箕輪厚介が語る、ビジネス系発信への飽きと「経営者は本に戻る」という見立て

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概要

幻冬舎の編集者、箕輪厚介氏が、M&A BANKの島袋直樹氏のインタビューに答えた回である。前半では、編集経験のない広告部の新人がいきなり雑誌の編集長になった経緯や、堀江貴文氏・見城徹氏との関係の築き方を振り返る。後半では、ビジネス系YouTubeやインフルエンサーの発信に世間が飽きているという認識を示し、「まともな」経営者はSNSを離れて本に向かい、オンライン発信はライブ配信に価値が移ると論じた。終盤はEXIT後の経営者が抱える虚無感を取り上げ、それが本のテーマになり得るという話に及んだ。

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生い立ちと、出版を選んだ理由

箕輪氏の実家は「箕輪不動産」という不動産屋だった。港区で生まれ、足立区綾瀬で育ち、小学2年生ごろに家を売って赤坂へ移った。芝中学校に進み、一浪して早稲田大学に入学し、就職浪人を経て双葉社に入社した。そこで見城徹氏の本を作ったことがきっかけで幻冬舎に引き抜かれ、現在は会社員の編集者である。

子どもの頃について本人は「全然普通」だったと言い、今も付き合いのある小学校の友人からは何も変わらないと言われるという。小学校からサッカーを続けてきた。大学時代も今と変わらず、好きな時間に起きてその日やりたいことをやり、酒を飲んで寝る生活だった。今も大学時代のようなことをずっと続けている感覚だと話す。

出版業界を選んだ理由について箕輪氏は、自分の性格や特徴からして、普通の会社でも働けなくはないが、たぶん下の方にとどまると考えたと説明する。出版やテレビのようなコンテンツ・エンタメの仕事なら、寝ないで頑張っても苦にならず、何者かになれるのではないか。当時はYouTubeがなかったので、就職活動は出版とテレビに絞った。

入社後の姿勢については、差別化や売り方を考えた覚えはないという。当たり前を疑う発想が好きで、サラリーマン的な思考が嫌いで、成り上がりたいという思いもあった。そのため与沢翼氏、堀江氏、見城氏といった起業家的な人物の言葉に強く共感した。自分に響いたことを、自分と同じような読者に向けてそのまま本にしていった、というのが本人の説明である。

広告営業から始まった『ネオヒルズ・ジャパン』

最初の大きな仕事は、与沢翼氏の雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』だった。当時の箕輪氏は編集部ではなく広告部に所属していた。「秒速で1億円稼ぐ男」としてメディアに出ていた与沢氏を、箕輪氏は怪しいと思いながらも、言っていることは面白いと感じていた。少し小馬鹿にしながらも普通に響くところがある、その両方の目線を持つのが編集者だと箕輪氏は言う。お金を持っていそうな与沢氏に広告を出してもらおうと会いに行ったところ、与沢氏から「いくら出せば丸ごと自分の雑誌を作れるか」と聞かれた。

新人で相場を知らなかった箕輪氏は「3000万円」と答えた。本来は600万円程度でも作れるらしいという。与沢氏はその場で出すと言い、箕輪氏は大型案件を決めたつもりで会社に戻った。ところが会社からは「あんな怪しいやつの雑誌は作れない」と断られた。今思えば、雑誌は普通なら半年から1年かけて体制を整えるもので、急には作れないし、編集プロダクションに任せられる案件でもなかった。3000万円もらえるなら何でもやろう、という社風でもなかった。

箕輪氏は納得できず、社長室に何度も足を運んだ。与沢氏を肯定的に書いた記事を印刷して持参し、ネット上の「集団訴訟される」といった書き込みはライバル企業によるものだと訴えた。最終的に「箕輪がそんなに言うなら、お前が編集長をやるなら作っていい」という話になった。専門用語も分からない状態で編集長になり、出版のキャリアで最初の仕事が編集長という例は歴史上ないのではないか、と本人は言う。

雑誌の発売日には与沢氏が逮捕された。容疑は詐欺ではなく運転手への暴行だったという。箕輪氏は、悪目立ちする人物を取り締まる動きは昔からあり、ブレイキングダウンの選手も同様だろうと述べる。そのうえで、もともとあった被害届を目立つ発売日に合わせて逮捕したのだろうと推測している。当時の箕輪氏は、与沢氏の記者会見に雑誌を持ち込んで掲げようとして止められたという。「本当に頭がおかしかった」「未熟」だったと振り返る。

