フランチャイズの失敗は「業態」より「物件」で決まる 永井隆志氏が語る加盟判断の基準

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概要

M&A BANKの島袋直樹氏が、フランチャイズ(FC)の本部構築と加盟開発に30年ほど関わってきた株式会社絆Labの永井隆志氏に、加盟する側の立場から疑問をぶつける対談の第2回である。島袋氏自身もクラブピラティスの本部を運営しているため、「本部側の感覚に慣れてしまっている」と前置きし、これから加盟を考える人が知りたいであろう論点を用意してきた。

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問いは、どんなブランドに、どの段階で、どこに出店すべきか、そして失敗する加盟店には何が共通するのか、である。永井氏の答えは一貫しており、業態そのものの良し悪しより、物件とオーナー自身の関わり方で勝敗が分かれることが多いというものだった。

「5年でEBITDA1億円」を目指すなら、少数店舗か多店舗か

島袋氏は、FC BANKで紹介したい案件の条件として「5年間でEBITDA1億円を作れる事業」を掲げる。そのうえで、紹介する案件を二つに分けたいと説明した。永井氏がデューデリジェンスを済ませた「公認案件」と、まだ精査していない案件である。

そのうえで島袋氏は簡単な計算を示した。年間EBITDA1億円は、月に直すと約830万円になる。初期投資1,000万円前後のFCは月50万円程度の利益に落ち着くことが多い印象があり、その場合は15〜20店舗が必要になる。月150万円の利益が出る業態なら5〜6店舗、200万〜250万円なら3〜4店舗で済むかもしれない。どちらを選ぶべきか、というのが最初の問いだった。

永井氏の答えは条件付きである。投資額と運営人数が同じなら、店舗数は少ない方がよいに決まっているという。店舗が増えるほど、人材の管理、物件の管理、店舗ごとの本部との交渉、クレーム処理が増えるからだ。しかし実際には条件は揃わない。初期投資1,000万円・2人で回せて月50万円の業態と、1店舗5,000万円・7〜8人で回して月150万〜200万円の業態を比べるのは「非常に難しい」とし、加盟する会社の財務状況などを踏まえて助言し、最終判断は加盟者にしてもらうのがよいと述べた。

高収益の1店舗と、1,000万円の7店舗

永井氏は具体例を二つ挙げた。一つは、現在手伝っているという業態で、1店舗で月5,000万円の売上があり、営業利益が月1,000万円以上、年間で1億2,000万円に達するという。投資額は6,000万〜7,000万円かかる。島袋氏が「6カ月で回収できる」と驚くと、永井氏は「ただし直営店の実績」だと念を押した。

もう一つは、永井氏自身が実際に加盟したというレモネード専門店「Lemonade by LEMONICA」である。1店舗の初期投資は1,000万円、平日は1人・土日は2人という「1.5オペ」で運営し、売上は月300万〜500万円、営業利益率は20%程度だという。

永井氏によれば、この二つにはそれぞれ長所と短所がある。前者は直営で大きな実績があっても、出店した物件が合わなければ、投資額が大きく1店舗しかないため「ここでミスっちゃったらもう後続けられない」。一方、1店舗1,000万円の業態を7店舗出せば、仮に5店舗が黒字で2店舗が赤字でも全体では利益が残り、リスクを分散できる。その観点では多店舗の方がよいという判定になるが、どちらが正解とは言い切れない、というのが永井氏の見方である。

島袋氏はここに、自身の経験から別の懸念を加えた。利益率の高い商売はかえってリスクだと考えており、それだけ儲かるなら競合が参入しやすい。また、少数店舗の好成績は、インバウンド客が集中する特別な立地によるもので、再現性が限られている可能性もある。永井氏もこれに同意し、その高収益業態は直営・加盟を合わせてまだ5店舗ほどで、全店が黒字を続けているものの、地方都市で成功するかはまだ分からないと述べた。すでに地方でも実績がある業態なら安心して加盟できるが、そうでなければ挑戦の要素が残る。

