生成AIでアニメ・漫画の現場はどう変わるのか 岡田斗司夫が4年前の予測を振り返る

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概要

岡田斗司夫は、毎週火曜に配信している「サイコパスの人生相談」の過去回として、2022年9月11日配信の第455回ゼミを再配信した。中心の話題は、画像生成AIの登場でイラストレーターやアニメーター、漫画家の仕事がどうなるかという相談である。岡田はこのチャンネルで以前から「AIによって人間の仕事は消えていく」と話してきた。ネットと情報化が進んだ時点で、街の本屋や雑貨屋、時計屋が潰れてAmazonの売上だけが伸びるように、あらゆる仕事の「中間」が消えていったという見方である。今回はその先で、AIが人間の仕事をどう変えるかを扱う。

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再配信にあたって岡田は、4年前に答えた内容なので「そろそろ答え合わせができる時期になった」と語り、動画の最後に現在の状況についての補足を加えている。本稿では、2022年時点の回答と、その後の補足を分けて紹介する。ほかに、位置情報共有アプリ、詰め込み教育、布絵本のマネタイズ、積ん読についての相談にも答えている。

画像生成AIへの2つの相談

最初のテーマには、同じ系統の相談が2通届いていた。1通目は50代男性のとんかつさんからである。Midjourney、Stable Diffusion、mimicなどの画像生成AIが注目され、さまざまな問題を起こしている。とんかつさんはこれを、18世紀の産業革命の余波が時間をかけてようやくサブカル業界に届いたものと理解している。そのうえで、絵師は腕前ではなく効率の良い設備投資で生き残る必要が出てくるのではないか、岡田はサブカル業界への影響をどう見るか、と尋ねた。

2通目は20代男性のアナハム3世さんからである。Twitterで話題のイラスト自動生成サービスでは、有名イラストレーターの作品を混ぜてAIに学習させ、第三者が自分の作品として使うことが一部で反感を買っている。心血を注いで描いたイラストを利用されることや、努力していない人が絵を作れるようになることへの嫌悪感があるらしい。相談者自身は、こうしたこだわりは時代に合わなくなっていくと考えている。岡田はこれをどう考えるか。また、このサービスが普及すれば作画コストが激減し、アニメーターの職が失われるのか、という質問である。

岡田は冒頭で、これは絵師と呼ばれるイラストレーター全員を失業させかねない大問題だと思っている、と述べてから回答に入った。

「混ぜること」がオリジナリティなら、AIだけを責める論法は勝てない

岡田はまず、流行している絵の描き方のパターンを取り込んで自分の作品として発表することは、絵描き、漫画家、イラストレーターなら誰でも身に覚えがあるはずだと指摘する。ゴッホのように著作権が切れた画家の画風なら許され、今生きている絵描きの画風なら許されない、という言い方をする人もいるだろう。しかし漫画家は基本的に、今も生きている好きな漫画家の描き方や絵のパターンを頭の中で混ぜて描いている。人間が混ぜればオリジナリティがあり、AIが混ぜれば非難されるのはなぜか。混ぜ方の中に自分が生きているかどうかという話になり、結局は「オリジナルとは何か」という問題になる、と岡田は言う。

そのため岡田は、「自分の絵のパターンや描き方を盗まれたから、AIにこんなことをさせてはいけない」という論法には勝ち目がないと考える。ただし、これは善悪の判断ではないと断っている。苦労して編み出した自分なりの表現をAIにパクられるのが嫌だという気持ちは分かるし、善悪で言えば許されるべきではないという論理も理解できる。それでも、今後数年から10年以内に起こる大きな流れの中では「勝ち筋ではない」というのが岡田の見立てである。

淘汰は「中間層」から進むという予測

岡田は、影響が段階的に広がると見ていた。まず、無料で使えるイラスト素材が普及したことで、ここ3年ほどのあいだに、地方自治体や小さな商店から発注を受けていた「町の小さなイラスト描き」がひどく淘汰され、食べていけなくなったと岡田は捉えている。

この先は、それよりも上の、ある程度オリジナリティのある描き手の仕事がAIに奪われていくと岡田は予測した。生き残るのは、その人が描いてくれるだけで価値があるクラス、たとえば鳥山明、大友克洋、『ONE PIECE』の尾田栄一郎のような人たちである。岡田はこれも善悪の問題ではなく大きな時代の流れであり、それを前提にどうするかを考える話だと述べた。

