老齢ザルの記憶実験から始まった研究人生:久保(川合)南海子さんが語る「どフェチ論文」
ゆる言語学ラジオゆる言語学ラジオの新コーナー「私の人生を狂わせたどフェチ論文」は、研究者に「何度も繰り返し読んできた、自分の核となる論文」を1本だけ持ってきてもらい、その中身と魅力を聞く企画である。それがなければ今は研究者になっていなかったかもしれない、という論文が対象だ。第1回のゲストは愛知大学の久保(川合)南海子さん。持参したのは、老齢ザルの記憶を調べた1989年の実験論文だった。
久保さんはこの論文を、大学院に入った最初の月に指導教員から渡された。本人の言葉では、この論文は研究者としての「すり込み論文」であり、「全てのことはこの論文から学んだ」という。話は論文の内容だけでなく、ネズミの卒業研究から老齢ザルの研究、人間の高齢者研究へと移っていった久保さんの研究歴、動物実験の現場の苦労にも及んだ。
取り上げられた論文:老齢ザルにおける課題依存的な記憶障害
論文は Rapp, P. R. & Amaral, D. G. の "Evidence for task-dependent memory dysfunction in the aged monkey"。日本語にすると「老齢ザルにおける課題に依存した記憶障害の証拠」で、神経科学の学術誌 The Journal of Neuroscience に1989年に掲載された。
久保さんの説明では、サルの寿命はおおむね人間の3分の1ほどで、飼育下では30歳前後が寿命とされる。20歳以上の個体を老齢ザル(エイジド・モンキー)と呼び、人間でいえば60歳以上くらいのイメージになる。この論文は、自然に加齢して20歳を超えたサルたちの記憶能力を実験的に調べたものだ。老齢ザルを使うのは、基本的に人間の加齢のモデルとするためである。脳の構造的な変化と、記憶という認知機能の変化を、実験動物を使って合わせて検討する研究だ、と久保さんは位置づける。
サルの神経研究には長い歴史があり、脳のどの部位がどの能力と関係するかは、サルの研究から非常にはっきり分かっていたという。ある部位が損なわれるとこういう記憶障害が起きる、という知見はそろっていた。ただ、自然に老化したサルでは、脳の構造的な変化と記憶課題の成績の関係が、人為的に特定部位を損傷させた「脳損傷モデル」のサルとは違うのではないか、と指摘され始めていた。この論文はちょうどその時期のものだった。脳損傷モデルについて聞き手が「かわいそう」と反応すると、久保さんは倫理に基づいてしっかり研究していると補足した。
聞き手の仮説が、そのまま博士論文のテーマだった
同じ部位が損なわれているはずなのに、なぜ人為的な損傷と自然な老化で結果が違うのか。これについて堀元さんがその場で仮説を出した。人為的な損傷はいきなり起こるので迂回する時間がないが、年を取るサルではその部位が少しずつ働かなくなるので、機能を補う新しい配線がだんだんできていくのではないか、というものだ。
久保さんは「完璧」と答え、それがまさに自分の博士論文のテーマだったと明かした。博士論文の大きなテーマは、加齢の過程でどのような補償が起きているのか、そしてそれを認知的・行動的な方略としてどう実現しているのかを、サルで分析することだった。ただし久保さんは心理学の研究者なので、神経の配線ではなく行動と認知の側から調べている。この点は後で詳しく語られる。
ネズミの卒業研究と、「一緒に勉強しよう」と言った新しい指導教授
久保さんの研究の出発点はサルではなくネズミだった。卒業論文のテーマは、ネズミの迷路学習と遺伝の関係である。迷路を走るのが得意な個体も苦手な個体もいて、それが遺伝とどう関係するかを検討する研究で、2学年上の先輩から引き継いで3年がかりで続けてきたものだった。久保さんたちはその最後の学年にあたり、結果が「グダグダ」になってきて分析方法にもかなり悩んだという。
さらに、この研究を立ち上げた指導教授が、久保さんたちが4年生になるときに退官してしまった。「同じようにやれば大丈夫だから」と言っていなくなり、代わりに着任したのはサルの研究者だった。しかも実験ではなく、野山に出て観察するフィールドワーク型の研究者で、実験室のネズミを見るのは初めてという状態だった。4年生の初めに「よろしくお願いします」と挨拶に行くと、「分かった、一緒に勉強しよう」と言われ、3人組で卒論に取り組んでいた久保さんたちはそろって大きなショックを受けたという。
それでも先生は意欲にあふれた、とても気配りのできる人だったと久保さんは話す。学生たちが「徹夜でやっても実験が終わらない」と大げさに愚痴をこぼすと、先生はそれを本気で受け止め、数か月後に実験室の宿泊許可を取ってきた。実際には、1日の実験量は決まっているので徹夜などしない。学生が「いらないです」と言うと先生は怒り、「実験はしなくていいから2晩泊まってくれ」と頼んだ。仕方なく泊まったものの、昼間に作業は終わっているのでやることがなく、実験小屋に置いてあった卓球台でずっと卓球をしていたという。一方で久保さんは、女子大で、離れた小屋のような実験室に女子学生が泊まり込む許可を取るのは本当に大変だったはずだと、今なら分かると語った。
自己分析よりネズミのことを考えたい
大学院に進んだ理由も、研究への強い志からではなかった。久保さんの学年は就職氷河期の初めにあたり、就職活動では自己分析をしろと盛んに言われた。しかし久保さんは自分について考えるのが好きではなく、自分を分析するくらいならネズミのことを考えていたいと思った。それで大学院に行こうと考えたのだという。
水野さんはこの理屈がまったく理解できないと反論したが、堀元さんは強く共感した。自分自身は面白くないが世界のほうが面白いので、世界について考えたくなる。自分に興味が持てず、言葉などのほうがよほど面白いという感覚だ。久保さんも、「もう1人の自分と対話する」といった話をする人を見ると何を言っているのか分からない、と応じた。
カウンセラー志望のはずが、老齢ザルをやるしかなくなった
実は久保さんには、大学院を出たらカウンセラーになるという計画があった。1年生から心理学科で学び、臨床系の大御所の先生のゼミにも入っていたので、大学院は臨床系に進むつもりだった。
そこへ新しい指導教授が、大学院に進むなら自分が今考えている老齢ザルの研究で研究計画を書かないか、と誘った。入学後は臨床のことをやればいい、という話だった。卒論で忙しく他のことを考える余裕がなかった久保さんは、その計画を借りて書き、入学した。
ところが入学後にカウンセラー養成コースに登録しようとすると、大学から「久保さんは臨床系のコースではなく基礎系で入学しているので、この授業は取れません」と言われた。そこで初めて、自分はサルをやるしかないのかと知ったという。
聞き手からは、サルの研究をする人が欲しかった先生にはめられたのではないか、という見方も出た。久保さんは確認したことはなく、先生も着任1年目で大学院の仕組みをよく分かっていなかったのではないかと考えている。先生もショックを受けていたという。そのうえで先生は「動物実験をやってからカウンセラーになる道もあるが、カウンセラーをやってから動物実験には行けない」と言い、久保さんは「確かに」と納得した。結果的には本当に楽しかったので、今は先生に感謝していると話した。
研究費はあるが人がいない、そこに来た大学院生
この論文を渡された背景も語られた。先生はフィールド系のサル研究者だったが、この論文をもとに計画を立てて研究費を申請しており、資金はついていた。夏休みにでも自分でやろうと思っていたのかもしれないが、そこへ偶然久保さんが大学院生として来た。お金がついていて、やるべきことも明確なのに人がいない。そういう状況だったことが大きかったと久保さんは振り返る。
堀元さんが、人には型にはめられたほうがうまくいくタイプとそうでないタイプがいると言うと、久保さんは「振り付けられるとうまく踊れるタイプ」だと自己分析した。水野さんも同じタイプで、入試でも「こうすれば点が上がる」と言われれば踊り切れるが、自分でプロデュースするのは苦手だと認めた。
なお、久保さんはネズミにもサルにも特別な情熱や動物好きの気持ちがあったわけではない。ペットを飼ったこともなく、4年間ネズミの世話当番をしてネズミで卒論を書いたのに、素手ではネズミに触れないという。軍手をして扱っていたが、一度白衣の袖から子ネズミが入り込んだことがあったそうだ。
世界で数グループしかいない研究領域
久保さんは2000年から2007年にかけて、老齢ザルを対象に第一著者として6本の論文を書いた。そのすべてでこの論文を引用している。今回の出演にあたって自分の論文を読み返そうとしたが、手元にないものもあった。現在の所属の権限では自分の論文をダウンロードできず、夫に頼んで別の大学の権限でダウンロードしてもらったという。昔は別刷りを持っていたが、どの段ボールに入っているか分からない。久しぶりに読み返して「私めちゃくちゃ頑張ってたね」と思ったそうだ。
ただし、老齢ザルで6本書いても就職はできなかった。サルの研究者のポスト自体が非常に少なく、それを多くの研究者で取り合っている状態だったという。当時、日本で老齢ザルを実験室で研究していたのは3人だけで、久保さんはそのうちの1人だった。3人は同じ研究機関で一緒に研究していた。世界でも実験室で老齢ザルを扱うグループは3つほどしかなく、久保さんたちが4番目だったという。
論文を読んでいるのは、老齢ザルの研究者と、老化の神経科学に取り組みサルにも関心を持つ研究者で、久保さんによれば引用数はまあまあある。残る2人のうち1人は久保さんの当時の指導者ですでに引退し、もう1人の京都大学の元大学院生は今は研究界にいない。そのため、日本でこの論文について一番熱く語れるのは自分だろう、と久保さんは話した。
この論文の三つの新しさ
久保さんによれば、それまでは若いサルの脳の特定部位を損傷させ、どの課題ができなくなるかがさまざまな課題で調べられていた。脳の部位と課題の関係を示す「地図」はすでにはっきりしていた。一方、老齢ザルの脳のサンプルと行動データが同じ研究でそろったことは、この論文までなかったという。