FC本部の3つのフェーズと、それぞれのメリット・デメリット

本部が何店舗をどれだけ運営しているかが判断材料になるのか、という島袋氏の問いに対し、永井氏は本部をコンサルティングする際に必ず伝えている「フェーズ」の考え方を説明した。

第1フェーズは、直営店で実績を作り、それをFCパッケージに仕立てる段階である。第2フェーズでは、まだ直営店の実績しかない段階でパートナーを募り、考え方やビジネスモデルに共感した加盟者に挑戦してもらう。本部の体制に応じて3店舗、5店舗、最大10店舗程度に絞り、本部はこの加盟店に直営店と同じ意識で売上と利益を出すことに集中する。この10店舗が成功すれば、その実績をもとに一気に加盟を募るのが第3フェーズになる。永井氏は本部に対し、第2段階の加盟店で成功しなければ次のフェーズはないので、全面的に支援するよう言い続けているという。

加盟者側から見ると、各段階のメリットは大きく異なる。直営実績すらほとんどなく、理念への共感や、日本ではなかなか取れないブランドの権利を取得したといった段階で加盟する人は、実績がない代わりに本部と密接な関係を築ける。何年経っても先行者としての利点を得られ、好きな場所に出店でき、成功すればドミナント展開も可能になる。

加盟店が一気に増え始めた段階では実績による安心感があるが、希望の場所がすでに他の加盟店に押さえられている可能性がある。マクドナルドやミスタードーナツのように完全に出来上がったブランドなら、銀行の融資を受けやすいのが最大の利点だ。ただし出店できる場所はピンポイントしか残っておらず、永井氏は「空いてるのは鹿児島しかない」といった状況を例に挙げた。伸びしろも既存加盟店の実績の範囲に限られ、ローリスク・ローリターンになる。島袋氏は、X上で出回っていた大阪のマクドナルド店舗の売上データを見て非常に儲かると感じたが、東京に拠点を置く会社が鹿児島に投資するかは考えてしまうと応じ、本部のフェーズによって加盟の考え方を変えるべきだとまとめた。

出店数は商圏人口から逆算する

永井氏は本部側への助言として、ラーメン業態の例を挙げた。完全な飽和市場に後発で参入する以上、どう差別化し、どうブランド化するかを考えたうえで出店数を設定する必要がある。今からラーメンで500店舗を作るのはかなり厳しいという。直営店の実績データから「商圏人口何万人で1店舗」という基準を読み解き、全国展開での出店数を計算し、それに対して募集をかける形を取っているという。

全国展開か、認知のある地域からのドミナントか

島袋氏は、関東で成功したブランドが関西や地方では認知されておらず、うまくいかないケースがあると指摘した。本部自身も「関東で成功したから全国に行ける」と思い込んでいることがあるのではないか、という問いである。

永井氏は、関西では知られているが東京ではほとんど知られていないブランドの場合、まず関西で加盟を募り、徐々に広げるよう勧めていると答えた。それでも本部が一気に全国展開したいと言うなら、例えば1都3県にエリアを限定して募集し、認知のない地域ではプロモーション費用をきちんと予算化して投入するよう求めているという。

その費用を誰が負担するかについて、永井氏の立場は明確である。加盟店に認知づくりの費用を出させるのはおかしく、そのための加盟金でありロイヤルティなのだから、本部の費用でプロモーションすべきだという。島袋氏のクラブピラティスを例に、関西では別のピラティスが人気かもしれず、そうなればアメリカで1位のブランドでも関西では後発になる。後発である以上、本部がプロモーションをかけなければFCの意味がない、と永井氏は説明した。

逆に地方発祥のブランドなら、発祥地の近くの認知されている地域から展開するのが理想だという。ただしほとんどの本部は東京や大阪といった大都市圏で募集したがり、永井氏の助言を無視して進めるケースもある。その場合、本部が広告費をきちんと出さない限り、ほとんどうまくいっていないと永井氏は語った。

