『タイタニック』は「浮かぶ階級社会」をどう描いたか 岡田斗司夫が読み解く前編の見どころ
岡田斗司夫金曜ロードショーで『タイタニック』が2週連続、前後編に分けて放映されるのに合わせて、岡田斗司夫ゼミ第393回(2021年5月2日配信)を再編集した解説である。岡田は、この映画を青春映画や恋愛映画として楽しむだけでなく、船そのものが抱えていた階級社会の構造を知ると、画面の隅々にまでその描写が仕込まれていることが分かると語る。1/50スケールの切断模型や船の平面図を使いながら、実際のタイタニック号沈没事件と映画の場面を突き合わせていくのがこの回の中心だ。
岡田はこの映画を、映画史上最大のヒットを記録した1990年代を象徴する大作と位置づける。ジェームズ・キャメロンは人気があり作品も当たるが、社会的な評価や権威とは無縁だと思われていた監督で、その人物がアカデミー賞を大量に獲得した作品だという紹介から話は始まる。本人はこの2、3週間で「すごいタイタニックオタクになってしまった」と語っており、説明しすぎないよう短くすると言いながら、細部の解説が続く。
「浮かぶ宮殿」と呼ばれた船のもう一つのあだ名
タイタニック号は全長約270mの船で、同型船にオリンピック号とブリタニック号があった。岡田によれば、タイタニック号は沈没し、ブリタニック号も第一次大戦で沈み、オリンピック号は事故ばかりでまともに動かず、最終的に3隻を保有していたホワイト・スター・ライン社を倒産させてしまったという。3隻とも役に立たなかったというのが岡田の要約である。
公式には「浮かぶ宮殿(フローティング・キャッスル)」「沈まない船」と呼ばれていたが、もう一つ、ささやかれていたあだ名が「浮かぶ階級社会」だったと岡田は紹介する。1等客室は非常に豪華で、そこにはアメリカで成功した成金、いわば「にわか貴族」たちが乗っていた。当時、彼らの間では、移民してくる前の故郷ヨーロッパに里帰りしてステータスを上げ、アメリカに戻って「ヨーロッパに帰ってきた」とアピールするのが流行っていた。だからアメリカとヨーロッパを高速で結ぶ客船が強く求められていたのだという。
模型で示された配置では、Bデッキの大きな窓のある部分が特に大きな客室で、グッゲンハイム美術館で知られるグッゲンハイム家の当主のような富裕層が乗っていた。彼らは「地上で自分たちが住んでいる以上の贅沢をしませんか」という宣伝文句に惹かれて乗船した。一方、船の最も低い窓のあたりには、アメリカン・ドリームを夢見る移民たちがいた。ヨーロッパで仕事もなく、生まれつきの身分制度で差別されてきた人々が、なんとか払える運賃でアメリカを目指したのである。
巨大さが生んだ二つの現象
岡田は、タイタニック号の巨大さが二つの現象を同時に生んだと説明する。1等の客には、プール、サウナ、スポーツジムなど何でもそろった豪華な設備を用意できた。一方、3等では、その広さゆえに大量の人を乗せることができた。3等の客室は4人部屋や6人部屋ばかりでぎゅうぎゅうに押し込まれていたが、人数が多いぶん1人あたりの料金は比較的安くなった。現在のファーストクラスとエコノミークラスのような差が一つの船の中に生まれ、アメリカへ移民しようとする最下層の人々と最上流階級の人々が同時に乗る「不思議な世界」になった。これが「浮かぶ階級社会」と呼ばれた理由だという。
格差は乗客だけでなく乗組員にもあった。Aデッキ前方は船長や1等から5等までの航海士といった士官の専用区画で、スーツにネクタイ姿の人々が働いていた。一方、船首や船尾のクレーンがある危険な場所や甲板磨きは、ホワイト・スター・ラインの正社員ではなく、派遣会社に登録した水夫たちが担っていた。Dデッキの1等食堂で演奏する楽団員たちは、船乗りが集まる町リバプールのカフェで登録し、腕の良さそうな者が指名されて乗船したという。
さらに船底では、もっと低い身分の人々が働いていた。当時のイギリスには失業者があふれており、彼らはホワイト・スター・ライン系列の石炭会社などに、仕事があるたびに事務所の行列に並んで臨時雇いの職を得た。イギリス中から馬車や徒歩でアイルランドのベルファストまでやってきて、船の一番底で釜焚きをする。汗まみれで石炭をくべ、6基の巨大なボイラーを200度から300度ほどの高温高圧の状態に保っていたと岡田は語る。まさに階級社会の天国と地獄だという。
乗船者数が正確に分からない理由
乗船者は「2200人以上」とされるが、岡田によれば正確な人数は分かっていない。途中のフランス・シェルブールで乗船した貴族たちは使用人を連れていたが、その使用人の名簿がないからだ。アメリカ人は使用人まで名簿に載せていたのに対し、フランスなど本場の貴族は使用人を人間と思っていないので名前を載せなかった、と岡田は説明する。その結果、何人乗っていたのか分からないままになっているという。
なぜ日本でヒットするか不安だったのか
岡田は、ジェームズ・キャメロンが『豪快映画学』という本(参考資料が多いため詳しい紹介は翌週に回すとしている)に収められた公開前のインタビューで、『タイタニック』が日本でヒットするか正直不安だと語っていたことを紹介する。アメリカ、ヨーロッパ、カナダではタイタニック号の沈没は単なる事故ではなく、象徴的な事件になっている。大規模で悲惨な事故、多数の死者が出た事故なら世界にいくらでもあるが、タイタニックはある種のシンボルとして特別な意味を持つ。それが日本の人には伝わらないのではないか、というのがキャメロンの懸念だった。キャメロン自身は、この事件を「古き良き世界が終わってしまった」ものとして語っているという。
1997年公開のこの映画は3時間14分ある。岡田によれば、この長さが必要だったのは、氷山に衝突してから沈むまでの約2時間40分をまるごと観客に体験させるためだった。冒頭の約20分は現代の潜水艇がタイタニックを映す映像で、ラストの14分も現代に戻り、クレジットも長い。それらを除いた過去のドラマ部分はぴったり2時間40分になっている。キャメロンは、事故が発生してから古き良き世界がどう終わったのかを、実際の時間どおりに映画の中に収めようとしたのだと岡田は言い、「すごい変なこだわりを持った映画」と評している。
乗船シーンに仕込まれた階級描写
ここから岡田は、映画開始から約20分後、1912年4月10日水曜日の乗船シーンを場面ごとに解説する。ホワイト・スター・ライン社の建物が見え、斜めにかかった橋を渡るのが1等の乗客、その下でごちゃごちゃしているのが3等の乗客、はるか向こうに1等・2等用の入り口の橋が見える。身分制度が強調された乗船橋の配置になっている。
1等客はDデッキの専用入り口から乗船し、エレベーターや名物の大階段を使って自分の客室へ案内される。荷物は別の入り口から貨物室へ直接運ばれる。一方、下の桟橋に集まっている人々はみな労働者階級特有のハンチング帽をかぶっている。当時のイギリスの階級社会では服を見ただけで身分が分かったので、欧米の観客はこのシーンを見ただけで階級がピンとくるらしいが、日本人にはそこが分かりにくいと岡田は指摘する。後にジャックとローズがデートする自動車の積み込みシーンについては、実際にこのタイプの自動車が積み込まれる記録写真が残っており、同じ車を探し出して撮影したそうだと紹介している。
船が出航する場面では、1等客ばかりのベランダをカメラが通り過ぎると、いきなり3等客が見えてくる。このワンカットのパンで階級社会を見せているのだと岡田は言う。家のテレビではそれほど感じないが、劇場で観たときは、服も色味もまったく違う人々が全員仲良く手を振って「行ってきます」と言っている光景に「うわっ」と衝撃を受けたという。本来は劇場で観るべき映画であり、それはキャメロンの映画全般に言えることだとも付け加えている。
「モーリタニア号と同じじゃない」というマニアックな台詞
3等客は2時間前に来るよう言われ、1等客は1時間前でよいとされていたため、ローズたちは出発直前に到着する。17歳のローズの初登場の台詞は、婚約者キャルに「タイタニックだ、素晴らしいだろう」と言われて返す「モーリタニア号と同じじゃない」というものだ。
岡田によれば、モーリタニア号は民間の最速船に与えられるブルーリボン賞を獲得し、23.7ノットの記録を持っていた船で、タイタニックは何としてもその記録を破らなければならないという使命を負っていた。さらに、前年1911年のクリスマスにモーリタニア号で渡航する予定だったが故障で運航できなくなったとして、岡田は、ローズたち一行はモーリタニア号をキャンセルし、4か月後の、より大きく豪華で世界最速とされたタイタニック号を選んだという設定になっているのではないかと推測している。
モーリタニア号は「海の貴婦人」と呼ばれ、4本の煙突が特徴だった。岡田によれば、それがあまりにかっこよかったため、タイタニック号も本来3本で足りる煙突に、バランスのために4本目のダミーを付け加えたというエピソードがあるほどだという(ダミーとはいえ機関室の排気を出す役割はあったと補足している)。だからローズの台詞はタイタニックマニアの間では「よくぞ言ってくれた」と手を打つギャグなのだが、「分かるかって話ですよね」と岡田は笑う。キャメロンはこの映画で、高畑勲のように「これぐらい分かって当然でしょ」というシーンをどんどん入れてくる悪い癖が出ている、というのが岡田の評価である。
手袋越しに手をつなぐ二人と、3部屋続きのスイート
3等客が早く来て並ばなければならないのは、虫歯やシラミのチェックがあったからだ。髭まで櫛でとかされ、シラミがいないか調べられた。家族連れと女性は前方、男性は主に後方に乗せられた。当時のイギリスは身分差だけでなく、男女が不用意に接触することを非常に嫌ったためだという。ジャックは3等客ではあるが、シラミをチェックされる移民とは扱いが違う、と岡田は区別している。
ローズたちが1等専用の長いブリッジを渡るショットは、1等用、荷物用、はるか向こうの3等用の細い橋まで、すべての入り口が見渡せる「ベストショット」だという。ほかの1等客は手ぶらで乗り込み、荷物はクレーンなどで別の入り口から入れるのに対し、キャルたちはメイドとボーイに荷物を持たせて入ってくる。スイートを予約した特別待遇であり、彼らが特権階級だと分かる演出だと岡田は読む。
キャルが身につけている山高帽、必要もないのに持つ木のステッキ、革の手袋は、晴れた日の乗船には不要なもので、上流階級のシンボルだ。ローズとは手をつないでいるが、互いに手袋をした状態で、特にキャルは革の手袋越しである。これは実は心が通じていないという距離感を示すための演出だと岡田は解釈している。
