない。今回はせっかくの密着なので、最もハードなスケジュールの日を見せたいと考えたという。これまでの最短記録は、選挙戦の際に撮影した斎藤氏の回である。18時に撮影し、翌日の18時に公開した。撮影から公開までちょうど24時間である。選挙では全員がエネルギーに満ち、1つの方向に向かっている。その勢いに乗せてもらう形で「俺もやるぞ」となれた、と振り返る。

編集中の経過は次のとおりである。1時間経過したところでエナジードリンクを飲む。3時間半ほどで、1時間20分の素材を一周して50分に縮めた。4時間ほどたったところで自分の姿勢の悪さに気づく。背中がひどく凝っていて、肩甲骨の裏に手が入らないと人に言われたという。

Final Cut Proと手作業へのこだわり

今は自動文字起こしでテロップを作れる時代だが、トマホークが使っているのはFinal Cut Proで、本人いわく「化石みたいなソフト」らしい。このソフトでは自動の文字起こしができないため、テロップは自力で打つしかない。それでも、自分の独特のテイストを消したくないので外注もしたくない、と話す。

タイムラインには映像が6段に重なっている。1段ずつ別のカメラの映像である。書き出しの待ち時間が、束の間の休憩になる。

深夜に始まるジェットカット

23時51分ごろ、本人は、このあたりからテンションが上がっておかしくなっていく、逆に集中できる時間が来る、と話す。ここからより精密なカットに取りかかる。このチャンネルで使っているのは「ジェットカット」と呼ばれる手法で、発言と発言のあいだの声のない空白を残さず切り詰めていく。それがテンポ感を生むと言われているが、業界の人によるとかなりしんどい作業らしい。

7時間半ほどたってカットの2周目が終わり、素材は34分になった。ストレスなのか腹が鳴っていると言いつつ、やらせ抜きで7時間ぶっ通しで作業しているが、まだいけると話す。ASDではないかと言われたこともあるという。ASDなのか、異常に集中力が続くだけなのか、編集が大好きなのか、その3択だろうと本人は語る。

今回は音量にむらがあった。そこで一度YouTubeにアップロードし、iPhoneで見たときにちゃんと聞こえるかを確かめた。

朝までテロップ、そして筋トレ

4時10分、開始から8時間でカットが完成した。テロップにあと5時間ほどかければ、密着開始のちょうど24時間後に終わる計算になる。ただ、「1日密着」といいながら24時間を超えるかもしれない、自分は1日の定義がもうぐちゃぐちゃなので、これが自分の1日だと思って楽しんでほしい、と話す。

テロップの打ち方は我流で、2、3本の指しか使わない。6時ごろ、つまり作業開始から11時間ほどでテロップが終わった。画面上では、紫色の部分が1つずつ入ったテロップである。残りは効果音などをつければ完成となる。

体が凝ったため、休憩がてら筋トレをする。眠気覚ましも兼ねていて、健康のために週1回ほどは筋トレをしているという。自宅には最大40kgほどの可変式ダンベルとトレーニング用ベンチがあり、基本はダンベルだけで鍛えている。徹夜明けで力が出ず、22kgでは6回しかできなかった。25kgも持ち上がらず、腕が限界を迎えた。これだけの生活でも体調を崩すのは年に1回ほどで、本人は不思議がっている。そのあとコンビニで疲労軽減の飲み物を買った。

動画の完成と、編集を続けられる理由

19時ごろから始めた作業は、17時間ほどで動画の完成までたどり着いた。本人によれば、終わりかけは少し眠くなるが、終わった瞬間に何かが分泌されて眠れなくなる。落ち着いたころに1日くらい眠る、というサイクルらしい。サムネイルも作ったが、投稿に向けて細かく調整するので、色や文言はここから変わる可能性がある。今回はあくまで仮完成である。筋トレ直後には少し体調がおかしくなりかけたが、今は不思議と元気だという。ただ、これはちょっとやばい気もする、とも言う。こういう日のあとは1日か2日は何もしないで過ごす。そうしないと体がもたないだろう、と話す。

最後に、トマホークは密着の中身が地味で早送りばかりになったかもしれないと振り返る。自分は同じ作業をずっと続けるのが得意で、量で押し切るタイプだという。この仕事を働いている感覚はあまりなく、動画編集は趣味の延長に近い。大学1年生のころ、YouTubeで全く稼げていなかった時期も、放っておけば徹夜で編集してしまうような人間だった。編集を始めて7年ほどたつが、意外と飽きないという。その一方で、勉強は10時間もできなかった。好きなことなら20時間近くできてしまうのが不思議だと話す。会社員は絶対に無理で、本当にこれしかできないと感じているそうだ。

動画は視聴者へのメッセージで締めくくられる。15時間でも夢中になれるものを見つければ、それが何であれ実を結ぶと思うので、何か1つ熱中できることを見つけて頑張ってほしい。トマホークはそう語り、「寝ます」と言って密着を終えた。