CIOの国産充電器は中国の工場でどこまで作るのか:試作量産ラインで見えた日本移管の境界線

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概要

電子工作系YouTuberのイチケンがCIOと進める「国産充電器プロジェクト」の第3回である。前回の試験動画には「製品のコンセプトがずれている」「電解コンデンサーが中国製なら国産とは言えない」というコメントが多く寄せられた。イチケンはどちらも妥当な指摘だと受け止めつつ、視聴者の期待とCIO・イチケンが作ろうとしているものの間にずれが広がっていると感じたという。そこで今回は、プロジェクトの「国産」の意味を説明し直したうえで、中国のUSB充電器工場で行われた試作量産の現場を訪ねた。どの工程を中国に残し、どこから日本に移すのかを、CIOの担当者の説明とともに見ていく。

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第1弾の「国産」は全工程の国内製造ではない

イチケンによれば、第1弾の国産充電器は、製品のすべてを日本で作るという意味の国産ではない。これまで中国で行ってきた製造工程の一部を日本に移し、部品もできる限り日本メーカーのものを使う。これが今回の国産充電器の定義だという。

工程の一部しか日本で行わない理由について、イチケンは「一気に全部日本でやろうとすると失敗する可能性が非常に高い」と説明する。コンシューマー向け製品の立ち上げから量産までの流れを日本で一から作るのは難しい。設備もノウハウも海外に移っているからだ。そのため、日本でできる工程から少しずつ国内に戻す方法を選んだ。

部品についても事情は同じである。実績のあるメーカーの部品を、使ったことのないメーカーの部品に替えると、選定も評価もやり直しになる。理想は全面的な切り替えだが、今回だけでそれを実現することはできないとイチケンは認める。日本には世界有数の電解コンデンサーメーカーが多数ある。だから「国産を謳うのに海外メーカーなのか」という違和感はもっともだとしたうえで、半導体や、電解コンデンサーを含む受動部品で国内メーカーの採用を第2弾・第3弾で増やすことをプロジェクトの課題に挙げた。

イチケンは、第1弾の完成をゴールではなくスタートと位置づけている。CIOの社長とも、3年、4年、5年と長く続けるプロジェクトにしたいと話しているという。

前回の熱問題は回路設計と部品選定に原因があった

前回の動画で取り上げた発熱についても、検証と分析の結果が報告された。イチケンによると、熱問題の大部分は放熱設計ではなく、回路設計と部品選定の側にあった。原因はすでに特定しており、解決の糸口も見えているという。

プリプロダクション(試作量産)で何を確かめるのか

訪問時、工場ではプリプロダクションと呼ばれる試作量産が行われていた。本格量産の前に、製品が実際にどう組み立てられるか、組み立て工程そのものに誤りがないかを一気通貫で評価する段階である。ここで本格量産に移れるかどうかを判断する。

CIOの担当者によると、手作業で効率が悪い工程やエラーが起きそうな工程が見つかれば、ジグ(生産を補助する治具)を作ったり、工程を見直したり、作業者を指導したりする。この前にはDVTと呼ばれるフェーズがあり、ケースも含めた状態で製品として問題がないかはすでに確認している。ただし、それを実際に生産できるかどうかは試作量産をしないと分からない。担当者は、理論上は完成度の高い設計でも、試作量産で生産効率が上がらず作れないケースは珍しくないと話す。ボトルネックをこの段階で潰していくのが、この工程の意味だという。

今回はもう一つ、どこまでを中国で作り、どこからを日本へ移すかを見極めることも大きな目的になっている。試作量産は本番の金型ではなく試作型で、まず100台を作る。問題がなければ材料を改めて手配し、本格量産に入る。日本側でも、移管後に同じように試作量産を行い、問題がないことを確かめてから本格量産へ進む想定だと担当者は説明した。

実装工程:部品調達が中国にある限り移管は難しい

ラインに流れてくる基板には、SMT(表面実装)部品がすでに載り、リフローを通過している。ここからは、SMTでは実装できない大型部品などのスルーホール部品を手作業で挿し、はんだ付けの工程に通していく。

担当者は、この段階になると部品一つひとつの品質が問題になると話す。部品調達を中国で行っている以上、この工程を日本に持っていくのは難しいという。SMTも中国で行っている。将来SMTを日本でできるようになれば、調達も日本に寄せ、はんだ実装まで国内で進められる可能性はある。しかし部品を輸入すればするほど一つひとつに輸送費がかかり、効率も悪い。各サプライヤーからの調達の過半数を国内で実現できれば、この工程から移管できるだろうというのが担当者の見立てだ。イチケンは「ここまで日本に持ってこられれば、胸を張って国産と言える」としつつ、今回そこまでできていないのは悔しいと述べた。

