64歳の会社員「梅ちゃん」が語る、AVエキストラ20年と支援してきた女性たち

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概要

エンジニアとして会社勤めを続けながら、2007年からAVエキストラとして現場に通ってきた64歳の男性がいる。X(旧Twitter)でも「梅ちゃん」の名で活動する人物だ。街録chのインタビューで、梅ちゃんは業界との関わり方、AVデビューを望む女性たちへの相談対応、両親との疎遠な関係、養子縁組で迎えた娘と早くに亡くした妻について語った。なぜ一人の会社員が20年近くこの業界に関わり、しかも女性たちの生活にまで手を差し伸べてきたのか。本人は「女性が好きだから」と笑いながらも、その関わり方をライフワークと位置づけている。

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会社員とAVエキストラの二重生活

梅ちゃんは現在もサラリーマンのエンジニアとして働いており、その「隙間を縫って」活動していると話す。最初にエキストラとして現場に出たのは2007年。以降、作品への出演だけでなく、オフ会系のイベントやメーカー主催のイベントにも数多く足を運び、「勉強させてもらった」という。

AVエキストラとは何かという問いに対し、梅ちゃんはアダルトビデオ作品に出演する立場の一つだと説明する。業界での位置づけとしては「男優」「汁男優」「エキストラ」という分類があるという。本業に影響しない範囲でエキストラを続けており、あくまで「観察している」「全方位から見ている」立場だと自らを表現した。

イベント仲間から見た梅ちゃん

取材班は梅ちゃんに案内され、イベントスペース「デカバースーパー」を訪れた。そこでは、梅ちゃんが参加しているグループの中心メンバーの一人である綾瀬りんさんが話を聞かせてくれた。このグループは、性癖がMの人に喜んでもらえるようなイベントを毎月開いているという。

綾瀬さんによれば、グループの周年イベントでは参加者の結婚式が行われることもあり、これまで5組ほどのカップルがそこで式を挙げ、1組も別れていないという。梅ちゃんはクリスマスに参加者を招いてディナーをふるまうこともあると綾瀬さんは紹介した。綾瀬さん夫妻もこのグループの仲間であり、綾瀬さんは梅ちゃんが妻を亡くしていることに触れ、寂しさもあるのかと思ったこともあったが、結局それは関係なかったと語った。

AVデビューを望む女性たちの相談に乗る理由

梅ちゃんはエキストラとして関わるなかで、女性たちの人生が見えてくるようになったという。AVデビューを考えても「何か違う」と感じて辞めていく女性が多いことを知り、自分に何かできないかと考えた。

具体例として梅ちゃんが挙げたのが、Yahoo!知恵袋で見つけた相談だ。高校を卒業したものの就職難で仕事に就けなかった女性で、母親が生活保護を受けていた。働ける娘が働いていないと生活保護を打ち切られてしまうため、とにかく家を出て仕事をしなければならない。普通の仕事がうまくいかなかったため、AVなら稼げるのではないかと考えたのだという。梅ちゃんはアドバイスをして後押しし、デビューさせた。

別のケースでは、AV事務所に所属していたものの半ば詐欺のような形で出演させられた女性から、交際相手ができたときに作品が表に出ると困るという相談を受けたこともある。デビュー希望に限らず、AVに関係する相談を合計で20件ほど受けてきたという。

なぜそこまでするのかと聞かれると、梅ちゃんは「半分は、やっぱり女性が好きだからじゃないかな」と答えた。ただし、自宅に住まわせた女性とも体の関係は「ほぼほぼない」と言う。部屋を貸す形で、自分は会社に行き、相手は仕事がなければ家にいて、冷蔵庫の食べ物は自由にしていいという関係だった。この仕事に就く女性にはメンタルが不安定な人もおり、話を聞く存在として梅ちゃんに助けられた人はいると綾瀬さんは言う。梅ちゃん自身も、金を出して何かしようという感覚ではないと話した。

現在はストリッパーとして活動する小峰みこさんも、まだ生活が成り立たなかった時期に梅ちゃんが家に住まわせるなどして支えた一人だという。

自作の「アダルト業界相関図」

エキストラを始めたきっかけは出会い系サイトだった。そこに「AVに出演しませんか」という掲示板があり、ある女性とメッセージをやり取りするうちに、エキストラが必要なのに誰も応募してこないので出てくれないかと頼まれたのが最初だった。

その後梅ちゃんは、イベントや撮影現場に通い、関係者の話を聞いて照合しながら、業界の構造をまとめた相関図を自作した。目的は、女優になりたいという人が、どの事務所に入ればよいのか、どこが勧められるのかを判断できるようにすることだという。

梅ちゃんによれば、同じ作品で同じ内容に出演しても、ある女優は50万円、別の女優は30万円しか受け取れないということが普通に起こる。メーカーが払う額は同じでも手取りが違うのは、事務所が二重に関わって取り分が2回引かれている可能性があるからだと梅ちゃんは説明する。こうした構造を知っているかどうかで差が出るという。ほかにも大量の資料を作っており、風俗業に関わる女性も多いため、法律面でどう守られるのかも含めて全体を見なければ正しいことは言えない、というのが梅ちゃんの考えだ。

