「撤退」ではなく「縮小」だった 飯田祐基氏が語るこれミス事業の資金調達、損切り、発表の失敗

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概要

マーダーミステリー事業「これからミステリー(これミス)」の撤退を発表し、ネット上で「倒産」とまで受け止められた飯田祐基氏。M&A BANKの島袋直樹氏は、エンジェル投資を受けた新規事業がうまくいかなかったとき、その後処理をどう進めたのかを聞こうとした。ところが話を聞くうちに島袋氏は、飯田氏の発表そのものが実態とずれていたと指摘していく。飯田氏は冒頭で「全部開示することが誠実だと思っている」と述べ、調達額から個人借り入れまで具体的な数字を明かした。

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調達総額は約3億円、個人で6000万円を借りて会社に入れた

飯田氏によれば、これミスの調達はエクイティが1.3億円、デットが5000万円で、合計1.8億円である。借り入れの内訳は、公庫から3000万円、個人から3000万円で、そのうち1000万円を返済済みのため残高は5000万円。これとは別に、飯田氏個人から会社への役員貸付が1.2億円あり、すべて合わせると調達は約3億円になるという。

エクイティ調達は2つのフェーズに分かれたが、株価はどちらもプレマネー10億円、ポストマネー11.3億円で同じだった。初期に生株を渡した相手がヒカル氏ともう1人おり、飯田氏自身は約70%を保有していた。

資金が尽きかけた時期には、会社として借りられなかったため、飯田氏が個人で6000万円を借りて会社に入れた。島袋氏は、会社経営をしていればきれいごとを抜きにこうした判断はあり得ると理解を示したが、飯田氏は「6000万は自分にとってかなり大きく、生きた心地がしなかった」と振り返る。事業の成長が緩やかだったため、あと3カ月調達できなければギブアップだと考えていたが、実際に調達はできず、ダウンラウンドも検討したという。島袋氏はダウンラウンドについて、株価10億円で調達した会社の価値を例えば5億円に下げて追加調達することで、最初に入った株主の持ち分の価値が下がるため既存株主が嫌がるものだ、と補足している。

本業に集中できず、顧問収入で穴を埋めた半年間

月のコストは字幕上やや不明瞭だが1000万円台後半あり、それを500万〜600万円まで下げることはできた。ただ、その穴埋めには飯田氏がコンサルで稼いだ「飯田顧問」の収入を入れたり、M&Aの仲介で1000万円単位の手数料を得たりしていたという。飯田氏はこれを「変なことをしていた」と表現する。

本業のこれミスは、マーダーミステリーという新しいエンタメ市場を作る事業で、著作権管理、システム開発、アプリなどを手がけていたが、「全然うまくいかなかった」。島袋氏が整理したとおり、本業で稼ぐことに力を割くより、重すぎるコストで溶けていくお金を、飯田氏が自分で動ける顧問業などで埋めていた状態である。この期間は半年ほど続いた。

顧問業は、同居しているヒカル氏の後押しで始めたもので、月額30万円の契約が27社集まり、月900万円ほど(税込み)の収入があった。それでも赤字は続いた。飯田氏自身が本業に入れない以上、組織で回すしかないが、組織では維持はできても成長はできない。そうした状況から「難しい」と判断し、ギブアップを決めたという。

株主がエンジェル投資家だけだったため、「ナイスチャレンジ」として許してもらえたと飯田氏は話す。同時期に結婚も発表したため、結婚するから挑戦をやめたのではないかと言われたが、事実はそうではないと否定した。さらに借金を重ねることはできたが、同じ状況が続いて出血が止まらないため、あえて「ギブアップ」という言い方をしたという。

会社は倒産していない 閉じたのはアプリ事業

会社は破産も倒産もしていない。これミス以外の業務、例えば先払いを受けている案件や、M&A仲介の後処理(コンサルとセットで仲介したため1年間コンサルを続ける義務がある案件や、売り手と買い手の間でまだ契約書を揉めている案件)は、マーダーミステリーとは関係がないため新会社にすべて移した。

これミスの事業は、店舗、著作権管理、アプリ、営業から成っていた。黒字なのは店舗だけで、店舗はすべて黒字だという。店舗は継続し、著作権も保有しているため、2人分の固定費を払って維持している。最も大きな赤字を出していたのはアプリで、開発費に加え、認知させるための広告費やオペレーションのコストがかかっていた。

つまり実態は事業撤退ではなく事業縮小である。ところがメディアでは「倒産」と報じられた。飯田氏は自分では倒産とは一言も言っていないとしつつ、「倒産とは本当に言わない方がいい」と語る。島袋氏も、発表を見て倒産したと思ったと明かし、実際には赤字部門を損切りしただけだと指摘した。

「別に発表する必要なかったんじゃない?」

飯田氏が発表に踏み切ったのは、世間にも株主にも「オールインしてこの事業をやる」と宣言し、会社を作って稼ぎ、借金を返すという意思決定を示していたからだという。オールインと言いながら別のことをしていると思われるのではないか、という懸念もあった。