この論文は、若いサルで分かっている課題と成績の関係を、自然に老化したサルで確かめ、同じ結果になるのか違うのかを、複数の課題を組み合わせて検討した。それまでは、ある課題を1つだけ行って脳損傷の若いサルと結果が違う、という報告がぽつぽつとあるだけだった。この論文では同じサルたちに課題A、B、Cをすべて行ったので、これまでの結果との違いや、個体の中で課題ごとにどう違うかを検討できた。「この課題とこの課題はできるが、この課題はできない」ということをはっきり示せた点が新しかった、と久保さんは説明する。
そして久保さんが最も面白いと感じ、博士論文のテーマとして引き継いだのは三つ目の点だった。老齢ザルの成績には大きな個体差があることを、個体ごとのデータとしてはっきり示したことである。それまでは平均値で「老齢になるとこれができない」と示すことが多かった。個体ごとのデータを出したことが、久保さんにとっては衝撃的だったという。そこで久保さんが取り組んだのが、その個体差はどこから来るのか、という問いだった。
暗い部屋でサルと1対1:行動を15項目に分けて記録する
久保さんは個体差の由来を、脳神経ではなく行動と認知の面から調べた。実験室でごく標準的な記憶課題をサルと毎日行う。サルは課題をやりたいわけではないので、集中させるために暗幕を張って部屋を真っ暗にし、課題を行う机だけにスポットライトを当てる。音も気になるため、ホワイトノイズを流し続ける。ホワイトノイズが流れる真っ暗な部屋でサルと1対1になり、それが何時間も続く。久保さんは、ゆる言語学ラジオの収録スタジオが当時の実験室の雰囲気に少し似ていると言い、聞き手を笑わせた。
課題の様子はすべてビデオで撮影し、サルがどんな行動を取っているかを細かく分析した。たとえば見本が右だったか左だったかを記憶する単純な課題では、サルの行動をおよそ15の項目に分けて記録する。正解の位置へ体を寄せておく、手を置いておくといった「正しい位置への身体的な定位」にあたる行動と、上を向く、ぐるぐる回るといった課題と関係のない行動などをカテゴリーに分け、成績との相関を調べた。
その結果、成績のよい老齢ザルは身体的な定位を多く行っていることが分かった。それ自体は予想どおりだが、久保さんはそれを定量的に示した。さらに面白かったのは、若いサルは定位しなくても正解していたことだという。加齢によって記憶能力は確かに下がるが、外的な手がかりを使うことでそれが補われている、という結果である。
「老化は新しい適応」
この結果から、久保さんは老化をどう見るかという話に進んだ。老化は長くゆるやかな変化なので、その変化に合わせて自分のやり方を新しく作っていける。だから自分は老化を「新しい適応」だと考えている、と久保さんは語る。
聞き手からは、将棋の羽生善治さんが、若い頃は読みの力で勝っていたが、年を取ると定跡の知識などで戦う方向へ移っていかなければならない、と話していたという例が出た。久保さんは、知恵と呼ばれるようなものが、本人が意図的にやっているかは分からないにせよ、行動としてはっきり見えたのだと応じた。ホストの一人は、記憶力が落ちてきたのでメモアプリに頼っているという自分の話を持ち出し、これも外部への定位だと笑い合った。
久保さんは現在、大学で老年心理学を教えている。老いることは新しく適応していく過程であり、それほど恐れることはない。これが久保さんの基本的な考え方だという。
老齢ザルから人間の高齢者へ
老齢ザルの研究を続けていても就職はできない。そこで当時の研究所の上司にも夫にも、老齢ザルをやってきたのだから人間の高齢者で研究すればいい、と言われた。久保さんもそのとおりだと思い、人間を対象にした認知実験を始めた。博士課程修了後は人間の高齢者の認知研究や、障害のある子どもたちのプロジェクトにも関わり、少しずつ「芸風」を広げて、ようやく就職できたという。
久保さんは、研究者の興味と就職が結びつかないのは普通のことだと話す。そのうえで、どう新しく適応するかが大事であり、自分は研究対象が変わっていったことがすごく面白かったと振り返った。水野さんは、大学院で身につけた実験を行い、データから論文を書く技能が、現在のプロジェクション・サイエンスの研究にも生きているのではないかと指摘した。久保さんも、自分の基本的な研究人格は実験心理学で作られたと考えている、と答えた。
実験の準備だけで2か月
体を寄せるという方略が使えない条件も調べた。たとえば右に見本を見せたら左を選ぶのが正解、という課題を組むと、正解側に体や手を置いておく方略は使えなくなる。これは見本と違う位置を選べば報酬がもらえる「ノンマッチング・トゥ・ポジション」という課題で、ルールは一貫している。
ただ、サルにこのルールを教えるだけで2か月ほどかかるという。直感に反するルールを、何百回、何千回と正解と不正解を繰り返しながら覚えてもらい、理解できた時点でようやく本番のテストに入れる。つまり2か月かけて実験するのではなく、2か月かけて実験の準備を整えるのである。
学習系の動物実験では毎日サルのもとに通い、教え続け、世話もしなければならない。1日休んだら忘れてしまうのではないかという強迫観念もあった。その後、動物福祉の考え方が広まって国際的な基準ができ、動物を毎日実験に参加させると疲れるので週1回は休ませなければならなくなった。それでようやく日曜日は休もうという空気になったという。研究者のためではなく動物のためのルールだったが、それがなければ研究者は休まなかっただろうと久保さんは言う。
動物実験で得たことを聞かれると、久保さんは「気が長くなった」と答えた。子育てでも、トイレトレーニングに時間がかかっても、おむつをしたまま小学校に通っている人はいないから大丈夫だと思えた。人間の子どもは教えればできるので、何をしても「人間すごい」と感じるという。一方で、今小学6年生の下の子がなかなか宿題に取りかからないときには、実験室のように部屋を暗くしてホワイトノイズを流せばやるのではないか、「ノイズが多すぎるんだよ」と思うこともあると冗談めかして話した。
想定外の破壊と、ホームセンターで学んだこと
実験で一番心が折れた経験を尋ねられると、久保さんは「ありすぎて選べない」と答えた。相手は人間ではないので、想定外のことばかりする。こうすればできるだろうと準備して出すと、思いがけないところで壊される。人間の想像力には限界があると感じたという。聞き手の一人が、無限の猿定理を実際に動物園で試したらサルがタイプライターの上で排泄してしまったという話を紹介すると、久保さんは「それはするよね」と即答した。
記憶実験では、覚えさせる対象物を頻繁に提示する。見るだけのはずのものをサルがつかみ取り、バキッと壊してしまう。壊されたら作り直さなければならず、ホームセンターには頻繁に通っていた。柔らかい器を用意すると力いっぱい引っ張られてちぎられる。ちぎれた部品を持っていかれると危険なので、取り返さなければならない。サルはとにかく退屈していて遊びたがっている、と久保さんは説明する。
こうした試行錯誤から得たノウハウとして久保さんが挙げたのは、「二度と手に入らないものを使わないこと」だった。どうせ壊されるので量産品を使うことが大事で、一点物を使うと同じ実験を続けられなくなる。試行錯誤の末に見つけた「最強のカップ」も、なくなるのが不安で大量に買いだめしていた。そのカップとは、オフィスのコーヒーサーバーなどで使う、持ち手付きのホルダーにはめ込む白いカップの部分だという。ある程度の強度と大きさがあり、サルがいる柵の向こうへ持っていかれにくい。紙コップは握りつぶされて持っていかれ、小さな金属製のカップはすぐに取られてしまった。赤ちゃん用のプラスチック食器も試したのかもしれないが、使っていないところを見ると小さすぎたのだろう、と久保さんは推測した。
ホームセンター情報は、まず先輩から教わるものだった。どこにホームセンターがあるかから始まり、「あそこのあれがいい」という情報が受け継がれた。課題は研究者ごとに独自に開発するので、道具の細かい情報が学会で広く共有されることは少なかったという。ただし、脳の血流を測る装置NIRSの研究が立ち上がった頃の人間を対象にした研究では、事情が違った。当時この装置は新しく、日本人の黒い髪では感度が悪いと言われ、欧米のようには結果が出ない。そこでプローブを頭皮にぴったり当てるため、5ミリの細いマジックテープを使う、水泳帽に穴を開けて自作する、といった情報を複数の研究室で共有していたという。
霊長類研究所には、久保さんが行った当初、実験器具を作るための工作室があった。はんだ付けも大学院生のときに初めて本格的にやった。暗視カメラも、キットを買って自分の装置に配線し、取り付けたという。
この話に堀元さんは、千葉で村作りをしていた頃のホームセンター事情を重ねた。小屋1棟に15万円分ほどの木材を買うので、2割の価格差でも大きい。最寄りのカインズに行くのは「情弱」で、少し遠くても木材が安くカットサービスも充実したジョイフル本田に行くのが基本だった、という話である。久保さんもジョイフル本田を知っていて、品ぞろえがよかったとうなずいた。一方、サル相手では木材はかじられたり折られたりしてすぐ駄目になるため、長さを自分で決められる金属のアングルを買って装置を組んでいたという。
ガムテープを噛むサルと、何枚もの扉
サルは暇なのでずっと何かをしている。ケージの名前表示に貼ったガムテープを、手が届かないはずの場所に貼っていたのに剥がされたことがあった。朝実験室に入ると、ガムを噛んでいるようなサルがいて、よく見るとガムテープを口に入れていたという。危険なので、すぐに飼育のプロに来てもらった。
サルは採血などで嫌な思いをさせられるため、飼育担当者のことを嫌っている。担当者が来た時点でサルはパニックになるが、担当者が口を押さえて素早く取り出してくれた。こうした場面ではサルがケージの外へ逃げることもある。脱走に備えて扉が何枚もあり、とにかく扉をしっかり閉めることが第一だという。聞き手は「進撃の巨人」の壁のようだと表現した。
25年ぶりに読み返して分かった、論文の位置づけ
