本部と加盟店、どちらが儲かり、どちらが生き残るのか:永井隆志が語るフランチャイジーの増店・ドミナント・人事評価

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概要

M&A BANKの島袋直樹が、FC BANKのパートナーである永井隆志(タカさん)に、フランチャイズ加盟店の立場から見た経営戦略を聞いた回である。永井はベンチャーリンク時代にガリバーや牛角などのFC本部構築と加盟開発に関わってきた。テーマは4つある。本部と加盟店のどちらが儲かるのか、マルチフランチャイジーとは何か、正しいドミナント戦略とは何か、エリアマネージャーに何を任せるべきか。最後に、永井のベンチャーリンク時代の「武勇伝」が語られる。

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永井の立場は一貫している。正しいフランチャイズなら儲かるのは本部だが、長く見ると潰れずに残るのは複数の業態に加盟している加盟店のほうだ、というものである。

正しいフランチャイズなら本部が儲かる:牛角の計算

永井はまず、正しいフランチャイズであれば間違いなく本部が儲かると言い切る。本部はノウハウを加盟店に教え、その対価で儲かるのがフランチャイズという仕組みだからである。

根拠として永井が示したのが牛角の数字である。永井によれば、牛角はピーク時に1000店舗あり、今もギネスブックに載っている。1店舗の平均売上を月800万円、ロイヤリティを5%とすると、1店舗あたり月40万円が本部に入る。1000店舗なら月4億円、年間で約50億円のロイヤリティ収入になる。これは粗利であり、ほぼ利益に近い。

一方、1店舗の加盟店は月800万円を売り上げ、ロイヤリティを払った後に20%程度が手元に残る。20%とすれば月160万円、年間で約2000万円の利益である。本部の50億円と比べれば、どちらが儲かるかは明らかだと永井は言う。

ただし永井が強調するのは、本部が儲かる理由そのものだ。加盟店はロイヤリティを払っても20%の利益が残るので、もっと出店したいと考えて増店する。その結果、500店舗、1000店舗と数が増え、本部のロイヤリティ収入も増える。本部が儲かるのは、加盟店が儲かることが前提になっているからである。

島袋はこれに対し、エニタイムフィットネスやカーブスのように、初期に加盟して本部の拡大スピードについていき、自分たちも出店を加速させた加盟店はかなり儲かっている印象がある、と返した。永井もそれは認める。永井が知る牛角の最大のフランチャイジーは20数店舗を運営しており、先ほどの計算で言えば月4000万円程度、年間5億円の利益になる。額では本部に及ばないが、1つの業態で年5億円の利益を出せるビジネスモデルになっていること自体がすごいことだ、と永井は評価した。

正しくない本部と、急成長期の危うさ

では正しくないフランチャイズはどうなるか。永井によれば、加盟店はロイヤリティと加盟金を払うと手元に何も残らない。最初は本部だけが加盟金とロイヤリティで儲かるが、加盟店は増えない。儲かっていない加盟店に対してSVも何もしてくれないとなると、集団訴訟が起こり、本部は多額の損害賠償を払うことになる。その結果、本部は倒産に追いやられていく。これがフランチャイズの怖いところだと永井は話す。

島袋は、急成長している本部には意外に危険な面があり、感覚的には20店舗から70〜80店舗くらいまで伸びている本部には、ある程度きちんとデューデリジェンスをしてから加盟したほうがいいのではないかと問いかけた。永井は「間違いない」と同意する。

永井によれば、フランチャイズ本部はフェーズを大事にしなければならない。本部の体制が整っていないのに、流行りの業態で加盟だけを一気に集めると、出店待ちの加盟店が溜まる。本部は物件を提供できないため、加盟店が見つけてきた物件で、立地診断もまともにしないまま出店させることになり、トラブルにつながる。10店舗まで伸ばし、20店舗で一度止めてそこでしっかり利益を出させる。その体制が本部にできてから次のフェーズに移り、一気に加速させる。フェーズを見ていない本部は、本部体制と加盟数のバランスが取れず、トラブルに陥るケースが多いという。

1店舗が成功したら、次を出すべきか

島袋は加盟店側によくあるケースを挙げた。立ち上がったばかりの本部に加盟し、1店舗目が儲かった。他の加盟者に取られる前に押さえようと、さらに5店舗を一気に契約する。ところが出してみると、5店舗の多くが収支トントン程度にとどまる。このとき加盟店は、次を取りに行くべきか、我慢して他の加盟店の出店を待つべきか。

