収納は多いのに「獣道」ができる家――築6年・6人家族の一軒家で、古堅純子が最初に確かめたこと

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概要

整理収納の講座を受けた人の家は、その後どうなっているのか。今回、古堅純子が訪ねたのは、築6年の一軒家に暮らす6人家族の家だ。依頼主の母親は、古堅が講師を務めた整理収納アドバイザー2級講座の元受講生で、以前、古堅に手紙を送ったこともあるという。講座で学んだ方法を試したものの、家は散らかったまま。母親は「全部、改革してほしい」と頼んだ。

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この回は作業前の下見にあたる。古堅は家じゅうを見て回り、どこに物が溜まるのか、家族が片付けをどう考えているのかを聞き取っていく。最後に下した判断は、家族として方向性を決めない限り、どこから手を付けても同じことになる、というものだった。

玄関先のだるまと、段ボールの「僕の部屋」

白い外観の新しい家に、古堅はまず「素敵な家じゃない」と声をかける。子どもは4人いる。中学2年の長女、小学5年の次女、小学2年の三女、年中の末っ子だ。玄関先には末っ子が作っただるまが飾られていた。古堅は、これを飾るなら周りの物はないほうがいいと指摘する。扉の奥には何かを隠していそうな気配があり、隙間から黒いラベルの箱がのぞいていた。

家に入ると、動く段ボールがあった。古堅の訪問に備えて開いた家族会議で、末っ子が「僕の部屋がない」とつぶやいた。それを聞いた次女と三女が段ボールで「僕の家」を作ったのだという。ただ、末っ子本人はもういらないと言っている。段ボールの中には子どもが3人も隠れていて、古堅は子どもがこれだけいれば散らかるのは仕方ないと笑った。父親はこの日、仕事で不在だった。

カーテンで隠すリビング収納と「物の地」

リビングダイニングで古堅が目を留めたのは、あちこちにあるカーテンだ。リビングクローゼットの入口にも、扉の代わりにカーテンが掛かっている。母親の説明では、自分がずぼらで、扉をつけても開けっぱなしにしてしまう。それで家を設計するときに、カーテンさえ引けばどうにかなるようにしたそうだ。古堅はこの考え方を悪くないと受け止めた。

このクローゼットは1.5〜2畳ほどの広さがある。末っ子の身支度コーナーにするつもりだったが、実際には母親の荷物まで置かれていた。古堅はここを、パブリックとプライベートの「境界線」にあたる場所だと見る。一度物を置いてしまうと、ずっとそのままになりやすいからだ。

母親はこの空間を何度も作り替えてきた。机を置いて自分の部屋のように使おうとしたこともあるし、絵本コーナーや子どもの習い事の道具置き場にしたこともある。どれも使いこなせなかった。古堅は、いちばんよくないのは床に物を広げて「物の地」を作ることだと言う。床に物があると、人はそれをまたいでまで奥へ入ろうとしなくなるからだ。

上の段には、母親が古堅の方法を見習って整えたスペースもあった。古堅が「なんで上からやってるの?下からやろうよ」と突っ込むと、母親は下にあった物を上に移したのだと答えた。つまり物を寄せただけで、状態は以前と変わっていない。

「やるのは楽しい、始めるまでが長い」娘たち

古堅は母親より娘たちに聞いたほうが早いと考え、姉2人に片付けが好きかどうかを尋ねた。答えは「そんなに好きじゃない」。ただ、やること自体は楽しいという。問題は、やり始めるまでに時間がかかることだ。古堅はこれを、物が多く、片付ける範囲が広ければ誰でも嫌になるものだと受け止めた。それでも2人は、きれいな家に暮らしたいとはっきり答えた。

古堅は、みんな忙しいのだから、部屋が片付いていればそれでいいくらいの緩い考え方でいい、と話す。そのうえで、母親が悩んでいるのだから、今回はみんなで力を合わせようと呼びかけた。

