タイの展示会で探す「次にジムへ入れるもの」:BeeQuick竹之内社長とスポルテック タイランド2026を歩く

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概要

M&A BANKの島袋直樹氏が、フィットネスジムを地方中心に展開する株式会社ビークイック代表の竹之内俊輝氏と、タイ・バンコクで開かれた展示会「スポルテック タイランド 2026」を回った回である。島袋氏はシンガポールから日帰りで訪れた。関心の中心は、タイのフィットネス市場がどう伸びているのか、そして竹之内氏がこうした海外の展示会で何を見て、自社のジムにどう取り入れてきたのかという点にある。会場を歩きながら、ピラティス、ハイロックス、体組成計、エンタメ系のゲーム機、ウェルネスリゾートなどを見て回り、後半では BeeQuick の出店状況や収益性、輸入での失敗談も語られた。

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日本企業が主催するタイ初の展示会

島袋氏によると、タイではピラティススタジオが次々とでき、さまざまな業態が入ってきており、市場が大きく伸びているという。スポルテックは日本でスポーツ分野の最大級の展示会を手がける日本企業のブランドで、タイでの開催は今回が初めてだと紹介された。

会場に入ると、島袋氏は「タイだからちょっとしょぼいかなと思ったけど全然しょぼくない」と率直に語り、世界的に有名なメーカーが出展し、ヨーロッパからの来場者もいる様子に驚いていた。日本の主催であるため日本企業の出展が多く、日本語も通じる。竹之内氏は、タイが盛り上がっているので出していこうという流れで日本企業が集まったと説明した。ゴールドジムを運営する日本企業のブースも隣にあった。

島袋氏は後半で、1年前に行ったロサンゼルスのフランチャイズショーは人がガラガラだったと振り返り、今回の会場の方が活気があると比べている。格闘技団体ONE Championshipのブースを見た際にも「ぶっちゃけ舐めてました」と重ねて述べ、謙虚に見ないといけないと話していた。

ピラティスと体組成計

会場で目立ったのはピラティス関連である。ピラティススタジオ「BASE」のブースのほか、ピラティスマシンを販売する出展者が多く、二人とも「ピラティスが多い」と繰り返し口にしていた。

タニタのブースでは、業務用体組成計の最新機種を試した。グリップを握っておよそ30秒で詳細なデータが出て、結果はアプリなどで受け取れる。島袋氏はBMI26で「オーバーウェイト」と表示され、竹之内氏は体内年齢41歳(実年齢44歳)と出て笑いが起きた。竹之内氏がタニタに詳しいのは BeeQuick でも同社の機器を使っているからで、タニタは日本で業務用測定機を売るより海外の方がずっと売れると話して出展しているのだという。

世界の展示会を回り、現地のジムに飛び込む

島袋氏によれば、竹之内氏は展示会が大好きで世界中を回っている。本人はアメリカ、ヨーロッパ、ドイツ、中国、韓国、台湾、そして今回のタイを挙げた。ただ展示会だけでは正直分からないものもあるため、現地で流行っているジムに飛び込みで行き、面白いと思ったものを取り入れるという。実際にお客さんが使っている様子が分かるので、そうすれば大きく外さない、というのが竹之内氏の考え方である。

実際に取り入れた例として語られたのが、トレッドミルからハイロックスへの切り替えだ。BeeQuick は以前、ランニングマシンを30台ほど置いていたが、いろいろあって稼働率が下がり、その区画が赤字になった。そこで半分を処分し、ドイツで体験して「なんだこれは」と感じたハイロックスを入れたところ、今はそこがうまくいっているという。

島袋氏はこれを、大きな箱のジムにいろいろなアイテムを置き、集客が微妙な区画を海外で流行っているものに入れ替え、リニューアルとして告知して再び集客するPDCAだと整理した。竹之内氏はそれに同意しつつも、トレッドミル30台で行けると思っていたらいきなり稼働率が落ちて人気がなくなった経験から「内心ビビってますよ」と語る。今は黒字に戻っているが、いいことも悪いこともあるという。外したものはあるかと問われると、ピラティスもハイロックスも「今のところは」人気がある、と慎重な言い方をした。

エンタメ系ゲームへの反応

二人がもっとも盛り上がったのは、エンタメ系のゲームだった。サッカーボールで的を当てるゲームを体験した島袋氏は、ジムにはなかなかないもので、みんなでやる形式ならワールドカップに合わせるとかなり盛り上がりそうだと話した。