何度も読んできた論文の印象は変わったのか。久保さんは、最初に読んだときにはこの論文のすごさがまったく分かっていなかったと答えた。老齢ザルの実験研究はこの論文以降の10数年で数多く行われ、今振り返ると、この論文が本当に最初で、これを参考にあの論文もこの論文も出たのだと分かる。久保さんは博士課程1年のときに老齢ザル研究のレビュー論文を書いているが、そのときよりも今回読み返したときのほうが、この論文の立ち位置と、以後10年ほどの研究の発端になったことを改めて感じたという。今回は25年ぶりくらいに読んだそうで、あれほど苦労した自分の博士論文のタイトルも忘れていて、大学のウェブサイトで確認したと明かした。
聞き手の二人もそれぞれの経験を重ねた。水野さんは、チョムスキーの『統辞構造論』(Syntactic Structures)のように各所で言及される記念碑的な論文を、こう書いてあるだろうと思い込んで読んだら、まったくそうは書かれていなかったと話した。これを「プロジェクションして読んでいた」と表現している。堀元さんは、学部時代に研究室の輪読で読んだ論文が、当時は何がすごいのか分からなかったが、後から振り返ると強化学習の手法を提案したもので、AlphaGoがイ・セドルを破ったことまでつながる出発点だったと話した。久保さんはこれをプロジェクションの話として受け止めた。同じ論文でも、自分の知識や価値観、イメージが膨らむことで、より深く理解できるようになる。しかも、そのことを自分では自覚しておらず、読み返して初めて気づく、という面白さがあるという。
自分の論文への思い入れについて聞かれると、久保さんは、共著の論文はあまりコミットしていないこともあるが、単著でも「いい仕事をした」という感覚があるわけではないと答えた。書くのはどれも大変で、発表できてよかったという感覚に近いという。
今はサルではなく、学生と動物実験を考えるのが楽しい
今の所属先にサルの実験ができる設備ができたらやりたいか、という問いに、久保さんは、時間、体力、知識などいろいろな意味でもうやれないだろうと答えた。ただ、卒論ゼミでたまに動物実験をやりたいという学生がいると、一緒に実験を考えるのがとても楽しく、動物実験が好きなのだと実感するという。これまでに、猫がミュラー・リヤー錯視などの錯視を見るかを調べる実験や、ある動物の数量認知の実験があった。アカハライモリが道具的条件づけを学習できるかを調べた卒論もあった。
イモリの研究には特別な意味があったという。爬虫類と両生類の学習実験の間には差があり、爬虫類を扱う研究者は多いが両生類はなかなかない。学習を調べるなら普通は哺乳類や鳥類を選ぶ中で、学生がイモリの研究を動物心理学会で発表したところ、両生類・爬虫類の研究者が集まってきた。ただ、その界隈も3人ほどだったという。老齢ザルも両生類も、基本的には3人ほどの世界なのだと、聞き手は笑った。
「どフェチ論文」というフォーマットについて
最後に聞き手の二人は、この企画の手応えを語った。水野さんは、研究者に分野の概論を聞くと舗装された表面的な話しか出てこないが、一番好きな論文や博士課程の話を聞くと研究者のフェチが出てきて面白いと述べた。企画の直接のきっかけは、研究者19人が偏愛する論文についてエッセイを寄せたアンソロジー『博士が愛した論文』だったという。面白い本だが、執筆者が自然科学系に偏っていて、心理学、社会学、経済学、言語学、文学などの研究者がいないこと、1人10ページ程度という紙幅の制約があることを挙げた。そのうえで、今後もゲストの研究者を招く際にはこの形式で話を聞いていきたいと述べ、第1回を締めくくった。
ゆる言語学ラジオ、私の人生を狂わせたどフェチ論文。イエイ。新コーナーになりまして、研究者を呼んで、その人が1番推す論文を1本だけ、そしてそれは何度も繰り返し読んでいる自分の核となる論文を1本持ってきていただいて、何がそんなにそれ面白いのかとか、そもそもどんな中身なのかっていうことを聞いていくという新コーナーになります。それがなければもしかしたら今研究者じゃないかもしれないと。はい。そういう論文を持ってきたわけですね。
で、今回ゲストに来ていただいたのは愛知大学の久保先生です。久保先生に持ってきていただいたどフェチ論文、タイトル伺ってもいいですか?はい。Evidence for task-dependent memory dysfunction in the aged monkey。はあ。英語論文ですかね。はい。日本語で言うと「老齢ザルにおけるタスクに依存した記憶障害の証拠」。
はあ。老齢ザル、年老いた猿を研究したってことですね。あ、そうですね。で、1989年のThe Journal of Neuroscienceに載った論文。うん。それは結構格が高い。あ、そうですね。はい。はい。そうですね。脳神経科学の雑誌に載った実験論文です。
ざっと、じゃあどんな内容の論文なのかまず伺ってもいいですか?老齢ザルってことから説明しなきゃいけないじゃないですか?あ、そうそう。猿の寿命って大体人間の1/3ぐらいって言われていて、ま、30歳ぐらいが飼育下では寿命なんですけれども、20歳以上の個体のことを高齢ザルという。人で言うと60歳以上ぐらいのイメージね。自然加齢した状態で20歳を超えた猿たちのことを、ま、エイジドモンキーっていう風に言う。で、その人たちの記憶の能力を、ま、実験的に検証したっていう論文なんです。うん。うん。
これってその老齢ザルに限ってるっていうのは、やっぱ老齢になると記憶力が落ちるっていうことから?あ、そうですね。基本的には人間の加齢のモデルとして老齢の猿を使って、ま、検証してると。
え、これで多分年取った猿の記憶のメカニズムみたいなことが分かったら、人間にももしかしたら適用できるかもしれない。なるほど。なんかその脳の構造的な変化と、記憶っていう認知能力の機能的な変化を、実験動物を使うことで合わせて検討するっていう、大きい枠組としてはそういう研究。だから究極、猿の脳を見て、どうやらここが繋がってたらめちゃくちゃ記憶力いいぞってことが分かったら、水野さんの脳とかを改造してそこを繋げることで、めちゃくちゃ記憶力のいい水野に変えることができるかもしれないみたいなことですね。そうそう。そうそうって言われちゃった。あ、前半ね。
前半部分はそうそうなんだけど、猿の神経研究はもうだいぶ歴史が長くて、脳のどの部位がどういう能力と関係しているのかっていうのは、猿の研究からものすごいはっきり分かってる。あ、じゃあ元々大体分かってたんですね。そうです。そうです。で、そういう風にここの部分がダメになるとこういう記憶障害があるっていうのはもう分かってるような状態で、でも自然に老化した猿って、脳の構造的な変化と記憶課題で出すパフォーマンスが、そういう脳損傷のモデルザルとは違うねっていうことが指摘され始めた頃だった。
脳損傷のモデルザルっていうのは?あ、人為的に脳の特定の部位を破壊して。ちょっとかわいそう。あ、ま、そう、本当に倫理に基づいてしっかり研究しています。はい。はい。例えばですけど、人為的にAという部分を破壊した猿と、年取っちゃってAという部分が自然に破壊されちゃった猿とでは、同じパフォーマンスになりそうなのに違う。その通りです。その通り。で、それはなぜかっていうのが、ま、結構ホットな…
え、なんか仮説言っていいですか?多分その損傷はいきなり損傷させられてるから迂回する時間がないけど、年取っていく猿って多分徐々にこのAの部分が動かなくなってくじゃないですか。だから多分このAの部分の働きを補うために、なんか新しい配線がどんどんできていって。完璧。やった。それね、私の本当に博士論文の…あ、そうなんですか。そうなんだ。ええ。あ、じゃあ先生の博論の内容、今当ててしまった。あ、そう、そう。私の博士論文の、ま、大きなテーマは、加齢の過程でどういうような補償が起こっているのか、それを認知的な方略とか行動的な方略でどういうことをやってるのかっていうのを猿で分析したのが私の博論。へえ。博論のテーマ面白い。
じゃあその博論の元になったのがこの論文ですかね。その通りで。私が大学院に入った、もう本当に4月の最初に指導教員の先生から、はい読んでって言われて。じゃあそんなピチピチの時に1番初めに。修士ですか?博士ですか?修士です。修士1年の時にこれ読めって言われたんですね。そうです。そうです。だからもう卒論の時に英語論文を読んだか読まないかぐらいの記憶なんですけど、卒論終えて大学院に入った時に初めに渡されて、初めにちゃんと読んだ英語論文。
じゃあ論文といえばこれみたいな、インプリンティング。その通りで。基本的には学習と記憶の研究をずっとやってきたんですけど、学習理論みたいのをちゃんと授業ですごい専門的に習ったこともなくて、卒論の時にはネズミの迷路学習と遺伝の関係っていうのが私の卒論のテーマだったんです。なんか大きくてすごい。ネズミがね、迷路を走って、それが得意な個体もいれば、ま、苦手な個体もいるんですけど、ま、それが遺伝とどういう風に関係あんのかっていうのを3年ぐらいかけて、で、それをこう検討したっていうのが卒論だったんですね。うん。うん。
卒論にしては3年かけたんすか?え、無理じゃない?3学年、2学年先輩、先輩から引き継いで、私たちが最後の3年目で、それをやったんですけど、最後の方だったから結果もグダグダになってきて。うん。あ、グダグダになってきた。そう、そう。で、どうやって分析しようかすごく悩んだり、その研究を立ち上げた指導教授の先生が、私たちが卒論を始める4年生の時に退官してしまったんですね。あ、うん。あ、それ困りますね。そうで、同じようにやれば大丈夫だからみたいな感じでいなくなっちゃって、新しく来た先生は猿の先生だったんですよ。
あ、ネズミとこっちは全然違う。で、猿の先生が来て、でも先生だからね、色々ご指導いただけんだろうなと思って、4年生の初めの時に、先生よろしくお願いしますって挨拶に行ったら、分かった、一緒に勉強しようって言われて、一緒に勉強するんだってすっごく驚いた。不安ですよね。その先生はネズミには詳しくない。詳しくない。全然、初めて見たネズミみたいなね。干支で言ってもね、ネズミと猿、結構逆の方ですからね。学習コストも高そうです。なんで干支で言ったの?