L字のダイニングテーブルと、裏にある「獣道」

ダイニングテーブルは、面積を稼ぐために壁際にL字で寄せてある。奥の廊下へ抜ける動線があるため、テーブルを動かすのは来客のときだけだ。家族はこの配置を変えたくないと考えているが、古堅が講座で教えたとおり、その周りには物が溜まっていた。

古堅がダイニングの奥の扉に気づくと、母親は「獣道です」と答えた。扉を開けると、予想以上に大きな空間が広がっていた。勝手口のような場所で、玄関の通路からもつながっている。外からのぞいていた黒いラベルの箱はここに置かれていた。

物は通路ぎりぎりまで積まれ、人ひとりがやっと通れる幅しか残っていない。母親は、買ってきた物をとりあえずここに置いているという。古堅は、これだけいい場所があるのにもったいないと嘆いた。床置きはだめ、動線上に物を置いてはいけない、というのが古堅の指摘だ。玄関からこちらへ抜けられる、回遊できる造りなのに、詰めが甘いと言う。

母親は、講座を受けてから玄関だけは通れるようにしたと話す。ただしそのやり方は、物を減らしたのではなく寄せただけだった。古堅はここで、寄せることより先に大事なのは景色をキープすることであり、物を寄せるのは景色を保つためだ、と説明した。

母親は、空間が広すぎて何を入れたらいいかわからなくなったとも打ち明けた。古堅は、視聴者なら羨ましがるほどのバックヤードだと認めつつ、だからこそルールが必要だと答えた。それでも古堅がより気にしていたのは、バックヤードよりリビング側の景色だった。夫もリビングのような共有の場所をきれいにしてほしいと言っていたそうだ。古堅はそれを聞き、共有の場所以外も相当なのだろうと笑った。

翌日の作業日も夫は仕事で、代わりに母親の友人2人とその子ども2人が手伝いに来る。キッチンには古堅のサインが飾られていたが、ほこりと油にまみれていて、母親はこの日に拭いたばかりだった。

「誰かのせいにしたら一生片付かない」

古堅は母親を、細かい作業よりも外に出かけるほうが好きなタイプだと見た。段ボールの空き箱も気にならないなら、なるべく動いていない物をどこか一か所に寄せられるといい、と考える。ところが実際には、友人が来るからとリビングの物を扉の奥に寄せたまま放置していた。その結果、リビングも裏もどこも同じ見た目になっている。古堅はここで、境界線がいかに重要かをあらためて強調した。

母親は、子どもたちも散らかすと話した。ランドセルは出しっぱなしで、自分が片付けが苦手だから教えられない。子どもたちは母親を見て、散らかしてもいいと思っているのかもしれないという。古堅は、母親ひとりでいきなり頑張るのは無理だと答えた。まず、ここは公共の場所だという意識を家族で持つ。そのうえで、ちょい置きもなんとなく決まった場所にできる雰囲気をつくる。母親はちょい置き場所を作ってみたが、物が溜まる一方だったと言う。古堅は、ここまで溜めるのはやめよう、といったルールが必要だと続けた。

さらに古堅は「誰かのせいにしたら一生片付かないよ」と釘を刺した。みんなに変わりたいという思いがなければ、自分がどれだけやっても無理だという。子どもたちに協力する気持ちがあるか尋ねると、全員が「あります」と答えた。古堅は、めそめそしている母親に向かって、あなたひとりでは無理なのだから協力し合うしかない、と励ました。

青い畳の和室と、ダイニングの角

リビングの隣には青い畳の和室がある。いまは寝室として使っていて、布団は訪問に合わせて片付けてあった。父親、母親、下の3人の5人で寝ている。次女は最近、ときどき自分の部屋で寝るようになった。長女はもともと自分の部屋で寝ている。夫婦には、この和室を来客用に空けておきたいという考えもある。

