FC加盟前に確認すべきこと:営業トーク、契約条件、物件、加盟者の姿勢

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概要

フランチャイズ(FC)に加盟するとき、失敗しない本部はどう選べばよいのか。FC BANKのこの回では、ピラティスチェーン「CLUB PILATES」の日本法人を率いる島袋直樹氏が聞き手となり、ベンチャーリンクなどでFC加盟開発の営業を長く担ってきた永井隆志氏(タカさん)に話を聞いている。島袋氏は、FCの成否は「いつ、何を、誰が、どこでやるか」で変わるので本部だけで一概には言えないと前置きしたうえで、これから加盟を検討する人向けの判断材料を尋ねた。永井氏の答えは、営業トークの聞き分けから、契約書の条項、物件契約、出店立地、そして加盟者自身の姿勢にまで及んだ。

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「今月中なら」という営業トークは警戒する

島袋氏がまず尋ねたのは、本部の営業担当や社長が勧誘するときの「香ばしい」言い回しである。永井氏は、自分がもともと加盟を獲得する側の営業マンだったと明かしたうえで、営業マンは相手を自分のペースに乗せようとするものだと説明する。相手がペースに乗ってくれば「この人は加盟するな」、乗ってこなければ「今は厳しいな」と判断できるからだ。

そのためによく使われるのが、今月契約すれば何かメリットがあると示す手法だという。永井氏が挙げた典型例は、「このエリアはもう1社が検討中で、今は待ってもらっている。今月を過ぎるとオープンにしなければならないが、今月中なら御社にお任せできる。どうしますか」という誘い方だ。「今月で一次募集が終わる」「来月から加盟金が上がる」「今月契約すれば加盟金をいくら割り引く」といった特典の提示も、永井氏は最も危ないパターンだとする。

島袋氏は、FC BANKでも募集期限を設けているが問題ないかと確認した。永井氏は、それは本部が決めた一次募集の期限を正しく伝えているだけだと答え、島袋氏も、月数万円のサロンコミュニティと数千万円かかることもあるFC加盟とは性質がまったく違うと整理している。

良いことしか言わない営業マンを疑う

永井氏によれば、本部には成長のフェーズがあり、特に初期段階の本部に完璧なところはない。良い面も悪い面もあるのが当然なのに、良いところしか言わない営業マンは要注意だという。逆に「本部の良いところはここで、まだ改善中なのはここです」とネガティブな話も出してくる営業マンは信用できる、というのが永井氏の経験則である。ネガティブな事柄をきちんと言葉にして説明できる力が担当者にあるかどうかが見るべき点だとした。

「ノーと言えない営業」をしていた側の反省

永井氏は、自分はベンチャーリンクで一番FC加盟を獲得してきたと笑いながら、自身の営業スタイルを振り返った。永井氏のポリシーは、絶対に成功してもらえると思ったFCにだけ加盟してもらうことだった。そのうえで行っていたのが「首を横に振れない営業」、つまり断る理由を先回りして一つずつ潰し、「もう契約するしかないですよね。では何月に何件契約しますか」と進める営業だったという。

加盟すれば必ず成功してもらえるという気持ちがあったからこその営業だったと永井氏は言う。一方で、今思い返すと、100%の成功などありえない以上、リスクをもっと丁寧に説明し、納得してもらってから契約してもらうべきだったという反省もあると語り、それを今に生かしたいと述べている。

店舗間の売上差を説明できるか

では、ネガティブな情報をどう判断材料にすればよいのか。島袋氏は、初期段階のFCで店舗が5つしかなく、そのうち3店舗はオープンから半年ほどで、これから数字が伸びる想定だという例を挙げた。全店黒字ならよいが、なかなかそうはいかない。

永井氏の答えは、既存店の売上をすべて開示してもらい、一番良い店と一番悪い店の差が何から生じているのかを聞くことである。これにすらすら答えられない営業マンは事業を理解していない可能性が高いので、担当を替えてもらうか、本部の上位者に話を聞かなければ契約できないと伝えるべきだという。

