Baiduの欧州進出は自動運転の勢力図をどう変えるか:LyftとBaiduの提携を中島聡が読む

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概要

LyftとBaiduは、2026年からヨーロッパでBaiduのロボタクシー「Apollo Go」を展開する提携を発表した。Lyftは配車サービスのFreeNowを通じて欧州のロボタクシー市場に入り、Baiduは欧州での商業展開を果たす。この動画では、聞き手の質問に中島聡が答える形で、この提携の意味を論じている。中島の見立ては、この話の本質はLyftの生き残り策よりも「中国のBaiduがヨーロッパに来る」ことにあり、それは自動運転の競争だけでなく、欧州の自動車産業と安全保障にとって大きな問題になりうる、というものだ。

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Lyftはなぜ欧州で、なぜBaiduと組んだのか

聞き手はまず、Lyftが買収をしてまで欧州市場に踏み込む理由を尋ねた。中島はこれを「結構大きい話」と受け止めたうえで、Lyftの置かれた状況から説明する。Lyftは現在、Uberだけでなく Waymoにも押されており、何とか巻き返しを図りたい。そこでロボタクシーで勝負することを選び、パートナーにBaiduを選んだ、というのが中島の見方である。

ただし、中国製の自動運転車は今のアメリカには持ち込めない。中島によれば、ネットにつながった自動車のようなものは危険だから持ち込むな、という話があるため、Baiduの自動運転車をアメリカで展開するのは無理だという。そうなると、Baiduと組む以上、展開先は欧州になる。中島は、FreeNowの買収はBaiduと組んで欧州に出ることを前提にしたもので、そのために必要だったからFreeNowを買ったと解釈してよい、と述べた。

本当のインパクトは「Baiduが欧州に来る」こと

続いて聞き手は、この提携がLyftに将来どんな競争優位をもたらすかを尋ねた。中島はこれに対し、Lyftがどうなるかよりも、Baiduの欧州進出として捉えた方がインパクトを正しく見られるかもしれない、と問いの軸をずらした。Lyftは自分が生き残るためにこの戦略を選んだのだろうが、最も大きいのは、すでに中国国内の都市で自動運転を実際に運用しているBaiduが、それを欧州に持ち込めるようになる点だという。

中島はこれをアメリカの状況と対比する。アメリカではTeslaとWaymoが「ガチの戦い」をしており、Teslaが技術面でもサービス範囲でもWaymoに徐々に追いつこうとしている。そうした競争が進む中で、中国ですでにロボタクシーを運用しているBaiduが欧州に出るというのは、中島自身「インパクトとしては大きすぎてどう解釈していいかわからない」と率直に述べるほどの出来事であり、世界の自動運転の競争に与える影響はひょっとするとすごく大きいかもしれない、と話した。

安全保障上の懸念とトランプ政権の反応

一方で中島は、この展開には「いろんな意味で心配」があると付け加えた。中国が技術的に伸びていること自体は以前から起きていることで、仕方がない面もある。しかし、中国がフルにコントロールする自動運転車が西側の欧州を走り回る状況が、国防・安全保障の観点から望ましいのかについては大いに疑問がある、というのが中島の立場である。

そのうえで中島は、トランプ政権が「NATOの一員なのに何をしているのか」と欧州に文句を言うかもしれないと予想し、ここは注目に値すると述べた。これは中島の推測であり、実際にそうした動きがあったという話ではない。

TeslaとWaymoは慌てて欧州に出るべきではない

聞き手は、Baiduの欧州参入がTeslaやWaymoとの競争にどんな変化をもたらすかを尋ねた。中島はまず、WaymoもTeslaもまだ欧州に行けるような状況にはなく、特にTeslaはそうだと指摘する。だからこそ両社はまず米国内で足場を固める必要があり、Baiduの動きに慌てて欧州に出るような浮き足立ったことをすれば「ろくでもない」ことになる、と中島は考えている。まずは米国でしっかりやってほしい、というのが中島の意見だ。

GoogleはWaymoの欧州展開の準備くらいはしているかもしれない、と中島は推測する。ただ、自動運転の展開は単なる技術の話ではなく、各国の法規制との関係が絡むため、そこが厄介だという。その点でLyftがFreeNowを買収したことは、各国との関係をうまく築くための道具を手に入れたという意味で、政治的に良い動きだったと中島は評価した。それでも今後どうなるかは「すごく読みにくい」と留保している。

地域ごとの「棲み分け」が起きる可能性

先行きは読みにくいとしつつ、中島は一つのシナリオを挙げた。トランプ政権が横から口出しをしなければ、Baiduが欧州で勢力を伸ばし、中国と欧州ではBaiduの自動運転車が走り回り、アメリカではWaymoとTeslaが戦う、という場所による棲み分けが起きる可能性は十分にある、という見方である。

「クルマを持つ時代」の終わりと欧州自動車産業への脅威

最後に聞き手は、そうした棲み分けが起きた場合の世界市場への長期的影響と、Lyftが築けるポジションについて尋ねた。中島は「ちょっとLyftに注目しすぎだ」と返し、Lyftではなく欧州の産業全体の問題として答えた。

中島の議論の前提は、自動車を所有する時代から、必要に応じて呼び出す時代へと変わりつつあるという認識である。そうであれば、ロボタクシーはタクシー市場やUberのような配車市場を奪うだけでなく、自動車そのものの市場を置き換えるかもしれない。中島はこれを「ものすごく大きな話」と位置づけ、その市場を欧州でBaiduに取られてよいのか、と問題提起した。

欧州には、特にドイツのBMWやメルセデス・ベンツのように産業を支える重要な企業がある。それをみすみす中国のBaiduに明け渡すのはかなりまずいことになる、と中島は述べた。さらに欧州には、すでに非常に安くて性能の良い電気自動車が入ってきており、欧州の自動車メーカーはそこで踏ん張らなければならない状況にある。そこへ一歩先を進んでいるBaiduがロボタクシーで参入してくることは、欧州の自動車会社にとってかなり厳しい話になる、というのが中島の結論である。

結び

聞き手は、LyftはBaiduと組むことで一つの足がかりを得たものの、世界規模のロボタクシー競争はまだ始まったばかりだとまとめた。中島の議論から残る問いは、欧州がBaiduの参入をそのまま受け入れるのか、アメリカ政府が安全保障を理由に介入するのか、そして欧州の自動車メーカーがロボタクシーへの移行の中で自らの市場を守れるのか、という点である。