MulmoClaude:AIアシスタントを「自分の環境で育てる」という提案

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概要

あなたのことを何でも知っていて、24時間そばで仕事も生活も支えてくれるAIアシスタントは、まだどこにも売られていない。ただし作ることはでき、一度育て始めればその価値は毎日少しずつ増えていく、と話者は言う。そのための方法として話者が挙げるのは、自分が「我が家」と呼べる環境で、自分の手で育てることだけだ。話者らはそのための仕組みとしてオープンソースのMulmoClaudeを作り、実験で確かめたという。この動画はその考え方と仕組み、実験結果を紹介している。

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アシスタントの価値はモデルではなく「蓄積」にある

話者によれば、AIアシスタントで重視される点はここ2年で変わった。2年前はモデルの賢さが勝負どころだったが、今では大手各社がこぞって、会話をまたいでユーザーのことを覚える記憶機能を搭載している。会話、好み、記録、アプリといった、使うほどに溜まっていくユーザーについての蓄積こそがアシスタントの本体であり、モデルはそれを動かすエンジンに過ぎない、というのが話者の見方である。

ユーザーもそれに気づいている、と話者は言う。チャットボットと長く付き合ってきた人々を対象にした研究では、参加者たちが自分のアシスタントとの関わりを「育てる」と表現していた。チャットの記録を自分でバックアップする人や、積み重ねが惜しくてアシスタントを削除できないと答えた人もいたという。人々はアシスタントをただ使っているのではなく育てている、と話者はまとめる。

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蓄積が価値なら、それは「離れられない理由」にもなる

話者はここに落とし穴があると指摘する。使うほどに溜まるものが価値なら、それは同時に離れられなくなる理由でもあり、使えば使うほど乗り換えは難しくなる。

さらに、サービスに預けた蓄積には2つの危険があるという。1つ目は「吸い上げ」で、ユーザーが教えた生活のデータがその会社のAIを賢くする燃料として使われ、会社の資産になってしまうこと。2つ目は「囲い込み」で、データもアプリも会社のサーバーの中にあるため、値上げや規約の変更、サービスの終了に対してユーザーには拒否権がないことだ。

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記憶のポータビリティだけでは足りない

これに対する業界の答えは、記憶を外に出して別の場所へ移せるようにする「ポータビリティ」だと話者は紹介し、それを確かな前進だと認めている。

しかし話者は、育てたアシスタントに積み上がるのは会話の記憶だけではないと続ける。レストランリストや家計簿のようなアプリとそのデータ、決まった日に届くリマインダー、そしてAIが自分のために書いた手引き書がある。記憶の引っ越しは、こうした実際に動く部分を何ひとつ運ばない。だからこそAIアシスタントは、ユーザー自身が所有する環境、つまり「我が家」で育てるべきだというのが話者の主張である。

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「我が家」の4つの条件

話者は「我が家」の条件として次の4つを挙げる。

  1. データがすべて自分のパソコンの中に、普通のファイルとして置かれていること
  2. ソフトウェアがオープンソースであること。これにより打ち切りや値上げ、買収に振り回されない
  3. アプリが手元のマシンで動くこと。誰かのサーバーが止まっても、アプリやデータ、リマインダーは手元で動き続ける
  4. 外から接続するときも、途中のサーバーは何も保存しないこと

この4つが、育てたものを失う道筋を1つずつ塞ぐ、と話者は説明する。

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MulmoClaudeの仕組み:AIは「設計図」を書き、ホストが実行する

この条件を満たすものとして話者らが作ったのがMulmoClaudeである。たとえば「行ってみたいレストランのリストを作って」と頼んだとき、AIはアプリのプログラムそのものを書くわけではない。代わりにアプリの設計図を書く。話者らはこの設計図を「スキーマ」と呼んでいる。

設計図を実行するのは、MulmoClaude本体である「ホスト」だ。ホストは画面を表示し、データをチェックし、リマインダーを動かす。話者の言葉でまとめると、設計図がアプリ、AIが作者、ホストが実行係という役割分担になる。