永井は、最終的には加盟店と本部のコミュニケーションで決まるとしたうえで、判断の基準を示した。成功している1店舗があるなら、その成功要因が何なのかを本部がきちんと理解しているかどうかが非常に重要だという。物件なのか、業態なのか、働くスタッフなのか。本部に聞いてそれに答えられなければ、やめたほうがいい。答えられないのは、本部自体がまだ試行錯誤の段階にあるからだ。

成功要因の種類によっても判断は変わる。永井によれば、人に依存している場合は、同じレベルの人を採用できるかが全くわからない。加盟側に同じレベルの人材がいる、あるいは見つけられるのであればもう1店舗やってもよいが、人が一番怖い。逆に、ロケーションがこの業態にぴったりはまったから成功しているのであれば、同じようなロケーションを探せばいいだけなので難しくない。

島袋が「10店舗未満は難しい」と言うと、永井も成功事例が少ないから難しいと応じた。

マルチフランチャイジーとメガフランチャイジー

マルチフランチャイジーの意味について、永井は明確な定義はないと前置きする。牛角を2〜3店舗運営しているのもマルチフランチャイジーであり、牛角1店舗、ガリバー1店舗、レモネード1店舗のように複数業態を運営しているのもマルチフランチャイジーである。要はフランチャイズ加盟で複数店舗を運営していることを指す。

その上にメガフランチャイジーという言葉がある。永井によれば、1業態もしくは複数業態で10〜15店舗程度を運営しているのがマルチ、15店舗以上になるとメガフランチャイジーと一般的に呼ばれている。

「会社が潰れないのは本部じゃなくて加盟店」

島袋は、2週間前に永井と会ったときに聞いた言葉が忘れられないと切り出した。本部のほうが儲かると言いながら、会社が潰れないのは本部ではなく加盟店だ、という言葉である。

永井はその意味をこう説明した。長年フランチャイズに関わってきて振り返ると、本部として残っているところのほうが少ない。一方で、ガリバーに加盟し、その後いろいろなフランチャイズに加盟してメガフランチャイジーになった会社は、永井の記憶する限り1社も倒産していない。加盟店が良いフランチャイズに加盟し、事業ポートフォリオをしっかり考えて複数の業態に加盟していれば、景気に左右されにくく、時代に合わせて加盟先を選べる。そういう強みを持つところが残る、というのが永井の見方である。名前は言えないが、永井が知る限りではフランチャイズ本部のほうがなくなっているケースが圧倒的に多いという。

本部がなくなる共通点を問われた永井は、時代の流れを挙げた。フランチャイズ本部はその事業しか運営していない。たとえばゴルフ関連の本部なら、ゴルフ人口が下がり続けると、本部としては加盟店を増やすしか手がない。しかし人口が減っている以上、衰退産業のフランチャイズに加盟したい人はおらず、加盟も取れない。既存加盟店の売上も落ち、ロイヤリティも落ちる。V字回復する要素がなくなってしまう。

そこで永井が最近フランチャイズ本部に伝えているのが、1つのビジネスモデルの寿命は5年程度だと考えておくことだ。たとえばラーメン店の業態を立ち上げたとしても、ずっと利益を取り続けられるわけではないことを前提にする。物件の契約が10年なら、5年後にはまだ5年残る。その物件で展開できる次の業態を本部が用意しておくのも本部の役割だと、永井は言い続けているという。それが結果として本部も生き残れる方法になるのではないか、と永井は考えている。

島袋が、1つのブランドが当たったら次のブランドを探しに行くのは必須かと確認すると、永井は「マストだと思う」と答えた。昔は業態の寿命は10年と言われていたが、どんどん短くなって5年になってきている。だから投資回収が早いことがより重視されるようになり、右肩下がりになってきた段階で次の業態に挑戦する。加盟する企業の側で言えば、それがマルチフランチャイジー、メガフランチャイジーという発想につながっていく、と永井は話す。

正しいドミナント戦略とは何か

永井はドミナント戦略を次のように定義した。その業態がたとえば店舗の半径1kmでどれだけの商圏人口があれば成り立つビジネスなのかを十分に理解したうえで、まず1店舗を出す。そのうえで商圏が重ならない近隣エリアに出店していく。

