宮大工・金田優が文化財の「利権」から離れ、無名の古い社寺を若手と直す理由
街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜大阪府の太子町で宮大工の養成塾を営む金田優氏は40歳である。国宝や重要文化財ではなく、指定を受けていない築100年、200年の神社仏閣を、塾生とともに低い費用で直すことに力を注いでいる。取材では、塾生の暮らしと宮大工の技術、新築より修復を選ぶ理由、修行時代の経歴、文化財の世界に対する告発めいた批判、そして45歳での引退と引きこもりの若者を育てる構想までが語られた。以下は金田氏の説明と見解に沿ってまとめたものである。
一畳で暮らす塾生と、聖徳太子を祀る道場
道場の一室では、塾生1人に畳1枚が割り当てられている。金田氏は「立って半畳、寝て一畳」という言葉を引いた。私物は衣装ケース一つに収まる分だけで、大工道具は階下の工場の棚に置く。大阪の道場の塾生は現在2人で、岡山の校舎からも塾生が来て4人で作業しているという。修業期間は3年である。
部屋には菅原道真が祀られている。宮大工を「学問する」ことを塾のテーマにしているからだと金田氏は話す。一方、宮大工の神様として仏道の形で祀っているのは聖徳太子だ。近くの叡福寺に聖徳太子の墓があり、町名の「太子町」もそこから来ている。金田氏によれば、聖徳太子が大陸から仏教を持ち込んだことで組物などの木造技術も入ってきた。そのため宮大工に限らず、建築や土木の会社には聖徳太子を信仰するところが多い。この町に学校を置いたのもそれが理由だという。
宮大工と一般の大工の違い
一般の大工は住宅を建て、宮大工は寺や神社を建てる。金田氏は両者の違いを、使う道具と規模にあると説明する。住宅は30坪ほどだが、寺では50坪、100坪も珍しくない。そのぶん木材も大きい。ただし基本は同じだという。宮大工ならではの道具として、首の長い鑿(のみ)を見せた。穴の中を掘るためのもので、住宅ではまず使わない。
宮大工の人数について、専業はおよそ300人、住宅と兼業する人を含めると1000人ほどとよく言われるという。金田氏自身は「住宅ができない」ので専業だ。これに対して神社仏閣は全国に数十万ある。田舎ではそもそも宮大工がおらず、かつては住宅の大工が見よう見まねで直すこともあった。しかし最近はそれも少なく、断られるのではないかと金田氏は見ている。今の住宅はプレカットが中心で、鑿や鉋(かんな)を使えない大工が多い。すると古い建物を修理できないので、取り壊してプレカットで住宅のような寺を建てる、という流れになるという。
鉋の実演と「道具のスペシャリスト」
鑿と鉋で一応の仕事ができるようになるには3年かかると金田氏は言う。材木を刻めと言われて、その仕事をこなせる水準のことだ。電動の鋸や丸鋸もあるが、手道具が下手な人は電動工具を使っても下手だという。宮大工は道具を使うスペシャリストであり、根本的な使い方ができていなければ何を使っても同じ、というのが金田氏の考えである。
実演では、がたついた材の表面を鉋で平らに削ってみせた。金田氏が難しいと強調したのは、鉋をかける前の台の調整、つまり道具のセッティングである。刃の出具合は目で確かめるが、目に見えないほど薄く削ることもある。そのときは触った感覚や、刃がわずかに見えるかどうかで判断する。仕上げた面はつるつるで、水を弾く。柱や梁は仕上げ方ひとつで寿命が大きく変わるという。
卒業後の進路と宮大工の収入
卒業生の進路は、宮大工の会社に就職する、神奈川校や兵庫校といったフランチャイズ校舎を運営する会社で働く、寺社関連の業者に入る、金田氏の会社で働く、などである。一人前にはすぐなれるが、独立して自分で受注できるようになるまでは10年ほどかかる。受注できるかどうかは信用次第だからだ。
収入については、宮大工の多くは仕事そのものに価値を感じていて、お金は食べていければいいと考えていると金田氏は話す。腕のある人の中には年収数千万円の人も普通にいるが、金田氏自身は1000万円ほど稼げればそれ以上はいらないと考えている。
新築より高くつくこともある「修復」を選ぶ理由
金田氏の見方では、今の宮大工の会社の多くは古い建物を壊して新しく建てている。修復は新築の8割ほどの費用がかかり、下手をすれば新築より高くつくことも多い。そのため住職や宮司も新築のほうがいいと考えがちだという。ただ、最終的にはプロジェクトを立案する会社の持っていき方次第だとも述べた。
修復は経営上リスクが大きい。建物は一つひとつ傷み方が違い、開けてみるまで中の状態がわからない。追加費用を寺が保証してくれないこともある。会社が抱える職人の数で年間にこなせる仕事量が決まるので、修復を選ぶと工期が読みにくい。新築なら図面どおりに建てればよい。修復も経験である程度は読めるが、細部までは見通せない。
金田氏が挙げた最悪の例はこうだ。大きな木材は交換不要と判断していたのに、めくってみると見えないところから白蟻が入って中が空洞になっていた。それを直すには上の建物をすべて解体しなければならない。費用は契約で取り決めるが、今の寺社は予算のないところが多い。そのため金田氏が「鉛筆をなめて」見積もりを調整したり、修業中で人件費のかからない塾生の作業で吸収したりしているという。
それでも修復にこだわる理由は二つある。一つは、昔の人の仕事が見られて勉強になり、面白いこと。もう一つは、若手が挑戦しやすいことだ。新築は工業製品のように寸分違わず作る必要があり、小さなミスが取り返しのつかないものになる。だから怖くて若手に任せられない。修復なら、材を長めにとっておいて、失敗したら短くしてやり直すといった調整の幅がある。金田氏が自分で手を入れることもあれば、「もう一度やってみて」とやり直させることもある。修復はそもそもリカバリーの仕事なので、若手の失敗も取り戻せるというわけだ。
会社員から、法隆寺の系譜での住み込み修業へ
金田氏は大阪府柏原市の出身である。父親が建築業を営んでいて、小学校の先生から「あなたのお父さんに家を建ててもらった」と言われたことがある。家には端材がたくさんあり、子どもの頃から鋸や鑿、金槌で箱を作って遊んでいた。工業高校の就職活動のとき、担任に「木造をやりたいと言っていたな、寺や神社をやっている会社がある」と勧められた。大学進学も考えたが、学問だけで本当に身につくのかという疑問があった。実践で覚えるほうが早いと考えたうえ、自作パソコンのグラフィックボードを買うお金も欲しかったという。
新卒で入った会社では、会社員として管理業務をしながら、現場で職人の「手元」、つまり使い走りをさせられた。穴掘りなど、さまざまな職種の仕事に触れるのが当時の社風だった。CADや製図のコンクールで賞を取ったこともあり、会社は金田氏を管理職にしたかったのではないかと本人は振り返る。やがて「納まり」の図面を任され、立場も上がった。しかし、このままでは面白くないと感じるようになる。そんなとき、文化財の仕事で関わった先生から「こんな仕事をしていてはいけない、もっとがっつりできるところへ行け」と言われた。
こうして22歳ごろ、「法隆寺には鬼がいる」と言われた西岡家の棟梁の弟子、小川三夫氏の会社で修業することになった。ここからは図面を一切描かず、大工仕事だけに専念した。兄弟子が住む寮に入り、飯炊きと手元からのスタートだった。4年の社会人経験を経てゼロからやり直すのはきつい時もあった。芸人の世界と同じで一日でも早く入った者が偉く、腕が関係してくるのはある程度上に行ってからだという。なお、今では小川氏の会社からも新卒で入った会社からも「そんな人はいなかった」と言われていると、金田氏は笑いながら明かした。「利権をぶっつぶしまくっている」からだという。
金田氏の説明では、法隆寺は国宝が多く国が管理しており、行政側が宮大工を抱えている。小川氏はそこから自分で販路を切り開き、民間の寺社の仕事をしてきた人だという。
日給4000円からの3年間
修業中の給料は、最初は日給4000円、1か月ほどで6000円になり、3年目の終わりでも6500円ほどだった。30日休まず働いても20万円に届くかどうかだ。住み込みなので出費は食費くらいで、あとはほとんど道具代に消えた。エア工具や動力機械は会社の所有だが、手道具や100Vの電動工具はすべて自腹だった。
3年でほぼ何でもできるようになったと金田氏は言う。取材場所から見える規模の寺なら、当時でも建てられたという。ただしそれは自分が設計できたからで、普通は3年では構造の知識も設計力も身につかないと補足した。修業中の3年間には、業界の利権には気づかなかった。気づいたのは独立した頃からである。
「日本一の技術」の会社を去った理由
小川氏の会社を辞めたのは、ここで学ぶことはもうないと思ったからだ。金田氏は、棟梁の設計を格好いいと思ったことは一度もないが、技術は日本一だと感じていたと話す。業界でもっとも単価の高い会社で、客もそれに見合う寺社に限られる。金田氏はこれを、ベンツのディーラーに軽トラックを買いに来る人はいない、とたとえた。自分は軽トラックや一般乗用車の窓口の側だという。
出張先や休日には、地域の神社を見て回るのが好きだった。ぼろぼろの社で宮司と話すと「残していくのが大変」と打ち明けられる。金田氏は「この建物はここが素晴らしい、残してほしい」と、本人の言葉では「無責任に」語り、どうすれば自分が直せるかを常に考えていた。「坊主丸儲け」と言われるが、実際には過疎化の中で寺をどう残すかを真剣に考えている人たちがいる。そうした現場を身近に見ていたので、発注を受ける立場の宮大工が何もしないのはどうなのかと疑問を持ち続けていた。
