オムライス10店舗を売却した安藤隼人氏は、なぜ次の事業にフランチャイズを選んだのか

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概要

オムライス専門店「神田たまごけん」を創業し、10店舗まで広げた会社を2024年末にサーチファンドへ売却した安藤隼人氏(株式会社NAMITO代表取締役)。売却後の次の挑戦として、安藤氏は自社ブランドではなくフランチャイズ(FC)加盟でピラティスやアイケアの事業を始めている。M&A BANKの島袋直樹氏が、オープン当日のピラティス店舗を訪ね、駅まで歩きながら話を聞いた。売却後の事業にFCを選んだ理由、サーチファンドへの売却の実際、売却を考える経営者への助言が主な話題である。

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オープン当日のクラブピラティス埼玉新都心

撮影日は7月23日で、安藤氏が加盟した「クラブピラティス埼玉新都心」のオープン当日だった。スタジオ内で撮影を始めたものの、客が続々と来店したため、場所を移して話を続けている。

店舗の広さは60坪で、家賃は60万円、坪あたり1万円になる。安藤氏はこの家賃を「安い」と評価している。最寄りはJR埼京線の北与野駅で、店舗はその目の前にある。さいたま新都心駅からの距離について、島袋氏が「徒歩5分」と言うのに対し、安藤氏は「7分ぐらいかかる」と慎重だった。実際に歩いて新都心駅に着いた時点で安藤氏は「やっぱ5分でした」と認めたが、すぐに「7分かもしれない」とも付け加えている。

売却後に手がけている事業

売却後にFCで手がけている事業は、現時点で2つだ。この日オープンしたクラブピラティスと、今年1月ごろに池袋で開いた目の整体、つまりアイケアの店舗である。

ほかにも、一緒にやってくれる人がいるのでラーメン屋をやろうという話はあるという。ただし具体的な物件はまだ見つかっておらず、物件情報を常に集めている段階だ。ラーメン屋をやるなら、FC加盟ではなく自前のブランドでやるだろうと安藤氏は話している。

FCを選んだ2つの理由

売却後にFCを選ぶ人は多い。安藤氏がFCを選んだ理由は2つある。

1つ目は時間とリソースの問題だ。安藤氏は会社を売却したが、オムライスの会社には役員として残り、そちらの仕事も続けている。自分で事業を立ち上げるには相当な力が要り、時間もリソースも割かれる。FCなら本部が支援してくれるので、今の状況にはちょうどよいと考えた。島袋氏もこの判断に同意している。

2つ目は、飲食以外の事業をやってみたかったことだ。安藤氏はこれまで飲食しか経験がない。ノウハウもないままピラティスや整体院を自分のブランドで立ち上げるのは難しい。飲食であれば多少の経験があるので自分のブランドでもできると思うが、飲食以外の領域ではFC本部の力を借りた、と安藤氏は説明する。ラーメン屋なら自前、ピラティスやアイケアならFCという使い分けは、この考え方から来ている。

アイケア店舗の数字

池袋のアイケア店舗は、安藤氏によれば今はだいぶ安定してきた。初期投資について島袋氏が3000万円ほどかと尋ねると、安藤氏は1000万円ほどと答えた。

月の売上はまだ200万円に届かない程度で、手元に残る利益は月40〜50万円ほどだという。島袋氏はこの利益率に驚き、それなら2年ほどで投資を回収できると反応した。安藤氏もそれに同意している。店舗は当初ワンオペで運営していたが、現在は2人体制になった。2人でやればもっと売上が出るはずだとして、月100万円ほどの利益を残すことを目指している。

オムライス店を売った理由

島袋氏は、安藤氏の年齢を最近知って驚いたと話す。30代半ば、もしかすると前半かと思っていたが、実際は45歳で、島袋氏より1つ年上だった。

話は「神田たまごけん」を売却した理由に移る。売却時の店舗数は10店舗ほどで、直営だけでなくFC店もあった。FC店は今もある。安藤氏によれば、売却は本来それほど急いで考えていたわけではなかった。しかし相手のサーチファンドが非常に強い関心を示し、提示された金額も想定より高かったため、売却を決めた。

