減税とばらまきはインフレ対策になるのか 中島聡氏が語る「民主主義の宿命」としての財政悪化

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概要

20年国債の入札が不調に終わったというニュースを手がかりに、中島聡氏が日本の財政と民主主義の関係を論じた。中島氏の立場は、減税や給付は短期的には魅力的に見えるが、長期的には借金の増加と円の信頼低下を通じてインフレを招くというものだ。そして、選挙で選ばれる政治の仕組みそのものがその方向へ傾きやすいのではないか、と問いかける。

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20年国債入札の不調とは何を意味するのか

冒頭で聞き手は、今回の20年国債の入札で需要が弱かったことを紹介した。結果は過去12カ月の平均と比べても弱かったという。聞き手は背景として、日銀の量的緩和縮小への動きや、長期債に対する投資家の慎重な姿勢が指摘されていると述べた。

中島氏はまず、国債の入札の仕組みを説明した。20年国債であれば、「20年後に100万円が満額で返ってくる国債を、今いくらで買うか」を参加者が競り合う。買いたい人が少なければ、低い価格で落札される。中島氏は「たとえば今80万円で買うなら2割引きになる」という例を挙げた。ただし複利で計算する必要があるので、実際にはもっと下がるかもしれないと補足している。

国債を発行するのは政府だ。安く落札されれば、政府が受け取るお金はその分だけ少なくなる。同じ額を集めるのにより多くの利子を払うことになり、借金のコストが上がる。中島氏は、入札が不調だということは長期金利が上がっていることを示すと整理した。

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根本の原因は政府の巨額の借金と円への信頼低下

なぜ入札が不調なのか。中島氏は、日本政府がこれまで、とりわけアベノミクスの時期に大量の国債を発行し、市場にお金を流し込んできたことを挙げる。その結果、政府の借金は膨らんだ。中島氏は規模を「今GNPの2.5倍だっけ」と確認するように述べている。

ここで中島氏は、この点はちゃんと話しておきたいと前置きした。日本は特殊な事情があるので、借金が増えても破綻はしない。代わりに起こるのは日本円の価値の低下であり、それがインフレにつながる。市場の参加者は「20年後の日本円の価値は低いだろう」と考え始めている。だから長期国債を買いたがらない。中島氏はこれを、日本円への信頼度が落ちて金利が上がっている状態だと説明し、その根本原因は政府の莫大な借金にあると述べた。

積極財政が招く「雪だるま式」の悪循環

中島氏がこの理解を重視するのは、いわゆる積極財政派の主張と関係するからだ。積極財政派は、お金が足りなければ国債を発行すればよいと考える。しかし中島氏によれば、国債を発行するほど借金が膨らみ、円への信頼が落ちる。すると長期国債の入札が不調になって金利が上がり、利払いが増えて借金はさらに膨らむ。中島氏はこれを、雪だるま式に借金が増えていく状況だと表現した。

二つの考え方:積極財政派の論理とその限界

中島氏は、この状況への考え方は二つあるとする。一つは積極財政だ。日本の借金は日本円で、しかも日本人から借りている。そのため、返せなくなる心配や国が破産する心配はない。中島氏はこの点について「本当にないんですよ」と認めたうえで、短期的には一理ある面もあると述べた。

一方で中島氏は、長期的に見れば借金は膨らみ続け、さらに借り入れを重ねることになると指摘する。その結果、円の信頼が落ち、ドルやユーロに対して円安が進む。輸入品の値段が上がり、インフレが起こる。中島氏は、積極財政派であれ緊縮財政派であれ、ここの答えは一つだと強調した。借金が増え続ければ円の価値が下がってインフレになる。収入はそれほど増えないので、国民の生活は苦しくなる。中島氏は、それはすでに起きているが今後もっとひどくなると見ている。

中島氏の理解では、積極財政派はインフレを必ずしも否定していない。円の価値が下がれば借金は実質的に薄まるので、財政としては成り立つ、というのが積極財政派の考え方だと中島氏は説明している。