ブームで終わる業態でもFCにしてよいのか

次の論点は、タピオカミルクティーのように一気に広がって消えるブランドと、定番として残るブランドの違いである。永井氏は「ブームで終わるものはFCにしてはいけない」とは考えていないという。大事なのは、加盟して投資した分をきちんと回収し、利益が残ったかどうかだ。ブームが3年で終わっても、1年で投資を回収し、残り2年で利益が出たなら、それは一つの成功だとする。

問題になるのは物件契約である。定期借家契約で残りが7年あるような場合、閉店すれば原状回復費がかかり、残り十数カ月分の家賃も発生しうる。永井氏は、こうしたときにその物件を活かして次の業態を提案する役割をFC BANKで担いたいと述べた。例として、商業施設内の10坪の店舗で、最初の1年は大きく話題になり利益も出たが、今は毎月30万円ほどの赤字が続いているケースを挙げる。これを続けるのではなく解約し、その10坪の区画に合う業態を提案すれば、内装工事費を抑えられ、家賃も無駄にしないで済むという。

島袋氏が「居抜きで入れる業態に限るのか」と尋ねると、永井氏は、商業施設では条件がさまざまなので必ずはまるとは限らないが、基本的には居抜きで入れる業態を紹介できればよいと答えた。複数ブランドを持つ飲食本部が、Aブランドが行き詰まったら工事費をあまりかけずにBブランドへ業態転換できる仕組みを用意しておくのが本来は一番よい、とも述べている。業態転換で客は戻るのかという質問には、永井氏は「多い」と答えた。

流行は売上を作り、習慣は利益を作る

ブームで終わる業態と定着する業態の違いについて、永井氏は、ブームで終わるものは結局「流行り」を売っていると説明する。SNSや映えをきっかけに一度は行ってみるが、行ってしまえば「こんな感じか」で終わり、リピートしない。これが一過性の業態だという。一方、お腹が空いたらあそこで食べたくなる、もう一度行きたくなるといった習慣化されたものは定着し、生活習慣に密着しているほど定着しやすい。

永井氏は本部を見る際、例えば現在流行している韓国スイーツのような業態について、3年後、5年後に今の客数を維持できるかを常に考えており、継続できると判断したものしか手伝っていないという。ブームは売上を作るが、定着したものは利益を作る。ブームで大きな売上を作っても3カ月から半年で当初の数分の一に落ちるのはよくあるパターンで、どれだけ損益分岐点が低くても売上が落ちれば立ち行かなくなる、と永井氏は述べた。

島袋氏はここから、客がその店をSNSに投稿しないことが一つの指標になるのではないかと提案した。一過性の業態は体験を共有したい、記念に行くという動機で訪れるが、習慣になった店にはわざわざ投稿しないし、人に紹介すらしないかもしれない。永井氏はこれに同意し、カーブスを例に挙げた。毎日通わないと気が済まない高齢女性たちが、そこでおしゃべりをして帰るのが一日の生活に組み込まれており、離脱は入院するときくらいしかない。安定したストックビジネスであり、これが「最高の形」だと永井氏は評価した。

物件は本部が探すべきか、加盟店が探すべきか

島袋氏によれば、クラブピラティスでは新規オーナーの物件探しを本部がかなり手伝っているが、既存オーナーは自分たちで探すことが多い。業界未経験でも不動産の人脈を持つオーナーもいるという。

永井氏の考えは、物件を見つけるのはあくまで加盟店の仕事だというものだ。自分の店で売上を作るのだから、自分で物件を探し、朝・昼・夜の店前の通行量を自分の目で確認し、そのうえで本部に出店を申請するのがあるべき姿だとする。