母親がとくに直してほしいと訴えたのは、ダイニングの角だった。人が集まるのはダイニングの周りなのに、そこに収納がないため物が溜まるのだという。古堅は、ちょい置きのルールを家族で守ることが大事だと話した。子どもは親の言うことはなかなか聞かないが、外から来た自分との約束は守る。それは子どもたち自身が改善案を出すからだ、と古堅は言う。そのうえで、子どもに「置くな」と言っても「お母さんもでしょ」となるのだから、子どもを責めすぎてはいけない、と母親に念を押した。

個室側のほうが片付いている

廊下の先には子どもたちの個室が並ぶ。古堅は、この家がプライベートとパブリックの空間を分けて設計されていることに気づいた。それなのに、パブリックの側がまるで個室のように散らかっている、と指摘した。

長女の部屋は自分で物を並べて片付けていて、古堅は「合格」と評価した。母親も、長女は片付けができると言う。三女の部屋は多少散らかっているが、古堅は大きな問題ではないと見た。机の上は何も置かない状態を目指そう、と声をかけている。三女はまだ寂しくて、この部屋では寝ていない。古堅は、この家の子どもたちは自分の空間になるとちゃんとやれている、と感想を述べた。

次女の部屋はいちばん物が多く、何もかも並べてある状態だった。古堅は「勉強する気ゼロって感じね」と評し、本人も困っていると認めた。古堅は、使ったら戻すことができないとこうなるが、母親が使いっぱなしなのだから難しい、と話す。そして、自分も三姉妹の三女で、野原を駆け回るような子どもだったから昔は散らかしていた、と振り返った。大人になって誰かを家に招くようになると見た目が大事になるから、今のうちに身につけておくといい、と冗談まじりに次女に伝えた。

主寝室は夫の書斎になっている

本来の主寝室は、夫が毎日仕事をする書斎のようになっていた。部屋の一角には物が寄せてあり、大きなクローゼットも散らかっている。古堅は、家が広いので気にならないかもしれないが、物の量は多いと指摘した。母親にも自覚はある。古堅の見立てでは、スペースが広く物を寄せられてしまうぶん、いつまでも改善しない。物の買い方から見直す必要があるかもしれない、という。

講座で整理の方法を学んだのに手放せていないのか、と古堅が尋ねると、母親は少しずつ手放していると答えた。寄せてある物の中には、フリマアプリやリサイクルショップに出す予定の物も含まれていた。夫はこの部屋について、見慣れすぎて何も言わないという。ただ、将来この部屋を末っ子に譲るかどうかは考えているそうだ。母親は一度、ここを寝室にしようと提案したことがある。しかし末っ子はまだ小さく、ベッドから落ちるかもしれない。夫も書斎として毎日使っている。古堅は、子どもが大きくなるまではここを夫の仕事場として優先するのが大事だろうと話した。

母親は、自分のスペースがないから物をあちこちに置いてしまうとも語った。古堅は、母親のスペースを作るならリビングクローゼットのカーテンの裏しかない、と見る。古堅自身も自分の部屋はなく、ダイニングの一角で仕事をしている。昼間だけ借りているような感覚で、狭い場所でやりくりしているという。

目指す家を聞かれた母親は、古堅のYouTubeの「きーちゃんの回」を挙げた。古堅によれば、あの家ではいちばん暴れん坊だった末の子が、いまではいちばん物を戻すようになった。散らかっても戻せることが大事で、そのためには家族を巻き込むことが欠かせない、と古堅は言う。家じゅうを見て、夫の気配を感じたのはこの部屋だけだったとも付け加え、夫も家族の意識が変わることを望んでいるだろうと推し量った。

ロフトの子どもの遊び場

最後に母親は、ロフトもあると切り出した。古堅に倣って「隠す収納」をしたものの、隠し切れていないという。古堅は「もうお腹いっぱい」と言いながら上がってみた。ロフトは運動場のように広い子どもの遊び場で、親戚からもらったおもちゃがあふれ、奥には物が寄せてあった。