アニメは「動画」が厳しく、漫画は演出までAIの学習対象になる

アニメーションについて岡田は、作画の無人化が進むだろうと答えた。今後は絵コンテを描く人が、AIが描きやすい動きを前提に発想するようになる。見せたいカットは人間に発注し、流して見てもらって構わないカットはAIに発注するという使い分けである。特に、描き込みや影が多く、これまで人間のアニメーターに負担をかけていた複雑なキャラクターを動かす作業には、AIのほうが向いていると岡田は見る。その結果、アニメのクオリティは上がったように見え、制作コストは下がる。一方で、絵を描いて生計を立ててきた「動画」の担当者は食べていけなくなるのではないか。「原画」はまだ生き残るかもしれないが、「動画」は将来的に厳しいというのが岡田の見方だった。

漫画も同じだと岡田は言う。コマ割りや見開きの見せ方、たとえば『BLEACH』の作者のタイトルの出し方のような演出も、ディープラーニングの対象になるはずだとする。どうコマを割れば読者が読むかという漫画の文法は、漫画が量産されるほどデータとして溜まっていく。今年や来年に可能になるという話ではないが、数年以内に自動生成が可能になるのは明らかだと岡田は述べた。

YouTuberも自分も失業する、という見通し

岡田はこの流れを自分の仕事にも当てはめた。岡田が話した内容が数秒後に漫画化され、さらに数秒後には「ゆっくり解説」のような動画としてYouTubeに上がる。岡田は以前に書いた「2028年の世界」で、自分を含むほとんどのYouTuberは失業すると書いており、その中間段階が次々に見えてきているのだという。

今でも切り抜き動画の作り手は、岡田の過去の発言と現在の発言を見事に混ぜて面白い動画を作っている。その作業までAIができるようになれば、岡田本人はいらなくなる。岡田はこれを「ひろゆきメーカー」で人々が楽しんでいることになぞらえた。ひろゆきメーカーでは、ひろゆきが言いそうなことをまだ人間が考えなければならない。しかし求められているのは「ひろゆき」というキャラであり、プレミアム版の講義で話しているキャラの重要性と同じ話だと岡田は言う。数十万人が「キャラとしてのひろゆきにこんなことを話してほしい」と考えて作ったもののほうが、本物のひろゆきの発言よりある日面白くなってしまうのは時代の必然だ、と岡田は語った。

岡田はこれを恐ろしい未来とは考えていない。そうなったら次にどんな面白いことをするかを考えるだけだという。ニコ生の配信のような新しい仕組みが生まれたときにも失業した人は大勢いて、自分やひろゆきはその上に乗って楽しく商売している。それもいずれ崩れるのは当たり前だ、という立場である。

変化が見えるまで3年、食えなくなるまで5〜10年

もちろん、超優秀なアニメーター、漫画家、絵師は生き残ると岡田は言う。しかし大半の漫画家は職業として成立しなくなり、アシスタントも同じだと予測した。時期については、あと3年ほどで大きな変化が目に見えるようになり、食べていけるかどうかという最終的な変化にはまだ10年ほどかかるとしている。中間的なポジションにいるアニメーター、イラストレーター、漫画家が本当に危なくなるまでには5年から10年かかる、という見積もりである。

岡田は、自分の未来予想は先取りしすぎると自己分析している。大筋は当たるが、聞いた人は来年の話だと受け取り、「そんな時代は来るはずがない」「いい加減なことを言っている」と反応する。しかし5年後、10年後にはそうなるので、「そうなるべきではない」と考えていると認識がずれる。時代とはそういうものだと考えておいてほしい、と岡田は締めくくった。

位置情報共有アプリは監視ツールか

30代男性のたかちゃんさんの相談は、位置情報共有アプリについてだった。聞いた話では、親が子どもの安全のために入れるのではなく、子ども同士が監視し合うために入れていて、大半の子どもが使っているらしい。仲間外れにされていないかを恐れ、友人の「浮気」を防ぐためなのだろうが、いじめにつながるケースもあると聞き、とても怖いと感じたという。

