就活100社落ちから「選挙芸人」へ:山本期日前が語る、選挙を追いかける理由

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概要

選挙期間になると全国の演説会場を回り、その様子を解説する芸人・山本期日前が、トマホークチャンネルにゲスト出演した。聞き手には、山本を「大好き」だと公言する高田ふーみんも加わっている。話題は、中学生のときに選挙に惹かれたきっかけ、就職活動での100社以上の不採用、スーパー勤務中のうつ病、アルバイト生活を経て選挙解説で知られるようになるまでの経緯である。山本は自分を政治の専門家ではなく「素人」だとし、関心の中心は政策よりも選挙に表れる人間関係や地域の文化にあると語った。

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「季節労働者」としての選挙芸人

山本は自分を「季節労働者」と呼ぶ。忙しいのは選挙期間中だけで、高市政権が長期政権になれば4年間選挙がない。本人はこれを「大ピンチ」と表現し、「国が乱れたほうが仕事が増える」という、喜んでいいのか分からない立場にいると笑った。

ただ、選挙に詳しい人物として界隈では人気が高く、衆院選の前には再生回数を大きく伸ばした。高田によると、選挙を好んで見る人は最近かなり増えている。それでも山本本人は「本当に素人なので」と控えめな姿勢を崩さなかった。

山本は、トマホークチャンネルに大物政治家が出演する理由も分析した。選挙ドットコムは会社として運営されている政治チャンネルである。一方、トマホークチャンネルは政治を扱わなくても成り立つチャンネルだ。だから政治家は、自分の親しみやすさを見せる場所として、また若者に届く媒体としてここを選んでいるのではないか、というのが山本の見立てである。出演者の学歴が高いため、政治家の経歴のすごさがそのまま伝わりやすいという相性の良さも挙げた。山本自身は面白い人を追いかけていたら政治家にたどり着いたので、このチャンネルとは合っていると話す。

中学生で見た補欠選挙:じゃんけんと土下座

選挙に関心を持ったのは中学生のときだった。地元で斎藤健(のちに農林水産大臣や経済産業大臣を務めた人物)にとって初めての選挙が行われた。衆議院の補欠選挙で、一人が辞めた穴を埋めるための選挙だったため、全国一斉の選挙とは違って報道陣や応援弁士が地元に集まってきた。

斎藤は演説で「最初はグー、斎藤健」というじゃんけんをしていた。山本は「このしょうもないじゃんけんは何なんだ」と思い、選挙公報を見るとハーバード大学院修了と書いてある。なぜそんな経歴の人がこんなじゃんけんをしているのか、というところから興味が湧いた。さらに、「政界の暴れん坊」と呼ばれたハマコーさんが応援に来て、目の前で有権者に土下座をした。斎藤もつられて一緒に土下座をさせられていたという。

山本は後に斎藤本人と会う機会があり、ハマコーさんの土下座を見て選挙に興味を持ったと伝えた。すると斎藤からも「自分もあれを超える演説をまだ見たことがない」と言われたそうだ。中学生のときにそれを見たことが今の自分につながっている、と山本は話す。

大相撲トランプとサッカーで学んだ「人より党」

それより前の子ども時代、山本は一つのことにのめり込むタイプで、友達は少なかったという。両親に大相撲トランプを買ってもらい、番付が変わるたびにカードの順番を入れ替える遊びを一人で続けていた。話しかけてくる地球儀を相手に、言われた地名をタッチする遊びもしていた。『ONE PIECE』や『NARUTO』、『どうぶつの森』といった同世代が通ってきた作品にはほとんど触れていない。

例外はサッカーで、周囲と話が合う唯一のゲームは『ウイニングイレブン』だった。関東大会に出るレベルのクラブチーム「柏イーグルス」に所属し、プロ選手も何人か出ているが、山本自身はベンチ外だった。それでもチームのユニフォームのおかげでいじめられずに済んだ。個人の力よりチームという枠のほうが大事だと、そこで学んだという。高田はこれを「サッカーチームの比例復活組」と茶化した。

小学校の文集に書いた将来の夢は「サッカーのスカウトマン」だった。特に海外サッカーの移籍情報が好きで、スペインのセビージャが若く安い選手を獲得してビッグクラブに高値で売る仕組みを、小学生ながら楽しんでいた。同クラブのスポーツディレクター、モンチの発言を読みあさっていたという。ポジションはサイドバックで、足は遅かった。

