末期がん患者への美容整形手術:ドラマ『ダウンタイム』の症例から考える医療倫理と身体的リスク
高須幹弥(高須クリニック)Netflixのドラマ『ダウンタイム』に登場する坂下ゆり子(75歳、研ナオコ演)は、末期がんを患いながらもフェイスリフト、上眼瞼、鼻形成の手術を受ける。本稿では、美容外科医の高須幹弥がこの症例をもとに、末期がん患者に対する大掛かりな侵襲的手術の医学的リスク、ドラマで描かれた術式の妥当性、終末期医療と美容医療の倫理的な境界線、そして患者が最期まで若さや美しさを求める心理的・生物学的背景について論じた内容を解説する。
坂下ゆり子の全身状態とドラマ設定の現実性
ドラマ内において、坂下ゆり子は激しく咳き込んで喀血する描写がある。原発巣からの肺転移、あるいは原発性肺がんによって気道出血が生じている状態と推測され、積極的な抗がん治療ではなくターミナルケア(緩和ケア)の段階にある。末期がん患者は腫瘍の急速な増大に伴って大量のエネルギーを消費するため、皮下脂肪や筋肉組織のタンパク質が分解され、全身が著しく削痩(さそう)していく。その結果、顔面部の皮膚は張りを失ってたるみ、頬やこめかみ、眼窩が深くくぼむなど、急速に老化が進行する。
現実の医療現場において、このような極めて全身状態が不良な患者に対し、全身麻酔を用いた侵襲的な美容外科手術を実施することはまずあり得ない。また、ドラマのようにテレビ番組の企画として末期がん患者の美容整形を取り上げることも、現代の放送倫理や世論の批判を鑑みると非現実的である。かつて存在した美容整形番組でも、外見上の強いコンプレックスを改善して人生を前向きに送ることを後押しする内容が中心であり、命の危険がある末期がん患者を扱うことはテレビ局のリスク管理上も成立しない。
術式の医学的検討:全身麻酔・鼻形成・フェイスリフトのリスク
ドラマで描かれた各手術について、医学的な観点からその妥当性と侵襲性が検証される。
全身麻酔と長時間の侵襲
劇中では約5時間をかけてフェイスリフトなどの手術が行われている。全身麻酔は気管挿管と人工呼吸器の管理を伴い、循環動態の変動をきたすため、全身状態の悪い患者には極めて大きな負荷となる。さらに、術中の止血目的で使用されるエピネフリン(アドレナリン)添加局所麻酔薬は血圧を上昇させ、心血管系への負担を増大させる。救命を目的とした保険診療であればリスクを冒して手術を行う判断もあり得るが、生命維持に必須ではない美容外科手術において、寿命を縮めるリスクや術中・術後早期の死亡リスクを背負って長時間の全身麻酔手術を行うことは医学的に正当化されない。
上眼瞼手術
75歳という年齢から、老人性眼瞼下垂が併発していたと考えられる。がんの削痩によって眼球周囲の脂肪が減少し、目がくぼむことに加え、眼瞼挙筋の機能低下を補うために無意識に前頭筋を使って眉毛を吊り上げる代償運動が生じていたと推測される。眉毛が持ち上がることで眼窩のくぼみがさらに強調され、二重のラインも乱れる。劇中では、皮膚切開、二重の形成、および挙筋腱膜の処理によって開瞼機能を改善させ、代償的な眉毛の挙上を抑えることで、目のくぼみの改善と明瞭な二重の形成を図ったと考えられる。
鼻形成術(鼻尖縮小・鼻中隔延長)
坂下ゆり子は元来、鼻尖が上を向いた形状であったため、鼻先を下方に下げる手術が施された。この形態変化を達成するには鼻尖形成に加え、鼻中隔延長術が必要となる。 軟骨移植の材料としては以下の点が検討される:
- 自家肋軟骨:75歳という高齢では肋軟骨の骨化(硬化)が進んでおり、加工が困難で使えない可能性が高い。さらに、がん患者に対して肋軟骨を採取する開胸的処置は侵襲が大きすぎるため適応外となる。
- 耳介軟骨・鼻中隔軟骨:採取侵襲は肋軟骨より低いものの、鼻中隔延長を十分に行うための支持力や量としては不足する可能性がある。
