岡田斗司夫が読む『攻殻機動隊』原作第2話のエピローグ:草薙素子の正義感と荒巻の本音
岡田斗司夫岡田斗司夫ゼミで続いてきた漫画版『攻殻機動隊』の解説が、第2話「スーパースパルタン」の最後までたどり着いた。元になったのは2019年6月16日配信の第286回の会員限定部分である。アクションシーンの解説は前回で終わっており、今回扱うのは作戦終了後のエピローグだ。岡田は、このエピローグこそ注目すべき箇所が多いと言う。救出した子供への草薙素子の突き放した言葉、荒巻部長の立ち位置、バーでの小さな仕草、そしてラストの工場の風景。岡田はこれらを一つずつ読み解き、第2話が作品全体の見取り図になっていると論じる。
救出された子供に素子が突きつけたもの
作戦が終わると、捕らえられた相手は「公安が何をしても政府のやり方は変わらない」と負け惜しみを言う。その横で、施設から逃げてきた少年が素子に「僕らを解放しに来てくれたんですね」と喜んで話しかける。素子はそれに対し、「何が望みだ。俗悪メディアに洗脳されながら種を撒かずに実を食べることか。後進国を犠牲にして」と言い返す。さらに「お前にだってゴーストがあるだろう。脳だってついている。電脳にもアクセスできる。未来を作れ」と言い捨てて、すっと姿を消す。少年は「そんなこと言われても」とつぶやくしかない。
岡田によれば、攻殻機動隊は基本的には正義のお巡りさんの話だが、素子は一言多い。そしてそこに作者の心情が出ているという。少年は戦争で生まれた戦災孤児である。収容施設で浄水装置を作らされ、食事は毎回同じものしか出ず、厳しく管理され、仕事ができなければ洗脳される。そういう悪夢のような生活から助けられたと思って礼を言ったのに、素子は悪意とも取れる言葉で応じる。素子は洗脳を犯罪として問題にしているだけで、労働条件にはまったく同情していない、と岡田は読む。
岡田はこれを現代の言葉に置き換えて説明する。技術もないお前たちは言ってしまえばニートで、何がしたいのか、YouTubeで『けものフレンズ』を見ることか。それが見られるのは、親の世代が人件費の安い国を犠牲にして稼いだ金が小遣いとして回ってくるからだろう。岡田はこれを、オタク的な生き方への嫌悪ではなく「自分たちがやっていることを自覚しろ」という意味だと読む。洗脳は犯罪だから介入するが、ブラック企業には関与しない。嫌なら自分で働いて力をつけて出ていけ。ネットにつながっているなら、そこで就活やバイトをしろ。厳しい親父のようなことを言って消えていく人物として素子は描かれている、というのが岡田の説明である。
「そんなこと言われても」を入れる作者の目
岡田がこの場面で評価するのは、素子の説教だけで終わらせず、少年の「そんなこと言われても」を並べて描いた点だ。話としては救出の時点で終わっていてよいのに、作者はもう一歩踏み込んで自分の美意識を出している。お前は確かに被害者だが、被害者という立場で弱者の権利を振り回すな。お前は相対的に弱者なだけで、後進国に比べればまだ強者だ。これが素子の側の論理である。
一方の少年にも言い分がある。戦争で親を失い、生まれた時からここに放り込まれていて、ほかの生き方を知らない。それで何ができるのか。岡田は、作者が素子の論理だけを信じているなら「未来を作れ」で終わるはずだと指摘する。少年のつぶやきを置いたのは、素子の言い方があくまで強者の論理で、弱者の論理ではないという作者自身の考え方の表れだという。両方の立場にそれぞれの理屈を持たせているからこのツッコミが成り立つとして、岡田はこの一連の流れが「すごく好き」だと語っている。
内務大臣と荒巻部長、それぞれの「正義」
場面は変わり、おそらく本部に戻った後になる。あの施設は政府の洗脳施設の一つだったこと、私利私欲のために独走を始めたので見せしめになってもらったこと、辞職した2人の議員はスパイだったことが明かされる。そこへ内務大臣から通信が入る。大臣は「派手にやりすぎた」と不満を示し、素子が求めていた特殊部隊の件は、今回のようなことがあると難しい、君の出方次第だと言う。政府の施設を壊したわけではないが、洗脳が行われていたことを明るみに出してしまったので、素子を隊長とする独立組織の設立は後回しになる、という意味だと岡田は説明する。
岡田によると、この部隊の強さは部長も内務大臣もよく分かっていて、どちらもそれを支配したがっている。大臣の言い分は、素直になるなら部下にしてやるが、そのかわり俺の都合のために動け、というものだ。
岡田はここで三者の「正義」の違いを整理する。素子が求める純粋な正義は、そんな政府の施設があれば壊す、というものだ。内務大臣は、正義のために戦うのはかまわないが、それは自分が決めた悪いやつに向けてくれ、自分たちのグループには介入するな、という立場である。荒巻部長はその中間にいる。洗脳施設のようなものがある程度必要なことは認めるが、それが誰かの私利私欲のために独走を始めたら止めなければならない。岡田はこれを「バランスが取れた判断」と呼び、どこにも純粋な正義はないと述べる。
さらに岡田は、この立場こそ荒巻が公安部長より上に出世できない理由だと言う。後の話に出てくる部長の大学時代の友人や官僚仲間は、みな荒巻より出世している。荒巻だけが止まっているのは、こういう立場を取るからだ。こうしたやり取りを通じて、素子はこの人は信用できるかもしれないと少しずつ思い始める。
