CIOとイチケンが組む「国産USB充電器」プロジェクト:発熱問題、国内工場、日本製部品の比率に挑む

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概要

USB充電器メーカーのCIOと、充電器の分解動画で知られるイチケンが、共同で「国産USB充電器」を作るプロジェクトを始めた。本動画はその第1回で、イチケンがCIOを訪ね、社長の中橋氏と対談している。プロジェクトが始まった経緯と、掲げた3つの目標、そして現時点で見えている困難が語られた。

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「国産の充電器メーカーとして作ったらどうなるか」という問い

中橋氏によれば、スマートフォンやパソコン向けの充電器を日本で作っている会社は、同氏の知る限りほぼ存在しない。そこで、国産メーカーとして充電器を作ったらどうなるのか、日本の市場にそうした充電器を作る能力がどこまで残っているのかを確かめたいと考えた。そのうえで「とある背景」があってイチケンに声をかけ、昨年このプロジェクトが始まったという。

きっかけは65W充電器の分解動画と「炎上」

その「とある背景」について、イチケンは自身の動画やXを見ている人なら思い当たるはずだと語る。昨年7月頃、イチケンはCIOのNovaPort SOLO II(65W)を分解する動画を公開した。非常に小さな筐体でありながら定格電力が65Wと大きい製品で、USB充電器を分解してきたYouTuberとしては取り上げないわけにはいかなかったという。

イチケンの説明では、最近のUSB充電器は窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の効果で小型化が進む一方、電力はどんどん大きくなっており、放熱が厳しくなっている。実際に実験すると発熱が大きく、動画の公開直後から軽く炎上するような状況になった。イチケンはCIOに迷惑をかけたかもしれないと振り返る。

中橋氏の側から見ると、当時の反応は「軽く」では済まなかった。動画公開の瞬間からXでDMが次々と届き、CIOのYouTubeにも「この小さい充電器がそうなのか」「メーカーとして本当に大丈夫なものを出しているのか」といったコメントが大量に寄せられた。中橋氏はこの製品を、今回の縁につながった思い出深い製品であると同時に、苦い思いをした製品でもあると表現している。

テクノフロンティアでの接触

動画公開後、イチケンは展示会「テクノフロンティア」で設計に関する対談を行った。そこにCIOの担当者が訪れ、コンタクトを取ってきたという。イチケンは、普通なら避けるか距離を置くのではないかと思っていたため非常に驚いたと話す。担当者は、こういうUSB充電器を作りたいという構想をかなり熱心に説明したという。

中橋氏はこの経緯を製品コンセプトの側から説明した。NovaPort SOLO II 65Wは、発熱しても小型で持ち運びやすいことを優先した製品だった。熱についてはCIOが制御できる範囲に収め、場合によってはサーマルスロットリングで出力を下げてでも、下がったワット数で継続して使える設計にしていたという。つまり持ち運びやすさと使いやすさを基盤にした考え方である。

しかしイチケンの動画を見た人からは、出力を落とさないもの、定格のフル出力をずっと出し続けるものを作ってほしいという声が非常に多く寄せられた。同時に「CIOを応援している」というコメントも多数あった。中橋氏は、苦い経験ではあったが、その期待には応えなければならないと考えたと語る。そうした製品を作るにあたって真っ先に思い浮かんだのがイチケンで、ちょうどテクノフロンティアで講演すると告知されていたため、社員に名刺交換を頼み、一緒に作ってほしいと依頼した。これが昨年の夏過ぎの出来事だという。

その後、プロジェクトは水面下で進められてきた。現場にはモックアップ(試作品)があり、これを動く状態まで完成させることを目指しているという。

目標1:サーマルスロットリングが起きない熱設計

中橋氏はプロジェクトの目標を大きく3つに整理した。1つ目が今回の主題である、サーマルスロットリングによる出力低下が起きない設計である。そのために熱をどう逃がすのか、内部の発熱そのものをどう抑えるのかを詰めているという。

加えて、この充電器には液晶など新しい機能も搭載する予定で、熱に弱い部品をあえて載せることになる。それが本当に大丈夫なのかという点で、中橋氏は「今まさに苦しんでいる」と述べ、まだ詰めている途中だとしている。

