『機動戦士ガンダム』第21話「激闘は憎しみ深く」を読む――ハモンは何のために戦ったのか
岡田斗司夫岡田斗司夫がテレビ版『機動戦士ガンダム』を1話ずつ解説する「ガンダム完全講座」の第21話編は、全4回・約2時間にわたる。全43話のちょうど中間にあたるこの回について、岡田はランバ・ラルの内縁の妻ハモンの描き方を中心に読み解く。
岡田の問題意識はこうだ。多くのファンはハモンをランバ・ラルの「おまけ」とみなし、この回を「惚れた男の敵討ちをするだけの話」と考えている。だが、死んだ男のために女が復讐する話なら、第11話「イセリナ、恋のあと」ですでに描かれている。無駄のない構成のテレビ版ガンダムで、富野喜幸が同じことを2回やるはずがない。では、イセリナとハモンの違いはどこにあるのか。岡田は、ハモンの目的は敵討ちではなく、自分の死に場所を求めることだったと解釈する。
同じ構造の繰り返しに見えて、別の話になっている
前回の第20話「死闘!ホワイトベース」で、ランバ・ラルと副官クランプが戦死した。第12話「ジオンの脅威」から続いてきたガルマの敵討ち部隊の話は、本来ならそこで終わるはずだった。しかしこの回では、残されたハモンが復讐に立つ。ガルマが死んでイセリナが復讐した展開と同じ繰り返しに見えるが、岡田は「ちょっと意味が変わってきている」と見る。
この回ではアムロがなかなか登場しない。Aパートの中盤を過ぎてようやく出てくるほどで、焦点は敵側のハモンに当たっている。もう一人の重要人物はリュウ・ホセイだ。リュウはこの回で死ぬが、その存在はブライトの中にある矛盾を照らし出す役割も担っている、と岡田は指摘する。
冒頭の夕日:音楽を入れない状況描写
岡田は各場面を実写映画のシーンに見立てて解説していく。シーン1は、砂漠の大きな夕日から始まる。砂嵐の中の夕焼けなのでギラギラと光り、風で太陽が揺らいでいる。カメラが切り替わると、ギャロップ(前回ガンダムに爆破されたランバ・ラル隊の陸上戦艦)が牽引していたホバー式の巨大な倉庫「カーゴ」の周りに、補給物資が集まっている。その前でハモンとタチ中尉が話している。
岡田によれば、冒頭に夕日を置くことでドラマに厚みが出る。戦闘の前日の夕方から夜を描き、夜が明けて復讐が始まるという構成なので、情景のカットを一枚挟むことで時間の経過を感じさせ、新しい一日への準備をさせる。これは漫画の手法で、虫プロ出身で手塚治虫に傾倒していた富野がごく自然に取り入れている。岡田はここで皮肉な逸話を紹介する。手塚治虫は東映動画から『西遊記』の監督を頼まれて喜んで引き受け、連載の合間を縫って絵コンテを描いたが、東映のアニメーターたちに「これではアニメが作れない」とボツにされたという。映画的手法を漫画に落とし込んだ人でありながら、映像的なコンテは切れなかった。その手塚の手法を、富野はアニメの中でさらりと使っている。
夕日の表現についても、岡田は技法を説明する。揺らぐ太陽は手前に波ガラスを置いて左右に動かすことで表現し、ギラギラした光はエアブラシで描いた2枚のセルを交互に見せている。現実の風景をアニメでどう再現するかを落とし込んで描いているわけだ。
さらに、この場面には音楽が一切入らない。セリフのない絵には音楽を載せたくなるものだが、夕日、補給の俯瞰、そしてハモンとタチの会話まで無音で通すことで、ドキュメンタリーのように補給の乏しさの寂しさや苦さが伝わる、と岡田は評価する。会話の内容は、使い古したザク1機とマゼラ・アタックの砲塔4門しか届かないことへの嘆きと、マ・クベ大佐が協力的でないこと、それでもタチたちの士気は高いことの説明である。岡田はこの場面を、状況説明のための屋外ロケシーンと位置づける。
ハモンの居室とホワイトベースの「隙」
続く室内シーンでは、カーゴ最前部の曲線天井の部屋で、バスタオルに身を包んだハモンがバスルームから出てくる。個室にバスルームがあることから、ここは指揮官用の部屋、つまりランバ・ラルとハモンが二人で暮らしていた思い出の場所だと岡田は読む。窓の外では、マゼラ・アタックの砲塔部分であるマゼラ・トップがウインチで引き上げられている。ハモンはそれを髪を拭きながら無言で見つめる。セリフがないため、視聴者はシャワーの意味を自分で考えるしかない。
そこへタチ中尉が偵察結果を報告に来る。「木馬は山を背にしております」「それにつけ入る隙があるな」。岡田の説明では、山を背にしていれば後方を警戒しなくてよいので一見有利だが、修理中で着陸しているホワイトベースは、襲われるとエンジン出力が徐々にしか上がらず前方にしか逃げられない。行き場が一方に塞がれている点を、ハモンとタチは突こうとしている。
夜のホワイトベース:パンダウンとパンアップ
夜のホワイトベースの場面について、岡田はカメラワークを細かく分析する。最初のカットは夜空からホワイトベースのブリッジの下部をなめ、岩山、そしてガンキャノンの腕に乗ったガンタンクが溶接作業をしているところまでパンダウンする。空から下へ降りるカメラは状況を客観的に見せ、足元から上がるカメラは主観的に見せる。これが映像文法の基本だと岡田は言う。次のカットはその逆で、ガンタンクの位置から斜め上へパンアップし、ガンキャノンに乗ったカイが溶接している様子を見せる。このパンアップがあるから、カイの「かなりひでえな」というぼやきが視聴者に主観的に入ってくる。
ガンタンクのハヤトが部品や弾薬の不足を訴えると、ブライトは無線越しに「知恵と工夫で切り抜けてくれ」と応じる。ハヤトが「それよりアムロ」と言いかけると、ブライトは「それを言うな」と遮る。カットはコクピットのハヤトだけで、ブライトの声はオフゼリフとして聞こえる。岡田は、ハヤトが気にしているのは全体の状況よりアムロの処遇で、ブライトから何らかの確約を引き出したいのだろうと推測する。
病室では、傷ついたリュウをフラウ・ボゥが見舞う。包帯を巻いて汗をかいた姿は、アニメのお約束で言えば「死亡フラグ」だと岡田は言う。リュウは「俺は順調だってみんなに言っといてくれ」と言い、フラウは「ええ」と答える。岡田はここにフラウの冷たさを見る。アムロが同じ状態なら「寝てなきゃダメ」と止めるはずで、好きな男以外はどうでもいいという残酷さが出ている。岡田はそういうフラウが好きだとも付け加える。さらに、フラウはアムロがまだ独房にいることを直接言わず、リュウに尋ねられて答える形でさりげなく伝えている。リュウはそこから、問題はアムロではなくブライトにあると察する。前回の件でアムロは人間的に成長しているのに、追い詰められたブライトはそれを見ていない、というのが岡田の読みである。
ハモンの演説:感謝、損得、大義
翌朝、ハモンが部下の前に立つ。カメラは下から斜めにパンアップする。一人の人物を下からパンアップで見せるのは、その人を凛々しく見せたい時だけであり、今回の主役がハモンであることがはっきりする。空には朝焼けの雲が、真鍮色の中に青が混じる不思議な色で描かれている。前夜の砂嵐、星空、翌朝の朝焼けといった気象の変化まで作り込んでいる点が、ガンダムを見る楽しみだと岡田は言う。
タチ中尉は、カーゴにマゼラ・トップを装備してギャロップの予備エンジンで高速移動できること、ザクにはマゼラ・トップの砲を持たせること、フライングボートのサムソン2機を用意したことを報告し、「兵は16名、すべてランバ・ラル様の息のかかった者」と言う。腕を伸ばす動作がそのまま次のカットにつながるアクションカットで、次はハモンの背後から、整列した部下と乏しい全兵力を見せる。
岡田が「名演説」と評するのがここからだ。岡田はギレン・ザビの演説を、銀河万丈の演技で雰囲気はあるが中身がない空疎な演説と見ている。それに対してハモンの演説は、感謝、損得感情、大義、そして自分の気持ちを語り尽くしている、と対比する。
まずハモンは「よく準備をしてくれました」と感謝から入る。岡田は、戦争ものの映画でも並んだ兵隊にこう言う指揮官はあまりいないと指摘する。次に「ガルマ様の敵討ち部隊として地球に降り立ったものの、我々はまだ任務を終わっておりません」と語る。状況説明に見えて、これは損得の話だと岡田は言う。ランバ・ラルが死んだ以上、兵の心には「もう国へ帰ろう」という思いが必ずある。ハモンはその退路をゆっくり塞いでいく。手ぶらで帰れば左遷か軍法会議かもしれない。そもそもランバ・ラルがザビ家の私怨の戦いを買って出たのは、勝てばドズル・ザビに取り立ててもらえるからだった。ここでやらなければシャアのように軍を追われて何も残らない、という損得を語っているのだ。
続く「一見小さな作戦ではありますが、敵は連邦軍の新鋭戦艦とモビルスーツです」は大義にあたる。これは私怨の敵討ちにとどまらず、戦争全体に関わる戦いだという意味である。さらに「ジオンの国民は我々の戦果に期待しております」と言って、損得感情をプラスの方向に言い換え、勝てば明るい未来があるとやりがいを与える。岡田は、ハモンがキシリアの部下だったら一軍の将になっていただろうと言い、この人には「将器」があると評する。
演説の途中で、ハモンの内面の声が回想に重なる。「ランバ・ラルは私にはもったいないくらいの実直な男性だった」「あんなに心を寄せてくれた人のために、ヨーツンヘイムの砂漠で散るのも後悔はない」。岡田の解釈では、砂漠で出会ったアムロのような少年に心を奪われかけた自分に比べて、ランバ・ラルはなんと一途だったかを思い出している。ハモンは生きて帰るつもりが微塵もないが、それを部下に語るほど愚かではない。ランバ・ラルなら「俺と一緒に死んでくれ」と言って最前線で戦う現場監督の器だが、ハモンは将軍の器だ、と岡田は両者を区別する。
演説の締めは「この作戦に不服のある者は参加しなくともランバ・ラルは怒りはしません。私もです」。岡田によれば、第17話「アムロ脱走」でハモン自身がランバ・ラルに対して、この戦いは所詮ザビ家の私怨ではないかと批判していた。そのハモンがいま、同じことを部下にやらせようとしている。だからせめて強制はしたくないのだ。タチ中尉は「全員覚悟の上であります」と答えるが、岡田は「いい人なんだけど、この辺のハモンの気持ちは分からない」と評する。ハモンは一人ひとりに声をかけて握手していく。
ブライトの眉とリュウの説得
ブリッジでブライトとミライが通信機を修理していると、立っているのがやっとのリュウが入ってくる。リュウはアムロを独房から出すよう求めるが、ブライトは「俺たちが期待する態度を見せれば、あいつはまだまだうぬぼれる」「野生の虎でも檻に入れておけば、自分の立場が分かってくる」と譲らない。リュウに「言い逃れに聞こえる」と言われ、ブライトは「俺の言い逃れ?なぜだ」と返す。
岡田が好きだというのはこの時の眉の演技である。2秒半から3秒ほどのカットで、右の眉だけがわずかに吊り上がる。本音を突かれて動揺していることを表しており、セリフの意味は「なぜ分かった」になってしまう、と岡田は説明する。リュウは「人間には言葉があるんだ。俺の元気なうちに」と言い、アムロとゆっくり話し合ったことがないだろうとブライトを諭して退場する。
カーゴの進撃とビニールテントの修理
岡田は自作のフリップで編成を説明する。カーゴは両側にジェットエンジンを備えたホバー式の倉庫で、上にマゼラ・トップを3基載せている。その周りをザクが走り、サムソン2機が伴走する。カーゴ上のマゼラ・トップに乗ったハモンがうっすら笑い、その上にアムロの回想が重なって、「あの坊やが邪魔をするようなことがありましたら、あなた、守ってくださいましね」とランバ・ラルに語りかける。岡田は、この笑いはアムロを思い出したことによるものだと読む。
ホワイトベースでは、猛烈な砂嵐の中、エンジン全体にビニールのテントをかぶせて修理している。カバーを開けると砂が入って精密機械が狂うからだ。岡田は他のアニメでこういう場面を見たことがないと言い、発想の元は『ブラック・ジャック』の、ビニールテントを張って手術する場面ではないかと推測する。当時の手塚治虫は『ブラック・ジャック』で復活し、再び漫画界のトップへ向かっていた時期で、富野は師匠の仕事を見ていたのだろう、というのが岡田の見立てだ。
独房のアムロ:マチルダの夢とリュウとの別れ
ようやく登場したアムロは、独房で寝ながらうなされている。夢の中では第14話「時間よ、止まれ」の場面が回想され、ブライトが「寝るのも仕事のうちだ」と叱り、マチルダは口だけが動いて声が聞こえない。実際のマチルダのセリフは「ブライトさんの言う通り、寝るのもパイロットの仕事のうちですよ」である。岡田は、声が聞こえないのはアムロがそれを思い出そうとしているからであり、この場面はアムロがスランプを自力で解決した印だと読む。「寝るのも仕事だ」も独房入りも理不尽だが、今のアムロにはそれを一度受け入れる心の準備ができている、という成長の描写だという。
ノックの音に外を見ても誰もいない。リュウがドアの外に倒れ込んでいるからで、カメラはアムロの顔からリュウへパンダウンする。アムロは「ブライトさんの処置は分かります。怒ってなんかいません」と答え、リュウは「ブライトはお前を野生の虎だって怖がってるんだ」と伝える。「アムロ、期待してるぞ」と言ったリュウは、「大丈夫ですか」と問われて「なに、大丈夫」と答え、顔を見せないまま去っていく。
岡田はこれがアムロとリュウの最後の会話であり、あえて顔を見せないのが重要だと言う。リュウがどんな顔で自分を励ましに来たのかを最後まで見られなかったからこそ、回の終わりにアムロは号泣する。後で思い出した時に何倍も切なくなるよう、Aパートにこの場面を置いた富野を岡田は高く評価する。
ハモンの微笑みと「無理心中」という解釈
進撃中のハモンは、タチ中尉の作戦説明を思い出している。「第一波の攻撃を敵の最も弱いと思われるところにかけます」「我々の生還は不確実でありますが、間違いなく木馬を撃破できます」。生還は不確実とは、ほとんど生き残れないという意味だ。それを思い出すハモンは、眉が少し下がり、口元から歯がのぞいている。本人も意識していない微笑みだと岡田は言う。
ここで岡田はイセリナと比較する。イセリナは自分と一緒に死んでくれる男にも一切笑顔を見せず、決意の表情のまま死んでいった。敵討ちをする女の顔はすでに第11話で描かれている。富野がこの回で描きたかったのはそれとは違う女の顔だ、というのが岡田の主張である。ハモンが微笑むのは、やがて訪れる自分の死が待ち遠しいからだ。ハモンが求めているのは敵討ちではなく、自分と、自分を愛したランバ・ラルと、心惹かれたアムロとの「無理心中」だと岡田は解釈する。
岡田はここで、富野が『逆襲のシャア』の作画打ち合わせで「こんなクェス・パラヤは濡れてない」と言ったという話を紹介する。岡田は当時これをガイナックスのスタッフとして愚痴で聞き、「無理だよ、富野さんはエロいよな」と笑っていた。しかしこの回を見て考えが変わったという。このシーンのハモンは明らかに「濡れている女」を描こうとしている。イセリナのように純粋な女として敵を討つこともできず、ランバ・ラルを忘れて国へ帰ることもできない。女神でも哀れな女でもない一人の女として、アムロと無理心中し、ランバ・ラルの一途な思いも受け止める。そのために部下全員を死地に追いやろうとする女のエゴが出ている、と岡田は言う。岡田にとってこの微笑みは今回で最も艶っぽい場面であり、次に来るのがラストの「本当に好きだったよ、坊や」である。
戦闘開始:背後からの奇襲とガンタンクの限界
タチのザクが岩山の背後から現れ、ホワイトベース右舷中腹の弱点を狙う。前方だけを警戒していたカイは「しまった、後ろからか」と慌て、ブリッジもパニックに陥る。サムソンも襲ってきて、カイのガンキャノンは窮地に立たされる。有利な位置を求めて岩山を登ったハヤトのガンタンクは、途中でシャフトが折れて動けなくなる。
岡田はこの場面を説明するために約9000円のガンタンクのおもちゃを買ったと笑いながら、コクピットの位置の話をする。ガンダムのモビルスーツは、走っても動きが少なく装甲も厚い腹部にコクピットを置く。マジンガーZ以来、頭部コクピットが当たり前だった中で、これをきちんとやったのはガンダムがほぼ初めてだと岡田は言う。ところがガンタンクは長距離援護用の兵器なので、見晴らしを優先して頭部にガラス張りのコクピットがある。だから、青空を背景にガラス越しのハヤトの演技を見せることができる。
岡田はここから第17話の話に戻る。基地を叩けと命じられたアムロがガンダムでなくガンタンクで出たのは、遠くから砲撃するという点で戦術的に正しかった。格闘戦用のグフが出てきたのが不幸な読み違いだった、とアムロの判断を擁護する。動けないガンタンクの正面にタチのザクが現れ、ハヤトが叫んだところで場面が切り替わる。
階段の場面とセイラの「私も責任を取る」
ホワイトベースの階段で、リュウはセイラに「アムロを独房から出すんだ。責任は俺が取る」と頼む。岡田によれば、廊下ではなく階段を舞台にしたことで上下差が生まれ、セイラの心配顔は下からのあおり、リュウの苦しげな顔は上からの俯瞰で撮れる。セイラは振り返らずに駆け下り、リュウも振り返れずに「分かってる」と答える。
セイラは通信機でブライトにアムロの独房のナンバーを尋ねる。窓の外では爆発が続いているのに、ブライトは意固地になっている。セイラが「私も責任を取るわ」と言ったのが決定打だった。岡田の読みでは、ブライトは前回あたりからせめてブリッジの中で人望を固めようとしていた。リュウが嫌だったのは、ミライもセイラもブライトも、閉じ込める時以外は一度もアムロに会いに行っていないこと、艦内にいつの間にかカースト制度のようなものができていたことだ。その数少ない支持者のセイラにまで逆らわれ、ブライトの自信とプライドが崩れ、ドアナンバーを吐き捨てるように教える。
アムロを出したセイラは「リュウが開けてくれたのよ。リュウの分も頑張ってね」と言う。岡田は、ミライなら「ブライトが開けてくれた」と言ってアムロのやる気を引き出すはずだと述べ、感情で動くお嬢様育ちのセイラを辛辣に評する。そしてカーゴが姿を現し、機関銃の照り返しの中でハモンがにやりと笑ったところでAパートが終わる。
Bパート:原因が結果を生み、結果が次の原因になる
Bパートは、右エンジンが4基中1基しか点火していないホワイトベースを、ブライトが無理やり離陸させる場面から始まる。ガンダムは整備中で分解されており、アムロはコア・ファイターで出撃する。セイラが確認すると、ブライトは「止めてもやるんだろう」「ガンダムがいなければ立ち向かえんというのに」と苛立ちを隠さない。ホワイトベースは前方の岩山に引っかかって飛べなくなる。リュウはフラウに右の機銃座へ行くよう指示し、自分は通信機でブリッジの混乱を聞いたあと、止める乗員に「ホワイトベースがやられちまえば病気だけが」と言い捨てて、ガンタンクを動かすためにバギーで出ていく。ホワイトベースが岩山に引っかかっているおかげで、ハッチからそのまま外へ出られる。
岡田はこうした説明ゼリフが過剰であることを認めつつ、後半の畳みかけるドラマで矛盾を起こさないために必要だと言う。そして流れを9項目に整理する。ランバ・ラルの攻撃で修理中だったこと、白兵戦で死傷者が出て修理が進まないこと、ハモンの攻撃が不調の右エンジンに集中したこと、ガンタンクの故障(ここまでAパート)。右エンジン不調のままの離陸、岩山に引っかかって飛べないこと、だからリュウがバギーで出られたこと、リュウがガンタンクに乗り込み、コア・ファイターで悲劇に突入すること(Bパート)。原因が結果を生み、その結果が次の原因になる「数珠つなぎ」の構造で、無駄がないと岡田は評価する。