で、その新しい指導教授の先生は猿の、しかもフィールドの研究者だったんですね。ああ、実験じゃなく。実験じゃなくて、ま、野山に出てって観察するタイプの。なるほど。じゃ、真逆じゃないですか。そう。だからなんか実験室にいるネズミを見るのは初めてっていう感じで。へえ。大変。一緒に勉強しようって言われて、ま、私たち3人組で卒論はやったんですけど、3人ともめちゃくちゃショックを受けて帰ってきて、先輩たちのを見まくったみたいな。
うん。だから、ま、すごく言い方悪いですけど、あの教官あんま使えんかもしれんなと思う。使えんってか、頼りにならんってことですよね、多分。そうですね。本当に新しく来たばっかりで意欲には溢れた先生だったんですよ。それは素晴らしいね。で、未だにもちろんお付き合いもあって、すごいケアフルな先生だったから、もう私たちは最初から、あ、この先生分かってないなってのは分かってるんで、実験とかやってて先生がどう?みたいなことを言ってくれると、もうすげえ大変ですよ、先生にはわかんないかもしれないけど、みたいな感じ。仲良さそう。
それで、徹夜でやっても実験が終わらないです、困ったな、みたいなことをこうちょっと盛ってね、愚痴ったりしてたんですよ。盛るなよ。実際に。実際なんて徹夜ではやらないんですよ。1日どれぐらいやるって決まってるから。でも大変だっていうことを言いたかった。そしたらその先生が本気で、そうか、実験ってそうなんだっていう風に思って、ある日、愚痴ってから何ヶ月か経った後に、やったぞみたいな。徹夜で実験ができるように実験室の宿泊許可を取ったよ。あ、違うな。努力の方向間違えてるな。
で、私たちすっごいびっくりしちゃって。え、マジですか?先生、それ、あの、いらないですって言ったら先生すっごい怒っちゃって。お前らが徹夜するって言うから、どんなに苦労してこの許可を取ったと思ってるんだ。でも今分かるんですよ。女子大で夜ね、ちょっと離れた小屋みたいのが実験室だったんですけど、そこに泊まって女の子が1晩も2晩も実験するなんて、許可を取るのは本当に大変だったと思うんですよ。先生が女子大にいらしたんですよね。あ、そうなんです。そう。
それで、いらないっすって言ったら先生が怒っちゃって。いや、じゃあ実験しなくてもいいから、あの、2晩泊まってくれって言われて。せめてね、許可取ったからね。そう。うん。だから、あ、じゃあ分かりましたって言って仕方なく泊まって。やることないんですよ、昼間終わるから。誰も得してない、それ。で、夜な夜な、なんか卓球台が置いてあったんでその小屋に、もうずっと卓球して。なんかその夜な夜な卓球の音が響くネズミ小屋みたいな。今、研究者になる予兆が全くないです。ただの東地学生列伝ですけどね。
あ、そうだよね。で、そういう感じでネズミをやってたんです。あ、だから学部時代はネズミをやっていたんだ。で、修士1年でこれを読んだ。そう。そう。で、就職活動が本当に大変な氷河期世代だったので、私たち、氷河期の最初のところだったので、就職するために自己分析をしろっていう。あ、学部4年の時の話ですよね。うん。そう、そう。で、なんか自分のことを見つめ直してみたいなことすごい言われて、で、自分のこと考えるのすごい好きじゃないんですね。うん。自分のこと分析するぐらいだったら、ネズミのこともっと考えてるわって思って。そうか。じゃあ大学院に行こうかなって。いや、じゃあわからん。わからん。わからん。
え、なんで?だって全然わかんない。分析するの同じじゃん。最後の3行ぐらい全然わかんなかった。分析するんだったらネズミの分析してた方がいいわ。いや、そこがわかんないですよ。いや、分析するんだったら、自分とは一生付き合っていかなきゃいけないじゃないですか。ネズミは別に。別に自分のこと分析しなくても付き合っていけるよ、自分と。いや、ネズミと一生付き合っていかないわけじゃないですか、そもそも。いや、だけどその目の前の作業として、なんか自己分析をしないと就職できないくらいだったら、ネズミのことをもっと考えて…
でもね、正直俺わかる。え、わかんの?そう。この前盛り上がったよね。全然わからん、その気持ち。自分って面白くないから、自分のことなんか考えてもしょうがなくて、世界の方が面白いから、世界の方について考えたくなるのはめっちゃわかるっす。うん。はあ。自分に興味を持てないんで、言葉とかの方がよっぽど面白いと思うんで。
え、なんかさ、堀元さん何かでさ、自分と対話するっておっしゃってたじゃん。うん。もう1人の自分と喋るみたいなこと言いましたよ。やったことない。え、タイプ一緒なんだ、じゃあ。そう。すごい仲間ですね。ね。この前すごい盛り上がって。盛り上がりました。そうだよねみたいな。そう、そう、そう。なんかそのもう1人の自分がとか言ってる人見ると、何を言ってるんだ。あと自分に興味がない。自分って面白くないですもんね。そう。全然興味が向かない。なるほどね。だから自己分析するよりはネズミ見てる方がいいわ。
まあ、だしプロジェクションしちゃいますよね。だったらその世界に対して何か自分で意味付けをする方が面白いってのはすごいわかります、僕は。まあ、じゃあ分かりました。それで、じゃあネズミの分析してる方がいいなということで大学院に進んだ。
そうなんだけど、指導教員は猿の先生だったから、あ、じゃあ、ま、大学院に進む気があるんだったら、僕が今考えている老齢の猿の研究をやることにして研究計画を書かないかって誘ってくれたんです。なるほど。ま、実際には違うことやってもいいよ。そう。なぜなら大学院に行くってことはもう就職しないことじゃないですか。あ、しばらくね。だ、それはやっぱりなんか仕事として困るので、カウンセラーになろうと思ってたんです。はい。あの、心理学科でずっと1年からやってるし、ま、そもそも臨床系の、アサーション・トレーニングの平木典子先生っていう、あの大御所の先生がいるんですけど、その先生のゼミにも入ってたから、私は大学院は臨床系に行ってカウンセラーになろうっていう風に考えてたんです。
うん。だから大学院を出た後にカウンセラーになれるような。そう、そう、そう、そう。カウンセラーになるためには大学院も行かなきゃいけなかったので、ま、大学院に行こうかなって。だから先生が猿の研究計画をくれた時も、先生は、ま、入試のための、ま、書くのにね、使ってくれたらいいわ。だから一応研究計画はそれで出すけど、大学院に入った後は全然違うとこ行きなさい。そう、そう、そう、そう。臨床のことやったらいいじゃんみたいな感じで言ってたし、私もそうだねって、今ネズミの卒論で忙しいから、他のこと考えられないから、じゃあ先生の借りますって感じで、あの、書いたんです。で、えっと、入学したんです。はい。
そうしたらカウンセラーになろうと思ってそのコースの登録をしようとしたら、大学側から、久保さんはあの臨床系のコースではないから、この授業は取れません。受講できなかった。ダメなんだ、それ。あなた基礎系で入学してますので、って言われて、そこで初めて、マジか、私は猿をやるしかないのか。
へえ。それ、一旦猿で出しなよって言った指導教官、そのこと知ってたんですか?そうなんですよ。でね、確認したことはないんですけど、多分本当に知らなかったんだと。1年目で、多分大学院のこともよく分かっていなかったのかな。僕はその話聞いたら、猿の研究するやつが欲しかったから一杯食わせたって思いましたけど、そうじゃないですか。私はちょっとそこのとこは先生を信じたい気持ちもあり、でも…怖。昨日今日この話するんだって考えてた時に、先生もしかして私をはめたのかな?うん。可能性もありますよ。一応思ったので、ちょっと今度会った時に1度聞いて…いや、それ下手したら…それ答え合わせしない方が美しいんじゃないですか。わかんない。
ま、いいんです。いいんです。結果的には本当に楽しかったから、あ、先生ありがとうって思うんだけど、あん時先生は知ってたの?でも本当に知らなかったんじゃないかな。先生もショックは受けてました。うん。あ、ダメだった。ええ、みたいな感じ。でも、動物実験をやってからカウンセラーになる道もあるよ。うん。逆にカウンセラーをやってから動物実験には行けないよって言われて、ま、確かにみたいな。
割と簡単に丸め込まれてる。今ちょろいな。久保先生ちょろ。それ芝居ですか?あ、ちょっとつまんな。お前が言えよ。お前が言えよ、それ僕。つまんなすぎ。だからそうだよ、滑るよっていうか、それだから。それ言わないでしまっといて。無理に。あ、そう。ごめん、出てきちゃうのかな、それ。すいません。ダジャレついちゃって。それ猿並みの知能のやつでやってるんで。
で、えっと、話戻して、修士に入ったらこれ読んでって渡されたんですけど。そう、そう。だからもうあなたは老齢ザルやるしかないんだから、ま、とりあえずこれ読みなさいって言われて渡されたの。でもあれですね、先生は、だから自分は猿やってるけどフィールド系なんだけど、心理実験系の論文としてこの猿×心理実験の論文を持ってこられたってことですね。そうなんです。っていうのは、あの、彼は科研費の申請書類を、これをベースに計画を立てたものを出してて。あ、じゃ、これ、こういうのやろうと思って。やろうと思ってたんですね。で、ま、夏休みにでも自分がやればいいのかなと多分思ってたと思うんですけど、たまたまそこに私が院生で来たから。チャンス。この人にやってもらえばいいじゃんって多分思ったんですよ。なるほどね。で、自分も1からわかんないわけだしね。で、あとよろしくみたいな。
そう、そうですよ。だから、あの、研究費がついてたっていうのも大きかったです。ああ、そう。大掛かりな実験とかやりやすい。そう、そう、そう。だから本当にお金もついてて、やらなきゃいけないこともはっきりしてて、だけど人がいないっていう。僕がやるしかないって先生が思ってるところに、なんと私がフリーで来た。なるほどね。
人ってさ、型にはめた方がうまくいくタイプとさ、型にはめるとうまくいかないタイプっているじゃないですか、割と。じゃ、久保先生は型にはめてもらった方が、その頃良かったって感じです?そうです。私はね、あの、振り付けられるとうまく踊れるタイプなんですよ。一緒一緒。ああ、いる、そういう人。僕も一緒なんでめっちゃ気持ちわかります、その。似てますね、2人。似てるかも。タイプ一緒かも。だって僕も入試で、こうやったら点数上がるって言われたら、僕きっちり踊り切りますもん。ああ。でも、AO入試とか言われると、解がわかんないから解けない、その問題って思っちゃうんで。
そうだね。だから水野さんよく言ってるのは、いや、今の会社やめてうちの会社来たら番組任せたりできるよっていう。プロデューサー業やれるよって言ったら水野さん何て言うんでしたっけ?うん。考えなきゃいけないから嫌だよ、頭使うの。プロデュースができないんだよね。できないですよ。こうしたいなみたいなものが。あれ、プロデュース、堀元さんにこうしなさいって、あれ、その通りにやりますよ。それプロデューサーじゃないんすよ。指示ください。そしたらやります。パシリだな。うん。面白いっすね。だから久保先生もそっちの方がはまってたわけですね。堀元さんは違う側ですよね。僕は考えたいですけどね、自分でね。うん。
