3階建て3LDKに5人家族、「捨てる」以外の道はあるのか 古堅純子が見た子育て家庭の散らかりの正体

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概要

片付けの専門家として「物を捨てない片付け」を掲げる古堅純子さんが、3階建ての一軒家に暮らす5人家族を訪ねた回である。子どもは6歳、2歳、生後1か月の3人。住人は雑誌「レタスクラブ」の読者で、今回は同誌編集部との合同企画として、編集部員が同行した。母親の悩みは、片付けても子どもがすぐに散らかし、それをまた片付ける繰り返しから抜け出せないことだ。

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前後編の前編にあたる今回は、作業に入る前に家全体を見て回る。古堅さんはその中で、散らかる原因を物の多さだけでなく、各部屋の目的があいまいなことと、縦に長い家の構造にあると指摘していく。

家の構成と「人口密度」

家は1階に玄関と部屋が2つ、2階にリビング・ダイニングとキッチン、3階に寝室と浴室があり、その上に屋上がある。古堅さんは「3LDKに5人」という状況を「ちょっと人口密度が高い」と表現しつつ、その割に頑張っていると評価した。

2階のリビングは一見すっきりしており、古堅さんも最初は「そんなに散らかってる感じしない」と口にした。ただ母親によると、子どもが散らかしていない時間に物をある場所へ放り込んで隠しているという。古堅さんは自分も「隠す派」だとして、視界に入らないだけでも違うとこの工夫を認めた。そのうえで、隠すことにも限界はあると続けた。

ダイニングが遊び場になっている

リビングとキッチンをはさんだ反対側がダイニングである。ここは子どもたちがおもちゃを出して遊ぶ場所になっており、けんかにならないよう2人が別々の場所で遊ぶ配置になっている。棚の下にはレゴ、布をめくるとトミカがしまってあり、本も隙間に差し込まれている。古堅さんはその様子を「駅の新聞のところみたい」と例えた。

母親は、子どもが自分で片付けられる仕組みを作りたいと以前から考えていた。これに対して古堅さんは、まずおもちゃが空間に対して大きすぎると指摘する。乗って動かすタイプのおもちゃを例に挙げ、ここでどこを走らせるのかと問いかけた。細かい遊びならこの狭い場所でもできるかもしれないが、子どもは結局広いところで遊びたがるので、そこに物がたまる。母親も、最後は全員が同じ場所に集まって遊ぶと認め、古堅さんは「人は広い方に行っちゃう」と応じた。

ダイニングテーブルは本来食卓のはずだが、今は物置き場のようになっている。家族5人がそろって食べるときは、黒い丸椅子を出してきて座るという。古堅さんは、テーブルが機能しておらず、飾りか、物に閉じ込められているように見えると述べた。

「目的が多すぎる」ことが物に表れる

どうなりたいのかと聞かれた母親は「すっきりしたい」と答え、自分で「わがまま」と笑った。ここに置いている物は全部自分が置いたものだとも言う。

古堅さんの見立てでは、この空間には目的が多すぎ、それがそのまま物の量に出ている。ゆっくり食事をしたいと思っても、片付けないと食事ができない。これが余計な家事を増やしているのではないか、と問いかけた。

子どもに片付けてほしいという気持ちに理解を示しつつ、古堅さんはこの家の「決定的な欠点」として、使う場所と戻す場所が非常に遠いことを挙げた。遠いから面倒になる。この点をうまく解決しないとすっきりしないという。加えて、ダイニングはそれほど広くないのに物を置きすぎている。子どもが今夢中になっているものは実はそう多くないはずなのに、あれもこれも置いてあるため、おもちゃの部屋のようになっている。子どもを遊ばせる場所なのか、食事をする場所なのか。優先順位をはっきりさせないと、「遊び場の中に食卓がある」状態から抜け出せない、というのが古堅さんの指摘だった。