ガンダムを追い詰める将棋のような戦術
アムロはコア・ファイターでサムソンを1機撃墜し、弾を撃ち尽くしたところでパーツと空中合体してガンダムになる。ビーム・ライフルで2機目のサムソンを落とすが、ザクには逃げられる。ザクはホワイトベースの右エンジンの方向へ逃げるので、後ろから撃てばホワイトベースに当たってしまう。格闘戦に持ち込むしかないと走り出したところで、背後からカーゴが迫る。アムロは狙撃しかけるが、特攻ならば中は爆薬でいっぱいのはずだと気づき、手で押し返すしかなくなる。ハモンは「小癪な」と言う。
ここからの展開を、岡田は「チェスや将棋のように、相手がそれしかできない手に一手ずつ追い込んでいく」と表現する。ガンダムが頭部バルカンで反撃すると、画面の中でマゼラ・トップがいつの間にか上昇して消えている。岡田自身、リアルタイムで見た時は気づかなかったという。ハモンは「ガンダム1機で止められるものか。木馬にぶつかればその中の爆薬が」とほくそ笑み、タチに「ガンダムを後ろから倒しておしまい」と命じる。コクピットの脇に吹き出しのようにインサートされるタチの顔は、富野が確立した演出だと岡田は説明する。
ザクのヒート・ホークがガンダムの腰に食い込み、上からはマゼラ・トップが迫る。ガンダムはザクを下からすくい上げて盾にし、放り投げてマゼラ・トップと空中で衝突させ、2機を同時に倒す。岡田は、ガンダムシリーズでガンダムが最もピンチだったのはこの時ではないかと言い、これほど布陣を固めた戦術的な攻撃を受けたことはない、と述べる。すぐに打つ手がなくなると全員で切り込むランバ・ラルと比べて、ハモンは相手を自分に有利な形へ追い込む名参謀・名指揮官でもある、というのが岡田の評価だ。
2機を失ったハモンは青ざめながらも笑い、「2人のパイロットを同時に討ち取るとは、さすが私が見込んだ坊やだけのことはある」と言う。岡田が注目するのは、握手までしたタチの名を呼ばないことだ。イセリナは同行したダロタ中尉の死に取り乱して名を呼んだ。ランバ・ラルにとって部下は家族だったが、ハモンにとっては掌握も操縦もうまいものの、所詮は部下にすぎない、と岡田は対比する。
マゼラ・トップはガンダムの真後ろに回り込む。カーゴを押さえるのが精一杯のガンダムには打つ手がない。機銃座のフラウが「撃ちましょうか」と言うが、駆けつけたブライトは「マゼラ・トップだけを狙えるわけがないだろう」と止める。岡田は、もしブライトが本当にアムロを邪魔に思っていたら撃たせただろう、と読む。アムロを殺したくないから非情な決断ができないのだ。
マゼラ・トップは「ジオンのコア・ファイター」
第4回の冒頭で岡田は、この回のマゼラ・トップが非常にかっこよく描かれていると言い、コア・ファイターとの関係を長く語る。作中の設定では、コア・ファイターはパイロットの生還率を高めるためのものだ。ジオンは短期決戦のつもりで熟練パイロットを使い捨てのように投入したが、戦争が長期化すると、モビルスーツは量産できてもパイロットの養成には数年かかる。だから脱出カプセルに翼と武装をつけた、という説明である。
しかし岡田によれば、現実の事情はおもちゃ会社の要求への苦肉の策だった。スポンサーは『ゲッターロボ』のような3機合体を望んだが、おもちゃ的なロボットアニメを嫌った富野が「これでも3機合体だからいいでしょう」と押し通したのがコア・ファイターだという。ところが、せめてものサービスとして作った設定が次々とドラマを生んだ。第2話級のコア・ファイターの弾道飛行、アムロが母に会いに行く回、空中換装の訓練シーン、そして今回の「整備中だからコア・ファイターで出て、弾が尽きて合体し、機動性を失ってザクを追えない」という状況である。一方、やられメカだったマゼラ・トップは、カーゴから飛び立ってガンダムの背後を取る、ジオン側のコア・ファイターのような役割を果たしている。大砲が飛べば反動で後ろに飛んでしまうから、兵器としてのリアリティはゼロだと岡田は笑う。そのうえで、ガンダムのリアリティはデザインではなく使い方で出すものだ、とまとめる。
岡田はハモンの計画の変化も整理する。当初は、カーゴをホワイトベースにぶつけ、マゼラ・トップで撃って誘爆させる計画だった。ガンダムに止められたので、ザクでガンダムを破壊する計画に変える。ザクとマゼラ・トップを同時に失うと、自分の手でガンダムを破壊すると決める。そうなれば、ガンダムとカーゴの爆発でホワイトベースを吹き飛ばせるが、その間にいる自分も死ぬ。ハモンはそれを計算に入れている、と岡田は言う。
「本当に好きだったよ、坊や」とイマジナリーライン
「いくら装甲の厚いガンダムとは言っても、これだけ近ければ落ちやすい。そしてガンダムとカーゴの爆発力は木馬も」。振り返ったアムロは「ハモンさんか」と気づく。ハモンは「本当に好きだったよ、坊や」と言う。岡田は、敵を討つ瞬間にイセリナは「ガルマ様の仇」と叫んだが、ハモンはランバ・ラルの名を出さない点を強調し、ここにハモンの無理心中が表れていると言う。
ここで岡田は映像上の禁じ手を指摘する。ガンダムと背後のマゼラ・トップの右側にあったカメラが、次の外側からのカットでは左側に移っている。イマジナリーラインを越えると普通は画面が分かりにくくなるが、直前にアムロが振り回される方向をあえて逆にすることで、アムロを先にラインの反対側へ越えさせ、違和感を消している。なぜそこまでしたのか。次のカットで、ランドセルを破壊されたガンダムから右へパンして原因となったハモンを映し、そのまま顔のアップへつなげるためだ。舞台演出でいう「仕手」(上手側、原因)と「受け手」(下手側、結果)の配置を守りつつ、ドラマの密度を落とさずにハモン側へ主観を移す工夫だと岡田は説明する。
「これでおしまい」と勝利を確信したハモンの窓に、コア・ファイターが迫る。冷や汗をかきながら微笑むハモンと、冷や汗をかき目を見開くリュウ。岡田は、善悪の描き分けを避けるガンダムには珍しく、ここでは悪と正義がはっきり対比されていると言う。相手を殺そうとして微笑むのは悪役で、死を覚悟して目を見開くのは主役の扱いだ。体当たりの描写では目を閉じさせることが多いが、確実に当てるために目を開けさせるところに富野のリアリティがある、と岡田は述べる。
6人のリアクションと、それぞれの涙
スローモーション的な映像でコア・ファイターがマゼラ・トップに激突し、両者が爆発する。直後に6人のリアクションが連続する。見ていたのはフラウ、ブライト、ハヤトの3人だ。フラウとブライトは声を上げるが、ハヤトだけは口の形だけで「リュウさん」と言う。コア・ファイターを譲ったハヤトだけが、突っ込んだのがリュウだと知っているからだ。見ていなかったのはセイラ、ミライ、カイの3人である。通信でリュウとつながっていたセイラは「リュウ」と叫び、ミライは何が起きたか分からず呆然とし、カイは格納庫で弾の補給を急がせている。戦場の一瞬に各人が何をしていたかを切り取っている、と岡田は評価する。
アムロは、まだそれがリュウだとは気づいていない。カーゴがホバークラフトであることに気づき、もう一機のマゼラ・トップの攻撃を頭を下げてかわしてから、片側のエンジンだけを撃ち抜く。回り始めたカーゴを蹴り飛ばしてホワイトベースから離し、狙撃して爆破する。戦いは終わった。セイラに「コア・ファイターに乗ってたの誰だったんです」と尋ねたアムロは、「驚かないでね、リュウよ」と告げられ、信じられずに「嫌だな、セイラさん」と少し笑ってしまう。
次のカットは長いセルの横パンで、ミライ、カイ、ブライト、アムロ、ひざまずくジョブ・ジョン、セイラ、墜落したコア・ファイターとマゼラ・トップまで、関わった全員を一画面に並べ、背景には子どもたちの泣き声が繰り返される。ジョブ・ジョンは、自分がリュウと代わらなければと嘆く。回想で、リュウがジョブ・ジョンを押しのけてコア・ファイターに乗り込んだ経緯が示される。ハヤト、ブライト、セイラにもそれぞれの回想が入り、ミライは回想なしでひたすら泣きじゃくる。アムロが思い出すのは、顔を見られなかった独房での最後の会話だ。「僕だってそうです。ハヤトもそうかもしれない。みんなが、みんなが」と泣くアムロに続き、強気を保っていたブライトもついに手をついて「勘弁してくれ、リュウ。俺たちこれからどうすりゃいいんだ」と泣き崩れる。
「それしかないんですよ」――救いのないセリフ
涙をこらえたセイラが「ジオンを倒すしかない、戦争が終わるしか」と言う。岡田はこのセリフを切ないと見る。セイラにとってジオンは故郷であり、それを倒すしかないと自分の口で言ったことで、それまで戦争と距離を置き、どこか無責任に振る舞ってきたセイラの生き方が変わる。この回と次の回あたりから、セイラが責任感を持って動き出す伏線になっている、と岡田は言う。
アムロは「そうさ、そうですよ。それしかないんですよ」と夕焼けに向かって絶叫する。燃える機体と立ち尽くす人々、不調のエンジンを映したホワイトベース後方からの構図に、その声がこだまする。岡田は、これは真実ではないと言う。本当は戦争をやめて逃げるのが正しい。しかし「君は生き延びることができるか」というテーマのもと、この状況に置かれた者には戦って勝つ以外に脱出方法がないことを見せている。普通のロボットアニメなら敵を憎く描くところだが、ランバ・ラルを殺された側のハモンが出てきて、互いに意味もなく憎しみ合い殺し合う回を見せた後では、もう敵を憎むことはできない。そこで「それしかない」と語らせる救いのなさが、ガンダムのドラマのクライマックスだと岡田は述べる。
次回にはマ・クベという「視聴者が嫌っても大丈夫なキャラクター」が登場し、新兵器も出てくるので、いくらでも憎める展開になる、と岡田は言う。この回は劇場版三部作で取り上げられず軽く見られがちだが、テレビシリーズの流れの中ではかなり重要な回だと考えて、4回かけて解説した、と締めくくる。
追加解説:ハモンの能力値と、更新される解釈
動画末尾の追加解説で、岡田はハモンの部下たちに改めて触れる。ランバ・ラル隊の生き残りとはいえ、白兵戦で多くが死んだ後にあれだけの人数が命がけの作戦に残ったのは、ハモンのために死ぬ覚悟を決めた男たちだからだ、と岡田は見る。ハモンはまず礼を言い、次に成功すれば英雄として帰れるという具体的な利益とゴールを示し、一人ひとりの名を呼んで目を見て握手する。岡田はこれを、アイドルの握手会ならセンターの振る舞いだと表現する。
ハモンの正体は最後まで明かされない。後に安彦良和の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で酒場の歌手という設定が足されたが、アニメでは立場の見えない不思議な人物であり、だからこそ色っぽい、と岡田は言う。第22話の解説で予定しているライバルキャラの格付け(作戦立案、指揮、戦闘、調略、カリスマの5項目を5段階で評価)をハモンに当てはめると、作戦5(タチの立案だとしても即座に理解して采配した)、指揮5、戦闘4(シャアやランバ・ラルには及ばないが、飛行性能の悪そうなマゼラ・トップでガンダムのランドセルだけを破壊しようとした)、調略5(ランバ・ラルすら本心を知らず、マ・クベとも渡り合えたはず)、カリスマ5になる、と岡田は採点する。多くの男性ライバルキャラより欠点がなく、ランバ・ラルのおまけどころか、ランバ・ラルがハモンのおまけかもしれない。「できる男にはできる嫁がついている典型例」だという。
そのうえで岡田は、アムロはハモンが次に尽くすべき男になりうる存在だったと述べ、この見立ては従来のファンのイメージとはかけ離れているだろうと認める。現時点(話者は2026年8月時点と言う)での岡田の解釈は、ハモンの作戦は、アムロに心惹かれた自分がランバ・ラルと添い遂げる、つまり心中するために立てたものだ、というものである。数年前の考察をこうしてアップグレードしていくのも楽しい作業だと岡田は語り、次回の第22話「マ・クベ包囲網を破れ!」へとつないでいる。
おはようございます。岡田斗司夫です。テレビシリーズの機動戦士ガンダムを1話ずつ解説していく、ガンダム講座のお時間です。今日はですね、第21話「激闘は憎しみ深く」について話します。21話ということは、ガンダムテレビシリーズのガンダム全43話なので、ちょうど真ん中辺ですね。
で、今回見所はですね、やっぱランバ・ラルの愛人ハモンさんの生き方、描き方だと思うんですね。以前の講座でですね、ガルマ・ザビについて、みんなガルマ・ザビを過小評価してるっていう風に言ったんですけど、ハモンさんもですね、多分同じように過小評価されてる人だと思うんですね。多分ですね、ガンダムファンの多くはハモンさんをランバ・ラルのおまけみたいにしか考えてないし、今回の「激闘は憎しみ深く」もですね、愛人が惚れた男の復讐、敵討ちをするだけの話だと思ってる人かなり多いんですよね。
でも女がね、死んだ男のために復讐する話というんだったらですね、第11話「イセリナ、恋のあと」でやってるんですよ。それだけをテーマにしてやってるんですね。で、富野由悠季がですね、同じようなことをただ繰り返すとは思えないんですね。このテレビ版のガンダムという無駄のない構成の中で、同じこと2回やるはずがないんですね。じゃ、イセリナとハモンの違いはどこにあるのか。今回の講座ではですね、割と昔からのガンダムファンが見落としがちな、ハモンの目的について詳しく語っています。
この動画はですね、岡田の機動戦士ガンダム完全講座の第62回から第65回までをまとめたものですね。4回分、およそ2時間あるんですけども、長いです。やっぱり長いです。見てください。動画の最後にはですね、一応まだ追加の情報、さらに突っ込んじゃいました。それではここから無料動画スタートです。
はい。岡田のガンダム講座。今日はですね、第21話「激闘は憎しみ深く」です。前回の「死闘!ホワイトベース」でランバ・ラルと副官のクランプが死んでしまいました。ランバ・ラル隊の精鋭はもう全滅したんですけども、ホワイトベースに乗り込む戦闘で全滅したんですけども、まだ残された者がいるんで、残された者にはまだ戦意があったというところでですね、「激闘は憎しみ深く」です。
本来、大体こういうサブエピソードというかですね、機動戦士ガンダムって大きい流れの中の、何話も使ったブロックですね。12話の「ジオンの脅威」で出てきた敵討ち部隊、ガルマの敵討ち部隊のランバ・ラル隊がですね、前回20話の「死闘!ホワイトベース」でランバ・ラルと、その1番目立ってたクランプがですね、死んじゃったわけですね。本来だったらこれで終わりなんですけども、さらにランバ・ラルの内縁の妻のハモンの復讐になると。
で、実はこれ繰り返しでですね、ジオンのザビ家の、あれ何ザビだっけ?ガルマ・ザビがですね、死んだ時に「イセリナ、恋のあと」でイセリナが復讐するのと実は同じ繰り返しなんですね。ところがちょっと今回は話が違うぞと。全く同じように男が死んで女がそれの復讐をするってやつなんですけども、全然ちょっと意味が変わってきてると。富野由悠季はですね、そんな無駄なことしないですね。一見繰り返しに見えて、ちょっと違うことをやろうとしてるっていうのをですね、今回「激闘は憎しみ深く」でご覧ください。
で、これですね、何が特殊かと言って、アムロ・レイがなかなか登場しません。Aパートの真ん中超えた辺りでようやっと出てくるんですけれどもですね。今回話すこの「激闘は憎しみ深く」の第1回では、まだ出てきてないんじゃないのかなっていうぐらいですね、アムロ・レイが出てこない。どちらかっていうと敵方のハモンに焦点を当てた回でもあります。あとはブライトかな?リュウ・ホセイがですね、今回で死んじゃうので、そこにもやっぱ見せ場は当てるんですけども、リュウ・ホセイが照明役として照らすのはですね、ブライトの中にある矛盾みたいなものを照らそうとしています。
では、シーン1から行きましょう。今回、もうシーンっていう言い方してるんですけども、映画っぽく実写で撮ったらどういう風になるのかっていう感じで話していきます。シーン1、いきなり砂漠の夕日から始まります。夕日がなんでこんなにでかく描いてるのかって言うとですね、これ、砂嵐が起きてる時の夕日、夕焼けなんですね。なのでですね、もうギラギラ光ってます。おまけに風が吹いて、太陽がゆらゆらしてるというところから始まります。
で、カメラが切り替わって、カーゴをですね、ギャロップっていう、元々ランバ・ラル隊が自分たちの本部にしていた、本拠地にしていた陸上戦艦みたいなものは前回ガンダムに爆発させられてしまったので、後ろに引っ張ってる、ホバークラフトで浮く巨大な倉庫部分ですね。その部分の周りに補給物資が集まってきてます。さらにそれがアップになると、食料があったり、すごい旧式のザクがあったりするという絵が見えて、その前でですね、今回の主役であるハモンと、副官で横にいるタチ中尉っていう人がですね、2人で話しています。
で、なんでこういう夕日を最初のカットに入れるのかって言うと、これでやっぱドラマに厚みが出るんですね。っていうのは、これ実際の「激闘は憎しみ深く」っていう戦闘がある日の前の日の夕方から始まって、その日の夜を描写して、いよいよ夜が明けて朝になって、ハモンたちの復讐が始まるという構成を取ってるので、ワンカットこういう情景描写を入れることで、すごいドラマが深くなる。
で、これはですね、漫画の手法なんですね。シーン変わったら捨てカットみたいに太陽描いたりすると。これ何のためにやるのかって言うと、読んでる人がふっとそこで時間経過を感じたり、もしくは新しい1日が始まったっていうのを準備させるための状況描写なんですね。この漫画的な手法っていうのを、昔虫プロで働いて手塚さんにすごい傾倒していた富野由悠季はですね、ごく自然に入れることによって、本来あるべきであった手塚アニメですね。
手塚さん自身は実はコンテ描く時にこういうのがすごい下手なんですね。昔手塚さんがですね、「西遊記」やるので監督やってくれという風に東映動画に言われて、もう大喜びで行ったんですけども、手塚さんがもう本当に連載中で時間ないんですけど、その時間を割いてコンテ描いて、東映動画に見せると、東映動画のアニメーターたちが「これではアニメ作れない」って言ってボツを出したっていう話があるんですね。それぐらい、自分自身は映画的手法っていうのを漫画の中に落とし込んだ人なのに、いざ漫画家としてあんなに好きだったアニメを作ろうとしても、全然そういう映像的なコンテが切れないと。その中で富野由悠季はもうごくごく簡単に手塚漫画っぽいカットをポンポンと入れるんですね。ここら辺もなんかね、皮肉なもんだなという風に思うんですけども。
夕日ギラギラ、これ揺れてます。これ砂嵐のためなんですけども、もうこの時ですね、富野由悠季の頭の中にはですね、本当だったらこういう映像なんだけど、これをアニメで表現するには、再現するにはこの手法でっていうのがあります。実写的と言うんでしょうかね。本当だったらここで猛烈な砂嵐のおかげで、夕日がぐにゃぐにゃ動いてると。で、これをですね、波ガラスを手前に1枚置いて、その波を右から左へ動かすことによって、なんとなく砂嵐らしい感とか、太陽がぐにゃぐにゃ揺れてる感じっていうのを出しています。