キャルたちの部屋はBデッキ52・54・56のスイートルームとされる。岡田によれば、タイタニックは調査が進んでいるため架空の人物を乗せる余地がなく、マニアのキャメロンは嘘をつきたくなかった。最上級のスイートは左右に一つずつしかないが、そのうち一方は偶然空いていた。船のオーナーであるイズメイが営業のため3部屋を借りて展示会やパーティールームにする予定だったところ、上位のオーナー会社のモーガンが「俺が乗る」と言い出し、イズメイが譲った。ところがモーガンは直前に理由不明のままキャンセルし、これが後に陰謀論を呼ぶ原因にもなった。この空き部屋を見つけたキャメロンが大喜びで主人公の部屋に設定したのだという。平面図では、大階段を上がってすぐの場所にあり、専用のプロムナード(ベランダ)から直接入れるうえ、廊下へ出る出口もある。映画の中盤、ヌードスケッチの後に追われたローズが「こっちからも出られるのよ」とジャックの手を引いて逃げるルートがそれで、実際にセットを組んだキャメロンが「このドアが使える」と発見してドラマに取り入れたシーンだと岡田は説明する。
ジャックの部屋と、港の限界
19歳のジャックは出航直前にギャンブルで3等のチケットを手に入れる。3等の入り口は船の下の方にある穴のようなもので、シラミ検査を受けたかと怒られ、移民ではなくアメリカ人だとアピールする場面がある。Eデッキから入ってGデッキまで下り、独身男性がほとんどの区画へ向かう。岡田は図面とジャックの歩くルートを確認し、船尾近くの4人部屋、G60がジャックの部屋だと推定している。
ここで岡田は、男女の区別に厳しい階級社会の名残として、昔の日本のデパートで男女のトイレが別のフロアにあったことに触れる。男性がトイレに入るところを女性に見られてはならない、その逆もありえないという考え方で、デパートはもともと階級社会の象徴のような場所だったと語り、古い店にはまだその名残があるという。
出航時、スクリューが回転すると海底の泥が巻き上がるシーンがある。岡田によれば、停泊していたサウサンプトンの港でもタイタニックはサイズの限界ぎりぎりで、船底が海底をこすりそうだったからだ。こんな巨大な船が作られるとは思われておらず、タイタニックが停泊できる港はほとんどなかった。港湾設備が追いついていなかったのであり、逆に言えば、この規模の鉄の船を誰も作ったことがなかったからこそ悲劇が起きた、と岡田は語る。船はその日のうちにシェルブールへ寄り、翌4月11日木曜日の昼ごろ、改めて大西洋へ向けて出航する。沈没まであと3日である。
「アイム・キング・オブ・ザ・ワールド」とアカデミー賞の失敗
大西洋に出たところで、ジャックが船首に立ち「アイム・キング・オブ・ザ・ワールド」と叫ぶ有名な場面がある。岡田は4月11日の午後2時ごろと見ている。ジャックにとってタイタニックは、自由の国に憧れて向かう船ではなく、故郷アメリカへ「帰る」ための希望の船だった。19歳の彼は2年ほどヨーロッパを放浪したが画家にはなれなかった。岡田はこれを、2年浪人した末にようやく大学に入って東京へ向かう19歳の「痛い男の子」にたとえている。
この台詞について岡田は、キャメロンがアカデミー賞で監督賞を受けたとき、受けを狙ってスピーチで同じ台詞を叫んだエピソードを紹介する。普通は感謝やスタッフへの賛辞を述べるところで「待ってただろう」とばかりに言った結果、会場はドン引きで、そのときのキャメロンの表情が非常に面白いという。その後、作品賞を受けに再び登壇したときは下を向いてしんなりした様子で、タイタニックで亡くなったすべての人に黙祷を捧げたいと言ってバランスを取ろうとした。キャメロン自身も『豪快映画学』のインタビューで、あれは大滑りでパニックになった、本当にへこんだと話しているという。
17歳のローズにとっての「奴隷船」
一方、17歳のローズもアメリカ人だが、落ちぶれた名家の娘である。ヨーロッパで箔をつけ、そこでアメリカ人の婚約者キャルができたが、彼は成金で教養がない。財産目当ての結婚をさせられるため、ローズはこの船を「奴隷船」と呼ぶ。ヨーロッパで得た社交界や教養はすべて無駄になる。岡田はこれを、居心地のいいハイセンスな全寮制の女子校に入って青春が始まったと思ったら、2年生の夏休みに学校をやめさせられ、田舎の乱暴で教養のない男のところへ嫁に行けと言われるようなものだとたとえる。張り切る浪人明けの青年と、落ち込む少女が出会う話なのだという。
4月11日の夕暮れ、船尾の3等甲板で前ばかり見ていたジャックがふと振り返ると、1等のベランダの端で去っていくヨーロッパを見つめる少女がいる。過去だけを見ている悲しげな少女に一目惚れする場面だ。模型で見ると、2等甲板はごく狭く、ベランダのほとんどは1等で、ローズはその角に立っている。3等からちょうど見える、一目惚れするのに最適なビューポイントに二人がいるのだと岡田は言う。
こうしたショットが可能だったのは、キャメロンが映画を作る前に7.5mの模型をスタッフに作らせ、ビデオカメラでいろいろな角度から撮って検討したからだと岡田は説明する。いわゆるプレビズであり、庵野秀明が『シン・エヴァンゲリオン』でやったことの元ネタは、1995年にキャメロンがやったことだと岡田は主張する。メイキング映像やその後の樋口真嗣の映像などを見るとつながるとして、証拠の話は翌週に回すとしている。
タバコが結ぶ出会いの偶然
ローズは毎日、くだらない会話と表面だけのおしゃべり、退屈なのにマウントばかり取ってくるキャルに絶望していた。1等食堂で船のオーナーや設計者と食事をする場面で、ローズはタバコを吸う。岡田によれば、パリの社交界やイギリスの上流階級の婦人はタバコを吸うのが普通だった。ところがアメリカは、腐敗したヨーロッパ文化から逃れたピューリタンたちが作った国なので、金持ちは増えても文化的には保守的だった。母親は「アメリカに帰るのにタバコなんか吸っていたら男の人に嫌われる」と叱る。
絶望したローズは発作的に階段を下り、3等甲板を通って船尾から身を投げようとする。後ろへ向かうのは、ヨーロッパに帰りたいという思いの表れだと岡田は読む。ところが船尾は3等客の喫煙場所だった。船内は基本的に禁煙で、1等客だけが船内で吸うことを許されていた。だから1等食堂でローズが吸えるのも階級を見せる描写であり、叱られるのはアメリカの保守性の説明であり、船尾に走るとそこが3等の喫煙所で、屋外のベンチでタバコを吸っていたジャックと出会う。岡田はこれを、タバコという伏線を重ねた偶然の構成だと解説しつつ、「タイタニック号の船尾が3等の喫煙場所なのはみんな知ってるだろう」とキャメロンは観客をマニアだと思いすぎている、と笑う。
碧洋のハートとルイ16世
自殺未遂が表沙汰にならないよう、足を滑らせて落ちかけたローズをジャックが助けたという嘘がつかれる。キャルは怒るが、周囲から紳士としての振る舞いを求められ、ジャックを翌日のディナーに招かざるをえなくなる。マナーも知らず、ろくな服もないだろうから恥をかかせてやろうという思惑である。
キャルは、自分の妻になる女に恥をかかせるのかと言いたいのをこらえて、ローズにハート型の巨大なブルーダイヤモンド「碧洋のハート」を贈る。ルイ16世もつけたダイヤだと言うが、ギロチンで処刑された王の持ち物で縁起がいいはずがない、というのがローズの微妙な表情の意味だと岡田は読む。それでもあまりに大きく美しいダイヤに、下品なキャルを嫌っているローズも息をのみ、態度が少し変わる。まだ一度もベッドを共にしていないキャルは、これで落としたと安心する。揺れる女心を見せる場面だという。
服装が示すもの、スケッチブックが示すもの
4月13日土曜日の朝、ジャックはローズに招かれて1等のプロムナードデッキを一緒に散歩するが、前夜のダイヤで自分の気持ちが分からなくなったローズは苛立ち、二人は口論になる。ここでのジャックの浮きぶりについて、岡田は服装から説明する。サスペンダーやシャツは本来下着で、上流階級にとって下着も肌も人に見せるものではない。キャルが乗船時に帽子と手袋を身につけていたのも、できるだけ皮膚を見せないのが上流の振る舞いだからだ。
では、なぜ上流の女性は胸の開いたドレスを着るのか。岡田によれば、それは「こんなドレスを見ても自分は興奮しない、理性的だ」という男性側のアピールのためだった。男性は宇宙服のように肌を隠し、女性は舞踏会などで挑発的な格好をしても、男性は動物のように振る舞わない。ハリウッドのパーティーで女性が肌を大きく見せるのも本来はその文脈だが、テレビで中継するから話がおかしくなる、と岡田は語る。
口論の中でローズはジャックのスケッチブックを取り上げ、才能に驚く。印象派やキュビズムを理解せず、ローズの買ったピカソなどの絵をクズ呼ばわりする婚約者(岡田は、キャルに分かるのはノーマン・ロックウェル止まりだと言う)より、この貧乏な青年のほうがいいのではないか。ジャックの株が上がった瞬間だという。
「宝石の女」にならないための3時間
スケッチの中に、パリのカフェにいた老婆の絵がある。ありったけの宝石で着飾り、帰らぬ恋人をずっと待っているという。ローズは「あなたには人を見抜く才能があるのね」と言う。岡田はこれを映画全体の伏線であり鍵だと位置づける。最終的に世界一のダイヤを持ち、海で死んだジャックをいつか帰ってくるかもしれないと待ち続け、自分のせいだと嘆き続ける——ローズはこの「宝石の女」になっていたかもしれない。3時間を超える映画の尺は、ローズがそんな女にならないためのものなのだ、というのが岡田の解釈である。
ジャックは「君もだ」と返し、君は自殺するような女じゃない、たとえば馬にまたがって乗るような女だと言う。ローズは女が馬にまたがるなんて考えられないと驚く。次のカットでは、母親が友人に「女にとって大学は結婚相手を探す場所よ」と話している。岡田は、ローズは母に逆らっているようでいて価値観は母親譲りだと指摘する。後に母親が泣き出す場面があり、岡田はそこで、母親もかつては新しい価値観を持ち、女だって何でもできると思っていたのを抑えてきたこと、それを娘に強いるのがどれほどつらいか分かっていても、女の生き方はこれしかないと言うのだと読み、この場面はその伏線になっているとする。
しかし映画の最後でローズの人生は変わっている。100歳を超えたローズが眠るラストで、カメラが周囲の写真を一枚ずつ映していく。そこには大学の卒業帽をかぶった写真があり、母の呪いから解き放たれたことを示す。さらに飛行機に乗り、アフリカ探検に行き、最後に映るのは馬にまたがって笑うローズの写真だ。岡田は、「結局はジャックを見捨てて一人生き残った女の話だ」というシニカルな見方を否定し、ローズはジャックが「君は本当はこういう人だ」と言ったとおりの人生を生き、それをすべて成し遂げたのであり、それがジャックとの誓いだったと語る。母の呪いや古い世界から抜け出すのは当時非常に難しいことだったが、やりがいのある人生だったというのがこの映画の語るところだという。
