船舶免許の登録教習所に10万円払う意味はあるのか:「独学では操縦できない」という宣伝への反論

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概要

船舶免許の独学取得を動画で指南している堀越氏は、前回の動画で独学のデメリットを取り上げた。今回はその逆で、国家試験の実技・学科が免除になる「登録教習所」(免除教習所)のデメリットを語っている。話の材料は、堀越氏自身が登録教習所にいた頃の経験と、登録教習所を出た人から聞いた話である。

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堀越氏の立場ははっきりしている。独学でも登録教習所でも、免許を取った時点で船を操縦できないのは同じだ。そうである以上、高い費用に見合うだけの練習をしなければ、登録教習所はただ高いだけになる、というものである。

「独学だと後でお金がかかる」という主張をどう見るか

登録教習所の中には、独学で取ると船にほとんど乗らないまま免許を取ることになり、操縦できるようになるまでに結局お金がかかる、と書いているところがある。堀越氏は、この主張自体は間違いではないと認めている。操縦を練習しなければ危険なのは当然で、車でもいきなり運転しろと言われたら危ない。

堀越氏が問題にするのはその先である。独学で取った人が翌日すぐ海へ出ることはない。では登録教習所を出た人なら、たとえば浦安から観音崎まで船で行けるのか。堀越氏は行けないと断言する。東京湾のことを何も知らないからで、結局は免許取得後に別途講習を受けることになる、という。

登録教習所がこうした宣伝をすることについて、堀越氏は「そう言うしかない」とも述べている。来てくれた客に「独学でも安いボートスクールでもよかったのに」と言うはずがなく、「うちに来てよかったですね」と言うに決まっている。タイトルの「嘘つくしかやってけない。しょうがないけど」はこの意味である。

規定時間の中身は「船に4時間乗る」ではない

堀越氏によれば、多くの人が登録教習所の仕組みを大きく誤解している。登録教習所では規定時間の講習を受け、最後に国家試験と同じ内容の審査を受ける。これに受からなければ免除にならず、再試験になる。ただし合格率は「99.9%ぐらい」だと堀越氏は言う。コメント欄に「免除なのに落ちた」という書き込みがあったことには、皮肉まじりに触れている。

誤解されやすいのは実技の規定時間である。堀越氏は「忘れたが、実技は4時間くらいだったと思う」と前置きしたうえで、この時間は船に乗っている時間を指すものではないと説明する。ロープワークや船の点検も含まれるし、受講者が2人で乗れば1人あたりの時間は半分の2時間程度になる。状況によって講師が判断する部分もあるという。国土交通省か何かで決められていることなので仕方がない、というのが堀越氏の見方だ。そのうえで「登録教習所に行けばたくさん船に乗れると思っている人がいるが、全然そんなことはない」と強調している。

7万円の差額で何ができるか

堀越氏は費用で比較している。登録教習所を仮に10万円とし、独学を2万5000円、切り上げて3万円とすると、差額は7万円になる。7万円あれば2万円程度の講習を3回ほど受けられる計算だ。一方で、登録教習所を出た人が追加の講習なしに操縦できるかといえば、できない。これが堀越氏の主張である。

堀越氏は何百人もの受講者を見てきたといい、登録教習所を出た人をレンタルボートに乗せて一緒に出航したり、操船講習をしたりしてきた。その経験から、登録教習所を出ても「一切操縦できない」と語る。航路標識の赤と緑がどちら側かを尋ねても、すぐには答えが出てこない。毎日海に出ている自分たちには当然でも、ほとんど海にいない人が答えられないのは無理もない。ただ、10万円払って規定時間の授業を受けてもそのレベルなら、独学でもいいではないか、と堀越氏は考えている。

着岸練習で「上手くなった」と錯覚する仕組み

堀越氏は着岸を例に、教習所で「上達した」と感じる仕組みを説明する。堀越氏の動画には、初心者に30分着岸を教えるとここまでできるようになる、という内容のものがある。実際に30分でかなりできるようになる。しかしそれは、同じ状況、同じ水の流れの中で「左、右、アクセル止めて」と指示された通りに繰り返しているからだ。同じ場所で100回やれば誰でもきれいにできる。ところが対岸でやらせると、もうできない。