素子、内務大臣を殴って決別する
素子はもともと内務大臣に取り入ろうとしていたが、大臣の本性を知って決別を決める。「2秒だけ優先させてください」と言い、首の後ろの最優先チャンネルに次ぐ優先チャンネルで接続する。その瞬間、内務大臣は自分で自分を殴ってしまう。素子が相手の体を操り、ガードマンが持っていた強力な防壁を使って大臣を殴らせたのだ。「さらば我が軍役の日々」と、内務大臣直轄の将校という立場もこれで終わりだと受け入れる。
さらに素子は「公安部の使いになるくらいなら転職するわ」と言う。転属の推薦状は書いてあるから安心しろ、とも。岡田はこの時の素子の気持ちを、内務大臣の下ではもう働けないが、だからといって公安部長の手先になるくらいなら仕事などやめてしまおう、と説明している。
トグサの失敗と新婚家庭
続いて新人のトグサの話になる。石川は、マンホールの蓋に葉っぱが挟まっている様子をマジックでぐりぐり描いた紙をトグサに渡す。見てもらえれば分かるだろう、という意図だ。素子は、そんなものを見せるだけにしないで口で言ってやれ、とたしなめる。石川は「事実は事実、感情は感情。甘やかすとふやける。それを説教するのは年寄りの仕事だ」と返す。トグサはそれを見て気持ちが折れてしまう。素子は自分も失業だからと、石川たちを誘って飲みに行き、バトーには報告書を書けと命じる。
トグサの家は新婚家庭で、子供をあやしていて、奥さんのお腹には2人目がいる。「ドジを踏んでみんなに迷惑をかけて」と落ち込み、転職情報誌を眺めている。作戦中に情報が漏れた原因について、リークか罠かと疑われていたが、実はトグサのドジだった。それを石川に指摘されて自己嫌悪に陥っている、という流れだと岡田は説明する。岡田はここから話全体のまとめに入り、コメディ色が強まっていくと指摘する。また、昼から夜へ移ったことを示すために黒い縁のコマが使われているという、演出上の細部にも触れている。回想シーンなどに使われることの多い暗いコマを、この作者は場面転換にも使うのだという。
バーで漏らす素子の泣き言
バーで酔いつぶれかけた素子は、「この水1杯作るのにさ」とこぼす。洗脳施設は浄水器を作る工場だった。その浄水器で作った水は、こういう高級なバーで飲まれるためのものだ。自分はその水を飲む強者の側にいて、そのためにあの子供たちが犠牲になっている。そのことを素子はここで泣いている、と岡田は読む。子供の前では強気に「頭がついているんだから働け」と言いながら、こういう場では泣き言を言う。岡田はここに素子の人間的な一面が描かれていると見る。
そこへ荒巻部長が現れ、「いいパンチだったな」と言う。素子は「勝者に乾杯」と皮肉で応じる。岡田によれば、素子は内務大臣と公安部の派閥争いに巻き込まれ、結局公安部にいいように使われたと思っている。だからこの乾杯は皮肉なのだ。荒巻が「わしとボスの考え方は違う」と言っても、素子は「それこそ私が突入するかしないか試したりしない」と、まだ皮肉で返す。
「悪い知らせ」と「いい知らせ」、攻殻機動隊の誕生
荒巻は、大臣が怒り狂って部隊の即時解散を決め、国防大臣の署名入りの書類が昨日付で提出されたと告げる。素子の道は断たれた。そのうえで、知らせがあると言う。
悪い知らせは、国際テロ対策機関の予算が出たという話は嘘だということ。いい知らせは、素子の申請額の約3倍の規模で国際救援隊が新設されること。素子は、そんなことは私には関係ないと突き放す。しかし荒巻は続ける。これで民間人を殺した自衛隊などと言われずに済む、というのは建前で、予算の8割は攻殻機動隊の創設資金に回る。ここでようやく作品全体のタイトルが登場する、と岡田は指摘する。上は首相だけ、責任はわしが持つ、階級なしの実力主義、最優先ライン。犯罪の芽を探し出して排除する、お前やわしが心から望んでいた攻性の組織だ。質はお前たち次第だ、と。
素子はここで驚き、荒巻が約束を守ってくれたことにようやく気づく。岡田は、荒巻の本音がここでぽろぽろと出てくると言う。荒巻も素子たちを試していた。政府の組織だからといって突入をためらわず、正義のために戦えるかどうかを見ていたのだ。同時に荒巻は、素子が言っていたことを自分は本当に実行する、と行動で示した。国際テロ対策機関のようなものを作っても、内務大臣の言いなりになり、権力闘争の道具にしかならない。そうではなく、首相直属で、責任は自分だけが持ち、実力主義で動く組織をきちんと用意した。岡田はこの場面をそう読んでいる。
左手の動きに込められた「同じ盃」
荒巻は「こいつらにもう1杯ずつ同じものを」と言い、金を置いて去っていく。岡田は解説しながら、収録中に初めて気づいたという細部を紹介する。荒巻は右手でコインを出すが、そのコマでは右手しか描かれていない。そして左手で紙を出し、同じ左手でバーテンダーに「こいつらにもう1杯ずつ」と金を渡している。右手は自分の飲み物の代金、左手は置いていく紙と、部下たちに飲ませる酒が対になっている、と岡田は説明する。
