赤字の旅行サービスを5,000万円で買い、売却益で回す:柳田将司氏が語る2度目の創業

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概要

M&A BANKのMC・島袋直樹氏が、リゾートワークス代表の柳田将司氏に話を聞いた回である。同社はM&A BANKのスポンサーだが、島袋氏は冒頭で「サービスの宣伝はすでに他の番組で出尽くしている」として、柳田氏がどんな経営者なのかを掘り下げたいと提案した。話題は1社目の創業と売却、赤字企業の買収とピボット、評価制度を持たないフルリモート組織、ホテルの空室を先に買い取るビジネスモデルと、それを外部調達なしで支える資金の出どころへと進む。

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新卒イベントの会社を創業し、コロナで上場を断念

柳田氏は1982年生まれで、2012年、29歳のときに最初の会社リアライブを創業した。新卒採用向けのイベント(合同説明会)を年間300回ほど全国で開く会社で、開催回数を増やすほど売上も伸びる構造だったという。

2017年ごろから業績が好調になり、社内でも上場準備に入った。しかしコロナ禍で上場は断念した。コロナが収束すると利益は1億円以上に戻り、その後売却に至る。

売却の前に、赤字のリゾートワークスを買った

順番としては、リアライブを売るより先に、2022年にリゾートワークスを買収している。当初の構想は、採用の会社と福利厚生の会社の両方を持ち、ホールディングス化するというものだった。柳田氏は、採用で入口を担い、福利厚生で定着を担うという組み合わせを考えていたと説明する。

買収価格は5,000万円。当時のリゾートワークスは年間で約3,000万円の赤字(月250万円程度)を出しており、売上もほとんどなかった。しかも買収直後に、個人向け(B2C)だったサービスを法人の福利厚生向け(B2B)に切り替えたため、売上は一度ゼロになった。島袋氏が「赤字の会社を5,000万円は高くないか」「5,000万円出せるなら自分たちで作れたのでは」と突っ込むと、柳田氏は理由として、ホテルを非常に安く泊まれる仕入れの仕組みがすでにできていた点を挙げた。

柳田氏はもともと、B2C時代のリゾートワークスの個人会員だった。沖縄のホテルで10万円の部屋が2万円になるような価格に驚き、沖縄にいた社長を飲みに誘った。その席で、社長が今後の方向性に悩んでいると聞き、仲介会社を通さずに買収の話がまとまった。柳田氏はずっとB2Bの採用領域をやってきたので、福利厚生にもマーケットがあると見ていた。

価格が5,000万円になった背景には、先方に入っていたVCの存在がある。同社はVCから5,000万円を調達しており、0円での譲渡はVCが受け入れないが、5,000万円なら妥結できそうだという判断だったという。一方で、このモデルはホテルの部屋を先払いで借り上げるため、会員がいなければ売上が立たないまま、1〜2年後にはホテルへの支払いが発生する。柳田氏は、キャッシュアウトが目に見えていたので「先方は5,000万円で買ってもらえてラッキーと思っているのでは」と話す。

島袋氏の整理によれば、先に部屋を買い、客付けのために広告を打つという個人向けの自転車操業を、法人向けの月額課金モデルに切り替えて一気に営業をかけたことになる。スピードも速く、2022年5月に出会い、7月にクロージング、8月にはサービスを販売し、最初の顧客もその月に獲得していた。

黒字のリアライブを売った理由と、社員の反応

リアライブは利益が出ており、売る必要はなかった。それでも売却に動いたのは、成長率が110%程度にとどまっていたためだと柳田氏は言う。自分の力だけではこのペースが続く程度だろうと考え、シナジーのある相手とのグループインを探し始めた。売却先はアドバイザー経由の候補もあったが、人材業界に知り合いが多いため直接当たったところも多かった。最終的な譲渡先は上場企業のブティックスで、時価総額は150億円ほど、展示会事業やM&A事業を手がける会社だと柳田氏は紹介した。

島袋氏は、社内にホールディングス化を宣言したあとに売却へ転じたことを社員がどう受け止めたのかを尋ねた。柳田氏は、ホールディングスになれば皆が楽しいと感じると思っていたが、実際はそうではなかったと振り返る。社員は自分たちがもともとやっている事業に目を向けており、新しい事業に関心が向いている様子はなかった。一緒に理想を作りたいと思っていたが、少し違うと感じたという。

DD400問を一人でこなしながらピボットした半年間

売却のプロセスも速かった。7月にリゾートワークスを買収し、8月ごろから売却に動き、11月に独占交渉権を渡し、12月にデューデリジェンスが終わり、2月1日には開示していた。