それでも、いきなり1冊丸ごと編集長を務められたことが評価され、箕輪氏は編集部に正式に異動した。そこから堀江氏と見城氏をほぼ同時に口説き、2冊とも同時期に出してヒットさせた。

30秒で2冊を決めた堀江貴文氏への提案

島袋氏は、20代前半の新人がなぜ堀江氏や見城氏に相手にされたのかを尋ねた。箕輪氏によれば、今は人間性で関係を作っているが、当時は「誰だこいつ」という若者だったので、もっとロジカルに考えたという。

堀江氏とは講演会後のアフターパーティーで会った。堀江氏は30分ほどしかおらず、名刺交換の列に対して目も合わせず、受け取った名刺をその場で捨てるような態度だった。箕輪氏は30秒が勝負だと考えた。事前の分析では、堀江氏は自分が稼働することを嫌い、自分が動かずにコンテンツができることに価値を感じている。メルマガもネタだけ出して編集者が書いている、移動中にやっている、と著書などで語っていたからだ。そこで稼働ゼロを前提に企画を2つ出した。

1つは日めくりカレンダーである。堀江氏の過去のツイートから箕輪氏が365個を選び、堀江氏は何もしなくていいという案だった。もう1つは「7人のイノベーター」という企画である。今勢いのある起業家やクリエイター7人に箕輪氏がインタビューし、堀江氏は移動時間にそれを読んで、ツイート程度の感覚で「この人のここがいい」とコメントするだけでいい。それで堀江氏の仕事論の本になる、と提案した。どちらも「いいやん、やろう」と言われ、その場で2冊が決まった。

日めくりカレンダーは堀江氏が気に入り、サロン会員へのノベルティなどに使ったという。インタビュー企画は『逆転の仕事論』になった。堀江氏は名前も覚えていないのに「あの若いやつは優秀だから一緒にやろう」と言い、Amazonと堀江氏の独占契約を箕輪氏が担当する話も持ち上がった。この話は形にならなかったが、箕輪氏は「ホリエモンのお気に入りにはなった」と話す。

見城徹氏には正面から、手書きの手紙で

見城氏は堀江氏とは逆で、ロジカルな効率を最も嫌い、どれだけ時間を一緒に過ごすか、どれだけ真正面から本気で向き合うかを重んじる人だと箕輪氏は言う。最初は、サイバーエージェントの藤田晋氏と堀江氏が作ったアプリ「755」で、見城氏の投稿に「本にしてください」とコメントした。返ってきたのは「インターネットで頼むやつは信用できない」という断りだった。箕輪氏は見城氏がそういうことを言う人だと知っていたので、ショックは受けなかった。むしろ、そこで手紙を送れば刺さるだろうと考えた。

手紙はもちろん手書きである。見城氏自身が「手紙に自分のことを書くやつは駄目だ、相手のことを書け」と言っていたため、見城氏の小説や著書が好きなこと、見城氏の『編集者という病い』が編集者を目指したきっかけの1つであること、見城氏のすごいところを、ひたすら書いた。ただしファンのラブレターではいけない、と箕輪氏は言う。その人がとことんこだわっているのに周りが見てくれていない部分を突くと、「こいつは分かっている」と思われる。今もそういう点を探すようにしているという。

手紙を送ると、同封した名刺を見たのか秘書からメールが届き、面会が決まった。作りたい本を説明すると、見城氏は「お前がすごくできるやつなのは分かったから、勝手にやってくれ」と言った。その後はずっとインタビューを重ね、原稿を覚えるほど読み込んで直し、正面から取り組んだ。こうしてできた『たった一人の熱狂』は大きく売れ、見城氏から「うちに来た方がいい」と誘われて幻冬舎に移った。

島袋氏が、義理人情型の見城氏に対して今のようなフランクなキャラクターをいつから見せたのかと聞くと、箕輪氏は「最初から」と答えた。初対面はスーツにネクタイで、名刺交換にも気を配った。それでも口調が丁寧なだけで、話す中身は変わらなかったという。形だけ整った人は相手の心に入っていけないので、スーツや名刺のような求められる最低限はこなしつつ、話し方や雰囲気はそのままにした、と箕輪氏は説明する。

「期待値が低いと怒られない」という考え方

見城氏にひどく怒られた話はないかと聞かれ、箕輪氏は、小学校から今まで、忘れているだけかもしれないが本当に怒られたことがないと答えた。堀江氏にも見城氏にも怒られていない。