続いて、テーブル型のサッカーゲームのようなものを二人でじゃんけんをしながら対戦した。島袋氏はアイデアを高く評価し、ジムの待合スペースに置いてもいいのではと提案。出展者は飲食店やバーにも置けると説明し、竹之内氏も「これ入れるかもしれないです」と応じた。最後に BeeQuick に入れたいものを聞かれた際も、竹之内氏はまずこのサッカーのゲームを挙げている。島袋氏は、海外から取り寄せなくても3万円ほどで作れそうだと言い、竹之内氏もこの後どこかの工場に相談するかもしれないと話した。

そのほか、自転車型の動きのあるマシンを見た場面では、竹之内氏が「面白いと思う」としつつ、実演者が乗りこなしているからそう見える面もあると指摘し、日本と海外のフィットネス文化の違いに触れた。シンガポール系企業の家庭用サウナは、二人の換算で40万円前後と聞き、島袋氏は「安い、家に欲しい」と反応していた。

ミラーフィットネスは「続けられるか」が問題

バイエルン・ミュンヘンのジム関連ブースでは、体型やバランスを測る鏡型のフィットネス機器が話題になった。竹之内氏によると、ミラーフィットネスは BeeQuick の館山店に1台入っている。面白いと感じ、自分でメニューやコンテンツを作ろうと考えたこともあったが、中のプログラムを更新し続けなければならず、それが意外に大変なため自作は諦めたという。中途半端ではだめだ、というのが竹之内氏の見方である。

そのバイエルンのブースでも、実際に使われていたのはハイロックスで用いるボールなどの器具だった。ハイロックスはドイツ発祥であり、ここでも流行が見て取れると二人は話していた。

鹿屋体育大学との研究と地元のつながり

会場には鹿屋体育大学のブースもあった。竹之内氏は同大学と共同研究をしており、昨年はピラティスに関する共同論文を出し、次はハイロックスのような高強度トレーニングの研究を依頼しようとしているという。鹿屋体育大学は今回、タイのスポーツ省と協定を結ぶと説明された。竹之内氏は同大学を唯一の国立体育大学として紹介し、その大学がタイと協定を結ぶことに驚いていた。

大学関係者と話すなかで、島袋氏の父が鹿屋市の出身であることが分かり、地元の話で盛り上がった。竹之内氏は高齢者向けの運動教室も手がけており、島袋氏の親戚が通っているかもしれないと話している。

プーケットのウェルネスリゾートとポップアップ構想

島袋氏が「行きたかった」と反応したのが、プーケットのウェルネスセンターのブースである。島袋氏によると、シンガポール在住者の間では旅行でプーケットのフィットネス施設に行くのが流行っている。テニスコートなどが揃い、アクティビティを楽しめる施設だ。島袋氏は、一部の富裕層はありきたりなラグジュアリーに飽きており、健康やウェルネスに関わる体験の方に関心が向いていると述べ、日本でも流行ると思うと話した。出展者によれば、開業から約12年で客は年々増えており、トレイルランからトライアスロンまでイベントを企画しているという。

竹之内氏は、この形を BeeQuick に取り入れるのは難しいと答えた。ただ、リゾートを短期間借りるポップアップなら面白いという話になり、竹之内氏は最近館山の海でハイロックスのイベントを開いたことを紹介した。東京都内からも参加者が来て盛り上がったといい、施設やアクティビティを使った体験は好まれていると感じているようだ。

なぜジムにここまで打ち込むのか

島袋氏が、なぜここまでコミットしているのかと尋ねると、竹之内氏は、もともとスポーツが好きで、バスケットボールは今も続けており、ジム通いが趣味だったと答えた。妻とはジムで出会い、仕事のパートナーも基本的にジムを通じて知り合ったという。

その話の最中に、BeeQuick のゴムマットを仕入れている中国企業の社長と会場で偶然出会う場面があった。竹之内氏いわく、互いに「你好」しか言っておらず、あとはマットの仕事の話だけだという。島袋氏は、英語も通じないなか雰囲気でつながっている関係に感心し、「行動するやつが勝つ」と述べた。

RACEON BANGKOK と高強度トレーニング

会場では週末に開かれるフィットネスレース「RACEON BANGKOK 2026」のブースがあり、竹之内氏はデモンストレーションとして実際に短時間体験させてもらった。ボールを持って動き続けるなどの種目で、BeeQuick にも同様の器具があるという。

竹之内氏によれば、これまではダンベルなどを一人で扱うトレーニングが中心だったが、今は体を大きく動かし、グループで行う形式が流行っている。島袋氏は、サプリメントの区画について、タイは日本より規制が緩く、日本では扱えない強い商品が売られているのではないかと推測していた。瞑想関連のブースでは、シンガポールでも最近大きな瞑想施設ができたと述べ、これから来そうだという感触を語った。