これに対して島袋氏は、マーダーミステリーの店舗は続いているのだから、「撤退」と言われれば残っている人たちが問い合わせを受けるコストがかかるだけで、発表する必要はなかったのではないかと問いかけた。飯田氏は、実際に問い合わせが大量に来たうえ、クレジットカードがすべて止まったと明かす。「倒産したんですか」と聞かれ、していないと答える状況だったという。島袋氏は、倒産でもなく、むしろプラスの判断なのに、Xなどで誤った発信をするとクレジットカードまで止まる、というのは視聴者にとって教訓になると述べた。

成長こそ正義だと思い込んでいた

飯田氏は、成長を前提にどんどん調達していく事業計画を描いていたため、それが現状維持になる以上、公庫にも返済しなければならないと説明した。これに島袋氏は、赤字部門をやめればお金は溶けなくなり、顧問業などの黒字事業もあるのだから返済は十分できるはずで、収益は改善している、ネガティブどころか「改善しました」というポジティブな話ではないかと返した。

飯田氏は「確かに」と受け止め、起業家として成長こそが正しいという考えになっていたと認める。島袋氏は、事業撤退でも倒産でもなく「選択と集中をしたので、さらに業績は良くなります」で済む話であり、店舗というポテンシャルのある部分にリソースを振り向けるという説明で足りた、とまとめた。飯田氏も、赤字部門も役員もなくなり、コストを大きく削ったことで業績は良くなったと認めている。

島袋氏は、預かったお金で大きくしなければならない立場になると、トップラインが伸びていないことを悪のように感じてしまう、と飯田氏の心理に理解を示した。FCでも店舗数を増やし続けなければならないと考えがちだが、実際には赤字店舗を閉めれば利益が出る。伸びていることが正義だと語られがちだからこそ、勇気ある撤退は必要だというのが島袋氏の見方である。

飯田氏は「今日来てよかった。こういうふうに言ってくれる人はいなかった」と語った。意思決定を後押ししてくれる人はいたが、飯田氏自身はそれを最善でも次善でもない、敗戦処理のような判断だと捉えていた。借金をしてでも続けなければいけないと思い込んでいたが、それで業績が良くなるわけではなかった、と振り返っている。

1週間で400人に謝罪した

今回の縮小は飯田氏にとって初めての規模の意思決定で、1週間で約400人に謝罪したという。Zoomで作家、店舗のアルバイト、FC加盟者、取引先、スタッフらを集めて説明した。フランチャイズは店舗運営側なので続けるが、FC加盟者はほぼ全員がマーダーミステリー市場の成長に期待して賭けた人たちであり、飯田氏が成長に賭けるのをやめると伝えることになったため、謝罪したという。

島袋氏はここでも、成長への投資をやめるのではなく、アプリというツールで伸ばす選択肢がコストに見合わないので一旦やめるだけで、店舗への広告やプロモーションに振り向ければかえって良くなるかもしれない、と言い換えてみせた。

飯田氏は、意思決定の過程は怖かったと話す。お金はどんどん減り、給料の支払いが遅れれば大変なことになる。諦める理由はお金だが、諦めない理由もたくさんあり、「こういう理由があるのになぜ諦めるのか」と自分を責めてしまう。それでも現実は足し算引き算の世界で、無理なものは無理だった。少しでも諦めない理由があるなら続けたいと思いながらやってきたが、今回はギブアップした、と語る。島袋氏は「ギブアップではなく、むしろポジティブ、英断だ」と応じ、自身も新規事業で周囲に夢を見せ、大きなお金をかけて失敗した経験があるので分かる、と述べた。今は日々がかなり楽になったと飯田氏は認めつつ、楽と言うと開き直っているように聞こえるが、と付け加えた。

次の事業はSNS運用「BUNSHIN」

今後は、飯田氏が最も得意とする領域であるSNS運用の会社「BUNSHIN」を手がける。飯田氏によれば、SNS運用会社の多くは代表的な成功事例だけを掲げ、それ以外はその焼き直しになっている。BUNSHINは代表作よりも平均値を重視し、成果保証を付けたという。プランは月額50万円と100万円の2つで、100万円のプランでは「半年で最低1.5万人のフォロワー増加」を保証する。達成できなければ無料で延長を続ける。50万円のプランに保証はない。

島袋氏は、面白いコンテンツや文章力がない人のフォロワーを1.5万人増やせるのかと疑問を投げた。飯田氏は、SNS運用サービスの派手な実績の下には「屍」が大量にいると話し、ある有名SNS運用会社に1年頼んでフォロワー40人だった知人もいると例を挙げた。そのうえで、バズりにくい素材でも1.5万人は届かせるという。

その根拠として飯田氏が挙げるのが、ワンストップ体制である。企画、アカウント設計、投稿、制作、編集をすべて社内で担うため、文章力や企画力といった顧客の弱点を社内で把握できる。週単位で結果を見て、何がバズり何がバズらなかったかを検証すれば、半年あれば何かが当たって軸ができる、というのが飯田氏の考えだ。

