月10万円からの採用代行「トルトルくん」はなぜ伸びたのか 宮地陸氏が語る広告投資と後発参入の設計

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概要

M&A BANKのMC・島袋直樹氏が、採用代行サービス「トルトルくん」を手がける宮地陸氏に話を聞いた回である。島袋氏の問題意識は、トルトルくんには目新しい仕組みや独自システムがあるわけではないのに、なぜ急成長しているのかという点にある。宮地氏は、YouTube出演の費用対効果、給与設定を重視する採用の考え方、競合調査から組み立てた「月10万円から」というパッケージ設計について、具体的な数字を交えて説明した。

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ヒカル氏のチャンネル出演で問い合わせ100件超

島袋氏はまず、これまで出演したチャンネルごとの費用と反響を尋ねた。宮地氏が最も反響が大きかったと挙げたのは、ヒカル氏のチャンネルである。林さんが1か月キャバクラをやめたらいくら貯まるかという、エンタメ色の強い企画の中で、1時間ほど経過した位置に5分程度出演した。話した内容は、ヒカル氏周辺の経営者の採用を多く支援しているという事実を淡々と述べただけだったという。

収録時点で公開から4日しか経っていないが、問い合わせは100件ほど届いた。営業担当7人の商談枠が週末まですべて埋まり、機会損失を避けるためにMeta広告の予算を下げたほどだと宮地氏は話す。島袋氏が「問い合わせは来ても、商談すると質の低い層ではないか」と確認すると、宮地氏はすでに3件、合計200万円近くを受注していると答えた。受注額は最終的に1000万円を軽く超えると見込んでおり、出演費用は十分回収できそうだという感触を示した。宮地氏自身、ここまでのインパクトは初めてだったと振り返る。

コスパ1位は「フランチャイズ探偵団」、長く効くのは林さんとの対談

2番目に反響が大きかったのは、「フランチャイズ探偵団」というニッチなチャンネルだった。身内に近い関係もあって出演料は当時15万〜20万円程度と安く、2本の動画で約40件の問い合わせがあった。宮地氏は費用対効果ではこれが1位だと評価している。

もう一つ効果が続いているのが、林さんとの対談動画である。宮地氏はこの動画を切り抜いてMeta広告の素材として使っている。撮影は昨年8月だが、今も広告素材のトップ3に入る成果を出しているという。島袋氏が「有名インフルエンサーとの対談の切り抜きは1年くらい使えるということか」と一般化しようとすると、宮地氏は「僕の場合は林さんがいい」と訂正した。認知度の影響かもしれないとしつつ、CPA(獲得単価)は林さんの素材が圧倒的に安く、結果的に林さんの登場する素材ばかりが残るという。

宮地氏は林さんの会社に顧問として入っており、5分ほどの一人語り動画に林さんに出てもらうこともある。林さん本人はそうした撮影をあまり好まず、怒られながらも「CPAが下がるので」と毎回頼み込んで撮らせてもらっている。それでも十分に元が取れるとのことだった。

効果がなかった10秒広告

反対に効果がなかったのは、動画の途中に10秒ほど「トルトルくんです」と流すタイプのスポンサー広告だった。問い合わせはほとんど来なかったという。認知にはつながっているかもしれないが測定できず、少なくともコンバージョンにはつながらない、というのが宮地氏の評価である。

島袋氏も、ユーザーとしては視聴中の広告は邪魔に感じるだけで、そこから興味を持つことはないと同意した。宮地氏はこの形式の広告から全面的に撤退する方針で、関係性のあるフランチャイズ探偵団だけは例外として続けるという。

月10万円から「採用し放題」、ブルーカラー採用に特化

番組の説明によると、トルトルくんは飲食や営業などブルーカラー職の採用に特化した採用代行サービスである。宮地氏の説明では、料金は月10万円から、平均は15万円ほどで、その範囲で「採用し放題」という形をとる。特にIndeedの運用を得意としており、買取店の営業職や飛び込み営業などの人材を、月10万〜15万円の費用で採用できるという。

宮地氏によれば、他社で例えば70万円かけていた媒体費を、トルトルくんでは5万円まで下げられる場合がある。予算を下げても成果を出す運用手法を持っているため、総合的には安くなる、という主張だ。島袋氏が自身の経営するクラブピラティスでも同じくらい下げられるかと聞くと、宮地氏はクリック単価や応募数などの指標を見れば判断でき、ある程度は下げられるだろうと答えた。ただしクラブピラティスはすでに十分やり切っていそうなので、どこまで改善余地があるかは見てみないと分からないとも付け加えた。他のピラティス系企業の採用も手がけており、安く採用できた実績があるという。

