犯人の即日逮捕は監視社会の証拠か:中島聡が語る日本・アメリカ・中国の監視と治安

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概要

ソフトウェアエンジニアの中島聡は、ある殺人事件の犯人が翌日に空港で逮捕されたニュースをきっかけに、監視社会と治安のバランスについて話している。犯人がすぐ捕まったのは良い話である。一方で、その速さを支える仕組みは国民の監視ではないか、という疑問もある。中島は、賛成するか反対するかは自由だが、最低限「こういうことが起きている」と意識することが大事だという立場から話を始める。動画は、聞き手が中島に質問し、中島が答える対話形式で進む。

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SSBCと事件の早期解決

中島が取り上げたのは、女性を刺して殺害した人物が翌日に空港で捕まったという報道である。冒頭では成田空港、後半では羽田と言っており、字幕上は空港名が揺れている。この逮捕に役立ったとされるのが「SSBC」と呼ばれる組織だ。英語の名前のように聞こえるが、正式には捜査支援分析センターの略称だという。中島の説明では、SSBCはAIを使ったシステムを持っており、日本中のセキュリティカメラの映像を解析して犯人の足取りを追える仕組みらしい。

中島はこれを、犯人を早く逮捕できたという点では良い話だと認める。ただし、それは監視社会ではないかという意見があることにも触れ、考える価値のあるテーマだと述べている。

捜査の速さとプライバシーは両立しにくい

聞き手は、技術の進化とプライバシーのバランスを技術者や起業家としてどう考えるかを尋ねた。中島はまず、捜査する側の事情を説明する。事件が起きると犯人はすぐに移動するので、警察はできるだけ早く、理想的にはリアルタイムで追跡したい。犯人の追跡を優先するなら、駅などのカメラ映像を常にSSBCに送ってAIで分析し続け、誰がどこにいるかを常に把握しておくのが、警察にとっては一番都合がいい。悪いことをした人が出たら、すぐに捕まえられるからだ。

しかし中島は、それは国民一人ひとりの動きを監視している状態であり、何も悪いことをしていない人まで追跡されるので怖い、と指摘する。

反対に、ルールを厳しくした場合も考えている。たとえば裁判所の許可がなければカメラ映像を得られないとする。殺人事件が起きると、警察は裁判所に許可を求め、許可が出るまで何時間も待つ。その証明書をJRなどに渡して、ようやく駅の映像を受け取る。こうした手順を踏んでいる間に時間が過ぎ、犯人は逃げてしまう。中島はこの関係を板挟みと表現している。犯人逮捕を優先することと、何も悪いことをしていない国民のプライバシーを侵害しないことは、ぶつかり合うというのだ。

日本ではどこまで行われているのか

日本で実際にどこまで監視が行われているのかについて、中島は推測を述べるにとどめている。日本人はこの問題にあまり敏感ではないため、大きな騒ぎにはなっていないという。そのうえで、事件の翌日に空港で逮捕できた経緯から、かなりリアルタイムに近い形で運用されているのではないかと見ている。少なくとも裁判所の許可を待たずに、SSBCがネット経由で各駅や空港の映像をすぐ取り出せるようになっているのではないか、というのが中島の考えである。

中島は、犯人逮捕は嬉しいとしながらも、ほぼリアルタイムに近い監視体制ができている日本が本当に良いのか、疑問は残ると述べている。

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アメリカ:権力に力を与えないことを重視する

次に聞き手は、技術者が持つべき倫理観や指針について尋ねた。中島は難しい問題だと前置きし、極端な例としてアメリカと中国を挙げる。

中島によると、アメリカの人々はこうした監視をとても嫌う。ジョージ・オーウェルの小説『1984年』もよく知られており、管理社会への強い拒否感があるという。アメリカは建国の時点から、権力者に力を与えすぎても良いことはないという考えに立ち、言論の自由や国民のプライバシーを強く守る憲法を持っている。その後の運用も厳しくなっていると中島は説明する。

例として挙げたのが9.11である。ワールドトレードセンターが攻撃された際、ブッシュ政権は、たとえば携帯電話の音声情報を国が取得できるようにする法律を通した。中島によると、さすがにあの衝撃があった時でさえ、この法律にはかなりの反対があった。そのため、今回の事件で役立ったようなシステムをアメリカで導入しようとすれば、猛反対が起こるだろうと中島は見ている。

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中国:社会信用システムを公然と進める

日本では監視がある意味で隠され、なんとなく密かに進んでいる。一方、中国では堂々と進められていると中島は対比する。

中島が説明するのは社会信用システムである。全国一律ではなく地方自治体単位で行われているらしい。セキュリティカメラの映像なども使い、市民一人ひとりにポイントをつけるという。もともとは借金をきちんと返しているか、仕事をしているかといった項目が中心だった。しかし地域によっては、赤信号を無視していないか、ゴミを捨てていないかまで監視し、社会的な信用度を示す「ソーシャルスコア」に反映しているという。ポイントが低い人はお金を借りられず、高い人は安い金利で借りられる。場合によっては、ポイントが低い人は飛行機のチケットを買えないこともあるという。

中島は、こうした話を聞けばアメリカ人は「とんでもない」と驚くだろうと言う。ただし、その仕組みのおかげで中国は今とても治安が良く、ゴミを捨てられないので街も綺麗だと述べている。さらに、どこかの記事で読んだ話として、中国人の約8割はこの状況を良いと考えていると紹介した。国に監視される部分は多少あっても、治安が良くなり、街が綺麗になり、問題を起こす人が社会から示される仕組みがあるので、みんなが良い行いをするようになる。そう考える人が8割ほどいる、という内容である。

アメリカの治安悪化を見て揺れる考え

中島はアメリカの現状にも触れる。新型コロナ騒動の後、政府がお金を配ったこともあって失業者やホームレスが増え、お金をもらっているうちに働くのが嫌になった人も増えた。そのため治安がかなり悪くなったと中島は見ている。特に民主党、つまりリベラル側の政党が強い州の都市部で治安が悪化しているという。中島自身が住むシアトルのほか、サンフランシスコやポートランドを挙げている。

そのうえで中島は、自分も監視社会は嫌いだと述べる。しかし、今のサンフランシスコのような惨状を見ると、それも嫌だという。だからあるバランスが必要であり、ある程度のことはやった方がいいのではないかとも思う、と話している。

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日本のやり方は「間」の解として悪くないかもしれない

締めくくりとして中島は、日本は得意の「表向きには監視社会とは言わず、実際にはやっている」という状況を上手に作っているのかもしれない、と述べる。それを日本なりの上手なやり方と解釈することもできるという。嫌う人もいるだろうが、実際にそうなっており、今回の事件の解決のような成果もあった。中国とアメリカの間にあたるこの日本の形は、ひょっとすると悪くないのではないか、というのが中島の見方である。

ただし中島は、国民にまったく知らせずに行うのもおかしな話だとも付け加える。今回のような機会をきっかけに、そうした監視が行われていることを意識しながら生活するのも悪くないのではないか、と話を結んでいる。