投稿先はThreads、X、Instagram、YouTube、TikTokのすべてで、打席に立つ機会を増やす。飯田氏は、バズによるホームラン1本の効果が非常に大きいと説明し、ホームランを打つ確率がゼロの投稿は出さず、そのうえで投稿数を増やして100投稿ほど行うという。どこで、どうやって、誰がやるかまで設計するので何かしらはバズるはずで、半年でバズらなければ無料延長する、と飯田氏は話す。島袋氏は、Xで3年ほど前に出した内容がThreadsで遅れてバズることもあると応じ、自分でも手が回っていない媒体があると納得した様子だった。

募集は10社限定で、すでに埋まっており、次は7月以降になるという。KPIは最初に決め、商品の売上が重要な会社であれば、フォロワー保証ではなく売上のKPIを設定して伴走する。コミュニティ入会が目的の場合は、ファン向けの「ハブコンテンツ」が中心になりフォロワーは増えにくいため、話し合いながら進めるという。

台本を書いてもらうと、ノウハウは話しやすくなる

島袋氏が、M&A BANKのコミュニティ会員を増やしたい場合にはどうするかと尋ねると、飯田氏は、コミュニティで何が得られるか(学びや横のつながり)が重要だとしたうえで、無名であれば「ヘルプコンテンツ」、つまり役に立つ情報を必ず発信すべきだと答えた。30分ほどヒアリングしたうえで台本をすべて書き、ショート動画で出す。会社を売って失敗した話や、起業するときはこうしろといったノウハウを一気に出し、毎日投稿してどれかがバズれば、その派生でコンテンツを増やしていく。

島袋氏は、イメージはつくが1人でやるとなると意外とできなさそうだと話した。飯田氏も、ノウハウ系は自分から「俺はこういうやり方だ」と語ってもあまり受けず、台本を書いてもらった方が話せることが多いという。島袋氏は、自分では知っているが商品価値があるとは思っていなかったと応じた。相性が良い層として、専門家、ベテラン経営者、変わったキャリアを持つ人が挙がった。

SNSは採用に効く、というのが飯田氏の実感

飯田氏は、人材募集をKPIにする会社も多いと話す。社風を伝えるコンテンツや、女性タレントをキャスティングして会社の研修を受けさせたり社内に潜入させたりする企画が最近流行っており、それで応募が増えることもあるという。

飯田氏によれば、SNS経由の採用は求人費がかからないうえ、応募者が会社のことを知った状態で来るため、ミスマッチによるトラブルになりにくく、社風を理解しているので即戦力になりやすい。研修の手間が省ける点が特に評価されているという。新会社のナンバー2は大阪大学出身のキャリア志向の人材で、以前の会社(ライバー)時代なら仲介料を400万円ほど取られていたはずだと飯田氏は見積もる。島袋氏も、M&A BANKで「うちで働きたい人」を募集すると応募が来ると認め、同席しているスタッフも4年働いていると話した。

経営者は月100万円以上をSNSに使っている

飯田氏は、今や多くの企業がSNSに月100万円以上を使っており、伸びている令和の経営者は300万〜400万円を平気で使っているとの見方を示した。名前を挙げた経営者の中には、SNSや個人のプロモーションに1000万円以上使っている人もいるのではないかと推測している。

島袋氏は、以前Xに「新入社員に投資せずYouTubeに投資して本当に良かった」と投稿したところバズったと振り返り、フォロワーは辞めずに資産として残ると語った。飯田氏も、SNSは資産として残り、名刺代わりにもなると応じる。相談を受けたときに相手がSNSをやっていないと「何者か」が分からず面倒に感じてしまう、少しでもやっていると信頼できる、という実感を話し、まだ遅くはないのでお金をかけるべきところだと述べた。

顧問業の中身と、解約された3社

M&A BANK視聴者向けの特典として、初回面談で契約すれば、通常月30万円の飯田顧問を付けるという話も出た。顧問業は始めて1年弱で、解約は3社だけだという。1時間の中で人脈を紹介したり、会社の状況を整理して一緒にPLを書いたりする。島袋氏が「さっきPLを分かっていなかった」と茶化すと、飯田氏は、他人の会社なら客観的に見えるが自分の会社には熱や思いがあると返し、実際にそのPLで調達もできたと話した。

最も評価されているのは人脈の紹介だという。例えば地方のメーカーが東京の顧客にアプローチできない場合、飯田氏が先方の社長を知っていればトップダウンでつなげられる。ただ会うだけでは仕事にならないので、相手が何に困っているかまで把握したうえで、1時間で一緒に提案書を書いてつなぐ。新規事業を立ち上げてキャスティング会社に月1000万円ほど払っていた会社には、1時間でインフルエンサー10人ほどをつないだ。仲介料は取らず、双方にとって得になる形を考えて紹介しているという。

解約の理由も明かされた。1社は飯田氏側から断ったもので、親の遺産で契約したバンドマンが「売れたい」と望んだが、1時間で売れさせるのは責任が重すぎると判断した。1社は、1時間で飯田氏を広告素材として撮影し終えると解約した。もう1社は、1時間の枠を超える依頼が多く、ミスマッチとして終了した。

締めくくりに島袋氏は、今回は飯田氏が誤った伝え方で信用を毀損してしまった回だったとまとめ、会社は倒産していないことを改めて強調した。