で、このギラギラしてる太陽っていうのも、全く同じ仕上げ処理をした太陽の絵。これセルなんですけども、周りのこの縁取りみたいな部分がブラシなんですね。エアブラシで描いてるんですけど、これで全く同じく描いたブラシを2枚用意して、それを交互に見せるんですね。それを交互に見せることによって、この太陽がなんかギラギラしてるように見えるっていう手法をやってます。つまり現実のこういう風景をアニメで表現したらこういう風になるっていうのを、ちゃんと落とし込んで描いてるわけですね。
で、補給してる物資を見たらですね、もう本当になんか物悲しくなると。これ物悲しくなるのも、1番最初のこういうセリフのない絵って、絶対に音楽載せたくなるんですね。ところがですね、今回の「激闘は憎しみ深く」ではですね、ここに一切音楽入れないんですよ。ギラギラ光る夕日で、俯瞰で見える補給受けてる風景で、補給物資明らかに少ないで、語り出すハモンとタチっていうところまでですね、音楽ずっとなしでやってるんでですね、まるでドキュメントを見てるかのような、補給物資が少ないぞっていう寂しさっていうか、その苦さみたいなものが見てる人に伝わってくるんですね。
で、2人が話し出します。ハモン「使い古したザクが1台と、マゼラアタックの砲塔が4門だけとは」。その程度しか補給が来ないってことに呆れてます。タチが「明らかにマ・クベ大佐は協力的ではありませんでした」。ハモンが「当てにしてませんよ、タチ中尉。何としてでもラルの敵を討ちたいので」という風に言いますと、タチが「我々と同じ思いです、ハモン様」。
なんでこんなセリフあるのかと。ここね、状況説明なんですよね。これいわばロケシーンなんですよ。次に室内シーンが出てくるので、ロケのシーンで割と大状況、夕焼けです、補給受けてます、物資です。で、その物資に対して愚痴ってます。誰のせいかって言うと、マ・クベが補給手伝ってくれないからだ、協力的でないからだ。それでも部下のタチ中尉はやる気があるんだっていうところまでをですね、状況説明を見せてるわけですね。で、次に室内、セットのシーンに切り替わります。
ポンと切り替わるとですね、このドアの奥、広い部屋がね、実はこちら側に見えてるんですよ。カメラがパンするんですけども、こちら側の方にはソファーとか本棚とか、いわゆるくつろげるリビングみたいなスペースがあって、上の方に曲線で天井があります。で、ここのドアが開くと、バスタオルに身を包んだハモンが出てくると。これ何かって言うと、さっきのカーゴですね、いわゆる巨大な倉庫みたいな、引っ張ってるって言ったんですけど、これの1番てっぺんの部分なんですね。だからこんな風に天井が曲線になっていると。
で、そこにバスルームが付いてると。バスルームが個室についてるということは、いわゆるこれはもう指揮官用の部屋です。つまりランバ・ラルとハモンが2人でずっと暮らしていた場所っていうのが、もうここになります。2人の思い出の場所があって、そこでお風呂使ってて、バスルーム使ってて出てくるというシーンです。
で、このままですね、ハモンが体を拭きながらですね、ゴーって音がすると。ふと外を見ると、外の窓にですね、マゼラトップっていう、これマゼラアタックっていう戦車の上の部分だけをトップって言うんですけども、戦車の上の部分、砲塔の部分がですね、ロケット噴射で吹き上がって、まるでアポロの月着陸船の上半分みたいな感じですね。あんな感じで上に上がってちょっとだけ飛べるんですよね。その少しだけ飛べる間に敵を攻撃するという、なんか不思議な兵器なんですけども、それをですね、ウインチで引き上げてるのが窓の外に見えます。それを髪の毛を拭きながらハモンが無言で見ているですね。
だからもうセリフがないから、こっちが考えるしかないんですよ。この人がシャワーを浴びてくるのはどういう意味かとかですね。外へ出てきて、ウインチの音がするから見ると、窓の外にマゼラトップを引き上げてる映像が見えると。そこにノックの音がします。「誰」って聞くと、「タチ中尉であります。偵察に出た者が帰ってきました」っていう、ドアの外から報告がある。ハモンが「入れ」って言うと「失礼します」。で、タチと部下が入室してきます。
カットが切り替わって真上からのショットになって、そう、これフリップないんだ。地図を見るハモンとタチと部下、この3人です。「木馬は山を背中にしております」という風に報告する。「だが、それに付け入る隙があるな」。兵が「はっ」って答えると、ハモンが「木馬の損害は」と。今木馬どういう状態?木馬というのはホワイトベースですね。どういう状態かと言うと、「自力で必死で修理をしておりますが、人数が極端に少ないようです」って答えます。「急ぎましょう。準備を」と言うと、タチが「はっ、ハモン様」という風に答えると。
これは今日これからの作戦の説明なんですけども、なんで山を背にしているっていうのは、この状況で付け入る隙があるのかって言うと、本当はホワイトベースは今修理中で着陸してるわけですね。で、山を背中にしていると。だから実は前だけ警戒してればいいんですよ。有利と言えば有利なんですね。後ろを警戒しなくていいから、山だから有利なんですよ。
ところがそれは逆にですね、不利にもなる、付け入る隙っての。なんでかって言うとですね、これ襲われたら前へ逃げるしかないんですね。エンジンの出力が上がらなくて着陸していて、そこを襲われたらですね、垂直に上に上がったり、飛び上がって後ろに下がったりっていう行動ができないと。おそらくエンジン出力が徐々にしか上がらないので、前へ逃げるしかない。いわゆる逃げ場が一方に塞がれてるわけですね。追い込まれてるわけだ。そこに付け入る隙があるっていう風に、タチもハモンも見ています。なかなか上手です。で、ここまでで、ジオンのシーンが終わりですね。で、次はシーン3です。
これ、長いセルをですね、上から下へバーっとパンダウンするんですね。1番最初、上のこの部分だけが映って、カメラアングルがガーっと下がっていくですね。これ、なんでこんなパンダウンするのかって言うと、まず夜空を見せたいからですね。さっき夕焼けを見せたと。じゃ、今度は夜空だけ見せるのかというと、そういう無駄はしないと。1番最初は情緒を見せたいので夕焼けのアップだけ別カットにしたんですけど、今回夜空映り込んで、ホワイトベースのブリッジの顎の部分を下から舐めるように映して、岩山。これが山を後ろにして盾にしてこもってるという、さっきの説明ですね。
これがパンダウンしていくと、パンダウンの目的はですね、見下ろすという意味が含まれてるんですね。つまり観客に状況を客観的に見せるという作用があると。空から映して下に降りていくと客観的に見えると。逆に足元から映して上に上げると主観的に見えるっていう。これはもう映像文法の基本みたいなものがあってですね。まず空を映して、夜空を映して、そこからパンダウンすることで、夜なんだぞ、岩山に囲まれてるぞ、ホワイトベースなんだぞっていう状況を見せた上で下まで行くと、ガンキャノンの腕の上にガンタンクが乗っていると。ここにちょっと光ってるような、これ分かりにくいんですけども、溶接作業してるんですけどね。そういう作業が見えます。
次はですね、今の逆です。今のがパンダウンっていう、僕が言ったのが、上から下へ状況を教えるためだとすると、次のカットは逆でですね、下からちょっと斜めに上がりながら上に上がっていきます。つまりガンタンクの位置からカメラが始まって、そこからガンタンクの足の上にガンキャノンが乗ってんだ、へえ。で、そのガンキャノンの伸ばした腕の先にカイ・シデンがいて、ホワイトベースの溶接をしてるんだっていうのが分かるようにパンアップになってます。
で、なんで2つのカットでパンダウンとパンアップ入れたのかって言うと、さっき説明した通り、最初のシーンのパンダウンっていうのは状況説明、いわゆる客観的なシーンです。次のシーンのパンアップっていうのは、そこから主観的に見える。つまりここにまるで視聴者がいて見てるような気持ちになるために、主観的になるために、こういう風に入れるんですね。だからその次はですね、カイ・シデンのセリフに入ります。カイ・シデンがですね、「かなりひでえな。この調子であっちこっちやられ続けたらもたないぜ」っていう風にセリフ言います。このセリフ言えるのも、このパンアップがあるからですね、構図が。
で、カットが切り替わったらですね、次は今の下にいるガンタンクのコクピットのハヤトが喋ります。「武器も底ついてきたし、部品も乏しいし、どっかで補給を考えませんと」と言うと、ブライトがですね、無線で、無線だけですね、「ぼやくな。前線では何が起こるか分からんのだ。知恵と工夫で切り抜けてくれ」っていう風に言います。で、「知恵と工夫ですか?それよりアムロは」って言うと、ブライトが「それを言うな」という風に押します。
ここのカットはずっと、コクピットの中に閉じ込められてる、座ってるハヤトの見た目だけですね。ブライトの声っていうのはいわゆるオフゼリフ。無線機とかマイクを通してのセリフ、その場にいない人間のセリフをオフゼリフって言うんですけど、オフゼリフだけで聞こえてきます。で、この会話でですね、さっきの見えているカイの主観から、もう1回ハヤトの主観についていますですね。苦しい状況の中で、ハヤトはですね、この状況全体よりもアムロはどうするのかっていう、その処遇の方が気になります。多分先週と同じようにですね、ハヤトにしてみればアムロはもう首にして欲しいんでしょ。ブライトから言質というのかな、ちゃんとした約束が欲しいと思って、ついつい聞いてしまうわけです。
で、カット切り替わり、シーンが変わります。寝室というか病室ですね。病室で寝ているリュウです。それのお見舞いに来るフラウ・ボゥのシーンですね。「何かして欲しいことない、リュウ」っていう風に聞きます。もう、こういう風にですね、包帯巻いて汗かいてたら、もう死亡フラグ立ってるわけですね。アニメのお約束的に言えば、今回か次回ぐらいで死ぬぞっていうようなシーンなんですけども、まあ今回リュウは苦しそうな感じです。そこにお見舞いに来てくれるフラウです。
「何かして欲しいことない」かと聞かれたら、「いや、ないよ。俺は順調だってみんなには言っといてくれよ」と。順調じゃないから、俺は順調だとみんなに言っといてくれっていう風に言うわけですね。フラウが「ええ」っていう風に言います。これもね、フラウもまたね、やっぱり冷たいっていうかですね。もちろんリュウのことは心配してるんですけども、所詮アムロが良けりゃどうでもいいんですよね。なので、アムロがもし重症で「どう」って聞いた時に「俺は順調だってみんなに言っといてくれよ」って言うと、「そんなこと言っちゃダメ、あなたは寝てなきゃダメ」って絶対言うんですけど、ここで「ええ」っていう風に言っちゃう、好きな男以外は実はどうでもいい残酷さっていうの、僕ね、リアルで好きなんですけども。
で、リュウがまだ心配して、「ブライトのやつ、アムロをまた独房に入れたんだって?」フラウが「ええ」って答えると、「アムロが突っ張ってんのか」って言うと、フラウは何も答えません。「ブライトだな」っていう風に。実はこの2人の関係の問題っていうのは、もうアムロにあるんじゃなくてブライトにあるんだっていうのが、リュウには分かると。アムロはですね、前回の一件ですね、いわゆるホワイトベースにランバ・ラルが特攻してきて、そこで死んでしまったっていう風なことでも、人間的に成長してるんですね。しかし追い詰められているブライトは、アムロの成長というのを見てないし、信じられないと。
だから、アムロがまた閉じ込められてると。前回の働きで、本当言えばアムロはもう独房から出てもいいはず、許されてもいいはずなのに、まだアムロが閉じ込められてるってことを、実はフラウ・ボゥはさりげにリュウに告げに来たわけですね。でもそれを言ってないと。「ブライトさんがまだアムロを閉じ込めてるの」っていう風に言うんじゃなくて、「調子どう」とか「何かして欲しいことない」という風に言って、聞かれたから答えるという手を取ってる。ここら辺もなかなかフラウ・ボゥの賢さが出てきてます。
で、こういうですね、ホワイトベースで修理している、部品がない、人間関係がギクシャクしてるというような夜が明けてですね、翌日の朝ですね。はい。ハモンの立ち姿、ハモンの演説が始まります。これもですね、下からパンアップです。1人の人物の下からパンアップっていうのは、やっぱその人をよっぽど凛々しくかっこよく見せたい時だけにするんですね。なので今回の主役はもう完全にこのハモンだという風なことが分かります。
で、空を見てください。空は、このまだら色の中に青いのが入ってる。これね、背景の、時間もないし、そんなに技術がうまい人ばっかりじゃないのでですね。これ何なのかというと朝焼けなんですね。朝焼けの雲というのを描こうとしてると。で、今回も戦闘シーンに入るまでずっとこの朝焼けの不思議な色の雲を描いています。で、こういうですね、前の日の夜が砂嵐で、夜空に星があるところにホワイトベースの修理シーンがあって、翌日ハモンが立ってると、下からパンになる。で、上がっていって上に朝焼けの雲があるっていう、こういう部分が見えてると、機動戦士ガンダムってアニメの中、すごい楽しめるんですね。
普通のアニメね、あまりこういうことをやってくれないんですよ。気象変化とか、あとどこが見せ場とか、そういうようなことやってくれないんですけども、こういうところ見逃さないと、ガンダムって、うわ、ここも作ってんだと。もちろん昔のアニメですから絵もそんな良くないですし、予算もそんな高くないんですけど、その中でセンスすごい頑張ってるなっていうのが分かるんですね。
で、斜めパンアップでハモンを見せてですね、今回の主役です。タチ中尉がですね、こういう風に腕をパッとやるんですけど、次のカットでですね、これアクションカットって言うんですけど、この腕がこのまま繋がった動きに繋がるんですけども、喋ります。「カーゴにはマゼラトップを装備しました」。これのことですね。この黄色い、倉庫がホバークラフトで浮いてるみたいなカーゴの上には、マゼラトップ、この戦車の大砲の部分だけを配置しました。「ギャロップの予備のエンジンでかなり高速移動ができます」っていう風に話します。
で、次。これもですね、横方向のパンのシーンなんですけども、さっきアクションカットって言ったのは、すいません、もう1回ちょっと見せますね。タチ中尉、この人ですね。タチ中尉が腕をこういう風にすっとやって、「カーゴには装備しました」っていう風に言って、そのままカットが変わると、この人の腕が同じ、これタチ中尉なんですけど、同じ格好になってますね。つまり、さっきこちら方向からカメラがあったのが、次は後ろ方向から撮って、その前に整列している、決死隊って言うんですかね、ランバ・ラルの部下たちで、そこに今回の全ての武器である古いザクと、フライングボートみたいな空飛ぶボートみたいなやつが2隻いて、これがその全てであるっていうハモンの見た目を表してるんですね。
で、これまたやっぱハモンの晴れ舞台ですね。なんでここね、やっぱね映したいのかって言うと、実はハモンという人にとって今回の戦いですね、納得してないんですよ。納得してない戦いなんですね。その納得してない戦いっていうのを自分で幕を下ろすことになったから。これちょっと後で説明します。
で、タチがこのカットではですね、「ザクにはマゼラトップの砲を持たせます」と、大砲持たせます。「それとサムソン」、このフライングボードのサムソンの2機です。「兵は16名、全てランバ・ラル様の息のかかった者です」と。つまり卑怯者とか逃げる者はいないぞっていう風なことをタチが言うわけですね。空もやっぱこの朝焼けでありながら、もうすでに砂嵐が始まっています。
で、ハモンはですね、またね、本当にね、今回ね、ハモンの描き方丁寧なんですよ。最初こう見せて立ってて、タチがみんなを紹介すると。次にハモンの見た目で、ハモンの後ろ姿で全員ザーっと並んでるところを見せて、次カメラが真横から捉えて、ハモンなんですけど、ハモン最初この後ろの位置にいるんですね。この後ろの位置から1歩前出て、全員に語りかけを始めます。ハモン、1歩前出てですね、演説をします。
これがもう名演説でですね。なんかギレン・ザビの演説っていうの、ガンダムファンの人好きなんですけども、僕あんま好きじゃなくて、なんでかと言うと空虚な演説なんですね。何も言ってないに等しくて、過激な言葉とか、そういうのを使って一生懸命みんなの戦意を盛り上げようとしてるんですけども、実はあんま魂が入ってない、意味がないと。だからあれ、聞いても、雰囲気はあるんですけども、銀河万丈の名演技も相まって雰囲気あるんですけど、中身ないんですね。
で、それに比べてこのハモンの演説っていうのはですね、正義ですね。なんで我々は戦わなきゃいけないのかっていう正義と、あと面白いことに損得感情ですね。で、次に自分の気持ち、この3つをですね、ちゃんと述べるっていうですね、この3つを尽くして語るという名演説が始まります。1歩前出て、「よく準備をしてくれました」という風に語りかけます。まず感謝なんですよね。つまり整列してる人たちに「気をつけ」とか「皆の者」って言うんではなくて、「よく準備をしてくれました」っていう感謝の言葉から入ると。普通もうこれだけで十分なんですよね。
これね、本当にね、戦争物見ても、例えば『シン・ゴジラ』とか見ても、並んでる兵隊とかに対してそんなことを言う指揮官って、あまりいないんですね。でもこれを最初に出せるっていうところからですね、このハモンのすごさが分かると。で、さっき自分の納得してない戦いっていう風に言ったんですけども、何かって言うと、元々はガルマ・ザビの敵討ち部隊としてハモンたちは地球に降りてきたわけですね。でも、そのことに関して自分は納得してないですよ。もうちょっと演説の部分だけ先に進めましょう。
「ガルマ様の敵討ち部隊として地球に降り立ったものの、我々はまだ任務を終わっておりません」っていう風に語ります。これ状況説明に見えて違うんですね。これが損得感情なんですよ。つまりランバ・ラルも死んだし、もうこれ戦ってもしょうがないんじゃないか、国に帰ろうかっていう風な心が兵隊の中には必ずあるんですね。それは絶対にあるんですよ。多分タチの中にもある。「ランバ・ラル様の息のかかった者です。逃げ出す者は誰もありません」と言って、みんな勇敢な顔してるんですけど、心のどっかに「いや、もうこれ無理なんじゃないか、帰ろう」というのがあるんですけども、ハモンはですね、演説によってゆっくりとその退路を塞いでいくんですね。
つまり「ガルマ様の敵討ち部隊として地球に降り立ったものの、我々はまだ任務も終わっておりません」。これで本国に帰っても、もう我々は先がないぞと。良くて左遷だし、悪かったらひょっとしたら軍事裁判かもわかんないと。そんな状況の中で帰ってもしょうがない。それよりは前へ出て、少しでも戦果を上げないと。本来ランバ・ラルはなんでこの戦いをしたのかって言うと、ランバ・ラルもみんなも知ってる通り、ここでいわゆるザビ家のただ単に私怨、恨みの戦いにしか過ぎないのに、これを買って出たのは、ここで戦って勝ったら、ザビ家の中将のドズル・ザビにですね、抱えてもらえると。給料が何段階も上がって、身分も上がるっていうところから始まったんだと。じゃあここでもう1回やらないと、私たちはただ単に負けて、シャア・アズナブルのように軍から追われて何もないじゃないかと。損得感情をちゃんと切々と語るんですね。