島袋氏は、以前宮地氏と話したときに感心した点として、募集要項そのものが応募の来ない内容になっているかどうかを宮地氏が一瞬で見抜いたことを挙げた。応募が来ない要項のまま広告費を積んでも意味がないので、先に要項を改善する。そのためのデータと分析力を持っている、というのが島袋氏の理解であり、宮地氏もそれを認めた。

採用は給料と条件で決まる

宮地氏の採用観の中心にあるのは給与である。「給料を5万円上げてください」と言えば採用できる、というのが宮地氏の見方で、契約前や、契約から1か月経って採用できなかった場合に、企業に給与を3万円上げてもらうよう求めることもある。その結果、採用成功率は高くなっていると話す。

島袋氏も、フランチャイズ本部の案件で飲食の採用に苦戦していると相談した際、宮地氏がすぐに「あと4万円上げられますか、世界観が全然違いますよ」と答えたことを紹介した。

相場より給与を上げれば採れるのは当たり前だ、という反論もあるだろうと宮地氏は認める。そのうえで、給与を上げずに仮に採用できても、転職しやすい今の環境ではすぐに辞めてしまう。採用コストと教育コストを考えればむしろ割高になるので、給与は少なくとも相場の平均程度にし、そのうえで会社の魅力や採用上の見せ方で勝負すべきだという立場を示した。

島袋氏は、別のフランチャイズ本部の社長が「26万円で募集するのと35万円で募集するのとでは全く違う」と話していたことを紹介した。26万円前後だとパフォーマンスがまだ高くない層が中心になるが、35万円になると複数店舗のマネジメント経験者なども応募してくる、という話である。宮地氏は、給料を出せるビジネスモデルにしなければそもそも強みがない、と最近は考えていると応じた。自分が言える立場ではない、と前置きしたうえでの発言である。

東大生の起業とスモールビジネス

話題は宮地氏の経歴に移る。東京大学法学部出身の宮地氏によれば、起業する人はクラス30人のうち2人程度で、全体では5〜6%ほどという感覚だという。起業する人は大きく2つに分かれ、VCから資金を入れてJカーブを描きながら上場を目指すスタートアップ型と、宮地氏のようなスモールビジネス型がある。後者にはアフィリエイト、SEO、メディア売却などで稼ぐ人も含まれる。宮地氏のイメージでは、起業家10人のうち7人ほどがスタートアップ型で、スモールビジネス型は3人ほどと少数派だ。

宮地氏が最初にビジネスを始めたのは大学3年生のときである。所属していた演劇サークルの先輩が起業した会社でインターンをしたところ、それがたまたまアフィリエイトの会社で、働くうちに自分にもできそうだと感じて起業した。個人事業主のような形で続けた後、新卒でリクルートに入社し、1年ほど在籍してから現在のトルトルくんに至る。

リクルートでの「問題児」時代

宮地氏はリクルート時代の自分を「悪い意味で尖っていた」と振り返る。東大出身で起業経験もあることから、周囲と同じにされたくない、自分は違うと示したいという気持ちがあり、それが間違った方向に出ていたという。

具体例として挙げたのがメンター制度の件である。上司とは別に、困ったときに相談できるメンターがついていたが、宮地氏はその人を優秀だと思えなかった。自分は話を聞きたくないし、相手もそんな態度の自分にメンタリングしたくないはずだとして、「なぜこの会議をやっているのか分からない」と本人とマネージャーに伝えたという。宮地氏は「本当に嫌だったと思います」と認めている。

それでも何とかなったのは、直属のマネージャーが非常に優秀で理解のある人だったからだという。今でも飲みに連れて行ってもらう関係で、宮地氏は心から尊敬していると話す。数字だけは作っていたが、それもマネージャーや直属の上司のやり方を教わりながらだった。問題が出たのは、それ以外の1〜2年上の先輩が担当についたときに納得できなかったといった、周囲の人への態度だった。

その態度がよくなかったと気づいたきっかけは、リクルートの同期と結婚したことだった。現在の妻が家で指摘してくれるたびに、少しずつ学んでいったという。島袋氏がそうは見えないと言うと、宮地氏は、特にリクルート時代は何者かであることを証明したい気持ちが空回りしていたと語った。トルトルくんが伸びてきたことで、そうする必要がなくなったのかもしれないとも話した。

