Arduino UNO Qはマイコンボードか、シングルボードコンピュータか――実機で確かめた新しいArduinoの形

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概要

電子工作系YouTuberのイチケンが、発売されたArduino UNO Qを実際に動かしてレビューした。イチケンはこのボードを「次世代のArduino」と見ており、従来のArduinoと何が違い、どのようなコンセプトの製品なのかを、スペックの確認と複数の使い方のデモを通じて検証している。

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外観:フォームファクターは同じ、実装密度は大きく変化

歴代のArduino UNO R3やR4 minimaと並べると、基板上の部品配置や密度がかなり違う。IC類が高密度に実装されており、イチケンの印象では、これまでの機種の中ではR4 WiFiに近い。ただし、基本的なフォームファクターは従来のUNOと同じである。

SoCとマイコンの二本立て構成

基板中央にはQualcommのSoC「QRB2210」が載っている。Arduinoはこれまで基本的にマイコンボードだったが、UNO QではこのSoCによってシングルボードコンピュータのようになり、Linuxが動く。SoCはCortex-A53の4コア、2GHzでGPUも内蔵しており、イチケンは「結構良いのではないか」と評価している。

では、シングルボードコンピュータになったことでマイコンとしての機能が失われたかというと、そうではない。基板の裏側にはSTMicroelectronicsのマイコン「STM32U585」が搭載されている。ARM Cortex-M33を積み、動作周波数は160MHz、フラッシュメモリは2MB、SRAMは786KBである。このマイコン上ではリアルタイムOSのZephyrが動いているという。

イチケンは、R4 minimaのマイコンと比較している。R4 minimaはルネサス製で、動作周波数48MHz、フラッシュ256KB、SRAM 32KBだった。UNO QはリアルタイムOSを積んでいるため単純な比較はできないとしつつも、スペックはかなり向上しており、数倍は速くなっていそうだという感触を述べている。

メモリ、拡張ピン、無線

SoC側には2GBのRAMと、裏面に16GBのeMMCが搭載されている。イチケンは、ラズパイのようにSDカードからOSやデータを読み込むよりもずっと速くなると述べる。さらに、シングルボードコンピュータ上でプログラムを書いてマイコンに書き込めるため、このボード1台で開発が完結する点も強調している。

裏面には別途2つのソケットがあり、マイコンやSoCのピンにつながっているほか、アナログ信号の入出力にも使える。これだけピン数の多いマイコンやSoCを使っていながら、UNOシリーズ標準のピンしか使えないのはもったいないからだろう、というのがイチケンの見方だ。そのほか、R4 WiFiにもあったマトリクスLEDを備え、無線モジュールによって2.4GHz/5GHzのWi-FiとBluetooth 5.1が使える。

技適と価格

今回のUNO QはDigiKeyから購入したが、箱にも基板にも技適マークはなかった。FCCマークはあるため、イチケンは「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を利用して動作させている。以前DigiKeyでラズパイ5を購入したときも発売当初は技適マークがなく、1年ほど後に買い直したら基板に印刷されていた経験があるため、UNO Qもそのうち技適がつくかもしれないと話し、半年から1年後にまた買ってみるつもりだという。

価格はDigiKeyで7000円程度だった。イチケンはこれを低価格シングルボードコンピュータ相当の値段とみなし、ラズパイ4より少し安いくらいの感覚だとしている。

使い方1:従来どおりのマイコンボードとして

UNO Qの使い方は複数ある。従来のようにPCにつないでマイコンをプログラムする方法、ボード自体をシングルボードコンピュータとしてその上でプログラムを書く方法、そしてSoCとマイコンを組み合わせたハイブリッド動作である。

まずはPCとUSBケーブルで接続し、Arduino IDEからLチカのプログラムを書き込んだところ、問題なくLEDが点滅した。さらに、無線モジュールを備えているためUSBケーブルをつながずにWi-Fi経由で書き込むこともでき、こちらでもLチカに成功した。イチケンは無線で書き込めるのは結構便利だと感じている。Arduino IDEを使う場合は、これまでどおりC言語ベースのArduino言語で開発できる。

使い方2:Arduino App LabでSoCとマイコンを連携

次に、同じくPCに接続しつつ、Arduino IDEではなくUNO Q向けの新しい開発環境「Arduino App Lab」を使った。これを使うと、SoCとマイコンを組み合わせた開発ができる。

App Labには作例(example)が多数用意されており、それぞれのREADMEに動作の説明が書かれている。イチケンが試したのは「Weather Forecast」だ。SoCのシングルボードコンピュータ部分がネットに接続して天気予報のデータを取得し、その情報を処理してマイコン経由でマトリクスLEDに天気を表示するという作例である。マイコンとSoCがつながっているので、両者を連携させて幅広いことができるというのがこの例のポイントだ。

プロジェクトのファイルにはPythonとスケッチがあり、SoCに処理をさせたい部分はPythonで、マイコンに処理をさせたい部分はArduino言語で書くという分担になっている。実行すると、意外と時間がかかり、30秒ほど経過したあと、1分程度で動作が始まった。マトリクスLEDには曇りと思われるマークが表示された。スケッチを見ると、表示していたのはイタリアのトリノの天気だったようだ。

使い方3:スタンドアロンモードの動作感

続いて、PCに接続せずボード単体で使う「スタンドアロンモード」を試した。シングルボードコンピュータとして使う形だが、ディスプレイなどは必要なので、USBハブを介して外部ディスプレイ、マウス、キーボードを接続している。

ホーム画面の下部にApp Labがあり、開くとPCと同じように開発できる。ただし動作は若干もっさりしており、サクサクとは言えない。ブラウザも操作してみたがやはり遅く、イチケンはこれをネット回線の問題ではなく単純に処理速度が足りていない遅さだと判断している。とはいえ、Webブラウジングを多用する用途のボードではないので許容範囲だという。今回使ったのはRAM 2GBモデルで、4GBモデルも出るようなので、そちらならスタンドアロンでの動作も多少快適になりそうだと述べている。

App Labの基本的な使い方はPC版と変わらず、SoCだけ、マイコンだけ、あるいは両方を組み合わせたハイブリッドという使い分けができる。

USBカメラによる物体認識のデモ

スタンドアロンモードでのデモとして、USBハブにWebカメラをつなぎ、物体認識の作例を実行した。なお、スタンドアロン版のApp LabではREADMEの画像がなぜか表示されず、原因はイチケンにもわからなかったという。コードを見るとPythonだけで構成されており、SoCのみを使う作例のようだった。

実行すると、カメラ映像に映した手元のハサミとマウスがそれぞれ「scissors」「mouse」として認識された。手を映すと「person」と表示され、イチケンは人の手という意味だろうと推測している。この画像認識AIがUNO Qのボード上で動いている点を、イチケンは「なかなかすごいこと」と評価する。さらに、ラズパイなどと違ってリアルタイムに動くマイコンも搭載しているため、SoCで処理を動かしながら、同時にマイコンで他の機器を制御するといったこともできる、と指摘している。

まとめ:方向性は変わったが「これはこれで結構いい」

イチケンの結論は、UNO Qがマイコン+SoCという構成になったことで、できることの幅が広がったのが最大の利点だというものだ。従来どおりPCにつないでマイコンボードとして使うこともでき、スタンドアロンモードでボード1台で開発できる点もなかなか良いと評価している。これまでのArduinoとは方向性が違うものの、これはこれで結構いいのではないか、というのがイチケンの最終的な見解である。