聞き手が、患者が金を持っていないから手術しない医者のようなものだと言うと、金田氏は同意した。そのうえで、商売である以上ただ働きはできないが、無駄に儲ける必要はないと述べた。棟梁たちが高級車に乗り贅沢をするのを見て、その余裕があれば地域の神社を直せばいいと感じていたという。高級車の中にも格好悪い車があるように、技術は素晴らしくても建物は格好よくない。その技術を「軽トラック」に移転できれば大きな意味がある。単価などの課題はあるが、それを解決すれば全国の古い神社を残せるのではないか、と考えていた。
自分はエリートではなく、棟梁の下にいれば自分の将来は棟梁の8掛け程度だと見えてしまう。宮大工として偉くなりたいのではなく、ただ目の前の神社を直したいのだと金田氏は語る。町医者のように地道にやっている宮大工については「僕ぐらいやってる人はいない、いたら教えてほしい、むしろ塾をやってほしい」と答えた。塾のフランチャイズを運営する人たちは、若手を育てたい、地域の建物を残したいという志に共感して加わっているという。
伊勢、京都、奈良、日光の建築をどう見るか
次に移ったのは、東海地方で知られた会社だった。かつては全国どこでも名前を聞くほどだったが、代替わりで職人も管理者も設計者もいない「もぬけの殻」になっていた。再建の時期に入社したことで、営業、設計、積算、管理まですべて任され、会社のお金で経験を積めた。客には伊勢神宮系列の神社もあった。
伊勢系の建物について、金田氏は「凝っていない、シンプル」だと言う。ただし目に見えないところが洗練されていて、シンプルにするほど手の抜きようがない。複雑なものはごまかせるが、シンプルなものは「逃げが効かない」。白いシャツにワンポイントのマークを付けると、位置のわずかなずれがすぐわかるのと同じだという。用材は樹齢300年以上の木曽檜が基本で、規則ではないものの、それをさらに目利きして選ぶ。木は一本ごとに違い、どの面を見せるか、見え方と構造のどちらを優先するかも決めなければならない。見る人は100人いれば100通りに読み取る。その中で皆が納得する使い方を考える必要がある。
地域差については、京都の建物は線が美しく女性的、奈良の建物は古代らしい力強さがある、と金田氏は評した。日光東照宮は豪華で技法は非常に多いが、「センスないなと思って見てます」と言う。家康が本当にあれを望んだのかは疑問だという。金田氏の解釈はこうだ。もともと家康を祀る社だったものが、寄進を重ねるごとに格を認められ、宮号宣下を受けて「宮」になった。最上級の家康を祀るには最上級でなければならないという人間の忖度が、あの派手さを生んだ。金田氏は「信仰なんてその程度」「生きてる人間が考えること」だと述べた。
式年遷宮への距離
伊勢神宮の式年遷宮は20年に一度、社殿を新築する。金田氏によれば、背景には「常若(とこわか)」という神社独特の思想がある。常に清らかな状態を保つことが神への最大の敬意であり、朽ちる建物を定期的に新しくしてきた。これは日光の忖度とは性質が異なるという。
職人は神宮が独自に公募する。約7年のプロジェクトで、最大20人ほどのグループが5つほどでき、延べ100人規模になると金田氏は説明した。毎週のように応募者が来て試験を受け、合格すればグループに入る。1〜2週間一緒に働くうちに、残る人と出ていく人が入れ替わる。人数に制限があるので、仕事のできない人を循環させる仕組みではないかと金田氏は推測している。
参加したいとは全く思わないという。金田氏にとってそれはステータスにすぎない。参加者は強い気持ちで奉仕しているが、伊勢にはお金も人もある。その気持ちがあるなら、お金がなく直せない建物をやるべきだというのが金田氏の立場である。出雲出身の聞き手が出雲大社の例を尋ねると、出雲や春日は全面的に建て替えるのではなく修復していく方式で、「式年造替」と呼ぶのではないかと答えた。伊勢はすべて新しくするので文化財的価値はない、とも述べている。
東海の会社を2年ほどで辞めたのは、社長が金に汚かったからだという。金田氏らが組んだ予算どおりに発注すればよいのに、業者を叩きに叩いて疲弊させる。職人たちも幸せそうではなかった。独立したのは27〜28歳ごろだったと記憶している。
文化財の世界に対する批判
独立後、金田氏は京都の出雲大神宮に関西支部という部署を作り、その役員を務めていた。金田氏自身が寺社の「ファン」なので、宮司や住職と親しくなるのが得意だという。すると仕事を任せたいと声がかかる。文化財の建物は制度上は誰が施工してもよいが、そこに「利権の人たち」が入ってきて仕事を持っていった。宮司からは、本当は金田氏に頼みたいのに、なぜその5〜6倍の単価の会社にやらせなければならないのかと嘆かれたという。
金田氏が問題にするのは「文化財技師」、いわゆる文化財の先生たちである。彼らは「金田さんは無名だから任せてはだめだ」「実績のある会社にさせるべきだ」と、新規参入の業者を排除するよう強く働きかけるという。寺社には地域の人が役員として入っていて、合議で決める。多数決になると結局「ちゃんとした」業者に落ち着く。仕事は同じなのに支払額は何倍にもなる。金田氏は、これは文化を守っているのか、天下り先の世話をしているのか、と疑問を投げかけた。
金田氏の説明では、大工は学術的な知識を持たない。一方、文化財技師は様式や年代、技法に通じ、修復方針や予算規模を決める権限を持つ。昔は大工がすべてできたが、分業化で大工はそうした人たちの世話をする側になったという。文化庁から委託を受ける独立行政法人があり(名前は言わないとした)、それが問題になると、今度は民間の「なんとか協会」ができて、文化庁や法人の職員が天下りしていく、と金田氏は語る。はじめは古い建物が好きでやる気のあった人も、学校の先生が教育委員会に染められるように、一度受け取れば同じになってしまうという。
具体的な体験として、金田氏は新卒で入った会社での出来事を挙げた。現場事務所に文化財の先生が来ると業者が並び、「今日はあんたいくら持ってきたん」と裏で金を渡していた。伸びそうな若手だった金田氏にも、業者が「ご飯でも」と3万円ほどを渡してきた。断っても机の中に入れられるので、従業員を通じて返したという。ただし金田氏は「立証しろと言われたらできないが、現場は見ている」と述べている。まともな人もいるとしつつ、自分が見てきた中にはいなかったとも付け加えた。
補助金の仕組みにも触れた。所有者と国が費用を分担し、国指定の重要文化財なら7割、あるいは半分だったかが補助される。都道府県指定なら2割ほどになるという(数字は金田氏も曖昧だと断っている)。補助を受けるには文化財技師を付け、資格を持った職人を使うといった条件がある。普通に工事すれば安くできるのに、文化財仕様の制約のなかで中抜きされ、先生たちの懐に入るというのが金田氏の見立てだ。金田氏は、そもそも文化財とは人間が認定し線引きしたものにすぎないと言う。独立して3か月ほどで文化財には関わらないと決め、指定されていない大切な社寺を直す方針に切り替えた。
嫌われながら続けた塾と、手取り27万円
業界から嫌われ始めたのは独立後、とくに塾を始めてからだという。当初は馬鹿にされていた。ところが、8000万円規模の仕事を塾生と2000万円ほどで仕上げた例などが出てくると、仕事を奪う存在と見なされるようになった。「塾費を集めて私腹を肥やしている」とも言われた。金田氏の手取りは27万円で、以前は24万円だった。従業員のほうが給料は高いという。子どもが増えて妻に頼まれ、少しずつ上げてきた。子どもは4人いて、前の結婚での子も1人いる。東京では無理だが、田舎なので生活できると話す。
塾はかつて費用をすべて徴収していたが、寮費と食費を無料にし、来年度からは大阪校舎で完全無償化する予定だという。原資は、社会人になった元塾生からの毎月の寄付や、メディア出演を見た支援者からの寄付である。受け取ったお金は自分の給料ではなく地域の社寺の再生に使っており、結果として自分たちに戻ってくる仕組みだと説明した。
嫌がらせは今も続いている。文化財を扱う職人向けの資格講習に行った際、トイレで「調子に乗るな」と言われたという。職人に資格など「いらない」と金田氏は考えている。YouTubeも早くから始めたが、当時は「汚れたことをするな」と言われた。今ではそう言っていた人たちが普通にInstagramに投稿している。ただ、そうした人たちがいたからこそ頑張れたとも述べた。
45歳での引退と、引きこもりの若者を育てる構想
金田氏は5年後、45歳で引退すると決めている。40歳を過ぎたら「老害」であり、上の世代がいることで若い人の可能性が阻害されているというのが理由だ。自分がいると塾生は甘える。自分がいなくなり、若い人が残したいものを自分たちの手でやらなければ、この先は残らないと考えている。
引退後に取り組みたいのは、引きこもりの若者の社会復帰である。塾には引きこもりの子がよく来て、職人になっていった。しかし塾生と同じ場で生活すると引っ張られてしまうことがある。そこで、林業や農業と組み合わせた社会復帰の場を作る構想だ。ある程度まで引き上げたうえで、塾に入るか、宮大工として働くかを選べるようにしたいという。すでに親たちとやり取りを続けている。家庭だけでは解決に限界があるし、国は責任を取れないからできない。自分にも子どもがいるので、自分の子がこうなったらと思うと胸が詰まる、と語った。1000人もいない宮大工の世界で10人でも育てられれば、大きなシェアになるとも話した。