ただし例外もある。直営店の実績から商業施設の出店依頼が本部に多く届いている業態では、「大阪の高島屋から出店依頼が来ているが、ここならどうか」と加盟店に提案するのはありだという。それはFCパッケージの魅力の一つにもなる。よくないのは、加盟金を払ったあと本部が物件を探してくれるのをひたすら待つ加盟店である。本部が安易に「物件も紹介します」と言うと、加盟店が待つだけになってしまう。加盟店も本部も探し、見つかった物件で出店すればよいが、自分の店だから自分で懸命に探すという姿勢のない加盟店は成功しないと永井氏は考えている。

トップが関わらない加盟は失敗しやすい

永井氏は、大企業にありがちな失敗パターンも挙げた。担当者を付けて資金だけ出し、あとは任せるという形である。任された担当者は会社員であり、自分の評価を下げたくないため上司には良いことしか報告しない。店舗の問題は放置され、スタッフのモチベーションが下がっていく。永井氏はそうした例を数多く見てきたという。FC BANKが売上を作れる業態を紹介しても、実際に運営するのは加盟店であり、良い業態に加盟したからといって100社すべてが儲かるわけではない。その違いを分けるのは、物件と、会社のトップがビジネスを理解し関わっているかどうか、この二つだと永井氏は述べた。

島袋氏が「失敗しがちなオーナー」の特徴を偏見でもいいから教えてほしいと求めると、永井氏はまず、お金さえ出せば儲けさせてくれるだろうという発想のオーナーは必ず失敗していると答えた。だからこそ契約前に、本部のオーナーと加盟希望者のオーナーが直接会い、聞きたいことを言い合い、パートナーとして認め合ったうえで契約に進むステップを設けている。それでも、面談では「この業態に惚れ込んだ」と言いながら、契約後は部下に任せきりにするオーナーもいる。任せること自体は構わないが、トップと担当責任者のコミュニケーションが取りにくい環境では、ほとんどうまくいかなかったという。

失敗の多くは物件にある

永井氏がもう一つ強調したのは、加盟者が陥りがちな誤解である。失敗すると加盟したFCモデル自体が悪かったと考えがちだが、実際には物件で失敗しているケースが非常に多いという。ピラティスでも、同じ内容を同じレベルのトレーナーで提供していても売上がまったく違うことがあると永井氏は指摘し、島袋氏も強く同意した。

特にアーリーステージの本部は、商圏人口や駅からの距離、競合店の有無などのデータで立地を診断するものの、そのノウハウはまだ検証されていない。永井氏はその例として、約6年前の初期から関わったLemonade by LEMONICAの経験を語った。

当初は全店を路面店で出した。すると5月から10月までは売上が非常によいが、肌寒くなる11月頃には6割ほどまで落ち込んだ。本部はホットレモネードのメニュー開発に力を入れて品数を増やしたが、どれだけ寒くなっても、売上構成でホットがアイスを上回ることはなかった。レモネードはやはりアイスのイメージが強かったのである。

そこで途中から、出店先を商業施設内に限定した。商業施設なら夏は冷房、冬は暖房が効いており、冬は暖房で空気が乾燥して喉が渇く。永井氏によれば、商業施設の初売りの日が、LEMONICAにとってはおそらく最も売れる日だという。島袋氏も、冬のモールは暑くてTシャツになりたくなると応じた。

物件をみんなで検証する場として

最後に島袋氏は、さまざまな業態の物件を「これは良いのか」と一緒に見る機会が大事だとして、サロンでの取り組みを提案した。永井氏も賛同し、店前の通行量を時間単位で取る、インバウンド比率を見る、駅の乗降客数を見る、そして特に重要な視認性を確認する、といった観点でみんなで議論してみるのは非常に面白いと語った。

永井氏が対談を通じて繰り返したのは、業態を選ぶ段階での判断と同じくらい、どこに出すか、誰が本気で関わるかが結果を左右するという点である。立地診断のノウハウは初期の本部ではまだ検証されておらず、LEMONICAの例のように出店を重ねる中で見えてくるものだという。