柳田氏はこの時期が一番つらかったと話す。DDでは400問ほどの質問が来たが、部長にも話していないため自分で対応するしかなかった。売却について知っていたのは創業メンバー1人だけである。同時に、リゾートワークス側には社員がほとんどおらず、組織をゼロから作りながら、経験のない旅行業界でピボットを進めなければならなかった。

社内への開示は、2月1日の午後3時の適時開示に合わせて行った。当日朝に部長一人ひとりと話し、全社員には前日に翌日のアポをすべてキャンセルして3時に集まるよう伝えた。集まった場でグループインを伝え、その理由を説明した。大量の退職のようなハレーションはなかったという。待遇を引き上げることもグループインの条件として契約に盛り込んでおり、その点も社員に説明した。

評価制度も個人目標も役職もない組織

2度目の創業で作った組織について、柳田氏は1社目と「全く真逆」だと言う。フルリモートで、評価制度はまだ作っておらず、個人目標も持たせない。役職も設けていない。マネジメントを担う人はいるが、その人を評価者にはしていない。評価者にした瞬間に、その人に良く見せようとする動きが生まれるからだという。

柳田氏自身はHR出身で、評価制度を作る側だった。KPIマネジメントも評価制度の設計もやってきた。そのうえで一番疑問に感じたのが目標設定だったと説明する。会社として1億円の目標を置いても、部長からすれば9,000万円や8,000万円にした方が給与を上げやすい。社長からすれば目標を高くすれば給与を上げずに済む。この攻防が嫌で、互いに納得しないまま決まることもあると考えた。個人目標についても、会社がプロモーションを打てば達成しやすくなったり、社長から回ってきた案件が決まりやすかったりして、「あいつだけ」という不公平感が生まれる。そうした経験から、仕組みそのものをやめたという。

フルリモートが機能する条件

島袋氏は自社の経験として、最近までリモート主体だったが、ロスタイムが非常に多かったと話した。確認のためのミーティングを入れると、そこから外れた人たちの間で変な噂が広がることもあったという。柳田氏は、飲み会もなくリモートで完結する分、むしろ噂は広まりにくいと感じていると答えた。島袋氏は、自社には店舗やスタジオがあり、現場に行ってサポートする必要があったため、リモートでは完結しなかったと補足した。

柳田氏は、ワンプロダクトであることも大きいと言う。複数の事業を並行するとクリエイティビティやスピードは落ちると考えているが、ワンプロダクトならやることは決まっていて、改善を積み重ねる仕事になる。フルリモートに向いた事業を選んでいる、という位置づけだ。社員にはエンジニアのほか営業やカスタマーサクセスもいるが、営業もすべてオンラインのインサイドセールスで行っている。

一方で、対面の機会も意図して作っている。全社で集まるのは年3回で、そのほかに年1回、2泊3日の合宿がある。旅好きの社員が多く、次の合宿は沖縄だという。島袋氏も、出社を増やすより1泊2日の旅行をしたときの方がチームがまとまり、方向性がすんなり浸透したと感じた経験を語った。

採用するのは「精神的な大人」だけ

こうした組織を成り立たせるために、柳田氏は「精神的な大人」だけを採用していると言う。具体的には、コツコツと確実に取り組める、誠実で真面目、ポジティブな思考をする人である。ネガティブな空気を広げたり文句を言ったりする人は採らない。長く採用に携わってきた経験から来る基準だという。

フルリモートではパフォーマンスにブレがある人は難しいとも話す。サボろうと思えばサボれる環境なので、話がうまいだけの人より、実直な人を重視し、面接ではそこを見ている。フルリモートにした背景には、柳田氏自身が旅をしながら仕事をしたいという思いが今回強かったこともある。

ホテルの開拓はテレアポと飛び込み

ホテルの開拓方法は、テレアポでアポイントを取り、オンラインで営業するのが基本だ。それに加えて、柳田氏自身が泊まりに行き、飛び込みで挨拶することもよくあり、その方が成約の確度は高いという。大手チェーンは難しいため、個人経営の宿などを狙って直接挨拶に行っている。

全国350施設が最大80%オフ

リゾートワークスは、法人に特化した宿泊予約サービスで、社員の出張にも福利厚生としての私的な旅行にも使える。現在は全国350施設が最大80%オフになるという。開示済みの施設として、プリンス、メルキュール、リッチモンドといったホテル名が挙がった。

番組内では画面で価格の比較例が示された。沖縄の有名なリゾートホテルは通常5万円から、高い日には12万8,000円程度になる。9月の連休の日に4人で1泊すると、他の予約サイトでは12万8,700円(食事なし)だが、リゾートワークスでは2万4,500円だった。また、舞浜エリアのテーマパーク近くの有名ホテルでは、10月12日に3人で1泊(朝食なし)の場合、他サイトで3万4,560円のところ、リゾートワークスでは8,500円と紹介された。

