H-1Bビザに年10万ドル、トランプ大統領令は米国で働く日本人に何をもたらすか

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概要

中島聡氏は、米国で働いている、またはこれから働こうとしている日本人にとって大きなニュースとして、トランプ大統領によるH-1Bビザの新たな手数料を取り上げた。中島氏の立場ははっきりしている。H-1Bビザの悪用は実際にあり、止めるべきだと認める。そのうえで、今回の手法はまっとうに人材を採用している企業まで巻き込むため問題が大きいと見ている。解説は、中島氏が自作したAIアシスタント「MulmoChat」と対話しながら進められた。

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手数料が1500ドルから年10万ドルへ

中島氏はまず、ニュース記事の要約をアシスタントに頼んだ。アシスタントの要約によると、トランプ大統領は外国人の高度技能労働者向けのH-1Bビザ申請に、年間10万ドル(約1500万円)の新しい手数料を課す。これまでの手数料は1500ドル程度だったので、大幅な引き上げになる。記事では、特に中小企業やスタートアップが人材を確保しにくくなるという懸念が示されているという。

中島氏は、この発表を受けたMicrosoftの社内対応にも触れた。Microsoftは緊急の通知として、H-1Bビザで働いていて今海外にいる人には即日米国へ戻るよう求めた。すぐに戻らないと入国を拒否される恐れがあるためである。さらに、米国内にいるH-1Bビザの保持者とその家族には、海外へ出ないよう指示したという。

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H-1Bビザは米国企業の成長エンジンだった

中島氏は、H-1Bビザが過去30〜40年ほど、米国企業の成長に重要な役割を果たしてきたと考えている。世界中から優秀な人材を集めて米国で働いてもらい、イノベーションを起こして価値を生み出す会社を大きくしてきた。中島氏はこの制度を、ある意味で米国企業の「エンジン」と表現し、それを止めるのはかなり厳しいと述べた。中島氏自身もH-1BビザでMicrosoftに入社した経験を持つ。

中島氏によると、イーロン・マスク氏は大統領令に強く反対している。そのため中島氏は、今後この大統領令を無効にするための訴訟や、議会を通じたロビー活動が起きるだろうと見ている。アシスタントも同じく、テクノロジー業界のリーダーや大企業が法的措置やロビー活動で巻き返しを図る可能性は非常に高いと答えた。

大統領令の名目は「悪用防止」と「米国人労働者の保護」

大統領令を出した理由について、アシスタントは記事の記述を次のように紹介した。トランプ大統領はH-1Bビザの悪用を問題視しており、米国人労働者の雇用を守ることを理由に挙げている。企業が外国人を雇う際に、その人材に10万ドルを払う価値が本当にあるのか、それとも米国人を雇うべきなのかを判断させる意図もあるという。アシスタントは、その背景には移民を厳格化して国内労働者を優先する政策方針があると考えられる、とも付け加えた。

インドのアウトソーシング企業によるビザの使い方

中島氏が最大の問題として挙げたのは、ビザの悪用である。代表例として名前を出したのが、インドのエンジニアリング・アウトソーシング企業であるInfosysだ。

中島氏の説明によると、こうした企業はインドに多くのエンジニアを抱え、米国企業から仕事を受注したいと考えている。ただし、すべてをリモートで進めるのは難しい。そこでリーダー格の人材を米国に派遣社員として送り込み、顧客企業で働かせる。その人がインド本国にいる数人から数十人のエンジニアを使ってプロジェクトを進める。この体制を作るために、送り込む人材にH-1Bビザを取らせる必要がある。

中島氏は、MicrosoftやGoogleの申請方法との違いを強調した。これらの企業は、経歴を確認し面接もしたうえで、「この人にどうしても来てほしい」という人材をピンポイントで選んで申請する。一方でInfosysのような企業は、たとえばインドに1000人の従業員がいれば1000人分を申請する。申請数が多いと先着や抽選で選ばれるため、ビザは通りにくくなる。それでも1000人のうち10人でも100人でも通れば、その人たちをリーダー格として派遣できる。優秀かどうかは関係なく、とにかく全員分を出す。中島氏は、これを「完全に悪用」だと評した。