登録教習所でも同じことが起きていると堀越氏は言う。1時間前に教わった着岸を、同じ船で、同じ桟橋で試せばできるに決まっている。それで上手くなったと思って卒業していく人が多い。本人がそれで満足するならいいが、翌週堀越氏のところへ来たときに全く操縦できないのは目に見えている、という。

そのため堀越氏は、登録教習所の側も「独学だと運転できない」とあまり言わない方がいいと述べる。実際に堀越氏のもとでは、登録教習所出身者の方が独学の人より運転できないことが多々あり、「独学で取った方がよかった」と感じた人もいたという。講師自身も、自分の教習所を出た人が100%運転できるようになるとは思っていないはずだ、というのが堀越氏の見立てである。

登録教習所に行くなら「迷惑をかけるほど失敗する」

すでに登録教習所に申し込んだ人やこれから行く人に向けて、堀越氏は練習の仕方を助言している。要点は、練習の段階でたくさん失敗することである。練習での失敗にお金はかからないが、試験で落ちれば追加料金がかかるかもしれないし、後日の再試験になれば面倒だ。だからこそ、講師がうんざりするくらい何度も失敗した方がいい。着岸でも、わざと見当違いのところでハンドルを切って感覚を確かめたり、アクセルを入れてみたりする。船を壊してもいいくらいの気持ちで色々試す。講師が乗っているのだから、何をやってもぶつかりはしない。

堀越氏は自分が二輪免許を取ったときの経験も紹介している。そのときの教官は、壊してもいいからスラロームを何度もやってみろ、一本橋で何秒止まれるかクラッチを離してもいいから試してみろ、と言ってくれた。教わるなら、それくらい迷惑をかけるつもりで教わりに行った方がいい、と堀越氏は言う。

逆に、教習所で教わる価値が低い部分もあると堀越氏は考えている。学科は、堀越氏が15分話せば誰でも分かる内容なのに、規定時間では12時間ほど受けなければならない。実技でも、クリート結びなどは家で練習すればよく、人に教わることではない。7万円多く払っているのだから、教習所では船の操縦と感覚をつかむことに時間を使うべきだ、という主張である。

堀越氏は、講師側の事情にも触れている。自分が教習をしていたときもそうだったが、講師はある程度できるようになると「はい、OK」と切り上げてしまう。そこを受講者が自分から粘ってうまく使えればメリットになり、使えなければ「高いだけ」というデメリットになる。

「最短3日」「半日で取得」は早く免許を渡したいから

もう一つのデメリットとして、堀越氏は各教習所の「最短3日で取れます」「たった半日で免許取得可能」といった宣伝を挙げる。車の免許のように何十時間も通う必要がないのが船の免許の良いところだが、こうした宣伝は結局、早く免許を出したいということの表れだと堀越氏は見る。

本来、規定時間は1日にこなせる上限があるだけで、長くやることは可能だという。5日かけても1週間かけてもじっくりやってよいはずだが、実際には受講者も最短で取って早く帰りたいと考えている。その結果、3日間通っても学科に2日を使い、実技は半日で終わってしまう。堀越氏は、これが逆で実技に2日間乗らなければならないのなら、登録教習所には大きな意味があると述べている。現状では、動画を見て重要なところだけできるようになれば自分の動画で学ぶのと何も変わらない、というのが堀越氏の評価である。

結論:免許を取った後に学ぶのが前提

堀越氏は最後に、免許を取ってすぐレンタルボートで東京湾に出たり、大島を目指したりする人はいないはずだと述べる。船はレンタカーのようにすぐ乗って出かけられるものではない。免許取得後にレンタルボートにたくさん乗り、学び続ければよい、というのが堀越氏の考えである。

今回の話は登録教習所のデメリットをテーマにしているが、その中身は「ただ高いだけ」という点に尽きる。そしてそれをメリットに変えられるかどうかは受講者の使い方次第だ、というのが堀越氏の結論である。どの方法で取るかは各自が決めることで、教習所のホームページの宣伝に惑わされないように、と締めくくっている。