クローズアップになってですね、ハモンがですね、訥々ともう語りかけます。「一見小さな作戦ではありますが、敵は連邦軍の最新鋭戦艦とモビルスーツです」という風に語ります。どういう意味かって言うと、敵討ちという私怨だけではないよと。元々これは敵討ちをしろという風に言われたんだけど、その私怨だけではないと。敵は連邦軍の最新鋭戦艦のモビルスーツだ。つまりこれに勝つことで戦争全体が有利になると、関与してるんだっていう大義、正義を語るんですね。
まず最初に「よく準備をしてくれました」という感謝を語り、このまま本国に帰っても我々は将来は何もないっていう損得を語り、その次に、この戦い実は意味がないように見えて、連邦軍の最新鋭戦艦とモビルスーツだってことで大義、正義を語ってると。もう本当にね、いい演説なんですよね。で、ハモンはさらに続けます。「ジオンの国民は我々の戦果に期待しております」という風に言います。手ぶらで帰っても不幸な未来しかないという損得感情を、プラスに語ってるんですね。これ、さっきまでの、このまま帰ってもジオンの国民は納得してくれないっていうのをですね、「ジオンの国民は我々の戦果に期待しております」ということでですね、この戦いに勝ちさえすれば私たちには明るい未来が待っていると、やりがいを与えてると。
ハモンがもしキシリアの部下だったらですね、絶対に一軍の将になったであろうという、こういう器のことを将器って言うんですけど、この人には将器があるという、将の器がある人なんですね。すごいんですよ。で、そんなことを兵に語りながら、ハモンはですね、回想シーンですね。ずっと兵に語りながら同時に考え始めます。思い出にオーバーラップしていくシーンですね。「ランバ・ラルは私にはもったいないくらい実直な男性だった」。ちょっと声のトーンが変わって、これはハモンの内面の声に切り替わります。「あんなに心を寄せてくれた人のために、よしんば砂漠で散るのも後悔はない」っていう風に、自分自身で考えながら語ります。
で、いろんな回想シーンが映るんですけども、これ何かって言うと、やっぱり砂漠で見かけたアムロみたいな男の子にちょっと心を奪われかけた私に比べて、ランバ・ラルっていうのはなんて純粋で一途だったんだろうっていう風に思い出してるんですね。だから、よしんば砂漠で散るのも後悔はないっていうのは、実はハモンは生きて帰ろうとはかけらも思ってないですよ。生きて帰ろうとかけらも思ってないんですけども、それを部下の前で語るほどバカではないんですね。だからランバ・ラルとは違うんですよ。ランバ・ラルは現場監督としての器があるんですね。でもハモンは将軍としての器があるんですよ。
ランバ・ラルだったら絶対に「俺と一緒に死んでくれ」って言うんですよね。そうやって部下たちを盛り上げて、本当に最前列で戦うんですけど、ハモンはもうこの戦いに勝ちなんてありえない、自分は死に場所を探してるだけだってのを分かってると。でもそれを部下の前で口走るほどバカではないので、みんなには損得感情を言ったり、大義を話したり、明るい未来を話したりっていう風にするんですけど、自分自身としては、よしんば砂漠で散るのも後悔はないっていうですね、もう生きて帰ろうと思ってないっていう演説やってるんですね。
で、オーバーラップが終わって、ハモンが再びみんなに声をかけます。「この作戦に不服がある者は参加しなくとも、ランバ・ラルは怒りはしません。私もです」っていう風に言います。これね、本当にいいセリフですね。この作戦に不服がある者は参加しなくてもランバ・ラルは怒りはしませんと。つまりランバ・ラルのために戦うんだっていう大義を語るんですけども、でもそこに参加しなくてもランバ・ラルは怒らないよっていう風に言って、「私もです」っていう風に言ってる。この2段階に分けることで、大義と、今回の作戦の責任者は誰なのかっていうのを、ちゃんと段階で語ってるんですね。
で、なんで不服がある者は参加しなくてもいいのかって言うと、所詮はやっぱりザビ家の私怨、敵討ちの作戦にしか過ぎないっていうのを認めてるんですね。元々はですね、ガンダムの17話、4話前の「アムロ脱走」という回の中でですね、ランバ・ラルとハモンの会話がありました。その会話の中でですね、「この戦いは所詮ザビ家の私怨では、恨みでは」っていう風に、ハモンがランバ・ラルに今回の戦いの批判をするんですね。でもその批判をしたハモンがですね、部下に同じことをやらせようとしてるんですね。
ただ単に自分の恨みつらみ、その時はガルマ・ザビが殺された恨みの敵討ち部隊を出すっていう、なんかやってはいけないことなんですね。自分の個人の私怨で軍を動かすようなことやってるんですけども、ハモンはその自分が批判したのと全く同じことを、今部下に強いようとしてるんですよね。だからせめて部下に強制したくはないので、「参加しなくともランバ・ラルは怒りはしません。私もです」っていう風に言ってると。この回の演説がなかなか感動的なのは、このハモンの心の動きっていうのが、すごい演説に現れてるからなんですね。
そうするとタチ中尉がですね、「その心配はありません、ハモン様。全員覚悟であります」。タチ中尉ですね、いい人なんだけど、全くこの辺のハモンの気持ちは分からないですね。「全員覚悟があります」って言った。「ありがとう」って言って、ハモンはですね、全員と握手しますですね。「トルガン、頼みます」「ハモンさんも」「はい」「ハモンさんも頑張ってください」「はい」「必ず敵を」というですね、もう本当に全員に一声ずつかけて握手するシーンですね。
もう30分経ってしまいましたのでですね、機動戦士ガンダム「激闘は憎しみ深く」21話、Aパートのまだ半分ぐらいですけれどもですね、今回ここまでにしたいと思います。
岡田斗司夫の機動戦士ガンダム講座。第21話「激闘は憎しみ深く」ですね。Aパートの半分ぐらいまでですね、前回話しました。今回ですね、まだアムロ・レイは出ておりません。ハモンが出てきてるだけですね。ハモンがかっこいい演説をしたところでですね、前回終わりました。その続きです。
シーン切り替わって、シーン6です。ホワイトベースの朝ですね。ブリッジにですね、こんな風にブライトとミライがですね、通信機の蓋を開けて、パネルを開けて修理してるところでですね、ドアが開いてリュウが入ってくるところから始まりますですね。通信機の修理をしてるんですけども、立ってるだけでも精一杯でフラフラのリュウがですね、入ってきます。いわゆる死亡フラグの演技ってやつですね。
で、「ブライト」ってリュウが声をかけると、「リュウ、動いたらまた傷口が開くぞ」っていう風にブライトは声をかけます。リュウは「リハビリテーションさ。少しは体を動かさないと治りが」って言いながら、もううーって言いながらガタっと倒れてしまうんですね。「大丈夫か」って言うと、「アムロのことだがな」っていう風に、倒れたのにそれでも話そうとします。もうこれですね、もう本当に死にかけてんですよ。これ見て分かる通り、本当に顔色が、元々メキシコ系だから顔色よくわかんないんですけども、汗だらだらでですね。
「アムロのことだがな」っていう風にリュウが言うとですね、それでもまだブライトはムキになってます。「出すわけにはいかんよ」と。独房から出さないと言ってんですね。「俺たちが期待する態度を見せれば、あいつはまだまだうぬぼれる」と。俺たちがアムロに対して期待する態度を見せれば、あいつまたうぬぼれるっていう風に言うんですけども、「そうでもないぜ。ねえ、ミライさん」っていう風に言うと、ミライが「え、ええ」って答えると、ブライトが「野生の虎でも檻に入れておけば、自分の立場が分かってくる」っていう風に一生懸命説得しようとするんですけども、「アムロが自分で分かるのを待つわけか。言い逃れに聞こえるが」っていう風にブライトを批判します。そうすると、ブライトが「俺の言い逃れ?なぜだ」っていう風に答えます。
この時のブライトのですね、「俺の言い逃れ?なぜだ」って言った時のですね、眉の演技がやっぱ僕好きなんですね、これ。本当に「俺の言い逃れ?なぜだ」っていう2秒半か3秒ぐらいのシーンで3つ見せてるんですけども、本当に微かな演技だから分かりにくいんですね。わずかにですね、この人も目が小さいからね、分かりにくいんですけども、右目の眉だけ吊り上がってますよね。右目の眉だけ吊り上がってですね、1カットかけて、この右の眉だけが、今僕が指でやってるように、くっと吊り上げることによって、本音を突かれて動揺しているっていうのが表せるんですね。だから「俺の言い逃れ?なぜだ」っていう風に言うんですけども、図星を突かれてるから、なぜ分かったっていう意味になっちゃうわけなんですよ。
で、「人間には言葉があるんだ。俺の元気なうちに」って言うと、「リュウ、何を言うの」とミライがびっくりします。「ブライトはアムロとゆっくり話し合ったことないんだろう。それじゃ虎はおとなしくはならん。あとは……」という風に言うと、「サマロかセイラを呼び出して、リュウをベッドへ」っていう風なことで、リュウはですね、もう汗だらだらでですね、死にかけながら、もう1回ブリッジから退場します。見所はやっぱ僕はこのブライトの本当に小さな眉の演技っていうの、これね、テレビアニメで見せてくれるとはなかなかのもんなんですけども。
で、シーン変わります。荒野ですね。ちょっと分かりにくいから、一応1枚フリップにしてみました。これがカーゴって言われるですね、巨大な倉庫をですね、ホバー
ホバークラフトをつけて浮いて走ってるやつです。で、両側にエンジンが付いてて、これで進みます。ジェットエンジンで進みます。で、上にこの緑のやつがマゼラトップっていう戦車の上の砲塔部分だけを3つつけた状態。これがですね、ハモンが乗ってる、今回の主力兵器ですね。で、これで進撃してきます。
で、この周りにはザクが走ってて、で、さっきですね、サムソンと言ってたフライングボードが2機浮いて一緒に伴走してます。
で、これを見せた後で、この位置にハモンが乗ってると分かるようにちゃんとカット切り替えます。このカーゴの上に乗ってるマゼラトップを見せて、次にカット切り替えてハモンを見せるとですね。で、アムロを回想してですね、ついハモンが微笑んでしまうんですね。これ僕ね、好きなシーンなんですけども、「坊やが邪魔をするようなことがありましたら、あなた、守ってくださいましね」っていう風にランバ・ラルに問いかけるんですよ。
絵の順番としては、カーゴの上にいるトップを見せる。そのコックピットの中にいるハモンを見せると、ハモンがうっすら笑うと。で、ハモンがうっすら笑ってるところを見せてから、この回想シーンのアムロを入れると。で、このアムロの絵の上にハモンのセリフが被るわけですね。「あの坊やが邪魔をするようなことがありましたら、あなた、守ってください」。つまりこのうっすら笑うっていうのは、アムロを思い出したことを笑ってるんですね。で、それに対してランバ・ラルに話しかけるんです。これ後でもうちょっと説明します。
で、その頃カットまた変わって、今回もう本当カットというかシーンの切り替わりが多いです。シーン8ですね。エンジンの防護カバー。猛烈な砂嵐の中で、これビニールのテントが全体に被せられてエンジンの修理をしています。名もなき作業員がですね、これ実はカイさんの声なんですけども、「よし、あとは直圧の調整だけだ」っていう風に言います。
エンジンカバー開けないともちろんエンジンの修理できないんですけど、カバーを開けると砂嵐の砂が入ってきちゃって精密機械が狂ってしまうと。なので、このビニールカバーを全体にかけて修理するんですけども、これやっぱね、僕他のアニメでこういうシーン見たことないんですね。で、イメージ何なのかなと思ったら、ブラックジャックなんですよ。ブラックジャックの手術するシーンで、ここでは手術ができないからビニールテントを張るって言って、ビニールテント張って手術するシーンがあるんですけども、やっぱこういうところでもですね、お師匠様の漫画、もう当時、機動戦士ガンダムやった頃って、ちょうど手塚様がですね、何年か前にブラックジャックで復活して、また漫画界のトップの方へこう行こうとしてた頃なんですね。ちゃんとお師匠様の働き見てるんですね。
だからこれ、アイデアとしてはブラックジャックのシーンのアレンジなんですけども、すごく面白くてオリジナリティがあると。こういうね、本当にSF映像としてのアイディアっていうのが、僕、ガンダムにはもう本当にごく普通にゴロゴロ落ちてて大好きなんですけどもですね。
でシーン9です。やっと登場です。やっと登場。アムロが独房で閉じ込められて寝てて、悪夢を見て、夢を見てうなされてるところなんですけども、アムロやっと登場したと思ったら寝てるだけなんですね。で、夢を見てます。で、夢の中でですね、寝ているアムロですね、夢の中で憧れのマチルダさんを見てるんです。で、マチルダさんが何か言ってるんですよ。第14話「時間よ、止まれ」の回想ですね。
で、ブライトがですね、この時アムロに叱りつけるんですよ。「お前はパイロットだ。寝るのも仕事のうちなんだぞ」っていう風に言います。で、それに対してマチルダさんがアップになって口だけ動いてるんですね。でも何を言ってるのか分からない、思い出せないアムロも。実際にマチルダさんが言ってるのはですね、「ブライトさんの言う通りよ、寝るのもパイロットの仕事のうちですよ」っていう風にアムロに諭してるんですよ。
で、なんでこのシーンを入れたのか。なんでマチルダはアムロの回想の中で口だけで、何を言ってんのか聞こえないのか。アムロは多分夢の中でマチルダが何を言ったのか一生懸命思い出そうとしてるシーンなんですね。で、実際何言ってんのかと言うと、「ブライトさんの言う通りよ、寝るのも仕事ですよ」って言ってるんですけど、これ何かって言うと、アムロが1人でですね、自分のスランプっていうのを解決した印なんですね。
「さっさと寝ろ。寝るのも仕事だ」って理不尽なんですよ。それを上司に言われるのはもう本当に理不尽なんだけども、今のアムロにはそれを受ける心の準備ができたっていうことなんですね。だからマチルダさんの声っていうのは聞こえる必要がないと。ブライトの声だけを聞いてですね、寝るのが仕事だっていう。今回の、お前は脱走したから独房だ、1回出してもらってまだ反省が見えないから独房だという、こういう理不尽に関してですね、そういうもんなんだっていう風に1度受け入れる心の準備ができてるアムロの成長が見えるシーンとして、これを入れてます。
で、ノックがトントンとして、アムロがハッとして外を見ると誰もいないんですね。当たり前です。ノックしたのはリュウです。そのままズルズルっとまたドアの外に倒れてしまってるからですね。で、「誰かいるんですか?」「起きてたか」っていう死にかけの声が聞こえて、「リュウさん」っていう風に言うんです。
で、これですね、アムロがやっと見つけたらですね、これももう分かる通り、上から下へのパン、パンダウンですね。つまり、状況説明するために、覚えときましょうね。状況説明する時は上から下ですね。で、同時に下を心配そうに見てるアムロの顔を見せてからカメラが下に行くとリュウがいて、で、リュウのセリフが始まるっていうですね。このセリフがですね、「リュウさん」って言ってリュウが語り始めるところをパンダウンで繋いでるですね。もう本当に無駄のない映像です。
えっと、ですね、こうアムロの内面から、アムロを心配するリュウの発言というのに、見ている視聴者の心を動かすための、割とね、素早い目のすっというパンダウンでした。「起こしてすまんな」という風に死にかけて言ってます。「体大丈夫なんですか?」「俺のことはいい。お前、ブライトがまた独房に入れたのを腹を立ててないのか」っていう風に聞くと、「僕がブライトさんの処置分かります。怒ってなんかいません」と。さっきの夢のシーンで完全にアムロ吹っ切れてるですね。
で、この部分がそのブライトの理不尽を受け止めてるというですね。この、こうする関係、受けての関係になってるんですけども、俺は悪くはないんだけど、でも独房に入れられるのはそれは当たり前だろう、だから怒ってませんっていう風に言えるようになってる。
で、リュウが「ならいいんだ。ブライトがな、お前は野生の虎だっておっかながってるんだ。おかしいだろう」っていう風に言います。「野生の虎ですか」と。アムロは自分がどちらかというと大人しめの性格で、だからキレて家出したんだって分かってるから、「野生の虎ですか」っていう風に呆れて聞き返すと、「アムロ、期待しとるぞ」とリュウが言って、ふーって立とうとすると「大丈夫ですか」って聞くと、「何、大丈夫」って言って、リュウはこの場を去ってしまいます。
で、このリュウが最後に去っていくシーンがかっこいいんですよ。かっこいいというか、やっぱすごいなって思うんですよね。これなんですよ。「大丈夫ですか」と声をかけて、「何、大丈夫」って言って、こうリュウがゆっくり歩いてってしまうんですね。これ、アムロとリュウの最後の会話なんです。これが生涯の別れのシーンなんですけども、それを強調するためにわざわざ顔を見せないですね。
最後に、なんだろうな、リュウはどんな顔して自分を慰めに来たのか、励ましに来てくれたのかっていうのをアムロには全く見せないままにリュウが行ってしまうからこそ、この回の最後でアムロは慟哭するわけですね。うおって泣くのは、あん時リュウさんはどんな気持ちだったんだろう、どんな風に痛かったかもわかんないんだけど、僕を励ましてくれたんだろうっていうのは顔を見ていれば分かるんだけど、その顔さえ見れなかったと。ここでまさかお別れになると思ってなかったと。その後悔が吹き上げてくるからアムロうわっと泣くんですけど、そのために前半Aパートにですね、この不思議なシーンですね、顔を見せないまま去っていくってシーンを入れたところが、いや富野氏やるなっていう風に思いますね。アムロが後でそのリュウのことを思い出した時、何倍も切ないように映像が作られています。
で、その次ですね、マゼラトップの中のまたハモン真正面のシーンです。で、何かって言うとですね、タチ中尉のですね、作戦説明を思い出してるんですね。「第一波の攻撃を敵の最も弱いと思われるところにかけます」。この部分ですね、矢印で指してるところ。「他には一切目を向けず、ただ1点を抜くと。我々の生還は不確実でありますが、間違いなく木馬を撃破することができます」。
「我々の生還は不確実でありますが」、これ軍人の建前っぽい用語言ってますが、多分我々はほとんど生き残ることはできませんが、間違いなくホワイトベースを落とすことができるっていうタチ中尉の言葉を思い出してるんですね。
で、このハモンの上と下っていうのがです。この説明を受けてるのを思い出してる時のハモンの顔なんですけども、ほんの少しですね、目が開いてて口の歯が見えてるのが分かりますかね?この上のシーンで閉じてる口から歯が見えてると。歯が見えてるってことはもちろん笑っているという表現なんですけどもですね。笑ってるわけですね。タチの言葉を思い浮かべて、ほんの少しだけ眉が下がってですね、で、歯を見せてると。ハモン自身もこれ意識してないんですね。意識してない微笑みってやつです。
で、前回説明した通り、これね、ガルマに対するイセリナ、「恋のあとさき」のイセリナの敵討ちと同じ構造の話のはずなんですよ。好きな男が殺された。だから憎い敵を討ちに行くって話のはずなんですね。だから「恋のあとさき」ではですね、イセリナは一生懸命、ジオンの、まあなんだろう、多分自分に憧れていた男として、その自分と一緒に死んでくれる男に対してですね、一切笑顔を見せないんですね。一切笑顔を見せずで、最後の最後、アムロを追い詰め、ホワイトベースを追い詰めるまでずっと気負った顔をして、一瞬の笑顔を見せないままに死んでいくんですよね。