出店状況:地方で広い物件、人手が足りない

BeeQuick の現状について、竹之内氏は現在18店舗前後で、24店舗程度まで出店が決まっていると話した。出店が続いており、正直人が足りないという。立地は地方の、賃料が安く土地が広い場所に絞り、都心部は全く考えていない。物件はまだ十分にあるという。

以前のM&A BANKの動画をきっかけにフランチャイズの問い合わせをしてきた人とは、茨城の物件を一緒に見に行く段階まで進んでいる。今年の出店に間に合うかは分からないが、その人は最初から2店舗目、3店舗目も考えているという。

伊賀の新店舗:ジムの中に1周100mのランニングトラック

7月には三重県伊賀市に新店舗を開く予定で、店名は「伊賀忍者の里」だという。この店舗の特徴は、ジム内の外周に1周約100mのランニングゾーンを設けたことにある。

経緯について竹之内氏は、海外には広いジムの中を走れる施設があり、作りたいと思っていたと説明した。たまたま確保した物件は350坪以上と広く、マシンにそこまで予算をかけられない。面積をどう使うか考えたときに、外周を作ればいいと思いついたという。屋根があるので雨でも走れ、フィットネスレースの開催や、走ってマシンをやってまた走るといった使い方もできる。島袋氏が日本にそんなジムがあるのかと聞くと、竹之内氏は「あんまりないと思います」と答えた。

竹之内氏はこの設計を、地方の高齢者のニーズとも結びつけて語った。散歩に行けない人が朝に来てみんなで歩くコミュニティができる。夏の猛暑でも、24時間空調が効いた屋内なら熱中症で倒れる心配が少ない。地域の活性化とともに、健康で長生きしてほしいという思いもあるという。

収益性とフランチャイズの条件

島袋氏が収益性を尋ねると、竹之内氏は約20店舗のうち上位の店舗について、年間利益3,000万円以上、減価償却を含めない数字では4,000万円近くになると答えた。初期投資は8,000万円程度だという。島袋氏は、為替や工事費、資材の値上がりを考えれば今なら1億5,000万円かかってもおかしくなく、かなり安いと評価し、竹之内氏もそれ以上かかることもあると応じた。

資金面では、銀行融資は比較的下りやすく、マシンはリースも組めるため、店舗展開しやすいと言われるという。会話の中では、5年以内にEBITDA1億円を目指せるという話も出た。

赤字店舗について問われると、竹之内氏は24時間営業の店舗はすべて黒字で、24時間でない店舗で赤字になっても月20〜30万円程度だと説明した。飲食と比べると全然違うと言われるという。ジムは1対1で指導するわけではないため消耗品費がほとんどかからず、一度設備を入れれば新たな発注もなく在庫も持たなくていい。そのため人のマネジメントに自信がない人や、本業があって片手間になる人でも運営しやすく、実際に本業を持ちながら二つ目の事業として加盟するオーナーが多いという。

マッサージチェアが人気のオプション

会場でマッサージチェアを見かけた際、竹之内氏は、BeeQuick ではマッサージチェアがかなり人気で、もしかすると一番人気のオプションかもしれないと明かした。いろいろな世代を取り込めているという。

竹之内氏は「結局楽なものに人が集まる」と言い、筋肉を鍛えて激しく動くスタイルはかっこいいが、自分にはできないと感じる人が99%だと話した。島袋氏もこれに同意し、フィットネス事業に携わらなければ分からなかったと振り返った。激しいトレーニングを求める層はコアだが、母数は少ないという認識で二人は一致していた。

輸入は簡単ではない

最後に、サッカーゲームを自作・輸入すればすぐできそうだという流れに対し、竹之内氏は「そんな簡単にうまくいかない」と釘を刺した。日本で頼むと何百万円もかかるロッカーを輸入したところ、届いた時点でベコベコに変形しており、全部捨てて何百万円も損をした。フィットネスマシンを輸入したらバーが折れていたこともあれば、部品が足りず組み立てられなかったこともある。最初からうまくいくことはほとんどなく、失敗を積み重ねて今があるという。

島袋氏もその点は感じていたと応じ、会場で出会った中国のマット業者の社長との関係のように、相手との信用は目に見えないところで築かれているもので、なかなか気づけないと述べた。見た目には簡単に取り入れられそうなものでも、実際に導入するには試行錯誤と取引先との関係が必要だ、という点が、この展示会巡りの最後に残された話だった。