その紙は、次のコマの台詞で誓約書だと分かる。「明朝6時、その誓約書に目を通してサインして持ってこい」。つまり荒巻は、自分の部下になれという誓約書を渡している。その誓約書と同じ手で酒をおごるのは、同じ仲間になったのだから同じ盃の酒を飲め、という象徴だというのが岡田の解釈である。岡田は「見落とす」「恥ずかしい」と言いつつ、この読みを披露している。
続けて荒巻は「8時からの洗脳装置の回収作業に立ち会え。無駄遣いで予算を切られたんだ。待ってるぞ」と言う。本来なら下の者がやる作業に自分も付き合わなければならない、という言い方だが、岡田はこれを荒巻の照れ隠しだと見る。明日8時の回収作業に立ち会うというのは、自分が責任を持って現場に行くという宣言だ。オフィスから命令するだけの内務大臣とは違い、誰もが嫌がる政府の洗脳施設の立ち入りに自分も入る。それを予算削減のせいにして照れ隠ししている、というわけだ。岡田はこれを「なかなか泣かせる」場面だと評している。
バトーの「花火」と、身軽な荒巻
荒巻が去ると、報告書を書き上げたバトーがすれ違いに入ってくる。石川は「してやられた、ボスも施設も俺たちも」と言い、素子もうれしくなってにこにこしている。事情を知らないバトーは、面白いことがあると得意げに話す。そこで荒巻の車を見つけたので、タイヤに「花火」を仕掛けてやったというのだ。バトーはまだ、自分たちが公安と内務大臣の権力争いに巻き込まれただけだと思っている。
素子が慌てたところで、外で爆発が起きる。荒巻がいい人だと分かって思わず笑みがこぼれるほどうれしかったのに、報告書を書いていてその場にいなかったバトーが余計なことをした。そう思って飛び出すと、車が火を吹いている。ところが荒巻は「ご苦労。パンクした車は回しておけ。明日遅れるな」と言い、さっさと小型の原付バイクで帰ってしまう。
岡田はここで荒巻が一枚上手であることを指摘する。その車が本当に荒巻のものだったかは分からないし、その程度のことはお見通しだったという意味もあるだろうと言う。ただ、それ以上に岡田が重視するのは、荒巻が大きな車を乗り回す権力者タイプではないという点だ。必要に応じて乗り物を切り替え、家に帰るだけならバイクでいい、ヘルメットをかぶればいい、と考える身軽な人物として描かれている。素子たちは真剣に心配した分だけ損をした形になり、最後にもう一言オチがついて、ずっこける動きで話は締めくくられる。
工場の後日談:民主化の代償
ただし物語はもう一場面ある。洗脳施設だった浄水器工場のその後だ。施設から逃げてきたあの少年が、「肉も卵も買えないよ、もっと働いてくれよ」とこぼしている。そして「もう休憩の時間だ」「おやつが出ないのはずるいやつがいるからだ」という台詞が続く。
岡田の読みでは、働かない者が洗脳される恐ろしいブラック企業はなくなった。その結果、自分たちで民主的に工場を管理するようになったが、サボる者が続出している。少年は被害者の立場から抜け出し、管理する側、中間管理職の厳しさを知り始めた。彼にとっては、前に「働け働け」と言われていた頃の方が楽だったかもしれない。岡田は、文明とはこういうものだという作者のメッセージがラストに込められていると見る。
岡田は絵の細部も指摘する。「もう休憩の時間だ」と言っているのに、時計の針はまだ休憩時間を指していない。さっそくサボり始める者や、髪型ばかりいじっている者も描かれている。政府の悪の洗脳組織は一つなくなったが、代わりにダメな工場が一つ生まれた。この工場の生産性はたぶんここから大きく下がる。それでもそれが民主化というものではないか。岡田はこれを作者のメッセージとして受け取っている。
第2話は「実質的な第1話」
岡田は第2話を、攻殻機動隊というシリーズ全体を見通せる非常にいい話だと評価する。優先回線での接続や、通信時のバーコードのような表現は、後になるとほとんど出てこなくなる。しかし、素子と荒巻部長ともう一人の主要人物の3人を追いかければ、話はとても分かりやすい、とも述べる。
補足部分で岡田は、素子の説教を改めて振り返る。「種を撒かずに実を食べる」の「種」には「義務」、「実」には「福祉」というルビが振られている。労働などの義務を果たさず、自分たちはかわいそうだと福祉だけを求めるのか、という意味だ。これだけなら、素子は冷徹で厳しい女性という印象で、子供を助けに来たヒーローの振る舞いでもない。ところが事件後、素子はバーで「この水1杯作るのにさ」と愚痴る。岡田の説明では、この作品世界の日本は何十年か前に核攻撃を受けて国土が荒れ、水1杯作るにも化学設備のようなものが必要になっている。美味しい水を作る機械のために戦災孤児が洗脳施設で働かされる。そういう社会構造がある一方で、自分は政府から給料をもらって酒を飲んでいる。素子はそんな恵まれた側にいる自分に愚痴を言っているのだ、と岡田は解釈する。この二面性が面白いという。
さらに岡田は、この第2話が実質的な第1話だと指摘する。プロローグは単行本化の際に付け足されたもので、世間に最初に公開されたエピソードは、ヤングマガジン海賊版に掲載された「スーパースパルタン」だった。その目線で読み返すと、エピソード全体が主人公・草薙素子の紹介になっている。何が何でも主人公のキャラクターを立てろ、というエンタメの基本を守っている、と岡田は言う。
根底にあるのは昭和の時代劇