大学院でももうネズミはできないってのは分かってたんですね、その組織的に。1人でやるのは本当に難しかった。あと別にネズミにそんな情熱もないですよね。あ、ないない。猿も別に、何、動物園に行って猿見たことあるよねぐらい。もう全然。あ、でペットを飼ったこともないし。全然動物好きではない。あ、ちょっと、そしたら猿怖くないですか?最初、その。確かに。もっと言うと私、ネズミさ、4年間ネズミ当番っていうのをやり、ネズミを世話するネズミ当番が1年生からあって、で、それもやり、ネズミで卒論も書いたんだけど、素手で触れません。え?あ、そうなんだ。怖い。あ、怖いんだ。怖い。え、手袋つけて触る?手袋、軍手で触ってたから大丈夫だけど、1回あの白衣の袖から子ネズミが入って、ブワって。誰かみたいな。すげえ、ネズミ研究してるのに。そうなんですね。で、ネズミ可愛いなと思うけど。うん。でも可愛いね。もう触れない。
不思議。だから修士1年で、じゃあこれを読んで。そう。修士1年のもう最初。でこれに関連する研究を始めたんですか?あ、そうですね。最初からこれ。はははは。全てのことはこの論文から学びました。へえ。すごい。私にとってはもう刷り込み論文。はあはあ。もうだから1番最初に与えられたやつだからね。でも確かに1番初めにガチで読んだ英語論文って忘れられないよね。あ、僕は忘れました。あ、忘れたんだ。僕はね、あの研究室の輪読で与えられたReinforcement Learning of Machineなんとかみたいな…覚えてねえじゃねえか。お前なんで喋り出したんだよ、その自信で。
いや、だからなんかその忘れられないというよりは、ま、結局これが最初の論文であり、ま、自分の出発点なんで。ま、この後私はファースト論文として老齢ザルで6本の論文を書くんですけど、全ての論文に引用してるのは、ま、これだけ。始まりの論文。老齢ザルで6本書くんですね。そうですね。だから私、今回のお話あって、自分の論文出さなきゃいけないし、もう手元にないものもあるので、あの夫に頼んで、ちょっとダウンロードしてくれないって。愛知得のダウンロードの権限と名古屋大のダウンロードの権限が違うので。あ、そうなんですね。大学にいらっしゃる。そうなんです。だから私ではダウンロードできない、自分の論文。かわいそう。自分の論文なのに。
そう、そう。で、昔はだから、あの、別刷りっていうリプリントを自分で持ってるんですけど、もうそれもどこの段ボールに入ってるかわからないし、PDFなんかもない時代でしたんで。なるほど。うん。それをこう改めて、本当に改めて久しぶりに自分のも読んで、私めちゃくちゃ頑張ってたねって。思い出した。すっごい思いましたね。
え、よくわかんないですけど、その先生が書いた老齢ザル6本の論文は、どんぐらいの期間かけて書かれたんですか?あ、私の場合2000年から2007年でしたね。なんか7年間で6本書いてますね。で、老齢ザルばっかり7年間続けてた。そうで、でも就職はできないんです。うん。あ、かわいそう。そうなんですね。そうなんです。老齢ザルで6本書いてても就職はできないんです。え、だからポストがなかったってことですか?あ、そうです。ええ、大変。猿の研究者のポストがそもそも本当に少ないので、それをこう何人かの研究者で取り合ってる状態。なるほど。なるほど。もうそれはもう難しいっていうのは分かった。
ちなみに当時、日本に老齢ザルの心理実験やってる研究者ってのはどれぐらい?3人ですね。3人しかいないんだ。え、だから久保先生と直接の接点はないってこと?あ、あります。あります。もう3人は霊長研で本当に一緒。あ、だから同じ機関で一緒に研究している。あ、え、日本にそのグループしかないですか?老齢ザルの人たちは。ちょっと厳密に言うとフィールドでやってる人たちもいたし、ま、ラボでやってる面としては私たち。だから老齢ザルを実験室でやってる人たちがもう3人しかいなかった。そうですね。で、世界で3グループしかなくて、4番目の、4番目のグループ。めっちゃ狭い話だ、今日。すごいね。へえ。世界全体で見ても20人とかしかいないわけですよね。
とすると、じゃあこのEvidence for task…っていうこの論文、めっちゃいろんな人が読んでるっていうよりは…あ、そうですね。老齢ザル関係の人たちは必ず読んでます。老齢ザル…読んでますけど、あとはその老化に関する、ま、神経科学的な研究をしていて、ま、猿のところにも関心がある人たちは読んでるので、引用はまあまあると思います。でも日本でこの論文について1番熱く語れるの誰ってなったら…私と。あ、いいですね。研究してる人が今いないってのもありますし。はい。はい。現代でいないってことですか?え、その3人はどこ行っちゃったんですか?1人は私の霊長研時代の先生なんですね。もうあの引退してるんですけど、で、もう1人の京都大学の院生だった方は、今はあの研究界にはいらっしゃらなくて。なるほど。やめられた。今じゃあ日本で1番語れるのは先生なんじゃないかと。熱い。
で、ちょっと研究内容の方を触れたいんですけど、これ、だからもう先行研究として、その老齢ザルの脳神経の変化とタスクの能力みたいなものはあるわけじゃないですか?そうなんですよね。でも厳密に言うと、老齢ザルの脳のサンプルと行動データが揃ったことはここまではまだなかったんです。あ、そうなんだ。だからこの論文の新規性もすごいわけじゃないですか。あ、そうです。そうです。そうです。この論文の新規性にさらに多分久保先生は研究結果足されたと思うんですけど、一旦じゃあこの論文の新規性は何だったのか聞いてもいいですか?
そう。この論文の新しかったところは、それまでは若い猿の脳損傷をした対象が、ま、どういうパフォーマンスをするのかっていうことが、ま、はっきりと出てたんですね。タイトルにある課題に依存した記憶障害っていうのは、まさにここの部位を破壊した猿はこの課題ができませんよっていうことを、ま、色々な課題で明らかにした後だったわけです。うん。だからこの論文以前は脳損傷した若い猿を使ってたことがほとんど。そう。だから脳の部位とこの課題は関係あるんだっていう地図はもうはっきり出てたんですね。うん。で、じゃあ老齢ザルはどうなんだろうって調べたのがこの論文。その通り。だから若い猿でそういうタスクとパフォーマンスの関係がはっきり分かってるんだから、それを自然に老化した猿でやってみた時に、本当に同じ結果が出るのか、やっぱり違う結果になるのかを明らかに…もっといくつかの課題を組み合わせて検討したいよっていうのがこの論文なんですね。
ま、まだ1個だけやって、なんか脳損傷の若い猿と結果違わないみたいな、そういうこうポツポツとした報告があっただけなんですけど、これが新しかったのは、同じ猿たちでAっていう課題とBっていう課題とCっていう課題をやってるんですね。そうすると本当に今までの結果と何が違うのかとか、このA、B、Cがその個体の中でどういう風に違うのかとかを検討することができる。なるほど。自然に脳が衰えた猿とは明確に違うんだぞっていうのを、今まではポツポツとしかなかったものを一気にまとめてちゃんとやったね。であとは1頭の猿で複数の課題をやることで、脳損傷したらこれできないよねとか、これはできるよねっていうのがバラバラに報告されてたんですけど、これとこれはできるけどこれはできないみたいなことをこうバチッと証明することができたっていうのはまた新しかったですね。なるほど。
え、これを踏まえて久保先生がやられたのは何を足したんですか?うん。私が本当にこれ面白いなっていう風に思ってドクター論文のテーマで引っ張ったのは、今言った2つのポイントではなくて、3つ目のポイントなんですよ。それは老齢ザルのパフォーマンスに大きな個体差があるっていうことをはっきり示してくれたんです。老齢ザルはこれできないなみたいな話をここでやってたけど。そう、今まではね、老齢になると、ま、これできないよねって平均値で出すことが多かったんですけど。でも老齢ザルの中でもバラつきあるじゃん。そうなんですよ。個体ごとのデータをはっきり出したっていうのが、この論文の私にとっては衝撃的な点だったんですね。この論文、だからめちゃくちゃすごい論文。私の中ではそう、あの、3つぐらいすごい点があって、で、私はその3番目の、あの、個体差っていうのをまずデータで示したっていうところが大きかったので、私がやったのは、あ、じゃあ個体差ってどこに由来してるの?ああ、気になる。それをやったのが私のドクター。
え、だから例えば脳のこの部分がポイントなんだみたいなこと言いたい?そう、そう。だけど私は心理学の研究者なので、脳神経の観点からそういうのをやるんじゃなくて、行動と認知で、ま、それを示した。え、だから猿の行動戦略みたいなこと?あ、そうですね。だから私がやってるのは、その実験室ですごいスタンダードな記憶課題を猿と向き合って毎日やるんですけど。すごいな。頭おかしくなりそう。そう。あ、本当なの。あのね、このスタジオ見ると当時の実験室にちょっと雰囲気が似てて。ちょっとやめてください。誰が猿や?俺たちがいつも収録してるの猿だと思われて。ちょっと懐かしいですよね。さ、記憶課題やってみてください。猿じゃないね、俺。霊じゃないの、俺。
本当にこう暗く、暗くしないといけないのね。うん。あ、そうなんだ。集中してもらわないといけないんで。あの、猿、別にやりたくないからね。やっぱなるべく集中させるために、こう暗幕を貼ったり、部屋は必ず暗くするんですよ。真っ暗。で、その勉強机だけにスポットライトが当たってるんで。ああ。だからもうそこしか見えないから集中。取り調べみたいな。昔のドラマの取り調べ。ありますよね。こう照明持って、お前がやったんだろ、刑事みたいな。あ、だ、もっと言うと音すごく気になるので、静かにしなきゃいけないんだ。ずっとね、ホワイトノイズ流してんの。ああ。ざーって。だからそのホワイトノイズが流れる真っ暗な部屋で猿と1対1なんですよ。頭おかしくなりそう。何時間も。へえ。大変。やべえ。
実験でそういうタスクを机の上でやるんですけど、それ全部ビデオ撮影して、どういう行動をそこで取ってるのかっていうのを細かくこう分析していくっていう。うん。だから猿ごとに行動の戦略は違うみたいなことですね。そうですね。てかね、成績のいい猿はこういう行動方略を取っている、で、悪いやつは取っていないんだっていうことを定量的に示したりしました。例えば、例を教えてもらってもいいですか?あ、例えば、やってることすごく単純な左右の記憶。右でしたか左でしたかみたいなやつをやると、猿がどういう行動してるのかっていうのを、多分15個ぐらいの行動項目に分けて、全部こう記録していくんですよ。え、例えば背中掻いてるとかそういうような話。そうです。で、例えばどういうことかって言うと、あの、右左なので体をそっちに寄せておく。あ、はいはい。右だなって思ったら右に傾くみたいな。そう。で、手を置いておくとか、ま、そういう正しい位置に対する身体的な定位っていうのをしてる行動項目と、あとはそれと全然関係ない、やっぱ上を向いてるとか、ぐるぐる回るとか、そういう関係ない行動。ま、ぐるぐる回ってるやつ正解できなくなりそう。そう、そう、そう。っていうのを、ま、いくつかそのカテゴリーでやって、成績とその行動の相関を取るんですね。そうすると成績がいいやつはやっぱ身体的な定位をたくさんしてる。うん。