キャメロンは20世紀フォックスへの企画説明で、予算も手間もかかるので反対されると考え、「タイタニック号という海の上の階級社会で、ロミオとジュリエットが出会う」と言って通したとされる。岡田は、その枠組みだけなら大味だが、キャメロンはそれを単なるヒロイックな悲恋で終わらせず、その後のローズの人生を写真で見せることで、何のための物語かを語っているのだと評価する。
裏で進む速度記録への執着
こうした場面の裏で、オーナーのイズメイは船長に、故障している最後のボイラーも焚けと命じる。岡田によれば、ホワイト・スター・ライン社も倒産寸前で、最速で大西洋を横断すれば4月17日水曜日の午前中にニューヨークに着く予定だった。ニューヨークの印刷所にはすでに「タイタニック、ブルーリボン賞獲得、世界最速」という新聞記事の印刷を発注していたという。
岡田は、ボイラーの「故障」は正確には火災だったと補足する。試験航海の段階で一つのボイラー周辺が火事になり、その火が石炭庫の石炭に移ってまだ消えていない状態だった。本来は閉鎖すべきところを、最高速度を出すために動かせと命じたのだという。スミス船長は微妙な表情をしながらもOKを出してしまう。岡田はスミス船長を、この船長が乗るなら乗るという「太客」を多く抱えたナンバーワンホストのようなカリスマだったと説明し、これが最後の航海で、引退記念に世界最大の船で最高速度を出したいという、シャンパンタワーの新記録を作りたいホストのような誘惑に勝てなかったのだと語る。目指すはモーリタニア号の23.7ノット超えである。
前編の無料部分は、4月13日の夜、美しい夕焼けの中を進むタイタニック号の場面で終わる。キャメロンは、船がいかに素晴らしく美しいかを見せてから悲劇を語りたかったのだと岡田は言う。
西洋人にとってタイタニックが特別な七つの理由
動画の最後で岡田は、西洋人にとってタイタニックがなぜ特別なのかを改めて整理する。この事件で世界が変わったわけでも、歴史の転換点になったわけでもなく、大きな影響を与えたわけでもないのに重要な事件として扱われる。その理由を岡田は、さまざまな切り口で語れる便利な題材だからだとし、七つ挙げる。
- 当時最先端の造船技術で作られた大型船が短時間で無残に沈んだという、船の事故としての特異さ
- 誰が悪かったのかというサスペンス的な切り口があり、設計者を含む関係者の多くが死んだのに、原因が案外分かってしまっている面白さ
- 当時の階級社会の縮図であったこと
- 世界最大の客船として、部屋割りを見るだけでも楽しい乗り物としての面白さ
- 成金がヨーロッパへ帰るブームと、アメリカへ渡ろうとする貧しい移民の両方が乗っていたという、船の動き自体が当時の社会の動きを表していること
- 紳士たちが女性と子供を優先して逃がし、自らは死を受け入れたという、嘘っぽいが本当の美談があること
- これらの切り口で散々語られてきたために、誰もが知っている題材になったこと
岡田は、日本でこれに近いものとして昭和の時代の「忠臣蔵」を挙げる。赤穂浪士の討ち入りで日本の歴史が変わったわけではないが、ドラマとしても犯罪としても面白く、主君への忠義のために切腹を覚悟で行動した侍の時代の終わりとしても描かれてきた。ただ今の若い人は忠臣蔵を知らないだろうとして、時代を代表していろいろなことを語れる題材は、世界全体なら9.11、日本ならコロナ騒動や3.11の東日本大震災になるのではないかと述べる。そして、欧米でもタイタニックを知らない人がどんどん増えているそうだと付け加え、「いかんことです」と話を締めくくっている。
明日の金曜ロードショーでですね、ジェームズ・キャメロン監督、レオナルド・ディカプリオですね。もうこれ言いにくい名前。ディカプリオ主演のですね、映画『タイタニック』が放映されるんですけども、しかもですね、これ今週だけじゃないんですね。2週連続、前後編に分けてのですね、放映になります。というわけでですね、このチャンネルでもですね、2週間連続でですね、前後編に分けて解説動画をアップします。
おはようございます。岡田斗司夫ゼミです。『タイタニック』って言ったらですね、多分その40代以上の人には、もう言うまでもない超有名映画ですね。青春映画として楽しんだ人も多いと思います。でも全然知らないって人もいると思います。これね、すごく簡単に言うとですね、映画の歴史上最大のヒットを飛ばした作品なんですね。で、アカデミー賞をですね、総なめにしたジェームズ・キャメロンという監督はですね、人気はあるし映画は当たるんだけども、評価、社会的な評価とか権威とは無縁だと思われた監督なんですが、その人がですね、アカデミー賞をいっぱい取っちゃったっていうですね、1990年代をですね、象徴する超大作映画であります。
今回のですね、解説ではですね、そんな映画『タイタニック』のですね、話をしながら実際のですね、タイタニック号沈没事件ですね、これについてもですね、詳しく解説していきます。この動画ですね、2021年のですね、5月2日に配信したですね、岡田斗司夫ゼミ第393回をですね、再編集したものです。動画が終わった後にもですね、追加のアップグレード情報あるので楽しみにしてください。それではここから無料動画スタートです。
じゃあ始めましょう。金曜ロードショーでですね、やる『タイタニック』ですね、今日はもう全編をですね、お送りします。無料でやるのはですね、「浮かぶ階級社会」「出航」「運命の出会い」ここまでになってるんですけども、では話していきましょう。
これタイタニック号です。大体全長270mある船なので、1/50スケールの模型ですね。簡単な模型です。で、同型艦にですね、オリンピックとブリタニック号っていうのがありました。全部最後に「ック」をつけるのがこの会社のですね、好みらしくてですね、タイタニックは、ご存知の通り沈没しました。ブリタニックもですね、第一次大戦でですね、沈没して、オリンピックは事故ばかりでですね、全然動かなかったのでですね、ついにですね、保有してきた会社のホワイト・スター・ライン社をですね、倒産させてしまったっていうことなんですけども、3隻全部ね、役に立たなかったんですね。
あだ名はですね、「浮かぶ宮殿」という風に公式には言われてましたね。フローティングキャッスルですよね。あと、沈まない船っていう風にも言われてました。でももう1つのですね、割と囁かれてたあだ名がですね、「浮かぶ階級社会」っていう風に言われてたんですね。もう金持ちや貴族が乗る一等客室があってですね、そこはものすごい豪華だったからなんですよ。
アメリカで成功した成金の、にわか貴族もどきの人たちですね。その人たちはですね、自分たちが移民してくる前の故郷のヨーロッパに帰ってですね、で、そこでステータスをですね、上げるっていうのがめちゃくちゃ流行ってたんですね。里帰りしてですね、アメリカにもう1回帰った時にヨーロッパに帰ったんだと、家に帰ってきたんだぞとアピールするのが流行った。なのでアメリカとですね、ヨーロッパの間を高速で移動するですね、客船がすごい望まれてたんですよね。それなんですよ。
で、この1番上のAデッキですね。このAデッキっていう部分はですね、船員専用なんですよ。で、船員専用なんですけど、このここら辺あたりは1等のですね、お客さんのうろうろできるところですね。で、2等はこの後ろの方になってきて、なんかね、ボートとかがあって、これちょっと上から見ないと分かんないですけど、非常用のボートとかがあって、割と見通しが悪いところなんですね。ここら辺が2等で、1等はもう本当にここ1番いいてっぺんのところとかですね。
ここら辺でこの下のですね、Bデッキですね、窓があるところ、これがですね、すごい大きい客室になっていて、ここがですね、なんだろうな、グッゲンハイム美術館で有名なグッゲンハイムの当主とかですね、成金の人たちが乗るところです。彼らはですね、浮かぶ宮殿の上で、地上以上の贅沢をしませんかと。地上で自分たちが住んでいるところ以上の贅沢をしませんかという風に宣伝に言われてですね、乗ってきたわけです。
しかしですね、この船の1番下の窓あたりですか、これ辺ですね、デッキと言われてる辺りなんですけども、ここはアメリカンドリームをですね、夢見る移民たちですね。ヨーロッパ世界にですね、もう仕事もなくて生まれつきの身分制度に差別された人たちでですね、それでもなんとか乗れる金額だったんですよね。で、それで新大陸アメリカに行こうという風に考えたわけです。
つまりタイタニック号っていうのはこの巨大さ、この巨大さゆえにですね、2つの現象が生じた。何かというと一等の客室、一等のお客さんにはですね、ものすごい豪華な設備を用意できたわけですね。もうプールもあるし、あとサウナもあるし、あとなんだろう、スポーツジムもあるし、本当に何でもあったんですよね。一等のお客さんはその広さ、豪華さを楽しめた。
しかしですね、3等のお客さんにはですね、その広さゆえにめちゃくちゃたくさん人が乗れたんですよ。3等の客室ってものすごい狭いんですよ。もう4人部屋とか6人部屋ばっかりなんで、そこにギチギチに押し込まれたんですけども、それでもですね、大量に人が乗れたのでですね、1人当たりの料金が割と安かったんですよね。だから本当に今のファーストクラスとエコノミークラスみたいな差ができてしまったわけですね。
それのおかげですね、タイタニックというのは1つの船の中に最下層の、そのアメリカに移民しようとしてる人たちですよね、とですね、最上流階級の人たちとがですね、同時に乗る不思議な世界になったんですね。これがもうその「浮かぶ階級社会」と言われた理由です。
で、この格差っていうのはですね、客だけじゃないんですよね。乗員、乗組員にもあったんですよ。例えばですね、このAデッキですね。このAデッキちょっと、このままやってみようか。このAデッキの1番上ですか? ここら辺っていうのはですね、士官たちなんですよ。船長とかオフィサーと言われる1等から5等船員までのですね、専用区画ですね。もうスーツ着てネクタイ締めてるような人たちです。その人らここら辺で仕事してるんですね。大体このAデッキの前の方で仕事してるんですね。