保育園児の家に、そこまでの物は要るのか

子どもたちは保育園に通っており、母親は現在育児休業中で、いずれ仕事に復帰する予定だという。これを聞いた古堅さんは「はっきり言うよ」と前置きし、保育園児は家にいる時間が短いのだから、そんなに物がなくてもいいのではないかと述べた。幼稚園で早く帰宅し、長く家にいるなら、その時間に合った量を考える余地もある。しかし働くのであれば、もっと厳選したほうがいいという。

古堅さんが目指すべきだとしたのは、いつも片付けていないとくつろげない暮らしではなく、「頑張らなくても散らからない暮らし」である。そのほうが育児がしやすく、イライラせずに済み、子どもも遊びたいときにすぐ遊べる。母親は「チクチク、グサ」と苦笑いし、まさかここ(すっきり見えるリビング側)まで指摘されるとは思わなかったと驚いていた。古堅さんは、一本筋の通った考え方にしないとこうなると念を押した。ご飯も食べさせたい、遊ばせたい、保育園の道具も全部ここに置く。これが置きすぎの原因だという。

縦に長い家の宿命

古堅さんはこれを「縦構造の宿命」とも表現した。1階に物を置く場所がなければ、生活の中心の2階に物がたまる。寝室は3階にあるが、わざわざ3階まで物を運ぶのは現実的に難しい。古堅さんは、こうした住宅に住むなら「物は増やさない方がいい」と、答えは早いのだと述べた。

さらに、3人目が上の2人と性別の違う子であることにも触れた。古堅さんによれば、異性の子が1人生まれるだけで物は倍増する。これまでは上の子のお下がりを下の子に回せたかもしれないが、異性が加わるとおもちゃの種類そのものが変わるからだという。

夫婦の考え方の違いと、子ども部屋の見通し

夫は「早く捨てろ、どんどん捨てろ」という考え方で、母親は取っておきたいタイプだという。その夫には1階に書斎があり、在宅勤務の日はそこで仕事をし、出社する日もある。古堅さんは、自分のスペースを1つ確保していることに触れ、1階の部屋を明け渡したくない気持ちは分かると述べた。

では子ども部屋はどこにするのか。もともとは1階の2部屋を子ども部屋にする想定だったらしい。母親は、子どもたちの学年が離れていれば上の子がそのうち家を出るのではとも考えていた。また、リビングに勉強用の机を付ける案も口にした。古堅さんは「欲張る」と笑いながらも、それは想定しておくべきだと述べた。6歳ならもうすぐ小学生で、勉強はダイニングテーブルでもできる。目的を決めないと今の状態から抜け出せないというのが古堅さんの考えである。

おもちゃについては、保育園児は枝一本でも遊ぶと言い、与えれば与えただけ遊びたがるが、なければないなりにどんなことをしてでも遊ぶと話した。

1階の「何でも部屋」

1階の夫の書斎は撮影NGのため、少し覗くだけにとどめた。古堅さんは「仕事ができる男の部屋」と冗談めかして評した。問題はもう一つの部屋である。古堅さんは、玄関から入ってすぐ、動線上にある部屋は使い方次第でとても便利になると期待していた。しかし扉がすんなり開かず、中は暗く物で埋まっていた。

母親はこの部屋を「何でも部屋」と呼び、ゆくゆくは子ども部屋にしたいという。古堅さんは「ここでは何でもできない、何もできない」と返した。この家には6年前、上の子が生まれてすぐに越してきた。部屋はいつの間にか食品と日用品のストック部屋になった。クローゼットに入りきらない服のためにポールハンガーが立ち、コストコで買ったトイレットペーパーや3個ほどのキャリーケースが積まれている。取り出しようがないほどの量のラップもあった。古堅さんは、上で暮らす「ハッピーファミリー」の家とは思えない空気だとまで言った。

古堅さんは「私捨てさせないんで」と自分の方針を改めて示した。そのうえで、これだけの物がある以上、ここを子ども部屋にするのは難しく、子ども部屋にしたとしてもここの物をどうするのかという話になると指摘した。1階を片付けるなら上の物はどうするのか、という問題も残る。3階はまだ見ていないと留保しつつ、3階はそれほど広くなく物も多いと母親から聞き、「普通ならば捨てなければ片付かない案件」だと評した。