岡田によれば、「スーパースパルタン」で分かるのは、素子が戦う理由が結局のところ青臭い正義感だということだ。それはシンプルで、多くの人が共感できる感情として描かれている。一方で素子は、それを恥ずかしいとも思っているし、世の中は正義感だけでは回らないことも知っている。正義感だけに賭ければ、自分が救いたい人を救えなくなる。そうしたさまざまな義務感が素子という人物を形作っている、と岡田は分析する。
そのうえで岡田は、攻殻機動隊のエンタメとしての面白さをこう説明する。複雑で先進的なSF描写でありながら、根底にあるのは、たとえば武士階級ではない町人の目明かしを主人公にした勧善懲悪の物語だ。今回の総理大臣直轄の公安9課の設立は、岡田に言わせれば『大江戸捜査網』と同じである。町の中にいる名もなき者たちが集まって悪を倒す組織ができる。必殺シリーズのような1960年代から70年代の昭和のテレビ時代劇の流れをきちんと汲んでいるところが攻殻機動隊の面白さだ、と岡田は結論づけている。
1か月あまり続いた原作解説はこの回で終わりとなる。今後は月1回ほどゼミの中でアニメ版の解説を行い、その中で原作版にも触れていく予定だと岡田は述べている。
サイエンスSARUのですね、アニメ『攻殻機動隊』ですね。今夜のは、テレビで原作版の第7話です。「ファントム・ファンド」まで話が進みます。まあ、なんだろうな、大事故とかがない限りそうだと思いますけども、岡田ゼミではまだですね、第2話の「スーパー・スパルタン」の話をしています。
ということでですね、今夜も、漫画版じゃないな、今日もだ、これ朝なんですよね。最近ね、夜の配信もやってるからわかんなくなって。今朝もですね、漫画版『攻殻機動隊』の解説動画を再配信してます。おはようございます。岡田です。そう、そう、おはようございます。
今日の動画でですね、ようやく第2話の「スーパー・スパルタン」の最後まで、原作の漫画の話をするんですけども、と言ってもですね、前回までで、先週であのドンパチのアクションの説明は終わってしまったんでですね、今回は作戦が終わった後のエピローグ的な、締めの話。ただこのね、エピローグもですね、注目してもらいたいところが多いんですよね。
今日の動画はですね、2019年6月16日に配信した岡田斗司夫ゼミ第286回の会員限定部分ですね、特別に公開します。動画が終わった後もですね、ちょっと補足がありますから聞いてください。それでは、ここから無料動画スタートです。
ということで、アクションシーンが終わってまとめに入ります。
「お前ら公安か。バカだの。公安の時に何ができる? 変わらんぞ」。洗脳施設でこんなことをやってても、この政府がこんなやり方をするのは変わらないぞという風に、彼は負け惜しみを言ってます。で、彼女はこの時に、玉の取り替えをやってるわけですね。
で、「僕らを解放しに来てくれたんですね」。これ逃げた彼です。という風に言うと、素子は強い。「何が望みだ。俗悪メディアに洗脳されながら種を蒔かずに実を食べることか。後進国を犠牲にして。お前だってゴーストがあるだろう。脳だってついて電脳にはアクセスできる。未来を作れ」と言って、すーっとまた消えちゃうんですね。「そんなこと言われても」って言うんですけども。
『攻殻機動隊』って基本的にはお巡りさんもの、正義のお巡りさんものなんですよ。正義のお巡りさんものなんですけども、一言多いんですね。もう作者の心情なんですけども、これ被害者なんですよ。戦争で生まれた戦災孤児なんですよ。
戦災孤児の収容施設の中で、戦災孤児たちが水を作る装置っていうのを作らされて、毎食毎食お粥しかなくて、すごい管理されてて、仕事が下手だったら洗脳されるっていう悪夢のような生活をしてるからこそ、正義の味方が助けに来てくれたということで「僕らを解放しに来てくれたんですね」って言うと、素子はっていう、この悪意ですね。
洗脳が悪いだけで、労働条件は全然、素子はなんだろう、同情してないですよ。なので「何が望みだ」と。そんなことやって、お前ら戦災孤児で手に技術もなければ、これ言っちゃえばニートです。はい。お前らニートが何したいんだと。なんかYouTubeでけものフレンズを見ることかと(笑)。
そんなYouTubeでけものフレンズを見れるのはなんでかって言うと、後進国を犠牲にして、お前らのお父ちゃんとかお母ちゃんとかが人件費が安い国とかを犠牲にして働いて、その金があるからお前に小遣いが回ってくるんだろうっていうですね。何かその、何でしょうね。オタク的な生き方に対する嫌悪感ではないんですよ。そういうことを自分たちがやってることを自覚しろよっていうことなんですね。
洗脳されてるっていうことは犯罪だから関与するけども、ブラック企業に関しては(笑)素子とか関与しません。それが嫌だったら自分たちで働いて能力をつけて出ていけ。お前にだってゴーストは、魂があるだろうと。脳みそだってあって電脳にはアクセスできるんだから、自分で未来を作れと。けものフレンズばっかり見るんではなくて、ネット繋げるんだからそこで就活してバイトしろよっていう風に、厳しい親父のようなことを言いながら消えていくおばさんというやつで、「そんなこと言われても」っていうですね。
この両者を出すところが作者のセンスです。一方で、ここまでで本当はお話としては終わりなんだけども、踏み込んでですね、作者自身の美意識というのを出す。お前は確かに被害者なんだ。被害者なんだけども、被害者という立場で弱者の権利を振り回すなよと。お前は相対的に弱者なだけであって、後進国に比べればお前はまだまだ強者なんだよっていう風なことを言いながら。
