SaaSのパーシートライセンスはAIエージェント時代に維持できるのか:中島聡の見立て

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概要

ソフトウェア株が大きく下落し、「SaaSの死」が話題になっている。この動画では中島聡が、自作のAIアシスタント「MulmoChat」と対話しながら、この現象をどう見るかを語る。中島の立場ははっきりしている。株価の下落には過剰反応の面もあるが、従来のSaaSが収益の柱にしてきた「パーシートライセンス」は、AIエージェントの普及で維持が難しくなる。中島はここが一番大きな問題だと考えている。

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出発点:サティア・ナデラの指摘

議論の起点として、中島はマイクロソフトCEOのサティア・ナデラの発言をアシスタントに貼り付けた。アシスタントの要約によると、ナデラの見方は次のとおりである。従来のSaaSは、人間が操作するための固定的なインターフェイスとビジネスロジック、そしてデータベースを中心に組み立てられてきた。AIエージェントが登場すると、ビジネスロジックはAI側に移り、SaaSはデータや機能を提供する役割に変わっていく。

アシスタントはこれを受けて、今回のソフトウェア株の大幅な下落は一時的な売り込みにとどまらず、業界全体の構造変化への不安や期待を映しているのかもしれないと述べた。中島はこれに同意しつつ、株価の下落には過剰反応の面もあると付け加え、本題であるビジネスモデルの話に移った。

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問題の核心はパーシートライセンス

中島によれば、これまでのSaaSは「顧客の従業員1人当たり月々いくら」という形で料金を取ってきた。この課金が成り立っていたのは、データベースの上にビジネスロジックとユーザーインターフェースが載り、それを人間のユーザーが直接操作していたからである。使う人の数がそのまま価値の単位になっていた。

中島は、この前提が崩れていくと見る。過渡的には、AIが既存のSaaSツールを人間と同じように操作する段階もあるだろうが、それは一時的なものにすぎないという。最終的には、AIエージェントが人間の代わりにデータベースへ直接アクセスし、データを更新するようになる。そうなればUIは必要なくなる。

ビジネスロジックについても、アプリ側ではなくAIが担うようになると中島は考える。特に会社ごとにカスタマイズが必要な部分は、SaaSの上に人間が書いたソフトを載せるのではなく、AIがルールに基づいて処理する形になるという。

データベースは残り、使われ方が変わる

一方で中島は、SaaSのすべてが消えるとは言っていない。奥にあるデータベースはなくならないし、そこに蓄積されたデータは非常に貴重なので残っていくという。

変わるのはアクセスの仕方である。人間のユーザーがパーシートライセンスで使う形から、AIエージェントがAPIを叩く形へ移る。人間はAIエージェントに指示を出すだけになり、その指示のやり取り自体がユーザーインターフェースになる、と中島は説明する。

誰がAIエージェントを握るのか

この構図で中島が重視するのは、AIエージェントを誰が握るかという点だ。SaaS企業は当然、自社でAIエージェントサービスを提供し、それをパーシートライセンスで売りたいはずだ。しかし中島は、それは「結構きつい」と見ている。

中島が想定するのは、顧客側が「データベースのAPIだけください。ビジネスロジックも含めたAIエージェントはこちらで作ります」と求めるモデルである。中島はこれを当然の流れであり、正しい進化の仕方だと考えている。理由として挙げるのは、企業ごとのカスタマイズや、使い捨てのコードの扱いやすさである。この形になれば、APIライセンスで十分ではないかという話になり、パーシートライセンスは崩れる。

セールスフォース、SAP、マイクロソフトの立ち位置

中島は、この変化がセールスフォースやSAPのような企業にとって厳しい話だと述べる。彼らもAIエージェントを売り込んでくるだろうが、それをパーシートで売れるかどうかは分からないという。

マイクロソフトがCopilotを強く推している理由も、中島はこの文脈で説明する。Copilotは、既存のシートライセンスに付加価値として載せたAIという位置づけである。AIエージェント機能を顧客に届けるのがマイクロソフト自身であれば、パーシートライセンスを維持できる。だからCopilotを成功させることが、マイクロソフトにとって非常に重要なのだという。

Anthropicのビジネス向けClaudeという見通し

これと対照的な動きとして中島が挙げるのがAnthropicである。開発者向けのClaude Codeはソフトウェアエンジニアに喜んで使われており、中島自身もその一人だ。中島は、その進化形としてビジネス向けのClaudeが出てくるのは「目に見えている」と言う。

そうなると、パーシートでAIエージェントを提供するのはAnthropicになり、従来型のSaaS企業はAPIを提供するだけの立場に追い込まれる。その場合、SaaS企業はパーシートのライセンス料を取れなくなり、API課金やデータベース課金のような形に移らざるを得ない、と中島は考えている。

拒否すれば新興企業に置き換えられる

既存のSaaS企業がこの移行を拒んだらどうなるか。中島は、これまでの蓄積があるのですぐには崩れないだろうとしつつ、新しいベンチャー企業が現れる可能性を指摘する。たとえばCRMや会計ソフトを、AI向けのAPIとしてだけ提供する企業である。そうした企業はパーシートではなく、API課金や会社の規模に応じたトランザクション課金を採用し、非常に安い値段で提供してくる可能性がかなり高いという。

そこにAIエージェントが組み合わされば、既存のSaaSビジネスが置き換えられることもあり得る。中島はこれを「結構大きな話」と評価している。

今になって騒ぐ市場への見方

ただし中島は、この議論自体は新しくないとも強調する。マイクロソフト自身が1年以上前から、SaaSはデータベースの上にユーザーインターフェースとビジネスロジックを載せただけのものなので今後は変わる、と言っていた。中島は「今頃騒ぐんじゃねえよ」と思うとしたうえで、今回の下落はそのことに今になって気づいた一般の投資家が株を売り浴びせた結果ではないかと見ている。

そのため、売られすぎの面もあると中島は言う。ソフトウェア企業の中でも、パーシートライセンスで大きく稼いできた企業は大きく下がるだろうし、うまく維持する企業もあるだろう。勝ち組と負け組が出るのは当然で、ソフトウェア会社が軒並みダメになるとは思わない、というのが中島の結論である。

アシスタントの応答と残された論点

一人で話し終えた中島がMulmoChatに意見を求めると、アシスタントは中島の視点を受けて次のように整理した。企業側が「AIエージェントは自前で作るから必要なのはAPIだけ」と考える方向に進めば、既存のSaaS企業は提供価値を再定義する必要がある。生き残りを図るか、API課金モデルに移行してスリム化するかの分岐点だという。さらに、今の売り込みには過剰反応の面もあれば、本質的な再評価のタイミングという面もあると述べた。今後の鍵として、どの企業がAI時代のエージェントを握るのか、APIプロバイダーとしての地位をどう築くのかを挙げている。

動画はアシスタントによる締めの挨拶で終わる。パーシートライセンスに代わる課金がAPI課金やトランザクション課金に落ち着くのか、どの企業がエージェントの主導権を取るのかは、中島の見通しとして示されたものであり、答えはまだ出ていない。