荒川区で育ち、親との思い出はほとんどない

梅ちゃんは東京都荒川区の出身で、小中学校も荒川区。高校にあたる時期は荒川区にある高専に通った。当時は航空高専と呼ばれ、飛行機の設計を学ぶ学校だった。5年間通ったが女子学生は3人ほどしかおらず、「ある意味そこで女性に飢えたんでしょうね」と振り返る。

父親はタクシー運転手、母親は専業主婦だった。どんな母親だったかと聞かれても、梅ちゃんは「特に思い入れもない」と答える。親に対する思い出がほとんどなく、次男だったこともあってほぼ放っておかれたという。兄は初めての子どもだったため親がやや過干渉気味で、旅行に行くときも揉めたらしいが、梅ちゃんは一人で自転車で出かけても何も言われなかった。関係は「よくも悪くも無関心」で、子どもの頃に親と過ごして楽しかった記憶はほぼないという。社会人になってから楽しいことを求めるようになったのはその反動かもしれない、と梅ちゃんは推測する。

両親の死を知らされなかった

晩年の両親の面倒は兄が見た。梅ちゃんは転勤で千葉に移ったこともあり、両親とはあまり関わらなかった。両親は介護施設に入っており、梅ちゃんも時々は訪ねていたという。

しかし、父親が亡くなったときも母親が亡くなったときも、梅ちゃんには連絡が来なかった。葬儀にも出ていない。死を明確に告げられることもなく、「なんとなく察しただけ」だという。父親が持っていた田舎の土地を売ったという話が後から出たことはあったが、その件にも関わるつもりはないと話す。自分が何かをしたわけでも、絶縁していたわけでもなく、なぜ連絡がなかったのかは「わからない」。「ある意味仲間外れなんでしょうね」と言いつつ、向こうが全部済ませたのならそれでいいのではないか、という受け止め方をしている。

不妊治療をあきらめ、養子縁組で娘を迎える

梅ちゃんは26歳で結婚した。当時すでにエンジニアとして独立した生活を送っており、妻は看護師で収入もあった。二人はアウトドアを楽しむ社会人サークルで知り合い、山登りや洞窟探検をしていたという。当時はAVとは無縁の「真面目な社会人」だった。

夫婦は不妊だった。当時の不妊治療は保険適用外で、すぐに100万、200万、300万円と費用がかかったという。そこで若いうちに早めに決断し、養子縁組で子どもを迎えることにした。子どもが1歳3か月、梅ちゃんが30歳前後のときのことだ。

妻の死と、父一人での子育て

妻は娘が小学4年生のときに乳がんで亡くなった。梅ちゃんは、医師の触診で見つけられなかったことが大きかったと見ている。当時は触診でしこりの有無を判断してから次の検査に進む流れで、そこで見つけられないと進行してしまう。見つかったときにはリンパにも転移しており、「手の施しようはなかったんじゃないか」と話す。抗がん剤と放射線治療で抑えたが、放射線には年間の被ばく量の限度があり、最終的には亡くなった。梅ちゃんは「半分は運命だからしょうがない」と言い、子どもはかわいそうだったと付け加えた。

妻が亡くなったのはゴールデンウィーク中で、その前の1週間は頻繁に病院に通えたため、後悔なく見送ることができたという。家族3人で過ごした時間は8年ほどあり、その時間が確かに存在したことで、家族はこうでなければならないという考えもあまりなかったと話す。

その後は梅ちゃんが一人で娘を育てた。唯一の問題は、仕事に行くと娘が学校にちゃんと行っているか見られないことで、欠席は多かったという。ただ母親を亡くした直後でもあり、精神的なものもあるだろうと考えてあまり踏み込まなかった。それを苦労とは思っておらず、「単純に受け入れるだけの話」だったという。現在娘は一人暮らしをしており、今でも小遣いをねだってくるという。

梅ちゃんがAVに本格的に関わり始めたのは妻の死後で、しばらく「真面目な遊び人」として過ごした後、先述の掲示板をきっかけに45歳ごろから関わり始めたという。

パパ活の紹介と複数の「彼女」

20年近く業界に関わり続ける理由を問われ、梅ちゃんは「女優さんが綺麗だから」と答えた。外見だけでなく、心の中で葛藤している姿を見ているからだという。

関わりはAVに限らない。出会い系で知り合った女性がパパ活をする女性たちのまとめ役をしており、紹介案件がなくて困っている女性を梅ちゃんに紹介してくる。今月も3人を「押し付けられる予定」だと笑う。現在、彼女が4人、食事だけの相手が5人ほどおり、ほかにイベントで交流のある人との付き合いもある。相手はみな20代前半から半ばくらいだという。紹介のほかに、ご飯をごちそうしてほしいという掲示板経由の出会いもある。