- 寄贈軟骨(他家遺体肋軟骨):感染リスクや将来的な吸収・融解のリスクを伴うが、患者の余命が限られている状況下であれば、自家組織採取の負担を避けるための選択肢として理論上は浮上する(ただし日本国内での入手・流通には制約がある)。また、一時的な支持組織としてPDSプレートを併用する手法も考えられる。
フルフェイスリフトと注入治療
こめかみから耳前部、耳後部にかけて皮膚・SMAS(表在性筋膜)を切開・剥離して引き上げるフルフェイスリフトが行われたと見られる。術後に顔全体のふっくらとした質感が回復している点については、自家の脂肪を採取する余力(脂肪量・全身状態)がないため、ヒアルロン酸などの注入剤を併用したと考えるのが現実的である。
一般医療と美容外科の対立:患者心理と医師の立場
劇中において、中川家の礼二が演じるシャドードクター・引田医師が放つ「一般医療の医者にはこれはできない」という発言は、保険診療と自由診療(美容医療)の思想的な乖離を象徴している。
坂下ゆり子は、がん拠点病院で標準的な抗がん剤治療等を受けていたが、苦痛を伴う治療の過程で医師との間に心理的な断絶を抱えていた。終末期のがん患者が「残された時間を若く美しく過ごしたい」と保険診療の主治医に訴えても、常識的な医師であれば「それどころではない」「命に関わる」と一蹴するか、荒唐無稽な要求として受け止めるのが通常である。患者側はこれを「自分を愚かだと見下している」と感じ、尊厳を傷つけられたと受け止めてしまう。
一方、主人公の東山麟医師はハイリスクを承知の上でその訴えを受け入れ、手術を断行した。これにより患者は自らの全人的な願望を肯定されたと感じ、一般医療の医師よりも東山医師に深い信頼を寄せることとなる。しかし、この対応は美談として描かれる一方で、医療倫理やリスク管理の観点からは極めて危うい行為であり、医療関係者の間でも賛否が二分される。
終末期における美容医療の現実的な選択肢:ヒアルロン酸注入
高須自身は、坂下ゆり子のような状態の患者に対して大掛かりなフェイスリフトや全身麻酔手術を行うことは明確に否定している。しかし、余命いくばくもない末期がん患者であっても「若返りたい」「綺麗でいたい」という希望を叶えること自体を否定しているわけではない。その現実的な解決策として提示されるのが、低侵襲なヒアルロン酸注入である。
末期がん患者の急激な顔貌の変化は、皮膚自体のたるみ以上に、皮下脂肪や筋肉の萎縮による「痩せこけ」に起因する部分が大きい。したがって、こめかみ、頬のこけ、ほうれい線、口唇周囲などのボリュームが失われた部位にヒアルロン酸を注入して補うだけで、顔の張りは大幅に回復し、若々しい印象を取り戻すことができる。
高須の臨床経験においても、がん発覚前から通院していた患者や、終末期を迎えて車椅子で来院する患者に対し、ヒアルロン酸注入による整容的ケアを行った実例が多数存在する。 患者が亡くなった後、遺族から以下のような感謝の連絡を受けるケースがあるという:
- 臨終の際や棺に納められた際、顔がふっくらと柔らかく、生前の若々しい面影を残していたこと。
- 最期の瞬間まで本人が尊厳を保ち、納得して旅立つことができたこと。
注入に必要な費用は使用する本数(数本から十数本程度まで様々)によって変動するため、残される家族の経済的負担も考慮し、無理のない予算の範囲で処置を行うことが重要とされる。
なぜ最期まで美を求めるのか:生物学的本能と自己満足
配偶者や恋人から「今のままで十分好きだから整形する必要はない」と言われても、女性が美容整形を強く望む背景には、他者のためではなく「自己満足」と「生物学的本能」が存在する。
進化生物学的な観点において、若さや健康的な容貌を保ち、外見的な魅力を維持しようとする心理は、配偶者獲得や種の保存に直結する生存本能としてヒトの脳に深く刻まれている。男性にも容貌を良くしたい本能はあるものの、女性においてこの本能的欲求は特に強固に働く。この本能は、単に生殖可能年齢にとどまらず、老年期や死の直前に至るまで個体の中に残り続ける。