でも、そんなこと言われても俺に何ができるって言うのよと。だって俺、戦争で親も失っちゃった孤児じゃん。ここに生まれた時からずっと放り込まれてて、ここ以外の生き方知らねえよっていうですね。全員にその立場があるやり方をやってるから、このツッコミがあるんですね。
作者が本当にこれだけを信じてたら、「未来を作れ」という風に言ってここで終わるはずなんだけど、この「そんなこと言われても」っていうのが、素子的な言い方はあくまで強者の理論であって弱者の理論じゃないんだよっていう、作者自身の生き方が現れてる。僕、結構この一連の流れすごい好きなんですよ。
ということで、多分もう本部みたいなところに、たまり場みたいなところに帰った後です。「そう、あれは政府の洗脳施設の1つだ。私利私欲のため独走を始めたので、見せしめになってもらった。これを理由に辞職した2人の議員はナ藤のスパイだ」と。で、「内務大臣が直接話したいそうだ。切り替えるぞ」という風なことで、こいつらが呆れたような顔して見てるんですね。
つまり正義のために戦ってもらって、この公安の部長の命令でやったんだけども、これは政府の組織であるということで、内務大臣が「草薙少佐、派手にやりすぎたな」「派手になるとご存知だったはずです」ということで、「君の言ってた何だったかな? 特殊部隊の件だが、今回のようなことがあるとまあ難しいな」という風なことで。
何を言ってるのかと言うと、政府自体の施設を破壊したんではないんですけども、洗脳が行われてることをばらしてしまったわけですね。なので、素子がやっていた、彼女を隊長とした独立組織ですか、っていうのを作るのは、まあ後回しになるな。で、君の出方によって、という風なことで。
この部隊が強力なのは、部長も内務大臣もよく分かってるんですね。どっちもハンドリングしたがってる、どっちも支配したがってる。どっちも支配したがっていて、で、彼はなんだろうな、こういう取引っていうのかな。君の出方によって、素直になるんだったら俺の部下にしてやるよ、その代わり俺の私利私欲のために動け、みたいなこと言ってるんですね。
で、この部長というのは公安部の部長でありながら、政府の組織に立ち入り捜査して、「私利私欲のため独走を始めたので、単なる見せしめになってもらった」というバランスが取れた判断ができるんですよね。こういう洗脳施設があるのはある程度仕方がない。しかしそれの目的が私利私欲のために独走を始めたので、見せしめになってもらったという風なことで。
何でしょうね。どこにも純粋な正義はないんですよ。素子の求めてる、この彼女が求めてる純粋な正義っていうのは、そんな政府の施設があったら壊す、なんですね。ところがこの内務大臣は内務大臣で、いや、お前が正義のためにやるのは構わないけど、それは俺が決めた悪いやつのためにやってちょうだい、っていう立場なんです。私利私欲っていうのが、自分たちのグループのやつには介入しないでくれ。
でもこの公安部長が言ってるのは、必要悪は認めるんだけど、その必要悪が誰かの私利私欲のために独走を始めたら止めなきゃいけない。それが、公安部長っていうこの人が公安部長以上に出世できない理由ですね。後に出てくる、この漫画の中に出てくるこの部長の大学時代の友人とか、それ以降の官僚組織の中の友人ってのは全員この人より出世してるんです。この人だけが公安部長止まりで出世が止まってるのは、こんな立場を取っちゃってるからです。
徐々に徐々に素子は、この人が信用できる人かもしれないという風に思ってきます。ということで、こういう風に、元々この人は内務大臣に取り入ろうとしてたんですよね。でもこの内務大臣がこんなやつだと分かって、もうなんだろうな、別れようと決意します。「2秒だけ有線させてください」ですね。
「例の阻止持ってこい」という風なことで、「2秒だけ有線させて」ということで、さっきも言ったように最優先の、首の後ろにつなぐ有線チャンネルをやった瞬間に、内務大臣は自分で自分のことを殴ってしまう。「さらば我が軍役の日々」ということで、内務大臣直轄の少佐という立場をもらっていたのは、まあこれで終わりだろうと。自分自身で相手の体を操ってですね、ガードマンが持っていた強力な防壁阻止を使って、内務大臣を殴っちゃったわけですね。
で、「公安部の使いになるくらいなら転職するわ」「転属の推薦書は書いてあるから安心しろ」という風に言います。この時に素子自身は、内務大臣の元ではもう働けない、だからと言って公安の部長の使いになるぐらいだったら、もう仕事なんかやめちゃおうという風に思ってるんですね。なので「使いになるぐらいなら転職するわ」という風に言ってます。
で、「トグサがいないな。どうした?」。トグサ君ですね。はい。「これ見て帰ったぜ」という風なことで、このマンホールの蓋に、ほら葉っぱが巻き込まれてるよというのをマジックでグリグリっと書いたやつを渡されました。これを石川がですね、渡したわけですね。