だから本当はですね、ここで決意の表情をイセリナは見せたままなんですけども、本来これがハモンがランバ・ラルのための敵討ちだったらですね、同じになるはずなんですね。だってイセリナで敵討ちする女の顔はすでに富野氏が描いてるんですよ。富野氏はこの回で描きたいのは女の顔なんですね。そこがポイントなんですよ。で、「恋のあとさき」で描いた女の顔と全く違う女の顔っていうのをハモンにさせてるんですね。
で、なんでハモンはですね、その自分でも気づかずにいつの間にか微笑んじゃってるのか。やがて訪れる自分の死ですね。死ぬことが待ち遠しくて仕方がないからですね。ハモンが求めてるのはですね、実は敵討ちではなくて心中なんですよ。自分自身と、自分を愛してくれたランバ・ラルと、あと可愛い子、もうアムロとのですね、無理心中。これがですね、ハモンの願いなんですね。で、だからこのシーンのハモンっていうのは微笑むんですね。いやらしくてですね、いやらしくっていうのは言葉の本来の意味のエロスですね。誰も見てないところで微笑んでしまうと。
で、あんまりね、この話をすると問題あるんですけども、かつて富野喜幸さんは『逆襲のシャア』というアニメの中でですね、作画打ち合わせの中でその作画監督の人とかキャラクターの人を呼び出してですね、「こんなクエス・パラヤ、濡れてない」っていう風に言ったことがあるんですけども、どういう風な意味かって言うと、お前らは女の心理っていうの分かって描いてるのか、このクエス・パラヤっていうのはどんな気持ちになってんのかと。で、好きな男の前でこんなことを言ってる時って、この時はこの女は濡れてるはずだと、そういう風なことがこのシーンから見えてこない。
かなり無茶ぶりだと思うんですね。僕もそれ聞いた時、『逆襲のシャア』の作画で愚痴として聞いた時は、ガイナックスのスタッフとしても「無理だよ。富野さんやっぱエロいよな」っていう風に大笑いしたんですけども、これ見てやっぱ気が変わったんですね。富野さんすごいなと。これ同じ表現を使うこと許されるならばですね、このシーンのハモンは明らかに濡れてる女を描こうとしてるんですね。
なんでかって言うと、やっと自分の死に場所を見つけたと。自分自身として自分の生き方っていうのがそんなにいいと思ってなかったと。だからその自分を一途に思ってくれるランバ・ラルがいて、そして自分自身は次のいい男としてアムロっていうのを見つけていると。で、ランバ・ラルが死んでしまった。
じゃあ敵討ちするためのイセリナみたいに生きれるのかっていうと、もう私はそんな純粋な女じゃないと。だからと言ってランバ・ラルのことは忘れて、あに帰ろうかとか、もしくはあの坊やを、なんだろうな、なんだろうでもない。
そうじゃなくて、女神でもなく哀れでもなくて、私は1人の女なんだっていうのを描いてるからこそ、ここで無理心中できると。あの男の子と無理心中できて、そしてランバ・ラルの、なんだろうな、一途な思いっていうのをちゃんと私は受け止めることができるっていう、すごい、それのために全ての部下を見殺しにしようとしてるっていうか、死地に追いやっている女のエゴが出ていると。だから濡れてるシーンっていうのをこう描いちゃうわけです。
だ、そんなことをテレビアニメの毎週で入れられる男だからこそ、劇場版のスタッフの中で、こんなクエス・パラヤ描くなっていう怒りがやっと分かったんですよ。僕もこれ見ててね。で、うっすら笑ってるですね。今回最高にエロい。[笑い]
ま、次にエロいのはですね、おそらくラストシーンの「本当好きだったよ、坊や」って言いながらガンダムと一緒に死のうとしてるハモンっていうシーンなんですけど、まあ多分このシーンが1番エロいんですね。
で、シーン変わります。ホワイトベースが隠れてる岩山の後ろからザクが現れて、今攻撃をしようとしてると。これあれですね、1点だけを狙いますと言ってたですね。ここですね。ホワイトベースの弱点1点だけというのは右のこの真ん中、腹の部分なんですけども、ちゃんとそれ守ってますね。その部分を攻撃しようとしてるザクですね。で、ここからタチ中尉が乗ってるザクが現れます。攻撃部隊でザクは1機だけですから、多分最初に狙われるってのは分かってるんでしょうね、タチも。
で、「絶好だ、木馬」っていう風に言って撃ち合いを始めますですね。で、カイはですね、驚いて、「うわ、敵か、しまった、後ろからか」という風に。これ、見て分かる通り、ガンタンクはですね、警戒のために岩山の上に登って、ガンキャノンはホワイトベースの羽の上に乗ってるんですね。で、まさか後ろから来ると思わない。隙があるっていうのはそこですね。絶対に開けてる前から来ると思ってて前だけを見てたんですけども、後ろから撃たれてですね、「しまった、後ろからか」とガンキャノンはようやく後ろの方へ向かって走り出します。
で、ブリッジでも敵襲に気がついて、レーダー手がですね、「敵襲だ」って言うと、ブライトが慌てて「どっからだ、敵は」っていう風に焦って、パニックになりますですね。しかし現場では続いて早断で戦闘開始をします。
で、カイが有利な足場を求めてですね、この山の上へこうジャンプしてくるんですね。で、それとハモンのですね、さっき言ったサムソンという攻撃ボートがですね、襲ってくると。もうザクだけじゃないってのが分かると、「他にもいるのかよ」という風なことで、カイのガンキャノンは絶体絶命のピンチになります。
で、一方ハヤトのガンタンクはこの岩山の上に行くんですけども、カイと同様に有利な攻撃ポイントを求めてガーっと岩山登るんですけどもですね、途中でキャタピラが止まってしまうですね。今回ちょっともうこのシーンのためだけにね、9000円ぐらいするですね、またおもちゃ買わなきゃいけなかったんですけど、ガンダム講座、こういうね、支払いが多いんですよ[笑い]。
これガンタンクです。で、このガンタンクが、こういうアングルでですね、山をこうガーっと登ってくんですけど、キャタピラが止まってしまうんですね。で、「だめだ、シャフトが折れてるらしい。エンジンはかかってるんだけど」、「ハヤト、どうする」って言うと、「どうするたって、ここからじゃ十分な援護ができない」という風にハヤトは言います。この時のハヤトのセリフがこういうシーンなんですね。
で、なんでこのおもちゃは買ったのかというと、これ説明するためなんですけども、これね、ガンダムのシリーズとして割と珍しいというかですね。ガンダムシリーズのロボット、モビルスーツはですね、腹の中にコックピット、操縦部分があるんですね。当たり前です。人間の腹っていうのは人間が走ったり動いたりする時に1番動かない部分だし、あと守りも硬いと。だからロボットの腹に操縦系統があると。意外なことなんですけども、これをちゃんとアニメでやったのはですね、ガンダムがほとんど初めてなんです。
もちろん他のアニメでもたまにそういうのあるんですけども、マジンガーZ以来、頭にコックピットが当たり前なんですよ。でも頭にコックピットっていうのは動くから危険だし、狙われるし、何もいいことないんですね。周りが見たければモニターで見ればいいんですよ。それよりはできるだけ装甲が厚い中にパイロット入れないと。他の部分っていうのは腕にしろ足にしろ当たっても動けるんですけども、人間が乗ってる部分に当たったらその瞬間そのロボットはもうダメになりますからですね。
ところがガンタンクというモビルスーツだけは、これ純粋なモビルスーツじゃないんですね。長距離援護用の兵器なんですよ。なんせ下が戦車ですからですね。で、こんな長い大砲がついたのは何かって言うと、本当はすごく遠くから敵の基地とか敵の戦艦を狙い撃ちするためなんですね。ガンダムとかガンキャノンのように近づいて接近戦をするためのもんではなくて、あくまで遠くから攻撃するものなんですよ。
だから「アムロ脱走」の時にですね、怒られるきっかけになった、敵の基地を叩くためにガンダムで出ろという風にブライトに言われた時に、アムロは命令を聞かずにですね、ガンタンクで出てしまうと。あれは確かに戦略というか、戦術として正しいんですね。戦術として正しくて、基地を叩けみたいな命令は、ブライトは何も考えずにガンダムで行けガンダムで行けガンダムで行けって言うんですけど、そうじゃなくてガンタンクで行って離れたところからバンバンバンバン撃つのが1番いいに決まってるんですよ。
ところが意外なことに、あそこでランバ・ラルが乗るグフが、つまり格闘専用のモビルスーツが出てきてしまったのでですね、タンクは一気に不利になってしまった。これはもう本当に不幸な読み違いなんですけれども。
そういうわけでですね、ガンタンクはですね、元々は射撃をするためのモビルスーツなので、この1番上の頭のところにコクピットがあるんですね。これが他のモビルスーツと違うんですね。で、自動車みたいに見通しがいい、見晴らしがいいガラス張りのコクピットなんですよ。で、装甲よりも、さっきも言ったように視認性、周りがよく見えるのを優先してると。
そのためにですね、このガンタンクを映す時、このハヤト・コバヤシを映す時っていうのはですね、外の状況を見せながら抜けのいい絵になると。つまり青空を見せて、ガラスの中に入っているハヤトを見せて、で、「どうするって、ここからじゃ十分な援護ができない」って演技を見せることができるんですね。ガンダムもガンキャノンもダメだけど、ガンタンクのみがこのガラス張りのコックピットで外を見渡して周りを見せる演技ができると。なので、このシーンっていうのを作るの忘れないんですね。
それができるのも、ガンタンクがこういう特殊なモビルスーツだったからであり、で、「アムロ脱走」の回のアムロの判断はそんな間違ってないよっていうのをですね、説明するために9000円のおもちゃを買ってみました。[笑い] 今回で君の出番は多分終わりだよ。
はい。で、駆動シャフトがですね、折れて動かなくなったガンタンクのこの正面にですね、タチ中尉のザクが現れます。で、うわーっとハヤトが叫んだ瞬間にまた場面は切り替わってですね、ホワイトベース内の階段に移ります。本当にね、場面転換ですね。早くてかっこいいです。これがシーンいくつになるかな?えっと、もうシーン俺もう数えてないな、途中から。
ホワイトベースの階段なんですよ。もうホワイトベースって、エレベーターとかもあるんですけど、こういう階段、なんでこの階段っていうレイアウトにしてんのかと。これも描きにくいは描きにくいんですけど、これをすることによって、介抱するセイラとリュウとの間に段差が発生すると。この上下が発生することによってドラマってすごい分かりやすくなるんですね。
「リュウ、大丈夫、しっかりして」って言うと、「それよりもアムロを独房から出すんだ。責任は俺が取る」と。「リュウ、しっかりして」っていうセイラは下からの煽りで撮れる。それに対してリュウは上からの俯瞰で見上げるように話してるから苦しさが出ると。つまりセイラの心配な顔は下からの煽りカメラで撮れて、リュウの苦しそうな顔っていうのは上からの、なんだろうな、リュウの見上げるような視線っていうのを撮れるから、より感情がこう入るんですね。ここら辺もですね、階段を舞台にするってことで、土下座で頼み込むというレイアウトが使えるわけです。
セイラは「分かったわ」と言ってこの階段を駆け下ります。これも廊下だったら、この話ってのは全部平面上でしか起きないんですけども、上下差をつけることによって、セイラが「分かったわ」と言って階段降りる。そうすると、リュウがもう振り返ることもできずにですね、階段を降りながら「その代わりリュウはベッドにいるのよ」というセイラの振り返りもしない言葉がかかって、で、リュウはリュウで振り返ることもできずに[笑い]「分かってる、セイラさん」って。こういうドラマが描けるのは、この階段を舞台に選んでるからなんですね。
で、セイラはこのまま階段降りて廊下をダーっと走ってですね。で、壁にある無線機、無線機ってかな?通信機ですか?それをパンと叩くとブリッジが映るとですね。「ブライト」っていう風に声かけます。「セイラ、どこにいるんだ?早くブリッジに上がれ」っていう風に言うと、「アムロの独房のドアナンバーを教えてください」。
ここでブライトにカメラが切り替わってですね、「なんだと」と。「今までリュウがここにいたのよ。彼が責任を取るから、アムロの出動を」っていう風にセイラが訴えます。で、ブライトが「ぬー、そんなことできるはずがないじゃないか」。これブライトをですね、顔映した後でブライトが見てる画面ですね、前を見るとですね、もうホワイトベースの窓の外ではバンバンバンバン爆発が起こってるわけです。大戦闘が起こってるのに言うことを聞いてくれないセイラがですね、正面のモニターに小さく映ってるんですね。[笑い]
ブライトと言い合うセイラですね。窓の外は戦闘。しかしブライトは意固地になってるんですね。お節介なと。もう自分が死ぬかもわかんないということでですね、こういう風にしてくれというリュウの言葉も、すでにブライトにはお節介なとしか聞こえません。「私も責任を取るわ、教えてください」っていう風にセイラが言ってしまうんですね。この「私も責任を取るわ、教えてください」が決定打ですね。
ここで、セイラの言ってることにさらに反論したりすると、ブライトはブリッジのメンバーの信頼と支持を完全に失ってしまうんですね。前回あたりから、ブライトはせめてブリッジの中でだけでも自分の人望を高めよう、支持を高めようとして、例えばこのミライに話しかけたり、セイラを仲間に入れようとしたりしてるんですね。だからそれを感じてるからこそ、多分カイも嫌になって出ていくし、あとリュウも、いや、なんかこうブリッジにいるばっかりで、なんでお前らは誰1人、そうなんすよ、ミライもセイラもブライトも結局独房に閉じ込められてるアムロに1回も会いに行ってないんですね。閉じ込める時以外は。
だから、そこら辺がリュウはすごく嫌だったと。いつの間にか船内でカースト制度みたいなのが出てんのが嫌だったと。で、そのやっと作った船内のカースト制度で、数少ない自分の支持者のセイラがですね、「私も責任を取ります」という風に言ったもんでですね、もう一応脱走するアムロを自分は虎として調教できると思ってたんですけど、その自信とプライドが完全に崩れた瞬間ですね、「F9、F36タイプだ」っていう風に吐き捨てるように、ブライトがつぶやくように吐き捨てるように言いますと。
そうするとセイラはそのまま礼も言わずにダッシュしてですね、アムロの部屋のドアを開けちゃうんですね。「リュウが開けてくれたのよ」と言います。ブライトとは言わないです[笑い]ね。
セイラがね、ちょっとでもね、なんだろうな、政治的な動きができたら、多分どんなにリュウが尽くしてくれたとしてもですね、ミライだったら違うんですよ。ミライだったら「ブライトが開けてくれた」と言うんですね。それによってアムロのやる気を出そうとするんですよね。でもここでセイラは自分の感情のままに、さすがお姫様育ちですね。所詮は感情で動くバカ女です。[笑い]
「リュウが開けてくれたのよ。リュウの分も頑張ってね」というですね、さらにプレッシャーをかけるようなこと言うんです[笑い]。絶対にこれね、「ブライトが開けてくれたのよ。ブライトはあなたを信頼してるわ」って言った方が100%ね、アムロは動きが良くなるんですけども、バカ女にはそれが分からんのですよ。[笑い]
「はい、行きます」という風にですね、アムロは行きます。で、ハモン隊のですね、突撃ボート、サムソンですね。これが2機とまたカイが戦う。さっきカイはですね、ザクと戦ってたのに、さらに攻撃ボートが来たんですけども、さらに大きな敵が出現と。いよいよですね、ハモンが乗っているカーゴがですね、現れました。「うん。まだ新手がいるのか」っていう風にカイが驚いたところにですね。
こうカイの見た目です。1番上の絵。「まだ新手がいるのか」。ここで他のやつと戦ってるんですよ。そしたらこの山の向こうからですね、異常なものが現れるんですね。巨大な輸送機というかですね、倉庫の動くやつの上に大砲が3つ乗ってて、そいつがバンバンバンバン弾撃って、機関銃撃って近づいてくるんですね。で、それがクローズアップになったら、さらにコックピットの中に入って、周りで火を吹く機関銃の照り返しを受けながらにやりと笑うですね、ハモンですね。で、ここでダダダンダン[笑い]ということで、Aパート終わり、CMです。
いかがでしたでしょうか?機動戦士ガンダム第21話「激闘は憎しみ深く」ですね。Aパートです。Bパート、ハモンとですね、このリュウですね、今回の本当に役者。この2人のですね、最後をたっぷりと描く、またまたエロい感じですね、終わります。それではまた来週じゃね。またバイバイ。
機動戦士ガンダムですね。今回は「激闘は憎しみ深く」のBパートですね。第3回をお送りします。Bパート始まりましてですね、すぐに、よいしょ。ホワイトベースのエンジンのアップから始まります。エンジンが噴射して上昇しようとしてるんですけども、これ見ていただいたら分かるところ、こちら側に左エンジンはあるんですけど、右側のエンジンがですね、4つのうち1つしかついていませんですね。で、エンジンがこのような状態でもですね、無理やり離陸させようとブライトが命令を出します。
で、アムロですね、前回Aパートのラストですね、セイラがですね、監禁されてるアムロをですね、無理やり釈放しました。で、ブリッジの通信機に座ったんですけどもですね、アムロにですね、発進できるか確認したんですけども、ガンダムで出撃できないと。なんでかと言うと、ガンダムが今整備中で、Aパート、Bパート、コアファイターの状態でバラバラにされてると。で、それでもですね、「ともかくコアファイターで出ます」と、こういう風なシーンから始まります。
ここでちょっと、Bパートの頭で注目していきたいのがこのエンジン、4つのうち3つ。これホワイトベースのですね、模型です。で、ホワイトベースの模型ですね、これ後ろから見るとエンジンが出ます。で、こっちの方ですね。こちらの方がですね、写真に現れてる方なんですけど、見て分かる通りですね、大型のエンジンが4つついてて、そのうちの3つが点火しない状態です。
で、本来で言えば1つや2つぐらいエンジンがダメでもなんとか離陸するぐらいできるんですけども、ホワイトベースですね、4つのうち3つもダメなので、離陸できない状態を無理やりブライトの命令でとにかく飛べと。なんでかと言うと、前回も話した通りですね、ホワイトベースはこれ今後ろの方、山に囲まれて守るのに簡単な陣なんですけどもですね、攻められてですね、パニックになっちゃったんですね。なので、とりあえずこの場所を動かそうとですね、離陸させようとします。ところが高度が上がらないので、無理やりさせたと。これが後々になって大変な事態になってくるんですけどもですね。
「ともかくコアファイターで出ます。修理中でガンダムにドッキングしてないんです」とアムロが報告すると、セイラが「了解したわ。ホワイトベースが発進するかもしれないけど大丈夫なんですね」っていう風に言うと、で、えっとですね、「コアファイター出ます、よろしい?」という風にセイラが確認すると、ブライトは「やらせなくてもやるんだろう、セイラ」という風にもう口答えしてしまうわけですね。で、「ブライトさん」という風にセイラが思わず驚いて聞き返すと、「ガンダムがいなければ立ち向かえんというのに」とイライラを隠せないぐらいと。こういうところから始まります。もうBパートでもまだ揉めてるわけですね。