山で暮らせばお金はさらにかからない。切った木はフランチャイズの運営者が買い、作物は自分たちで食べたり塾に売ったりできる。管理に困っている山の持ち主から、所有権を求めずに管理を引き受ければよいという。娯楽は建物を作ることで、スマホがなくても一日中過ごせる。大工道具は鍛冶屋がある程度まで作り、使えるように研いだりカスタマイズしたりして「育てる」のは職人の仕事だ。それが楽しいのだという。誰でもできるが今日明日できる仕事ではないので、甘やかすことは本人の将来を奪うことになると金田氏は言う。
教え方、逃げ出す塾生、そして後継
教えることについて、金田氏は「たぶん一番うまい」と自負している。最初は、なぜわからないのかを言語化できずに苦労したが、パソコンが使えたので動画で教えるなどして工夫した。「なんでわからへんねん」では人は育たず、わかっていないのは教える側だと言う。できない人を見るほど、どこでつまずいているのかがわかって面白いと話した。
かつては逃げ出す塾生もいた。引きこもりだった子が現実から逃げて実家に帰ろうとするのだ。親が「帰ってきても引きこもりになるだけ」と突き放せば残り、情に流されて甘やかすと残らない。警察に捜索願を出し、金田氏が4日間探し回ったこともある。見つけた後は親を呼んで会議を開き、塾に戻したという。
聞き手が戸塚ヨットスクールの宮大工版のようだと言うと、金田氏はメディアからもそう言われると認めた。戸塚宏校長の勉強会に行ったことがあり、尊敬していると話す。感情のスイッチが入ると敵を作るタイプだが、勉強会では理論的に教えてくれるという。聞き手が「人間が育つには不快感が必要」という考えに触れると、金田氏は学ぶ前から自分自身の経験でそう思っていたと応じた。塾生と友達になるつもりは一切なく、いかに嫌われ、いかに不快なことをして成長させるかを考えている。厳しく言われた塾生の心のケアは妻が担ってきた。今では卒業生も働きながら、自分の昔の経験を話してケア役を務めている。
金田氏の役割を引き継ぐ人が必要なので、45歳でやめると周囲に宣言している。後継になりうる人は何人かいるという。事業承継がきちんとできなくても、別のやり方でやる人が出てくるだろう、魅力のない業界ではないので誰かがやる、と金田氏は見ている。
あれ?この方か。そうです。よろしくお願いします。あ、初めまして。街録チャンネルの三谷と申します。お疲れ様です。ありがとうございます。お時間作っていただきまして。
金田さんが、この町で宮大工の専門学校、養成塾をやってらっしゃるってことで、ちょっとオファーさせていただいたんですけど。
横浜で女性が笑顔になるための安全安心な医療を提供し続ける産婦人科、朝川安泰さんの提供でお送りします。
ここのこの部屋は何の部屋なんですか? ここは道場で、この一畳で塾生は生活します。 この一畳が塾生のスペースなんですね。 そうです。一人一畳。立って半畳寝て一畳。 ははは。立って半畳。 天下取っても二合半でしたね。
ああ。何かあれがあるんですか?この一畳プラス、この衣装ケースって言うんですかね?が、この塾生さんの全ての荷物。 そうですね。生活はもうこれだけです。あと大工道具とかそういうのは下の工場のところに棚がありますんで、そこが充てられてる。
何名の方がここで修行というかを積まれてらっしゃるんですか? 大阪は今塾生2人ですかね。で、岡山の校舎からも今こっちに来て作業一緒にしてるので4人かな。 3年間通われるんでしたっけ? そうです。
あの絵は誰ですか? これは菅原道真ですね。 これなんで菅原道真を飾ってらっしゃるんですか? ここで宮大工を学ぶということで、宮大工を学問するっていうのが我々のテーマなので、上座にお祀りして。
教えがあるんですか?その宮大工に通ずるような。 あ、それはないんですけども、教えがあるのは聖徳太子が宮大工の神様なんで、実際に仏像としてお祀りさせてもらってるのは聖徳太子。 あ、これ聖徳太子ですね。だってこの町も太子町。 あ、そうです。近くに叡福寺っていうのがあるんですけど、そこに聖徳太子のお墓があって、それでここは太子町っていう、聖徳太子の太子から取られたとこです。
聖徳太子が宮大工の神様として崇拝されていて、なぜかと言うと朝鮮とかから仏教を持ってきたのが聖徳太子なんですよ。なんでその聖徳太子が仏教を持ってきたことによって、組物とか、そういった技術が入ってきたので、宮大工に限らず建築会社とか土木の会社とかは聖徳太子の信仰があるとこは多いですかね。
だからここの町にこの専門学校があるんですか? あ、そうですよ。 作ったんですか? はい、そうです。 ちょっとその下の作業場とかも見てもいい? はい、いいですよ。今から行きますか?
あ、全然。宮大工ってそもそも普通の一般的な大工さんとの違いってどういうとこなんですか? 普通の大工さんは家作りますね。僕らはお寺とか神社作るので、使ってる道具とかが違うとか、あと規模感ですかね。お寺とかだと50坪、100坪って普通にあるんですけど、住宅だと30坪とか、規模感がそれぐらいですよね。なんで木材の大きさとか、そういったものが違うぐらいで、基本的には一緒ですけどね。
宮大工さんならではの道具ってどういったものなんです? この首が長い、首長って言うんですけどね、穴屋ノミっていうやつとかね。穴の中をこう取ったりとか、いう感じの。住宅では多分使わないでしょうけど、大きい古民家とかやったら使うと思いますけどね。
宮大工さん自体は今全国で何人ぐらいいるんですか? 専業でやってる人は大体300人ぐらいって言いますけどね。で、あと住宅とかやってる人もいてるんでね。 ああ、そうか。兼業でと。 その人が大体1000人ぐらいとかね、よく言いますけど。 金田さんは専業宮大工ですか? そうですね。僕は住宅ができないので。
でも300人って。神社仏閣って全国に何件あるんですか? 何十万とありますよね。お寺とか神社足していくとね。 それを300人で修復したり修繕したりしなきゃいけない状況なんですか? 兼業の方もいるんでね、1000人規模。あとはもう田舎とか行くと宮大工自体がそもそもいてないので、住宅やってる大工さんが見よう見まねでやったりとか。 ああ。 けどそれももう最近はないんじゃないですかね。断る。普通に「できません」って言って。
今の住宅はプレカットなんで、こういうノミやカンナを使えない大工さんが結構いてて、てなると古い建物を修理したりとかするのができないので、もう潰してしまって、プレカットでお家みたいなお寺がボンって建つみたいな。
そういうノミとカンナを扱うっていうのは、どれぐらい修行すれば扱えるものなんですか? まあ3年って言いますね。3年やればノコギリ、ノミ、カンナが十分に一応使えて、何か仕事できるぐらいはね。この木材刻んでねって言われたらその仕事ができるとかいうのが3年。
そういう作業は、電動とかでうまくできるようになったりしてないんですか? それありますよ。ノコギリも丸ノコっていうのありますしね。ただ手道具が、こういった実際に使うやつが下手くそだと、電動のノコギリとかも下手くそなんですよ。 あ、なるほど。どっちにしても下手だってことなんですね。 そうです。僕らはその道具を使うのが仕事なんですよ。道具を使うスペシャリストなので、根本的な道具の使い方が下手くそな人間は何使っても結局下手くそなんで。 そっか。それが手道具だろうが電動だろうが、そこは変わんないんですね。 そうです。
今金田さんに見せていただける作業とかってあったりしますか? 何にしますか?穴掘り、ノミ、カンナですか? あ、ノミとかカンナとかもめっちゃ分かりやすいです。 カンナなんかしましょうか? いいですか? いいです。ちょっとガタガタなんでちょっと削りますね。 へえ。
いう感じでね、表面をこう平らに。もうだいぶ今なんで。 下手だとどんな感じになっちゃうんですか? 片側に寄ったりとか。なんか力のバランスがどっちかに癖あるんでね。とか、難しいのね、この台の調整するのが難しいですよ。 あ、カンナをかける前の段階が大事なんですか? そうです。道具のセッティング、どれぐらいの調整ができてるか。
さっきコンコンやってたじゃないですか。あれは目分量っていう感じなんですか?もう自分の感覚? 目視して刃の出具合を見たりとか。あとは目視で見えないレベルまで削ることもあるので、薄さでね。その場合はもうこの触った感覚とか、ちょっとカンナにこう見えるか見えないかとか、なんかそういうやつとかね。
このカンナかけるってのは、このガタガタしたところを綺麗にする。 はい。木材をこう整形したりとか、もしくは表面を仕上げると、ここがツルツルになってるんで、今。 これ触ってもいいですか? いいすよ、全然。 あ、本当ツルツルですね。 で、ここに水が乗っても水がこう弾くんで。 へえ。確かにちょっとこの横は。 これです。 ザラザラしてます。こういうのを柱とかに使うってことですか? あ、そうですね。柱とかね、梁とか。やっぱこう仕上げてるだけで寿命が全然違うんで。
この専門学校で2名。 そうです。大阪の道場は2人ですね。 そっか。卒業したらみんなどうなってるんですか? 卒業したら宮大工さんの会社で働くか、うちの関連校舎ですかね、神奈川校とか兵庫校とかフランチャイズの校舎あるんで、そこの運営母体の会社で働くか。建具屋さんとかね、お寺とか神社のね。そういうとこか、うちで働くか。