「これ見て帰って。ああ、やだやだ。じじいは陰険で」と。これを見せてなくて、ちゃんと口で言ってやれと。お前こういう風に、そうじゃなくてもこれだけ見せちゃうと。そうすると石川は「事実は事実、感情は感情。甘やかすとふやける。それを説教するのは年寄りの仕事だ」ということで、ちゃんと俺もトグサに注意したぜっていう。ただトグサ君はこれを見て、気持ちが折れちゃったわけですね。
で、素子さんは、これで自分失業だということで、「1杯付き合え。バトーは報告書書け」という風なことで、飲みに行きます。
さて、場面変わってトグサ君の新居ですね。新婚家庭ですね。「お前の親父はバカなんだ」という風なことで子供をあやして、奥さんのお腹にはもう2人目がいるという状態ですね。「ごめんなさい。すぐ夕食の支度しますから」「ああ、やっぱりドジ踏んでみんなに迷惑かけて、平に降格なんて言えないよな」という風なことで、転職探しマガジンを見てるというような描写です。
つまり、なんで情報が漏れたんだ、リークか罠かって言ってたのが俺のドジのせいだったというのを石川から説教されて、もう自己嫌悪になって、子供をあやして(笑)、2人目の赤ちゃんがいて、落ち込んで転職マガジンを読んでるという。ここら辺はお話全体のまとめでコメディになってるからですね。
あとは多分ここまでが昼で、夜になってるので暗くなってるので。大体この暗いコマっていうのは回想シーンとかで使うんですけども、士郎さんの場合、場面転換で使ったりして、夜になったらこういう黒い縁とかを使ったりします。
ということで、あと3ページ、あ、4ページ。4ページだけですか。ちゃっちゃといけます。「1杯付き合え」ということで、1杯付き合ってもらって、まあまあグデグデになるまで。こいつもいます。石川もいます。で、飲んでます。
で、「この水1杯作るのにさ」「よせよ」と言ってます。この「水1杯作るのにさ」っていうのは、あの洗脳施設が水の工場だったからですね。浄水器を作る工場だったから。そういう浄水器で水を作るのは何のためかって言うと、こういうなんか高級なバーとかで飲むためのお水を作ってるんです。
で、そういう水を自分は飲んでる、いわゆる強者の側にいるんだけども、そのためにあんな子供たちが犠牲になるってことで、ここで泣いてるんです。子供の前ではあくまで強気で、お前だって頭ついてんだからニートやめてさっさと働けって言いながら、こういうところでは泣き言を言っているところで、この人のなんだろうな、人間的な一面を見せてます。
そうすると「いいパンチだったな」という風に部長が来て、「勝者に乾杯」と。この人はなんでこの「勝者に乾杯」って言ってんのかって言うと、なんでこの公安で働くの嫌がってたのかというと、派閥に巻き込まれたと思ってたからですね。争いに巻き込まれて、内務大臣と公安部の派閥争いに巻き込まれて、自分はいいように使われて公安部に使われちゃったんだと思うから、「勝者に乾杯」っていう風に皮肉を込めて言ってる。
で、「わしとボスの考え方は違う」「そうでしょうね。だからこそ私が突入するかしないか試したりしない」という風に、まだ皮肉で答えてます。「大臣は怒り狂って部隊の即時解散を決定した。で、書類の提出は昨日付けだ。国防大臣の署名入りだ」ということで、お前の話は立ち消えたと。「その上でお前に知らせることがある。いい知らせと悪い知らせ」ということで、最後の地に入ります。
えー、よいしょ。ちょっとこっちか。「国際的テロ機関の予算が出たと言ったら、あれは嘘だ」。えっと、これが悪い知らせですね。いい知らせ。「お前の申請額の約3倍の規模で国際部隊が新設、設立される」と。もうこの人は「そんなこと私には関係ない」と。
「これで民間人殺しの自衛隊とか白上大国とか言われなくてもすむというのは建前で、予算の8割は攻殻機動隊の創設資金」と。ようやっとぼっとこのお話全体のタイトルが出てきました。で、「上は首相だけ。責任はわしが持つ。階級なしの実力主義。最優先ライン。犯罪の芽を探し出し、これを排除する。お前やわしが心から望んでいた攻性の組織だ。質はお前たち次第だ」ということで、びっくり。ようやっとこの人が約束を守ってくれたことに気がつくんですね。
で、こう大きな流れが、この人の本音がここら辺でポロポロっと出てくると。なんでこういう風なことをさせたのかって言うと、確かにこの人も素子たちを試してたんですね。それは政府の組織だからと言って突入することができるかどうか、正義のために戦うことができるかどうかっていうのを試して、この人は同時に、この素子が言ってたことを本当に自分はやるっていうことを証明したわけですね。
予算を取ったんだけども、国際的テロ機関なんていうのを作っちゃったらですね、そんなものを作ってしまったら内務大臣の言いなりになってしまって、所詮権力闘争の道具にしか使われなくなる。そうじゃなくて首相の直属組織で、責任は自分だけが持って、実力主義のラインだっていう風なことを、ちゃんと作ってくれたわけです。
で、素子はびっくりしたということで、「こいつらにもう1杯ずつ同じものを」という風なことで、お金渡して去っていくと。多分この紙は証明する書類かなんかだと思うんですけどね。もうあんまりこの漫画説明してくれないから、よくわかんないです。