優先順位をつけるのが苦手なのかもしれない

この部屋を見て古堅さんが強調したのは優先順位だった。ダイニングですっきりご飯を食べたいと言いながら物を置き、この部屋を子ども部屋にしたいと言いながら何でも詰め込んでしまう。今何をすべきかを考え、家族で相談して決めることが、この母親は苦手なのかもしれないと古堅さんは推し量った。

古堅さんによれば、最優先は人命であり、子どもにご飯を食べさせること、赤ちゃんを健やかに育てることが絶対的に重要だ。それなのに、それ以外のことがまったく回っていないように見える。この部屋を見て本気で悩んでいたのだと分かった、とも語った。納戸にしてほしいという依頼なら簡単だが、子ども部屋にしたいというのが難しい。夫の書斎は立派なので、手を付けたくない気持ちも分かる。触れないと決めたなら触れないが、この部屋をどう使っていくかは考えなければならない、と話をまとめた。

3階への階段と寝室

3階へ上がる階段の途中にも、カーテンで隠した収納があった。古堅さんはこれを「忍法隠れ蓑の術」と呼んだ。中は衣類や保育園に持っていく物で、よく使う物が取り出しやすく置かれている。この場所は収納がないので、こうした工夫をしなければ無理だとして、古堅さんは「合格」と認めた。

3階の寝室では家族5人が一緒に寝ている。テレビが寝る人の頭の上に置かれているのは、ほとんど見ないからで、子どもが落ちないよう柵のような役割も持たせているという。枕の位置は日によって変わり、2歳の子はグレーの囲いの中で寝ている。父親は部屋の一角で寝ている。

寝室のクローゼットは夫婦の服で埋まっている。子どもの服は階段の収納にあるが、3階で着替えずに下の階へ降りてしまうという。古堅さんは、本来ならここで服が片付けばいいが、面倒だから降りてしまうのだろうと述べた。夫の言うとおり捨てればいいという話でもあるが、服の量が特別多いわけではないとも言う。

本は寝室、別の場所、さっきのダイニングの3か所に分かれていた。寝る前に読むこともあれば、下の階で読むこともある。古堅さんは、あちらでもこちらでもという状態では片付かないと指摘した。

「ないもの」を望まず、物の位置を変える

母親が「ワンフロアのマンションが羨ましい」とこぼすと、古堅さんは、それは直せないと笑ったうえで言葉を続けた。一軒家に住み、3人の子どもに恵まれている。それだけで十分に幸せなのに、ないものをあれこれ望めば不幸になる。育児は大変で、子どもが小さいうちは不満も出るだろうが、すでに幸せなのだから、さらに幸せになるために物の位置を変えよう、という話だと古堅さんは語った。

古堅さんが提唱するのは「景色を変える片付け」である。部屋の景色が変わると意識が変わり、片付いた空間に見合う物だけを残そうと考えるようになる。そうすると本当に必要な物が見えてくるという。優先順位で言えば、まずリビング・ダイニングになる。家事の優先順位は1番が炊事、2番が洗濯で、片付けはどうしても下になる。だからまず動かない物を寄せて2階の景色を変える。1階は物の流れが完全に止まり、すぐに取り出せる状態ではないので、もう少しシステマチックにして、少しずつ減らしていくしかないのではないか、というのが古堅さんの見立てだった。

周囲は捨てればいいと言うが、どれもまだ使える物である。1階を子ども部屋にすることは、その先にある叶えられる希望だと古堅さんは位置づけた。当面はリビングと寝室だけで暮らせばいい。家族が健やかで、ママの機嫌がよければそれが一番だという。

次回へ

家全体を見終えた古堅さんは、まずリビングの景色を変えて、もう少し気分の上がる雰囲気にしようと提案し、全員で掛け声をかけた。回の締めくくりで古堅さんは、母親は頑張って片付けていたが子どもの物がリビング・ダイニングにあふれていたと振り返った。散らかりにくいリビングをつくる実際の作業は、次回に持ち越される。1階の部屋を将来どう子ども部屋にしていくかは、この回の時点では答えの出ていない課題として残された。