島袋氏は、本部の側に悪気はなくても知見が足りず、情報を伝えられないケースも多いと補足する。自身も本部を運営している立場から、何十店舗と出てデータが揃って初めて失敗の確度が高い条件が見えてくると話した。これに対し永井氏は、加盟を取る営業マンはそうしたデータを頭に入れてから営業するのが本来の姿だとする。百円、二百円の買い物ではなく、クラブピラティスなら1店舗で数千万円かかる意思決定なのだから、最低限そのくらいのデータを把握していない営業マンは信用できない、という考えだ。島袋氏は、クラブピラティスではすでにかなりデータが揃っていると述べている。

加盟条件はイニシャルの総額と更新条件から

加盟条件で気をつける点として、永井氏はまず金額面を挙げた。加盟金の高低ばかりが注目されがちだが、実際には保証金や研修費など加盟金以外にもさまざまな費用がかかる。初期費用が総額でいくらになるのか、契約期間は何年で、満了時に更新できるのか、更新にはいくらの更新料が必要なのかを確認すべきだという。

テリトリーの書き方は契約書で必ず確認する

FCで重要なのはエリアのテリトリー権だと永井氏は言う。契約書には必ずテリトリーに関する文言があり、「店舗から半径3km以内はあなたのテリトリー」と明記されたものもあれば、非常に曖昧に書かれたものもある。

曖昧に書かざるを得ない事情も理解できると永井氏は説明する。ラーメンのように市場が飽和状態であれば、半径3kmのテリトリーを約束できる。しかし急成長している市場では、今は人口10万人に1店舗でも、いずれ3万人に1店舗になるかもしれない。そうした業態では、その時々の状況で本部が判断すると書かざるを得ない場合がある。どちらが良い悪いではないが、必ず文言で書かれているので確認してほしいというのが永井氏の主張である。

競業避止は範囲に注意し、事前に交渉する

もう一つよくある論点が競業避止義務である。永井氏によれば、一般的には退店後3年、長いところで5年、同業を営むことが禁じられる。怖いのは「同業」の範囲だという。

永井氏は流行中のマーラータンを例に挙げた。マーラータンの競業にあたる業種として、ラーメンまで含まれているケースがある。同じマーラータンを始めてはいけないのは当然だが、契約書に「麺類」と書かれていればラーメンのFCにも加盟できなくなり、「麺類またはスープ」とあればスープ専門店もほぼできなくなる。

島袋氏は、競業避止の範囲は加盟前に本部と交渉できるのではないかと確認し、広すぎる場合は限定するよう交渉した方がよいと考えを述べた。永井氏も可能だと答え、そうすべきだと同意する。契約書には「本部が認めたものはこの限りではない」と書かれていることが多いが、それは約束されたものではない。永井氏は、契約の段階で「この事業がうまくいかなかったら次はラーメンをやりたいので、ラーメンは外してほしい」と交渉し、一筆書いてもらってから契約することを勧めた。

契約期間と中途解約の違約金

契約期間は長い方がよいのか短い方がよいのか。永井氏は、中途解約の条件によってどちらがよいかが変わると答える。FC加盟では成功することばかり考えるのではなく、万が一失敗してやめるときに損失をどれだけ抑えられるかが重要だからだ。

永井氏は、中途解約した場合に「これまでの平均ロイヤリティ×残りの契約期間」を違約金として払うよう定めた契約書も見たことがあるという。そうした条項があれば、契約期間が長いほどリスクは大きくなる。一般的な契約期間は3〜5年ほどだとした。

島袋氏が、実際に残り期間分のロイヤリティを請求された例を聞いたことがあるか尋ねると、永井氏は聞いたことはないと答えた。表に出ず示談になっている可能性もあり、ゼロとは言えないという点で二人の見方は一致している。島袋氏は、加盟者はうまくいく前提で考えがちだが、本当に怖いのはやめるのにもお金がかかることで、それを最初に見積もるかどうかが重要だとまとめた。

物件契約:赤字でもやめられない加盟店

永井氏は、前回の回でFCの失敗要因は物件によるところが大きいと話したことに触れ、物件契約にも同じ注意が必要だとする。大手不動産会社が運営するような商業施設は集客力があって魅力的だが、中途解約時の違約金や原状回復費用が非常に高い。そのため「やめたくてもやめられない」加盟店を数多く見てきたという。赤字なのでやめたいが、原状回復に5000万円かかり、そのお金がないのでやめられない、という相談が非常に多いと永井氏は話す。FC契約書だけでなく、物件契約でも途中解約時の違約金や原状回復費用を確認してから契約すべきだというのが永井氏の主張である。