うん。右だなと思ったら手置いとこうみたいなことやってるやつの方が当てますよね、それ。そうで、それはだから、ま、そりゃそうだよねと思うんですけど、それを定量的に。うん。いや、それ面白いですよね。で、それが、あの年寄りの猿はそれをやってる。で、面白かったのは、若い猿は定位しなくても正解してるっていうことも分かったんですよ。ああ、面白い。面白い、それ。だから年を取ると記憶能力確かに下がるんだけど、ま、そういう外的な手がかりを使うとそれが補償されているっていうことが出たりして。
なるほど。だからやっぱあれですよね。老獪な人って、純粋な記憶力とかは衰えてても、それを補う方法知っているじゃないですか。そう。だからやっぱこう老化って、さっき堀元さんも言ってくれたけど、ま、長い緩やかな変化なんですよね。だからその変化に合わせて自分の何かのやり方っていうのを新しくこう作っていくことができる。だから私は老化は新しい適応だっていう風に思ってて。新しく適応してるんです。てか羽生善治さんも同じようなこと言ってて、その若い時はマジで読みの能力がえげつなかったから、脳がすごいから読みの力で勝ったけど、年取ってくると定石どんぐらい知ってるかとか勝負みたいなもので戦う風にシフトしてかないといけないみたいなこと言ってて、それですよね、まさに。そうです。そうです。だからその知恵って言われるようなものが、ま、実際猿がそう意図的にやってるかわかんないんだけど、ま、そういう行動的にね、あの、はっきり見えたって。
いや、多分僕、若年ホモサピですけど、その記憶力どんどん落ちてるんで、そのNotionっていうね、アプリ、メモアプリみたいなの使ってるんで、これ使うと自分の頭の中に入れなくてもNotionの方を使えば、めちゃくちゃ記憶力ある人に見せかけることができて、あ、もう俺これで行こうって。だから水野さんはちゃんと定位してるわけですね。Notionに定位して。そうそう。だから新しい適応方略をクリエイトしてるっていうことは大事なことなんだなと思います。若年、僕若年。お前、老齢ザル。え、俺エイジドモンキーだったの?ウキー。マジか。
なんか老いが前向きに受け止められる話で、いい実験結果ですよね。そうそうそう。私はやっぱ基本的に老いるっていうことは新しく適応をしていく過程で、そんなにこう恐れることはないっていうのを、ま、大学で老年心理学教えてるんですけど。うん。老年心理学っていうジャンルがあるんですね。あ、そうですね。あの人間の高齢者をあの対象にした心理学の分野です。老齢の猿をやっていては就職は絶対にできないので、あの、じゃあその時どうするかっていうのとして、ま、老齢の猿をやってたんだから人間の高齢者でやったらいいだろうって。あ、なるほど。霊長研の上司の人に言われ、あと夫にも言われ、そりゃそうだよねと思って人間で認知実験をやった。
確かに僕、そのメディアの人間として何が売れるかなみたいなこと考えるんですけど、老齢ザルの研究者はちょっと申し上げにくいですけど、呼んでも聞くことあんまりなさそうなんですけど、人間の老いを研究する研究者はもういくらでもコンテンツにできる。心理学的にね、語れるみたいなのがあればね。みたいなのなんで、明らかにポストの数違いそうだなっていう気しました。違います。ドクターを取った後、やっぱ人の高齢者の認知研究やったり、認知障害の子どもさんたちのプロジェクトに関わったりして、ま、だんだんちょっと芸風が広がっていって、やっと就職できたっていう感じですね。
なるほどね。結局マーケットのニーズに合わせないと研究者のポストもないっていう、切実だな、その話。そう。やめろ。言語学の話すんなよ、今。お前なんで言語の話今したんだ?お前ない。しない。してないっす。素朴な感想言っただけ。教育とか第2言語みたいな。うん。あ、だったらめちゃくちゃポストあるのに、ポストないみたいに言うな。言ってないけど。言ってないけど結果としてそうなった。
いや、でも本当に研究者の興味と就職は結びつかないことが普通なので、ま、それはいかに新しく適応するかっていうことは大事だと思うし、実の人は幸せだなと思いますけど、私はあの、変わっていってすごく面白かったなと思います。
あ、だから型にはまれる人なんで、こういうのいいんじゃないって言われたら、あ、確かにみたいな。高齢者についてやってみたらいいんじゃないって言われたら、そこにビタビタにはまりに行けることですよね。そうで、ちゃんと実験もできるっていう。うん。やっぱなんか伺ってると、その大学生時代に身につけた、その実験ができる、そして実験データを元に論文が書けるっていうスキルが結局今でも生きているし、プロジェクション・サイエンスっていうジャンルをやる中でも、それをやる際に全く実験的とか、いわゆる科学的、自然科学的な手法を知らない人がやるのとは、全然、仮にそういう手法取ってなくても違うじゃないですか。こういうバックグラウンドもある中でこっちをやってるんだってのと、全く知らずにやるのは全然違うと思うんで。そう。それはだから結果的に生きてるっていうことですよね。そうですね。ま、私の、ま、基本的な、ま、研究人格は、ま、実験心理学でやっぱり作られてるっていう風に思ってますね。
うん。あとはね、例えばこう体が置けるからできるじゃないですか。じゃあ体置けなくなった時にどうなるのかなみたいなことも。体置けないって、動かせないってこと?あ、っていうのはね、右の見本を見せた後、正解は左っていう風なタスクを組むんですよ。ほう。そうすると右をこうやって置いといたって、その方略は使えないですよね。その実験の設計ってどうするんですか?今回のタスクはこれが正解だよっていうのをまず教えるのにものすごい時間がかかる。そうですよね。だって2ヶ月とかかかる。あ、2ヶ月。2ヶ月とかかかるんですよ。でも直感に合わないですよね。その、だから右に玉が入ってる箱とかを見せて、左を選べば正解ですっていう学習をさせなきゃいけない。そうなんですよ。それ、Non-matching-to-positionっていう、見本と違う方が正解っていうルールは一貫してるから。はい。多分あれですよね。見本じゃないものを選べばお菓子もらえるとかする。そうです。それをとにかく訓練していくんです。で、あ、これ間違えた、間違えたって、もう何百回何千回ってやって、正解ってこれってやっと分かっていく。で、それが分かった時点でやっとテストに入れるっていう感じなんで。
学習系の動物実験、本当にもう毎日行くんですよ。猿を毎日教え続けなきゃいけない。あとはあの世話もしなきゃいけないし、あとは学習系なんで、ここで休んだらダメになるんじゃないかっていう強迫観念も。1日休んだら忘れるんじゃねえか、あいつっていう。うわ、休みないじゃん。かわいそう。でもね、でもね、動物倫理の観念が発展してきたらね、1週間に1回は休まなきゃいけなくなって、途中から。それはね、研究者のためじゃないんだよ。動物を休ませようっていう。うん。そうか。動物毎日実験室に入れてたら疲れちゃうから。そう。毎日実験しちゃいけないっていう。うん。国際基準ができて、研究者の方も。でやっと、じゃあ日曜日休むかみたいな空気になりました。研究者の方も守ってあげてほしいですけどね。でもそのルールなかったら研究者多分休まないと思います。休まない。
うん。それでも根気つきますね。2ヶ月かけて実験するんじゃなくて、2ヶ月かけて実験の準備を整えるって話ですよね。そう。そう、そう。私、だから動物実験やって良かったことは、気が長くなりました。うん。うー。確かにな。だからさ、例えばだけど親御さんとかで子育てしてて、子供が思うように育たないみたいなのに悩む人とかいるじゃないですか。わかんないですけど。久保先生めっちゃ放置できそう。トイレトレーニングとか結構やっぱり時間かかるんだけど、私はもういいよ、いいよと思って。履いて小学校行ってる人はいないから、多分大丈夫なんじゃないみたいな感じありましたね。あとはやっぱ人間の子供って、え、教えたらできるの、みたいな、もうとにかくすごいなんか、え、こんなこともできるのって言うんで、もう何やっても、え、すごい、人間すごいみたいな。
そう、そうか。そうですよ。だって猿に2ヶ月とかずっと頑張って右か左かみたいなの教えてたのに比べたら、喋ったりしてくれるわけだから。めちゃくちゃ学習すごいな、こいつ。喋って伝達できますもんね、こうしなさいって。じゃ、そんなにこう、子供が何回言ってもできるようにならないみたいなのも起こってないですか?あ、でもね、今下の子が小6で男の子で、宿題とかを全然やらないんですよ。うん。うん。最終的にやるのに、やり始めるのにすごい時間かかって、なぜやらないってすごいイライラする。その時に、いや、実験室みたいに暗くしてホワイトノイズ流せばいいのか?そうそう。机だけ明るくすればやるか。ノイズが多すぎるんだよってすごい思う。とんでもないこと考えてるじゃん。でもやらないよ。それやれないから。はい。ああ、猿はいいねって。猿はいいね。結論間違ってませんか?人間はいいねっていう話じゃなかったの?今。
いやいや、人間すごいんだけど、そうやって根気いるよねと思ってます。うん。うん。なんかまとめ合ってたね。いや、僕はね、是非久保先生が、あの、ご自宅のね、子供部屋を改造して、真っ暗な部屋に光が勉強机だけ当たるように…児相に、児相に通報されちゃうから。そうか。そうか。これ確かに虐待ですね。そうですよ。
この流れでちょっと聞きたいんですけど、実験してて1番心折れた経験、これちょっと伺ってもいいですか?え、ありすぎて選べないよね。あ、もうそんな心折れまくってた。常に、なんて言うのかな、人間じゃないので。はい。想定外のことばっかりするんですよ。だからやっぱり、あ、人間の想像力って限界あるなと思って。ああ、なるほど。あ、こうやったらできるだろうと思ってセットして出すと、なんか思いがけないとこで破壊される。ああ。破壊は、実験器具を頑張って作ったのに壊され…器具を壊されるのはもうしょっちゅうありました。それあれありますよね。
猿がさ、タイプライターをめちゃくちゃ叩いたらすごく低い確率でシェイクスピアがいつか書き上がるっていう、例え話がある。
無限の猿の定理ですか?
それ実際試した人いて、動物園の猿にタイプライター与えたらどんな文章できるんだろうっていうのを試したらしいんですけど、その結果猿がタイプライターの上でうんちしちゃって、うんちじゃねえかってなったっていう。
それするよねと思う。それはそうでしょと思う。
あ、そうなんですか。
それそうだよねと思う。
へえ。え、例えば何があったんすか?壊す系は。
記憶の実験なんで、オブジェクトって言われるその記憶させるものを提示するのがしょっちゅうあるんだけど、それをだから壊されると思ってないわけ。
模型みたいなものを壊される。
そう、そう、そう。見たらいいんだよっていうものをバッと取ってバキッと壊される。で、壊されたらまた作んなきゃいけないんで、とにかくホームセンターにはしょっちゅう行ってました。
へえ。え、例えばどんなもの作るんですか?
