Microsoftの大量レイオフと「AIスキルを磨け」という号令を中島聡が評価する理由

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概要

Microsoftは大規模なレイオフを実施し、残った従業員に対してAIスキルを身につけるよう求めた。対象はエンジニアだけでなく、営業担当者にも及ぶ。この動画では、元Microsoftのソフトウェアエンジニアで起業家の中島聡が、The Informationの記事をもとに、ChatGPTを聞き手にした対話形式でこの動きを論じている。中島は、この判断を「厳しいとは思いますけど、素晴らしい経営判断だ」と評価する。

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業績好調の中でのレイオフという点が重要

中島がまず注目すべき点として挙げるのは、レイオフの規模と時期である。Microsoftは例年、少しずつレイオフを行っている。しかし今回は人数が多く、しかも会社の売上と利益がしっかり伸びている最中に実施された。中島はこの点を非常に重要だと見ている。

日本でレイオフやリストラと聞くと、会社の業績が悪いという印象を持たれやすい。中島によれば、今回のケースはそれとは違い、より筋肉質な強い会社になろうとする意思の表れだという。

その背景には、AIによって仕事のやり方が変わりつつあることがある。中島は、ソフトウェアエンジニアの間ではAIを使ったコーディングがどんどん進んでいるが、営業などの部門ではまだ進んでいないと話す。ただし、そうした部門も変わっていくことは明らかである。Microsoftの経営陣はその変化を加速させようとしている、と中島は解釈する。売上が伸びていても人員を減らし、残った人、特に営業担当者に対して、AIで生産性を上げ、1人当たりの売上を上げるよう発破をかけている、という見方である。

ここで中島が強調するのは、経営陣が具体的なやり方を知っているわけではないという点だ。正解を示したうえで指示しているのではなく、強引な「進化圧」をかけて、社員自身に学ばせようとしている。中島はそう解釈すべきだと述べる。

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キャッシュフローを人ではなくAIインフラへ

中島は資金の使い道という観点からも、この判断を説明する。Microsoftは売上も利益も伸びており、キャッシュフローもある。問題はそれをどこに使うかだ。営業担当者を増やして売上を伸ばすのではなく、AIインフラにお金をかける。営業部門はむしろ人数を減らし、1人1人にAIで生産性を上げて売上を伸ばすよう圧力をかける。

中島はこれを「厳しいと言えば厳しい」と認めている。それでも、これほど順調な企業がきっちりとレイオフを行い、効率化を目指すことは素晴らしい、と評価する。

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OpenAIのインフラ需要と、Microsoftのリスク判断

関連して中島は、AIインフラをめぐる事情にも触れている。MicrosoftはAIへの投資額を桁違いに増やしている。しかしOpenAIからは、それよりもさらに大きなインフラ投資を求められているらしい、と中島は伝える。

Microsoft1社でそれをすべて賄うのはリスクが高すぎる。そこでMicrosoftは、インフラ投資の一部をOracleなど他社に任せる形をとった。中島によれば、もともとの契約ではOpenAIのサーバーインフラはすべてMicrosoftのものを使うことになっていた。それを、他社のものも使ってよいと変更したという。中島は、AIインフラへの需要がそれほど急激に伸びている状況を「面白い」事態だと表現している。

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「AIスキル」とは道具を使って生産性を上げること

聞き手から、個人のキャリアにとってAIスキルがどれほど重要かを問われると、中島は「AIスキル」という言葉を広く捉えて答えた。AIもコンピューターもインターネットも道具であり、さまざまな道具を上手に使って生産性を上げることが求められている。これはエンジニアに限った話ではないという。

会社としては当然、1人の人からより多くの売上を上げてほしいし、より多くのソフトウェアを作ってほしい。だから、ツールを使って生産性を上げることは誰にでも与えられたミッションだと考えるべきだ、と中島は言う。