坂下ゆり子が、単なる老化の改善(アンチエイジング)にとどまらず、長年コンプレックスであったと思われる鼻の造形手術まで同時に受けたことは、他人の視線を意識する以上に「自分自身の理想の姿でありたい」という本能的欲求が最期まで衰えなかったことを示している。美しくなった顔で過ごせる期間がたとえ数日や数週間であったとしても、本人の主観においては命を懸けるに値する価値を持っていたといえる。
結論:美容外科医が負うべきリスクと医療倫理の境界
本症例が提示する本質的な問いは、「患者本人の強い希望と自己決定権」に対し、「医師の安全管理責任と医療倫理」をどこまで優先すべきかという点にある。
臨床現場では、重度の心筋梗塞の既往や心機能不全を抱えた高齢患者から「手術中に死んでも本望であり、絶対に文句は言わないからフェイスリフトをしてほしい」と懇願される場面が存在する。しかし、医師がその要求を鵜呑みにして手術を行い、万が一術中死や早期死亡に至った場合、患者本人が納得していても遺族からの医療訴訟に発展するリスクは極めて高い。法解釈や医療水準の観点からも、不必要な生命リスクを冒した医師側が過失を問われる可能性が極めて高い。
患者が最期の瞬間まで美しくありたいと願う本能的な尊厳は尊重されるべきである。しかし、外科医は情動的な共感だけに流されることなく、侵襲性と安全性のバランスを冷徹に見極め、ヒアルロン酸注入のような低侵襲で安全な代替手段によって患者の希望に寄り添うことが、現実の医療において果たすべき役割である。
はい、こんにちは。今回なんですけれども、Netflixのドラマ『ダウンタイム』の登場人物である坂下ゆり子さん、75歳。この方は研ナオコさんが演じている方で、癌の末期なんですけれど、フェイスリフトとか鼻とか上眼瞼の整形手術をするというストーリーについて症例解説をさせていただこうと思います。
75歳という高齢であると。で、なおかつ癌の末期。ドラマの中でも「ゴホッ、ゴホッ」と咳をして、その時に血を吐くわけですよね。これはおそらく原発の癌が肺に転移した、あるいは肺癌なのかもわからないですけれど、そこで出血して咳をする時に喀血するという状態であると考えられます。なので、治療としては癌を治すという方向性ではなく、もうターミナルケア、緩和ケアなどの状況なんだと思います。
極めて全身状態が悪くて、癌の末期だと癌が大きくなってそこで出血して、たくさんエネルギーを使います。癌はどんどん増殖して大きくなるのでエネルギーが必要なわけであって、となると全身の皮下脂肪とか筋肉とかタンパク質がどんどん分解されて痩せ細っていくんですね。人間というのは痩せ細っていくと老化が早まるというか、肌がシワシワになってたるんで、頬がこけて目もくぼんでこめかみもくぼんで、ますます老けていくわけですよね。
その状態に坂下ゆり子さんは耐えられなかったというのもあったと思いますが、このストーリーを見ますとおそらくずっと美容整形の手術を受けて美人になりたいとか、若返りたいという願望があったと思われますね。ただし、結婚していてお子さんはいない。旦那さんが生きていた時でも本当は整形したいと思っていて、美容整形の番組を見て整形したいと思ったんでしょう。あの番組が大好きだって言っていましたから。だけど、おそらく旦那さんにそのことを相談しても「絶対やめろ」と言われると感じていたと思います。
というのは、恋人同士とか結婚している人でも、奥さんや彼女が旦那さんや彼氏に「整形したい」と言っても大抵反対されるんですよ。今の状態が好きだから付き合っていてうまくいっているんだったら、別に整形する必要はないわけですよね。むしろ今の状態が好きだから変わってほしくないと思っている男が大部分なんです。なので、男のほうから「整形しろ」と言うことはたまにありますけれど滅多にないですね。本来は自分の彼女や奥さんに「整形しよう」と言っちゃいけないと思うし、「しなくていいよ」というのが本来の姿で、それは正しい愛だと思います。