理由として箕輪氏が挙げるのは、「強い存在はもろい」「最初から壊れていると壊れない」という持論である。自分はもともと期待値が非常に低い。たとえば収録に突然来られなくなっても、失礼なやつだとは思われず「そういう人だ」で済むはずだ、と冗談まじりに例を出す。きちんとした人は期待値が上がっているので、ミスをすると強く怒られる。最初から壊れていれば「しょうがない」となり、普通にやっているだけで「頑張っているな」と言われる。

堀江氏や見城氏をいじるようになったのは、対談で横並びに話せるようになってからだという。どれほど尊敬していても、持ち上げてばかりでは見る側が飽きる。コンテンツとして成り立たせるには、多少いじったり、相手が言われたくないことを言ったりする必要があり、それは本人のためにもなると箕輪氏は言う。そうした関係になれたのは、箕輪氏自身に影響力がついてからで、それまでは編集者として信頼されていても普通に雑談する関係ではなかったと振り返る。

ビジネス系コンテンツはもう飽きられている

島袋氏は、M&A BANKを運営していながら、人の売却話や金額を聞いても何も感じなくなっていると打ち明けた。リアクションはするが響いていない。箕輪氏は、視聴者も飽きているのではないかと応じ、この1年ほど世の中のビジネス系に対する飽きをはっきり感じると話した。自分も含めてビジネスチャンネルやビジネス系インフルエンサーが増えすぎ、年商いくら、いくらでEXITした、という話が多すぎて「もういいわ」となっている。それならカブトムシが大好きな人の話の方が、再生はされなくても面白いと思う、という島袋氏の意見にも箕輪氏は同意した。

箕輪氏は、令和の虎やREAL VALUEの周辺で毎日のように起きる炎上にも触れた。直近では、関係者の顔写真を踏んだ騒動があり、それに怒る人、さすがにないと言う人が入り乱れた。箕輪氏はそれを、敵も味方も含めて全員うるさいと感じ、それ自体に飽きたという。

この状況を箕輪氏は「A面とB面」という枠組みで説明する。A面は上場企業の社長のような社会的な存在で、B面はインフルエンサーや、先に挙げたような起業家の個性である。社会的な存在が主流の中で、怖いもの知らずの個性が面白がられていた時代は、箕輪氏自身も面白いと思い、そうした人たちと絡んでいた。ところが今は反転し、B面の人たちが主流になり、本当の上場企業の社長やまともな人はSNSに出られなくなっている。B面は端でやっていたから面白かったのであって、それが主流になった世の中は嫌だ、というのが箕輪氏の感覚である。島袋氏の「カウンターだから面白い」という言葉に箕輪氏も同意した。

AI時代、オンラインで価値が残るのはライブ

島袋氏は自説として、YouTubeのビジネスチャンネルはジャンル自体がオワコンになりつつあり、AIで編集も台本も誰でも作れるようになった以上、オンラインで見られるのはライブ一択ではないかと述べた。箕輪氏は「全く同じ」と答えた。

箕輪氏によれば、これはビジネス書も同じである。考え方や生き方を扱う本はまだしも、ノウハウ系のビジネス書を作る編集者も買う読者も完全に時代遅れで、そんなものはAIに聞きながらやればいい。YouTubeも、決まったことを話すなら、AIに投げて返ってきた同じような内容を朗読しているだけで面白くない。価値があるのは、その場のノリ、思いつき、冗談、振る舞いだけで、ライブや生配信で「この人の話は面白い」と思わせられるかどうかがすべてだという。

島袋氏は、たとえば箕輪氏が朝7時半から30分ライブ配信していれば、起きてすぐ見たり仕事しながら聞いたりできるが、同じ内容をYouTube動画で見るかといえば見ない、と具体例を挙げた。チャットで気になることを質問することもできる。プラットフォームは既存のもので構わないだろう、というのが島袋氏の考えである。二人は「ビジネスライバーの時代が来る」という見立てで一致した。

コンプライアンスの話題では、箕輪氏が、ライブはまずい発言でも意外と流れてしまい、生だと発見されにくいと話した。自分はReHacQの番組で週1〜2回、酒を飲みながら3〜4時間話し、アウトだろうという発言を多くしているが、長時間の中に埋もれるという。炎上しない理由として、最初に「酔っ払っているので全部嘘です」と宣言することを挙げる。これも「すでに壊れている理論」の応用で、ここでの発言に突っ込むのは野暮だという空気を作るのだという。箕輪氏は自分が期待値の調整で生きていると認め、「まともだ」と思われ始めた頃に炎上やスキャンダルが起きて毎回期待値が下がり、結果として常に低く保たれている、と冗談まじりに語った。