メリットとして永井は4点を挙げる。1つ目は認知度である。10kmの範囲に3店舗出せる業態であれば、3店舗で面を押さえることで認知が上がる。3店舗あればガリバーが認知される、という例を永井は挙げた。2つ目はスタッフの融通である。A店のスタッフが休みならB店から誰か回す、といった人員のコントロールがしやすい。3つ目は、飲食店なら在庫を回せるので食材ロスが減ること。4つ目は集中したプロモーションを打てることである。一方、最大のリスクはカニバリゼーション(自社店舗同士の顧客の奪い合い)が起こらないかという点だという。

島袋が運営するクラブピラティスを例に、1店舗がうまくいって次を出そうとしても物件があるかどうか次第ではないか、という話になった。永井は物件は「生もの」だとしたうえで、まずクラブピラティスがドミナント戦略の通用する業態なのかを考えるべきだと指摘する。

永井によれば、同じクラブピラティスでも、近隣に競合がある場合とない場合では売上が変わるはずだ。恵比寿に1店舗あって次に大山を検討したとき、大山に競合が2店舗あるなら、あえてドミナントを狙うのが正解とは限らない。競合がいない池袋でいい物件が出たなら、そこに出店するのは十分ありだという。4〜5年前にはピラティスと言っても何それという反応だったのが、今は誰もが知るものになり競合も増えている。判断は難しいとしながらも、永井はクラブピラティスならあえてドミナントにする必要はないと考えている。絶対にドミナント戦略を取るべきだとは思っていない、というのが永井の立場である。

ガリバーとトヨタ:スピードで面を押さえた事例

一方で永井は、ドミナントとスピードが効いた事例としてガリバーの経験を語った。当時永井はセミナーなどで、必ずトヨタが参入してくると言い続け、トヨタが入ってくる前に面をすべて押さえよう、そうすればトヨタは諦めるからと訴えて、一気に出店を加速させた。

永井が言い始めて2年ちょっとで、トヨタは「T-UP」を立ち上げて参入してきた。永井は「来たか」と思ったが、その時点で車買取専門店ガリバーはすでにデファクトスタンダードになっていた。永井によれば、天下のトヨタでも勝てずに全面撤退し、今はないという。

島袋が、マーケットが伸びているときはスピードが大事だとまとめると、永井も同意しつつ、そのスピードに本部体制をちゃんとついてこさせなければならないと付け加えた。前半で語られたフェーズの話と同じ留保である。

エリアマネージャーは「面」で考える

1店舗、2店舗、3店舗とうまくいくと、早い段階でエリアマネージャーを置くケースが多い。その役割について、永井は業態によって変わるとしつつ、原則を示した。エリアマネージャーは1店舗の売上・利益を追求するのではない。たとえばドミナントで5店舗を担当するなら、その5店舗全体の売上・利益をどう高めるかだけを考えるべきだという。

具体的な仕事として永井が挙げたのは、地域のイベントを打つこと、マーケットを調べてそれに合わせたプロモーションを打つこと、人材育成や店長教育、A店がいつも満席ならB店に客を流して全体の売上を上げられないかを考えること、そして飲食であればB店で余っている食材をC店に回すなどして在庫ロスを減らし、食材原価を下げることである。常に面で捉えて、5店舗合計の売上・利益、そして顧客満足度を上げるために何をすべきかを考えるのがエリアマネージャーの仕事だと永井は話す。

人事評価:牛角は店長評価に売上・利益を入れなかった

島袋は、複数ブランドに加盟していた経験から、人事評価が非常に難しいと感じていると打ち明けた。店舗や業態によって収益性も労務環境も違うなかで、マルチフランチャイジーやメガフランチャイジーはどうしているのか、という問いである。

永井は、さまざまな業態に加盟するメガフランチャイジーの人事評価は非常に難しいと認めたうえで、成果と能力の2軸で考える方法を示した。成果は売上・利益、能力はマネジメント能力や問題処理能力などである。業態が違えばKPIもすべて違うので、マネジメントや危機管理能力といった能力面は全業態で同じ評価基準にし、成果面はそれぞれの業態ごとにKPIを作って評価する。

