Dojo解散は後退ではなく「チップ一本化」だ:中島聡が読むTeslaのAI戦略とNVIDIA依存、自動車市場の行方

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概要

Teslaが自社開発のスーパーコンピュータ「Dojo」のチームを解散したと報じられた。報道では、TeslaはAI戦略を大きく転換し、今後はNVIDIAやAMD、Samsungといった外部パートナーに頼るとされている。元Microsoftのソフトウェアエンジニアで起業家の中島聡氏は、ChatGPTを聞き手にした対話形式でこのニュースを取り上げた。中島氏はこの報道の読み方に異を唱え、Dojo解散は後退ではなく、二系統あったAIチップ開発を一本化する動きだと解釈する。さらに、NVIDIAから離れにくい業界の事情、Teslaの車載チップを使った分散学習の可能性、他の自動車メーカーへの影響まで話を広げた。

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「外部パートナーに頼る」という報道への異論

ChatGPTが読んだ記事は、Teslaが今後NVIDIA、AMD、Samsungなど外部パートナーのチップに頼る方針になると伝えていた。中島氏は、これは自分の解釈とは違うと述べる。

NVIDIAについては、学習(トレーニング)のプロセスでNVIDIAから逃れるのが難しいことは事実だと中島氏は認める。しかしSamsungを「外部に頼る」先として並べるのは違う、というのが中島氏の見方だ。中島氏が根拠に挙げたのは、もう一つの報道である。TeslaはSamsungに、次の次の世代にあたる自動運転用AIチップ「AI6」の製造を依頼した。中島氏によれば、これは160億ドル規模の大きな契約で、Tesla専用のチップをSamsungに作らせる話である。このチップはTesla車に搭載されるほか、人型ロボット「Optimus」にも使われる。中島氏は、エッジコンピューティングを担う非常に重要なAIチップだと位置づける。

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Samsungとの契約直後にDojo解散、そして「一本化」発言

中島氏が注目するのは出来事の順序である。Samsungとの契約が発表されたすぐ後にDojoチームが解散された。そしてイーロン・マスク氏は、学習用のDojoと推論用(FSD用)のチップという二系統のAIチップを開発するのは効率がよくないので、一本に絞ると述べた。

中島氏はこの発言を、Samsungに作らせるAI6で学習も行いたいという意思表明だと理解している。そのため、大きな方向転換には見えないという。

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Dojoはもともと計画通りに進んでいなかった

中島氏がDojo中止を当然と考える理由は、Dojoの実績にある。Teslaは学習用の自社チップとしてDojoを作ったと言いながら、実際にはDojoだけでは学習をまかなえず、かなりの部分をNVIDIAのチップで行っていた。一部では使えていたかもしれないが予定通りにはうまくいかず、結局NVIDIAのチップを使うしかない状況だった、と中島氏は説明する。この現状を踏まえれば、Dojoプロジェクトを止めるのは当然だという。

一方でTeslaは、160億ドルをかけてSamsungにAI6を作らせる。中島氏によれば、推論用チップと学習用チップは異なる部分もあるが、かなり共通化できる。だからできることならAI6を学習にも使いたいという思いがあるのではないか、と中島氏は推測する。

まとめると、中島氏はこの動きを「Dojoの仕切り直し」と捉えている。推論用と学習用の二本立てをまず一本に絞る。そのうえで、自動運転や人型ロボット向けに最高の推論用チップを作ることに力を入れ、あわよくばそれで学習もする。うまくいかなければNVIDIAのチップで学習を続ける。これが中島氏の解釈である。

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NVIDIAから離れられない理由はCUDA

ChatGPTは、TeslaがAI6を軸に学習まで統合しようとしていることが業界全体にどう影響するか、他社が同様のアプローチを取る可能性はあるかを尋ねた。

中島氏は、学習についてはNVIDIAのCUDAという優れた開発環境とライブラリ群があるため、外すのは難しいと答える。Dojoという自社製チップを作っていたTeslaですらNVIDIAから離れられなかった。中島氏が聞いている話では、Appleも同じ状況だという。AppleはiPhoneやMac向けに、ニューラルネット専用回路を備えたA16・A17やM3・M4といった優れたチップを作っている。それでも学習に関してはNVIDIAから離れられない状態が続いている。

Googleも自社のTPUを持ち、TPUで学習も始めているらしいと中島氏は言う。それでもNVIDIAのチップをゼロにはできない状況だと見ている。

業界全体がNVIDIA以外のチップや自社チップで学習できるようになる可能性はないわけではない、と中島氏は留保をつける。ただ現時点では、世界中の研究者がCUDAを使って新しいAIアルゴリズムを作り続けている。それが続く限り離れるのは難しい。したがって今回のTeslaの件が業界全体に大きな影響を与えるとは思えない、というのが中島氏の結論だ。

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夜間に充電中のTesla車で学習するという構想

ただしTeslaには面白い可能性がある、と中島氏は続ける。絶対にできるとは限らないと前置きしたうえで、マスク氏が以前ヒントのように口にしたことがある構想を紹介した。