で、ホワイトベースはですね、なんとか離陸しましてですね、コアファイターも発進しましたですね。で、コアファイター、これ、ちょっと小さいんですけどもですね、今回重要なメカであります。ガンダムのお腹の部分に入っていて、こういう風に羽が畳まってですね、で、この頭が縮んでくるっと回ってこのお腹の中にこうパカッと収納されるんですけども、今回これ出た状態で登場します。これも今回大変重要になってくるメカなので、ちょっとここに出しておきますね。
で、アムロはコアファイターで出撃しました。で、ハヤトたちはこのガンタンクというやつで出撃しています。で、カイのガンキャノンもですね、今猛攻撃を受けてるけれどもですね、逃げずに戦っています。ここら辺はですね、なんかそれぞれが自分の判断で戦うっていう、いい流れになりつつあります。で、えっとですね、というところなんですけども、画面変わってですね。
これフラウ・ボゥがですね、リュウの見舞いをしてるシーンですね。で、ちょうどホワイトベースが飛び立とうとしてるんですけども、前に岩山があってガーンと引っかかってしまいました。なのでホワイトベースが飛び立てません。岩山にガリガリガリガリ引っかかってるところでですね、この病室がですね、ガタガタガタガタ揺れてるところのドラマになります。
「フラウ、手伝ってやれ」と。つまりガリガリなってるからですね、もう大変な事態だということがリュウには分かるわけですね。で、「フラウ・ボゥ、手伝ってやれ。右の機銃に行って引き金ぐらい引けるだろう」っていう風にリュウは言います。で、フラウが「分かった」と言ってこのドアから行ってしまうとですね、リュウは寝てろと言われたんですけども、壁の通信機でですね、ブリッジの様子を探ります。
そうするとブリッジの方ではですね、もうブライトさんが怒鳴りまくってるわけですね。で、怒鳴りまくってるブライトが見えると、「ガンタンクが故障だと?ミライ、ホワイトベースはこのまま動けんのか」って言うと、ミライが「浮力がつきません。ハイパーマグネットが」と言い訳してるけど、「ガンダムパーツを射出しろだと?アムロが言ったのか」という風に、もうイライラ怒鳴ってばっかりなんですね。
で、リュウが「くそ」と言って起き上がってしまうですね。廊下を足を引きずって歩くと、同じく怪我で寝ている乗務員ですね、同じく怪我してる乗務員が声かけると、「リュウさん、あなた動いちゃだめです。1番重症なんですよ」って言うと、「ホワイトベースがやられちまえば、病気だなんて言ってられるか」と言って、リュウが言い捨ててですね、こう本当にフラフラフラフラ行くんですよね。で、「どうするつもりなんですか?」っていうと、「ガンタンクを動かさにゃいかん」っていう風に言いながら廊下の端に消えていくわけです。
で、ちょっと、もう1回流れをですね、もう1回整理させてください。「フラウ・ボゥ、手伝ってやれ。右の機銃に行って引き金ぐらい引けるだろう」と。これはですね、多分この辺の位置に機銃座があるんですね。出るかな?よいしょ。硬いな。こういう風になってですね、ここの中に機銃が入ってると。で、ここら辺に行ってですね、とりあえず何でもいいから、できることやってこいってフラウに言うんですね。で、この辺に行かせたのがまた後々の伏線になってくるんですけども、これもまた後で説明します。
はい。で、リュウはですね、バギーで出ると。で、バギーで出る時にですね、「ホワイトベースが引っかかってくれなきゃ、こんなこともできなかった」という風に言います。前に置いとくと邪魔ですね。
これどういう意味かって言うと、さっきも言ったようにホワイトベースはですね、飛ぼうとして飛べなくて岩山に引っかかってんですね。なので岩山とちょうど地続きの状態になってるのでですね、こういう風にバギーがそのままさっと外へ出られるわけですね。
で、この辺りの説明がちょっとね、過剰なことは過剰なんですね。フラウ・ボゥに右の機銃に行けとかですね、あと、ホワイトベースが引っかかってなければダメだったなっていう風に独り言言うところとかですね。全般過剰なんですけど、これ後半の畳みかけるようなドラマのためにどうしても必要な説明ゼリフなんですね。だから、過剰なんですけど、矛盾を起こさないためだという風に思っといてください。
で、えっとですね、僕この辺りの流れがですね、整理してみるとすごい面白いですね。っていうのは、原因が結果を生んで、その結果が新たな原因となって次の結果を招くというですね、状態になってます。ここにですね、この項目にまとめました。で、上から4つまでがAパートで、5番から9番までがですね、Bパート。今話す流れですね。
1番、元々はですね、前回のランバ・ラルの攻撃で修理中だったホワイトベースですね。で、おまけにランバ・ラルが中に入ってきたので、白兵戦で死者や怪我人が多く出たと。だから修理が進んでいないと。なのでこの話数の頭でカイとハヤトがですね、ガンタンクとガンキャノンを使って修理するっていうシーンが出てきます。
で、そこに3番、ハモンの攻撃が始まって、調子の悪い右エンジンに集中されてしまう。右エンジンが元々調子悪かったのに、そこに攻撃を集中されてしまったので、実はホワイトベースが離陸できないっていうのは、元々その故障中だったのをですね、ハモンたちが右エンジンに攻撃を集中したから、もう離陸できなくなっちゃったんですね。
で、4番、前回ですね、ガンタンクが山道で故障してシャフトが折れたという風に言ってたんですけど、キャタピラが動かなくなってしまったので、もうその場でですね、動かずに砲台みたいになってしまってると。ここまでがAパートの状況です。
で、Bパート、ここから語られるのがですね、右エンジン不調のまま離陸。そうすると6番、岩山に引っかかり飛べない。7番、だからリュウはバギーで外に出られるようになったと。で、8番、後ですね、リュウがガンタンクに乗り込み、ですね、コアファイターに乗ってしまって、クライマックスのですね、悲劇に突入していくと。こういう大きい流れになってるんですね。だから常にその原因が次の結果を生んで、で、結果がまたその次の原因になるっていうですね、こう数珠つなぎの構造ですね。今回本当にその無駄がないんですね。なので説明ゼリフもやっぱ時々入らざるを得ない。こんな状態だと思ってください。
で、アムロはですね、コアファイターで発進してですね、敵のサムソンというですね、ホバークラフトみたいなやつが襲ってきたのに対して、アムロのコアファイターが攻撃して、ようやく1機だけを撃ち落とします。ですね、で、「ようやく1機か。いや、全く出遅れた」という風にアムロが言ってたらですね、オムルですね、ホワイトベースの中のクルーが「ガンダムパーツの射出ができそうだ。いいか」って言うと、アムロが「やってください。コアファイターの弾を撃ち尽くしました」という風に言います。
で、これもですね、その、コアファイターで出ている理由が、今回ね、全般このタイミングでコアファイター使うのかっていう話が多いので、アムロをまずガンダムで出すんではなくて、コアファイターで出すところでドラマっていうのをちょっとずつ積み上げています。
で、「やってください。コアファイターの弾を撃ち尽くしました」という風にアムロが報告して、アムロのコアファイターがですね、変形してガンダムのパーツと次々と合体してガンダムになると。で、やっと合体したガンダムは早速ビームサーベル、あ、ビームライフルを撃って、さっき1機だけ破壊したサムソンってホバークラフトのもう1機は破壊するんですけども、ザクを逃してしまうんですね。
で、そうするとザクはそのまま、ホワイトベースの方向に向かってですね、走り逃げてしまうんですね。ホワイトベースの方向に逃げると、えっとですね、これもちょっと分かりにくいんですけども、同じ構図にするとこうなります。分かるかな?あ、カメラこっちだからこうすべきなんですね。サムソン、あの、彼が逃げたのがここからこういう風に逃げてるんですね。だから相変わらずこの調子の悪い右エンジンに向かってこう逃げてる最中なん
ですよ。なのでガンダムがこの位置にいるんですけど、後ろから撃てないんですね。この位置から撃つとどうやってもホワイトベースに当たってしまうんですね。で、「しまった、狙い撃ちはできても、ここからじゃホワイトベースまで傷つけてしまう。格闘戦に持ち込むしかないのか」。ちょっと説明ゼリフですけど、アムロが言います。で、慌ててガンダムもホワイトベースへと走っていきますね。
そうすると突然後ろからの攻撃に吹き飛ばされてしまうんですね。で、後ろからの攻撃が何かって言うと、ここで出てきたのが、同じポジションなのが分かりますか? この位置に対してさらに後ろから、サムソン、あ、じゃない、カーゴが現れるですね。すごく小さくて分かりにくいですけども、逃げていったザクを追いかけてアムロのガンダムがホワイトベースの方へ走っていくと、後ろから攻撃と。で、振り返ると巨大なカーゴですね。ホバークラフトのカーゴが迫ってきてるわけです。
で、アムロは、じゃあと思ってカーゴを狙撃しようとします。ところがふと思いつく。「ちょっと待てよ」と。「あれは特攻するつもりじゃないのか」、つまり体当たりするつもりじゃないのかと。「とすれば、中は爆薬でいっぱいのはずだ」ということで、アムロはカーゴを撃つことができないんですね。
最初カーゴからガンダムは逃げようとするんですけども、思いとどまって振り返り、カーゴをドンと手で押し返そうとします。だって、撃ったら大爆発しちゃうからですね。もう押し返すしかできないんですね。で、「だめだ」という風にアムロが言うと、このカーゴの上に緑色のものが乗ってます。これがマゼラトップっていう、戦車の砲台部分、砲塔部分ですね。それが乗っかってるんですけども、なんとかこれで止めようとするんですね。
そうするとこのマゼラトップの上に乗っかってるハモンが「小癪な」と言います。「特攻させぬつもりか、小癪な」っていう風に怒っていますね。で、このハモンの次のシーンが見た目になるんですけれども、ハモンの見た目ですね。自分がコクピットのハンドルを握っていると。で、マゼラトップの砲身があって、ガンダムが必死で押して止めようとしてると。ガンダムはこの上にハモンが乗ってることにまだ気がついてません。で、そのさらに向こうにザクが見えるとこまでやるんですね。
カメラはこの右の位置からパンして左の方へ流れていって、ザクが少しアップになるとこで終わります。これはハモンの見た目であると同時に次への段取りですね。ドラマが、アムロが主観になったと思うと、次は「小癪な」と言ってハモンが主役になると。で、ハモンが主役になった時にハモンの見た目でどういう風に見えてるのか、次にどんな手を打っていいのかっていうのをこのカメラの流れで見せていますね。
で、アムロはこの状態からなんとか反撃しなければいけないので、頭についているこの位置についてるバルカン砲を撃ちますね。大きい武器を使ってしまえば大爆発が起きるので、バルカンを撃ちます。で、僕ね、これ、昔アニメをリアルタイムで見た時に全然気がつかなかったんですけども、この緑色の大砲はさっきも言ったように、ハモンが乗ってるマゼラトップっていう部分なんですけども、これがガンダムが銃を撃つといなくなってるんですね。
で、何かって言うと、こいつがゆっくりと上昇してるんですよ。つまり、ガンダムがバルカンを撃ち始めた時に、ハモンたちは次の手として自分たちが空を飛んで後ろからガンダムを襲おうという風に考えたんですね。なのでガンダムがバルカンを撃ち出したら、この砲塔が上の方へずっと消えていくことで離陸したというのを表していると。
なかなかね、この映像で、このなんだろうな、動きっていうのかな。お互いの戦略を見せてるのですね、1回見ただけではなかなか気がつかないんですけれども。もうこれ、チェスとか将棋みたいに、1手ずつ相手がそれしかできないような、もう追い詰めるような戦術の塊なんですね。
だからハモンっていうのが、その名将と言われるランバ・ラルなんですけども、ランバ・ラル自身は、打てる手がなくなったら「こうなったらみんなで切り込みだ」とか、割と単純な方法しか思いつかないんですよ。それに比べてハモンの戦法っていうのは本当に相手を自分が有利なように有利なように追い込んで、その中で絶対勝てるようにやるっていうですね。かなり名参謀というか、現場司令官としても優秀な人間だっていうのが分かりますね。
で、この上の砲台部分がすっと上に上がって、アムロが「あっ」て驚くと、大砲部分が離陸してるわけですね。で、これがマゼラトップです。マゼラトップが離陸して、そこにハモンが乗っています。
いや、もう本当にね、この回はこうやってワンカットワンカット説明するしかないんですけど、ほくそ笑んでるハモンですね。「ふふ、ガンダム一機でそれが止められるものか。木馬にぶつかればその中の爆薬が」っていう風に言います。で、ハモンの想像ですね。ニヤニヤとした想像ですね。ホワイトベースにぶつかったら、カーゴの中の爆薬が誘爆して大爆発を起こしてホワイトベースも粉々になるぞっていう風に想像しながらニヤニヤしてるわけですね。で、さらにハモンはこれだけでは気が済まないですね。
はい。タチ、ザクのパイロットの名前です。「タチ、ガンダムを後ろから倒しておしまい」って言うと、タチのザクが振り返ると。振り返ると同時にここにインサートカットが入って、ここにタチの顔が入ると。これも富野由悠季がガンダム以前からやってたんですけど、ガンダムで確立されましたね。何回も話してる演出法ですね。コクピットの辺りに、なんだろう、こういうインサートカットの角が出るような感じで、漫画の吹き出しの応用なんですね。
漫画の吹き出しっぽくここに入れて顔を入れることで、わざわざ2つのカットに分けなくても誰が何をしようとしてんのか分かると。コクピットの中でハモンが「ガンダムの後ろから倒しておしまい」と、もう完全に悪役ですね。とザクが振り返って、ここにインサートでタチが入って「はっ、ハモン様」って言って後ろから飛びかかるですね。
これもうまいです。ザクが振り返って、トマホークを振り上げるんですね。で、振り上げたままガンダムに飛びかかっていくんですけども、すいませんね。こう飛びかかっていくんですけど、この空中でどんどんバックスイングを始めて、ガンダムの方にトマホークを叩き込もうとする姿勢で飛んでいきます。割とそのダイナミックな構図でありながら、ここでアップにしときながら、ここでは思い切った望遠っていうのかな? ロングレンジで捉えています。
で、これなんでかって言うと、ここまで寄ってやったから、やっぱり状況説明で見て分かるようにしなきゃいけないですね。どういう状況かと。相変わらずエンジンが止まったままの右エンジンを背景にして、右エンジンを攻撃していたザクがガンダムに飛びかかろうとしてると。それに対してガンダムはこれ見て分かる通り、黄色いカーゴっていうホバークラフトを押し返すだけで精一杯で、後ろからそんな敵が来ることに気がついていない。そういう状況ですね。
じゃあ後ろから襲われてどうなってしまうのか。いきなりですね、ガンダムの腰にガーンとトマホークが食い込んで、アムロがうわーっと言って振り返る。振り返るとザクが、腰に食い込ませたトマホークをさらに奥へグイグイグイっと押し込んでくっていう、まさに絶体絶命のシーンですね。
ザクが後ろから、いわゆる右後ろにいる状態から襲ってくるので、アムロも振り返る時は右後ろを振り返ってます。で、これで見るとガンダムの右後ろにザクがいると。こういう位置関係っていうのは、ちょっとした演出の間違いで見てる人がすごい混乱しやすいので、今回ガンダムはものすごく気をつけてますね。映像の基本中の基本だから当たり前といえば当たり前なんですけど、この左右前後ろっていうのをすごい空間的に分かりやすいようにやってます。
ガンダムの腰ですね。トマホークですね。さっきも言ったように前のカットでトマホークをザクが振り上げながら飛びかかってきて、次のカットでいきなり食い込んで、うわっといって振り返って、さらに奥にグイグイグイっと押し込んでいくですね。で、なんとかこの肘でザクを後ろにはねのけようとするがうまくいきませんね。
で、次また1画面ですいませんね。カット3つに分かれてます。で、さらにアムロに襲いかかるマゼラトップですね。もう本当に絶体絶命です。襲いかかってきたら、アムロはそれを見上げながら「上からできるか?」っていう風に自問します。上から攻撃されてきて、「上からできるか?」と自分自身でクエスチョンマークで語りながら、これちょっと分かりにくいんですけども、ザクが腕を振り上げてきたところへ、ガンダムが肘をザクの胸のところまで下ろしますね。
で、このままザクを下から救い上げるように持ち上げるんですね。ちょっと柔道っぽい技です。トマホークを振り上げるザクを下から胸のところからガンダムが救い上げて「えいっ」ていう風に言って、そのままマゼラトップが撃ってきた大砲にザクを当ててしまうんですね。あ、ごめんなさい。上下逆だった。なんで俺[咳払い]こんな変なことやってんだろうですね。
救い上げて、ザクを盾にするわけですね。で、ザクに当たったらそのままザクを持ち上げて放り投げると。で、放り投げられたザクがマゼラトップと空中でぶつかって大爆発。1度に2機やっつけるわけですね。
ようやくガンダムが絶体絶命の危機ですか。状況をもう1回[笑い]言うとですね、ホワイトベースが故障中で、この故障中のホワイトベースにエンジン不調で、後ろからこの爆薬積んだホバークラフトがガーっと来る。で、これはやばい、撃ったらやばいということでガンダムがガーンと押してるんですけども、ガンダムが押してると動けないので、マゼラトップたちが離れて飛んでいくと。で、さらにこの上で攻撃していったザクが降りてきてガンダムを後ろから攻撃する。で、さらにマゼラトップが上から大砲で撃つっていう、もう本当に殲滅作戦なんですね。
多分ね、機動戦士ガンダムのシリーズの中でガンダムが1番ピンチだった時ってこの時だと思うんですけども、いや、本当にね、ここまで戦術的に、つまりどのようにやるのかっていう布陣で固められて攻撃されたことってないんですよね。で、そういう風に次々とやられて、それに対してガンダムは、一応スーパーロボットらしさ、他のロボットに比べてパワーが強いという、ザクを持ち上げて盾にしてそれをそのまま投げて飛行機にぶつけて落とすっていう、ちょっと超人的なプレイを見せますね。
で、2機いっぺんにやられて、さすがにハモンさんも青ざめるんですけども、青ざめながらもやっぱりちょっと笑ってるんですね。「ガンダム、2人のパイロットを同時に討ち取るとは、さすが私が見込んだ坊やだけのことはある。しかし」っていう風に、一瞬で次の手に移すことを考えると。迷いがないんですね。そのアムロを自分の手で殺すことによって、最初はホワイトベースを落とすことだけ考えていって、「あの子が私の邪魔をしませんように」っていう風に言ってたんですけども、まさかそれを自分自身の手で倒すって考えてなかったんですね。だから思わずその運命の皮肉に微笑んでるって感じなんでしょうかね。