出張にも使えるため、出張の多い会社であれば経費削減分で、実質ほとんど負担なく福利厚生を導入できると柳田氏は説明する。

安さの理由は、空室の1年前からの買い取り

安くできる仕組みについて、柳田氏は、すべての施設ではないとしたうえで「借り上げ」をしていると説明した。ホテルの稼働率は毎日100%ではなく、9割程度が多い。400室のホテルなら40室ほどが余り、他の予約サイトに出しても売れ残る。その在庫は売上ゼロなので、それを買い取っている。

ハイシーズンも基本的には空きがあるが、稼働100%の日はホテル側が販売を閉じられるようになっている。そのため施設によっては土曜日やゴールデンウィークが対象外になることもある。ただ、客室数の多いホテルは基本的に空いているという。

島袋氏が「廃棄前のコンビニ商品を安く出すようなものか」と聞くと、柳田氏は、直前に安く出すのではなく1年前などから仕入れていると答えた。繁忙期の枠もなるべく確保したいので、「これだけ買うので繁忙期もください」という形で交渉している。島袋氏の「先物取引のようなものか」という問いには、そうかもしれないと応じた。仕入れた価格をそのまま会員向けの料金として出しているという。

先払いの重さを売却益で支える

先に買う以上、支払いが先行し、キャッシュフローは厳しい。柳田氏は「めちゃめちゃ大変です」と認めたうえで、売却で得た資金を突っ込んでいると話した。前の社長はそれができずに在庫が残ってしまった、という見方も示した。

仕入れても販売できれば問題はない。島袋氏は、法人契約のストックが積み上がると翌年の販売の見通しを説明しやすく、銀行から借りる場合にも有利ではないかと指摘し、柳田氏も同意した。ただし現在は借り入れをしておらず、自己資金で賄っている。

このモデルには、会員が増えなければ部屋を買えず、ホテル側も送客がなければ掲載をやめる、という鶏と卵の問題がある。どう乗り越えたのかという問いに、柳田氏は、最初は資金を投じてホテル側を集めると答えた。ホテルが揃っていれば法人は来る。しかも買収した時点で、すでにかなり安い在庫がある程度そろっていた。法人への営業を進めるうちに、どれくらい予約されるか、どのエリアが人気か、月間でどれだけ売れるかが分かってきて、仕入れやすくなっているという。

十数億円の売却益と、VCなしのサブスク

リアライブの売却額は「十数億円」と公表されており、売却は3年ちょっと前である。資金の使い道について、柳田氏は運用している部分もあれば、リゾートワークスに入れている部分もあると話した。島袋氏が冗談交じりに自分は売却益をすぐ溶かしたと言うと、柳田氏は、自分も売却益を会社に入れて新しい挑戦をしていると応じた。今は顧客が増えており、回収フェーズに向かっている感覚があるという。

柳田氏が売却して良かったと強調したのは、この点である。サブスクは投資型のビジネスなので、普通は資金調達が必要になる。リゾートワークスにはVCが入っておらず、株式は柳田氏個人だけで保有している。調達せずにサブスクに資金を投じられるのは非常に良いと感じており、このモデルは普通はできないだろうと話した。

次の目標は利益10億円

将来の出口について、柳田氏は上場もM&Aもあり得るとして、まだフラットに考えている。ただ、まずは利益を10億円レベルで出せるようになりたいという。そうでなければ次のステップはないと自身は考えており、事業のポテンシャルは大きいと見ている。

広告については、他の番組への出稿のうち、西野亮廣氏や堀江貴文氏のチャンネルの効果が良かったと明かした。それらをFacebook広告でも二次利用しており、きちんとリードが取れているという。

料金体系と、社員は本当に使うのか

料金は従業員規模によって異なる。顧客の9割は100名以下の中小・ベンチャー企業で、最も人気なのは50名以下のプランだ。月額4万9,000円で50人が使え、初期費用は20万円。従業員本人に加えて2親等以内の親族も利用でき、登録対象は正社員だけでなく、契約社員、派遣、アルバイト、業務委託、インターン、内定者まで含む。島袋氏が、自社で業務委託として働くピラティスのインストラクターも対象になるかと聞くと、柳田氏は対象になると答えた。社員20人と業務委託20人の会社なら、40人で使えることになる。フランチャイズ本部が加盟店向けに導入するケースについては、個別にヒアリングして対応するという。

最後に島袋氏は、導入しても社員は実際に使うのかを尋ねた。柳田氏の答えは「会社によります」だった。全員が使うサービスではなく、あくまで福利厚生として、制度があること自体の安心感や、使いたいときに使えることに価値がある。加えて、ウェルネスや健康を大事にしているという会社からのメッセージとして打ち出したり、採用の説明会で紹介したりする使われ方をしているという。