象使いの資格とデング出血熱を経た起業家が語る、Roomboxのエフ・コードへの85%売却

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概要

M&A BANKのMC・島袋直樹氏が迎えたのは、不動産会社向けSNSマーケティング支援を手がける株式会社Roomboxの代表、鶴巻禎氏である。鶴巻氏は2026年4月、東証グロース上場のエフ・コードに自社株式の85%を売却し、その後も社長として事業を続けている。前半ではRoomboxの成り立ちと売却の判断を、後半では島袋氏が「かなりの変態」と紹介した学生時代の旅の経験を聞いている。

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DeNAのゲーム開発から、宅建取得と不動産仲介へ

鶴巻氏は広島出身で、本人いわく熱心なカープファンである。一橋大学法学部に進み、当初は弁護士を目指していた。周囲には弁護士や銀行に進む人が多かったが、「若干天邪鬼なところがある」ため、あえてDeNAに入社した。DeNAでは約5年間ゲーム開発に携わった。入社の時点では「旅人になりたい」という思いも強かったという。

5年ほど働くうちに、まったく違うことをやりたくなった。そこで「とりあえず宅建を受けてみて、受かったら不動産で起業しよう」と考え、実際に不動産業で起業した。

鶴巻氏によれば、DeNAは論理やロジックを非常に重んじる環境だった。だからこそ、その真逆のことをやりたかったという。起業後もいきなりマーケティング支援やITに向かったのではない。まず宅建を取り、不動産会社で修行のように働かせてもらいながら、自ら不動産仲介を手がけた。その中で、ポータルサイト経由の集客は厳しいと感じた。この時代ならSNSだろうと考えて自社でSNS集客を試したところ、うまくいった。この経験をもとに、他社の支援へと事業を広げていった。

「内見女子」:広告なしで月2,000件の問い合わせ

自社集客のために立ち上げたのが「内見女子」である。鶴巻氏によれば、4〜5年前からSNSでは内見動画が流行しており、内見女子は「一番最初というわけではないが」、当時盛り上がっていたアカウントの一つだった。広告を使わず、Instagramの1アカウントだけで月2,000件ほどの問い合わせを得るところまで伸ばしたという。

仕組みは名前の通りである。女性が実際にマンションを訪れ、部屋の中を紹介する。その部屋を気に入った人や、この会社に部屋を探してほしいと思った人が問い合わせてくる。島袋氏が「渋谷区のこのマンションの家賃はいくらで、と見せるような形か」と確認すると、鶴巻氏は「まさにそう」と答えた。自社のために作った集客手法を他の不動産会社にも提供し、マーケティング支援会社へと転じたのは約3年前のことである。

売却を決めた理由:紹介だけで受けきれない状態

島袋氏は、事業がまだ伸びそうな段階でなぜM&Aを決めたのかと尋ねた。鶴巻氏が挙げた背景は、現在の取引先に自社の新規営業で獲得した会社が一社もなく、すべてが紹介経由だという点である。それでも受けきれないほどの紹介が来ており、対応する余力がほとんどない、かなりのリソース不足の状態だった。

売却先の候補は多かった。その中でエフ・コードを選んだのは、グループ会社が多く、マーケティングの機能も幅広く持っているからだ。グループに入れば、リソース不足を解消できる。加えて、エフ・コード自体がM&Aに強い。Roomboxもグループ入りをきっかけに、同じように強化を進めたいと考えた。

島袋氏はこれを、「内見女子のようなプロダクトで顧客を開拓でき、成果も出るので、広告や他のSNSも頼みたいという相談は来る。ただ、それをさばく体制づくりは別の話」と言い換えた。鶴巻氏もその通りだと応じている。同じグループで、以前M&A BANKに出演したクラフトの辻氏やラグナロの鉄氏(いずれも字幕の聞き取りに基づく表記)といったプロに仕事を頼めることは大きい、と鶴巻氏は語った。ちょうどその週にも、彼らと打ち合わせや飲み会をしていたという。

10社以上と面談、LOIは3〜4社

売却先探しは順調だった。探し始めてから多くの会社が関心を示し、面談した相手は10社以上にのぼる。LOI(意向表明書)の段階では3〜4社が残っていたと鶴巻氏は記憶している。ある程度希望に沿った形で進められたという。