交渉できるのかという島袋氏の問いには、大手は難しいと答えた。交渉するとすれば、預けている保証金の範囲内で収めてもらえるよう求める余地はあるという。

永井氏は自身の経験も紹介した。ある大手不動産会社の商業施設で、後継テナントを自分で探して紹介し、近い業態なので内装をそのまま使えるから原状回復は不要ではないかと申し入れた。しかし先方は一度スケルトンに戻すよう求め、次のテナントもまた使うはずの天井のスプリンクラーまで外す費用も含めて、すべて払わされたという。こうしたケースは残念ながら多いと永井氏は述べる。

モール出店は階数より動線

島袋氏は、モールには人が集まるので成功しやすいと思えるが、出店時の特徴はあるかと尋ねた。永井氏は、階数というよりも動線が非常に重要だと答える。エスカレーターを上がって最初に目に入る場所と、横にそれた場所とでは客の流れがまったく違う。同じ2階でも、人が多く流れる場所と、客の目が向かず人が流れない場所がある。同じ業態でも、動線の良し悪しで売上はまったく変わるという。

一方で階数も無関係ではない。永井氏は、世話になっているイオンを例に、1階にスーパーや物販、2階にレストランフロアやフードコートがあるような構成が多く、1〜2階ならほぼ売上が取れるが、3〜4階になると保険の窓口などが入り、客層が一気に落ちるので、そこへの出店はやめた方がよいと述べた。

島袋氏が、フィットネスは上の階に入りがちだと指摘すると、永井氏は、フィットネスは目的をもって行く業態なので、スーパーのついでにクラブピラティスへ行くような使われ方であれば3〜4階でも問題ないと答えた。これに対し、アイスクリームのように通りがかりに目に入って食べたくなる、目的性の低い業態は、1〜2階でなければ厳しいという。

駅前・ロードサイド・商業施設の見極め方

島袋氏は、クラブピラティスでもどのテナント形態の勝率が高いかをデータ化していると明かしたうえで、駅前、ロードサイド、テナントそれぞれの見極め方を尋ねた。ロードサイドで実績がなくても爆発する可能性のある業態もあれば、失敗する業態もある。

永井氏は、一番確実なのは「入口を押さえる」ことだとする。乗降客数の多い駅の出口や駅構内で、最初に出てくる客を捕まえるのが最も簡単だという。ロードサイドは話がややこしく、中央分離帯があって反対車線から入れるかどうか、車速が速すぎてドライバーが減速して曲がれないかどうかなど、さまざまな条件で結果が変わると説明した。

商業施設の場合は、「箱」の売上、つまり施設全体の年間売上が50億、100億、200億、300億円のどれくらいかが重要な判断材料だという。イオンにも総合スーパー系とイオンモールがあり、規模は異なる。飲食で永井氏がベンチマークにしていたのは銀だことサーティワンで、ほとんどの施設に入っているため、両店の月商を聞けば、ラーメンならこのくらい売れるという見当がついたという。島袋氏がモール内の売上ランキングと比例するのかと尋ねると、永井氏はほぼ比例すると答えた。

島袋氏は、千葉・館山のイオンタウンを訪れた体験を話した。周囲に何もなく施設もかなり古いが、そこに入っている「Bクイック」の業績が非常に良かったという。島袋氏は、競合がなさすぎるためにそうしたモールが穴場になっているのではないかと考えた。永井氏は、近くにさらに大きな商業施設ができない限りは安定しているのではないかと応じ、人々が注目しないエリアは家賃もそれほど高くないだろうから相当利益が出るだろうと見立てた。ただし、近隣に別の商業施設ができると客が一気にそちらへ流れ、これは店舗側の営業努力ではどうにもならない。どの商業施設にも共通するリスクだと永井氏は付け加えている。