あ、次で書いてあった。本当にね、見落とすの。僕も今初めて気が付いたんですけども、ここで右手でコインを出して、コイン止めて、右手しか映さないんですよ。で、左手でこの紙を出して、「こいつら」同じ手でコインを渡して、「こいつらにもう1杯ずつ同じやつを」。この左手の動きですね。右手は自分の飲み物のお金。左手はここに置く紙と、こいつらに飲ませるお酒とが対になってるんですね。
その次は何かって言うと、恥ずかしいです、今気がついたんですけども。「明朝6時、その誓約書に目を通してサインし持ってこい」。つまりここで素子に、自分の部下になれっていうサインの契約書を渡すんですね。で、その契約書と同じ手でコインをバーテンダーに渡して、こいつらにお酒飲ましてくれと。だから同じ仲間になったの、同じ盃の酒を飲むんだっていう象徴が、この左手の動きなんですね。
で、「8時から洗脳装置の回収作業の立ち会いだ。無駄遣いなんで予算を切られたんだ。待ってるぞ」ということで、本来こういう目下のものがやるような作業に、俺たち自身も、私自身も付き合わなければいけないっていう風に言うんですけど、これはもう部長の照れ隠しですね。
明日8時に洗脳装置の回収作業に立ち会うっていうのは、自分が責任持って現場に行くぞっていう宣言なんですよ。内務大臣みたいにずっとオフィスで命令するんではなくて、自分自身も、誰もが嫌がる政府の洗脳施設なんですよ、それの立ち入り検査っていうのに私も現場入りするっていう風なことを、ちょっと照れ隠しで「無駄遣いなんで予算を切られたんだ」という表現で言ってる。なかなか泣かせる。
そこでやっと報告書を書き上げたバトーとすれ違ったんですね。「してやられた。ボスも施設も俺たちも」という風なことで、石川が言ったら、もう嬉しくなってニコニコしてると。そうするとそんなことを全然知らなかったバトーが、「ならもう1つ面白いこと。そこでサロエジの見つけたんで、タイヤに花火仕掛けてやった」と。
つまりまだバトーは公安と内務大臣との権力争いに巻き込まれただけだと思ってるので、そこでこの部長の車見つけたから車に爆薬仕掛けたっていう風に嬉しそうに話すんです。
で、素子は「へ?」ってなってパニックになったら、外でドーンと爆発すると。慌てて出てみると車から火を吹いてるので、しまった。あんないい人だと分かって、思わず笑みがこぼれるぐらい嬉しかったのに、それを知らない、報告書を書いていてここの現場に立ち会ってないバトーが余計なことしやがったと思って、外に慌てて出ると、ですね。
「部長」ということで車出たら、「ご苦労。パンクした車を回せ。明日遅れるな」ということで、部長はですね、さっさと小型の原付バイクで帰ってしまう。まあ1枚上手なわけですね。この車が本当に部長のものだったかどうかわかんないんですけど、その程度のことはお見通しだっていう意味もあるんでしょうけど、何よりもこの人が大きい車を操るような、なんか権力的な人物ではなくて、自分が乗るものを必要に応じて切り替えて、家へ帰るだけだったらバイクでいいや、ヘルメット被ればいいやって思ってる、すごい身軽な人間だってことを表してるんですね。
で、「ちっ、またすかされた」と。すかされたの何かと言うと、心配してすごい損しちゃったと。真剣に心配しちゃってるわけですね。で、それで「部長」って言って止まったら、「高級払ってね」っていう風なことで、一応そういうこと言ってコケるアクションがあって、お話としては終わるんですね。
ここでお話は終わってるんですけども、ブラック企業でなくなった(笑)洗脳組織、水の工場はどうなったのかって言うと、あの逃げた彼ですね。このままでは殺されると思って逃げた彼がですね、「肉も親子も買えないよ。もっと働いてくれよ」「あ、もう休憩の時間だ」「おやつ出ないのはずるいやつがいるからだな」っていう風なこのセリフがあります。
これどういう意味かって言うと、ようやっと、働かないやつは洗脳されるという恐ろしいブラック企業でなくなったんですよ。で、自分たち自身で民主的に工場を管理したばっかりに、サボるやつ続出でですね、実はもう「肉もエアも買えないよ。働いてくれよ」と。ようやっと彼は、自分が被害者の立場なんですけども、被害者の立場から抜け出してですね、管理する側の厳しさ、中間管理職の厳しさっていうのを知り始めた。
彼にとって人生は、ひょっとしたら前の働け働けって言われてた方が楽だったかもしれない。文明というのはこんなもんですねっていう作者のメッセージがですね、ラストで出てきます。ラストあたりからもう本当にどんどんコメディになっていって、コメディですかされて、部長でキメてたら「高級払ってね」、おほほでコケて、最後こういう風に笑える感じになってくる。
「あ、もう休憩の時間だ」っていうのは、休憩の時間になってないんです。まだ針がこうなんだけど、早速サボり始めるやつと、あと明らかに髪型ばかりいじってる、こいつとかを表すことによって、全体の流れとしては何が起こってるのか。1つ、政府の悪の洗脳組織はなくなったんだけど、その代わりダメな工場が1つ生まれてしまった。多分ここから先、この工場の生産性はすごく下がるんですよね。でもそれが、なんだろうな、民主化ということじゃないでしょうか、という風に作者のメッセージが出てます。
『攻殻機動隊』の第2話の「スーパー・スパルタン」っていうのを、ここまでで解説してみました。『攻殻機動隊』というシリーズ全体を見通せるようなですね、すごくいい話だと思います。