例えばカップみたいな、こう無地のカップみたいなもん作ったりするんですね。
そう。でもそれをこうホームセンターで良さげな器を用意するんですけど、例えばそれがちょっと柔らかかったりするとめちゃくちゃ引っ張って。だから力が全然違うんですよ。
でもそれを想定してないんで。
そうか。だからプラスチックの子供用のマグカップみたいの与えちゃうと取っ手ちぎるみたいな。
すぐ壊されちゃうとか。大変。
何でもとにかくすごい退屈してるんで遊びたいんですよね。
うんうん。
だから引っ張りたい形状とかになったらまずいですよね。
そうそう。で途中でちぎれちゃったりすると、え、ちぎるのと思うけど、ちぎれたものを持ってかれちゃうんで、またそれを取り返さなきゃいけないとか。
そうか。実験に使う道具だから。
そうで、危ないんですよね。その持ってかれちゃうと、なんかで危険になっちゃうんで、そういうのを持たせたままではいけない。
大変だな。
ですね。そして色々壊されたりうまくいかないことを繰り返して得たなんかノウハウ。
うん。知りたい。知りたい。
ホームセンターではこれを買えとかありますか?器具作るならこういう風にしろみたいな。明日から全く使えないノウハウを伺いたいんです。
知りたい。
2度と手に入らないものを使わないことですね。
ああ。
どうせ壊されるから。量産品を使うことはすごく大事ね。
だからもうほとんど一点物なんかとかを与えちゃうと、同じ実験したいのにもう2度とあれがないってなる。
で、なんかあのカップも本当に試行錯誤の末の、このカップ最強みたいなやつを見つけたんです。
へえ。壊されないカップ。
壊されない。で、これを3つ重ねたらいいんだみたいなの。で、でもそのカップがなくなるとすごい不安だから、もうめちゃくちゃ買いだめして、もういくら壊されてもこのカップ大丈夫です。
すごい。大変だ。
だから壊されないっていうよりは耐用時間が長いみたいな感じなんだ。
以前ゆるコンピュータ科学ラジオでマジシャンの方がおたよりくれてて、マジシャンってフォーク曲げとかスプーン曲げとかめちゃくちゃするから、もう手に馴染んだ同じスプーンとかフォークが必要だと。で、同じフォーク欲しくて、しかもめちゃくちゃ曲げるから安いものじゃなきゃいけなくて、キドーかなんかのフォークをめちゃくちゃ愛用して何十ダースとかのロットで買ってたんだけど、生産終了してしまってやばいやばいっつって、その前にめっちゃ買いだめしたっていう話してたんですけど、一緒ですよね。
一緒です。
だからもう、やっと見つけた大事なものを使い続けるので、なるべく手に入りやすいものが良かった。
ちなみにそれはどこ製の何とか覚えてます?
1番その私が使ってたカップは、オフィスなんかでコーヒーサーバーがあるじゃないですか。で、あん時に取っ手のある器の上にカパって入れる白いカップの部分分かります?
ああ、だからあれだ。二重みたいな、持ち手と別の方入れるやつありますよね。
そう。で、持ち手だけはなんか使いますけど、上のあの白いカップ。
ある。
持ち手の方じゃなくて入れる方。
あれ?
あれが強いんだ。
あれで何年間もやりました。
それはなんでですか?壊されにくいんですか?
ちょっと形状が大きくて。柵の向こう側に猿がいるんで、その柵を超えて持ってっちゃうんですね。で、紙コップとかだと大きくてもぎゅって引っ張るからペシャってなって持ってかれちゃうとかで、そういうある程度の強度があるのと、ちょっと大きいのと。
なるほど。ちょうど檻を通らないぐらいのサイズ。
そうですね。だからあの水溶感のカップみたいのを使った時はすぐ取られましたね。ちっちゃいから。これなら壊されないぞと思って、金物だし。やったらすぐ取られましたね。
水溶感のカップはダメですね。これ大事なノウハウです。
ダメ。
なんかさ、子供とかでもさ、食器って今のはさ、落としても割れないプラスチック製のものだったり、スタイとかもね、結構プラスチック製のものとか増えて、とにかく危なくないっていうようなことを謳ってるもの増えましたけど、そういうのって結構猿にも応用できるんじゃないかって思いましたけど、どうでしょうか?
えっとね、それも多分色々やったんだと思うんですけど、使ってないとこ見ると多分ちっちゃいんだと思いますね。赤ちゃんの手って本当にちっちゃくて、猿はもうちょっと大きい。
ああ、そうか。サイズが合わないんだ。
はい。
それってやっぱり、ここのホームセンターのこれが使えるみたいなのは研究者の間で噂になるんですか?
ていうかね、ホームセンター情報はまず先輩からもらわなきゃいけないんですよ。まずどこにホームセンターがありますかみたいな。
あ、ホームセンターの場所から。
そう、そう、そう。
で、あそこのホームセンターのなにがいいぞみたいなのがあって、そこにみんな行くと。学会とかでそういう話で持ち切りになったりするんですか?
えっとね、細かい道具はやっぱそのドメスティックにみんなやるので。基本的に同じ課題をみんなやらないね。自分の独自の課題を開発していくので、そういう細かいのはないんだけど。その後NIRSっていう、脳の血流を測るような装置が出て、それの研究の立ち上げの頃に一緒にやってたんですけど、髪の毛の上にプローブを置いて、で、髪の毛を避けて地肌に当てなきゃいけなかったんですよ。
今は人間の話?
人間の話。ごめん。それが本当に新しい装置だったのと、日本人の髪は黒いから感度が悪いんですって。欧米の方では結構バカバカ研究結果が出ても、なんか思ったようにいかないじゃんみたいな。
金髪とかの方がやりやすいんですね。
そう、そう、そう。私たちの髪の毛が黒いからじゃないかみたいな。で、そこでなるべく頭にこうビタって貼り付ける、いいマジックテープ情報みたいのをめちゃくちゃ共有してました。みんなで。
ぴったり貼り付けられるように。
そう。それも何箇所かの研究室があって、なんかあそこの研究室はこういう細い5mmのやつを使ってるらしい。
面白い。
そっか5mmかとか。あとあそこの研究室は水泳帽に穴開けて、そこに貼り付けてるらしいと。
ああ、いいねとか、そんな感じ。
そっか。だから既存の製品でどんだけいい実験器具を作るかって、実験系の研究者にとっては必要なスキル。
あ、そうですね。本当にオリジナルで作っていくのは普通で、霊長類研究所は私が行った最初の頃はすごい工作室ってのがありました。
はあ。
もう実験機器作るための。
すげえ。研究者って工作もできなきゃいけないんだ。
あ、そう。だからはんだ付けは私、院生の時初めてまともにやりました。
ええ、大変。
なんか暗視カメラを自分で自作しなきゃいけない。だから暗視カメラのキットだけあって、それを自分の装置に配線してくっつけなきゃいけない。
そうか。だからカメラのニーズもちょっとみんな違うから、工作して作んなきゃいけない。
そう。だからオスの電気に行ってカメラだけ買ってくるんですよ。外のやつ。で、教えてもらってはんだ付けして色々やるんだね。
うん。やるんだね。
でもホームセンター情報をシェアすんの、村作り界隈も一緒です。
ああ。
僕昔、月額会員制村作りサービスを千葉でやってたんですけど、その時期にめっちゃホームセンターの情報が回ってて。
うん。うん。
僕鴨川市の端っこで作ってたんで、そこの人が行くホームセンターといえばカインズ鴨川じゃないですか?
知らないですけど。
でもね、カインズ鴨川に行くとね、情弱って言われるんですよ。
え。
情弱って言われて。俺実際、僕とはまたちょっと離れたとこで村作ってた別のやつに、カインズ鴨川で木材買ってきたの情弱って言われて。
え、村作ったやつ他にもいるの?
あ、そう。村作ってたやつ千葉にいっぱいいるから。村とか家とか、自分の家とか建ててるやついっぱいいるから。僕らも家何件か建てたんですけど、家建てるとなるとさ、木材をありえんこと買うわけよ。
うんうん。
1件小屋建てんのに15万円分ぐらいの木を買うんですよ。だから2割高いだけでも出費馬鹿にならないわけです。だから、なるべく安いとこで買いたくて、鴨川の最寄りのホームセンターはカインズ鴨川なんで、そこにみんな買いに行っちゃうんすけど、そこは高くて、情強はちゃんと密のジョイフル本田に行くんですよ。
ほう。
こっちの方が安い。結構違うんすよ。木材が2割ぐらい安いんじゃないかな。
うん。うん。
で、しかもカットサービスとかもかなり充実してて、こっち行かないと全然ダメですね。
全然わかんないです。
30分ぐらいしか時間変わんないから、もう全員密行くっていうね。これ基本でしたね。
すごい頷いてらっしゃいますよ。
そうですね。ジョイフル本田ね。もう30年ぶりぐらいに聞きましたね。
あ、本当ですか?え、でもジョイフル本田やっぱ行ってました?
あ、行ってました。本当にやっぱ大きくて、品揃えがいいので。
ね。そうなんですよ。やっぱカインズ行ってるやつ弱いっすね。
ジョイ本に行ってなかったらもう仕方ないよねみたいな。
そう。ジョイ本に行ってなかったらもうしょうがないですね。ま、僕らジョイ本って呼んでなかったですけど。ジョイフル本田って言ってたけど。
僕らはジョイ本でした。
なんでここでまた俺1人で孤立感味わうんですか?なんか研究者来てさ、その話で俺置いてくのやめて。
やっぱ工作経験がしょぼすぎるよね。水野さん。
僕全然作ったことないすね。
でも家1件建てたことぐらいあります?
ないよ。あるわけあるか。
やっぱね、基本ですよね。10平米以上にするとね、建築確認とか必要になるんじゃないかってことで、9.98平米とかに抑えるっていうこのあるあるあります。
あ、なぜか毎月残業時間が44.5時間みたいな。
これのギリギリを攻めるっていうね。ありますよね。
うん。いやないですね。当然。
ちょっと話わからんなこいつ。
ええ、俺普通だけどな。
老齢ザルかな。
俺は若年ホモ・サピエンスだって。
あ、そっか。でも猿は木材だとすぐ壊されちゃうんで。
あ、木もダメなんす?
私たちはね、そこにあるようなアングルをめちゃくちゃ買うんですよ。
アングル。
長さを自分で決められるので組みやすいんで。
え、こういうやつですか?
あ、そうそうです。その骨組み。
金属のフレームを買ってきて、それを組み合わせてるってことですね。
そうです。そうです。で、もう自分たちで装置を作るので。
え、だから木だと折られちゃうってことですか?
折られる、かじられるんですよね。
ああ、なるほど。
発想にないね。かじるっていう。
かじるのね。すごくもうすぐダメになっちゃう。とにかく暇だからずっと何かやるんですよ、猿って。で、1回、名前とかをガムテープで掲示に貼っておくんですけど、そのガムテープも絶対猿が届かないようなとこ、こっちが想定してるところに貼るんだけど、やっぱりすごい手が長いんで、あ、取るんだみたいな。
でもずっと1日なんかやってるんで、ガムテープを取られたことがあって。それなんで分かったかって言うと、朝実験室入ったら、なんかねガム噛んでる猿がいるんですよ。で、え、何このアメリカの不良みたいな猿どうしたって思ったら、ガムテープを剥がしてクチャクチャって。
へえ。
で、それはやっぱものすごい危ないんで、うわってやられたと思って、すぐプロの飼育員さんたちがたくさんいるんですけど、そこに行ってガムテープ噛んでます、ガムみたいにって言ったらもうすぐ来てくれて。で、飼育員さんたちをね、猿はすごい嫌いなんですね。
嫌いなんですか?