契約前に必ず聞くべき2つのこと

加盟前に営業担当や社長に絶対に聞くべきことは何か。永井氏はまず法定開示に触れた。FC契約の際には法定開示書面について営業マンから説明を受け、署名する手続きがあり、そこには過去の訴訟の有無を明記しなければならないという。法定開示が準備されていない本部であれば、現在抱えている、あるいは過去にあったFC関連の訴訟の有無を必ず確認する必要があるとした。島袋氏は、加盟者から「言っていたことと違う」と訴えられた裁判があるかどうか、ということだと言い換え、別の文脈の訴訟ではなくFCに関する訴訟が対象だと確認している。

もう一つは、先の話の繰り返しになるとしつつ、頑張ったがうまくいかなくなったときにどうすれば解約できるのかを聞くことだ。ロイヤリティを何か月分払えばよいといった説明がきちんとなされれば問題ないが、答えられない場合は危ういと永井氏は言う。

島袋氏は、別の業態で経験した話を紹介した。「解約合意書を交わせば解約できる」と言われて安心していたが、実際に中身を見ると合意書の内容がえげつなかったという。永井氏も「あるね」と応じた。島袋氏は、解約合意書が存在するなら事前に見せてもらうべきだとし、永井氏も契約前に見せても何の問題もないもので、加盟検討者が求めるのは当然だと同意した。二人は、訴訟の有無と解約条件の2点を「マスト」と位置づけ、加えて、うまくいっている店とそうでない店の違いを解像度高く説明できるかを見るべきだと整理した。

FCに向いていない人3タイプ

最後に島袋氏は、FCは悪いものではなく、優秀な人が良いタイミング、良い場所でやれば儲かるし、オーナーのセンスや資金力なども影響すると前置きして、FCはやめておけという人の特徴を尋ねた。永井氏はこれまでの経験から3つのタイプを挙げた。

1つ目は素直でない人、頑固な人である。FCは儲かるノウハウを教える仕組みなのに、それを受け入れず、「自分の経験上そのやり方はダメだから、このやり方で集客する」とする人がいる。まずは本部の言うことを真面目に素直にやってみる姿勢がなければ無理だという。

2つ目は資金に余裕がない人。3つ目は、お金を出して加盟さえすれば儲けさせてもらえると勘違いしている人である。ここでいう「加盟したのだから」とは、物件選びなど特定の段階の話ではなく、契約を結んでお金を払った時点で、自分は何も努力せず本部が全部やってくれると考える意識のことだと永井氏は説明した。加盟金もロイヤリティも払ったのになぜ利益が残らないのか、と言う加盟者も過去にかなり多かったという。そういう人はうまくいかないので、ラーメンが好きならゼロから修業して自分でやってほしい、と永井氏は笑いまじりに話した。

本部への提言は歓迎、初期の加盟店が本部を育てる

島袋氏は、パッケージを試しもせず独自のやり方に走るのはダメだとしても、一通りやったうえで「こうすればうまくいくのでは」と本部に提言するのはどうかと尋ねた。永井氏は、それは素直でないこととは別で、まず言われたことをしっかりやったうえで前向きな提案をしてくれる人はどんどん提言すべきだと答えた。特にアーリーステージの本部は、そうした意見を受けてブラッシュアップしていくものなので、本部にとっても良いことだという。永井氏は、アーリーステージではそうした思考の人に加盟してもらうことが本部の成長につながると述べた。

島袋氏も自身の経験を重ねた。クラブピラティスでは最初に加盟してくれた10名ほどが非常に優秀で、ここまで店舗が増えたのはその人たちのおかげと言っても過言ではないという。加盟募集を始めたのはコロナ禍の時期だったが、中長期で見てくれて、FC経験のある人が「まずは100店舗くらい行きましょう」と言ってくれた。本部も努力すると応え、一緒にリスクを取ってくれる人が多く、皆が増店しているという。面倒な加盟者はいたかと問われると、島袋氏はいないと答え、むしろ自分の方が面倒だと思われているかもしれないと冗談めかした。永井氏は、加盟店に恵まれた理想の形だと評している。

今回は「加盟するときに気をつけること」がテーマだったが、永井氏によれば「契約した後に気をつけること」もあり、二人はそれを次のテーマとして取り上げる考えを示して回を終えた。