一人前なのは10年ぐらいかかるでしょ、これ。 独立するまでにね、大体10年ぐらいかかるよねっていう。まあ一人前にはすぐなれるので、そこから仕事を実際に自分で受注してできるかどうかっていうのは信用しかないので。
動画で見たんですけど、大工さんの一人当たりの賃金は、一般の住宅より宮大工さんが低いんですか? だと思いますよ。 ああ、特別な技術を持ってしても。 宮大工っていうのは基本的に、仕事をすることに価値を感じてる人がほとんどで、お金は別に自分らが食べていけばいいやみたいな。まあその中で儲けてる人はいてますけどね。腕があって、やり手の人は年収何千万って人は普通にいてますけども、けどなんかそこも別に、大体1000万ぐらい稼げれば別にこんなにいらないよねって思うので。
壊れたものを修復していくか再生していくっていう作業が、今は割と主って感じなんですか? うちの会社はね、それが多いですけど。けどほとんど今の宮大工さんの会社は、古い建物潰して新しいものを建てる会社が多いんじゃないですか。
その選択はお寺を持ってるオーナーの方の判断なのか、もしくはこれ直せる人がいないから基本は潰して新しいの建てちゃうっていうことなのか、どっちが多いんですか? あ、直せないことはないんですけど、直すとやっぱり費用がかかるんですよ。結構ね、新築する大体8割とか、下手したら新築するより高くなることの方が多いので、なると新しい方がいいよねってお坊さんとか神主さんも思ったりとか。まあけど結局はそこのプロジェクトを立案する会社の持っていき方だと思うんですけどね。
金田さんの会社は基本的には再生の方をお勧めしてるというか、やらせて欲しいってお願いしてる感じが多いと思いますね。 そうですね。うちはね。
古くなり方とか経年変化って、全部一個一個違いそうじゃないですか? そうですよね。 だから毎回そのオリジナルの修復の仕方になるって感じなんですか? そうです。だから経営上はね、修復するってのは非常にリスクがあることなんで、実際こうやって蓋を開けてみたらどうなってるかわかんないんで、これに対して費用をお寺が保証してくれない時もありますし、てなるとやっぱリスクあるじゃないですか。で、あと自分たちの中にいてる職人が何人いてるかによって年間どれぐらいの仕事ができるかってもう決まってくるんで、それを修理選択するとどれぐらいかかるかっていうのは未知数なとこがあるんで。新築の方が図面通りのものをただ建てればいいだけなんで、だったらそんな別に難しい話ではないですけど、修理はそうはいかないので。
修復の方が、まあ経験則によってある程度は読めるんですけど、けど細かいところまではやっぱりそこまで目視できるわけじゃないので。
そういう風になるべく修復したいなって、採算度外視でやってるのはなんでなんですか? 勉強になるからですよね。昔の人の仕事とか見れるし、それが面白いですけどね。僕はそれが面白いなと思ってる派で。で、あと若い子らが挑戦しやすいんですよ、修復のって。 へえ。どういうことですか?挑戦しやすいって。 新築だとね、本当に工業製品みたいに全部ピチッと作らないといけないんで、ちょっとしたミスがもう取り返しがつかないんですけど、修復だったらね、多少ミスってももう一度やり直して、また短くしても、長さだけ長くしとけばいいように、色々調整の幅が結構あるんですよ。そしたら若い人は仕事できるでしょ。したら色々技術を学べるでしょ。けど新築だとね、怖くてようさせれないんで。
絶対ミスが許されないのは新築の方ってことなんですね。 そうです。 そう考えると、難しい現場だけどもミスはある程度大目に見てもらえるのか、後で金田さんがサポートすればいいやっていうことができるんですね。 そうです。リカバリーがね、できるんですよね。 そっか、そもそも修復はリカバリーだから。 そうです。 そこでミスられようが、最終的にオッケーにしちゃえばいいみたいな。 自分が修正してやることもありますし、もう一度やってみてくださいという風な形でもう一回させることもありますし。
さっき言った蓋開けてみたら大変だっていうの、最上級みたいなパターンだとどういうケースがあるんですか? ここの大きな木材とかは変えなくてもいいよねっていう判断をしてたんだけども、めくっていくと白アリが見えないとこから入ってて、もう中が空洞化してたとかね。したらそれをやるために上の建物全部ばらさないといけないとかね。それだけで3万ぐらいかかるとかね。
それはどうするんですか?その費用はオーナーさんが出してくれる場合もあるんですか? まあ、そういうのもありますけどね。一応契約で決めてね。ただやっぱお寺とか神社も今予算がないとこが多いので、うちとかはもう僕がなんとかうまく鉛筆なめして。だから、若い子ね、修行ですから。労務費かかりませんので、そういったところで調整したりとかしながら、みんなで一つのものを作り上げていくというかね。
なんでこの宮大工の学校やるとか宮大工になったのかみたいなことを、生まれてから今までちょっと聞きたいんですけど、今おいくつなんですか? 今40歳ですね。 40歳。出身は大阪ですか? 出身大阪です。大阪の柏原市という。
宮大工なんていう職業にいつ出会うんですか? 工業高校にいてたんですけど、そこの就活の時に学校の先生が「なんか木造やりたいって言ってたよな」みたいな。で、「お寺とか神社やってる会社あるけど」みたいな。 え、なんで木造やりたいと思ってたんですか? 元々うち父親が建築屋なんで、小学校の時に学校の先生が「あなたのお父さんにお家作ってもらったんだよ」みたいな。で、僕も小学校の時ぐらいから何か作るのが好きだったんで、家に端材とかよくありましたからね。それでノコギリで切って箱作ったりとか、よくしてましたね。
え、じゃあカンナとかもう子供の頃から使ってるんですか? いや、カンナは持ってなかったですね。ノコギリとノミとか、あと金づち。 木を使って何かを作るみたいなことはもう子供の頃からやってたんですね。 そうですね。身近でしたね。
高校卒業して大学とか行かずに18で就職することって、ちょっと抵抗なかったんですか? 大学行こうかなと思ってたんですけど、学問だけでそんなん果たして学ぶんだろうかってのもあったしね。実践で覚えた方が早いんじゃないのみたいな。当時お金も色々欲しかったんで。 あ、なんでお金が欲しかったんですか? パソコン組み立てたりとかして、パソコンでCADとかしてたんで、グラフィックボードとか新しいやつ欲しかったりとかあったんで。
弟子入りみたいな感じではないんですか?普通に会社員として入るんですか?そこに。 あ、会社員でね。僕は初め管理やりながら、現場の土方のおっちゃんとかいてるじゃないですか。ああいった人たちの手元をずっとさせられるんですよ。 手元ってどういう意味ですか? まあ使いっ走りみたいなもんすよね。 ああ、雑用係。 穴掘れとか言われてね。そうやっていろんな業種の仕事に触れるっていうのが当時の社風だったんですよ。大工だけで行きたかったんですけど、僕色々CADとかも触れたりとか、製図とかもコンクールでね、賞もらったりしてたんで、会社としては管理職みたいにしたかったんじゃないですか。
ああ、じゃあ管理職候補として18歳からちょっと期待されてるんですよね。 いやいや、もうただの会社の歯車の一つですよ。 入った時はそんな宮大工らしい修行ってのは別にしてないんですか?最初は。 あ、ないです。本当手元です。宮大工さんの。まあけどそれぐらいから納まりの図面を会社から描けって言われて、描いたりとかして。そうやって下積みみたいなのずっとやって、けどやっぱりこう偉くなって、このままなんか面白くないなと思って。もっとがっつりやりたいってのがあった時に、ちょうど文化財の仕事してたんですけど、その時にそこの先生から「こんな仕事してたらあかん。君はもっとがっつりできるところ行った方がいい」って言われて。
法隆寺にね、西岡さんっていう、「法隆寺には鬼がいる」っつってね、有名な人がいてるんですけど、その方のお弟子さんのところで修行させてもらえることになって、そこからはもう大工だけ。 ここから本格的な宮大工修行が始まるんですか? 本当にもうそれ以外、図面描いたりとか一切しなかった。 何歳ぐらいのことなんですか?会社員じゃなくて本当にその職人の弟子になるのは。 これ22とかだったんじゃないですかね。
え、弟子入りってことはもう住み込みになるんですか? そうです。寮の中に入って、そこには兄弟子が住んでて、先輩ですよね。で、飯炊きから。 ご飯のお世話もするんですね。 そうですね。飯炊きとまた手元みたいなとこからスタート。
4年社会人経験して、ある程度仕事できるようになったけど、また0から始まるのきつくなかったですか? きつい時もありましたね。なんか話しても通じない兄弟子がいてるので。 めちゃくちゃ縦社会なんですか? そうですよ。芸人さんの世界とかと一緒で、1日でも早く入った人が偉いんです。 え、それって腕前関係ないんですか?あんまり。 腕前はある程度から関係あるんですけど、下の人たちの場合はどんぐりの背比べなんで。
その仕事は法隆寺を修復し続けるみたいなことだったんですか? 法隆寺はね、結構国宝とかの建物が多いので、国が管理して、行政が宮大工さん抱えてるんですよ。だからその人たちがやるのが基本なんですけど、その西岡のお弟子さんは自分で販路を切り開いて、民間の仕事ですよね。民間の寺とか神社の仕事をやって。結構もうこの宮大工の業界では、小川三夫さんって言うんですけどね。その西岡棟梁のお弟子さん。小川三夫さんの会社で。まあ言ったら怒られるんですけどね。「お前なんかいてなかった」みたいに今言われてるんで。
