自分自身を通じてスケールする:エレーナ・ヴァーナが語る「ハイインパクトな個人貢献者」の台頭
Lenny's Podcast翻訳元 English
エレーナ・ヴァーナは普段、プロダクト・レッド・グロースやプロダクト・レッド・セールスについて語っている。しかしLenny and Friends Summitでは、キャリア、それも自身のキャリアについて語った。長年チームを率い、ときには数百人規模の組織を統括してきた彼女は、現在Lovableで個人貢献者(IC)として働いている。彼女はこれを「これまでで最高のキャリアの旅」と呼ぶ。講演のテーマは3つだった。なぜこの転身をしたのか、この転身がうまくいくには組織の中で何が成り立っていなければならないのか、そして自らもリーダーである人が多い聴衆が同じ道を検討すべきかどうか。また彼女は、講演の2か月前に、今後12か月で仕事がどう変わるかについての投稿で「危うくキャンセルされかけた」ことにも触れた。この講演は、その考えをより詳しく説明する機会でもあった。
グロースを率いる立場から、再びつくる立場へ
ヴァーナはLovableでの歩みを段階に分けて説明した。まずグロース部門を立ち上げた。次に、本人の言葉を借りれば、その責任者を「クビになり」、ICになった。その後、会社は彼女いわく「どの会社も一度は試さなければならない」分散型のグロースモデルを試した。現在はグロース部門が再構築されつつあるが、彼女はICのままで、新しいチームは彼女とは別に並行して組まれている。講演の時点で、彼女がLovableに在籍して1年半近くが経っていた。目標は1年もつことだったので、もう「順風満帆」だと冗談を言った。
最も大きく変わったのは、1日の時間の使い方だ。彼女の時間の大半は、もはや彼女が「部門横断コラボレーション地獄」と呼ぶものには費やされていない。つくることに費やされている。これは特に、ある専門技能に秀でていたからこそリーダーになり、その後、上に行く唯一の方法が人をマネジメントすることだと気づいた人たちにとって重要だと彼女は考えている。彼女自身もまさにそうだった。そのキャリアパスにあまりに深く条件づけられていたため、そこから離れるのは波乱に満ちていたが、同時に新鮮でもあったという。
古いキャリアラダー:部下の数で測られるインパクト
ヴァーナは、従来のキャリアラダーは「より大きなインパクトを出すには、より多くの部下が必要だ」という古い制約の上に成り立っていると主張した。ラダーはICからマネージャー、ディレクター、VPへと続き、そこには「たった一つの通貨」しかないという。部下の人数だ。
彼女は個人的な例を挙げた。約15年前、Netflixの面接を受けたが、マネジメントした人数を理由に不採用になった。今でも生涯の契約者であり、今でも根に持っているという。彼女の異論は、インパクトが人員数で評価されるべきだとは一度も思ったことがないという点にある。そして、その方程式は今崩れつつあると主張した。どれだけリリースしたか、あるいはリリースできるかが、インパクトの尺度になりつつあるのだ。
ハイインパクトなICとは何か、何ではないか
彼女はこの新しい役割を「ハイインパクトIC」、略してHI-ICと呼ぶ。これは単に直属の部下を持たないシニアな人という意味ではない、と彼女ははっきり述べた。彼女の定義では、HI-ICとは次のことができる人だ。
- 問題を見つけ、
- 意思決定をし、
- 成果に到達するために必要なあらゆる職能をまたいで、自らそれを実行し、
- リリースし、
- その成果に責任を持ち、そこから改善を重ねる。
5年から10年前なら、これはチーム全体のミッションだっただろうと彼女は指摘した。彼女はこれを従来のスタッフICと対比した。エンジニアリングには昔からスタッフ職があり、通常はアーキテクチャに焦点を当てていた。そして深い専門性とは、狭い職能領域に特化することを意味していた。彼女の見方では、今のこの役割は、深い専門性に「幅広い実行領域」とビジネス上の説明責任を組み合わせたものだ。
「平均的な知能」としてのAI