その中からエフ・コードを選んだ決め手の一つは、笑いを交えながらの話だが、M&A BANKの動画だったという。辻氏や鉄氏が出演した回で、2人がグループ入り後に楽しそうに働き、入って良かったと話していた。売却後にどうなるかはイメージしにくい。だからこそ、実際に入った人の様子を見て「すごく良さそうだ」と感じたことが大きかった。この話はエフ・コードの工藤社長にも伝えたそうだ。

グループ入りから2か月が経った時点で、鶴巻氏は「入ってみるまでは怖かったが、今のところめちゃくちゃやりやすい」と話す。周囲の経営者たちもやりやすそうにしているという。前日に飲みに行った鉄氏について、島袋氏は、本人が「ネオニート」と称していたと明かした。鶴巻氏は、仕事をきちんとこなしたうえで人生を楽しむその姿を「かっこいい」と評している。グループ会社の社長同士の横のつながりについても、エフ・コード側が積極的に場を設けてくれるため、連携しやすいと述べた。

15%を残した理由

残る15%の株式について、鶴巻氏は、将来どこかのタイミングで譲渡する2段階の形になっていると説明した。ただし、すぐに売りたいわけではなく、しばらくは経営を続けるつもりだという。

株式の一部を手元に残したかった理由は二つある。一つは、紹介で広がってきた事業であるため、現在の支援先への義理を強く感じており、離脱を前提にしていないこと。もう一つは番組の後半で語られた。島袋氏が「鶴巻さんは極端だから、全部売ったらやる気がなくなるのでは」と指摘すると、鶴巻氏は、それが85%にした理由としてやはり大きいと認めている。

旅の原点:1か国につき1つ、文化に深く染まる

ここから島袋氏は「本題」として旅の話に移った。鶴巻氏は大学時代に旅に強い関心を持った。本人は好奇心が強かったのだろうと振り返る。変わった体験をしたいという欲が強く、「1か国につき1つ、強烈にその文化に染まる」体験を求めていたという。

旅の進め方も独特である。次に行く国は事前に決めない。現地に入ったらいろいろな人と飲み、「この辺でできる面白いことはないか」と聞いて回る。そして、その中で一番過激そうなことをやる。語学については、各国でその国の言葉をある程度勉強し、接客ができる程度までは身につけていたという。英語を話せる人はどこの国にもある程度いる、とも付け加えた。

タイ:ストレッチ系のタイ古式マッサージの資格

最初の国はタイである。タイ古式マッサージで開業を目指す人たちと一緒に、約1か月修行して資格を取った。タイ古式マッサージにも足つぼを強く押すタイプがあるが、鶴巻氏が学んだのは、2人1組でストレッチをしながら施術するタイプだという。島袋氏に「今もできるか」と聞かれると、「できます。疲れたら言ってください」と答えた。

ラオス:ジャングルで象と暮らし、象使いの資格を取る

ラオスでは、2〜3週間ジャングルで象と暮らし、象使いの資格を取った。最初にホワイトボードで、ラオス語による象への指示の出し方を教わる。「結構ちゃんとしている」と思ったのも束の間、あとは「行ってこい」とばかりにジャングルに放り出される。昼食もないまま、夜まで象と2人きりで過ごしたという。

象を走らせるには、背に乗って足をパタパタさせながら「パイパイパイ」と声をかける。鶴巻氏によれば、象は「めちゃめちゃ速い」。振り落とされそうになり、命がけだった。それでも、ジャングルの中を象と2人で駆けていく感覚は「百獣の王」のようで、「最高の体験」だったと振り返る。

インド:アシュラムでの1か月のヨガ修行

インドでは、北部のヨガの聖地と呼ばれる地域にあるアシュラム(修行所)で、1か月ヨガの修行をした。毎日ヴィーガンの精進料理のような食事をとり、日本でヨガの先生をしている女性たちとともに、ひたすら呼吸の修行を続けたという。島袋氏が「そこらのヨガインストラクターより詳しいのでは」と聞くと、鶴巻氏は「そうかもしれない」と答えた。ジムやヨガ教室で「インドではこう言われたけどな」と思うことがあるかもしれないが、それは「めっちゃ嫌なやつ」だと笑っている。

中米:毎晩テキーラ1本、何度か殺されかける

本人は「あまり面白くないかもしれない」と前置きしたうえで、メキシコ、ニカラグア、コスタリカなど中米の話もした。特にニカラグアでは、現地の人たちが一晩でテキーラを1本空けるような飲み方をする。鶴巻氏はそれを毎日飲まされて記憶をなくし、気づくと現地の人の家の門の前にいて、殺されそうになる、ということが何度かあったという。本人は「これはちょっと良くなかった」と話している。

