25歳で事業を売った「一人法人」の起業家あお氏、自分がタレントとして売れる事業を手放してプロポーカーを目指す

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概要

M&A BANKの島袋直樹氏が、株式会社Levelaに法人を譲渡したあお氏(25歳)に話を聞いた。あお氏は20歳で法人を設立し、アフィリエイトとコンテンツ販売で事業を伸ばしてきた。社員はおらず、ずっと一人で運営してきた。今回の譲渡は、事業そのものを買うというより「あおという IP を買っていただく」形だったと本人は説明する。いわゆる「タレントバイ」である。本人が商品である一人法人がなぜ売れたのか、価格はどう決まったのか、売却後にあお氏は何をしているのか。インタビューはこの三点を中心に進んだ。

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大学の休校をきっかけに始めたアフィリエイト

あお氏は青山学院大学の2年生のときにコロナ禍に遭い、大学の授業がすべてなくなった。時間の使い道を考えてアフィリエイトに挑戦しようと決め、最初はWordPressでブログを書いた。旅行やアルバイトの体験談などを100記事書いたが、収益は200円ほどだったという。ブログはうまくいかず、その後ウェブライターの仕事を経て、Instagramのアフィリエイトで初めて成果が出た。

Instagramでも、最初は大学生活の情報、たとえば単位の取り方やファイルの整理法などを発信していた。あるとき、実際にアルバイトをしていたマクドナルドについて投稿したところ大きく反応があった。これをきっかけにアルバイトに特化したアカウントに切り替え、タイミーのようなアルバイトアプリへ利用者を誘導して報酬を得る形にした。19歳のときのことである。

売上が大きくなりそうだったので、20歳で急いで会社を作った。周囲の誰もが作るように勧めたので、「そういうものがあるんだ」という感覚で設立したという。あお氏によると、業績が一番良かったのはむしろこの20歳の頃だった。アフィリエイトとコンテンツ販売の収益が続けて伸び、1期目の年間売上は約1.5億円に達した。利益率もかなり高かったと振り返っている。

急成長のあとに来た虚無感と「一発屋」の自覚

20歳でそれだけ稼げば性格が変わりそうだ、と島袋氏が尋ねると、あお氏は性格がねじ曲がることはなかったと答えた。それよりも虚無感に襲われていったという。自分が業界のトップにいたため、目標にする人が見つからず、走り切った後の先が見えなくなった。

そのため事業を大きくする道は選ばず、その後の3年ほどは売上が少しずつ下がり、ほぼフリーランスのような働き方をしていた。本人は、自分の業績は上がって下がったのではなく「跳ねただけ」だと捉えている。いくつかの条件が重なってうまくいっただけだと自覚しており、自分は一発屋だという感覚があったので、調子に乗ることもあまりなかったという。

あお氏が強く感じていたのは、周囲への怖さだった。持ち上げられ、過剰に「すごい」と言われるたびに、実際はそれほどすごくないのに期待に応えなければならないという重圧を感じた。インフルエンサーとしての事業はInstagramでの売上がすべてなので、その数字が落ちていくことも非常に怖かったと話す。

趣味だったポーカーが売却の理由になった

売却を考えた直接の理由はポーカーである。起業して間もない21歳頃に始め、今年で4〜5年目になる。21歳からはラスベガスに通って世界大会に出る生活を送り、ベラージオやMGMなどのカジノを回ってきた。最初の年はまだ大学に在籍していたため、ラスベガスでオンライン授業を受けながらポーカーをする、昼夜が逆転したような生活だったという。

のめり込んだのは、最初に大勝ちしたからである。日本のトーナメントで優勝して「いい気になった」ものの、その後大きく負けて悔しい思いをした。そこからポーカーには勉強する余地がたくさんあると知り、それ自体が楽しくなった。海外旅行と組み合わせやすいこともあって、海外に行く機会が増えた。現地では1日8〜10時間ほどプレーしている。

買い手探しと価格の決め方

ポーカーに専念すると決めたあと、あお氏は知人に次々と声をかけて買い手を探した。主に評価されたのはYouTubeとTwitter(X)のアカウントだったので、まず「YouTubeチャンネルを買うところはないか」と打診した。最初に提示したのは「YouTubeで1000万円」という金額で、売上の何倍といった算定根拠はなかった。1000万円なら検討できるという会社と話を進め、そこにTwitterとLINEのリストを上乗せして、最終的な金額がおおよそ決まった。

交渉は仲介を通さず当事者同士で直接行った。島袋氏は相対取引は難しいと指摘し、あお氏もその難しさを認めた。ただ、もともと知り合いを通じて話を進めたので話しやすさはあったという。11月末に話が始まり、12月、1月、2月と約3カ月でクロージングした。島袋氏はこれを早い部類だと評価している。

