収納の扉がない3階建ての家で、どこを「見せる場所」にするのか

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概要

幸せ住空間セラピストの古堅純子さんが、3人家族とフレンチブルドッグが暮らす2LDKの一軒家を訪ねた回の前編である。この家は階段や壁にこだわったおしゃれなつくりで、シンプルな暮らしを思い描いて建てたことがうかがえる。ところが扉の中に物を隠せる収納がほとんどなく、生活の中心である2階には物があふれている。今回は作業に入る前の現地確認と、家族への聞き取りが中心だ。古堅さんが繰り返し問いかけたのは「この部屋をどういう部屋にしたいのか」という一点だった。

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「側だけ」素敵な家

家は3階建てで、1階は玄関だけ、2階がリビングダイニング、3階に寝室ともう1部屋がある。玄関から上がる階段はタイルに模様がついた凝ったつくりで、古堅さんは「素敵な家ですね」と声をかけた。家族は照れ隠しのように「側だけ」「顔だけ」と繰り返し、古堅さんも「皮だけ」は自分の口癖だと笑って受けた。その凝った階段の先に「靴を揃えましょう」という貼り紙があり、古堅さんは遠すぎて何と書いてあるのか分からなかったと冗談を言う。玄関は撮影に合わせて一応片付けたらしい。

リビングでは6歳の息子が迎えてくれた。手には古堅さんの著書『ものを捨てない! 週末片づけの新常識』を持っていた。困っていることを尋ねると、息子は「上の階」に物が多すぎると答えた。

息子は魚が大好きで、さかなクンのトークショーに2回参加し、目の前で絵を描いてもらったという。サバの絵は額に入れてリビングで一番目立つ場所に飾ってあった。古堅さんは「魚を食べて賢そう」と冗談を交えつつ、フレンチブルドッグもいる動物好きの家族だと受け止めた。

2階は「もっさり感」がストレス

古堅さんの第一印象では、2階は物は多いものの可愛らしく、大きな問題はないように見えた。しかし妻は「このもっさり感がどうにもこうにもストレスで、落ち着かない」と打ち明ける。古堅さんが「自分でやったのよ、それ」と指摘すると、妻も「私がやりました」と認めた。

古堅さんは、何もないよりいろいろあったほうがこの家の個性になるのではとも言った。ただ妻の話では、どこかに手を付けると別の場所で問題が起きる状態だという。古堅さんは「素敵」と言ったのは、シンプルなつくりの割に随分持っているという意味もあったと説明する。家のつくりはシンプルライフを目指しているのに、むき出しの物を増やしてしまった、という見立てだ。そのうえで、批判しに来たのではなく、家が健やかで平和に暮らせればいいという立場だと断った。

唯一の「扉付き収納」はお酒でいっぱい

大きな問題は収納である。この部屋だけでなく家全体に、扉の中に隠せる収納がほとんどない。2階で扉がついているのはトイレと、その隣にある奥行きの深い収納だけだった。電気をつけないと洞窟のように暗いその収納には、お酒がぎっしり詰まっていた。3階にもお酒がたくさんあるという。

夫はお酒を集めるのが趣味で、妻は飲む専門だと話す。集めて消費しているが、消費しきれない分がそこに溜まっている。奥に入りすぎていて手を付けられないと妻も認めた。古堅さんは、家で唯一の貴重な「穴」が残念な状態になっていると指摘し、この場所はきちんと生かさなければいけないと述べた。

ほかにも2階にはクリスマスツリーが立ったままで、妻もどうにかしたいが方法が分からないという。古堅さんは縦に積み重なった構造の家は難しく、どうしても生活の中心である2階に物が溜まりやすいと話した。

3階の寝室は比較的うまく回っている

3階に上がると、雰囲気のいい落ち着いた空間が広がる。まず見たのは、家族3人で寝ている寝室だった。ここには屋根裏のように天井の低い収納がある。息子の物と下着類を入れた場所、夫婦の衣類を入れた場所に分かれていた。

夫婦の衣類の収納では、手前の服だけを着回し、奥には着ていないが捨てたくない服が壁のように詰まっていた。妻のほうも、使っていない物は下の方に入れているという。古堅さんはあふれているわけではなく、この中でやりくりしていると評価した。起きてすぐ着る服が近くにあるのは便利で、寝室は大きな問題ではないという判断だった。

家族は木の雰囲気や自然が大好きだと話し、古堅さんは「自然界にはこんなに物はないけどね」と返した。妻は自分も物が好きで、可愛い物を見ると欲しくなってしまうと認めた。

6年間「詰め込んだまま」のもう1部屋

問題は3階のもう1部屋だった。息子に何の部屋か尋ねると「本の部屋」と答えたが、中は荷物でいっぱいだった。引っ越してきたのは息子が生まれる直前で、とりあえず詰め込んだまま6年が経った。その間、一度も掃除ができていないという。古堅さんは、ここはもう死んだ状態で、6年で悲しい感じになっていると表現した。

置いてあるのは、夫が趣味で集めた「お宝」が大半らしい。何に使うのか家族にも分からない道具もあった。段ボールの中にも物が山ほどあり、お酒も交じっていて、どれだけ持っているのか誰も把握していない。妻は「2人して片付けられない」と話した。

ただ、部屋の一角にある夫のデスク周りだけは整っていた。背景に白い壁やブルーバックを使っているため、オンラインでやりとりする相手はこの部屋の状態に誰も気づかないだろうと古堅さんは言う。妻は当初「夫がテレワークできるように」と要望を出していたが、それは既にできている。古堅さんは、夫にとってはそれほど問題がないのではないかと指摘した。