アルゼンチン遠征でサッカーをやめる

中学時代、所属チームがアルゼンチンの名門ボカ・ジュニアーズと提携した時期があり、春休みに2週間ほど現地でプレーする遠征があった。そこで山本は貧富の差を目の当たりにする。当時はPSPが全盛で皆がモンハンをしていたが、宿で地元の子どもに盗まれることもあったという。

プロになれないことはすでに分かっていた。日本にはほかにも生きていくルートがあるのに、サッカーを続ける意味はあるのか。そう考えた山本は、帰国後にサッカーをやめた。本人によれば、運動を続けていると就活で有利になるとは当時誰も教えてくれなかったという。

高校時代:帰宅部と世界史

千葉県流山市の出身で、高校は茨城の常総学院に通った。成績によって1年ごとにクラスが変わる学校で、勉強を始めるのが遅かった自分にはそのほうが良いと考えたという。両親はともに金融関係の仕事をしているが、金融業界に進めと言われたことはない。ただ、後の就活では金融系に全部落ちている。

高校では帰宅部で、本人の言葉では「沈んだ毎日」を送った。選挙特番は喜んで見るし、地元で演説があれば立ち止まって聞いたが、遠征まではしていない。社会科以外に興味がなく、長時間の授業がつまらなくて「人生終わったな」と思いながら過ごしていたという。

選択科目は政治経済ではなく世界史だった。子どもの頃から大河ドラマを見ていて、ドラマ『新選組!』の放送時期には、地元が近藤勇と土方歳三の別れた土地として大々的に売り出していた記憶もある。自分は政治に関心があるというより選挙が好きなだけだった、と山本は言う。

「三大娯楽」:選挙、十両・幕下、J3・JFL

高田は山本について、政治より選挙が好きなのは、人間関係や力関係、派閥の大小といったものに惹かれるタイプだからだろうと分析した。山本もそれを認め、大相撲の話を続けた。十両に上がると関取と呼ばれ、山本によれば1000万円ほどもらえるが、幕下はゼロだという。その境目の取組を見るのが大好きなのだ。

サッカーでは、J3とJFLの入れ替え戦を見るのが好きだという。J3のチームが負けた瞬間にJリーグのチームではなくなる。そのときのサポーターの落胆ぶりにゾクゾクすると話し、高田から「サイコパスやって」と突っ込まれた。山本にとって日本の三大コンテンツは、選挙、十両と幕下の入れ替え戦、J3とJFLの入れ替え戦である。中学以降は夢を失い、なんとなく公務員かな、と考えていた程度だったという。

法政大学でマーケティングを学ぶ

大学は法政大学に進んだ。第一志望ではなく、早稲田も受けたが実力が届かなかった。学部はマーケティング系で、当時ブームだった『もしドラ』(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)の影響で、マーケティングをやりたいと考えたという。ゼミでは企業との商品コラボや新商品づくりに取り組んだ。飯田橋で演説があれば立ち止まって聞いたが、現在のような遠征はまだしていなかった。

全国の選挙を見に行く:滋賀の幟と淡路の怪文書

今の山本は北海道から沖縄まで全国の選挙を見に行っており、高田はこれを「アイドルの推し活みたい」と表現した。山本が「めっちゃいい」と挙げたのが滋賀県のある地域の選挙である。陣営が黄色派と緑派などに分かれ、自陣営の支持者の家に幟を立てていく文化が残っているという。ポスターではなく幟で「この家はこっち派」と示していくので、合戦を見ているようだと山本は話す。この文化は事前に調べたのではなく、とりあえず知らない町に行ってみたら出会ったものだった。遠征には下調べしてから行く場合と、何も決めずに行く場合があるという。

高田の出身地である兵庫県淡路市の話も出た。山本によれば、淡路島の選挙は「やりたい放題」と言われることもあるという。ある選挙では怪文書が出回り、相手陣営がそれを赤ペンで全部訂正したうえで印刷してまき返したそうだ。この「怪文書の赤ペン返し」は淡路市でしか聞いたことがないと山本は言う。高田は、祖母から選挙には絶対に出るなときつく言われていたことを思い出し、「そらおばあちゃんも選挙に怯えてるわ」と納得していた。

遠征を始めたのは、吉本のNSCに入った頃である。当時は日雇いアルバイトで生活していて、その一つはレンタル品の返却物についた陰毛を処理する仕事だった。やると食欲がなくなるので昼食代が浮いた、と山本は笑いを交えて話した。