苦労したのは、案件が特殊すぎたことだ。M&Aを勉強しても自分のケースに当てはまる情報がなかった。そこでM&A BANKサロンの斎藤氏にセカンドオピニオンとして契約書まわりを見てもらい、「あおさんのケースはこういう法人でこういう買い方だから、こうではないか」と助言を受けたことが大きな助けになったという。島袋氏はこの特殊性を次のように整理した。一人法人で本人が看板商品なので、本人が抜けると価値が大きく失われる。したがって売却後にどこまで関与し、どれだけコミットするかを整理する必要がある。あお氏も、まさにそこが課題だったと答えている。

島袋氏は、売却後に100%コミットできればそれに越したことはないが、ポーカーをしたいから売るのだから、そもそもコミットしたくないはずだと指摘した。あお氏は交渉の段階で、売却後は現在よりも稼働が減ると率直に伝えていた。

在籍1年で回収できる金額にする

タレント型のM&Aは成立するのか。島袋氏はYouTuberにも参考になる論点だとして尋ねた。あお氏は、成立するし今後もっと増えると答えている。LevelaはこのとあるタイミングでM&Aを3件まとめて発表しており、そのうち2件があお氏ともう1社のタレント案件だったという。

あお氏が気をつけたのは、残る期間に見合った価格にすることだった。あお氏の在籍期間は1年で、その1年で買い手が回収できる見込みの金額に設定した。在籍中にまず価値を出すこと、そしてM&Aそのものにも価値を感じてもらうことを意識したという。プレスリリースでM&Aをきちんと発表すれば、Levelaの認知度や勢いを示すことができる。その時点である程度の価値を提供できている、という考え方である。在籍1年という条件は最初から提示し、先方も受け入れた。

あお氏は個人としてほかのSNSでも活動できる。その制限について聞かれると、まったく同じ商品でなければ問題なく、ポーカーは全面的に認められていると答えた。ポーカーを制限されたら話が変わってしまう、と笑いながら付け加えている。先方がかなり理解を示してくれたことについて、あお氏は業界に約6年いる中で、グレーなことをせず真面目にやってきたのが良かったと振り返る。人柄と信頼が評価され、「ちゃんとやるだろう」と思ってもらえたので、比較的ふわっとした契約で進んだ気がすると話した。

属人性の高いYouTubeがなぜ売れるのか

周囲からは、YouTubeは「あおちゃん色が強すぎる」ので絶対に売れないと言われてきた。それでもあお氏は売れると確信して声をかけ続けた。考え方のきっかけは、ある有名タレントの事業売却について「インフルエンサーを丸ごと取り込むことで価値をつける考え方が出てきた」と解説していた人の話だったという。本人ごと会社に入ってしまえば、属人性はむしろ利点になるのではないかと考えた。

売れる根拠として、あお氏は具体的な仕組みを挙げた。もともと自分のチャンネルで他社の商品をアフィリエイト形式で紹介して売上を出していたので、同じ形式を続ければ売上は出る。さらにM&Aした相手なら関係が良いことは視聴者にも伝わっているので、その会社の商品を紹介しても不自然さがない。そのため、むしろ売上は見込みやすい。約束した期間で価値を出せると考えた金額を提示したので、問題はないと判断したという。

島袋氏が、前面に出ていたあお氏の色を別の人に置き換えて徐々に薄めても、同じように商品を売れば売上を再現できるということかと確認すると、あお氏はそのとおりだと答えた。島袋氏自身も属人性が強いと言われるが、自分でなくても売れると思っており、その感覚に近いのかもしれないと応じている。

引き継ぎの具体策として、あお氏はこれまで一人語りで撮影し、ときどきコラボする程度だったYouTubeを、Levelaで今後担当する人と二人で撮る形に変えた。1年後には引き継げるようにして、影響力をすべて渡したいと考えている。

売却後の状況と気持ちの整理

現状について、あお氏は計画どおりに進んでおり、むしろ想定より良い方向に動いていると話す。もっと摩擦が起きると思っていたが、YouTubeも問題なく運営できており、M&Aの発表の反響も大きかったという。

自分の影響力が薄れていくことへの葛藤はなかったのか、と聞かれると、「ポーカーをやるから全然いい」に近いと答えた。M&Aの話がなくても仕事はやめるつもりだったので、誰かに引き継げればいいという程度の気持ちだった。その中でLevelaは業界をクリーンに引っ張っている存在だと考えており、良い相手に引き継げ、自分もきちんと仕事を終えられたという点で、双方にとって良いM&Aだったと振り返っている。

3社を競わせて価格が上がった

終盤で、あお氏は最終的に3社から買いたいと申し出があったことを明かした。3社を「コロコロ」させる、つまり競わせることで値段が大きく上がったという。相場のよくわからない案件だからこそ、「A社はいくらと言っている」と伝えると、B社が「ではいくらで」と提示してくる流れになった。島袋氏も、価格を決める重要な要素は競争環境があるかどうかだと応じている。