加えて、AIは未来の自分に宛てた取扱説明書も書いているという。そのアプリをいつ使うのか、各項目は何を意味するのか、何をしてはいけないのか、といった内容である。たとえば「あのラーメン屋、行ったことにしておいて」と言われたとき、その意味を判断するのは説明書を読んだAI自身だ。きっちり決められることはホストが確実に実行し、言葉の解釈はAIが引き受ける、という分担である。そしてデータは普通のファイルとして、ユーザーが自分で開けるフォルダーに入っている。

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AIは失敗する前提で用意した3つの安全装置

話者は、AIは失敗するものだとしたうえで、3つの安全装置を用意したと説明する。

1つ目は「壊れたものは動かさない」こと。設計図に誤りがあればホストが受け取りを拒否するため、壊れたアプリはそもそも動き出せない。

2つ目は「壊れたデータは隔離する」こと。おかしなデータが紛れ込んでも、隔離されるのはその1件だけである。問題はAIに報告され、AIが直し方を提案する。

3つ目は「AIが書いたコードは檻の中でしか動かさない」こと。AIがコードを書くのは地図やグラフのような特製の画面だけで、そのコードは許可されたデータにしか触れられない隔離された領域で動く。AIの作ったものは何ひとつ無条件には信用されない、と話者は言う。

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72回のアプリ作成テスト

本当に信頼できるのかを確かめるため、話者らは日本語と英語でさまざまなアプリ作りをAIに任せ、合計72回のテストを行った。話者の報告によれば、壊れた設計図がアプリとして動き出したことは一度もなかった。つまずいたのは1種類の依頼だけで、それもホストにエラーを指摘されたAIが、毎回1回の修正で直してみせたという。

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引っ越し実験:記憶は運べても能力は運べない

最後に話者らが行ったのは引っ越しの実験である。数週間かけて育てた実際のワークスペースには、数十個のアプリと大量のデータが溜まっていた。そこから、引っ越しプロトコルで運べる会話の記憶だけを新しい環境に移した。

結果、会話の記憶はすべて無事だった。しかし残ったのはそこまでで、アプリもデータも、自動で届くはずのリマインダーもすべて消えていた。新しい環境に移ったアシスタントは話者のことを覚えており、ある支払いについて尋ねると、リマインダーがあったことも履歴から思い出せた。しかし、それをもう届けることはできないとアシスタント自身が認めたという。話者は、自分の生活を支える力は何ひとつ残っていなかったと振り返る。

この結果から話者は、記憶の引っ越しで運べるのは思い出だけで能力は運べない、かつての暮らしを語ることはできても、その暮らしを支えることはもうできない、と結論づけている。

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自分の環境で育てるコストと、借り物の頭脳

話者は、我が家で育てることには手間もかかると認めている。ログインではなくインストールが必要であり、バックアップも自分の仕事になる。ただし、アシスタントの全財産はパソコンの中の1つのフォルダーに収まっているので、丸ごとコピーすればバックアップは完了する。実際、現在の利用者たちはGitというツールで変更の履歴ごと保存しているという。

また、頭脳であるAIモデル自体は今も借り物だと話者は述べる。ただしワークスペースはモデルを交換できるように設計されている。現在はClaude Codeの上で動いているが、GPTベースのエンジンもベータテスト中で、オープンなモデルにも対応する計画だという。エンジンを入れ替えても、育てた蓄積はユーザーのものとして残る、と話者は説明する。

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結論:頭脳は借りても、育てたものまで借り物である必要はない

話者は、記憶やデータやアプリをどこに置くのかという大事な選択が、今は「みんなが使うサービスに預けるのが当たり前」という形で決まりつつあると見ている。MulmoClaudeが示すのはもう1つの選択肢であり、AIがアプリを作り、ユーザーのパソコン上のホストがそれを動かし、積み上がったものはすべてユーザー自身のファイルとして残る、というものだ。

何でも知っていて24時間支えてくれるアシスタントは今もどこにも売っていないが、育て方はもうある、と話者は言う。育てるのはユーザー自身であり、頭脳は借りてもいいが、育てたものまで借り物である必要はない、というのが話者の締めくくりである。