売り手市場で100社以上に落ちる

就職活動では、金融、マーケティング系、有名企業などを大量に受け、100社以上に落ちた。時期はアベノミクスで新卒の売り手市場だった。山本によれば、MARCHでも大手に余裕で入れた時期で、安倍政権が若者に人気だったのは就活の影響が確実にあったという。そのなかで、面接を受けるたびに落ちた。人間性の問題もあってか、話していて反応が悪いことはずっと感じていたという。

5月頃になると周囲は内定を得て私服で過ごすようになり、どう接していいか分からないという目で見られるのがきつかった。そこから逃げるように、放送作家を目指してお笑いサークルやスクールに通い、放送作家見習いのような所に入った。しかし後から「かなりやばい所だから逃げたほうがいい」と聞き、寝袋だけ置いて脱走した。もうこの業界には戻れないと思い、就活を再開したのは4年生の10月だった。

縁故で入れると思っていた会社にも最終面接で落ちた。最終的には、ゼミで関わっていた企業に入れてもらった。スーパーを運営する会社である。

スーパーの精肉部門で1年、うつ病で退職

配属されたのは精肉部門だった。包丁を握ったこともなく、肉がうまく切れない。新入社員研修では毎回最下位で、牛肉や高値の肉は触らせてもらえなかった。パートの女性たちのほうがはるかに戦力になっているなか、山本は追い込まれ、うつ病になった。電車から降りられなくなるほどだったという。技術とは関係のない失敗もあった。品番をそのまま値段として入力し、ひき肉を1円で売ってしまい、店に大きな損失を出したことがある。

治療の過程について、山本は薬をもらう前に「まず図書館に行ってみましょうか」と言われたことを挙げた。それが舐められているように感じ、かえって気分が沈んだという。処方された薬を飲むと、スマホの画面がずっと歪んで見える状態が続き、それもきつかった。

復職テストは3回とも通らなかった。1回目は正直に答えすぎて不合格になった。2回目は対策して全部明るい回答にしたところ、裁判に出てくる異常性のある人のような結果になった。3回目は筆記にすら進めず、顔を見ただけで「まだですね」と言われた。こうして入社1年でスーパーを辞めた。

うつ病明けにNSCへ、政治ネタでの炎上

退職後の4月、山本はNSCに入った。お笑いを見ている時間だけは脳がすっとしたからだという。普通なら親に芸人になりたいと言えば反対されそうだが、両親はとにかく少しでも明るくなってほしいと考えて認めてくれた。うつ病がここでは逆に働いた、と山本は振り返る。

政治ネタをやろうと意識していたわけではない。ただ、見ている情報が政治に偏っているので、作るネタも自然と政治寄りになった。皆がこの話題を知っていると思い込んで作るため、内容が伝わらないというジレンマに陥っていたという。コンビ名は「ゆかいな議事録」だが、相方の長嶋は政治に興味がない。山本はその関係を、ある番組で政治のプレゼンを聞きながら寝ているB山さんのようなものだとたとえた。

以前は、選挙の知識は仕事につながるどころか仕事を失う原因になっていた。政治ネタは避けられがちなうえ、M-1の3回戦で中国を扱った際どいネタをやったところ大炎上し、劇場にデモ隊が来たこともあったという。やっていることは昔からほとんど変わっておらず、選挙がYouTubeと相性が良くなって盛り上がったことで知られるようになったのだろう、と山本は見ている。

アルバイトをやめられたのは去年の夏

山本自身は、まだ売れたとは思っていない。アルバイトをやめられたのは去年の夏、参院選の時期だった。選挙ドットコムによく出演させてもらい、楽待などにも呼ばれた。3つほどの番組に出ると、アルゴリズムで同じ人が繰り返し表示されるようになり、「この人よく出ているな」と思われやすくなるのだと説明した。現在33歳で、フリーター期間は長かった。

選挙の出口調査のアルバイトもしていた。回答してくれる人は多く、本人は「楽しい」と話す。調査はきちんとルールに沿って行われていて、たとえば男性に聞いたら次は女性にする、といった決まりがあるという。大学生にも勧めていた。