炎上を避けたい人はどう発信すべきか

島袋氏は、知人から「今さらだがYouTubeを始めたい、炎上は最優先で避けたい」と相談されたという。島袋氏自身は、それならやらない方がいいのではと感じた。箕輪氏は、目的によって違うと答えた。ブランディングとして、多くない人数に同じ熱量を長く伝えるなら、再生されなくても淡々とポッドキャストなどを続ければいい。しかし新しい人に届けたいなら、風当たりの強いことをしないと見てもらえない。

そのうえで箕輪氏は、ぎりぎりのセンスが要ると言う。人の顔写真を踏むようなことをすれば、いくら見られても失うものの方が大きい。一方で、賛否両論のあることを投げかけて炎上しても、物事の本質を見られる人からは「この人の言っていることは間違っていない」と思われる。そのくらいのラインを狙えればいい、というのが箕輪氏の考えである。

まともな経営者は本に戻っている

これから経営者はソーシャルメディアとどう付き合うべきか。この問いに箕輪氏は「めちゃめちゃ面白い流れがある」と答えた。収録日にAmazon予約が始まったGMOの熊谷氏のAIに関する本を手がけたほか、まだ公表していない上場企業社長の本も何冊か進めている。そうした「まともな面」の人たちは、SNSはスラム化しすぎたと感じ、本を重視するようになっているという。

箕輪氏の説明では、こうした経営者の情報発信は届くべき人に届けばよい。よく分からない人に誤読されて炎上するくらいなら、リテラシーの高い人に届いて採用や新しい取引につながればいい。だから、本をきちんと読める人に向けて本を書くという流れに、まとも系の人はかなり戻っている。特にAIをテーマにした本を書きたいという依頼が多い。その背景には、自社がAI企業だと世の中に示したいこと、AIに関心のある優秀な人材を採用したいことがあると箕輪氏は見る。YouTubeで同じことをしても、絶対に採用しないような人が騒ぐだけで意味がない。リテラシーの高い者同士が本でつながろうとしている、というのが箕輪氏の見立てである。

これに対して、B面の人たちのSNS活動は、自社商品に差別化要素がないため自分が有名になって宣伝で勝とうとしているか、自分のようになる方法を自己啓発セミナーやオンラインサロンのような形で売ろうとしているかのどちらかだ、と箕輪氏は言う。ビジネスモデルによってSNSの使い方が分かれた、という整理である。

今後については、SNSから本などへ退避する人と、さらに過激化する人に分かれると箕輪氏は予想する。これまではその中間として、上場企業の社長がYouTubeに挑戦することもあったが、本当にまともな人は今のXなどでは積極的に活動しないだろうという。まともな番組には出るだろうが、「怪しくてもバズる方が正解」という時期を経て、あまりに柄が悪くなりすぎた、と箕輪氏は語った。

煽り合いの番組に出ない理由と、コメント欄の読み方

箕輪氏から、島袋氏はREAL VALUEや令和の虎に誘われそうなのになぜ出ないのかと聞かれ、島袋氏は、初期に何度か出たが、プロレスラーのような振る舞いが苦手だと答えた。急に怒ったり資料を投げたりするスイッチは普通は入れられない、という点で二人は一致した。

島袋氏は、箕輪氏がセンターを務めた「ノンタイトル」最終回に出演した際も、どう振る舞えばいいか分からず「キャラ設定をミスった」と振り返る。一方で箕輪氏は、YouTube映えするコメントを瞬時に作っていた、と島袋氏は評した。

箕輪氏は、自分も怒ったり演劇のようなことをしたりはできないが、コメント欄を読むことは得意だと言う。出演者はリアルタイムでコメント欄を見ている。ただし、AとBの対決でコメント欄がA寄りだからとAを推しても、「コメント欄の言いなりだ」と言われる。大事なのは、嘘偽りのない自分の意見を、そのコメント欄のリテラシーの人たちにどう刺すかである。反対意見でも、今の空気ならこう言えば風向きが変わる、と読めれば、「よく言ってくれた」という反応になる。

箕輪氏はヒカル氏を例に挙げ、ビジネス知識があるわけではないが、この読み方が天才的にうまいと評した。あえて外すことで、コメントはしていないが違和感を持っていた人に「自分もそう思っていた」と感じさせる。潜在的な「YouTube世論」をどう転がすか、という技術だという。島袋氏は、REAL VALUEにも嫌で出なくなったわけではなく、みんなで怒ったり泣いたりする場では自分の価値を発揮できない、あれは役者の仕事だと話した。