岡田は、ニュースや想像で考えると怖がりすぎになる、と答えた。実際に使っている人に話を聞くと、友達と24時間位置を共有してはいるものの、知られたくないときの方法もお互い知っていて、そこはあまり追及しない文化があるらしい。思っているほど監視ツールではない、というのが岡田の聞いた範囲での理解である。

30代以上には監視ツールに見えるが、20歳前後より下のZ世代にとっては「無駄なく遊び合うためのツール」だと岡田は説明する。たまたまある場所にいるとき、居場所を知っておきたい知り合いが近くにいれば連絡して会える。後から「そこにいたなら会いたかった」とならないようにするための仕組みだ。背景には、今の若い世代にとって自分の時間が最も貴重で守るべき資源になっていることがあると岡田は見る。これは以前「映画を倍速で見る人たち」の回で話した内容と同じだという。

さらに岡田は「ホワイト社会」が当たり前の世代について、プライバシーの必要性が上の世代より低いと述べる。隠し事がないほうがストレスがない世代で、群れるには位置共有アプリが便利だ。群れたくない世代には必要性が低く見えるが、監視し合う恐怖を強調しすぎると、若い世代からは「痛い人」に見られてしまうのではないか、と岡田は考えている。

詰め込み教育は思考力を奪うのか

高校1年生の10代男性、堂々さんからの相談である。通っている高校は詰め込み教育が大半で、答えのない問いに取り組む授業や課題がまったくない。AIと共存する社会では、感情などの感覚を含めた想像力、思考力、分析力が必要になると考えている。そこで、詰め込み教育で想像力や思考力は低下するのか、今どうやってそれらを育てればよいのか、と尋ねた。岡田はまず「ホワイト世代は真面目なんですよ」と感想を述べている。

1つ目について岡田は、個人的な体験からすると低下しない、と答えた。岡田自身、今よりはるかに厳しい詰め込み教育の時代に育ってきたからだ。学校というシステムで受ける体験のうち、授業の内容は3分の1程度にすぎないと岡田は考える。残りの3分の2は、クラスにどんな人がいたか、人間関係はどうだったか、先生はどんな人でどう話したかといった授業以外の影響である。毎日通い、帰宅して家で何か言われ、塾やクラブ活動をどうするか考える。そうした変化のほうが大きいので、授業が詰め込み型であることより、学校にスマホを持っていくかどうかのほうが想像力や思考力への影響ははるかに大きい、と岡田は言う。

2つ目については簡単だとして、一人の時間を大事にして本を読むように勧めた。読書は作者との対話である。スマホを持っていかず、休み時間に友達とつるむ時間を半分にして本を読めば、思考力や想像力は勝手に上がっていくという。「授業の内容に文句を言う暇があったら本を読んでください」と岡田は言い、今自分が答えているようなことも本にはだいたい書いてあると続けた。どんな本を読むかでショートカットを探さず、学校の図書館で無料で読める本を片っ端から読めばよい。高校1年ならあと2年ある。そうすれば詰め込まれた知識が頭の中でつながって動き出し、役に立つ。だから詰め込み教育もあまり無駄ではない、というのが岡田の答えである。最後に「おっさんの言うことですから」と付け加えている。

布絵本を売るより「作る動画」を作品にする

海外在住の専業主婦で30代女性の相談者は、手芸が趣味で子どものおもちゃを作るうちに独特の布絵本にたどり着いた。これをビジネスにしたいが、子育ての合間の制作と販売を一人でこなすのは難しく、趣味の範囲を超えられない。オリジナリティがあって欲しい人もいる自信があり、真似してもコスパが悪いので誰も参入できないと思う。マネタイズする方法はないか、という相談である。

岡田の答えは「YouTuberになればいいだけじゃないでしょうか」だった。作品は売れば手元からなくなる。それよりも作り方をひたすらYouTubeで配信すればよい。どれだけ手間がかかっても真似したい人は出てくるし、相談者は「お師匠様」になるので、その人が作るオリジナル作品には価値が出てくる、と岡田は言う。顔を出して話すのが嫌なら、ゆっくりボイスのようなシステムを使っても、音楽と字幕だけで説明しても構わない。

岡田は、布絵本そのものではなく「布絵本を作る動画」を作品と考えるよう勧めた。そこまで手間がかかるなら年に10作品も作れないはずで、作品販売でマネタイズするなら1冊10万〜20万円で売るしかないが、それは現実的ではないというのが理由である。続けていれば動画もだんだんうまくなる、とも述べている。