中島はこれを数字のたとえで説明する。今の生産性が10だとして、10のままでいると、1年後や5年後には他の人たちの生産性が上がっている。その結果、自分の生産性は相対的に低くなる。会社からは生産性の低い人は雇えないと言われ、自分の市場価値が下がることになる。だから、ツールの使い方も含め、自分の生産性をどう上げるかを常に考える必要がある。その中でもAIツールは今いちばん激しい勢いで伸び、変化しているので、上手に使うことは必須だというのが中島の見解である。

10〜15年かかると思っていた変化が早まる可能性

中島によれば、ソフトウェアエンジニアの間では、AIを使うことはすでに当たり前になっている。一方で、それが営業担当者や通常業務をしている人たちにまで広がるには、10年から15年はかかるだろうと中島は考えていた。しかし今回のMicrosoftの動きを見ると、かなり早まるかもしれないと述べ、注目すべき点だとしている。

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AIネイティブな小さな会社が有利という見方は変わらない

中島はこれまで別の場でも、大企業は組織全体の惰性やモメンタムが大きく、すぐには方向を変えられないと語ってきた。そのため、AIがある前提で設計されたAIネイティブなベンチャー企業のほうが有利だという。中島はこの考えは今も変わらないと話す。そのうえで、IT業界の中でも巨大なMicrosoftがこうした動きに出てきたことは非常に興味深い、と付け加えた。

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AIネイティブ企業はピンポイントで攻めるしかない

では、AIネイティブな企業と大企業はそれぞれどう戦うのか。中島はこれを「結構難しい話」としたうえで、まず小さな会社の側から答えた。中島自身も現在MulmoCastというプロジェクトを進めている。その立場から、AIネイティブで勝負する会社には規模がないので、とにかくピンポイントで攻めるしかないと言う。

たとえば、Microsoftが手がけるようなエンタープライズ向けの大きなアプリケーションを、サービス付きで従業員1人あたり月々数十ドル取るといったビジネスを、いきなり始めるのは非常に難しい。エンタープライズ市場を狙うにしても、Microsoftが得意とする企業のIT部門に売り込むのは避けるべきだと中島は言う。代わりに狙うのは、営業担当者やプログラマーなど、現場で働く個人である。IT部門を通して会社として正式に導入するほどの話ではないが、使うとちょっと便利になるツール。そうした領域をピンポイントで突き、大企業の目や手が届かないところに分け入っていくアプローチが良い、というのが中島の考えだ。

その具体例として中島が挙げるのが、WindsurfやCursorといった開発者向けのコーディングツールである。MicrosoftにもCopilotがあるが、これらの会社はそれよりはるかに良いものをすごいスピードで作っている。中島はその理由を、AIネイティブで小さく、決断が速く、優秀なエンジニアの密度が高いことに見ている。この事例は非常に参考になるとし、小さな会社にとって今はエキサイティングでチャンスの大きい時期だと語った。

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大企業はトップダウンで強い意思を示すしかない

一方、Microsoftのような大企業について、中島は、トップが強い意思を示すしかないと言う。売上が伸びていても思い切ったレイオフを行う。あるいは社員全体に対して、次のミッションはAIを使いこなして生産性を上げることだというシグナルをはっきり出す。そうしたトップダウンのやり方で、AIネイティブなベンチャー企業と戦えるくらい筋肉質な会社になってほしいというメッセージを出すしかない、というのが中島の見方である。

中島は、自分はMicrosoftの株を持っている当事者なのでポジショントークになると断ったうえで、今回の動きはとても嬉しく、良い動きだと思ったと述べている。

他の大企業の経営者が何を発信するか

最後に聞き手が、スタートアップは俊敏さとピンポイントのイノベーションで市場に切り込み、大企業はトップダウンで方向性を一気に変えていく、と議論をまとめた。中島はこれに同意し、今後は他の企業、特に大企業の経営者がどのようなメッセージを出していくかに注目するのがとても良いことだと述べて、対話を締めくくった。