さらに永井は、牛角の西山さんの例を紹介した。牛角では店長の評価や収入に、売上・利益という項目を一切入れていなかったという。そのため、売上の大きい店舗に異動したから給料が上がる、ということにはならない。KPIは顧客対応やGoogleのレビューといった部分に置かれ、売上・利益はまったく反映されない仕組みだったと永井は話す。

島袋が売上・利益はあまり評価に影響させないほうがいいのではないかと言うと、永井は「絶対そうだと思う」と答えた。顧客満足度が高ければ結果として売上は上がる。しかし数字ばかりに目が行くと、衛生管理などがおろそかになる傾向がある。だから売上・利益はあまり評価に入れないのが理想だという。島袋は、自分たちも顧客満足度やスタジオがきれいかどうかといったKPIを軸にしたほうがいいと感じた、と受け止めていた。

武勇伝(1):ドルフィネットシステムと大阪のセミナー

最後は永井の「武勇伝」である。ベンチャーリンク時代、永井は月に20日ほど全国でセミナーを回り、ガリバーをはじめさまざまな事業説明をしていた。

その中で扱ったのが、ガリバーがフランチャイズで始めた「ドルフィネットシステム」である。永井によれば、今でこそネットで中古車を探すのは当たり前だが、当時はそうしたものがなく、ガリバーが初めて作ったという。ガリバーのビジネスモデルは、客から車を買い取り、それをオークションに出して利益を取るというものだ。オークション会場は月末のほうが価格が上がるといったデータがあるため、買い取った車を1ヶ月から1ヶ月半ほど倉庫に置いておく。その間に写真を撮ってネットで売ろうというのがドルフィネットシステムの発想だった。

これをフランチャイズとしてガソリンスタンドを中心に売り込んだ。給油の間に、そろそろ車検だから次の車を選ぼうか、といった形で使ってもらうイメージである。販促にはファックスDMを使った。永井によれば、当時のファックスDMの反応率は0.1〜0.3%、つまり1000件送って1〜3件と言われていたが、ドルフィネットシステムのDMは反応率が5%ほどあり、ベンチャーリンクのファックス機が壊れるのではないかというほどだった。セミナーも立ち見が出るほどの反響だったという。

ところが大阪のセミナーでは雲行きが違った。中古車センターの経営者たちが、ドルフィネットで車が売れたら店に客が来なくなり自分たちの会社が潰されると考え、大勢集まってきたのである。永井が話し始める前から、最前列の人が録音ボタンを押し、威圧的な言葉を浴びせてくる。永井は生まれて初めて警察を呼び、待機してもらったうえで、声を震わせながら最後まで説明をやり遂げた。中古車センターの人々は、こんな商売は誰もやらないといった言葉を残して帰っていった。その様子を見ていたガソリンスタンドの人たちは、永井を心配しつつも、彼らが帰った後に加盟したいと申し出てきたという。加盟は取れた。

中古車センターの人々が加盟する側に回れなかったのは、ガリバーを「うさん臭くない」ものにするため、中古車業を営む人は加盟できないという条件を永井自身が設けていたからだという。加盟できない以上、潰しにかかるしかなかったわけで、永井は本当に命の危険を感じたセミナーだったと振り返る。

武勇伝(2):「片道切符営業」

永井はもう1つ、今なら絶対NGだと断ったうえで「片道切符営業」を部下にさせていたことを明かした。財布は上司である永井が預かり、福岡までの片道チケットとキャッシュカード1枚だけを渡す。毎日5000円を振り込むが、加盟を取るまでは帰りのチケットを送らない。ホテルは用意したが、1日5000円で朝食、昼食、交通費をまかなうため、遊ぶ余裕は一切ない。毎晩23時から営業結果を聞いて永井がレビューし、このままだと福岡に住むことになるぞ、と発破をかけていたという。

対象には女性社員も含まれていた。最も長く帰れなかった人は2ヶ月半ほどだったという。島袋が今なら即アウトだと言うと、永井も即アウトだと認める。当時はそれが当たり前だったが、当時のメンバーはガッツがあったと永井は振り返り、そういう時代に戻りたい気持ちもあるとしながら、今はみんな笑い話として話してくれるので、あれはあれで良かったのかもしれないと語った。そして最後に「すいませんでした」と謝罪し、この回は締めくくられた。