市場に出ているTesla車の台数について、中島氏は数字には強くないと断りつつ、200何十万台だったかと言及する。それらの車にはかなりのチップが載っていて、夜間は普通は充電器につながれ、家庭のWi-Fiでネットにもつながっている。現在搭載されているのはまだ第3世代のチップだが、今後AI5、AI6が載るようになれば、高性能なチップが数百万台単位で夜中に充電器につながれたまま待機する状況になる。これを学習に利用できるのではないか、という話を、マスク氏は2、3年前に軽く口にしていたと中島氏は記憶している。

中島氏はこれを理論的には可能だと見る。ただし課題も挙げた。まず電力を食うようになるので、ユーザーにどう納得してもらうかという問題がある。また、世界中に散らばった車なのでネットワーク遅延が大きい。遅延の大きい環境にあるGPUやNPUを100万台単位でつないで、効率のよい学習ができるのか。ここには技術的な問題がまだたくさんあるだろうという。

それでも中島氏は、直感的にはできても不思議はないと話す。マスク氏がよく言う「第一原理に立ち返る」考え方に照らせば、原理的には可能なはずだからだ。NVIDIAの呪縛から簡単に逃れられるわけではないが、逃れられるなら逃れたいのも事実である。自前のデータセンターにAI6を何万個も並べる方法もあるが、市場にある数百万台の車のチップで学習するほうがいい、とマスク氏がエンジニアに言う場面を中島氏は想像する。エンジニアがネットワーク遅延や電源の問題を挙げて「簡単じゃない」と答えても、マスク氏は「原理的にはできるはずだ」と押し返す。かなり無理をしてでもエンジニアに仕事をさせるのがマスク氏のやり方なので、その方向に進んでも不思議はない、と中島氏は言う。ただし、可能性としては低いとも付け加えている。

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他の自動車メーカーを苦しめるチップのコスト

最後にChatGPTは、こうした構想が実現した場合に他の自動車メーカーやAI業界へどんな影響があるかを尋ねた。中島氏はまず、分散学習の方向に進まなくてもTeslaはすでにかなり先を走っているので、他の自動車メーカーは厳しい思いをするだろうと答えた。

中島氏が挙げた理由はチップのコストである。NVIDIAも自動車用チップを出しているが、NVIDIAは粗利7〜8割でチップを売る会社なので、自社で作る場合よりはるかに高い。そのコストは自動車の販売価格に直接響く。だから全車にAIチップを搭載することは、他のメーカーにとって難しいと中島氏は指摘する。

Teslaは全車にAIチップを載せたうえで、自動運転をソフトウェアオプションとして提供できる。2カ月のお試しも可能で、一括購入も月額払いもできる。中島氏はこの点でTeslaがかなり有利だと見る。他のメーカーがこれまで通りのビジネスモデルで進めば、自動運転はハードウェアオプションになるか、上位の高価な車種だけに付くことになりそうだ。そうなると非常に戦いにくいだろう、と中島氏は言う。

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Teslaからのライセンスという選択肢

マスク氏も言及しているように、他の自動車メーカーがTeslaから自動運転技術のライセンスを受ける道もある。中島氏は、他社がそれを選ぶ可能性はあると認める。ただしその場合、結局はチップをTeslaから買うことになるので、先ほどの利益率の問題が出てきて厳しいかもしれないという。

一方で中島氏は、別のビジネスモデルもありうると話す。Teslaがチップをほぼ原価に近い価格で渡し、FSDを月額のソフトウェアアップグレードとして提供して、その収入の8割をTeslaが受け取るという形だ。Teslaがそういう会社になれば影響力はかなり大きくなる。ただし中島氏は、そうしたビジネスが成功すればの話であり、簡単ではないだろうとも述べている。

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中国EVと自動運転が塗り替える市場シェア

中島氏はここから話を広げた。今の状況を見ると、米国の自動車会社はかなり厳しい状況に置かれている。そして中国が激しく伸びている。米国は中国からの車の輸入を止めているが、ヨーロッパにはどんどん入り始めており、アジアはすでに制覇している。中島氏は、日本、米国、ドイツの自動車メーカーが、米国を除くかなりの市場から締め出される可能性は十分にあると見る。

日本企業は電気自動車に乗り遅れた。それでもハイブリッドがうまくいっているので、トヨタなどは今のところ好調だという。しかし中国の安い電気自動車がトヨタの強かった市場に次々と入ってくれば厳しいのではないか、と中島氏は懸念する。

中島氏は、話が少しずれたと断ったうえで、Teslaの影響もあるが、それ以上に中国の電気自動車が非常に安い価格で入ってきていることが大きいと述べた。中国も自動運転の研究をどんどん進めている。Teslaと中国企業が電気自動車と自動運転で世界の自動車市場を大きく変えるというシナリオは、もう見えているように思うという。どこが生き残るかを読むのは難しいが、シェアが大きく塗り替えられることは間違いないだろう、というのが中島氏の締めくくりだった。