嫌なことしかされない。大体血を取られるとか。
血を取られる。
あ、採血。採血される。
猿が飼育員さんを嫌いってことです。飼育員さんが猿を嫌ってる。ごめんなさい。だから猿が飼育員さんの血を取るのかなと思って、すごい話だなって思ったんですけど。
ドラキュラみたい。
吸血ザル。ごめんなさい。
老齢ザルがいるぐらいだから吸血ザルもおかしくないですよね。
です。
それでだから飼育員さんが来た時点でもうめちゃくちゃパニックなんです、彼らは。で、パニックなったとこで飼育員さんがガって口押さえてピって取ってくれるんですけど、でも猿、だからほんと逃げたりもするし、ケージの外にね。
あ、脱走しちゃうっていう。
脱走。
うー、脱走あるあるな。
脱走はね。そう、そう。ま、事件ですけど。
え、どうするんですか?脱走したら。
扉が何枚もあるんですね。だからもう本当にここで脱走したらここで止まる。
進撃の巨人と全く一緒。ウォール・ローゼ突破されましたみたいな。
だからその扉をとにかくガチっと閉めることがまず第一。
面白い。
最後になりますけど、この論文繰り返し何度も読まれたっていうことでしたけど、読むたびに感想とか変わるもんですか?
あ、そうですね。やっぱり最初に読んだ論文なんで、最初の時にはこのすごさ全く分かってなかったなっていうのを本当に後になってよくわかりました。
どういう点でですか?それは。
老齢ザルの実験研究ってこの論文以降の10数年でめちゃくちゃされたんですけど、今思うとやっぱこの論文本当に最初だったんだなって。これを参考に多分あの論文とあの論文が出たんだなとか。
あ、自分の脳内の図書館が出来上がってないと、そういうこともあるんだなとしか思わないけど、後から自分の図書館を見直すと、え、あれもこれもこれが元になってるってやばくないってことです。
そうなんですよ。そうなんですよ。で、自分はドクターの1年の時にそれまでの老齢ザルのレビュー論文まで書いてるんですけど。
レビュー論文っていうのは、今までの論文をまとめて問題を整理するような論文です。
そうで、それを書いてるんですけど、そん時よりも今やっぱり読み返して、あ、こういう立ち位置にあって、この論文が以降の10年ぐらいの発端になってきたんだなっていうのを改めて今回思いましたね。
いや、だからそうですよね。前提知識がない時ってさ、ありがたくないじゃん。論文読んでもふーんてなるんだけど、あ、これが後のほにゃららに繋がってくんだなってのがあるとめっちゃ響くってのありますよね。
分かる分かる。
場合によってはこの論文ではこう書かれてるとか、色々外からのまとめとかを聞いて、実際にその元の論文読むと、いや書いてなくないかみたいなことも結構するし。僕の場合はチョムスキーの『Syntactic Structures』っていう記念碑的な論文とかがまさにそうでしたけど、あまりにもいろんな場所で言及されてるから、頭の中で多分こんなこと書いてあるんじゃないかなって。
プロジェクション。
プロジェクションして読んだんですよ。そしたら全然そんなこと書いてなくて。
ええ、面白いね。
それはすごい面白かったし、読んでよかったなって思いましたね。
いや、あとさ、僕も学部の時に初めて読んだ論文、ラーニングオブマシンなんとかかんとかみたいなやつ。それ当時は何がすごいのか全くわかんなかったんだけど、後から振り返るとどうもあれ強化学習っていうね、機械学習の中の一大手法の提案の論文だから、その後の世界作ってんのよ。じゃあAlphaGoがイ・セドルを倒しまして、人間の能力を囲碁で凌駕しましたみたいなやつとかの全ての始まりってそれなのよ。
はい。
だから学部の時読んでた時全く響かなかったんだけど、後から考えたらあれめちゃくちゃいい論文だなってなったんですけど、それと同じ現象ですよね多分。
そうそう。だからちょっとプロジェクションの話になっちゃうけど、同じ論文なんだけど、自分の中の知識とか価値観とかそういうイメージが膨らむことによって、より深く理解できるっていうことだよね。
うん。しかもそれを自分は自覚してなくて、読むことで初めて気づくっていう面白さはありますよね。
あ、それありましたね。今回本当に25年ぶりぐらいに読んだんですけど。
あ、そんな久しぶりに読まれたんですね。
そう。もう本当にだから、水野さんにはメール書きましたけど、私ドクターのタイトル忘れてましたからね。
ああ。自分のタイトル忘れないですよ。
そう。あんなに苦労して、生涯忘れないだろうってその時思ってたけど。で、自分の大学のホームページに行って見ました。
うん。
僕、研究者の先生の自分の論文への感覚よく分かってないんですけど、めっちゃ頑張った論文とそうでもない論文があるわけですね。多分。
ま、連名の論文なんかは、あんまりコミットしてない。
うん。単著とかだとやっぱり。
単著だとまあでも、思い入れがあるかどうかみたいな。労力が多分そんな同じなんですよ。書くのどれも大変なんだけど、なんか論文として発表できて良かったみたいな。
自分の中でいい仕事したなみたいな感覚があるってことですか?
いや、うん。そういう感覚でもないですね。
へえ。
なんか以前、プログラミング言語の完全性みたいなこと研究されてる先生に、自分がやった1番大きい仕事何ですかって聞いたら、1番大きい仕事はどれかわかんないし覚えてないけど、1番楽しい仕事はこれだねって答えられて。
すごいなんかいいよね。
だから楽しい仕事って覚えてるもんなのかなって思ったんですけど。
思い入れみたいなそういうことだと思いますね。
ちなみに先生、今自分の所属してる組織に猿の実験ができる設備ができたら、やりたいですか?
猿はね、もうやりたいかと言われたら、やれないんだろうなと思ってるんですね。
忍耐力とかっていうことですか?
あ、そう。いろんな意味で、時間、体力、それから自分のもう知識とかも含めてやれないだろうなと思うんですけど、やっぱり動物実験好きなんだなって思うのは、卒論のゼミの学生でね、たまに動物実験やるっていう子がいて、めちゃくちゃ楽しいですね。
ふーん。そのゼミの学生を見るのが楽しい。
あ、ゼミの学生と動物実験について考えるのが楽しいです。
あ、考えるのが面白いんですね。実験設計とかってことです?
あ、そうです。ゼミ生がこんなことに関心ありますって言ってきて、一緒に考えていくので。猫の錯視の実験とか。
錯視ってのは、ミュラー・リヤー錯視とか。
そうです。そうです。とかあとは近が数量認知できるのかとかやりましたし、それも本当に面白くて。あとはアカハライモリが道具的条件づけできるのかっていう卒論があって。
それ本当になんかでやるんですか?
やるやるやる。それは大好きな学生がいて、で、イモリは学会の中で非常に特異な位置にあって、是非実験したら面白いよみたいな。
特異な位置にあるんですか?
あのね、爬虫類と両生類の学習実験で結構差があるところがあって、で、イモリは両生類なんで、爬虫類の方がちょっと、なんてやる人が多いから、イモリはなかなかなくて、やってくれたらすごく面白い。
でも確かに学習のこと調べようってなったら哺乳類とか鳥類やるよな。普通。
まあそうですよね。だからその子がやってくれたおかげで、動物心理学会でイモリの発表した時に、その辺の界隈の人たちがわってきて。
界隈が。
そう。両生類爬虫類界隈の人たちがわってきて。
でも3人ぐらいね、少ないじゃないですか。
でももう超大好きな。
だから基本3人ぐらいなんですね。老齢ザル界隈も3人ぐらいだし、両生類界隈とかも3人しかいない。
寂しいすね。
ということで、私の人生を狂わせたどフェチ論文。記念すべき第1回は久保先生による老齢ザルの認知実験の論文でした。
うん。面白いね。このフォーマットいけるよね。
ええ、心配。
いや、もうめっちゃ面白いっす。研究者に概論みたいな話聞くと、その研究者のフェチって出てこなくて、例えば言語学者を呼んで言語の概論的な話をしてくださいって言うと、やっぱ外側ですよね。舗装された部分しか出てこないんで、自分が1番好きな論文とか博士課程の話聞くのがやっぱ1番面白いなって改めて思いました。
掘って掘って掘りまくりましょう。
はい。なので今後もゲストの研究者の先生お招きした時に聞けそうだったら、このフォーマットで聞いていきたいと思います。
で、あとね、この企画を僕が思いついた直接的な要因は実は書籍にありまして、『博士が愛した論文』っていう本が最近出たんですけれども、サブタイトルが「研究者19人が語る偏愛論文アンソロジー」とありまして、19人の研究者が自分の特に愛する論文を取り上げてエッセイを寄せていると。で、ただね、残念なのは、面白いんですけど、こんな感じで自然科学系の人ばっかりなんですね。
あ、本当だ。物理学者とか。
全然人文学とかの人いないじゃん。
そうやね。ほんまや。
格差別ですよね。
そう、お前イデオロギーがすごいな。別にそんなことはないと思いますけど。
心理学、社会学、経済学、言語学、文学、このようなところからなぜ呼ばないのか。
ちょっと一旦暗い部屋で明るい机だけ照らしておきましょうか。
右。
ホワイトノイズも流してください。
ホワイトノイズ流していきましょう。
左。
そしたらね、雑念なくなると思います。
そっか、そっか。ま、こんなアンソロジーがあって、ただこれやっぱ19人の研究者に、多くて10ページ程度のエッセイとかね。
研究者の幅とかも、ちょっと限界ありますよね。
限界があるんで、せっかくなので我々こういうの得意ですから。
やっていきましょう。どんどん。
はい。今後もやっていこうと思うので、今回面白いと感じた方いたら是非この本も読んでいただくといいかもしれません。
概要欄にリンクございます。
あとこのコーナー好評だったら本当に毎回やろうと思いますんで、是非チャンネル登録、高評価、感想のコメント、拡散などご協力いただけると幸いです。
皆さんからの忌憚のないご意見や、あなたの人生を狂わせたどフェチ論文ございましたら、是非コメント欄にお書きいただければ幸いです。以上終わりにしましょう。ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
堀元さん、うまく話せなくて悩むことってありません?
よくあります。
そんな悩みを抱える方にぴったりな本を書きました。
ほう。
タイトルは『会話の0.2秒を言語学する』。会話のわずかな間にフォーカスした1冊です。是非皆さん買ってください。
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