だけど女性の気持ちとしては、旦那さんや彼氏に整形を反対されても、やっぱり自分のために可愛くなりたい、美人になりたい、若返りたいという気持ちがある。これは生物学的本能なんですね。だから旦那さんが「やめろ」と言っても、やりたい人はやるわけですよね。ケースバイケースですけれど。
だけど旦那さんに先立たれて、お金が比較的あるんでしょう。お子さんがいないんだったら、そのお金を自由に使える状態になると。そして末期で、おそらく余命はそんなにないということを分かっていたんだと思います。1年以内とか半年以内とか、あるいはそれよりも早くお亡くなりになっちゃうんだけど、でもずっと美容整形したかった。今の顔を若返らせたい。末期癌で老化してしまったから若返らせたいと東山凜先生にお願いする形になって、そのストーリーがドラマティックだからテレビの番組として取り上げられたということなんです。
現実的にはテレビの番組でこういう企画をやることはまずないですね。特に現代はあんまりないです。最悪ネットの番組だったらあるかもしれないけれど、実際これを行うとやっぱり叩かれると思うんですよ。末期癌の人で全身状態が悪いのに、全身麻酔でフェイスリフトをやるなんてとんでもない鬼畜の所業だと炎上しちゃうと思うので、実際には難しいわけなんです。テレビの宣伝効果は大きいということでこういう企画になったわけですけれど、日本のテレビ局はどちらかというと美容整形に対して否定的で、テレビでやる場合は失敗して悲惨な目に遭っているといった特集が多いです。
昔は『ビューティー・コロシアム』とかあったわけなんですけれど、色々賛否両論ありました。本当に見た目が醜形で不幸な思いをしている人、生きづらい人がそこそこ美人になって未来が明るくなりますよ、くらいが限界だったんですよね、『ビューティー・コロシアム』でも。末期癌の人をテレビで取り上げると、さすがにテレビ局が叩かれてしまうので現実的ではないかなと思います。
手術の話に入ろうと思うんですけど、まずフェイスリフトは全身麻酔で行う予定だったわけで、全身麻酔は全身状態が悪い人にとっては結構負担になるわけですね。5時間くらいかけてフェイスリフトが行われたわけですけれど、手術時間が長いのも体にとって負担になります。全身麻酔はその間ずっと人工呼吸管理でやるわけですし、フェイスリフト自体は出血がそんなに多いわけではないんですけど、全身麻酔中は血圧の変動もあります。止血予防でエピネフリン、アドレナリン入りの局所麻酔薬も併用することが多いので、そうすると血圧が上がって負担がかかるというのがあります。
長時間の全身麻酔の手術は、全身状態が悪い人には通常行わないです。特に美容整形に関しては、この手術を行わないと早く死んでしまう可能性がある場合は天秤にかけてリスク承知の上でやるということは、保険診療など病気を治す医療ではケースバイケースで起こり得ますけれど、美容整形の治療はやらないと死んじゃう手術ではないんですよ。この美容整形の手術を行うことによって寿命が短くなるとか、最悪手術中や手術後にお亡くなりになってしまうということなら、普通はやらないです。
だから僕だったら、坂下ゆり子さんのあの状態で全身麻酔での手術はやらないですし、フェイスリフトもやらないですね。ヒアルロン酸注射でハリがないところを膨らませて、ふっくらさせて若返らせるくらいかなと思いますね。後でお話しするんですけれど、実際にそういう患者さんはよく僕のところにもいらっしゃいます。末期で痩せて老化してしまった人は、ヒアルロン酸を入れるくらいのことをやることが多いです。
あとは、坂下さんは上眼瞼の手術と鼻の手術も先に行っていましたね。上眼瞼に関しては、75歳という高齢もあって、あと若干老人性の眼瞼下垂があったのではないかなと思います。それによって目が落ちくぼんで、癌で痩せて目がくぼんだという設定もあると思いますし、開きが悪くなって代償的に眉毛をグッと上げているので、より目がくぼんで二重もはっきりしていない。なので切開して二重を作って、おそらく挙筋前転して目の開きを良くして、若干眉が下がって目のくぼみも改善して二重もはっきりした、ということなのではないかなと思います。