日本のEMS(受託製造)企業でもこうした工程を手がける会社はある。ただ担当者によれば、充電器のようなコンシューマー向け製品はあまり扱っておらず、日本では高コスト・高品質の製品が多い。数量と効率が求められる製品ほど中国に移ってきたのが現状だという。

ジグも、プリプロダクションの段階ではまだ揃っていない。ある程度見込めるものは事前に用意したが、明らかに非効率な作業については、ここから新たにジグを作り、マスプロダクション(本格量産)に備える流れだという。

検査工程:人の目による外観検査と自動試験装置

はんだ付けの後は、作業者が目視で外観を検査する。はんだの不良などを見逃すと最終的に事故につながりかねないため、一つずつ必ず確認し、問題があれば弾いているという。

SMT部分は機械で光学検査を行っている。一方、手作業で付けた部品については人の目で見るしかないと担当者は話す。完全に自動化するには設備投資が必要になるが、一つの製品にそれほど長い寿命があるわけではないため、投資が見合わない。だからこそ後工程で確認を重ね、受け入れ検査や信頼性テストも行って品質を担保する。充電器メーカーではこうした流れが多いという。

続く工程にはATE(自動試験装置)がある。ケーブルをつなぐと、充電プロトコルごとに自動でチェックが走る。PD規格に適合しているか、規定どおりの電圧が出るかを確かめ、問題があればここで弾く。検査は全数に対して行う。基板の状態で日本へ運ぶ場合、日本にもこの装置が必要になる。担当者は、大きな投資になるうえ、1台で見られる台数が限られるため、需要に応じて何台置くかを考えなければならず、先行投資は避けられないと話した。

仕上げ工程:シート貼付とシリコン充填

ATEの後は、熱伝導シートを貼り、絶縁シートを間に挟む。これもほとんどが手作業である。ジグで位置を固定することはあっても、自動化は現実的でないと担当者は言う。シートの形は製品ごとに違い、AC充電器は特にカスタマイズが多いため、工程すべてを自動化するのは難しい。

ラインの上部には作業手順書(SOP)が掲示されている。各工程はこの手順書に基づいて指導され、手順そのものに不備があれば手順書を直し、手順どおりに作業していなければ教育する。試作量産は作業手順を磨く機会でもあるという。

次にシリコンを充填する工程がある。担当者によると、充填には別の効果も一定程度あるが、今回は部品を固定する目的のほうが強い。この段階で充電器の中身はほぼ完成する。

境界線はTFT液晶の取り付け

最後に液晶を取り付け、ケースに収める。今回の製品にはTFT液晶のモニターが付く。担当者は、TFT液晶を付けたむき出しの状態で輸送すると、揺れで割れやすくなると指摘する。そのため液晶の取り付けは必ず国内で行う必要があり、ここを中国製と日本製の線引きにする考えだという。

具体的には、液晶が付いていない充電器の中身までを中国で製造する。その中身と液晶、ケースを日本に運び、後工程と呼ばれる最終組み立てを日本で行う。部品実装とはんだ付けは中国で終わっており、部品自体の性能も中国側で確認する。日本では組み立てた完成品をチェックする、という分担である。

前段の工程まで日本に移すと、部品品質の責任分界点が問題になると担当者は説明する。まず後工程を日本で担い、不具合がほとんどなく受け入れて問題ないことを実績として確かめる。そのうえで部品の品質責任について相談し、さらに部品調達も一緒に進められないかと踏み込んでいく。工程全体の70〜80%はすでに中国で終わっており、残り約20%を日本に任せるのがファーストステップだという。担当者も、期待にすべて応えたい気持ちは強いと話す。ただ、経営面でも、取り組みを継続する面でも、できることから着実に進めなければ1年、2年、3年、5年と続くプロジェクトにはならないと述べた。

日本に持ち込む設備とトレーサビリティ

ケースに詰めた後も中身の評価は日本で行う必要がある。蓋を機械で締めて外れないようにする工程も日本で行うため、その機材を用意しなければならない。日本に持ち込む設備は、かなり大掛かりになるとイチケンと担当者は話した。

MES(製造実行システム)とQRコードによる管理も日本に持ち込む。部品ごとに貼られたQRコードと製品のQRコードをひも付け、どこまでを中国で作り、どこからを日本で作ったのか、どの部品がいつどこで使われたのかを追跡できるようにする。日本と中国を一気通貫で扱える仕組みを作り上げるという。

イチケンは、CIOの品質を不安視するコメントが以前からあり、今もときどき見かけると切り出した。担当者は、そうした声を受けて取り組んでいるのがまさにこの仕組みだと答えた。品質を改善するには、いつ、誰が、何の作業をし、いつ調達したどの部品で問題が起きたのかを特定しなければ、改善のサイクルが回らない。MESによるトレーサビリティに加え、NovaPortの第2世代からは設計全体の見直しも試みており、会社として品質により重きを置く方向へ移っているという。