で、ところがですね、この1番前のクレーン付いてる部分。これ簡単な模型ですからクレーン付いてませんけど、クレーン付いてる部分とかですね、あとこの1番後ろのこのクレーンついてるこういう危険な部分ですね。あと甲板磨きとかはですね、派遣会社に登録していたですね、水夫たちがやるんですよ。正社員じゃないんですね。ホワイト・スター・ラインの正社員じゃなくて、派遣会社に登録されてる水夫たちが働いてるんですよね。
で、あとですね、もうちょっと細かく言うと、よいしょ。あ、今落ちちゃったな。これ模型なんですけども、Dデッキですね。A、B、C、Dデッキ、Dデッキのこの辺り、この辺りにはですね、1等の食堂があるんですよ。で、一等の食堂があるんですけども、そこはですね、楽員たちが、つまり演奏、音楽の演奏する人たちが働いてるんですよね。
で、その楽員たちはですね、リバプールのカフェで自分たちを登録して、リバプールって船乗りがいっぱい集まる町があってですね、そこでですね、楽団員たちが登録して、で、そこで演奏やってるんですよ。で、うまそうなやつはですね、指名されて、で、音楽家としてですね、タイタニックに乗船するという風になってます。
で、さらに下のこの船底ですね。この船底の辺はこの辺ですよね。船底の辺っていうのはですね、もっと低い身分の人たちが乗ります。えっと、失業者がね、当時イギリスはですね、溢れてたんですけども、行列を作って仕事にありつこうとしてました。で、行列ですね、ホワイト・スター・ラインの系列会社の石炭会社とかですね、そういう風なやっぱ派遣会社に登録して、で、それもあらかじめ登録するんじゃなくて、仕事があるたびに行列に、本当に事務所に並ばなきゃいけないんですね。で、イギリス中からですね、馬車とか徒歩でアイルランドのベルファストまでですね、旅行して、で、船の1番底に乗り込んで釜焚きの仕事をするっていうですね、臨時のバイトをやるんですね。
で、彼らはですね、汗まみれで石炭をくべて、巨大なボイラー6つ、この1番底にあるボイラー6つをですね、常に200°以上です、200°から300°ぐらいの高温の、沸騰、高温高圧の沸騰状態にしていたという風に言われてます。まさにですね、階級社会の天国と地獄ですよね。
それらの人々全員で2200人以上っていう風に言われてんですけども、2200人以上載せた浮かぶ階級社会ですね。なんで2200人以上って曖昧な言い方をするのかって言うと、実はですね、人数正確に分かってないんですよ。っていうのは途中、フランスのシェルブールとかでですね、載せた貴族の人たちがですね、使用人も一緒に載せてるんですね。で、その使用人の人たちの名簿がないんですよ。だから人数に入ってないんですね。本当はそのアメリカ人はね、面白いことにその使用人までちゃんと名簿載せてるんですけども、フランスとかその本場の貴族たちは使用人を人間と思ってないから名簿に名前載せてないから、結局何人乗ってたのかわかんないままだったんですよね。
そういう浮かぶ階級社会がですね、2200人乗せたのがですね、大西洋のど真ん中で沈んでしまうわけです。
これジェームズ・キャメロンはですね、『豪快映画学』という本の中で、これ来週まとめてとりあえず本の説明します。今回参考資料すごい多いんでですね。『タイタニック』がね日本でヒットするのか正直不安だと。公開前のインタビューだって言ってるんですよね。なんでかって言うと、タイタニック号っていうのはアメリカとかヨーロッパとかあとカナダとかではすごい象徴的な事件だと。シンボルなんだと。単なる事故じゃないと。単なる大規模な事故とか悲惨な事故とか、たくさんの人が死んだんだったらタイタニック以上の事故は世界中にいくらでもあるし、船の事故はいくらでもあるんだけど、タイタニックってそうじゃない、ある種の象徴になってる事件になってると。だからものすごい意味を持ってるんだけども、それ日本の人に伝わらないんじゃないかなっていう風にキャメロンはですね、インタビューで答えてるんですけどもですね、古き良き世界が終わってしまったという風にキャメロンは言ってます。
ジェームズ・キャメロンの映画『タイタニック』はですね、1997年ですね、今から24年前の映画なんですけど、大ヒット映画です。で、3時間14分もあるんですよ。金曜ロードショーで前後2回に分けるぐらいですから、3時間14分もあるんですけどもですね、実はこの3時間14分の尺っていうのは何で必要なのかって言うとですね、タイタニックの沈没時間をまるまる入れるためなんですね。この氷山に衝突してからタイタニックがわずか2時間40分ぐらいで沈んじゃうんですけどもですね、その2時間40分を体験させようとキャメロン考えたんですね。
で、冒頭に20分ぐらいですね、なんだろう、現在のタイタニックを映す潜水艇の映像が入ってて、で、ラスト14分はまたその潜水艇の映像に戻ってきて、現代に戻ってくるんですよ。で、クレジット結構長いんですね。で、その現代の映像を除くとですね、過去のタイタニックの映像、その中のドラマってぴったり2時間40分なんですよ。だから、キャメロンってそのタイタニック号の中で沈没が発生して、何が起きたか、どうやって古き良き世界が終わってしまったのかという2時間40分っていうのをですね、綺麗にですね、映画の中にぴったり納めようとしたんですね。なんかね、すごい変なこだわりを持った映画なんですけどもですね。
じゃあ、最初のですね、出航シーンから説明しようと思います。ちょっと模型見えにくくなるから横に置いとくね。えっと、まずですね、ちょっとこの模型もこっちの方へ置いておこうか。切断模型ってなかなか壊れやすいから怖いんだよね。美術部の人に大急ぎで作ってもらったんだけれども、こんな模型売ってないんですよ。いわゆるペーパートイで売ってる、タイタニックを1回組んでそれを半分に切断したんです。してもらったんですけどね。
乗り込みシーンです。これ、タイタニック号の前景が映ってるんですね。だから映画始まって20分あたりなんですけども、時に1912年4月10日水曜日です。ホワイト・スター・ライン社のですね、建物がここに見えます。ホワイトスターって見えますよね。身分制度が強調された乗り込み橋ですね。この真ん中に斜めになってるのが1等の乗客で、で、この辺でごちゃごちゃとしてるのが3等の乗客ですね。で、はるか向こうにはちょっと、多分ね、1等と2等の入り口の橋が見えてますね。
タイタニックの名物ですね、大階段をですね、これ降りて、こっから下へですね、入っていくんですけども、自分で荷物をですね、持ち込むのですね、入り口がこれで、こっちの方はさらに大きい荷物用なんですけどね。だからほとんどこっちの方が搬入口だと思っといてください。
で、これDデッキっていうとこです。上からですね、Aデッキ、Bデッキ、Cデッキと来て、ここがDデッキなんですけどもですね。これファーストクラス専用の入り口ですね。桟橋の専用ゲートから直に上がれて、そのまま船内のエレベーター使ってもいいですし、名物の大階段ですね。で、自分の客室まで案内されます。で、貨物室に荷物ですね、直接運ばれるので、こっちの方で荷物運ぶのですね、こっちの方がやや小さい口になってます。
で、それに対してですね、この下の桟橋の方にですね、人がぐわーっと集まってるんですけど、この集まってる人達っていうのはですね、みんなこうハンチングって帽子かぶってるんですね。これちょっと後でももっと分かりやすい絵出しますけども、ハンチングの帽子っていうのは労働者階級が被る特有の帽子なんですけども、当時の英国の階級社会、イギリスの階級社会っていうのは服を見ただけで身分とか階級が分かるんですよ。だから1等2等の橋に比べて大勢の人が詰めかけてるっていうこともあるんですけども、やっぱその欧米社会ではこのシーン見せただけで割とね、階級みんなピンと来るらしいんですけど、ここら辺がやっぱちょっと日本人にはわかんない感じですね。
で、3つ目のカットですね。後に2人がですね、デートする、ジャックとですね、ローズがデートする自動車の積み込みシーンですね。で、実際にこのタイプの自動車がですね、積み込まれる写真、記録写真が残ってるのでですね、同じ車わざわざですね、見つけてきて撮影したそうです。で、下に見えるのが、やっぱこうハンチング帽をかぶった3等の客たちですね。
今のですね、説明を絵で見せると、あ、模型で見せるとここになります。これが3等、本当に身分社会でね、見晴らしのいいね、ベランダ全部1等なんですよ。で、2等はこのすっごい狭いところちょこっと使えるだけで、3等ここなんですね。で、3等のこの貨物室の入り口、ここのドアを開けてここにあるクレーンでですね、こう自動車を入れてるところなんですね。3等客って本当にね、前と後ろのね、この1番低いところからしてみ、この前の方は乗務員がやるですね、場所なんで普通入れないんですね。ジャック、ディカプリオはですね、平気でガンガン入ってますけど、基本的にここ入っちゃダメなところです。
で、1番ね、低い甲板からですね、一等客を見上げるような構造になってるんですけども、1番上のですね、Aデッキ前方は士官用ってさっき説明しましたんですけども、なんだろうな。えっと、どういう? まあ、いいや。ここら辺で説明するとね、本当にね、どんどんもうね、俺この2、3週間ぐらいですごいタイタニックオタクになっちゃったんですね。なので、色々説明しすぎてしまうので、短く短くやってみます。
で、いよいよですね、船が出航する直前にですね、主人公がですね、やってきましたですね。で、船がね、出るシーンでですね、ジャック、主人公、ジャックがですね、3等、1番低いところに乗ってますね。で、自分たちより高いところに1等客、2等客が見えてます。で、船が出航するシーンでですね、1等客が見えてますね。で、1等客ばっかりのですね、ベランダを通りすぎるといきなり3等客がこう見えるシーンになってくんですけどもですね、このワンショットでですね、階級社会を見せてるわけですね。
で、これね、やっぱりね、うちのね、何インチのテレビで見てもそんなにおって思わないんですけども、劇場で見るとね、このパン、ワンカットでですね、一等の客、お客さんたちがベランダにいるところからカメラがざっと移動して、3等の客までを見せられるとですね、うわって思ったんですよ。本当に服が違う、で色味が違うっていうのを見せて、でその人らが全員仲良く手を振って行ってきますよっていう風に言ってるシーンがですね、すごいショックだったんですよ。だから本当はね劇場で見るような映画なんですけどね。これ基本的にキャメロンの映画全部そうなんですけども。