この部屋に何を求めるのか

目的を詰めていくと、妻からはいくつもの希望が出てきた。息子もいずれ自分の部屋やひとりの時間を欲しがるはずなので、子どもと共有できる部屋にしたい。家族が風邪をひいたときに隔離したいのに、この部屋では寝られない。コロナにかかったときは、テントを張ってそこで寝たという。古堅さんは「どこまでナチュラルな人たちなんだ」と笑った。布団を干すなどの作業にも使えたらいいが、まずは6年間できていない掃除ができるようにしたい、というのが妻の話だった。

夫は、デスクと椅子がうまく使えれば場所にこだわりはないと答えた。古堅さんは、この部屋は屋根の傾斜があるので置き方を工夫しないと狭く感じると述べ、まずはここを中心に考えると確認した。

収納の余地としては、衣装を入れた収納の下の足元や、シングルベッドの下が空いていることが挙がった。古堅さんの言う「埋める」収納の候補だ。ただし飲み物は埋められないので、「とりあえず飲め」と古堅さんは冗談めかして言った。

2階は定位置が多すぎる

再び2階に戻ると、古堅さんは問題を整理した。2階は量が多いのに、物ごとの定位置を作りすぎている。そのため雑然として見える。子どもの物をもう少し3階に上げる選択肢もある。動く物だけを厳選して2階に置いてもよいが、3階の部屋にもそれなりに物がある。古堅さんは「シンプルに暮らしたい割には持ちすぎ」だと自覚したほうがいいと伝え、埋めるなり寄せるなりして結果が見えるようにやっていこうと話した。作業前には恒例の儀式として、夫と息子も加わって拳を上げ、気合を入れた。

家族から離れた場所で、古堅さんはスタッフに本音も漏らしている。どうしたいかという意志が弱いこと、理想はとても高いのに実態が伴っていないことだ。おもちゃを一旦3階に上げるのも手ではないかとも話していた。

階段を上がった先が全部「景色」になる

古堅さんはこの家の特徴にも触れた。2階に上がってきた瞬間、目に入るものが全部景色になってしまうつくりだという。今は見える側に物を置きすぎている。例えば壁のくぼみ側に物を寄せ、片側を飾る場所、もう片側を生活用の場所にすれば、視界が広くなるかもしれないと提案した。

キッチン周りも全部むき出しの収納で、パントリーとして置きたいのか飾りたいのか分からない状態だった。そこにある物は動いているのかと尋ねると、ほぼ動いていないという答えだった。

古堅さんの見立てでは、理想と現実がまったく違っている。理想は山小屋のような空間で家族がくつろぐ姿だ。しかし実際には、子どもはここで本を読みたい、勉強したい、何でもここに置きたい、となっている。結果として「とっても便利にできているお家」の作業部屋のようになっており、この部屋にはテーマが必要だという。息子の学習机もリビングにあり、ここは動かせない。全てを叶えることはできないと古堅さんは言い切った。子ども中心に考えれば全てがここにあるほうがいいが、逃がす場所が弱い。そこへ3階から物が降りてくればもっとひどい状態になる。だから1つポイントを押さえておきたい、という考えだ。テレビの前に本があるのでテレビをどう見るのかと尋ねると、基本的についていないという答えが返ってきた。

「景色よく、掃除しやすく、人を呼べる部屋」

改めて2階をどういう部屋にしたいか問うと、妻は「収納部屋っぽくなくしたい」と答えた。重ねて聞くと、景色よく、掃除しやすく、人を呼べる部屋にしたいという。今は恥ずかしくて人を呼べないそうだ。あると何でも引っかけてしまうので、突っ張り棒も外したいと話した。

妻は、物を寄せられるのは3階だと言う。最悪、3階の部屋で寝られなくても、掃除ができればまずはいいという考えだった。古堅さんは、今日は一度全部出して形にするので掃除はできるようになると応じた。そのうえで、2階の景色の優先順位が高いのなら、物を3階に上げていくしかないと述べた。ただ、3階で話すと「下に降ろそう」、2階で話すと「3階に上げよう」という話になってしまう、とも指摘している。

片付けを「並べること」だと思っている

景色をよくして人を呼ぶなら、さらに多くの物を3階に上げることになる。古堅さんは、2階をバックヤードにしてしまっている現状を変えるには、バックヤードは3階だと決めなければ全部が2階に集まってくると説明した。それが面倒なら、そもそもそんなに持たないことだという。理想を持つなら、自分がどうしたいかに対して「これを持つ」と決めなければならない。あれもこれも欲しい、やりたいとなっているから何もできないのだと話した。

古堅さんは、答えを出すのは自分ではなく、家族がそこに向かっていかなければいけないと強調する。しかし、この家族はあまりそちらに向かっておらず、伝わってこないと率直に語った。物をきれいに並べることが片付けだと思っているので、その意識を変えないと難しい。自分はこの家に合った物の置き方をしたいが、なかなか難しいとも述べた。

それでも古堅さんは、一度すっきり片付いた部屋で暮らしてもらいたいと話す。妻によれば、この家は荷物を詰め込んだ状態で引っ越してきたため、一度も片付いたことがないという。物量が多く隠せる収納が少ないため、理想と現実が伴わない家。大量の物の行き先をどう決めるのかという課題を残して、前編は終わる。