ただその面白いのはですね、「ガルマ様の仇」って言ってイセリナが仇を討つ時は、一緒に付き合ってくれたガルマの部下のダロタ中尉っていうのがいたんですけど、ダロタ中尉が死んだ時にはちゃんと「ダロタ中尉」っていう風にイセリナは声かけてるんですね。ところが最初に、これからホワイトベースをやると言って、みんなに感謝すると言って1人1人握手したあのタチ[笑い]が死んだ時にも、なんか「2人のパイロットを同時に討ち果たすとは」って言ってるだけで、何も言わないんですね。
だからその、なんだろうな。ハモンにとってやっぱり部下っていうのは、ランバ・ラルにとっての部下とは違うですね。ランバ・ラルにとっての部下ってのは家族であって、彼らのために何とかしてやろう、尽くしてやろうとする相手なんですけど、ハモンの方はランバ・ラルよりは、なんだろう、部下の掌握をしてるし操るのもうまいんですけども、所詮部下に過ぎない。だからそのタチが自分の命令で死んでいった時も、パイロットをやられたという風にしか考えないですね。そこら辺がその一緒に戦ってくれたダロタ中尉が死んだ時に見せたイセリナの取り乱し方みたいなものがハモンの中には全くない。同じ片中をしてる時ですね。
で、そのままハモンは「さすが私が見込んだ坊やだけのことはある。しかし」って言いながら、そのままガンダムの後ろに回り込みますね。この飛行機がくるりとこういう風に回り込んでガンダムの真後ろにつくんですね。で、アムロは「えっ」[咳払い]てびっくりします。「しまった」っていう風になるんですね。
もうガンダムはこのカーゴを手で止めてるだけで精一杯なんですよ。せいぜいバルカンを撃つことしかできなかったから、真後ろへ回ってこられたらもう打つ手がないんですね。なので「しまった」っていう風に叫ぶんですけども、叫んだ瞬間に画面が切り替わって、これ機銃座です。ここにピンクのが見えて、ここにフラウ・ボゥがいるんですけども、この機銃座にカメラが次カット切り替わって、機銃座のところで座っているフラウ、そこへ走ってくるブライト。
で、彼らの見た目では、どんどん近づいてくるカーゴ。それを手で押しとめてるガンダムで、よく見るとその真後ろに位置してるマゼラトップっていうのが全部見えています。このカットを入れることで、状況がいきなり切迫してくるのが分かるんですね。
えっと、この銃の位置にクローズアップしていくと、ブライトが走ってくると。そうするとフラウが「撃ちましょうか」っていう風に言うんですね。そうするとブライトが止めると。「マゼラトップだけを狙えるわけがないだろう」っていう風に止めるんですね。で、なんでこのカットが必要なのかって言うと、フラウが「撃ちましょうか」って言ったら、このマゼラトップだけ狙えるわけないんですね。ガンダムにも当たっちゃうし、下手したら後ろのカーゴにも当たっちゃうんですね。で、そんなことしたら大爆発すると。
だから、アムロを殺したくないので非情な決断ができないブライトと。もしブライトが本当にアムロのことを邪魔に思ってるんだったら、多分そのハモンの乗ってるマゼラトップと一緒に、ある程度距離も離れてるから多少の被害が出ようともフラウ・ボゥに撃たせたと思うんですね。でもそこでブライトは止めてしまう。フラウ・ボゥはフラウ・ボゥで、自分がアムロを殺すことになるとはまだ気がつかずに「撃ちましょうか」って聞いてしまう。ちょっと抜けさがあるんですけどもですね。
で、このカットのお尻では、このカーゴとガンダムのセットがどんどんどんどんこちらの方へ押されていくんですね。作画でグリグリグリグリと押されてて、もう本当に絶体絶命という風なことが分かります。
ということで、機動戦士ガンダム「激闘は憎しみ深く」Bパートの前半[笑い]はここまでで終わります。果たして絶体絶命のガンダム、ここからどうやって生き残り、どうやって戦い返すのでしょうか。では次回、「激闘は憎しみ深く」最終回でお会いしましょう。それではまた来週。
機動戦士ガンダム講座、「激闘は憎しみ深く」第4回、最終回ですね。えっとですね、前回でガンダムたちのいる状況ですね。ここの位置にフラウ・ボゥのいる機銃座があります。で、そっから見てると、はるか向こうの方から、これ代わりに使いますけども、敵のカーゴですね。火薬をいっぱい積んだホバークラフトがガーっと体当たりしようと迫ってくると。で、その前でガンダムが「うわーっ、行かせるか」ってやってると。ところがそのガンダムの後ろに、敵の大砲を積んだ飛行機がやってきてガンダムを後ろから撃とうとしてるっていうですね。ちょっと分かりにくいかな。
まさに絶体絶命の場面ですね。こいつがホワイトベースに当たったらホワイトベースは大爆発だし、後ろからガンダムが撃たれてもやっぱり負けは負けなんですね。で、それを見てるしかない、この機銃座のところにいるホワイトベースのブライトとフラウ・ボゥというところまで前回は話をしました。では、今回はその続きです。
おさらいですね。ハモンの乗ったマゼラトップが真後ろに来たと。で、アムロが「しまった」って言ってると。で、そこに画面が変わって、機銃座にいるフラウ・ボゥのとこでブライトが走ってきて、で、火薬をいっぱい積んだカーゴがじわじわじわじわと近づいてくる。さあ、絶体絶命というシーンです。
はい。で、切り替わって、このガンダムのこの位置から画面が始まります。で、画面が左側にパンしていくと、後ろから狙ってるマゼラトップが見えるわけですね。まさに絶体絶命なんですけど、案外かっこいいんですよ、マゼラトップが。これまでね、割とダサいメカの代表みたいなマゼラトップだったんですけども、マゼラトップってこんな感じのやつなんですね。
いわゆる戦車の大砲がこれ、弾が戦車に当たりかけてると。で、戦車に弾が当たっても大丈夫なように、この砲塔部分だけが飛んで逃げることができるっていうメカなんですけども、割とかっこ悪いメカなんですけども、今回のこの描き方がもうあまりにもかっこいいんですね。で、これ何かって言うと、実はジオンにとってのコア・ファイターなんですね。ちょっと説明してみます。
コア・ファイターっていうのはガンダムのお腹の中に入っている戦闘機なんですけども、こういう風に見せた方がいいかな。はい。戦闘機なんですけども、連邦軍のモビルスーツと、ジオンのザクなどの最大の違いというのは、このコア・ファイター、中に飛行機が入ってるかどうかなんですね。で、パイロットの生存率を高めるためという風に言われてます。
なんでかって言うと、ジオンがザクを作った時は、多分1週間か2週間で戦争終わるだろうと。だから1発で攻撃しようということで、もう本当に、なんだろうな、1回の攻撃で全て集中するような運用の仕方、どういう意味かって言うと、熟練のパイロットを最新の兵器に使って前線にどんどん送り込んだんですね。で、それが全部滅びても構わない。なんでかと言うと、もう2回目の戦争はない。この1週間でケリがつくからという風にジオンが思ったからと。ところが案外戦争が長引いて1年ぐらいの長期化したところで連邦軍のガンダムというのが出てきたんですね。
なのでパイロットの生存率を高めるっていうのは、長期化した戦争では実はパイロットは使い捨てにできないからです。パイロットの養成っていうのは数年かかるんですよね。だからモビルスーツなんていうのは言っちゃえば1回準備して、あとは工場さえ動かせば1日に100機200機ぐらい作れるかもしれないんですけども、パイロットを毎日毎日100人200人っていう風に大量に卒業させることはできないですね。だから戦争が長期化すればするほど、飛行機はいっぱいあるんだけどパイロットは足りなくなってくると。これはもう日本軍もアメリカ軍も、どの戦争でも当たり前の状況なんですね。
だからこそ、戦闘で負けてもパイロットだけはなんとか生かして帰ろうということで生まれたのがこのコア・ファイターですね。ロボットのお腹の部分に脱出カプセルをつけて、それに羽もつけてなんとか飛んで帰れるようにしようと。で、できればおまけに攻撃性も持たせようとしてミサイルとか機銃もちょっと積んでるっていう飛行機ですね。
で、これはもちろんガンダムのストーリー上の設定でしたけども、現実的な設定で言えば、おもちゃ屋の要求に応えるためですね。もうおもちゃ屋の要求に応えるためというか、苦肉の策みたいなもんで、おもちゃ屋さんとしては、これガンタンクなんですけども、もちろんゲッターロボみたいに3つのメカが外れて、ガンダムではAパーツ、Bパーツ、コア・ファイターとか言ってそうじゃないんです。何かこのガンダムなんとか、ガンダムクラッシャーみたいなやつで、それぞれが活躍してそれぞれが戦って、おまけに合体したらもっと強くなるみたいなメカがやりたかったに決まってるわけですね。
ところが富野由悠季はそういう、もうなんだろうな、おもちゃみたいなロボットアニメは嫌だという風なことで。おもちゃ屋が望んでるのはあくまで3機合体のゲッターロボだったんですけども、そこに対して「はい、これでも3機合体だからいいでしょ」っていう風な、無理押ししたのがこのコア・ファイターっていうやつなんですね。で、一応それに翼つけて戦闘能力つけたのも、どう考えてもおもちゃ屋さんへのせめてものサービスなんですよね。
ところがせめてものサービスとして作った設定がここへ来てどんどんどんどんドラマを生み出してしまう。例えば「コア・ファイター脱出せよ」の回では、このコア・ファイターがホワイトベースから発射されて、大陸間弾道飛行で宇宙飛行するという回があったりですね、「再会、母よ」という回では、このコア・ファイターにアムロが乗って母親に会いに行くと、そうすると飛行機で飛んでいっちゃったもんだから、地元の人からなんかすごい連邦軍の偉い兵隊みたいに思われてる。そういう小さいドラマを産んだりします。
あとは、機動戦士ガンダムの前半部分の、なんだろうな、タイトルの部分で、延々空中換装と言われる空中合体の練習シーンを見せることで、なんか毎日毎日ひたすらアムロたちは訓練の日々が続いてたと。そういう風なドラマを見せることもできたと。
で、今回はガンダムがたまたま整備中なんで、アムロは最初仕方なくコア・ファイターで出撃するっていう、そういう状況を作り、で、まずは敵の飛行機を一機撃墜して、その後弾がなくなったのでガンダムに空中換装、空中合体ですね、するっていう、そういう見せ場を作ったと。しかしガンダムになっちゃったために機動性が失われて、ホワイトベースに向かって走っていったザクを追いかけきれなくて、おまけにカーゴを手で押さえつけて、ガンダムは動きが取れないと。こういう風な状況を産んでます。
で、ハモンはハモンで、そのでっかい火薬をいっぱい積んでるカーゴからマゼラトップで飛び上がって、こういう風に後ろから狙うっていう、まさかのジオン軍にとってのコア・ファイター的な使い方をしてるんです。
だからコア・ファイターって、最初に言った通りおもちゃ屋さんに対してサービスで使ってる。次のロボットも3つのメカが合体して強いロボットになるやつにしてくれっていうのに対して、富野由悠季が「もうこれでいいだろう、真ん中飛行機だし、もうここら辺で妥協してくれ」っていう、いわゆる本当にリアルなものやりたいから、あんまりおもちゃっぽいもんやりたくないと思って言い訳みたいに作った設定がどんどんどんどん伸びていって、最後はそのジオン軍のやられメカに[笑い]、さっきも言ったようにもう本当にただ単にこういう兵器だったものが、なんかいつの間にかこういうかっこいい状況を生み出すコア・ファイター的なものに生まれ変わってるっていうのが、ちょっと僕は感動してますね。
兵器的なリアリティではもうゼロなんですよ。だって大砲が飛んでたら[笑い]、自分の発射の反動で後ろ向きに飛んじゃって、ダメなんですよ、言っちゃえば。だからガンダムっていうのは、そのリアリティをデザインで出すんではなくて、使い方でデザインを出すっていうのがガンダムなんですね。だから今度は、カーゴをとりあえず自分の体重で手で止めるしかないガンダムで、バルカンで攻撃するとこのマゼラトップが離陸してきて、後ろにぴったりつかれるからもう反撃しようがないって、こういう危機の作り方でどんどんどんどんリアリティっていうのを出していますね。
よいしょ。もうすいません。このちょっとコア・ファイターに関して語ると熱くなり[笑い]すぎて。そこに、この悪魔的な構図が出てくるんですけども、さて、あの、えっと、こうかな。あ、いや、ここでいいのか。もう1回、これでいいのか?
真後ろからガンダムが狙われています。で、ここでのハモンの戦術はあくまでもホワイトベースの破壊だったはずなんです、ここまでは。ところがこの後ろにぴったりくっついてガンダムを狙うところで、もう計画は狂ってきました。ハモンの戦術変化ですね。
最初はカーゴをホワイトベースにぶつけると。で、2番、瞬間、マゼラトップでカーゴを撃つと大爆発。誘爆でホワイトベースを倒すことができる。しかし3番ですね。ガンダムに止められてしまうと。ここで計画変更になりますね。4番ですね。ガンダムをザクで破壊と。「タチ、ガンダムを後ろから倒しておしまい」っていう風に指示したことで、これでもう1回ガンダムを破壊して1に戻ると。カーゴをホワイトベースにぶつけるはずだったんですよ。
ところが5番ですね。ザクとトップを同時に破壊されてしまうと。これでもう1回計画の再変更が必要になってしまって、6番、自分でガンダムを破壊しようと決意するんですね。そうすると7番、ガンダムの爆発でカーゴも誘爆する。ところがそんな、もう真後ろにいる自分も、だってカーゴとホワイトベースの間にいるわけですから、もう自分もやっぱり落ちるわけですね。で、8番、ホワイトベースは破壊されるんですけど、もう自分も死ぬっていうのも計算に入れてるわけですね。
だからこの時、この構図になった瞬間に、ガンダムは間違いなくやられると。ホワイトベースも落とせるだろう。でももう自分も死んでしまうってことがハモンの中で計算に入ってるわけですね。
で、ハモンのセリフです。「いくら装甲の厚いガンダムとは言っても、これだけ近ければ落としやすい。そしてガンダムとカーゴの爆発力は木馬をも」という風に語ります。木馬、すなわちホワイトベースが吹っ飛ぶということは自分も一緒に吹っ飛ばされるってことなんですけど、もうそれはハモンの望みでもあります。で、アムロは振り返り「ハモンさんか」っていう風に気がつきます。ハモンが「本当に好きだったよ、坊や」って最後に語るんですね。
ここでのこのハモンの笑みというのはもうまさに無理心中なんですね。だって仇を討つ瞬間にランバ・ラルの名前が出てこないんですよ。これで仇を倒せるっていう時に、イセリナは「ガルマ様の仇」っていう風にくどいですけど言ったんですけども、ハモンはこれでガンダムを倒せるという時に「本当に好きだったよ、坊や」ってしか言わないと。ここもなんかハモンのこの女のところなんですけども、徐々に徐々にキャラに寄っていくんですね、カメラが。
これも「ダンダンダンダンダンダン」って音楽がずっと盛り上がってるんですけど、カメラがハモンの語り、「ハモンさん」「本当に好きだったよ、坊や」っていう風に徐々に徐々に寄っていくんですね。で、カメラが寄って「本当に好きだったよ、坊や」っていった瞬間に、ハモンの1発目がドンと撃って盾が吹っ飛ばされる。アムロが安全ベルトでなんとか体が引っかかってるんですけど、コクピットの中でうわっていう風に体が前後したら、そのまま2発目です。
で、ちょっとね、これね、映像作品としては割とタブーみたいなことやってるんですけども、イマジナリーラインっていうのがあります。えっとですね、それ何かって言うと、これガンダムと、なんだろう、後ろから狙ってるトップの右側にカメラがあるんですけども、ところが次の外側から撮ったカットではガンダムの左側にカメラが映っちゃってるんですね。で、これね、分かりにくいから普通やっちゃいけないことっていう風に言われるんですけども、こっから先のお話を見せるためには、1回イマジナリーラインを超えるって言うんですけども、ちょっと動かす必要があったんですね。
なので、その次のカットに繋げるためにカメラを実は動かしたかったんですけど、そのためにアムロが振り回されるシーンっていうのを入れました。これね、すごくうまいです。普通こんな無茶なこと、イマジナリーラインをこんな180°超えるようなことをしたら絶対に絵は分かりにくくなるんですけど、その時にさりげなくアムロを先にイマジナリーラインを超えさせてるんですね。つまり後ろから撃たれたんだから本当はこれ左右逆でアムロがぐわっとならなきゃいけないんですけど、このアムロが振り回される方向をあえて逆にしたので、ごく自然とこのイマジナリーライン超えが見れるんですね。
で、なんでこんな風にイマジナリーラインを超えさせたかったかって言うと、次のカットへの繋がりなんですよ。このカットですね。このワンカットで終わりではなくて、これ、こっからカメラが左にパンするんですけども、大砲でガンダムのランドセルが破壊されて、カメラがずっと右の方へパンすると、そこにその原因となったマゼラトップ、ハモンが座ってるところまでが映り込むんですね。
で、これ舞台演出でいうところの仕手・受け手の関係なんです。仕手っていうのが上手側で原因となって、受け手っていうのが下手側で、その結果を受け止めるという構図なんですけども、これを見せるためにこのイマジナリーライン超えっていうのをやってるんですね。状況を作る仕手側っていうのは上手側に行って、その状況を受けるリアクション側の受け手っていうのは下手側にいるっていうのが原則なんですけども、これを、そのランドセルが破壊されて、その破壊された原因であるハモンで、これがあるからこのカメラがこちら側へ移って、その仕手側を映すから、次にハモンの顔のアップに行けるんですね。
ここまで強い状況作っちゃったら、普通ハモンの方にカメラを映すと、なんかね、ちょっとね、うん。ドラマの圧縮感っていうか密度感が下がっちゃうんですね。で、それを避けるためにあえてここでは禁断のイマジナリーライン超えをして、このカットとそのまま繋げてカメラを左から右へパンさせることで、ハモンの側に主観を移しました。
で、ガンダムの背中の盾を破壊して、次にランドセルを破壊して、そうですね。で、今も言いました通り、カメラがこの左から右へパンして、このコクピットを見せた後でのハモンの表情ですね。えっとですね、「これでおしまい」っていう風に言って、いよいよ勝利を確信した瞬間に、この位置、窓にコア・ファイターがいきなりギューンとアップになってきて、ハモンが「あっ」て言うと、リュウの顔ですね。リュウの顔のアップ。「うわーっ」て叫び顔になります。
ハモンが勝利を確信した瞬間に振り返るとコア・ファイターが突っ込んできて、で、ドンって冷や汗を書いているリュウの表情がアップなんですよ。だからここの、冷や汗、同じく冷や汗かきながらほくそ笑んでるハモンと、あと必死で目を開いてるリュウっていうのは、完全にガンダムでは珍しい悪と正義の対比なんですね。相手を殺そうとしてる時に微笑んでいるのは悪いやつです。で、相手を殺そうとしてる時、自分が死を覚悟してる時に目を見開いてるっていうのは、やっぱり主役っぽい扱いになるんですね。
で、あまり機動戦士ガンダムの中ではそういう正義とか悪とかっていうような描写の仕方はしないんですけども、ここでようやくハモンが大悪役ですね、今回での大悪役で、「これで終わり」と言ってニヤっと笑ってるところへコア・ファイターが飛んできて、「あっ」てびっくりして、そこへ目を見開いたリュウが飛び込んでくるとこで状況が終わります。
