ガリバーとタリーズのフランチャイズ展開の裏側:永井隆志氏が語った約30年前の2つの失敗

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概要

FC業界で30年のキャリアを持つ永井隆志氏に、聞き手の島袋直樹氏が「放送ギリギリ」の昔話を聞く回である。永井氏が語ったのは2つのエピソードだ。1つは車買取専門店ガリバーの加盟開発中に、テレビ取材での発言が原因で外資系ガソリンスタンドへの営業ができなくなった話。もう1つは、タリーズコーヒーの店舗運営を改善しようとして創業者と対立し、提携解消に至った話である。どちらも永井氏自身の失敗談として語られた。永井氏は「昔の話なんで」と前置きし、「今のはあるけど言えない」と笑いを交えて話を始めた。

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ガリバーの加盟開発と、伸び悩んだ初期の契約数

約30年前、永井氏は車買取専門店ガリバーの加盟開発の責任者を務めていた。ガリバーは福島県郡山市で中古車事業を営んでいた創業者が始めた会社で、現在は息子さんが社長を継いでいると永井氏は説明する。

フランチャイズ展開を始めた当初、加盟契約はあまり取れなかった。とはいえ月に5〜6件は取れていたという。永井氏はさらに加速させる必要があると考えていた。そこへちょうど、ガソリンスタンドが次々に倒産していく時期が重なった。

特石法の廃止と「ディーラーヘルプ」の終わり

永井氏によると、それまで日本のガソリンスタンドは特石法(永井氏は「特別石油なんちゃら法」と言っている)という法律に守られていて、外資のガソリンスタンドは日本に入ってこられなかった。この法律が廃止されると、ブリティッシュ・ペトロリアムなど外資系のガソリンスタンドが参入を始め、日本のガソリンスタンドの売上は落ちていったという。

当時の業界には、元売り(永井氏は「ディーラーさん」とも呼ぶ)が加盟店の経営を支える制度があった。島袋氏が「オイルを仕入れる元売りが経営を助けるのか」と驚くと、永井氏は具体的な仕組みを説明した。ある加盟店が決算で1000万円の赤字を出すと、元売りは1年前に遡ってガソリンの卸価格を変更する。すると赤字1000万円の会社が、いきなり2000万円の黒字の会社に変わる。永井氏はこれを「ディーラーヘルプ」と呼び、今はもちろんないが昔はあったと話す。

そのため、ガソリンスタンドの経営者には「経営しなくてもまた助けてくれる」という甘えがあり、他業種の厳しい経営とは温度感が違ったと永井氏は振り返る。ところが特石法の廃止で元売り自身の経営が危うくなり、助けたくても助けられなくなった。各店舗の経営者は助けてもらえると思っていたが、実際には助けてもらえず、一気に倒産が進んだ。永井氏の記憶では、3万店あったガソリンスタンドが半分ほどになったという。

ガソリンスタンドにガリバーを加盟させるという発想

このタイミングで永井氏が考えたのが、ガソリンスタンドへのガリバー加盟の提案だった。車の買取は、車検のタイミングできちんとプロモーションするのが一番取れる。ガソリンスタンドには毎週、あるいは月に何回か客が給油に来るので、給油のときに「もうすぐ車検だ」と分かる。車検ならうちでやります、乗り換えるならうちで買い取ります、うちはガリバーですから、と声をかければ大きな相乗効果があると永井氏は考えた。

実際に提案を始めると、提案したところは全部加盟してくれたと永井氏は語る。

『報道特集』の取材と、放送されてしまった一言

ガソリンスタンドへの営業に本格的に動き始めた頃、倒産が相次ぐガソリンスタンドを題材に、テレビ番組『報道特集』の取材を受けることになった。取材班は約2週間永井氏に張り付き、各ガソリンスタンドや元売りを訪問する様子を撮影した。当時の映像は今も残っていて、「めっちゃ若い」と永井氏は笑う。

問題が起きたのは、シェルやモービルといった外資系の元売りに営業をかけに行ったときだった。オフィスを出ると出口で取材班が待っていて、「どうでした?」と聞かれた。永井氏は外資系について率直な感想を話したうえで、放映されたら困るのでカットしてほしいと頼んだ。ところが翌日テレビを見ると、その場面がそのまま流れていた。

島袋氏が実際に何と言ったのかを問いただすと、永井氏は「外資ってアホで分かってないよね」という趣旨のことや、現場のガソリンスタンドの状況を分かっているのか、といったことを言ったと明かした。

放送の翌日、外資系の側からは永井氏とは一切関わらないという趣旨の通達が流れた。その結果、外資系のガソリンスタンドにはガリバーの加盟を提案できなくなり、加盟獲得のペースは一気に落ちたという。永井氏は「もう時効」「今はもう永井隆志の名前も覚えていないと思う」と笑って話を締めくくった。

タリーズの依頼:「スタバに勝ちたい」

2つ目の話はタリーズコーヒーである。当時タリーズを経営していたのは、後に参議院議員となる松田公太氏だ。島袋氏は松田氏を「僕の憧れ」と言う。永井氏によると、松田氏がベンチャーリンクを訪れ、「このままだとスタバに絶対勝てない。スタバに勝ちたいのでお願いします」と依頼してきた。この案件の責任者になった永井氏は、タリーズのフランチャイズのパッケージングから加盟開発までをすべて担当した。

永井氏は加盟開発だけでなく、オペレーションまで見る必要があると考えた。当時、永井氏はベンチャーリンクの役員を務めながら、子会社アイリンクの社長も兼ねていた。アイリンクは業務用コーヒーマシンの輸入販売とメンテナンスを手がける会社で、スイスとイタリアからマシンを仕入れていた。そこでアイリンク自身がタリーズに加盟することにした。