あお氏はタレント案件ならではの事情も指摘した。一人のタレントがどこに行くかで業界の勢力図が少し変わるため、競合に取られると感じられやすい。買えなければゼロで終わるのではなく、競合がプラスになり自社にとってはマイナスになる。そのため「そっちに行くならいくら出すからこっちに来てほしい」という形になり、競わせる効果が高かったのではないかと分析している。

タレントバイが評価されてこなかった理由と、フリーランス法人のM&A

あお氏は島袋氏に、なぜタレントバイはこれまで評価されず、属人性はないほうが良いとされてきたのかと質問した。島袋氏は、M&Aといえば上場企業が買うイメージがあり、売上が続く保証があるかという観点から、変動の大きさやタレントがいないと成り立たないリスクが問題視され、タレントには値がつきにくかったと説明した。ただし、ここ2年ほどで変わってきている気がするとも述べている。

あお氏は、今後はもっと気軽な形で増えていくと予想する。最近は正社員で入社するかフリーランスになるかという議論があるが、フリーランスの多くはすでに法人を持っている。それなら正社員として雇うのではなく法人ごとM&Aすれば、丸ごと取り込めて双方にとって良いのではないか、という考えである。

組織づくりは苦手だと早くに気づいた

チームを作って事業を広げることへの関心を聞かれると、あお氏は苦手だったと答えた。試したことはあるがうまくいかなかった。就職したこともなく、組織で働いた経験がまったくないので、誰にどう接すればいいかがわからない。組織づくりは向いていないと早い段階で気づき、ずっと一人でやってきた。起業2年目以降は事業拡大を目指さず、ゆるくやっていければいいと考えていたという。

女性起業家として、若さと先行者であること

女性起業家を目指す人への一言を求められると、あお氏は男性か女性かについては特に考えずに進めてきたと答えた。強いて言えば、若さのおかげで多くの人に応援してもらえたことが大きかったという。アドバイスをもらえたことや拡散力の面で、インフルエンサーたちにかわいがってもらい、「すごい女子大生が出てきた」と多く取り上げてもらった。

加えて、業界の中で先駆者のような立場だったことも挙げた。もともとInstagramでアフィリエイトをする文化はなく、それを自分が持ち込んだので、「過去の人ではあるが、インスタのアフィリエイトを作った人」のように評価されることが多いという。そうした経緯もあって、M&Aの発表にも意味があったと感じている。

プロポーカープレイヤーとしてのこれから

今後は、プレイヤーとインフルエンサーの両面でポーカーに関わるつもりだという。プレイヤーとしては、一定期間カジノに行って勝って帰ってくる。インフルエンサーとしては、すでにABEMAやDMMなどの番組に出演して出演料を得たり、ゲストとしてイベントに出たりしている。今後はポーカーのプロ契約枠のようなものが出てくると見ており、それを得られればと話している。

年間の3分の1ほどは海外にいて、その期間は1日10時間を30日、月に300時間ほどプレーする。最近の成績としては、シンガポールで1週間ほどプレーして約45万円勝ったと報告した。

ポーカーとM&Aに共通点はあるかと聞かれると、あお氏は「あまりないかもしれない」と答えた。一方で、ポーカーで勝つために大切なのは「人の気持ちを考えること」であり、思いやりのある人が一番強いと話す。ポーカーは複数人で行うが、ほかのプレイヤーが降りていくので、実際には1対1の勝負になることが多い。そのとき、相手がこういう手を持っていたらコールしたくなるだろうと考えてベットの額を決めることで、自分のチップを最大限増やせる。だから一番優しい人が実は一番チップを持っているという。反対に、「あいつがむかつくから引きずり下ろしたい」という気持ちでベットする人は負けることが多い印象だと述べた。

ポーカーで広がった人脈

島袋氏がラストワンマイルの清水氏の名前を出すと、あお氏はとても仲が良いと答えた。清水氏はラスベガスでは有名で、日本人のポーカープレイヤーならみんな知っているという。あお氏はポーカーを通じて知り合い、最初は普通の人だと思っていたらすごい人だったと冗談まじりに語った。ラスベガスで何度も会い、一緒に遊んだり食事に行ったりしている。

ポーカーの場には経営者が多く、勉強になることも多いという。お忍びで来ているインフルエンサーや、堅い会社の人もいる。一方で、アングラな雰囲気の人も正直多く、出所の怪しそうなお金で遊んでいる人も見かける。どう線引きしているのかと聞かれると、雰囲気からにじみ出るので見ればわかる、と答えた。

インタビューの最後に、あお氏は「ポーカープロを目指して頑張る」と話し、ポーカー好きの人とつながりたいと締めくくった。