で、主人公のですね、ローズが到着、やっとね、登場します。本当に出発直前になって、出発のね、大体ね、3等客は2時間前から来いって言われてて、で、1等客は1時間前で結構ですみたいな感じなんで、本当ギリギリで来るんですけども、ローズですね、主人公の子ローズはですね、17歳です。初登場のセリフが、マニアックでですね、婚約者のキャルっていう、嫌な男にですね、「タイタニックだ、素晴らしいだろう」っていう風にキャルに言われてですね、返したセリフが「モレタニア号と同じじゃない」っていう風に言うんですね。
モレタニア号っていうのは何か、ここ辺がマニアックなセリフなんですけども、タイタニックが登場する前にですね、ブルーリボン賞っていうですね、最速の船に与えられる、民間の船に与えられるですね、賞を取った船で、それがですね、23.7ノットという風に言われてます。そのレコードを持ってたんですね。で、今回タイタニックは何が何でもこのモレタニア号のですね、スピード記録を破らなきゃいけないっていうですね、ミッションを持ってます。
で、前の年にですね、実は、タイタニック号が出航したの1912年のこの4月10日の話なんですけどね、1911年のクリスマスにですね、本当はですね、イギリスからニューヨークをですね、モレタニア号でですね、旅行するはずだったんですよね。で、ところがモレタニア号が故障しちゃうんですよ。なのでおそらくキャルたちですね、このローズたち一行はですね、モレタニア号をキャンセルしたんだと思います。モレタニア号は故障したのでキャンセルして、その代わり4ヶ月後のタイタニック号ですね、こっちの方がより大きくて豪華で世界最速だからという理由で選んだんじゃないのかっていうですね。そういう設定になってると思います。
モレタニア号の写真があるんですけども。よいしょ。おっとと。これですね。海の貴婦人と言われててですね。特徴はこの4本ある煙突なんですね。めちゃくちゃかっこ良かったんでですね、タイタニック号ですね、わざわざこのモレタニア号をそっくりに改造しました。実はですね、タイタニック号のですね、4本の煙突ですね。これ4本目ダミーなんですよ。3つしか本当はね、煙突ないんですよね。ところがモレタニア号があまりにかっこよかったんで、バランス悪いよと。この3本目の煙突がない状態で。なのでですね、設計者が慌てて、必要ないのでここに4本目のですね、ダミーの煙突作っちゃったというですね、エピソードがあるぐらいですね、モレタニア号はかっこよかったんですよね。一応ダミーと言ってもエンジン室の排気だけを出すので、煙は出ないんですから、それなりにですね、かっこよくなってます。
なので、ここで言ったですね、ローズのですね、なんだ、「モレタニア号と同じじゃないの」っていうのはタイタニックマニアの間ではあるあるギャグなんですよ。もうよくぞ言ってくれた、大爆笑、手打てなんすけども、分かるかって話ですよね。僕ぐらい好きになってきたらようやく、うわあ、マニアックなギャグかましたなと思うんですけども、キャメロンね、この映画の中でね、悪い癖出てるんですよ。本当にね、もう誰にも分からない。高畑みたいにこれぐらい分かって当然でしょっていうね、シーンをどんどんどんどん入れてくるんですね。で、ちなみにですね、モレタニア号、第1次大戦で改装されてですね、めちゃくちゃかっこいい迷彩塗装になりましたね。沈んじゃうんですけどもですね。ということでモレタニアの話それぐらいですね。
で、一般客の乗り込みが始まります。そうですね。これ、この奥の方にいるこいつがキャルで、本当はこの後ろにローズとか続いてるんだけど、分かりにくいんですけども、3等客の間を通り抜けていってるので、彼らの帽子とかが分かりますね。さっき話したハンチングが分かるあたりです。
で、この彼らはですね、なんで3等客はもっと前に来て並ばなきゃいけないのかって言うと、虫歯のチェック、あとシラミのチェックですね。髪とかを全部櫛で梳かれて、シラミがないかどうかっていうのチェックされるんですね。で、家族連れと女性は、前の方へ乗せられて、で、男たちは大体主に後ろの方へ乗せられると。当時のイギリスの階級社会っていうのは身分差にも厳しかったんですけど、それ以上にですね、男女が不用意に接触することをすごい嫌ったのでですね、できるだけ男性、女性、家族連れっての別にしようという風にしてました。
これ乗り込むですね、主人公のディカプリオが演じるジャックはですね、最下層って扱いなんですけど、実際最下層じゃないですね。最下層はシラミとかをチェックされてる移民なんですね。ヨーロッパの人がアメリカ行く時にもうすごいゴミみたいな扱いされたんですけども。
で、次のカットですね、ローズたちがですね、いよいよ一等専用のこの長い橋ですね、長いですね、ブリッジを通ってですね、Dデッキの入り口から乗り込むシーンです。全ての入り口が見渡せるベストショットですね。これ一等専用です。で、向こうの方には荷物専用の長い橋がかかっていて、はるか向こうにはですね、3等の客が乗るですね、細い橋が見えるっていうですね、めちゃくちゃいいショットになってます。
で、後ろにですね、メイドとボーイが荷物持ってるんですけどもですね、特別待遇ですね、ファーストクラスの中でもですね、このキャルが予約したスイートルームって特別待遇になってるのでですね、荷物をこのまま持って持ち込むんですよ。で、普通他の一等客っていうのは手ぶらで入ってきてるんですね。荷物だけさっきのクレーンとかで別の入り口から入れるんで。なのでこの荷物をメイドに持たせて、ボーイに持たせて入ってきてるというシーンで、彼らが特権階級だというのが分かるっていう、またキャメロンのですね、あるあるが入ってるんですけど、分かんないのが入ってるんですけどもですね。
で、乗り込みました。狭いですね。入り口から頭を下げて乗り込んでます。これがですね、ローズの母親ですね。で、ちょっと見えにくいけどローズで、嫌な婚約者のキャルですね。で、キャルはですね、上流階級のシンボルですね。この縁のこの丸い帽子ですねとですね、ステッキですね、必要もないのに木の杖を持ってます。で、あと革の手袋をしてますですね。これ3つともですね、船に乗る時、晴れた日に必要ないのを持ち歩くんですけども、この辺が特権階級ですね。で、ローズと手を繋いでるんですけど、手を繋ぐのもお互いですね、手袋した状態ですね。キャルは特に革の手袋をしてる、手袋越しっていうですね。これ距離感ですね。実は心が繋がってないんだよっていう距離感を見せるために、手袋越しの手を繋ぐっていうのをやってますですね。分かりにくいですよね。
で、キャルたちがですね、入るのはですね、別のシーンであるんですけども、B52、54、56、Bデッキ52、54、56のスイートルームだっていう風に言ってるんですけども、キャメロンが考え抜いた設定なんですね。タイタニックって割と調査が進んでるので、架空の人物を船に乗せる余裕がないんですよ。そんなもう嘘ついちゃえばいいんだって思うんですけど、キャメロンってあまりに、なんだろうな、マニアなのでですね。嘘がつきたくないんですね。
で、タイタニック号でこのローズたちが泊まっている1番いい客室って言ったらもうスイートルームね、右と左に1個ずつしかないんですけど、これどっちかに住ませたいと思ったら、そしたらその52、54、56の、えっと、どっちだな、左舷か。左舷側のスイートっていうのは、あ、そうですね。左舷側のスイートっていうのは偶然ですね、船のオーナーのイズメイさんっていう人が乗ってたんですよ。
で、イズメイさんという人が船のオーナーでもあるんですけども、他にですね、なんだろうね、営業もしなきゃいけなかった。皆さんももっと乗ってくださいと営業もしなきゃいけなかったのでですね、このスイートルーム3つを借りてですね、展示会する予定だったんですね。で、展示会してですね、いろんなお客さんを次々でプレゼンして、皆さんお酒でもてなしてっていうパーティールームにする予定だったんですけど、イズメイさんがですね、こう使おうと思ったらそこにですね、イズメイさんの上司にあたる、ホワイト・スター・ライン社のさらにオーナー会社のモーガンさんっていう人がやってきて、モーガンさんが俺が乗るわっていう風に言ったんですよ。で、イズメイさんがあ、どうぞどうぞ、1番いいとこどうぞっていう風に譲ったんですよね。
ところがモーガンさん直前になってですね、なんか理由わかんないです。未だわかんないですけど、キャンセルするわって。これが色々タイタニック陰謀論をですね、呼ぶ原因になったんですけど、キャンセルするわっていきなりキャンセルしちゃった。なのでこの52、54、56のですね、3部屋続きのスイートって偶然空いてたんですね。で、キャメロンは大喜びして、じゃあもうここに主人公が乗ることにしようって設定にしたんですけどもですね。
3部屋続きのスイートですね、左右に1つしかありません。で、これタイタニックの平面図です。これがB52、54、56ですね。大階段を上がってきて1番近くにある部屋です。で、部屋に入るのがですね、大階段上がってきて、プライベートプロムナードって書いてるんですけども、船の外側にプロムナードというほどですね、ベランダがあるんですけども、これ専用ベランダがあるんですよ。で、こう大階段から上がってきて専用のですね、ベランダから直に入れるようになってるんです。で、直に入って3部屋という、実質ここのベッドルームとかクローゼットあるんで4部屋なんですけど、ここにさらに廊下に出れる出口まであるんですね。
真ん中辺りでですね、ローズのですね、ヌードスケッチをですね、ジャックがしてる時にですね、追いかけられますよね。そん時にこっちからもう出れるのよって言ってローズが手引っ張って逃げるのがこのルートなんですけど、ここら辺もですね、実際にセット組んで、あ、このドア使えるじゃんってキャメロンが大発見して、じゃあもうドラマの中に入れようっていう風にしたシーンですね。
で、もう1組のですね、主人公ですね、ジャック19歳ですね。もう1人の主人公、ディカプリオのジャック19歳は偶然にですね、出航直前にギャンブルで、3等のチケットを勝ち取りましたですね。で、3等の入り口は、こんなんですよ。本当に3等の入り口こんなんで、船の1番下の方にあるですね、穴みたいなので、入り口があって、そこんところで乗る時にお前シラミの検査やったのかという風に怒られますね。で、移民じゃなくてアメリカ人だとアピールするんですよね。
で、これがですね、Eデッキから入ってE、F、Gとさらに2つデッキ下がってですね、Gデッキまで行きます。FデッキとGデッキはですね、前後の端がですね、3等客室で、ジャックは1番下のGデッキですね。おまけに独身男性がほとんどですね。さっきも話した通りですね、イギリス階級社会なので、身分階級の他に男女差にもすごい厳しいんですね。