なぜこれが新たに可能になったのかについて、ヴァーナの捉え方を嫌う人もいるという。彼女はAIを「平均的な知能(average intelligence)」と考えているのだ。いずれ世界はAGIに到達すると予想しているが、今のところ、平均的なマーケター、平均的なエンジニア、平均的なアナリスト、平均的なデザイナーをいつでも呼び出せることは非常に強力だと感じている。それは、自分がこれまで持ったいくつかのチームよりも優れていることさえある、と冗談を言った。
彼女の考えでは、その実際的な帰結は、卓越した専門技能が必要なのは1つか2つの分野だけだということだ。それ以外の分野では、学びを得られる段階まで何かを持っていくには「そこそこ」で十分だ。彼女は、学ぶことこそが本当の目的だと強調した。チームがものをつくるのは、何が正解かをすでに知っているからではない。顧客のフィードバックや反応を見るためにつくるのであり、それが次に何をすべきかを教えてくれる。
つくるコストが調整のコストを下回るとき
彼女は古いプロセスと新しいプロセスを比較した。古い流れはおおよそこうだ。アイデア、会議、PM、デザイナー、会議、エンジニア、レビュー、承認、リリース。彼女はこれを簡略版だと言った。実際のプロセスにはおそらく「あと100ステップ」あり、運が良くても3か月かかっていた。新しい流れはこうだ。アイデアを思いつき、つくり、学ぶ。
彼女は「一日中Lovableの中で暮らしている」と言う。チームはLovableを通じて本番環境にリリースしている。講演のスライドもLovableでつくった。アイデア出しもLovableで行い、カレンダーやメール、その他の仕事もLovableで管理している。ただし、メールが一番弱い部分だとは認めた。
ここから彼女は、組織に関する主要な主張を導き出した。「つくるコストが調整のコストを下回ったとき、組織図は変わるべきだ」。彼女はこの点について聴衆に問いかけた。「AIに目覚めた(AI-pilled)」とか「AIネイティブ」といった言葉は、ツールのことしか扱っていない。そうしたツールを使う人々の下にある組織設計を変えなければ、企業は彼女が今起きている最大の変化だと考えるものを見逃すことになる、と彼女は主張した。
「クビになって」就いた役割と、アイデンティティの代償
ヴァーナは、自分の転身が計画的なものではなかったと認めた。自ら望んだのではなく、責任者の役割を「クビになった」のだ。ただし会社をクビになったわけではない。Lovableでの彼女の仕事は、この1年3か月で3回変わっており、また変わるだろうと予想している。そこでは誰の仕事も3〜4か月ごとに変わり、組織再編は「数週間ごと」に起きているという。彼女はこれを、産業革命になぞらえる人もいるこの時代への正しい対応だと位置づけた。変わっていないなら、その恩恵を受けていないということだ、と彼女は主張した。
彼女は、マネジメントの肩書きを失うのはつらかったと率直に語った。20年にわたって、自分のアイデンティティの多くが肩書きやチームを率いることに結びついていた。自分ではそれを望んでいなかったにもかかわらず、だ。最初の数週間は、実質的に「両方のいいとこ取り」の立場へ昇進したのか、それとも地位と将来の機会を失ったのか、わからなかった。チームがないことは、ほとんど自分の重要度が下がったように感じられた。その感覚が薄れたのは、自分がインパクトを出し続けられると実感してからだった。
彼女はこれをよくある経験として扱った。人は仕事に多くの時間を費やすため、アイデンティティが肩書きに絡め取られてしまう。それを揺さぶるのは健全なことかもしれない、と彼女は示唆した。特に、今後1年ほどのうちに誰の仕事も変わると彼女は予想しているからだ。人々がポジションを失うと予言しているわけではなく、やることが変わるのだという。彼女自身の日々の仕事も、5年前や10年前とはまったく違う。彼女はそれを歓迎しているが、ゴールだと思っていた「そのラダーを悼む」には時間がかかることも認めた。彼女の主張は特定の層に向けられていた。専門技能を評価されて昇進したために、大きなチームのマネジメントや部門横断の協業は自分の得意なことでも心躍ることでもないと気づいた人たちだ。そうした人々にとって、AIは影響力と地位を保ちながら、チームリーダーだった頃以上のインパクトを得られるかもしれない道を開く、と彼女は示唆した。