あと鼻に関しては、元々鼻先がグッと上に上がっている状態であったと。それを整えるため、おそらく高さも出しているかなとは思うんですけど、鼻先を下げるために鼻中隔延長か、あるいは軟骨移植でしっかり下げるということもありますが、鼻中隔延長プラス軟骨移植くらいしないとあれくらい下がらないかなと。
材料は何を使うかというと、肋軟骨は取れないと思うんですよね。軟骨を取ること自体がリスクになるというのもありますし、75歳という高齢だと軟骨が骨化してカチカチになって材料として使えない可能性が高いです。これも医者によって色んな意見がありますけれど、僕なら75歳の肋軟骨は取りに行かないですね。
材料としては耳介軟骨か、あるいは鼻中隔軟骨を取って併用するとか、あるいは寄贈軟骨でもいいかなと思うんですよね。寄贈軟骨というのは前にちょっと否定的な意見として話したんですけど、韓国でよく使われていて、他人の死体の肋軟骨を保存して使うわけですよね。他人のものなので親和性が低くて感染のリスクが高いとか、だんだん吸収されたり溶けて鼻が低くなるということが起こり得るわけなんですけれど、今回のケースだったら患者さんには申し訳ないけれどそんなに長く生きられない。なおかつ肋軟骨を取るリスクや使えないリスクがあるんだったら、寄贈軟骨をこの場だけ使うというのもありかなと。
寄贈軟骨は日本で手に入りにくいからちょっと分からないですけれど、場合によってはPDSプレートを併用するのもありかなと。PDSプレートは吸収されてしまいますけれど、その前に鼻が潰れる前にお亡くなりになるということも考えて一時的にやる、ということも考えられなくはないです。ドラマのストーリー上はそういう設定はされていないわけですけれど。
あとはフェイスリフトですよね。フルフェイスリフトでこめかみ、耳の前を通って耳の後ろを通ってここを引き上げて。術後は顔がふっくらしているので、何か注入したんでしょう。吸引する材料になる脂肪もあんまりないと思いますので、ヒアルロン酸でいいかなと僕は思います。ヒアルロン酸注入でふっくらさせたという感じなのではないかなと思います。
結果的に手術はうまくいって、手術中あるいは手術後すぐに状態が悪化してお亡くなりになるということはなかったわけです。本人も若く綺麗になった顔に満足して、遺影の写真を撮りに行ったわけですね。自分の遺影を撮る前に旦那さんの遺影も撮った同じ写真屋さんに行ったということなんですよね。
なので、この手術を見て分かるとおり、末期癌でシワシワになってハリがなくなって老けちゃった分を若返り手術するだけではなくて、鼻もやっているわけですよね。単なるアンチエイジングの手術治療だけではなくて美人になるための手術もしていたので、鼻に関しては本人はずっと悩んでいて、ずっと手術したいと思っていたんじゃないかなと僕は思います。
手術が終わった後は自分の顔を鏡で見て満足して、「もういつ死んでもいい」みたいな感じだったんですよ。術後、花束を渡された時も、シャドウ・ドクターの疋田先生、中川家の礼二さん役の方が言っていたんですけれど、「悔しいけど一般医療の医者はこれはできねえだろうな」と言っていたんですよね。この言葉の意味は、一般医療というのは癌の治療とかターミナルケアの治療をする保険診療の医療のことなんですけれど、坂下さんはすごく病院嫌いだったんですよね。抗がん剤の治療とか苦しかったりして、だけど病院側、お医者さんは標準的な治療を勧めたりするわけです。