で、デパート行くと、男女のトイレが別のフロアになってるところがありますね。これ特にありますよね。あれってそれなんすよ。元々デパートも階級社会の象徴みたいな場所だったんですね。もう今そんなことないんですけども、僕が子供の頃はまだまだ敷居が高かったんですよ。なので、日本でもですね、百貨店、デパートはですね、フロアごとに男女っていうのが、昔のデパート分かれてるんですね。これは男性がトイレに行くことを女性に見られてはいけない。女性がトイレに入るところを男性に見られるなんてありえないという考えなので、だからフロアによってトイレが違うと。ここにもですね、まだ階級社会の名残りが日本にもですね、まだ生きてるんですよね。若い人はね、丸井とかね、そういうところは大体ね、そんなことないんですけども、古いところはね、まだそういうトイレになってるところがあります。
で、Gデッキのですね、図面手に入れたのでですね。ここに貼っときますけども、偶数番号はですね、左舷なのでですね、おそらくタイタニックのお尻の1番後ろのですね、4人部屋ですね。ジャックが歩くルート確認したんですけど、多分こう歩いてるんですね。で、こう歩いてこっち入ってこの部屋に入ってましたかね。で、ここの4人部屋だと思います。G60っていうですね、ジャックの部屋ですね。
で、これ一時、映像キャプチャーしてないんですけども、ジャックも乗り込んだところでですね、タイタニックはですね、スクリューが回転してですね、桟橋から、いよいよ。正確にはタグボートに引っ張られて、桟橋から少し離れたところでスクリューが回転するんですけどね。スクリューが回転するシーンね、海の底、海底ギリギリとタイタニックの底がもう擦りそうなんですね。だからスクリュー回転した瞬間に海の底のですね、泥がガッと巻き上がるシーンがあるんですけども、なんでかと言うとタイタニックの止まっていたサウサンプトンのですね、港でもですね、タイタニックのサイズ限界だったんですね。
こんなでかい船作ると思ってなかったんですよ。僕ら世界最大の船タイタニックっていう風に当時の船で考えちゃうんですけどもですね、それはあらゆる港でもですね、タイタニックが止まれる港なんてほとんどなかったんですね。全部ギリギリです。他の施設が追いついてなかったんですよね。逆に言えば、このサイズの船、鉄でできた船を誰も作ったことがなかったので、今回のですね、映画にもなった悲劇が起こったということなんですけども、
いよいよタイタニックが船出してですね、その日の午後にフランスに行きます。シェルブールに行って、翌日のですね、4月11日の木曜日、お昼過ぎ、午後にですね、いよいよ大西洋からニューヨークに向けて出航します。4月14日のですね、沈没まであと3日ですね。
ちょっと一旦休憩しますね。別にこれお茶飲むためだけの休憩なんですけど、無料まだ続きます。今日ね長い。2時間半コースだよな。やばいなあ。ちょっとまさか無料で一旦ね、休憩入れるとは。
でもまだ沈没まであと3日なんですよ。で、こっからはですね、「運命の出会い」というユニットになりますね。
船がですね、翌日に、映画で見るとですね、もう本当に一瞬で行ったように見えるんですけどもですね、船は、タイタニックはですね、イギリスを出航してから、ジャックとローズ乗せて出航してから、その日のですね、夕方にフランスに行って、で、お金持ちたちを載せて、さっきも話したようにですね、フランスの貴族たちは使用人の名前とかを控えてなかったのでですね。誰が乗ったかわかんないような状態なんですけど、で、翌日のですね、午前中にですね、イギリスもう1回戻ってきて、で、そこでやっとね、大西洋に向けて出航になりました。
で、そこでですね、大西洋に出たところでですね、例のシーンですね、ジャック君がですね、船の先、1番先に立って、俺は世界の王だって叫んでですね、ぐわーっとこう回り込みするシーンがあるんですけども、これが4月11日のですね、お昼過ぎですね、午後2時ぐらいだと思います。
ジャックにとってですね、タイタニックはですね、自由の国アメリカに憧れていくんではなくて、帰るための希望の船なんですね。ジャックアメリカ人だから。っていうのはジャックですね、19歳なんですよ。この子まだ19歳なんですね。で、19歳で2年ぐらいヨーロッパで放浪したけども、画家にはなれなかった人なんですよ。つまりなんか2年ぐらい浪人した末にやっと大学に入って東京に向かう19歳の痛い男の子だと思ってください。だからこれぐらいありますよね。そんな痛い男の子だったら2年間ですね。暗い浪人生活っていうのかな。学校行ってアニメーターになろうとしてたのかもわかんないんですけども、それをやめてようやく故郷に帰ると。で、故郷のアメリカの方がずっとずっと暮らしやすいやというそれぐらいのですね、人だったんですね。
なので、これぐらい、俺は世界の王だっていう、アイム・キング・オブ・ザ・ワールドっていう風に言うんですよね。俺は世界のトップに立ったというですね、吹き替えとか翻訳では言ってるかもわかんないですけど、正確にはですね、アイム・キング・オブ・ザ・ワールドって言うんですけども、
ちなみにですね、監督のジェームズ・キャメロンはアカデミー賞でですね、監督賞を獲ったんですね。タイタニックって11部門獲りましたから史上最多の映画の1つですけども、監督賞を獲った時にですね、スピーチするんですよ。オスカーをもらって、アカデミー賞もらって、監督賞もらった時にですね、ついつい受けを狙って「アイム・キング・オブ・ザ・ワールド」という風に言っちゃうんですね。で、その瞬間の映像見たんですけど、会場ドン引きなんですよ。言いすぎたと。
普通ね、アカデミー賞で監督とかプロデューサーがね、賞もらうと、まずは感謝って言って、スタッフがすごかった、なんとかが良かった、そしてみんなに愛してるよみたいな言うんですけども、キャメロンって、タイタニックみんな大好きだろ、さあ、俺がディカプリオのセリフ言うよ、待ってただろ、俺は世界の王だって言ったら会場ドン引きで、その瞬間のキャメロンの表情がね、ものすごく面白いです。あれっていう感じでこう引き上げてくんですよ。
で、さらにその後ですね、作品賞ももらうんですね、大体アカデミーの。で、作品賞もらった時にプロデューサーとしてもう1回オスカーもらいに来るんですけど、こん時のもうキャメロンがものすごいね、下向いてしんなりした感じでですね。作品賞ありがとう。全てのタイタニックで亡くなった人たちに今から黙祷捧げたいと思うと言ってるんです。黙祷捧げてなんとかバランス取ろうとしてんですけども、さっきも言いました『豪快映画学』とインタビューの中ではっきりと、いやもうあれもう本当ダダ滑りでめちゃくちゃパニックになったわって話してるんですけどもですね、マジでへこんだそうですね。アカデミースピーチ、後でYouTubeとかで動画探してみてください。
で、19歳のジャックにとってですね、アメリカに帰る船っていうのは希望の船なんですけども、一方のですね、ヒロイン17歳のローズにとってはですね、元々ローズもアメリカ人なんですけどもですね、貧乏になってしまった名家なんですね。貴族ではないんですよ。名家の1つなんだけども、貧乏になってしまったんでヨーロッパに行って箔をつけて、でそこで婚約者ができた、アメリカ人の婚約者ができた、キャルという人ができたんだけど、成金なわけですね。教養が全然ないと。で、財産目当てで結婚させられるというですね、奴隷船だという風に言ってますね。奴隷船で私はアメリカに帰るんだという風に言ってるんですけど、せっかくですね、ヨーロッパで得たですね、社交界とかあと教養、もう全部無駄になるんですね。
つまりどういうことかというと、せっかくですね、全寮制のものすごい居心地がいいハイセンスな女子校にですね、入って、さあ、これから青春だって言ったら2年
生の夏休みぐらいにですね、いきなり「はい、学校やめて、あなたは田舎に行って、この、なんだろうな、ちょっと乱暴でわがままな、田舎臭い教養もない、あのおっさんのところに嫁に行け」という風に言われてるわけですね。だから、それでものすごいへこんでる状態なわけです。
一方は2年間の浪人生活の後、いよいよ「行くぞ」って言って張り切っている、まあまあ痛い兄ちゃん19歳と、まだ高校2年生なのに、いきなり友達がいっぱいいてハイセンスな学校をやめさせられて、田舎に行って嫁に行けって言われてる女の子。その2人が出会うって話なんですね。で、運命の出会いです。
自分の未来しか見えていないジャックは、3等船客用の甲板で1等のベランダを見上げるんですよ。で、見上げたベランダに、去っていくヨーロッパを見ている女の子がいるんですね。で、これ、実はこう船の後ろ側で、ジャックはずっと前を見てたんですね。ジャック、前を見てて「あれ」って思って後ろ振り返ると、なんか甲板から後ろのヨーロッパを見てる女の子がいると。で、過去だけ見て悲しげな女の子に一目惚れっていうシーンですね。これが沈没の3日前、4月11日木曜日の夕暮れの出来事です。
ちょっともうちょっと精密な模型で説明してみようかな。しなくてもいいのかな? ジャックがいたのは、さっき言った3等甲板なんですよ。で、3等のこれ甲板でですね。で、2等がこのものすごい狭いとこなんですよね。これ2等。1等がこれ全部なんですよ。ここら辺全部で1等。この後ろのよく見えるバルコニー取ってるんですけども、ローズがいるのはこの1等の1番端っこですね。この角のところに立ってる。それを本当ちょうどね、3等から見えるから、一目惚れするには1番いいビューポイントに2人いるわけですよね。
いや、キャメロン考えてるなと思ったんですけど、これどうやって考えてるのかなと思ったら、キャメロンはタイタニックという映画を作る前に、まず7.5mの模型を作って。頭おかしいですよね。7m半ですよ。7m半の模型を映画作る前にスタッフに作らせて、でビデオカメラ持ってきて、とりあえずいろんな角度から撮って、これ映画になるよって、いわゆるプレビズですよね。
庵野秀明がシン・エヴァンゲリオンでやったことっていうのは、実は元ネタは1995年にキャメロンがやったことなんですね。でこれ、来週話せると思うんですけども、ちゃんと証拠があります。なんで僕がこんなに「シン・エヴァンゲリオンのプレビズっていうのは実はタイタニックなんだ」っていうのかというとですね、メイキングの映像とか、その後の樋口真嗣の映像とか、そこら辺見るとすごい繋がるんですよね。だからそこら辺の証拠の話は来週しようと思いますけども、こうやって7.5mの模型を作って色々考えたからできるショットでもあるわけですね。