あ、そうなんですか。 はい。元いてた金剛組っていう新卒で入った会社も、そんな人は、いてたとしても少ししかいてませんでしたとか。 今ちょっと村八分みたいになっちゃったんですか? そうですね。もう利権をぶっ潰しまくってるんで、今。
え、宮大工の、法隆寺なんてまさに利権っていうことなんですか? 法隆寺というかね、文化財自体が利権ですよね、そもそもがね。 だって国のお抱えの宮大工にしかその仕事は降ってこないとこなんですか? そうですね。まあ一応入札とかありますけどね。 コンペ方式も一部あるってことなんですか? いや、ほとんどそうなんじゃないですか? 一部、ほとんどはコンペ方式ですか? 独占禁止法に触れるんでしょうけども、ある一定の技術を持った人じゃないとできなくて、ある一定の技術ってじゃあ何なのって言うと、民間団体が発行してるものとか、あと独立行政法人が発行してる資格とか、中では新規参入者ができるというものはないですよね。まあ、あるのはありますけどね。ロビー活動して、ちょっと仕事もらいたいとか。
22から入って、何年修行したんですか?そこ。 そこには3年いましたね。 その3年間給料はもらえるんですか? 最低賃金が、あ、最低賃金でもないですね。1日4000円とかでしたからね。 1日4000円。 日給4000円です。で、1ヶ月ぐらい経ったら6000円とかだったんかな。 3年目の最後でいくらになったんですか? 6500円ぐらいじゃないですか? 6500円だと、すげえ、30日休まず働いたとしても20万円行くかいかないかみたいなってことですか? そうですよ。 住み込みだから一応暮らせてるって感じなんですか? そうですね。かかる費用が食費ぐらいですからね。あとはほぼみんな道具代に消えていきます。 あ、道具は自費なんですか? はい。エア工具とか、あとは動力の機械、さっき見てもらったようなああいうのが会社が所有してるものなんですけど、手道具とか100Vの電動ノコギリとか、そういうのは全部自費です。
3年でどんなことができるようになってたんですか? ほぼほぼできますよ、何でも。3年やってたら大体できます。 今目の前にあるじゃないですか。あれぐらいの規模のお寺作ってって言ったらできましたか?当時3年目で。 僕はできましたけど、普通に入って3年では、やっぱり構造の知識とかそういう設計がそもそもできないですから。 ああ、そう。設計ができたから、それが腕前になったんですね。 そうですね。
3年やってくる上で、この宮大工の世界って利権まみれなんだなってのに気づいていくっていう感じなんですか? 3年やってる時は気づかなかったですけどね。独立とかしたタイミングぐらいからですかね。文化財をしたくてもできないという現状があったりとか。まあけど僕は別に文化財かどうかは人間がただ決めただけのものなので、それには別に固執してなくて。それよりも皆さんがやらないような100年、200年ぐらいの建物って結構あるんですよ。指定されてないものでね。そういったものをいかに残していけるのかというところを、まあやりたいなと思ってたんで。
3年で独立っていうのはどうなんですか?早いんですか?業界的には。 その後にね、また別の宮大工さんの会社で働いてたので。 ああ、そうなんですか。 独立いつだったかな?27とか28とか、それぐらいだったような気がするんですけど。
金田さんの場合はなんでその転職したんですか?そのタイミングで。 ここで学ぶことないかなと思いました。そこの棟梁の設計とか見てて、かっこいいと思ったことは一度もない。けどもう技術はすごかったです。もう日本一の技術やなと思いました。そこは一番業界でも多分単価が高いとこなんで何でもできるんでしょうけど、まあその頃から地域にあるようなお寺とか神社見てたんで、そこではできないよねっていうので、コスパがあって残していけるような方法とかね、そっちを僕はもう模索してたので、技術さえ覚えたらもうここで学ぶことはないなと思って。
日本一の技術と思った名門だから、お金をたくさん持ってるような神社仏閣しか、そもそも発注できないってことなんですか? そう、そう。 たくさん断ってるなって感覚で見てたんですか?横から。 あ、そもそもそういうお客さんつかないんですよ。車とかで言うと、ベンツのディーラーに軽トラ買うような人行かないじゃないですか。そもそものがね。けど僕はどちらかっつうと軽トラとか一般乗用車の方の窓口なんで。
そのベンツの会社にいながら、その軽トラ的な、一般乗用車的な神社仏閣に会う機会あったんですか? 休みの日は、僕は基本的には何か道具作ったりとか練習したりしてるんですけど、会社に行けない日とかもあるんで、そういった時はこうやって散歩してね。出張がほとんどなんで、出張行った先とかでこうやって見て回るのが好きで。ボロボロになった神社とか見て、そこの宮司さん、神主さんとかとね話して、「これ残していくの大変なんだよね」みたいな話をされたりとかして。まあけど「この建物はここがものすごくいいんですよ」みたいな話をして、「これは残してほしい」みたいなことを、まあ無責任に僕は言ってて。そこでなんとか自分が動けないのかなと思って。
これはどうやって直せるかなみたいなことを常にちょっと思ってた。 ああ、こういう仕事したくてもここじゃできないんだなってのは、ずっとモヤモヤとしてあるわけですね。 そうですね。ただ技術は本当すごかったですよ。
その技術はすごいけれども建てる建物がかっこよくないっていうのは、センスがないってことなんですかね。 高級車とかでもダサいなって車ないすか?そんな感じです。けどこの中に組み込まれる技術はものすごくて、これを例えば軽トラとかに技術移転した時に、それってものすごくすごいことになるよねって。けどそのためには単価の問題とか、いろんな解決しないといけない問題があるんですけど、それは自分がやればいいだけなんで。それが実現したならば、全国にあるそういった古い神社は残していけるんじゃないかなと思って。 高級車みたいな神社以外をちゃんと残していきたいっていう気持ちが、もうその時に芽生えてるんですね。
そういった神社の宮司さん、神主さんとかお寺のお坊さんとかといろんな話させてもらうんで。よく坊主丸儲けとか言いますけど、実際そんなのじゃなくて、本当にこのお寺をどうやって残していこうかって真剣に考えてるけども、この田舎では人がいなくなり、残していけなくなる。そういった難しい問題を僕は身近で見てたので、それを発注される宮大工が何もしないのか。それはちょっとどうなのかなっていう、常にその疑問を持ってたので。
ああ、医者が、患者がいるけどそいつ金持ってないから手術しませんっていうようなもんですもんね。 そうそう。本当そう。けど僕らも商売ですからね。かと言って無駄に儲ける必要はないと僕は思って。僕らの棟梁とかはええ車乗ったりとかね、贅沢してるのを見てて、もし贅沢するだけの余裕があるんであれば、そういった地域の神社とか直すなりと、僕は見てて思ってたんですけど。
なんでそういう感性でいれたんですか?だって言ったら、もう3年で、他の人は建てれないだろうけどお寺建てれるぐらいの、宮大工で言うとエリートなわけですよね、おそらく。 いや、エリートじゃないです。ただそこの棟梁とかに惚れ込んじゃうと、もう天井が見えるじゃないですか。 ああ。その人の8掛けぐらいにしかならないすもんね。 けど僕は別に宮大工になるとかそういったこと別に思ってもないし、ただこの神社を直したい。だからそれを直すためにどうするかをただ考えて、ただやるだけなので。
そういう考えにどうやってなったかなって思いますか? 休みの日に神社行って、そんな人たちと話して。だから医者とかで言うと、患者さんとずっと話をしてると、いろんな背景とか分かってくると、無限にはできないじゃないですか。だからそうやって町医者してね、なんとかできる限りやろうと思ってる人もいれば、金儲けに走ってる人もいたら、まあそれは業種問わずに一緒だと思いますけど。
なるほどな。町医者的に頑張ってる宮大工さんは結構いるんですか?それともかなり少ないんですか? 僕ぐらいやってる人いないですよ。いや、いてたら教えて欲しいですけど。まあいてたら逆に塾やって欲しいですけどね、同じ同志としてね。まあけど塾に入ってる人たちは、若い宮大工さんをちゃんと育てたりとか、地域にあるものを残していきたいとか、そういった志を持った方が共感してくださって、塾をフランチャイズで運営してくれてるので。
3年修行したその次の会社は、どういうとこが学べるポイントかなと思って選んで入ったんですか? 次のとこはね、三重県にある会社でね、そこは東海地方では結構有名な会社やったんですけど、もう昔はすごかったんですよ。全国どこに行ってもそこの会社の名前聞くっていうぐらい。けど代が変わって、会社がもう職人さんもいてない、管理する人もいてない、設計する人もいてないっていう、もう本当にもぬけの殻みたいな状態になってしまって。 へえ。 ちょうどその時ぐらいに僕が入って、この会社をもう一回盛り上げようっていう時で、営業、設計、積算、管理とか、その辺のやつはその時に全部やらしてもらったんで。