サーチファンドの仕組みと、売り手から見たサーチャー

島袋氏は、サーチファンドは意外と知られていないとして仕組みを説明した。お金はないがM&Aで起業したい人を「サーチャー」と呼ぶ。サーチャーはまず投資家から探索のための資金を出してもらい、買収候補を見つけたら投資家にプレゼンする。投資家が了承すれば買収資金を出資してもらい、場合によっては自分も株を持って会社を買収する。その後はサーチャーが社長として事業を伸ばし、投資家の株を買い戻すか、再びM&Aをするか、IPOを目指す。島袋氏は、経営者の担い手問題を抱えるなかで、そこまでの熱意がある人が経営するので成功確率が高くなる点がファンド側の利点だと見る。

安藤氏もこれに同意する。サーチャーは自分で事業を選ぶので、その事業に熱が入りやすい。外から連れてこられた社長と違い、自分がやりたいと思った事業を経営できる点で、よい形だと安藤氏は評価している。

一方で安藤氏は、売り手の立場から見たサーチャーの負担の大きさも指摘した。サーチャーは売り手とも投資家とも交渉し、仲介会社のような役割まで担う。安藤氏の会社を買ったサーチャーも、大量の資料を自分で作っていたという。売り手に向けては自分をアピールする資料を作り、投資家に向けては、この会社はこうして大きくなる、まだ伸びしろがある、と説明する資料を作っていた。

サーチャーが見つからないという問題もあるという。安藤氏の会社を買ったサーチファンドは、面接をずっと続けているが、サーチャーにふさわしい人物がなかなか見つからないと話していた。島袋氏は、大手企業で働いていて、0から1を生む仕事より1を100に伸ばす仕事が得意な人が向いているのではないかと述べる。創業者が我流で築いたものをきれいに整えるのが得意な人がよい、という点で2人の意見は一致した。

出店エリアの選び方と集客

さいたま新都心駅に着いた2人は、エリアの特徴について話した。新都心にはさいたまスーパーアリーナがあり、クラブピラティスが入るモールは年配の客が多かった。少し先にはイオンモールもある。近くのコクーンシティには別のピラティススタジオが入っているが、安藤氏によれば、埼玉新都心・北与野のエリアにあるピラティススタジオはそこだけだった。隣の大宮まで行くとスタジオが多い。安藤氏は、競合が少ないという観点でこのエリアを選んだと話す。駅の両側で住民の層が分かれているようだという島袋氏の見立てに対し、安藤氏は、両側には距離もあり、住民は北側にかなり集中していると補足した。

オープン前の問い合わせは200件ほどだった。島袋氏は、多いときは400〜500件来ることもあると話し、安藤氏は、途中からウェブ経由の反応が落ちたと振り返る。島袋氏がチラシのポスティングなどアナログな手段のほうがよいかもしれないと言うと、安藤氏もそれに同意した。駅前でのチラシ配りについては、さいたま新都心駅前ではできないため、北与野の駅前でときどき実施していたという。

売却した経営者への助言:最初の1年は派手に動かない

最後に島袋氏は、これから会社を売却する人や売却した人に向けて助言を求めた。

安藤氏は、次に何か事業をやるならFCはスタートとしてよいと考えている。売却を経験した人たちと仲良くなって情報を得ることも勧めた。売却後の最初の1年ほどは派手なことをしないほうがよい、と言われたこともあったという。FCで少しずつ店舗を増やすのであれば、売却で得た資金が一気に溶けることもないだろう、というのが安藤氏の考えだ。投資についても、最初は落ち着いて状況を見るべきだとする。

島袋氏が、やるなら不動産のような手堅いものから始めてもよいかもしれないと言うと、安藤氏も不動産はいくつか購入したと応じた。そのうえで事業については、やりたいことが決まっている人は別として、売却後のことをあまり考えていないなら、怪しい投資話に乗るよりFCで手堅い事業をやるべきだと安藤氏は述べる。安定して利益が出る事業や、手離れのよい事業はFCに多くある、というのが安藤氏の結論である。