デング出血熱:インドで発症し、バングラデシュで入院

最も過酷だったのは病気の体験である。何度も訪れるほど好きな国だというバングラデシュの話として始まったが、鶴巻氏は途中で「正確にはインドでかかった」と訂正した。

ある朝インドで目を覚ますと、鼻と口から出た血で枕が真っ赤になっていた。ちょうど、日本語を話せるバングラデシュ人の知人がおり、バングラデシュへ行く予定もあったため、出血が続く中でバングラデシュに向かった。現地で診察を受けると、デング熱の中でも重症型のデング出血熱と診断された。致死率は10%か20%か忘れたが、かなりの確率で死ぬ病気だと鶴巻氏は語る。

40度を超える熱が続いた。医療のレベルも高くはなかったという。毎日停電し、看護師が注射を打ち間違えて点滴に自分の血が逆流してたまる。蚊だらけのベッドで寝る。そんな環境だった。それでも当時は旅を続けたかった。「ギリギリを攻めたい」という気持ちがとにかく強かったと振り返る。

ちなみに、鶴巻氏の妻はDeNAの同期で、1人でインドに20回行っている人だという。鶴巻氏は、似た属性だから相性がいいのかもしれないと話した。島袋氏は、見た目は普通の人に見えるが、M&A BANKの出演者の中で「一番変態」だと評した。

0か100かの切り替え

こうした旅の経験を持ちながら、なぜ日本できちんと事業を営めているのか。鶴巻氏は自分を、ちゃんとするときは振り切ってちゃんとするタイプだと説明する。今はお酒をまったく飲まないという。島袋氏の「0か100か」という表現にも「本当にその通り」と同意した。先に触れた、全部を売るとやる気がなくなりかねないので85%にとどめた、という話もこの性格とつながっている。

次の挑戦:不動産事業そのものと不動産投資

今後について鶴巻氏は、不動産会社への支援を拡大しつつ、不動産事業そのものにもう一度本格的に取り組みたいと語った。プロが大勢いる分野なので簡単ではないと承知しているが、まったく違うことにどっぷり浸かりたいという欲があるという。島袋氏に「売却で得たお金を不動産につぎ込むのでは」と聞かれると、「おっしゃる通り」と認め、不動産投資にフルで取り組むことはもう決めていると答えた。自分でやっていなければ、会社として支援するのも難しい。だから本業にもつながる、という考えである。

告知として鶴巻氏は、次の点を挙げた。マーケティングに困っている不動産会社からの相談を受け付けていること。人手が全然足りていないため、不動産業界やマーケティング支援に関心のある人材を求めていること。不動産会社や、不動産会社向けにサービスを提供する会社とはM&Aも含めて協業したいこと。そして、M&Aを経た人たちの不動産投資の相談にも乗れることである。

投資の相談は2種類に対応できるという。一つは、物件選びや、資産性のある住宅に自分で住みながら投資も兼ねる前提でどうローンを組むか、といった個人の投資の助言。もう一つは、不動産事業を始めたい人に対し、どうすると失敗しやすく、どうするとうまくいきやすいかを、多くの会社を見てきた経験から助言・支援することだ。「この会社と組めば絶対成功する」とは言いにくいとしつつ、組むべき相手の傾向はかなり見えているという。

なぜ株や債券ではなく、まず不動産なのか

島袋氏は、売却益の運用には株や債券もあるのに、なぜ不動産なのかと尋ねた。鶴巻氏は、インフレの話もよく言われるが、一番大きいのはレバレッジだと答えた。自己資金を一部入れ、その何倍もの借入をして物件を買い、利回りを得る。残りの資金は株や債券などで運用すればよい。だから、まず不動産にいくら入れればどこまでできるかを決め、そのうえで残りを他に回す順番でいいのではないか、というのが鶴巻氏の考えである。これは日本国内の不動産を想定した話だ。

最後に島袋氏が「手元に5億円あれば、どれくらいレバレッジをかけられるか」と聞いた。鶴巻氏は具体的な倍率を示さなかった。年齢や家族構成によって大きく変わるからだという。周囲のM&A経験者を見ていると、子どもがいる場合は子ども1人につき1つ法人を作り、その法人で不動産を買い増していくパターンが多い。一方、とにかく自分の資産を増やしたいなら、そうした設計とは関係なく利益を追う形になる。やり方はニーズ次第だ、と鶴巻氏は話を締めくくった。