ある大学では年に1回、「政治学概論1」の特別講師として呼ばれており、2年連続で担当している。順番は田崎史郎氏の回の後だという。授業の最初には、選挙でおなじみの「頑張ろう三唱」を学生に立ってやってもらう。左手を腰に当て、右手の拳を掲げる儀式で、ギャルが嫌そうに立ち上がる様子も紹介された。そのうえで選挙の魅力を伝えている。

選挙期間中の動き方と「聴衆を見る」楽しみ

選挙期間中は、空いている時間があればとにかくどこかへ行く。衆院選の12日間なら、丸1日以上空けば遠方へ、5〜6時間なら都内で面白そうな所を探す。毎晩0時か1時頃に生配信をし、その後に翌日の日程を調べる。空いた時間はすべて選挙に使う生活である。高田によれば、山本は知事選などの地方選挙にも強い。

山本が特に好きなのは聴衆の反応を見ることだ。動員がかかっているのか、一般の人が多く集まっているのかは、見ればなんとなく分かるという。聴衆が富裕層かどうかも分かる。例として、チームみらいの演説会場の聴衆は服装がきれいで、インテリ層やエリート層が多いと話した。チームみらいは東京2区や港区を含む7区などに候補者を立てていた。今後は「チームみらいの得票率が高い地域は偏差値が高い」と言われるようになるかもしれない、と冗談めかして語った。

初めて手を握った女性は小池百合子

恋愛経験を聞かれると、山本は「ゼロ」と答えた。手をつないだ経験もなく、人生で初めて手を握った女性は、2016年の東京都知事選で握手した小池百合子氏だという。

その後、ある政治関係の場で誘導係のような役割をしていたとき、エレベーターに小池氏とSP3人と山本だけという状況になった。山本はチャンスだと思い、自分には女性経験がなく、初めて手を握った女性が小池氏だと打ち明けた。SPはざわついた。ところが小池氏は、いったん車に戻った後に引き返してきて、「じゃあ人生で2回目の握手をしようか」と握手してくれたという。山本は翌日、小池氏の写真集を買った。価格は2万円ほどだったと話している。

政治家になる気はなく、地域の選挙文化を本にしたい

今後の展望として山本が挙げたのは、全国各地の選挙文化をまとめた本を出すことだ。AIでは出てこない人間関係や分裂の具合、地域ならではの習わしを後世に残したいという。地元の人は自分たちの文化が変わっているとは知らず、当たり前だと思っている。だからこそ一つずつ拾っていきたい、と山本は話す。

政治家になる気は「ゼロ」だという。選挙に勝つには地盤が必要だが、友達が少ないので地元で手伝ってくれる人はいない。お金も知名度もなく、大事なルックスも「終わっている」。だから出ても勝てないと悟っている、と自虐を交えて説明した。

政治家がトマホークチャンネルに出る意味

山本によると、選挙や政治の界隈でトマホークチャンネルへの注目度は上がっている。茂木さんが出演した頃は話題になったが、今では政治家が出ても当たり前という受け止め方になっており、それ自体がすごいことだという。山本は、このチャンネルが投票率を上げていると言っても過言ではないとまで言った。ホスト側は、日本を変えようという意図はなく、若者に政治に興味を持ってほしい程度の気持ちだと答えている。山本は、意味のない場所に政治家は出ないとも指摘した。

山本が評価するのは、このチャンネルでは政治家が緊張せずに話し、厳しく追及されない点だ。政治家が学歴やビジネスの実績を語ると、普通は鼻につき、票が減る。選挙の世界では東大出身より夜間大学出身のほうがイメージで上回るという逆転が起きる、と山本は言う。ところがトマホークチャンネルでは、高学歴の政治家がそのまま「すごい能力の人」として受け取られる。そこが貴重なのだと山本は評した。

若者へのメッセージ:選挙ボランティアのすすめ

最後に、20〜30代が多い視聴者へのメッセージを求められた山本は、就活で有利になりたいなら選挙ボランティアを「マジでおすすめ」すると答えた。大人になって選挙に関わるようになってから分かったことだという。選挙ボランティアをしていると、そこで知り合った人と一緒に手伝ううちに戦友のような関係になり、就活で協力してもらえることもある。

山本によれば、選挙の現場で最も求められるのはスキルではなく、とにかく時間があることだ。平日に動ける大学生は重宝されるため、そこで関係をつくれば就活にも有利になるのではないか、と山本は考えている。売り手市場で100社以上に落ちた自分が言うのだから、という自虐も添えていた。