スカスカの状態だったからこそ、逆に全部経験させてもらえたみたいな。その会社のお金で。 そうそう、そうです。 三重とかだと伊勢神宮とかを中心に、なんかすごい有名な神社とかお寺とかいっぱいありそうです。 そうですね。お伊勢さん系列の神社とかもお客さんの会社だったんで。 え、やっぱその伊勢系列の建物ってやっぱすごいんですか?凝ってる作りなんですか? いや、凝ってないですよ。シンプルですね、見た目はね。ただ目に見えないところでの洗練された、っていうのは、シンプルにすればするほど手の抜きようがなくなってくるので。複雑なものはごまかせるでしょ、色々。 シンプルな方が究極難しいんですか? 素材の力も生きてきますしね。難しいですよ。
どういうとこに差が出てきてるんですか? えっとね、逃げが効かないってよく言うんですけど、このシャツ1枚作るのと、なんか派手なTシャツ作るのだと、気がつくところが、白地のところにこうピンポイントのマークがポンってあると、この位置の絶妙なバランスってのが見えるんですけど、変な位置にやったら、あ、おかしいってわかるじゃないですか。けどなんか複雑な服とかって、なんかおしゃれなのかなみたいに、ぼやっとしてるんですよね。 シンプルな配色とかシルエットとかで勝負しなきゃいけないから、そのかっこよさで勝負するのが難しいんですか? そうです。 伊勢神宮とかはそのシンプルの究極系なんですか? そうですよ。木材なんて木曽檜って言ってね、樹齢300年以上の木を使ってますから、それをさらに目利きしないといけないですからね。そこらにある木をポンって使うわけじゃないんで。
樹齢300年の木しか使っちゃいけないっていうルールがあるんですか? そういうわけじゃないんですけど、主たるものは木曽にある木曽檜を使うというのが、お伊勢さんのご造営の基本なので。なのでその木の使い方一つ。木は同じものではないので、この柱の面によっても見え方違いますし、見え方を重視するのか、力的な構造的なものを優先するのか。色々それを使ったことによって読み取る人が100人100通りを読み取るので、その中でもみんなに納得してもらえるような木の使い方とかね。
どれだけかっこいいもの作れるかってことにこだわってる感じですか。 まあかっこよさ、意匠性を重視する人もいてるし、構造の迫力感を重視する人もいてるし。京都の建物って、こう美しいですよね。線、なんか女性的というか。まあけど男性的なものもあるんですけど、奈良の建物ってドンってあるこの力強さというか、古代の建物やなっていうね。
え、じゃあ日光とかはどういう系なん? 豪華なんすよね。ギラギラギラギラっとね。僕はセンスないなと思って見てます。 確かに。だからあれは、言うならばごまかしの効くタイプってことですか? いや、けどあのすごいんですよ。技法はめちゃめちゃあるんですけど、本当に家康がこれを作ってくれと言ったのかなっていう疑問はあります。元々は日光東照社っていうね、家康を祀るための神社が、だんだん献上するお金ですね、朝廷にお金を寄付すればするほど格を認めてもらえるので、宮号宣下って言って、宮というのを与えられるんですね。で、東照宮というのをもらうんですけど、家康はやっぱり功績を残した人なので豪華絢爛でなければならないという忖度から、ああいう建物ができてくるんですけども。
あれは忖度によっての派手さなんですね。あの金と黒と白みたいな。 そうですよ。最上級、家康公をお祀りするには最上級でなければならないという人間の忖度ですよね。 ああ、じゃあそっか。死後勝手に盛り上がってったというか、進化してった派手さなんですね、あれは。 信仰なんてね、その程度のもんなんですよ。生きてる人間が考えることですから。
で、伊勢神宮とかは何でしたっけ?隣に作って壊してみたいなことずっと繰り返す、なんだっけ? 式年遷宮ね。 式年遷宮。何年に1回やるんでしたっけ? 20年に1回ですね。 20年に1回作って壊してってことを繰り返してるんですね。 はい。あれはね、思想があるんですよ。常若っていうね神社独特の思想があって、常にこの清らかな状態を保つのが神様に対する最大の敬意なので。建物って朽ちてくるじゃないですか。だから20年に1回建物を新築して、より綺麗な状態に戻しましょうというのがずっと行われてきたという、神社の思想から来てるものなんで、また忖度とは異なるものなんですけども。
それをやれる業者も決まってるわけですよね? 伊勢神宮はね、神宮さんが独自に公募するんですよ。遷宮というプロジェクトをしますっていうので、今から7年間かけてやりますと。名ある宮大工さん来てくださいっていうので、公募で集まってきて、最大20人ぐらいのグループが5つぐらいできるんじゃなかったですかね。だから延べ100人とか、それぐらいの規模の人が常時、毎週のように公募で来て、で、試験があって、オッケーだったらそこのグループに入って、で、1週間か2週間一緒にして、残れる人と出ていかないといけない人が常に入れ替わるような。 へえ、サバイバルというか。
それはその評価の、相対評価ってことですか?3人が落ちちゃいますみたいなことあるんですか?それとも一定の基準以上の腕前がある人が10人集まったら、10人ともやってもらおうよってなるんですか? あ、基本それだと思いますね。ただやっぱり人数の制限もあるので、本当にすごい人が集まってたら落とされることはないでしょうけども、やっぱり組織って仕事できんやつおるじゃないですか。そういった人たちを循環させるっていう仕組みを多分取ってるんだと思う。
え、そういうの別に興味ないんですか?一生に1回ぐらいやってみたいなとか思わないんですか? ああ、全然思わないですね。それはだってできてるじゃないですか。ただのステータスなんですよ。何の役にも立ってないですよ。 あ、そうなんですか。 お伊勢さんで俺はやってたんだって言って。 そっか。そのための。 そうです。まあ奉仕で来られますけども、ものすごくお気持ちを持って奉仕されてるんですけども、けどその気持ちがあるのであれば、伊勢神宮はお金もあるしやる人もいてますけどね、もっとお金がなくてできないものを僕はやるべきだっていうのを推奨してる側です。
僕は島根県の出雲市出身なんですけど、出雲大社とかもなんか何年かに1回の遷宮みたいなのがあった記憶が。60年でしたっけ? ありますね。 それが同じシステムですか?要は。 お伊勢さんはね、全部潰して新しくするので文化財的価値ないんですよ、古くないから。けどもその行為自体が無形文化になってるみたいな感じなんですけど、やっぱりお金めちゃめちゃかかるので、それはちょっとまずいよねということとか、やっぱり残していった方がいいよねっていう考えもあるので、出雲さんとか春日さんとかは修復していくっていう。なので式年遷宮と言わずに式年造替って言うんじゃなかったですかね。 へえ。 名前がちょっと違うんですけど、まあまあ同じようなことですよ。常若であることには間違いないので。
そこは2年やって辞めるのは、もうこれ自分でやっちゃった方がいいかなっていうことで?さっきの経営的なこともやってるし。 そこの会社の社長がなかなかの銭ゲバの人だったんですよ。予算を僕たちが組むので、その通りに発注してくれたらいいんですけど、叩きに叩きまくって業者さんを疲弊させたりとか、そういうのを見てて、あいつとはできんなと思って。僕たちがなんでこの会社でやらないとあかんのだろうかなって。で、職人さんたちもハッピーになってなくて。なんか違うなっていうので。
独立してから、さっき言ったこの宮大工の世界は利権まみれなんだなみたいなことに気づいてくるんですか? 京都の元出雲、出雲大神宮と言われてるとこがあって、そこの神社の関西支部っていう部署を作ってね、それの役員をやってたんですけど。で、僕結構お寺とか神社さんと仲良くなるのが得意というか、純粋に僕自身がファンなんで、仲良くなるんですよ。そしたら仕事を言ってくれるんですけど、そこの建物は文化財の建物で、基本的に誰がやってもいいんですけど、利権の人たちが入ってきて、それで仕事を取っていかれたりとか。だから宮司さんとかも、「いや、なんで本当は金田君にやってもらいたいのに、なんでこんなやつらに、しかも金田君の値段の5倍とか6倍とかの単価で、なんでこんな会社にやらせなあかんねん」みたいなことを言われてて。
それはもう宮司さんも自分たちで選べないんですか? 本当は選べるんですけど、そこの文化財技師っていうとんでもない連中がいてるんですよ。文化財の先生っていう人たちですね。この人たちが「いや、もう金田さんは無名だからこんなとこにさせちゃダメです」とか、「きちっと文化財はこういった実績ある会社にさせないといけない」って言って。僕たちはやっぱり新規参入業者なんで、ベンチャー企業にさせるなみたいな、そういったことをロビー活動めちゃめちゃするんですよ。
だから宮司とはものすごく関係性良くても、お寺とか神社って地域の人たちが役員として入ってるので、こういった人たちの総意でもってじゃないと仕事ってできないんですね。
だから多数決すると、結局そういった文化財のちゃんとした人にやってもらおうみたいな話になってくるけども、結局やる仕事一緒なのに払う金額何倍っていうのがあって、それってなんか文化を守ろうとしてるのか、この人たちの天下り先のなんか世話をしてるのか、どっちなのかなと思って。僕がやりたいとかそんなんじゃないんですけどね。ちょっと直ればいいんで。
そっか。その文化財を使ったキックバック的なシステムが根付いてる可能性があるんですかね?