StockSunとの関係と利益配分

トルトルくんは、StockSunの中の一事業として運営されている。宮地氏はこの関係をStockSunへのフランチャイズ加盟に近いと説明した。StockSunのマーケティングのノウハウを借り、協力も得ながら、売上の一定割合をStockSunに支払い、それ以外は完全に自分で運営する形だという。利益の大半は宮地氏側に入り、一部をStockSunに納めている。

立ち上げは社長の一言と、20社以上の競合調査

トルトルくんの着想について、宮地氏は「最初は考察もなかった」と明かす。もともとは採用支援のコンサルタントとして活動していたが、StockSunの社長から、採用代行サービスをやれば月4〜5件くらいは受注できるのではないか、とノリで勧められたのが始まりだった。

当時、宮地氏はStockSun内のランキングで30位台にいて、これはチャンスだと考えた。一方で、StockSunはマーケティングの会社だから採用はやめたほうがいいのではないかなど、うまくいかない理由もたくさん考えたという。それでもまずはやるしかないと決めて始めた。

最初に取り組んだのは、競合の徹底的なリサーチだった。20社以上に問い合わせ、どんな内容をいくらで提供しているか、どんな営業をしているかをすべて確認して並べた。その中で宮地氏がおかしいと感じた点は2つあった。

1つ目は価格の高さである。スカウト代行ではスカウト1通2000円を取る会社が多く、現在もそうだという。宮地氏はこれを「バカげている」と表現した。2つ目は、提案が単一のソリューションに偏っていることだった。スカウトの会社はスカウトしか提案してこないが、その企業にはスカウトが合っていない可能性もあり、Indeedなど他の媒体のほうが適している場合もある。適当に提案されているように感じたという。そこで、複数の媒体から選べて、なおかつ安いサービスを作ろうというのが、ぼんやりとした出発点になった。

なぜ「月10万円から」なのか

一方で、「月10万円から」という価格だけは最初から決めていた。営業代行サービス「カリトルくん」が月10万円からという訴求でうまくいっており、宮地氏はそのマーケティング手法を詳しく学んでいたからだ。サービスを先に作ってから価格を決めたのではなく、月10万円からで成り立つビジネスモデルを考えた、というほうが近いという。

同じ価格設定の展開として、TikTok運用を月10万円から請け負う「バズトルくん」を並行して運営している。約2か月で25社ほどまで伸びたが、広告をどれだけ当てられるかがまだ勝負どころだという。宮地氏はある程度伸ばせる感覚があると話し、ほかにもAIやLLMOの領域なら月10万円からのモデルで伸ばせる自信があり、やりたいと語った。

島袋氏が、月10万円で仕入れが発生するビジネスは厳しいのではないかと指摘すると、宮地氏は同意し、すべてコンサルティングをパッケージ化していく方針だと答えた。

当たる新規事業の条件

宮地氏は、参入する事業を選ぶ際の基準をいくつか挙げた。まず、大きな市場を取れること。次に受注の観点では緊急性が重要で、SNS運用代行と採用代行を比べると、今すぐ始めなければならない採用のほうが受注率は格段に高いという。緊急性が低い商材の場合、よほど強い営業担当や営業プロセスを組めるかどうかにかかってくる。さらに、原価率を一定以下に抑えなければ広告費をかけられないという問題が出る。宮地氏はこうした条件を自分の中にいくつか持っており、それを満たす領域に参入すれば当てられると考えている。

広告面では、権威性のある人物の起用も試している。バズトルくんでは知名度の高いTikTokerを起用しており、こうした施策をいろいろ試していくつもりだという。

次はビジネスライバーの時代か

最後に島袋氏は、ビジネス系YouTuberが2018年頃から増えて今では当たり前になったように、次は「ビジネスライバー」が出てくるのではないかと問いかけた。宮地氏は分からないとしつつ、トルトルくんには最近、ライバー(主に女性)を採用したいという問い合わせが非常に多く、ニーズが強まっているのではないかと感じていると答えた。

島袋氏は、YouTubeは撮影から公開までのコストが重いが、ライブ配信はボタン一つで始められ、視聴者と直接つながっているので訴求しやすいと見る。表現面でも攻めやすいという。ヒカル氏の毎朝のライブ配信にも触れた。何を売るのかという宮地氏の問いには、コンサルティング、M&A、フランチャイズなど何でも可能ではないかと答えた。相談を受けながら営業していくセミナーやウェビナーのような形で、仕事をしながら聞き流すニーズもありそうだという。宮地氏もそのニーズはあると思うと同意した。ビジネスライバーが本当に次の潮流になるかは、この場では仮説の段階にとどまっている。