アイリンクは半蔵門に土地を買ってビルを建て、1階と2階をタリーズの店舗、3階をアイリンクのショールームにした。永井氏は「めちゃくちゃ金をかけてやった」と話す。自分がやる以上は意地もあるので絶対にトップを取ると意気込み、一生懸命プロモーションし、自ら現場に入ってトレーニングもしたという。

売上750万円でも営業利益は5%

その結果、店舗の売上は750万円ほどになった。カフェで750万円はかなりいいほうだと永井氏は言う。しかし永井氏が一番大事だと考える営業利益を確認すると、5%しか出ていなかった。島袋氏の計算では、700万円売って35万円ほどである。永井氏は、10%にも届いていないのでは全然足りないと感じた。

さらに、当時100店舗ちょっとあったタリーズの中で、この店の売上は11位ほどだった。売上11位の店で営業利益が5%しか出ないなら、それより下の加盟店は利益がほとんど出ないか赤字のはずだ。永井氏はこれをフランチャイズパッケージとしておかしいと判断し、全面的な見直しに取りかかった。

ピークタイムと「22秒から30秒」の抽出ルール

見直しの一方で、750万円の売上が目指せる要素は多くあったため、永井氏はいろいろなことに挑戦した。その1つが、ピークタイムの客のさばき方の改善である。タリーズが最も混むのは朝の出勤時と、ランチ後にコーヒーを買ってオフィスへ戻る時間帯で、行列ができる。この時間帯に客を逃さず、短時間でさばけるかどうかが売上を上げるポイントだったと永井氏は説明する。

当時のタリーズはセミオートのエスプレッソマシンを使っていた。永井氏によると、エスプレッソマシンにはセミオートと全自動の2種類がある。全自動はボタンを押せば機械がすべてやってくれ、均一なエスプレッソが出てくる。セミオートは、タンパーにコーヒーの粉を入れ、アルバイトがタンピングして押し固め、マシンにはめ込んで抽出ボタンを押す方式である。

タリーズのマニュアルでは、抽出が22秒から30秒の間に終わらなかったものはタリーズのエスプレッソではないので廃棄する、というルールだった。永井氏はこの秒数について、記憶が定かではなく違っているかもしれないと断っている。真面目なスタッフほど、33秒なら捨て、20秒でも捨てる。その間に客が帰ってしまう状況があったという。

抽出時間が範囲内に収まるかどうかは、タンピングの力加減で決まる。「今日は雨で湿度が高いからこのくらい」といった調整をアルバイトができるわけがない、と永井氏は言う。真面目なスタッフほど廃棄し、「ベストショットが出るまで少々お待ちください」と言っている間に客が帰る。そこで永井氏は、最も忙しい時間帯だけ全自動マシンを導入し、それ以外の時間はセミオートで営業することにした。全自動なら必ず均一になり、客を全部さばけるので売上が上がる。これでいこうと考えていた。

「タリーズのコーヒーを分かってない人に」と提携解消

ところがその矢先、当時の社長から「タリーズのコーヒーを分かってない人に手伝ってほしくありません」と言われた。永井氏は「スタバに勝ちたいと言ったのはあなたでしょ」「これで売上が上がるんだから、どこに文句があるの」と返したが、話は全く解決しなかった。

その後、ニュースが配信され、翌日の日本経済新聞に「ベンチャーリンク、タリーズと提携解消」という記事が大きく載った。それで関係は終わったと永井氏は話す。島袋氏が、タリーズはその後伊藤園に買収されたと補足すると、永井氏はそれを肯定した。

振り返り:ロマンとそろばん

永井氏は当時について、実際に加盟店を運営していたので、売上を上げるためにはどんなことにも挑戦したと語る。もちろん通常のオペレーションのままで回せないかも検討したが、そうすると顧客満足度が下がるなどの問題があった。永井氏から見て、一番劇的に改善すべきところはピーク時の抽出だったという。解決する手法を見出して実際に売上を上げているのに、どこに文句があるのか、というのが永井氏の論理だった。

一方で永井氏は、松田氏の立場にも触れている。品質も大事かもしれないが、飲み比べても違いは全然わからない、というのが永井氏の見方だった。しかし松田氏はそこにこだわりを持っており、そこが両者の相容れないところだったと振り返った。

島袋氏はこれを「ロマンとそろばん」と表現する。特にフランチャイズでは、アメリカ側からマニュアル通りにやってくれと求められることがある。しかしそれを日本にローカライズせずに導入すると、今回の話のようにロスが発生してビジネスが成り立たない場合がある。島袋氏自身もアメリカのブランドのマスターフランチャイズを手がけており、似たことを感じているという。永井氏も、アメリカの場合は縛りが特にきついと応じた。

そのうえで島袋氏は、そうしたブランドでも交渉して日本に合わせたローカライゼーションを進めることが大事だとまとめた。加盟店の立場でも、本部の方針に真っ向から反するのはよくないが、小さくPDCAを回して正解を探すことは必要ではないか、ただしやりすぎはよくない、とも述べた。

最後に永井氏は、今のスターバックスはほとんど全自動マシンだとして、「やっぱり俺の方が正しかったじゃん」と今は思う、と笑った。島袋氏は、プレミアムなコーヒーのラインを分けるやり方もあるのではないかと提案し、スターバックスもそうしていると永井氏も同意した。島袋氏はこうした話を一度に出すのはもったいないとして、続きは小出しにしていくと述べて回を閉じた。