坂下さんはそれが大事というのも分かるとは思うんですけど、若くいたい、美人でいたいというその気持ちが強い。だけど末期癌の状態でこの先そんなに長く生きられないのに「美容整形の手術をしたい」と保険診療のお医者さんに言っても、普通は「何をバカなことを言っているんですか」と見下す感じになっちゃう可能性は高いですよね。「愚かな人間だ」と思っちゃう可能性は高い。だから坂下さんは主人公の先生にも「私のこと愚かだと思っているんでしょう。どうせあなたも見下しているんでしょう」とすごく怒っていたわけですよ。
だけど東山凜先生は坂下さんの気持ちを分かってくれて、ハイリスクな手術を受け入れてくれた、やってくれたわけですよ。だから坂下さんの中では、通常の癌の治療をする先生やターミナルケアをやる普通の一般医療の先生よりも、東山凜先生のほうを信頼して慕っているというストーリーなわけですよね。これは一般医療をやる医者には分からないですよね。本当に賛否両論があるというか、まずフェイスリフトなどの大掛かりな全身麻酔の手術は僕でもやるべきではないと思います。
僕の患者様にも、末期癌の患者様で「最後まで若返らせてほしい」という方はたくさんいらっしゃいますし、今までも実はたくさんいらっしゃいました。さっきもお話ししたように、癌の末期になるとどんどん体力が消耗して痩せていって、目もくぼんでこめかみも頬もくぼんで、顔がたるんでシワシワになって、やっぱり女性としては老けていく顔を見ていて耐えられないというのはあると思います。体重もどんどん落ちて筋肉も脂肪も痩せ細ってしまって、そういう場合は僕はいつもヒアルロン酸注射をやりますね。
痩せてシワシワになった部分、こめかみ、ほうれい線、口の周りとか頬のこけた部分にヒアルロン酸でふっくらさせてあげると結構若返るんですよ。末期癌で老ける原因というのは、痩せこけて萎んで老けちゃっているという部分がほとんどなので、膨らませるだけで結構若返って肌のハリも戻って患者さんは喜んでくださるんですよね。なので、末期になって「先生、お願いします」と僕のところに来てくださる方もいらっしゃいます。
あとは、癌になる前からずっと僕のところにアンチエイジングやパーツの手術で通ってくださっていた方が「癌になってしまいました。でも治療を受けたいです」とやっていって、そこから何年もして末期の状態になって痩せていって、「でも幹弥先生、お願いします」と言ってヒアルロン酸をちょこちょこ打ってふっくらさせて、「先生、若返ってありがとうございます」という感じの方はいらっしゃいますね。
そうしているうちに「あの患者さん、最近来ないな」と思ったらご遺族の方から連絡があって、「母は亡くなりました。今まで本当にありがとうございました。最後の最後まで本当に治療してくださってありがとうございました。本当に幹弥先生には私たち感謝してますし、母もすごく感謝していました。ありがとうございました」とすごく感謝されるんですよね。お亡くなりになる時もすごくふっくらして柔らかい顔で、「もう死んじゃったのが信じられない感じでした」と。その後、棺桶に入って、棺の中の顔もすごくふっくらして柔らかくて若々しい顔で、「本当に母は喜んでいると思います。ありがとうございました」とすごく感謝されるんですよね。
なので僕の中では、末期癌などでお亡くなりになる直前まで美容整形の治療をするというのはありだと思いますね。もちろんそれもケースバイケースであって、やる度にお金は失うわけですよね。だから残された家族のことも考えてそのお金をどちらに使うかというのはその家族の問題なわけなんですけれど、比較的金銭的に余裕のある方はヒアルロン酸を1本とか2本とか3本、あるいは場合によっては10本以上打つこともあるわけです。本当に痩せこけていた場合は1回で10本以上打つということもあって、それなりのお金がかかります。
比較的金銭的余裕のある方は家族もご本人様も喜んでくれるし、ちょっと金銭的に厳しそうだなっていう場合はなるべく少ない本数、最低限の予算で良くなることを提案しながらやるという感じですよね。末期癌の方もお亡くなりになる近くになると家族の方も一緒に連れて来られて、車椅子で来られてということもありますので、家族の方と話して無理のない金額の範囲内で提供させてもらうということはあります。