母親は、棚が少ないのが原因かと考えていた。古堅は、収納の仕組みが弱いのは確かだが、そもそも物が多い、と答える。子どもの年齢の幅が広く、上の子が使わなくなった物を下の子が使うという事情もある。古堅は、いま遊ぶ物とそうでない物を高さで分けるなど工夫が要ると言う。全部を平置きにすると、この状態になってしまう。遊んだら戻す習慣をつけるには、もっとシンプルにする必要があるというのが古堅の見立てだ。

夫婦の間では、主寝室を末っ子に譲ったら、ロフトを書斎や大人の部屋にする案も出ていた。古堅はこれに賛成し、あの部屋を末っ子の部屋にするときにここを夫婦のスペースにする、と決めてしまえば先が見えると提案した。ロフトにはベッドを2つ置いてクローゼットを作る余裕もあるので、主寝室に夫の物をすべて残す必要もなくなるという。古堅は、今の状態を方向性がぶれていると表現した。ロフトにいま部屋を作ると、物が置かれ続けて終わる気がするとも言う。代わりに、動いていない物は各収納の上や下に埋め、下の子たちが遊べる空間にすればいい。物の位置を変えるだけでもスペースはかなりできる、というのが古堅の考えだ。

とはいえ、作業時間は家まるごとで6時間しかない。古堅は、絶対にやってほしい場所の優先順位を家族で考え、翌日に伝えてほしいと頼んだ。ロフトはエアコンの冷気が奥まで届かず、夏は暑く、冬は暖かい。倉庫にするか遊び場にするか、この家はそこが決まっていないからこうなる、と古堅は言う。物のための部屋を一つ作って他を片付けるのか、物を持たずにシンプルに暮らすのかは家族の方針次第だ。自分の意見を押し付けるつもりはまったくなく、家族が仲良く暮らせるのがいちばん大事だから、そのためにどうするかをもう一度考えてほしい、と締めくくった。

帰宅した夫の意見

撮影の終わりに夫が帰宅した。古堅は、方向性が定まっていないので夫の意見も聞いたうえで翌日に結論を出したい、と伝えた。夫は、いまの状態を「めいそう中」だと言う。そのうえで、「これをここに持ってきて、こう使う」と決め打ちで進めてもらったほうがいいと話した。そうしないと、物がどんどん上に積み重なっていく。下から片付いていればいいが、まったく片付いていないので、いたちごっこになる。かといって時間を作って整理するには、日々の暮らしが忙しすぎる。夫は母親を、とても不器用だとも評した。

古堅は、物の量が完全に母親の管理できる範囲を超えていると見る。寄せたり埋めたりしてきたが、几帳面ではないので一つずつ丁寧にはできない。だから物の量を減らさないと難しいのではないか、と考えている。ただし、それを決めるのは自分ではない。母親がどう暮らしたいかと、家族の協力が必要だという。この家は横の動線と縦の動線が入り組んでいる、とも古堅は説明した。

夫が「物に住所があればいい」と言うと、古堅は、住所をつけても動いていない物がたくさんある、と答えた。それらの住所として部屋を一つ丸ごと充ててよいのかが悩ましいという。極端な話、全部ロフトに上げればかなり片付く。ただ、スペースが広いこと自体が片付かない原因にもなっていて、そこが難しい、と古堅は言う。夫が自分は「溜め込む派」だと認めると、古堅は、溜め込むならこの中だけと決めるルールが必要だと返した。

最後に古堅は、夫に目指す暮らしを尋ねた。子どもが小さいから散らかるのは当たり前だと諦めたら何も変わらない、と前置きしたうえでのことだ。夫は、片付いていたほうがいいと答えた。せっかく境界線を作ったのに、向こうの個室側のほうがきれいではないか、という思いがあるという。

古堅は夫の意向を確認でき、下見はここで終わった。収納はたくさんあるのに物が多く、どこも散らかっている――それがこの家の現状だった。次回は、いちばん散らかりやすいリビングダイニングの作業に入る。