しかしですね、ローズという女の子は、ジャックの視線に気づかずですね、出航した日から毎日同じ繰り返しなんですね。しょうもない会話をして、無意味な表面だけのおしゃべり。で、退屈なのにマウントだけをやたら取ってくる婚約者のキャル。全てに絶望していたと。
で、絶望していたのでですね。ある日の夜、1等の食堂で船のオーナーとか設計者と食事をするシーンがあるんですけども、ローズはそん時にタバコをプッと吸い出すんですね。で、これローズがタバコ吸うのは当たり前なんですよ。というのは、パリの社交界とか、イギリスでも上流階級の夫人っていうのは、基本的にタバコを吸うんですね。
しかしアメリカ人って、意外なんですけども、保守的なんですよ。っていうのは、腐敗したヨーロッパの文化から逃れて、ピューリタンたち、いわゆるもっと貧乏でよく働く人たちが移民して作った国家がアメリカなもんだから、アメリカって金持ちがどんどんできてるんですけども、文化的には保守的に近いんですね。だからローズは帰るのが嫌だったんですよ。
で、タバコをプカっと吸って、「これも別にヨーロッパの上流社会で当たり前でしょ」ってやってたんですけど、そうするとそれを見てお母さんが怒るんですね。「あなたはこれからアメリカのド田舎な保守的な世界に帰るんだから、タバコなんか吸ってたら男の人に嫌われちゃうじゃないの」っていう風に言うんですね。で、まあアメリカ流に染まれという風に言われて、「でもいっそ死のう」という風に思って、発作的に、さっきの1等のベランダからローズが階段を降りて、3等の甲板を通って、船の1番後ろから身を投げようとしてしまいます。もういっそ死んじゃおうかと思って。
で、後ろの方に行くのも、これは3等の甲板の後ろの方に行くのも、やっぱヨーロッパに帰りたいという思いがあって、飛び降りて自殺してしまいそうになるんですね。だから船の後ろの方へ行くんですけど、ところがこの船の1番後ろっていうところは、3等の喫煙場所になってるんですね。船の中って基本的に禁煙なんですよ。まあ今でもそうなんですけど。ところがですね、1等客だけは船の中でタバコを吸える。これも階級社会ですね。
だから1等の食堂でローズがタバコを吸えるのも階級を見せるためで、そこで怒られるのもアメリカの保守社会っていうのを説明するためで、絶望したローズがヨーロッパに帰ろうと後ろの方へ走ると、そこは偶然3等のタバコを吸う場所だったっていう偶然を重ねてる。これもキャメロンの、タイタニックのマニアだったら分かってくれるだろうと。で、1番後ろに行くとジャックが、ちょうど3等客はさっきも言ったように船内でタバコ吸えないので、船の外のベンチ、3等のところでタバコをプカっとふかすと。ここで出会うっていう、すごい偶然を作ってます。
ローズがこの食堂でタバコを吸ってるって伏線が回収されてるんですけども、分かるかと。キャメロン、みんなをタイタニックのマニアだと思いすぎなんですよ。だからローズがタバコを吸ってる。食堂でタバコを吸っていてダメと言われる。もうこれもダメなのかと絶望する。船の後ろに行く。船の後ろに何があるかみんな知ってるだろう、タイタニック号の1番船尾は3等客の喫煙場所なんだって言うんです。分かるかっていうツッコミがあると思うんですけども、まあそこで出会うわけですね。
で、こうやって2人は出会って、お互いに意識し出します。ローズは自殺しようとしてたんですけど、それを言うと事件になっちゃうんで、うっかり足を滑らせて落ちかけたローズを助けたという設定にして嘘をつきますね。婚約者のキャルは、すごい怒って、マウント取る男ですから怒るんですけども、紳士の振る舞いをしろと周りから言われるんですね。で、紳士の振る舞いとして、ジャックを翌日4月13日、沈没の前の日のディナーに誘わざるを得なくなるんですね。どうせマナーも知らないだろうし、ろくな服を持ってないだろうから恥をかかせてやれってことで、親切ぶってディナーに誘うわけです。
で、船室に戻ったローズに、キャルは「お前なんか俺の妻なんだから、恥かかせるの」って言いたいのをグッと我慢して、とっておきのプレゼントをするんですね。それが巨大なブルーダイヤモンドなんですよ。ハート型のでっかい青いダイヤモンドなんですけども、「碧洋のハート」、青い海のハートっていう風に映画中で言われてる巨大なダイヤモンドです。
で、「ルイ16世もつけたダイヤモンドだよ」っていう風に言いながらキャルがつけるんですけど、この時のやっぱりローズの微妙な顔ですね。ルイ16世ってギロチンで殺された王様ですよね。フランス革命で、ルイ16世が持ってたダイヤモンドと言われて、縁起いいはずがないのにって思いながら見たら、めっちゃ綺麗でどでかいダイヤモンドですね。ローズはちょっとここで態度変えるんですね。映画見てもらったら分かるんですけど、ちょっと変わるんですよ。
で、キャルが下品で嫌いなローズも、さすがにこのダイヤの大きさと素晴らしさに、ちょっと息を飲んじゃうんですね。で、「これでこの女は落ちた」と。まだ婚約とは言いながら1回もベッドインとかしてないんで、キャルは「やった、これでこの女落とした」っていう風に安心すると。で、揺れるローズの女心を見せる。4月14日の沈没まで、あと2日ですね。
で、翌日、4月13日の朝、もう沈没の前日ですよね。4月13日の朝、これ土曜日です。1等専用のデッキに招待されて、ジャックはご機嫌です。ローズが、「あなたとは友達になったんだから」と、私のピンチを救ってくれて、おまけに嘘までついてくれたと、逮捕されかけたのに守ってくれたので、ジャックに感謝して、1等のプロムナードデッキですね。1番上の、めっちゃいいところですね。ここですよ。この1番上の1番いいところを、ジャックと一緒にうろうろ散歩するシーンがあるんですけども。
しかしですね、ローズがイライラしてるのを理解できずに、2人喧嘩になっちゃうんですね。本当は仲良く話せるはずだったんですけど、前の日にダイヤを見せられて、ローズはもう自分で自分の気持ちが分からなくなって、ちょっとイライラしちゃうんです。喧嘩になっちゃいます。
で、このシーン、1等客の遊歩道、ベランダをうろうろする時のジャックの服の浮きかたですか、もう本当にズボン吊りしてです。シャツとかズボン吊りって下着なんですよ。で、上流階級にとって下着は見せるもんじゃないし、肌すら見せるもんじゃないんですね。キャルが船に乗り込んだ時に帽子かぶって手袋してるのも、できるだけ皮膚を人前で見せないと。これが上流階級の振る舞いなんですよ。
じゃあ、上流階級は肌を人に見せないって言うんだったら、女の人はなんで胸開いてるのかと。昔から上流階級の女の人ってめっちゃ胸開いてるドレス着てますよね。あれは何かって言うと、「こんなに胸が開いてるドレスを見ても俺は興奮しない。俺はクールだ。俺は理性がある」ってアピールなんですね。だから男性はほとんど皮膚を隠すような宇宙服みたいな格好をして、女性はパーティー会場とか舞踏会だけはものすごい胸の開いた格好してるのは、どんなに挑発した格好をしても男性は動物みたいに振る舞わない、理性的に振る舞うってアピールを当時やってたわけですよね。
だから、ハリウッドのセレブたちが集まるパーティーで、女の人はなんかなぜか胸丸出しみたいな服着てるじゃないですか。あれ何なのよって言ったら、それをテレビで中継するからおかしいんであって、あれ上流階級の人たちだけだったら、「皆さん男の人は私のことをそんな変な目で見ませんよね。これをファッションとして理解できますよね」ってアピールが通るんですけども、あれを最近はテレビで中継したりするから話がおかしくなってきちゃうんですね。
で、さっき言ったように、上流階級の中で浮いてるジャックはローズと喧嘩になってしまいます。で、怒ったローズはジャックのスケッチブックを取り上げて、中の絵を見て驚くんですよね。「やだ、この人絵の才能あるじゃない」と。イケメンである上に才能まであるなんてと。印象派とかキュビズムを全く理解してなくて、ピカソの絵とかセザンヌの絵を買ってきた私を、「なんかクズみたいな絵だな」という風に。多分ね、キャルが分かるのはノーマン・ロックウェル止まりなんですよ。それぐらいしか分からないような男なんですけど、そんなボンクラ婚約者よりこの貧乏男じゃないっていう風に。またこのローズの中で、ジャックの株が上がった瞬間です。
で、この絵を見せながらジャックは説明するんですね。「宝石の女」だと。パリのカフェにいたおばあさんで、いつもいつもありったけの宝石で着飾って、帰らぬ恋人をずっと待ってるって話をするんですね。で、これを見て「あなたは本当に人を見抜く才能があるのね」っていう風にローズが言うんですけども、これね、伏線なんですよ。映画全体の伏線ですよね。ローズはこうなっちゃいけないっていう、映画全体のキーなんですけども。
結局、最終的にローズは世界一のダイヤモンドを持っていて、そしてずっとジャックの帰りを、海で死んでしまったんだけど、いつか帰ってくるかもしれない、私のせいだっていう風に泣いて、ずっと嘆き続けて帰りを待っている、この宝石のおばあさんみたいになったかもしれないですね、ローズはこの映画の中で。でもこのタイタニックという3時間以上ある映画の尺は何を語るのかって言うと、ローズがそんな女にならないためなんですよ。この宝石の女みたいに、いくら宝石をいっぱい身につけていようと、帰らない男をずっと待ってるような女になるなっていうお話を作ってるわけですね。
だから「あなたには人の本質を見抜く才能があるわ」ってローズがこの絵を見た時に言うと、「君は自殺するような女じゃない」っていう風に、その瞬間ディカプリオがまず返すんですよ。「人の才能を見抜く力があるわ」って言ったら、「君もだ」って言うんですね、ジャックが。「え、どういうこと」って聞いたら、「君は自殺するような女じゃないだろう。だからあんなことするはずないんだ」と。「じゃあどんな女?」っていう風に聞くと、「例えばそうだな、馬にまたがる。それも女座りじゃなくて、本当にまたがって馬に乗るんだ」。で、ローズ驚くんですね。「女が馬にまたがるの?」っていう風に。すごい驚くんですよね。絶対に考えられないと。
実はですね、ローズは母親からこんな教育を受けてるんですよ。次のカットですね。お母さんが他の友達と話してるシーンで、「大学は結婚相手を探すところよ」っていう風に言ってるんですね。女にとって大学は男探しのバーって書いてあるんですけども、「そうなのよ」って風に言ってるんですよ。だから母親に逆らってるように見えて、ローズの価値観って母親譲りなんですね。お母さんと同じこと言ってるんですよ。なので、本当は「女が馬に乗るなんて考えられないわ」っていう風に言っちゃうローズっていうのは、母親に逆らってるんだけどそっくりなんですよ。