今の仕事の姿
ヴァーナはLovableで価格設定とパッケージングを担当している。以前ならPM、デザイナー、エンジニア、そして大量のカレンダー上の時間が必要だった。今では価格ページを自分でつくって変更し、プロトタイプをつくり、本番環境にデプロイし、ユーザーリサーチ、分析、最適化も自分で行う。より深いエンジニアリングが必要な大きなモデル変更ではエンジニアと協力するが、領域全体の責任は彼女にある。
彼女はその感覚を、趣味の高圧洗浄にたとえた。きれいになった表面がすぐに見えるので、「妙に満足感がある」のだという。HI-ICであることも似たものを与えてくれる。彼女がつくったものは、リリースすると決めたほぼその瞬間に顧客に届き、その間に部門横断の依存関係はない。時間の90%は、つくること、あるいは次に何をつくるかを考えることに使っていると彼女は見積もった。チームを率いることも刺激的だったと彼女は言う。恋しくないのは、一日中会議に座り、他チームの優先順位づけを待つことだ。また、ビジネスと顧客にとって正しいことに時間を使う代わりに、カレンダーに入った会議に時間を奪われるのがいかに簡単かについても警告した。
肩書きではなく、オペレーティングシステム
彼女の中心的な注意点は、人をHI-ICだと宣言するだけではうまくいかないということだった。転身したとき、彼女は自分が満足して効果的に働き続けるには、システムの中で成り立っていなければならない制約があることにすぐ気づいた。「HI-ICは単なる職位名ではありません」と彼女は言う。「組織のオペレーティングシステムなのです」。自分がICになってそれを楽しみたい場合でも、元VPや元CXOをICとしてチームに迎えたい場合でも、5つの条件が成り立っている必要があると彼女は述べた。
情報が自由に流れなければならない
彼女はこれを最も重要な条件と呼んだ。正しい意思決定に必要な情報をすべて持っていなければ、彼女は効果的に働けない。現在の組織設計は、意図的に情報を制限していると彼女は主張した。何層もの人々が情報をフィルタリングしてから、個人貢献者に届くのだ。それをなくすには従業員を信頼する必要があり、マネジメントの階層を減らす必要がある。
彼女はLovableでの取り組みを説明した。従来の肩書きはなく、あるのは個人貢献者、リード、部門長だけだ。その場にいるだけで議論の行方を決めてしまうマネージャー、ディレクター、VPはおらず、自動的に勝つ「最も給料の高い人の意見」もない。全員が実質的に同じレベルにいて、あるのはエスカレーションが必要な場合に問題をどこへ持っていくべきかという明確な認識だけだという。情報へのアクセスをスケールさせるために、各チームはSlack上に独自のAIエージェントを持っている。各エージェントにはそれを育てる「ママかパパ」がいて、そのチームの仕事やドキュメントについて質問がある人は誰でもエージェントに尋ねられる。
権限は説明責任とともに移らなければならない
HI-ICに、意思決定を指揮系統の上下に5回も行き来させることを期待してはいけない。彼女のチームと経営陣が彼女を信頼しなければならない。彼女はICでありながら今も経営チームに名を連ねていると述べた。彼女が語った権限には3つの要素がある。決める権限、リリースする権限、そして「最も重要なこととして」失敗する権限だ。
彼女はLovableで何度も失敗してきたという。外から見れば会社の軌跡は「右肩上がり」に見えるかもしれないが、彼女の失敗した実験はLovableに「数百万ドル」の損失を与えてきたという。彼女の説明では、そうした失敗は重要な学びを生み、それが後に会社がさらなる成長を見つける助けになった。Lovableは実際に売上に影響する意味のある失敗を許容しており、学びが共有される限り「誰も慌てない」。
スコープは職能で定義されない