「いざとなれば金利を上げればいい」は通用しない

ハイパーインフレになりそうになったら金利を上げればよい、という意見もある。中島氏はこれに反論した。日銀がコントロールできるのは短期の政策金利、つまり銀行がお金を借りるときの金利だ。長期国債の金利は入札で決まるので、日銀は直接コントロールできない。円への信頼が落ちれば、今回のように長期金利はどんどん上がっていくが、それを日銀は抑えられない。

緊縮財政は唯一の回避策だが、短期的には痛みを伴う

では緊縮財政が正解なのか。中島氏は、円が紙くず同然になって超インフレが起こる事態を避ける唯一の方法は緊縮だと述べる。具体的には、増税や政府支出の削減によって借金を減らすことだ。

ただし、この方法にも問題がある。中島氏が「表面的な問題」と前置きして挙げたのは景気の悪化だ。政府がお金を出さなくなれば、補助金に頼っている事業者や政府からの受注を求める企業にはお金が回らなくなる。GNPに占める政府支出の比率は大きいので、それが減ればGNPも減り、景気は沈む。そのうえ増税があれば、国民にとって短期的に苦しいことは明らかだと中島氏は言う。

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選挙では緊縮が不人気になる:民主主義の宿命

中島氏が最も重要だと強調したのは選挙との関係だ。緊縮は短期的に苦しいので、選挙での評判が悪い。「増税します」「政府支出を減らします」「補助金を減らします」は、国民にとって耳の痛い話だ。そう訴える政党は票を集められない。だから民主主義である限り、積極財政派が勝つ傾向にあると中島氏は見る。

中島氏は今回の選挙にも触れた。自民党にお灸を据えたこと自体はよかったと思うとしつつ、結果としては減税やばらまきを掲げる党が票を集めたと述べている。中島氏はこれを「民主主義の宿命」と表現した。正しいかどうかは別として、短期的に一見よく見える政策が票を集める。その結果、国家の財政は悪くなっていく、という見立てだ。

本来であれば、国民をうまくなだめ、納得してもらいながら票も集め、上手に緊縮財政を進めるのが政治家の役目だと中島氏は言う。ただし、それは非常に難しいとも認めている。今回の選挙では「消費税を下げろ」といった主張をする人々が勝った。その結果、借金が増えていくことが今後も起こるだろうと中島氏は見ている。

中島氏は、この動画で積極財政そのものが悪いと言うつもりはないと断っている。言いたいのは、皆がその場の短期的な利益を求める限り、民主主義はそちらへ向かうということだ。民主主義の国では借金が増え続ける傾向があるように思え、その典型が日本ではないか、というのが中島氏の見方である。

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インフレ対策としての減税・給付は逆効果

中島氏が「一番笑っちゃう」と述べたのは、インフレ対策として減税や給付を行うことだ。財政状況が悪化すれば円の信頼が下がり、長期国債の入札が悪化して金利が上がる。利払いが増え、政府の借金は雪だるま式に膨らむ。さらに円の信頼が落ちて円安になれば、海外から輸入するものが高くなりインフレが進む。

つまり、インフレ対策として減税や給付をすることは実は逆効果だと中島氏は主張する。票を入れる国民からはよさそうに見えるが、実際には反対の効果、つまりインフレを強める効果を生むという。

きれいな答えはない

中島氏は、きれいな答えのない動画で申し訳ないとしつつ、視聴者にはこうしたことが起きていると理解してほしいと述べた。政治家に対しては、減税や給付といった短期的な積極財政は問題を先延ばしにしているだけで、将来インフレになるという点に責任を持ってほしいと求めた。

これも良い悪いの話ではなく、国民が選んだことだからしょうがない面もある、と中島氏は言う。そのうえで、私たちはそうした矛盾を含んだ民主主義の中で生き、投票しているのだと理解したほうがいい。これが今回の動画の趣旨だと中島氏は締めくくった。

最後に聞き手も、絶対の正解という答えは存在しないかもしれないと述べた。政治家が短期的な人気取りのために減税や財政出動を行うと、長期的にはインフレを招いて国民生活が厳しくなる側面がある。そうした民主主義の中の複雑な矛盾を理解しながら、一人ひとりが考えていくことが大切だとまとめた。