もちろんリュウがこの目を見開いてるのはなんでかって言うと、自分が空を飛びながら空中を飛んでるマゼラトップに間違いなく体当たりするためですね。だから多分この瞬間この2人の目線っていうのは合って、お互いの顔は見えてるんですけども、そういうのは描いてません。ただ目を見開いているのは間違いなく自分が体当たりするため。割とね、体当たりする時の描写で目を閉じてる描写っていうのが多いんですけど、ここで目を開けさせるところがちょっと富野イズムのリアリティですね。
で、激突です。スローモーション的な映像に切り替わり、コア・ファイターがマゼラトップにドーンと体当たりして、もう間違いなく両者死ぬだろうというような感じで大爆発になります。両者爆発します。で、この次の瞬間、この場面を見ていた3人と、見ていなかった3人のリアクションになります。
このね、リアクションの作り方もうまいんですよ。本当にやっぱりね、しみじみね、ガンダムすごいなって思うんですけども。さて、このコア・ファイターがマゼラトップに体当たりしてるのを見ていたのはこの3人ですね。フラウ・ボゥ、あとはハヤトと、あとブライトですね。フラウ・ボゥとブライトは、ホワイトベースの機銃座で、元々この絶体絶命の状況をかなり遠く離れたところから見ていました。
で、ハヤトっていうのはこれまであえて描かなかったんですね。実はハヤトが乗っていたガンタンクのコア・ファイターを使って体当たりしたんですけども、そこを見せてしまうとドラマ的にちょっともた感があるので、あえてそこを伏せてたんですね。だから、リュウがバギーに乗って外へ出ると。で、「ガンタンクをなんとかして動かさないかん」っていうセリフだけで、次に登場してきた時は絶体絶命のガンダムのところへもう飛び込んで体当たりしてくるって描写にしたんですけど、この3人は状況を知ってるんですね。
なので、えっと、この2人は「うわっ」て言うんですけども、ハヤトの演技が口だけなんです。口パクだけで「リュウさん」って言ってる口になるんですね。この辺の、この期に及んでもこんな演出してくれるのかと。それもテレビシリーズでです[笑い]よ。テレビシリーズで、なんだろうな、リュウが敵の戦闘機に突っ込んで爆発して炎上する時に、この3人を連続でパンパンパンって見せてるんですけども、2人はセリフがあるのに、このハヤトだけセリフなしで口だけで「リュウさん」って言ってるのが分かるですね。
ここら辺の、特にこの2人はコア・ファイターが突っ込んだけど誰が突っ込んだか分かってないんですね。実はこの中でリュウが突っ込んだって分かってるのは、コア・ファイターを譲ったハヤトだけなんですね。だからハヤトだけが「リュウさん」って言ってる。そういうシーンです。
で、次です。このシーンを見ていなかった3人です。セイラが「リュウ」って言って、で、ミライは「何?」って言って、カイは「早くしろ」っていう風に怒鳴っています。これもこの自爆シーン、体当たりの後パッパッと、これ実はこの6人のカットって連続でパンパンパンって6人映るので、こんな風に分解して話すのはもどかしいんですけど、最初はこの状況を見ていた3人、次はこの状況を見ていなかった3人が連続して映されます。
セイラは「リュウ」って言うんですけど、これは通信機でリュウと連絡取ってたからですね。リュウがガンタンクから切り離されてコア・ファイターで飛び出してるっていうのは、セイラは当たり前ですけど、オペレーター、通信手ですからずっと連絡取ってたんですよ。だから[咳払い]リュウの身に何かあったのは分かると。「うわあ」って言って、その瞬間リュウの無線機がガーっていう風に放電状態になったら、それはリュウが死んだっていうことですから、リュウに何かあったのが分かると。
で、ミライは何があったのか分かんない。ホワイトベースの前で大爆発があったんだけど、その原因が分からないから呆然としてます。で、カイはこの状況に気がつかず、とりあえず弾がなくなったガンキャノンを格納庫に入れて、とりあえず弾の交換を急げっていう風に急かしてる。「早くしろ」って言ってるんですね。こういう風に、その6人のリアクションをずっと映すことで、何でしょうね、この戦場の中での一瞬、その時に彼らは何をしてたのかを切り取ってるんですね。
で、アムロです。ガンダムの横に落ちた機体を映して、それが大爆発をしてると。で、ガンダムがそれを見てると同じ目線で、コクピットの中のアムロも左下を見ているですね。「コア・ファイターだ。誰が」っていう風に言って、まだこの時にはリュウがやられたことに気がついてないで、そこでアムロがはっと気がついて、「そうか、エンジンの片方をやればホバークラフトなんだから」っていうことで、えっと、さらにまだ一機残っていたマゼラトップの攻撃を、頭を下げてこうやり過ごすんですね。突っ込んでくるマゼラトップをやり過ごして、頭を下げて、体を離しながらビームライフルで片側の
エンジンだけを撃ち抜くと。で、片側のエンジンだけ撃ち抜かれると、ホバークラフトだからカーゴはゆっくり回転を始めて、ガンダムがそれをガーンと蹴ってですね、ホワイトベースから引き離すと。この辺も本当にチェスとか将棋みたいに、勝負の相手を追い込んでいく手なんですけど、こういう風にしてですね。で、カーゴを蹴り飛ばされたらですね、カーゴがくるくるくるっと回って向こうの方へ押し出されていくと。それをガンダムが狙撃して爆破します。
これがアムロにとっての決着ですね。ようやっと狙撃してカーゴを爆発させて安心してるガンダムですね。決着ついたと。「もう敵はいませんか」っていう風にアムロが言うと、セイラが「戦いは終わったわ。アムロ、ガンダムは? アムロは大丈夫?」って聞くと、「大丈夫です。コアファイターに乗ってたの誰だったんです?」って言うと。これもずっとコクピットの中の無線での会話です。セイラが「驚かないでね、アムロ」と。で、アムロが「え?」って言うと「リュウよ。リュウが体当たりをして」っていう風に言います。コクピットの中のアムロですね。
信じられないので少し笑っちゃうんですね。「リュウさんが? 嘘ですよ。リュウさん、嘘ですよ」と。「リュウさん怪我して戦いに出られるはずないでしょう。嫌だな、セイラさん」っていう風に言うんですけども、「嫌だな、セイラさん」って言った瞬間にですね、もう次のカットに切り替わりなんですよ。
あ、すいません。ちょっとこれ分かりにくいんですけども、長セルです。左からですね、右へこういう風にカメラがパンします。こうバーっとパンする。これ長セルで見せるのは、今回の登場人物を全てここに並べてるんですね。当事者全員。左から順にですね、ミライがいて、で、小さくカイがいて、で、ずっとカメラが流れていくと、ここにブライトが立っていて、アムロがいて、で、さらに膝まずくジョブ・ジョン、ここに小さくいて、ここにセイラがいると。で、おまけに、墜落したコアファイターと、墜落したですね、ハモンの乗ってるマゼラトップと。これで全員が、関わり合いがある全員を、このワンカットのカメラのパンの中でですね、ずっと見せてるわけですね。で、背景ではですね、延々子供たちの泣き声がずっと繰り返されています。
で、ジョブ・ジョンがですね、これカメラ横からのカットになって、やっぱりこれ当事者たちをポンと撮ってるわけですね。ジョブ・ジョンが膝まずいて泣いて「僕が殺したも同然です。僕が代わらなければリュウさんだって死なないで」っていう風に嘆くんですね。で、それを彼らが見ている。で、後ろの方に、さっきのフレームで映ってなかった子供たちとフラウ・ボゥがいるっていうですね。これも関係者一同をワンカットに入れてるフレームですね。
で、ここからしばらく、それぞれの悲しみとそれぞれの回想シーンを短くやります。「僕が殺したも同然です。僕が代わらなければ」ってジョブ・ジョンが言ってるんですけど、そこで回想シーンで、リュウがですね、ジョブ・ジョンに無理やり言って、コックピットでですね、入れ替わって、で、リュウがコアファイターで飛び出していたと。これはもう説明的に絶対に必要なやつですが、それが入ります。
で、その後ですね、4人のそれぞれの泣く姿がですね、入りますね。ハヤトが「僕がリュウさんの発進を見てなければ良かったんです」って言った後、ハヤトの回想シーンですね。で、ブライトがですね、「アムロのことで、俺は奴に心配をかけすぎたんだ」って言って、ブリッジの中でそのリュウと言い合いをしたシーンの回想シーンですね。で、ミライは回想シーンなしで、ひたすら泣きじゃくると。泣きじゃくり方も他の人みたいにちょっと理性がある泣き方じゃないんですね。
で、セイラは涙を一生懸命止めようとしてるんですけども、その代わりに後ろでですね、フラウや子供たちが泣き崩れてるんですね。で、セイラはセイラで、階段でですね、なんだろうな、大丈夫だというリュウを信じて行かせてしまったっていうシーンを思い出しています。
で、アムロはですね、泣き崩れて、そのまま地面に手をついてしまうんですね。で、その時に思い出したのは、やっぱり独房での最後のですね、リュウとの会話なんですね。最後のリュウとの会話で「リュウさん大丈夫ですか?」って言った時に、やっぱりリュウの顔が最後まで見れなかった。最後どんな表情で彼が行ったのか見れなかったことっていうのを思い出して泣き崩れています。
で、それに対してジョブ・ジョンがずっと「僕が殺しちゃったんです」って延々泣いてるんですけども、アムロはそれに対してですね、「やめてください、ジョブ・ジョンさん。僕だってそうです。ハヤトもそうかもしれない。みんながみんな」っていう風にわっと泣くと。もうここは本当に状況のクライマックスだから、セリフ劇で持っていくしかないんですね。
で、ついにそれまでですね、一応強気で頑張っていたブライトさんまでが手をついてですね、泣き出してしまうんですね。「アムロの言う通りだ。我々が未熟だったためにリュウを殺した」っていう風に言って泣き崩れてしまって、「勘弁してくれ、リュウ。俺たちこれからどうすりゃいいんだ」っていう風に泣き崩れてしまうんですね。
で、セイラがですね、ようやっと涙を抑えながら「ブライトさん、ジオンを倒すしかない。戦争が終わるしか」っていう風に言うんです。これがほとんどこの話数の終わりのセリフなんですけども、切ないといえば切ないんですね。なんでかって言うと、セイラにとってジオンっていうのは故郷なんですね。だからこの戦争も正義と悪の戦争ではなく、なんかこう故郷と今自分が住んでるところの戦いに巻き込まれてるんですけども、そういうジオンを倒してこの悲しみを終わらせるためには「ジオンを倒すしかない」って自分の口で言っちゃったんですね。
で、それはこれまで戦争とは距離を置いてきたセイラという生き方を根本から変えてしまうと。それまではなんだかんだ言っても、ちょっとお高く止まって見てきたんですけど、結構自分の得なように振る舞ってきて、無責任にも振る舞ってきたセイラっていうのが、この回と次の回ぐらいから責任感を持って動き出すっていう伏線になってるんですね。「ジオンを倒すしかない」っていうのは、なんだろうな。うーん。セイラにしてみれば、それが正義ではないと分かってるんだけど、言うしかなかったんですね。
で、最後のアムロです。「ジオンを倒すしかない。戦争が終わるしか」というセイラのセリフを受けて、「そうさ、そうですよ。それしかないんですよ」と夕焼けに絶叫すると、次は夕焼けで、飛行機が燃えててみんなが立ってて夕日がドーンっていうのがですね、この構図ですね。ホワイトベースの後ろからの構図がドーンと映って、相変わらず調子が悪いエンジンもこう映ってドンってやってて、「それしかないんですよ」っていうこだまみたいなエコーが砂漠に、夕日に響いていくというカットなんですよね。
アムロが絶叫でですね、「ジオンを倒すしかない。戦争が終わるしか」っていうのは真実じゃないんですね。こんなことが起こらないためにはどうすればいいのかって言ったら、別に戦争なんかやめてみんなが逃げちゃえば一番正しいんですけども、でも『機動戦士ガンダム』のテーマである「君は生き延びることができるか」っていうのは、この状況に置かれた人たちは今戦って勝つしかもう脱出方法がないんだっていうのを見せるためにやってるんですね。
だから普通ロボットアニメで、敵を倒し我々が勝つしかないんだっていう時は、もうちょっと憎い敵っていう見せ方をするんですけども、ところがもうランバ・ラルを殺された敵のハモンが出てきて、お互いに意味もなく憎しみ合って殺し合ったっていう回を散々見せた後だから、敵を憎むことなんてお互いできないんですね。もうすでにできないところで、アムロが「それしかない」って語るこの救いようのないセリフっていうのが、『機動戦士ガンダム』のドラマのクライマックスだと思います。
で、ここからですね、ガンダムは次回からですね、マ・クベっていう、視聴者が嫌っても大丈夫なキャラクターが出てきてですね。だってこれまではですね、憎みきれないんですね。その前に出てきたガルマ・ザビだってお坊っちゃんなわけで恋愛もしてるし、次はですね、「ガルマ様の仇」って言って出てくるわけだしですね。で、その後ランバ・ラルだって人間味があるところいっぱい見せてるわけですよ。だから戦争って言っても、お互いに殺し合うしかなくて切なくて、結局お互いに、なんだろうな、すごい大事な人を失って、じゃあどうするのかって言うと、さらに戦うしかないんだっていう絶望的な状況を見せられると。
ところが次はですね「包囲網を破れ」っていう、もう戦っても割と平気なやつで、敵もまた新兵器なんか出してくれちゃうからですね、いくらでも憎めるっていう状況になってですね、中心の回になっていきます。
『機動戦士ガンダム』で「激闘は憎しみ深く」っていうのは、他の回に比べたらですね、例えばガンダム3部作の劇場映画の中で取り上げられなかったりしてですね、割と軽い回なんですけども、実はテレビシリーズのガンダムの連続で考えるとですね、かなり重要な回じゃないかという風に考えて、ちょっと熱い目に4回かけて解説してみました。次回からもうちょっと軽く話していこうと思います。それではまた次回、ガンダム講座でお会いしましょう。バイバイ。
はい、お疲れ様でした。今日の無料はここまでです。第21話「激闘は憎しみ深く」をですね、ちゃんと読み解くとですね、富野監督はこのクラウレ・ハモンというキャラクターをですね、すごい多くの含みというか、いろんな意味を持たせて描こうとしてたのが分かります。
今回の復讐のために集まったジオンの兵隊たちはですね、もちろんラル隊ですね、ラル隊の部下なんですね、息のかかったものなんですけども、描写を見る限りですね、タチ中尉を始めとした今回の作戦参加人たちはですね、全員ハモンさんのために死ぬ覚悟を決めた男たちなんですね。だから「ランバ・ラルの代わりに感謝します」という風にハモンさんが言うんですけども、それは建前なんですけども、実際はですね、多分これ「俺たち本国に帰ってももう見込みないしな」っていうのはもちろんあると思うんですけども、でもそれでも別にここで命がけの作戦をする理由なんてどこにもないわけですね。
で、志願兵ばっかり集めてるのにあれだけの人数が残ったっていうのはですね、その前のホワイトベースの中の白兵戦で大量に死んでるわけですよね。なのに残ってるのはすごいことだと思います。
で、ハモンさんはですね、そんなハモンさん自身の親衛隊みたいな男たちに対してですね、まず最初に「参加してありがとう」という風に礼を言って、で、次に「この作戦に成功したら英雄として本国に帰れます」っていう風に、まず利益を説くんですね。実際の利益を説く。「私のために死ね」ではなくてですね、夢みたいなゴールっていうのをちゃんと提示すると。これはすごい大事なことだと思うんですけども。で、1人1人のですね、手を握って正面から目を見て、それぞれの名前を呼びながら「ありがとう」と言って回るんですよね。これね、アイドルの握手会だったらもう完璧ですね。AKBグループとかあの辺でもですね、センター立ち位置の振る舞いだと思います。そんなの普通できないですよね。
で、そもそもハモンさんはですね、最後の最後まで正体が不明なんですよね。『ガンダム THE ORIGIN』という、後に安彦良和さんが描いた漫画ではですね、酒場の歌手みたいな設定が足されたんですけど、アニメの方ではですね、全くそれが描かれない不思議な人として描かれてる。もう本当に立場が見えない。だからこそ怪しいというか、色っぽいわけなんですけど。
で、おまけに異常に能力値が高いんですよね。来週の第22話の解説でですね、ガンダムに出てきたライバルキャラの格付けっていうのをやるんですけども、作戦の立案能力、指揮能力、戦闘能力、調略能力、いわゆるスパイ能力、カリスマ能力という5つの要素でですね、1点から5点の5段階で評価するというコーナーがあるんですけど、その中ではやってないんですけど、この採点方式でですね、ハモンさんのパラメーターを数値化するとですね、とんでもないことになります。
まず作戦の能力ですね。もうこれは5です。5段階で言うと5、最高です。限られた戦力でホワイトベースを完全に追い詰める作戦を立てたと。もちろんタチ中尉の立案かもしれないんですけど、部下の優れた作戦を聞いてすぐに理解して、それで部下を采配するってのはすごい作戦能力高いと思います。あと指揮能力も5ですね。自分の領分を守りながらですね、完璧な指揮をしていました。
で、あと戦闘能力は4です。さすがにですね、シャアとかランバ・ラル自身には敵わないんだけどもですね、自分自身でマゼラトップですよ。飛行性能が明らかに悪そうなですね、戦車の上の部分が無理やりロケット推進で飛んでるやつに乗りながらですね、ガンダムを追い込んで、空中でホバリングしながらガンダムのランドセルだけを破壊しようとするという、とんでもないことをやってました。
で、あと調略ですね、スパイ能力は5です。ランバ・ラルですらですね、ハモンの本当の心を知らなかったと。多分ね、マ・クベとも渡り合えた能力だと思います。あとはカリスマ性は5ですね。「あなたのためなら死ねます」という男がですね、自分の手下の中に大量にいるという、そういう存在なんですね。
で、こうやってみるとですね、シャアに匹敵するどころかですね、かなりの男性ライバルキャラよりもですね、優秀というか欠点ないんですよね。ランバ・ラルのおまけじゃないです。下手したらランバ・ラルがハモンさんのおまけというかですね。やっぱりね、できる男にはできる嫁がついてるというのの典型例だと思うんですね。
で、アムロはですね、次のハモンのナイトである、つまりハモンが見つけた尽くすべき男であるという可能性があったわけですね。で、この見立てはですね、多分これまでのガンダムファンのイメージとはかけ離れてると思うんですけども、僕はこうやって考えると、また違った見方ができて面白いなと思うようになりました。
今ですね、僕の2026年8月時点での感想は、ハモンさんというのは、アムロに心惹かれた自分がちゃんとランバ・ラルと添い遂げるために、心中するために立てた作戦という風に解釈してるんですけども、こうしてですね、数年前の考察をまたアップグレードするのも楽しい作業ですね。オタクの老後の生き方ではないかと思います。
それではですね、今日の講座はここまでです。次回はですね、第22話「マ・クベ包囲網を破れ!」の動画でお会いしましょう。ではまた来週。バイバイ。
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