目標2:国内生産と工場探しの難しさ

2つ目は国内での生産である。中橋氏によれば、日本でAC充電器を作れる工場は実際にはほとんど残っていない。自動車や医療などの産業向け製品はまだ日本でも作られているが、コンシューマー向けの製品は、ほぼすべての生産を中国に移管している会社が多いという。イチケンも、こうしたコンシューマー向け製品では中国が非常に強いと応じている。

中橋氏の報告では、これまでに約30社の工場を当たったが、作れそうなのは片手で数えられるうちの3社程度しかない。しかも、作れたとしても1日100個程度しか生産できないといった例があり、数量を確保できない。フル工程のラインを組もうとすると80人ほどの人員が必要になり、その人を集めなければならないうえ、必要な設備を置く場所や環境がそもそもない、人がいないといった問題もある。そのため、どこまでを日本で作るのかという線引きについても、今も苦戦しているという。この点は今後の動画で経過を追い、実際にどうするのかを伝えていく予定だとしている。

目標3:日本製部品の比率——試作段階では「0%」

3つ目は、充電器に使う部品のうち日本メーカー製がどれだけの割合を占めるかである。中橋氏は正直ベースの話として、現時点で日本製部品の比率は「0」だと明かした。イチケンが確認すると、試作品の段階で0%だという。

ここから日本メーカーの部品に置き換えて改めて実装したときに、全体を100としてどこまで日本製にできるのかが課題になる。イチケンの説明では、USB充電器は製造が中国で行われるのがほとんどであるだけでなく、中の部品にも中国製が大量に使われており、しかもラインナップが広く非常に強い。そこに日本メーカーの製品がどこまで食い込めるかを試すため、イチケンが部品メーカーを紹介したり提案したりしながら、日本製の比率をできるだけ高めようとしている途中だという。

中橋氏は、どこまで行けるかは本当に未知数だとしたうえで、物理的にどうしても無理な部分が残った場合に、それが10%なのか30%なのか、過半数まで行けたのかも含めて経過を報告したいと述べた。現在の部品表(BOM)はすでにイチケンに渡しており、どの部品を置き換えられるかを相談している段階だという。

分解と情報公開を前提にした開発

このプロジェクトはかなりオープンに進めると最初から宣言されている。イチケンは、製品版が世に出る前に実際に分解し、どんな部品を使っているか、どこに日本メーカーの部品を使っているか、どの設計にこだわっているかを開示していくつもりだと語った。

中橋氏は「半分怖い」と本音を漏らしつつも、この取り組みがユーザーの求めていたものになると考えており、CIOとして全力で取り組むと述べた。65Wの件があったからこそ熱設計も含めて協力するきっかけが生まれたとし、イチケンにも深く関わってもらいたいという。

今後はイチケンのチャンネルとCIOのチャンネルで同時に動画を公開していく。中橋氏は、分解のような工程はイチケンのチャンネルで見られるだろうとしたうえで、日本の工場の現状や、中国で実際に製品がどのような流れで作られているのかといった実態も追っていきたいと話した。

手組みの試作品から、どう変わっていくか

中橋氏によれば、現在の試作品は手組みで基板を実装しただけの状態である。ここから部品や、外から見えない工程そのものも含めて実態がどう変化していくのかを知ってもらうことで、製品を求めている人に届くだけでなく、愛着を持ってもらえるのではないかと考えている。サーマルスロットリングと熱制御がきちんと管理された製品として世に出すにあたり、イチケンからは指摘も受けるだろうとも述べた。

イチケンは中身を詳しく見て、それも動画にすると応じた。動画の最後に第1弾として試作品がイチケンに手渡され、今後は事務所で試験や分解を行い、その内容をまとめていくという。プロジェクトはCIOとイチケンに加え、国内の工場や部品メーカーと組んで進めるとされた。国内生産をどこまで実現できるか、日本製部品の比率がどこまで上がるか、熱に弱い部品を載せつつフル出力を維持できるかは、いずれもこの時点では答えが出ていない。