本当の害は米国の職が大量に失われること

中島氏によれば、この悪用のせいで、GoogleやMicrosoftのようなまっとうな企業がビザを取りにくくなっているという迷惑もある。しかし中島氏は、それより大きな問題があると指摘する。派遣されたリーダー格の背後で、インドにいる数人から数十人のエンジニアが働く。その結果、米国の職が大量に奪われているという事実がある。

本来H-1Bビザは、米国内にいない貴重な人材を雇うための制度である。ところがインドのアウトソーシング企業は、米国より安く人を大量に提供することで米国から仕事を奪っている。中島氏はこれを由々しき状態とし、止めるべきだと明言した。

問題は、まっとうな採用まで巻き込むこと

ただし中島氏は、悪用を止めるための今回の手法が、まっとうに人を雇おうとしているGoogle、Microsoft、Apple、Teslaなどにも影響を与える点を大きな問題として挙げた。今後どうなるかは分からない、というのが中島氏の見方である。

日本人への影響について、中島氏は二つの場面を想定した。一つは、現在シリコンバレーなどでH-1Bビザで働いている日本人である。企業が10万ドルを喜んで払ってくれればよいが、そこまでの価値はないと判断されれば、「払えないので帰ってほしい」と言われる可能性もある。

もう一つは、これから米国で働こうとする日本のエンジニアである。中島氏は具体的な数字で説明した。本来なら年収10万ドルで雇われるはずのエンジニアでも、H-1Bビザを取って雇う場合は10万ドルの手数料が上乗せされ、企業の負担は実質20万ドルになる。それでも雇う価値があるかという判断になれば、採用のハードルはかなり上がる。そのため中島氏は、日本人がH-1Bビザを取って米国企業で働くことは、これから非常に難しくなるかもしれないと述べた。訴訟やロビー活動の結果は分からないものの、かなりの影響が出るだろうというのが中島氏の見立てである。

MulmoChatによる画像とプレゼン資料の生成

後半では、中島氏がアシスタントの機能を実演した。ホワイトハウスで大統領令に署名するトランプ大統領の絵を描かせると、中島氏は「結構いいね」と評価した。続いて今回の内容をプレゼン資料にまとめさせ、読み上げを頼んだ。

資料は六つのポイントで構成されていた。H-1Bビザが数十年にわたって高度人材を集めてきたことと、年10万ドルの追加手数料。悪用の防止と国内労働者の優先という目的。インドのアウトソーシング企業が大量に申請し、通った人材を米国に送ってインド国内のチームを動かす仕組み。Google、Microsoft、Appleなどにとっての負担。米国で働く日本人やこれから働こうとする日本人エンジニアへの影響。そして、イーロン・マスク氏をはじめとする経営者の反発と、訴訟やロビー活動による見直しの可能性。これらは中島氏の話をほぼそのまま整理した内容で、資料は「状況はまだ流動的で不透明な部分も多い」と締めくくられていた。

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実演中に出た誤り

動画の終盤では、アシスタントの誤りもそのまま映されている。再び要約させた際、アシスタントは10万ドルを「約1億5000万円弱」と答えた。中島氏が「1億じゃないじゃん。1500万じゃん」と指摘すると、アシスタントは「ご指摘の通り重要なポイントです」と返した。さらに読み上げを頼むと、アシスタントは「今から順番に読み上げていきますね」と答えたものの実際には読まず、中島氏に「読んでないじゃん」と言われて謝罪した。

H-1Bビザをめぐる今後については、中島氏もアシスタントも、訴訟やロビー活動の行方次第であり、まだ分からないという位置づけで話を終えている。