仙台から来るある女性は、新宿の安いラブホテルでいい、食事もコンビニでいいと言うが、梅ちゃんはせっかくお金を使うなら東急ハンズでDIY道具を買うといった、その人に合った使い方をしてあげたいと考えている。とはいえ、こうした関係も「そろそろ終わりかな」と思っているという。薬は使っておらず、年齢で変わったのは量と持続時間だと率直に語った。

出会いを続けてきた理由については、寂しさもあるだろうとしつつ、「単純に面白かった」と言う。食事をしながら相手がどんな人か、どんな話をするかを引き出し、こちらも話を振って反応を見る。中には現在も活躍するアイドルもおり、今のアイドルには貧乏な人が多く、パパ活をしている人も少なくないという裏事情を聞いた。貧しさからAVに行く人がいることにも納得がいき、知識の裾野が広がったと話す。

4年間の同居と、100万円を超える持ち出し

現在、自宅に住む女性はいない。先述の生活保護家庭の女性は、まず2年ほど梅ちゃんの家に住み、お金が貯まったので赤羽でマンションを借りたが、立ち行かなくなって戻ってきた。そこからさらに2年、通算4年ほど一緒に暮らし、「どこかで卒業してくれないと困る」ということで家を出たという。

梅ちゃんは「育てたい」わけではなく、困っている人に無理のない範囲で手を差し伸べているだけだと言う。病院代が苦しいという女性に7回ほど振り込んだこともあり、総額は「わからん」ものの100万円は超えているという。

AV関連の相談は約20人、そのうち実際に会ったのが10人ほど。プロフィールシートまで作っても辞める人が多く、デビューを手伝ったのは5人ほどだという。業界がどんな場所かわからないという女性たちを集め、ある監督に会って実情を聞きに行ったこともある。費用はすべて梅ちゃんの持ち出しだ。そうした関わりを通じて知識を得たり、女性たちとの心の距離を縮めたりしたいのだと話す。女性の笑顔が一番出やすいのは美味しいものを食べているときだ、というのが梅ちゃんの実感だ。

男優への道を閉ざした撮影

最も興奮した現場を聞かれ、梅ちゃんは2008年ごろの撮影を挙げた。王様ゲームで当たりを引いたエキストラが好きな女優と絡めるという企画だった。エキストラたちは目の色を変え、くじを持つ男優の手から無理やり奪って当たりを探すほどで、男優が怒り出す一幕もあったという。ほぼ最後、残りわずかのところで梅ちゃんが当たりを引き、面識のあった女優のまなみさんを指名した。

ところが本番に入ろうとしたところで、別のエキストラが割り込んできた。本来は入ってはいけない場面だったが、撮影中に怒るわけにもいかない。気持ちが乱れた結果、途中で続けられなくなり、監督には終わったことにしてもらった。梅ちゃんはこの経験で、プロの男優なら鉄の意志でやり遂げるはずで、そこがプロと素人の差だと実感したという。男優になる未練はそこで一切なくなり、エキストラとして続けることを決めた。

以後は、現場で求められれば「かける」役はこなしている。現在アメリカで活躍するマリカさんがSODでデビューした際の作品にも、その後の作品にも参加したという。ギャラは交通費込みで1000円だった。

自由だった昔の現場と、立ちっぱなしの今

梅ちゃんによれば、昔はエキストラ出演作の作り方にかなり自由度があり、出る側も面白かった。例として挙げたのが、コンビニに入った男性が店員に処理してもらうという架空のサービスを描いた「ち○ぽ洗い屋」という作品だ。梅ちゃんも出演し、事後にセリフを言うなど少し演技もしたという。

一方、最近行っている現場は電車のセットで乗客役を務めるもので、3シーンほどを撮るが1シーンが約2時間、合計6時間立ちっぱなしになる。拘束は朝から夜10時ごろまでで、残りは待機。ただ立っているだけで「つまんない」と話す。

行為の後の気持ちを聞かれると、「作業だから」と答えた。それでも現場に行くのは、監督の演出を見るためだという。100人の監督がいれば撮り方は100通りある。水着の女性に対し、誰がどの位置からどう垂らすかまで細かく指示する監督もいれば、黒崎さんという監督のように、いくつかのやり方を例示したうえで「みんなで工夫すれば作品は絶対良くなる」とエキストラのアイデアを引き出す監督もいた。梅ちゃんは後者を「すごくいい監督」と評価する。

目標は自分でAVを作ること

今後の目標を聞かれ、梅ちゃんは「1個ぐらい自分でAVを作ってみたい」と答えた。その背景には娘のことがある。娘は現在コンビニの店員をしており、梅ちゃんは「もうちょっとなんとかしてやりたい」と話す。メーカーを立ち上げれば、娘にマネージャーや経理を任せて仕事を確保できるのではないか。AVメーカーでなくイベント会社でもいいが、そうした事業をやってみたい——梅ちゃんはそう語り、インタビューは終わった。