EXIT後に待つ、お金と虚無

後半、島袋氏は、労働や事業でお金を稼ぐことが割に合わなくなっているのではないかと問題提起した。シンガポールを拠点にしていると、資産を運用している人の方が桁違いに大きく資産を増やしている。売却組の知人とも、資産運用のリターンの方が大きいという「r>g」の話になった。事業を大きくしてもガバナンスは厳しくなり、上場も難しくなっている。M&Aで売っても、結局また事業をやらなければならない。お金を稼ぎたいという欲で始めた人にとって、事業は割に合わないと感じられているのでは、と島袋氏は言う。

箕輪氏は、EXIT組はまさにそうだと同意する。EXITした資金を運用する方が、今スタートアップを立ち上げるより安全でお金も増える。しかしそれでは虚無に陥り、人間関係も希薄になる。それが怖くて、もう一度事業を立ち上げ、起業ストーリーを歩み直している人が周りに多いという。2桁億円でEXITしたのに再挑戦している人に「よくそんなことができるね」と言うと、「何もしない方が頭がおかしくなりそう」と返される。島袋氏は、ある意味うつにならないために事業をやっているのであり、事業をやる目的が変わっていると応じた。

箕輪氏はさらに2つのパターンを挙げる。1つは有名になることで虚無を埋めようとするパターンである。もう1つは、EXITしたとはいえ上には上がいて、売った自分のサービスがもう世の中に残っておらず、お金は得たが「たまたま掴んだだけ」と感じている人が、自己実現のためにもう一度事業で当てようとするパターンである。

誰が本を出せるのか、どんな本を作りたいか

視聴者の中にも箕輪氏に本を作ってほしい人は多いだろう、という話になった。依頼は無限に来るため、箕輪氏はかなり断っているという。それでも、企画をDMするか、M&A BANK経由で渡してもらい、本当に面白そうなものがあれば検討する程度なら構わないと答えた。

面白いと感じる基準は、これまで誰も言っておらず、単にトリッキーなわけでもなく、「言われてみればその視点もあるか」と思わせることだという。それができれば無名でも本になる。ただ、今はXやYouTubeで皆が発信しているため、目から鱗のような視点は眠っていないと箕輪氏は言う。修羅場の経験は誰にでもあるが、修羅場自慢の本になると知名度の高い人が勝ってしまう。その中で箕輪氏は、M&Aを扱った初めての小説だという『闇と光』が文章のうまさで売れた例や、田中修治氏の『破天荒フェニックス』のように、本をあまり読まない人でものめり込める作品を挙げ、そういうものを作れたらいいが難しいと話した。

島袋氏が「M&Aとうつ」のようなテーマを口にすると、箕輪氏は「それはマジである」と反応した。自身がミドルエイジクライシスについてツイートすると賛否両論が集まってバズるという。人生の虚無は現代病であり、それに対する答えを示す本は、誰が書くかは分からないが絶対にベストセラーになる予感がある、と箕輪氏は語る。何かを達成した後、欲しかったものを得た後の生き方がテーマであれば、書き手が有名でなくても、EXITの規模がもっと大きい人がいても構わない。それは個人の心の葛藤の問題だからだ。M&Aをして虚無になり、心がどう動いたか、何が辛く、何が救いだったか。そうした話には大きな需要があるという。

島袋氏は、自分も一度うつになり、そうなった人を多く見てきたので書きたいと話した。箕輪氏は、EXIT組に顔出しなしでインタビューするシリーズをYouTubeで続け、それを本にまとめるのはどうかと提案した。当事者は表に出たがらないので出なくてもいい。エピソードを集めれば、皆が共通して抱える悩みや、幸せに生きるヒントが見えてきそうだという。この企画は続編として続けることになった。

欲望の先で戻ってくる場所

最後に箕輪氏は、EXITした人たちが似た動きをすると指摘した。最初はお金を使う方へ向かい、利己的に振る舞いすぎて虚無になり、最終的には人のため、社会への還元へ戻ってくる。人間が滅亡しなかった理由はそこにあり、本当の幸福は社会に還元することなのだと思う、と箕輪氏は語った。島袋氏に「むっちゃ真面目ですね」と返されると、欲望に狂った人が最後は人に喜ばれることを喜ぶようになるのを見てきたからだと答えた。名を残したいという思いもあるだろうとし、松浦勝人氏や前澤友作氏も、最後は周りが喜ぶ姿を見て喜んでいる、という観察で対談は締めくくられた。