積ん読をやめる方法は「貧乏になるか、家族に反対されるか」

最後の相談は40代男性のけんけんさんからである。本が好きで、読むスピードより買うスピードが上回り、積ん読状態になっている。手元にあれば好きなときに読める安心感、絶版で手に入れ損ねたくない気持ち、面白そうだからすぐ読みたいという気持ちで買ってしまうが、知人からはお金と場所の無駄だと言われる。積ん読のメリットとデメリット、積ん読にしないための読書術を聞きたい、という内容だ。

岡田は、積ん読にしないためには貧乏になるか家族に反対されるしかない、と答えた。岡田自身もこの日Amazonで3冊ほど注文しており、毎日最低3冊は買っているはずだという。Kindleで買う方法もあるが、Kindleだと自分が何を持っているか覚えていられない。岡田のKindleには何千冊も入っていて、一覧で見る方法も特にないので、面白そうだと思って商品ページを見ると「2016年何月にこの本を購入済み」と表示される、という体験を語った。

毎日読書の時間を取っていても、1日3冊買えば積ん読になる。そこで岡田は時短読書を勧める。「映画を倍速で見る人たち」と同じく、読書を10倍速、100倍速でするという発想である。岡田は毎日30分から1時間しか読書時間を作らないと決め、その中で読むか読まないかを判断しているという。

岡田の読書メモから:途中まででも面白い本

岡田は、毎日つけている読書メモの一部を紹介した。

『ホス狂い』は面白く、単行本を買ってパラパラ読んだあと、いつでも読めるようにKindle版もわざわざ買った。そのおかげで最後まで読めたが、読んだのはほとんど電車の中、トイレ、ラーメン屋の行列に並んでいるときだったという。

『ルポ 誰が国語力を殺すのか』は10分の1から15分の1ほど読んだ。その中で著者への反論が浮かんだという。本では、ある昔話(岡田は「ごんぎつね」だったかと記憶をたどっている)の葬式の場面で「鍋で何かを煮ている」という描写について、子どもたちに自由に議論させると「死んだ人を煮ている」という答えが続出した例が挙げられ、子どもの読解力が落ちている証拠とされていた。岡田はこれに異を唱える。子どもたちは刺激の強い過激な物語世界に慣れているため、鍋で何かを煮ていると書かれれば「これはホラーで過激な話だ」と、いちばん面白い方向に先読みしてしまう。それをグループで話し合えばそういう結論になるだけだ。読解力不足ではなく、先読みが非常にうまくなった子どもたちの実情に著者がついていけていないのだ、と岡田はメモしている。一方で、本の後半に出てくる中高一貫の私立女子校で1年間かけて1冊の本だけを読む授業の話には感動したという。中学2、3年の女子生徒が『アンネの日記』を最初から最後まで全員で熟読すると、こんなに面白いのかという内容だった。

『朝日新聞政治部』は熟読すると決めてKindle版も買ったが、まだほとんど読んでいない。ただ、前書きだけで十分面白かったという。元政治部記者の著者が引退後、ある事件に正義の怒りを燃やしていたところ、妻から「あなたには泣く権利なんかない」と、朝日新聞政治部の記者は傲慢で自分は社会より偉いと思っている人間なのだ、と大説教されたという場面である。いずれ読もうと思い、その部分だけ読んで積ん読にしている。

積ん読は「いつか読む」ワクワク感を買う行為

岡田は、この程度しか読んでいなくても十分面白いと述べ、そこで話が終わってもいいと考えている。積ん読とは、喫茶店で隣の人の話を聞いて面白そうだと思うようなもので、その先は自分の妄想でも構わない。本を買うことは、少しだけ読んで「いつか読もう」と思う権利を得るための行為であり、そのワクワク感を買っている。宝くじを買う人の理屈に似ているが、本は「1000%リターンがある」のでよい、と岡田は言う。

ほかにも、スヌーピーの作者チャールズ・シュルツの伝記は10分の1ほどしか読んでいないという。先に漫画形式の本を買ったところ、シュルツは平凡で面白くない人だと分かった。そんな人がなぜあんなに面白い漫画を描けたのかと思って分厚い伝記を読み始めたが、二段組で活字がぎっしりなので、誰かダイジェストを書いてくれないか、自分が面白がりそうな部分だけ教えてくれる読書アシストAIが早く出てこないか、と妄想が広がったという。