全数エージングテストがボトルネック

ラインの後方には、多数の充電器を収めたエージング試験機がある。担当者によると、最大負荷で4時間以上通電させ続け、問題がないかを2往復ほど確認する。問題がなければ市場に出せると判断する。これも全数検査である。

試験機1台で見られるのは120台ほどで、フルに使うと丸1日かかる。今はこの工程が生産効率のボトルネックになっているという。国産充電器ではこの装置を日本で購入し、日本の工場に置いてテストする。複数台を置かなければ回らない。

省くことはできなくはないが、省けば、最大負荷をかけたときに通電しない個体や、熱で部品が壊れる個体を見極められない。そのためCIOは、この工程を省けない工程として組み込んでいると担当者は話す。こだわって選んでくれる利用者のために、ここを担保するのはメーカーの責任だという考えだ。イチケンは、こうしたテストが行われていると知れたのは大きな収穫だと述べた。

なお、エージングは単ポートに最大負荷をかける試験である。各ポートが通電するかは、別の工程で改めて確認する。

エージング後の確認と出荷前検査

エージングを終えた製品は再び通電確認を受ける。さらに一部を抜き取って落下テストを行い、衝撃を与えたときに内部の部品が揺れたり崩れたりしないか、カラカラと鳴らないかを確かめる。

その後、高電圧をかけてパスするかを見る試験と、先ほどのATEを簡易にした装置によるプロトコルの再確認がある。通電確認は全体で3工程ほど行っているという。担当者は、ここまで通れば電気的な動作としては「パーフェクト」だと答えた。

これとは別に、OQAと呼ばれる出荷前検査で、パッケージングを終えた製品を抜き取って再確認している。従来の製品では、工場で全数検査したものを、CIO中国という会社が改めて一つずつ通電確認していた。国産充電器ではこれを日本で行う。ただし、出荷前の基板状態での通電確認は、CIO中国で同様に行うという。

外観検査と限度見本、日本で組み立てる利点

電気的な試験が終わると、外観の検査に移る。前の工程で付いた指紋を拭き取り、液晶部分に傷や汚れがないかを確認する。

CIOの充電器は表面のマット加工が特徴だが、新しい国産USB充電器は正面が艶ありで、傷が付きやすいのではないかとイチケンは尋ねた。担当者は、コーティングも検討しているとしたうえで、出荷前の段階ですでに傷が付いている個体があると認めた。プリプロダクションで、どこまでがOKでどこからがNGかを仕分けた「限度見本」を作っている。それをもとに、基準を満たすにはどういう調達で、どの程度の歩留まりを見込む必要があるかを工場と合意し始めているという。

表面の傷は最も難しい部分ではないかというイチケンの問いに、担当者は同意した。そのうえで、組み立てを日本で行うことに期待を示した。中国では基準や手順が確立されていないと傷をなかなか見抜けない。一方、日本の作業者は細かいところに目が届き、「こうしたほうがいいのではないか」という声が自発的に出てくる。そこから改善が進む可能性もあり、それが日本で作る大きなメリットだという。ただ、それを生かすにはまず形にするところから始める必要があると話した。

CIOロゴが剥がれる問題への対策

最終工程では、ケースに接着剤でプレートを貼り付け、外観を検査した後、ジグを使ってCIOのロゴを貼り付ける。

コメントでたまに指摘される「ロゴのIの部分が剥がれる」問題について、担当者は原因と対策を説明した。ロゴはくぼみの中に貼られたアルミの金属プレートである。字幕からの推定になるが、磁力の強いものが近くにあると外れやすく、熱で粘着力が落ちることも剥がれの要因だという。対策として、くぼみを少し深くする金型の変更を進めている。そうすれば摩擦などでも取れにくくなる。また、現在はジグが垂直に平らに押し付けているが、間に弾力のある柔らかい素材を挟み、ロゴをしっかり圧着できるようにする。トレードマークが簡単に取れるのはブランドとして致命的なので、最優先で改善すべき点だと担当者は述べた。既存製品でも改善を進めているが、まだ余地はあると認めている。

日本での立ち上げはこれから

今回の国産充電器では、基板、ケース、パッケージを別々に日本へ送る。材料が揃い次第、日本で後工程の生産ラインを立ち上げ、パッケージングまでを日本で行う計画である。

担当者は、理論上はどこから移管できるかは分かっているとしつつ、現場で引き継ぎをしながら生産ラインを組むと、おそらく何らかのトラブルが起きるだろうと見込んでいる。イチケンも、期待と違う部分はあるかもしれないが長い目で見てほしいと呼びかけ、日本側の工程がどう立ち上がるかは今後のプロジェクトで明らかになるとして動画を締めくくった。