で、もう後になったら出てこない有線での接続とかですね、あとなんかこう通信してる時のバーコードみたいなものっていうのは、後ろの方になってくとどんどん出てこないんですけども、草薙素子だけを追って、この人とこの部長とあとトグサ、3人を追いかけていくとお話がすごく分かりやすいっていう風なことは、見ていただければ分かると思います。お疲れ様でした。
はい。お疲れ様でした。今日の無料動画はここまでです。第2話の「スーパー・スパルタン」のラストはですね、洗脳施設から逃げてきた子供に向かってですね、素子が説教するシーンがあるんですよね。その子供がですね、「僕らを助けに来てくれたんですか」っていう風に嬉しそうに言うとですね、素子はですね、割とバッと言い返すんですね。
「何が望みだ。俗悪メディアに洗脳されながら、種を蒔かずに実を食べるということか」と。この種のところにですね、「義務」って書いてあってですね、実のところに「福祉」って書いてあるんですね。つまり、労働とかのですね、義務をやらずにですね、自分たちはかわいそうだということでですね、福祉だけもらおうとしてるのかって言うわけですね。
「後進国を犠牲にして。お前にだってゴーストがあるだろう。脳だってついてる。電脳にもアクセスできる。未来を作れ」という風に言い放って、というかですね、言い捨てるような感じでですね、さっさと消えてしまうと。これだけだったらですね、なんだろうな、冷徹で現実的な女の人という印象なんですよね。少なくとも子供を助けに来たヒーローの行動でもないんですよ。
ところがですね、それだけで終わらずですね、事件が解決した後ですね、酒場で飲んだくれるシーンですけど、なんで飲んだくれるのかというと、嫌なことがあったんですね。で、それでですね、お水を飲みながら「この水1杯作るのにさ」という風に愚痴ると。
この水っていうのは何かと言うと、元々その子供たちを洗脳させて働かせてるような施設っていうのが、浄水器のところなんですね。っていうのはですね、その『攻殻機動隊』の世界では日本はですね、何十年か前に核攻撃を受けて、すごい国土が荒れてしまった。だからお水1杯作るのにも、なんかその化学設備みたいなものが必要になってると。
そういう家庭用か工業用かわかんないけども、美味しい水を作る機械っていうのを作るために、子供たちはですね、洗脳施設の中で働かされるんですね。そういう戦災孤児をですね、働かせないとやっていけないような社会構造と、なんだかんだでですね、自分たちは政府からお金をもらって、ギャラをもらって、お酒を飲んで飲んだくれるっていうですね。いい身分の側に立ってる自分に対して愚痴を言ってるわけですね。
この両面性で、この草薙素子っていうキャラクターを語ってるところが面白いんですけども、この2話はですね、実質的なですね、第1話なんですよね。単行本化した時にプロローグを付け足したのであってですね、世間に公開された第1エピソードというのはですね、このヤングマガジン海賊版ですか、この「スーパー・スパルタン」になるわけですね。
そういう目線で改めてですね、この第2話を見返すと、このエピソード全体で主人公・草薙素子という人のですね、紹介になってるわけですね。キャラを立ててる。エンタメの基本ですね。何が何でも主人公キャラを立てろと。
で、この「スーパー・スパルタン」ではですね、素子がですね、戦ってる理由が、詰まるところですね、青臭い正義感だというところが分かる。これがもうシンプルで、多くの人が共感できるような感情であることがしっかり分かるようにできてるんですね。
で、こういったですね、草薙というキャラクターがですね、実は青臭い正義感に突き動かされてるんだ。で、それでも自分が恥ずかしいっていうのもあるし、世の中はそれだけで回ってない。そんなものにかけたら自分が救いたい人が救えなくなってしまうという、いろんな義務感が彼女を作ってるわけですね。
この辺がですね、このエンタメとしての『攻殻機動隊』の面白さだと思います。複雑でね、先進的なSF描写でありつつですね、根底にあるのはですね、例えばその武士階級ではない町人の目明かしを主人公とした勧善懲悪のストーリーなんですね。
それがですね、例えばその今回の設定では、総理大臣直轄の公安9課ができてっていうのは、これもう『大江戸捜査網』と同じわけですよね(笑)。街の中にいる町人たちとかですね、名もなき者が集まってですね、悪を倒す組織ができたっていう、もう本当に必殺シリーズとか、そういう昭和の時代の1960年代から70年代のですね、テレビ時代劇の流れをきちんと汲んでるところが、『攻殻機動隊』の面白いところだと思います。
さて、1ヶ月ちょっと続きましたね、『攻殻機動隊』の原作解説はですね、今日で終わりになります。と言ってもですね、これから毎週ですね、日曜の晩のゼミの中で、毎週ではないですね、月1回、ゼミの中でですね、アニメ版の解説はしていきますし、その中でもその原作版には触れていくと思いますので、そちらを楽しみにしてください。
それではですね、今日のですね、解説アップグレード動画はここまでです。お疲れ様でした。じゃあまた、バイバイ。
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