で、これ後に母親が泣き出しちゃうシーンで、母親も多分おそらく昔はローズみたいに新しい価値観を持っていて、古いのが嫌で、女だって何でもできるわと思ってた。でもそれをずっとずっと抑えてきた自分っていうのがあると。で、娘にそれを強制することがどんなに辛いことか分かってると。でも「あなたはそうしなきゃいけないのよ。だって私たちは女なんだから。女の生き方はこれしかないんだから」というシーンがあるんですけど、やっぱりそこへの伏線になってるんですけども。
でも映画のラストで、ローズの人生はちゃんと変わってるんですよね。ラストの、まあちょっと早いんですけど、もう今更ネタバレでも何でもないですからこの映画に関しては。ローズが眠るシーンで、ローズの周りにある写真が映るんですね。そうするとここに小さい写真がいっぱいあるんですが、このフレームの中で大学の卒業帽子を被ってるんですよ。だからラスト、100歳を超えたローズの、カメラが1つ1つその写真を撮るんですけども、まずローズはちゃんと大学に行ってるんですね。母の呪いから解き放たれてるっていう意味です。
で、その後、馬どころか飛行機にも乗ってるんですね。で、アフリカ探検にも行ってるんですよ、こっちの写真見ると。で、ラストに映るのが馬にまたがって笑うローズなんですよ。ちゃんと馬にまたがって笑ってるっていうのを、他のいろんな写真を見せて、この馬にまたがってるのを見せて、この映画は終わるんですよね。
だからタイタニックという映画は、時々シニカルな言い方で、「ローズっていう女がいて、結局はジャックっていう男に助けられて、それを見捨てたおかげで1人生き残って助かったんだよ」っていう、そういう風な話をする人がいるんですけど、そうじゃないんですよ。ジャックの言う通りに生きたんですよ。ジャックが「君はそんな人じゃない。本当はこんな人だ」って言っていた、いろんなことを全部成し遂げた人生だったんですよね。それがジャックとの誓いだからですね。母親の呪いとか古い世界から抜け出した。それはすごい難しい、この時代のことだったんですよ。でもやりがいのある人生でしたっていう。そのジャックが言った通りに生きるということが、ローズの選んだ道だったんですね。
かなりすごい映画なんですけども、普通の恋愛映画よりもちょっと深いんですけども、ところがタイタニックって枠組みだけ見ると大味なんですよね。だって、ジェームズ・キャメロンが20世紀フォックスにプレゼンする時に、「どういう映画なの」っていう時に、これすっげえ予算かかる映画で、めちゃ手間かかるから絶対反対されるな、どうやったら通るかなと思った時に、「タイタニック号、海の上の階級社会」、「うん、それは分かってるよ」と。「そこでロミオとジュリエットが出会うんですよ」。みんなが目の色変えて「それだ」っていう風に言ったと言うんですけども。
それをなんかこう、それで終わらせないためのクライマックスっていうかストーリーっていうのを、ちゃんとこう考えてたわけですね。そんな普通の話ではなくて、それは何のためなのかと。何のためにロミオは死んだのかっていうのを、単なるヒロイックなものにするんではなくて、その後のローズの人生っていうのを写真で見せることによって語ってるわけですね。
で、しかしですね、こういういいシーンの裏では、船のオーナーのイズメイさんですね。イズメイさんは船長に、故障してる最後のボイラーを焚けっていう風に言うんですよ。実はホワイト・スター・ライン社も倒産寸前で、4月17日の水曜日、タイタニックが最も早い速度で大西洋を横断したら、4月17日の午前中にニューヨークの港に着く予定だったんですよね。で、ニューヨークの印刷屋にもう発注してたんですよ。印刷屋さんに新聞の印刷の発注をしてて、「タイタニック、ブルーリボン賞を獲得。世界最速。今日の朝ニューヨークの港に着く」っていう記事をもう書いて印刷までしてたんですね。なので何が何でも4月17日の水曜日の朝にニューヨークに着かないと、ホワイト・スター・ライン社は本当に倒産の危機にあったんですね。なので急がせたんですよ。
で、さっき言ったその1つ故障してたボイラーって言ったやつ、正確には故障じゃなくて火事なんですよね。タイタニックって進水式が終わって、最初に試験航海して、人を乗せる前にもうボイラーが1つ火事で焼けてるんですよ。で、その火事の火が石炭に移って、石炭庫の中で燃えてるけど、まだ消えてない状態なんですね。だからそのボイラーを本当は閉鎖しなきゃいけないんですけども、最高速度を出すために、そのまだ燃えている石炭庫を開いて、その火事のボイラーを動かせっていう風に言ってるんですね。それで最高速度を出そうとしてるんですけど、何が何でも最高速度を出させたかったんですよね。
で、一方それを命令されるスミスも、すごい微妙な表情なんですけども、やっぱりOK出しちゃうんですよ。で、なんでかって言うと、このスミス船長っていうのも名物船長で、実はスミス船長の船だから乗るっていうお客さんが多かったんですよね。いわゆるキャバクラ用語とかで言うと太客というやつですね。地下アイドル用語でもあるんでしょうかね。太客というやつでしょうけども、ナンバーワンホストみたいな人物なんですよ。だからスミス船長が乗船して船長をやるんだったら私この船に乗るわっていうファンがいっぱいいたんですね。
それぐらいカリスマな船長だったんで、まるでカリスマホストが誕生日にシャンパンタワーの記録を作るように、これスミス船長の最後の航海なんですよ。で、引退記念に世界最大の船で世界最高速度を出して引退したいっていう、もう本当にシャンパンタワーの新記録作りたいみたいな誘惑に勝つことができなかったんですね。この辺りのスミス船長の葛藤も描いてます。目指すはモーリタニア号の最高速度、ブルーリボン賞の23.7ノットを超える速度を出そうということでですね。
タイタニック号、時に2000、え、2000はいけない。「時に」って言った時に「2199年」、宇宙戦艦ヤマトって言いそうになったんですけど、時に2000、また間違えた。時に1912年4月13日、沈没の前の日です。4月13日の夜、タイタニック沈没まであと1日ですね。綺麗な夕焼けとタイタニック号ですね。とにかくタイタニックがいかに素晴らしいか、いかに美しいかというのを見せてから、その後の悲劇を語りたいということです。では今日の無料はここまでですね。えらい長くなりましたけど、無料はこの辺までにしたいと思います。お疲れ様でした。
はい。お疲れ様でした。今日の無料動画はここまでです。今日の動画の中で、西洋の人にとってタイタニックという題材は、めちゃくちゃ実は意味があるんだって話をしたんですね。で、別にこの事件、タイタニックが沈没した事件で世界が変わったわけでもないですね。いわゆるサラエボ事件とか、ああいうのみたいに歴史のターニングポイントというわけでもないし、あんまり大きい影響を与えたわけでもないのに、なぜか重要な事件として扱われるんですね。で、なんでかと言うと、このタイタニック号沈没というか、タイタニック号というもの自体、いろんなものを語れるから、題材としてすごい便利なんですね。
主な理由は7つあるんですけど、7つ言ってみますと、1つ目、当時最先端の造船技術で作られた大型船が、一晩でというか、1時間程度で無惨に沈没したという切り口から、船の事故としてまずユニークであるということ。2つ目、じゃあ誰が悪かったのかというサスペンスのような切り口もあって、これは案外分かってしまっているということですね。関係者が全員、造船技師も設計技師も含めて死んじゃったのに、割とこれが分かってしまってるという面白さですね。3つ目が、動画の中でも言ったように、当時の階級社会の縮図であったということ。4つ目、その他にも、世界最大の客船であったタイタニックは、もう部屋割りを見てるだけで楽しいですね。乗り物としての面白さが実はあります。
で、5つ目。これまた動画の中で触れたんですけども、アメリカで金持ちになった人がヨーロッパに帰っていくというブームがあったと。あともう1つ、逆にアメリカに渡ろうとした移民もいっぱいいた。で、そういう貧乏な移民も実はいっぱい乗ってたっていう、この当時の社会情勢というか、船自体が社会の縮図であると同時に、船が動いてる理由というか、この船の動き自体が社会の動きを表してるということ。6つ目、これは割と嘘っぽい美談なんですけど本当の話なんですよね。ジェントルマン、紳士たち、男の人たちが、女子供を優先して逃がして、自分たちは死ぬしかない運命というのを受け入れたっていう、この辺もドラマとして面白い。で、最後7つ目。こういういろんな切り口で散々語られたもんだから、タイタニック号っていうのを割とみんな知ってるんですね。
この7つが、いろんな切り口で語れるので、タイタニック号沈没事件が有名になったことだと思います。西洋人にとってのタイタニックっていうのは、日本人にあるのかなと思ったら、昭和の時代だったら忠臣蔵というのがかつてあったんですけど、これに近いかなと思います。赤穂浪士の討ち入りで日本の歴史が変わったなんてことはなかったんですけども、ドラマとして面白いし、実録の犯罪としても面白いし、また主人のために忠義を尽くして、自分たちが切腹して死ななきゃいけないと分かってるけどもやった、そういう時代、侍の時代、それの終わりとして描かれてるところも面白いんですよね。
まあでも多分、今の若い人は忠臣蔵を知らないからですね。そういう時代を代表して色々なことを語れるのって何でしょうね。まあ、世界全体で言うと9.11になるだろうし、日本全体だったら、コロナ騒動とか、もしくは3.11東日本大震災みたいなものになるんじゃないかな。ただね、今、欧米でもタイタニックを知らない人がどんどん増えてるそうです。いかんことです。
さて、今日見てもらった動画の続きは有料会員が見られるようになってるんですけど、どんな話をしてるのかというと、もちろんタイタニックの話なんですけども、運命の日に何が起きたのかという話とか、あとジェームズ・キャメロンの作品全体に共通するテーマというのを話しています。続きを見たい人は、YouTubeのメンバーシップ、ドワンゴのブロマガチャンネルのどちらかに参加してご覧になってください。来週も同じ時間にタイタニック動画を投稿するので、是非そちらも見てください。それではまた次の動画でお会いしましょう。じゃあまた、バイバイ。
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