ありますよ。僕1番初め働いた会社も、現場事務所にね、文化財の先生来たらね、業者さんみんな並んでるんですよ。で、「今日はあんたいくら持ってきたん」ってこうやって、裏金渡すんですよ。僕それ見てて、こいつは終わってんなと思って。
で、業者さんとかもね、僕らみたいなちょっと今後伸びてきそうな人とかいてるとね、賄賂を渡してくるんですよ。「金田君、これでご飯でも食べ」とか言って3万ぐらい渡されるんですけど、いらんいらんって言っても机の中とかに勝手に入れられてとかして、そこの会社の従業員の子に「これいらんから戻すわ」って言って。文化財の世界ってね、金に汚れてるんですよね。
だから僕は文化財もやろうとも思わないし。けど古い建物は僕好きなので、文化財になっていないようなそういう手の保存地区ですかね。そういったものをやろうと、その時にもう完全に方針を変えて。
独立って何年目ぐらいにその方針が固まったんですか?
もう3ヶ月ぐらいです。[笑い]もうこんな連中とやってたらあかんと思って。文化財というのは別に所詮その人らが認定して権威付けしただけのものなので。けど世の中には本当に大切にしてきた神社仏閣ってあるんで、僕はそっちをやりたいなと思ってます。
有名神社になればなるほど、そういう利権にまみれてるんですね。
そうそう。文化財になってたらね。すごいっすよ。
その文化財技師みたいな仕事があるんですね。
大工さんってね、学術知識って持ってないんですよ。けどそういった文化財技師っていうのは、この建築の様式がこうで、建物の年代がこれでとか、こういった技法を使っててとか、学術的知識に長けてて、修復方針をどういう風にしていくかとか、予算規模をどうするかとかいう権限を持ってるんですね。昔はそんなんみんなできたんですけどね。けど今はもう分業化したがために、大工になり、そういった人たちのお世話をする側になってしまったので。
え、その文化財技師っていう資格は誰が発行してるんですか?
資格としてあるかわかんないですけども、例えば文化庁の職員とか、文化庁の職員直接じゃないですよ、文化庁から委託を受けている独立行政法人、名前は言わないですけども、天下り団体があるんですよ。独立行政法人とかね。あとはそれで結構問題があったので、次はそういった人たちが民間の団体を作って、なんとか協会っていうのがあるんですけど、そこに天下りしていくんですよね。文化庁の職員とか独立行政法人の職員とかが。
官僚の。
そうです。そうです。
天下り先で美味しく稼げるような仕事としてあるんですね。
うん。そうですよ。
何千何万っていう神社仏閣を見て回ってきましたみたいな人ではないってことなんですか?
確かに見てるのはあるんですよ。
あ、見てはいるんですか?
うん。けどね、やっぱり業者に汚染されていくんですよね。学校の先生とかでも初めみんなやる気でやってるじゃないですか。けどもだんだん教育委員会とかに染められてダメになっていくじゃないですか。利権にね、染められていくんですよ。本当にこの文化財が好きで古い建物好きな男の子とか女の子とかでもね、こう入れさせられて。1回入れたらもう一緒ですから。
なるほど。通帳に記載されないような非公式の金が入りやすいシステム。
そうです。立証してくれって言われたら立証できないですけど、その現場は見てますんで。
けどないということを逆に証明はできないはずですね。そう考えるとすごいシステムですね。だって神社とかお寺の収益って非課税じゃないですか。それによって蓄えたお金が、そういう文化庁とかの天下りで文化財技師になった人の懐に入っていく、すごいシステムですね。
文化財はね、またちょっと特殊で、所有者が負担するお金と、国が負担するお金があるんですよ。ちょっと今いくらかわかんないですけど、ここだったらほぼほぼ国が持つけど、いくらかはお寺も出さないといけない。これが国指定重要文化財になると7割まで出ますとか、半分やったかな。で、都道府県指定とかになると2割とか、そういうのがあるんですけどね。
で、それを受けようと思うと、ちゃんと文化財の技師をつけなさいよ、やる職人さんはこういったちゃんと資格を持った人にしなさいよ、とかいう風にして。だから普通に工事したら安くできるのに、なんでこんなわけのわからん仕組みにするの。ただやっぱり学術的根拠をちゃんと調べられる人が職人さんではいてないので。いないことはないんですけどね。そういった風にしてるので、そういったところに頼まないとこの補助金は下りませんよと。
で、結局それは高くなってる。補助は下りてるんだけども、結局文化財仕様でこれをやらないといけないとか、いろんな制約があるので、そこでこうピンハネして、そういった先生たちの懐に入って。ちゃんとしてる人いてますよ、中にはね。ただ僕が見てきた人たちはそんな人はいてなかったですけど。いろんな宮大工の人たちから僕は結構嫌われてるんで。
え、いつから嫌われ出したなって自覚しましたか?
やっぱりその独立してからですよね。
でも独立しても目立たないと嫌われないわけじゃないですか?
塾やり始めて、初めはなんかバカにされ始めてたんですけど、その塾を進めてね、8000万ぐらいの仕事とかでもね、僕ら塾生と一緒にやったら2000万ぐらいでやったケースとかもあって。ってなってくると、なんか自分たちの仕事を取っていく連中みたいな感じになってくるんで。あんなとこあかんとか色々言われながら、塾費を集めて私腹を肥やしてるやつだとか言われて。うちの従業員の方が給料高いですからね。
あ、彼です。
僕は手取りで27万円なんで。
え、今も?
はい。奥さんからこれだけじゃ生活できないって言われたら、ちょっとずつ上げてるぐらいですかね。だから元々24万とかですから。けど子供も増えてね。今子供4人。
4人いるんですか?
うん。前のも離婚もしてるんで、前の奥さんとの方は1人いてるからね。それもあるから、まあ5人今いてるんですけどね。別にこんな田舎ですから生活できますよね。東京無理でしょうね。
確かに東京で27万円で4人の子供と、もう1人の養育費は絶対無理ですね。
まあ、ここは全然。塾生もね、昔はお金全部もらってやってたんですけど、寮費をただにしたりとか、食費もただにしたりして。来年度からはね、もっと完全無償化になるんですけど。
あ、完全無償化なんですか?
大阪の校舎はね。
へえ。何が完全無償化を実現させてるんですか?
今まで頑張ってくれた塾生が毎年毎月ね、社会人になってから寄付してくれたりとかもあるしね。いろんなこういうメディア出た時に応援してくれる人が寄付してくれたりするんで。
学費って、なるためのハードルになっちゃって、金銭的な理由で諦めちゃう人も出てきちゃいますもんね。確かに学費があることが。
そうですね。まあ、けど別に塾でもらったお金を自分の給料にしてるわけじゃないので。そういった地域の神社仏閣を再生するお金として使ってるので。だから別に、結果として自分のとこに戻ってくるシステムにはなってるんですけどね。自分たちのためになるようにね、使ってるんで。
やいやい言われるみたいなのは、今がピークですか?それとももうちょっと前だったりとかしますか?どんな感じですか?
いや、今でもありますよ。文化財の仕事も一応諦めてはなかったんで、資格取りに行ったんですけど、そこの講習とかでもね、嫌がらせされたりとかね、トイレとかで「お前調子乗んな」とか言われたりとかね。
え、文化財技師の資格ですか?
文化財を修理する職人さんの方の。
ああ、そうです。
あ、職人にも資格がいるんですか?
そう、そうなんですよ。いらんのですけどね。昔からずっとそうですよ。塾やり始めてちょっと実績出てき始めた時ぐらいからね。YouTubeもね、結構昔からやってるんですよ。その時YouTubeとかSNSとかにあげる人ってほとんどいてなかったんで、「汚れたことすんなこら」とか。
古い感覚の人からすると、宮大工さんがYouTubeやって汚れたことって言いそうですね、確かに。
そうそう。けど今ね、そんな言ってる人たちが普通にインスタあげてますからね。アホやなと思って。けどそういった人たちがいてくれたからこそ頑張れたんで。
今はどんな、何かあるんですか?こういうことをやってやるぞみたいな。
僕も5年後にリタイアするので。
5年後にリタイアするんですか?