彼女の仕事はグロースに限られていない。コア機能をリリースすることもあれば、マーケティングを手伝うこともあり、グロースのプロダクト業務に戻ることもある。これは、彼女が承認のコストとして説明したものにつながる。ある人が名目上何かを担当していても、6つの承認が必要なら、その人は本当に担当しているとは言えない。彼女のルールは、議論するより試すほうが安いなら、承認のチェーンこそがコストの高い部分になり、チームはそれを念頭に置いて組織されるべきだ、というものだった。
報酬と地位は人員数から切り離されなければならない
彼女はこの点を強調した。人は、より高い報酬を得るにはマネージャー、ディレクター、VPへと昇進しなければならないと深く条件づけられている。彼女がICになったとき、給与等級は変わらなかった。彼女はさらに踏み込んだ。AIによる変化を本当に信じるなら、ICはマネージャーよりも多く支払われるべきだ。なぜなら、今やICは古いシステムでマネージャーが生み出せた以上の成果とインパクトを生み出せるからだ。
企業がこれを実行しなければ、誰もが合理的にマネージャーになろうとし、その結果マネージャーだらけになる、と彼女は主張した。「ひどいマネージャーがたくさん」だ。その多くは、もともとマネジメントをしたいとは思っておらず、ラダーに押し上げられた人たちだと彼女は示唆した。彼女は自身が実施した調査を引用した。ピープルマネージャー51人のうち42人が、ICの役割に戻りたいと答えたという。
彼女は自身の転身の個人的な理由も付け加えた。ICの仕事がどういうものかもはやわからないなら、どうして効果的なマネージャーでいられるのかわからない、と彼女は言う。そしてICの仕事は5年から10年前とはまったく違うものになっていると彼女は考えている。彼女は今の役割を、一人の人間が今何をできるのかを学ぶ機会としても捉えている。そうすれば、再びチームを率いることになったとき、うまく方向づけられるからだ。
お金については率直だった。人がマネジメントに進むのは主に報酬を得たいからであり、「私たちは資本主義の世界にいる」。こうした人材を求める企業は、リーダーレベルの給与を払うことを覚悟すべきであり、同時にリーダーレベルの成果を期待すべきだ。
両方をやらせてはいけない
彼女の最後の条件は、マネージャーとICを同時にやるよう求めてはいけない、というものだった。彼女自身も試したことがある。チームを率いながらICの原点に戻るのが大好きだと言う人の話をよく聞くし、それをやり遂げている人には拍手を送るが、そのコンテキストスイッチは非常に難しいと彼女は言った。ICの役割の中でも、マネージャーの役割の中でも、コンテキストを頻繁に切り替えることはできる。しかし彼女の経験では、その2つの間を行き来するのはほぼ不可能になる。どちらかの道を選ばなければならず、ICの道を選ぶことは「人を通じてスケールするのではなく、自分自身を通じてスケールする」ことを意味する。それには考え方の配線をつなぎ直す必要があると彼女は述べた。
インパクトを人員数から切り離す
ヴァーナは最後に専門技能の話に戻った。上に行かせるために、人を最も得意とする役割から引き離すのは「ばかげている」と彼女は言い、今はそうした人々が、苦労して身につけたリーダーシップのスキルを保ちながらICとして働く道に戻るのに、またとない好機だと主張した。
彼女の考えでは、AIが組織に与える最も興味深い影響は、「見出しがどれほど扇情的であろうと」仕事を置き換えることではない。インパクトを人員数から切り離すことだ。彼女は聴衆に、自分の仕事を正直に見つめるよう求めた。日々の時間の使い方を愛しているか、それはエネルギーを与えてくれるか。もしそうなら、「そのまま続けてください。このプレゼンテーションはあなたのためのものではありません」と彼女は言った。しかし、消耗していると感じている人とあまりにも多く話してきたと彼女は言い、AIはそうした人々が再び活力を与えてくれるキャリアを見つけるチャンスだと考えている。彼女の締めくくりの言葉はこうだった。マネジメントは昇進ではなく、一つのキャリアパスであるべきだ。
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