絵本の『物語の家』は、アニメや映画に出てくる家の間取りの話かと思って買ったが、作者の空想を描いた本だったのでがっかりし、本棚のいちばん隅にしまった。岡田が本を売るときは吉祥寺の古本屋「よみた屋」にだいたい持ち込むので、岡田が紹介した本を読みたいが高そうだと思う人は、よみた屋を見張っていればいずれ出てくるだろう、と話している。結論として岡田は、積ん読はそれほど悪いものではないと答えた。

4年後の答え合わせ:中間層の置き換えは予想以上に進んだ

再配信の最後に、岡田は生成AIの話題について現在の状況を補足した。漫画とアニメのどちらの業界でも、中間層がAIに置き換わるどころではない状況が生まれているという。中国ではショートドラマの9割をAIで作られた動画が占めているとされ、日本の小説業界でも新人賞の応募原稿のほとんどがAIで書かれたようなものに置き換わりつつあるらしい、と岡田は紹介した。

アニメの制作工程は、原画、動画、仕上げ、背景、撮影、チェックと続く。岡田によれば、このうち動画、仕上げ、背景、撮影の部分をAIに任せられないかと、業界全体で実験や技術導入が始まっているようだ。漫画では、背景やモブキャラクターの描き込み、かつてスクリーントーンで作っていたような特殊効果、カラーの仕上げなどにAIが使われている。岡田が意外だとしたのはネタ出しで、今後の展開の相談までAIにするようになったという。これまで編集者やアシスタントとしていた相談をAIができるようになり、漫画家がアシスタントと雑談しなくなると、アシスタントは育ちにくくなる。岡田は先週の人生相談で「他人とコミュニケーションを取らずに人気漫画家になるのは難しい」と話していたが、これからは才能とやる気、そして何より運があれば、たった一人でもハイペースで漫画を生産して売れてしまう事態になってきた、と述べた。

それでも現場はすぐには崩れていない、という見方

こうした話は「もう駄目だ、仕事がAIに奪われる」という方向に傾きがちだが、アニメ・漫画業界に限れば案外そうでもないかもしれない、と岡田は言う。漫画のアシスタントはもともと慢性的な人手不足だった。そのうえ今のAIは、アシスタントの代わりをまるごと務められるほど優秀ではないので、監督役が必要になる。人間が苦労してコツコツやっていた部分はAIがやってくれるかもしれないが、少数の人間のアシスタントがAIの仕上がりをチェックしないと、そのままでは出せない。そうした形になりつつあるらしいと岡田は話す。

アニメでも同様で、面倒な作業や細かい描き込み、ファンから「作画崩壊」と叩かれやすい描き込みの多いキャラクターの作画をAIが担い、人間はチェックだけをする方向に流れている、というのが岡田が見聞きした範囲での印象である。岡田はこれを変化の途中段階だとし、アニメ業界の現場に詳しい人がいればコメント欄やお便りで教えてほしいと呼びかけた。

量が質を置き換えた先に何が残るのか

岡田は、アイデアの中心、ストーリー展開、コマ割りを進めるネームの段階までAIがこなせるようになるのは時間の問題だと考えている。はっきり言えば、中国のショートドラマ程度のクオリティでよければもう十分にできているし、実際にやっている。ところが日本には、それでは納得しない質を求める視聴者が山のようにいる。日本は長年かけて漫画やアニメのクオリティを上げてしまったため、出来が多少悪くても安くて無料のアニメでは視聴者が満足しなくなっている。日本のアニメや漫画のハードルはとても高くなっている、と岡田は言う。

それでも、こうしたものはいずれ量が質を置き換えるもので、日本もどれを見ても同じようなAIの漫画やアニメになっていくのはある程度時代の流れだと岡田は見る。人間がきちんと作る良心的な作品は、量としてはこの10年か15年で1〜2割ほどになるだろうと岡田は予想した。問題はその質がどれだけ残るかである。残った2割ほどの「人間がやっている面白い作品」も、アイデアや相談の段階ではみなAIを使うようになるだろう。そのため岡田は、いずれ行き止まりの崖に立つような気がする、という懸念を口にして補足を終えた。