はい。45で。
決まってるんですか?それも。なんでですか?
やっぱり45のおっさんが業界を引っ張ってるようでは今後終わりなんで。40過ぎたらもう老害やと思ってるんで。今の人たちの可能性ってものすごくあるんですけど、上の人たちがいてることによって、それが阻害されてるんですね。
で、僕はこういう塾作りましたけど、僕がいてるとやっぱ僕に甘えるんでね。僕がいなくなって、本当に自分たちがやりたいもの、残していきたいものを自分たちの手でやっていかなければ、今後やっぱ残らないので。まあどちらかというと、やめるって言うてもサポート役で。これから人いなくなるじゃないですか。けど僕は人いてると思ってて。引きこもりとか言ってるでしょ。うちの塾って結構引きこもりの子来るんですよ。
で、そういった子たちが職人になっていくこととか、僕は一緒にやってきたんで。けど同じ塾の子たちと一緒に生活すると引っ張られちゃったりとかしてダメなんで、そういった引きこもりの子たちをこう社会復帰させる事業を、林業と農業と絡めてちょっとやりたいなと思ってて。
それである程度まで持ち上げてあげて、この塾に入るもよし、宮大工として働くもよしという、そこまで持っていってあげれたらなと思って。そこの親御さんたちともずっとやり取りしてるんで。解決したくてもできない、家庭では限界があるんですよね。
引きこもりとかって、程度によりますけど、20年とか30年になる人もいますもん。
そうなんですよね。まあ、僕も子供がいてるんでね。思い出しただけで泣けてきましたけど。
どういうこと?
まあ、自分の子がね、こうやって引きこもりになるんだなと思ったら、お父さんもお母さんもどうしたらいいかわかんないですよね。かと言って自分たちはね、最後のセーフティネットやからね、突っぱねることもできへんしね。だからその代わりを何かできたらなと思って。
まあ、すごいですよ。そういった人たちのエネルギーって。開発されてないだけでね。まあ、けどそれは国ではできないので。責任取れないですからね。宮大工だって1000人もいないでしょ。けどそこで10人でも作れたら、すごい。シェアね、獲得できますから。
まあ、そこをね、ちょっとやりたいので、今の事業はもう今頑張ってる若い子らに任せて、僕はね、そっちで。山に行くともっとお金かからなくなるんで。[笑い]
あ、林業系は山ですもんね。
そう、そう。木を切れば買ってくれる人ね、塾やってくれてる亀者さん買ってくれて。作物作ればタダでも食べれますし、そういったら塾のとこに販売して買ってもらったりして。
金田さんの場合は家も作れますしね。
そうなんだよ。[笑い]
めちゃくちゃ田舎の安い土地買ったら、自分でセルフビルドできるわけですもんね。
そうだよ。買う必要もなくてね。山持ってて管理困ってる人たくさんいてるって。代わりにやりますよって言って。別に所有権を持ちたいわけではないから、喜んでいただけて、かつ自分が大切にしてきた神社仏閣を残す人たちもね、増やしていけて、それでいいんじゃないかなと思うんですけどね。
農作物さえ作っとけば確かに困らないすもんね。
うん。娯楽もね、建物を作るのが娯楽ですから。[笑い]若い子もね、スマホなくて娯楽がなくてとか言うんですけど、そうじゃないんですよ。何か作るのが娯楽ですから。そしてそれを作るための大工道具とかね、育てていく。買って育てていくんですよ。それが楽しいんですよ。
大工道具も育てていかなきゃいけないんですね。
そう。すぐに使えないんで。日本の道具って、鍛冶屋さんはある程度までしか作ってくれないんですよ。あとそれを実際に使えるレベルまで持っていくのは職人の裁量なんで、それを僕たちは育てるって表現するんですけど。
研ぐとかそういうことですか?
うん。研いだりとかね。あとちょっと形を変えたりとか、ちょっとしたカスタマイズ。ちょっとしたっていうかね、ちょっとしたのが大きいんですけど。
へえ。スマホなくても1日中時間潰せるんですね、それやってれば。
うん。そういうの好きな子いてるんですよ。だからスマホがなくてさ、なんかその目先の娯楽しか分からんような人にはね、分からん世界なんですけど、けどその人たちよりも彼らは楽しんでると思いますよ。
さっきの鉋叩いてミリ単位で調整するなんて、修行しないとできなさそうですもんね。
誰でもできるんすけどね。けど今日明日できる仕事じゃないんですよ。それだけだから、甘やかすってことはね、その人たちの将来を奪うことになるからね。そんな簡単な話ではないんですよ。
育てるのはどんどんうまくなってきてますか?ご自身として。
僕、教えるの多分1番うまいと思いますよ。
最初からうまかったですか?それとも。
やっぱり、なんでこんなこと分かれへんねんと思って、それを言語化できない自分がいてて、それ苦労しましたけど、けど、パソコンとか結構使えたんで、動画にしたりとか色々できたので。
なんで分かれへんねんではやっぱ育たないですか?やっぱり。
そうですね。教える人が分かってなかった、そもそも。[笑い]
そっか。なんで分かってないのかを分かってないといけないってことですね。
そうです。だからよくね、会社とかでポンコツなやつおるじゃないですか。けどそれはね、上司が無能とかよく言うじゃないですか。本当にそうで、モチベーションとしては分かるんですけど、そういった人に出会った時に、僕はどこでつまづいてるんかなとか、逆にこの人ができるようになったんだったらすごいですよね、そのノウハウって、って思って。僕できない人見れば見るほど面白くなるんで。[笑い]そこであなた分かってないのみたいな。
それってでも、ちゃんと真摯に向き合ってくる人は残ると思うんですけど、やっぱバックれちゃう人とか飛んじゃう人ってやっぱどうしても発生してきますよね。
よく昔はね、逃亡してましたけどね。まあ、けどその引きこもりの子とかね、そういう子らが現実から逃避したくて、親元帰りたくてね、逃走するんです。けど親もね、帰ってきたら「もうそんなあんた引きこもりになるだけだから」とか言って、親がね、まともだと残るんです。親が子供に情があるとね、そういう甘やかそうとするとね、残らないです。警察行ってね、捜索願い出して、僕も4日間探しに行ったりとかね。で、塾生見つけ出して、親御さん呼んで、どうするか会議して、また戻して。
ちょっとした戸塚ヨットスクールの宮大工版みたいな。
そう、そう、そう。メディアの人はそう言いますし。
あ、戸塚さん出てましたよね。
出てました。あの校長、僕勉強会とか行って、人間的には関わってますけどね。けどなんか本当に僕と同じで、親御さんが困ってて、それを何とかしてあげたいっていう。またその表現の仕方がね、得意じゃないだけで。けど本当にそういった情緒不安定っていうんですか?親を殴るとかね、そういった人たちはどうやったら更生させられるかってことをね、考えてされてる方だなと思って、僕はものすごく尊敬してますけどね。
敵は作るタイプではあるんですけど。ちょっと感情のスイッチが入るとね。
あれなんですけど、勉強会ではね、全然あんな感じじゃないんですよ。本当に理路整然と、こういう理論でするんだよって言って色々教えてくれるんですけど。
言ってる、人間が育つには不快感が必要みたいなのって、なんかすごい、ああってなって。本当その通りだなって思ったりしますね。
僕もそれは先生から学ぶ前からずっと思ってて、自分自身がそうだったんで。だから僕は、いかに塾生に嫌われるのか、いかに不快なことができるのか、そして彼らをいかに成長させてあげれるのかなので、友達になろうと一切思ってないんで。ボロカス言いますし。
僕がボロカス言ったらやっぱりメンタルやられるんでね。うちの嫁が「どうしたの」とか言ってケアしてくれてるんですけど。
ああ、そういうシステムになってます。
そう、そう。それが僕ができたら良かったんですけど、やっぱりそういうスイッチ入ってやらないと本人に伝わらないんで。
切り替えできないすよね、やっぱり。本気で怒るってね。
だからできないから嫁さんにお願いって言って。まあだから、塾やってね、卒業した子もうちで働いてくれてるんで、だから嫁さんの代わりとかね、僕が若い子に言うたら、その子たちが「俺もこうやってん」とか「昔こうやって」とか言って、メンタルケアしてくれる役割してくれてるからね。
まあけど、僕の役割する人がいないといけないんで。だからもう45でやめるからねって言ってるんですけど。
それ、5年後にちょうど引き継いでくれる人とか育ってる予定なんですか?
うーん。まあけど、可能性ある人はいてるんで、何人かは。また別のやり方でやる人が出てくると思いますから、別に事業継承がしっかりできなくても、別にそんなに魅力ない業界ではないと思うので、まあ誰かやりますよ。
45までじゃあ走り抜けてください。
はい。頑張ります。
はい、ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。失礼します。
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負けない。綺麗に見える光の粒は君と君と君と僕な。
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