ということでして、おそらく旦那さんは生前ずっと整形のことを話しても反対されるからずっと黙っていたんだけれど、ずっとやりたかった、今しかないと思ったわけですよね。結局、整形される女性って恋人のためとか旦那さんのためとか、男のために整形するという人ってほとんどいないんですよね。たまにいますけれど、大部分の人はもう自分のためとか、自己満足のために整形するという人が多いですね。
彼氏や旦那さんは「整形なんかしなくてもいいよ。今のままで十分好きだよ」と言っても、自分がやりたいからやるという方が多いわけであって、結局「美しくなりたい」「若くなりたい」「可愛くなりたい」というのは生物学的本能なんですよね。もちろん男性でも「イケメンになりたい」「若くなりたい」という本能はあるんですけど、この本能はやっぱり女性のほうが圧倒的に強いです。太古の昔からそれが脳内にインプットされていて、そういう本能が強い人ほど生存に有利だったからそうだったんでしょう。
他人にどう見られているか、若く見られているか、綺麗に見られているかというのを気にする本能で、少しでも若くいたい、美人でいたいと。石器時代でも顔がボロボロで痩せて醜形で外見的な魅力がなければ、やっぱり選ばれないわけですよ。若々しくて健康そうな人のほうが元気な赤ちゃんを産んでくれて、そうすると選ばれて生存に有利で人類が繁栄するからという生物学的本能なんですよね。男性に選ばれるようにというものですが、その本能だけが発動されると、男とか関係なく「若く美人でいたい」という本能がワーッと出て、それが整形のほうに向かうということなんですよね。
他人の目を気にするという本能もあるから、死ぬ直前まで若く美人でいたいと。死んだ後も棺に入った時も若く美人な顔でいたい。その時にそのお顔を見た人に「若くて美人な方だな」と思われたいという本能ですよね。なので、坂下ゆり子さんは美容整形して若く美人になって本人は満足していたけれど、結果的にはその若く美人になったお顔を楽しむ期間ってほんのわずかだったんですよね。それでも本人はやりたかったということです。最後の最後までこの「若く美人でいたい」という本能は残るという、そういうストーリーでございました。
なので、このストーリーは本当に賛否あると思います。本人は大満足だったと思います。「死ぬまでやってよかった、先生にも感謝してる」ということなんだけど、本当に場合によっては手術中に死んじゃうとか、手術後に短期間で手術が原因で亡くなってしまうというリスクもあるわけですよね。賛否ある回だと思います。
僕だったら手術はしません。よく患者さんに「幹弥先生、フェイスリフトしてください」と言われて、すごく全身状態が悪いんですよ。心筋梗塞もあって高齢で心機能も悪くて、だから僕は断るんですよ。でも患者さんによっては、「幹弥先生に殺されるんだったら本望です。幹弥先生の手術で、フェイスリフトの最中に死んじゃったらもう絶対文句言いません。それはそれで本望なんです」と言われることがあるんですけど、それでも「申し訳ないけどごめんなさい」と断るわけですよね。
そうしないと、仮に本人が死んじゃって文句を言わないとしても、ご遺族の方にとっては「なんでこんな手術したんだ」ということになって訴訟になるわけですし、訴訟になったら高確率で手術した医者が負けるわけですよね。それは当たり前だと思うんですけど、医者としてやるべきじゃないわけです。だけど本人の意思としては「もう死んでもいいから手術したい」という人がいるのが現状で、それは生物学的な本能から来る意欲ということでございます。もしよかったら今回のお話やドラマの感想、ご意見をコメント欄にお書きください。ご視聴ありがとうございました。
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