霧島神宮駅前はなぜ経営者の合宿地になり得るのか:駅舎と倉庫の再生、黒酢の壺畑、伊佐米の田んぼを歩く

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概要

M&A BANKの鹿児島ロケの前半では、MCの島袋直樹氏が霧島神宮駅前を訪れる。島袋氏は冒頭で、この動画を見ている経営者に向けて「役員で是非霧島神宮駅前に来てほしい」と呼びかける。理由として挙げたのは、霧島神宮に近く「運気がいい」こと、そして駅前を再開発している事業者がとてもおしゃれなリノベーションを進めていることだ。JR九州の高級寝台列車「ななつ星」もこの駅に停まり、周辺を1時間ほど散策する時間が設けられていると島袋氏は紹介する。それでも「これ誰も気づいてないんですよ、まだ」というのが島袋氏の見立てである。

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動画はその後、駅前再生を手がける株式会社IFOOの八万氏の案内で駅舎や宿泊施設「霞燦(かさん)」を見て回る。続いて福山町の黒酢メーカー「桷志田(かくいだ)」、最後に伊佐市の農業生産法人「やまびこの郷」の田んぼを訪ねる。

JR九州のプロジェクトで駅舎を丸ごと改装

八万氏は自社について、「時間の中に埋もれた価値に光を当てる」ことを経営理念に町の再生を行う会社だと説明する。霧島では霧島神宮駅をリノベーションして拠点とし、町を再生するプロジェクトを立ち上げている。

駅はJR九州の所有である。八万氏によれば、JR九州の「ドリームステーションプロジェクト」という、駅を活用して賑わいを作る事業者を募る企画に応募し、認定を受けて取り組みが始まった。駅舎の内部はすべて同社がリニューアルした。駅の中には鳥居があり、その先をまっすぐ進むと霧島神宮の御神殿がある。

島袋氏は駅の中に鳥居がある光景を初めて見たと驚き、外に出ると蒸し暑いのに駅舎の中には「いい気が流れる」と話す。八万氏も、霧島に来ると何かが変わるとよく言われると応じる。駅前からは天孫降臨の地とされる高千穂の峰が山と山の間に見え、この日は曇りで薄っすら見える程度だった。そばを流れる川は清らかな流れで、四神の青龍が通る道だと言われることもあるという。

始まりは近所のおばちゃんの一言

島袋氏が、再生プロジェクトでまず何を考えるのかを尋ねると、八万氏は最初から大がかりな計画を描いていたわけではないと答えた。八万氏はこの地で生まれ、8歳まで暮らした後、霧島市の中心地である旧国分市に移って小中学校に通い、高校からは鹿児島市内に出ている。

きっかけは、幼い頃に商店街で開かれていた七夕祭りをもう一度見たいという思いだった。祭りを復活させる活動をしていると、八万氏の幼い頃を覚えていた近所のおばちゃんから、ここに帰っておいで、昔の賑わいを作ってちょうだい、と声をかけられた。そこで「少しスイッチが入った」と八万氏は振り返る。

そこから、まず駅舎を活用して人の流れを作り、周辺で長年放置され誰も使っていなかった建物を買い取ってリノベーションし、商業施設として再生していった。島袋氏が買収価格を尋ねると、八万氏は田舎なので鹿児島市内とはまったく違い高くはなかったと答え、そこに新しい価値を加えて「アップサイクル」するのだと説明した。

スレート倉庫を残して建てたレストラン、カフェ、サウナ

駅前の施設は、もともとはただのスレート葺きの倉庫だった。八万氏は昔の佇まいを残したいと考え、スレートの骨組みはそのままにして、その内側に木造の建物を建てた。中にはイタリアンレストランとカフェが入り、奥にはフィンランド式の本格的なサウナがある。

島袋氏がサウナの料金を尋ねると、貸し切り制で6名2時間2万円という答えだった。島袋氏は、6人で割れば1人3,000円ちょっとだと計算して感心する。隣のレストランから料理を注文できるのかという質問に対しては、現時点ではサウナとのセットプランにはしていないという。

一行は施設内でかき氷を食べた。かき氷に使う氷は、スタッフが毎日天然水をタンクに汲んで作っているもので、まろやかな味わいだという。島袋氏は、鹿児島を訪れる人は市内に泊まって天文館で飲むことが多いが、1泊だけでも霧島に泊まると鹿児島の違う顔が見える、と感想を述べている。

宿泊客はこの駅前施設を自由に使える。宿泊棟は徒歩5分ほどの場所にある。八万氏は、夜は星がとてもきれいで、朝は鳥のさえずりが気持ちいいと話す。さらに、電車が枕木を叩く「ガタンゴトン」という音は母親のお腹の中で聞く胎児の心音に似ているらしく、電車で眠くなるのはそのためだという話も紹介した。

62歳の八万氏が語る「天命」と利益

移動の合間に、44歳の島袋氏が62歳の八万氏に人生の先輩として質問する。島袋氏は30代と40代で仕事への向き合い方が変わったと感じており、50代、60代では価値観がどう変わるのかを知りたかったという。

八万氏は、がむしゃらにやる段階から、自分にできることの「天命」を知る段階に移ったと答えた。論語の「五十にして天命を知る」を引きつつ、以前は収益を上げるためだけに動くこともあったと振り返る。会社を成り立たせるために収益はもちろん大切だが、今はやりたいことがはっきりしてきたという。島袋氏が利益追求型ではないという意味かと確かめると、八万氏は利益の追求は最低限に置き、「記憶に残ることをやりたい」と答えた。そのうえで、この霧島のプロジェクトに出会い、やり切りたいという気持ちが固まったこと、60歳を過ぎてこの仕事をしっかり形にしたいと考えていることを語った。

Wiz山崎氏とのつながり

八万氏とWizの山崎俊氏をつないだのは、バスケットボールチーム鹿児島レブナイズ関係者の宮路氏である。宮路氏が山崎氏に、面白い宿泊施設があるから行ってみるといいと勧めた。それが、八万氏の会社が鹿児島市内で運営する宿泊施設だった。そこを訪れた山崎氏から、このクオリティと考え方を全国展開しないかという提案があった。八万氏は、今は霧島でこういう取り組みをしているので、やるならここで一緒にやろうと返し、Wizとのプロジェクトが始まったという。

島袋氏が山崎氏の「巻き込み力」に触れると、八万氏は、最初は自分が巻き込んだつもりでいたが実は自分の方が巻き込まれていた、と笑いながら話した。

霧島の魅力と「埋もれた価値」

八万氏が考える霧島の魅力は、霧島連山にある霧島神宮というパワースポットと、それを中心とした火山の恵みである。天孫降臨の地でもあり、新鮮な食材が豊富で、水も空気もきれいだという。そして、時間の中に埋もれた価値がたくさんあり、光を当てるべき場所が多いことを挙げた。

理念について改めて尋ねられると、八万氏は、幼い頃にはたくさんあった良いものが、時間の流れのなかで良くも悪くも埋もれていったと説明する。それにもう一度光を当てれば、もっと面白い町になるのではないかという考えだ。例として、築100年近い石蔵がひとつの役目を終えて放置されていたが、それをアップサイクルして新しい価値に変えていることを挙げた。

この場所も当初は誰も来ないような寂れた場所だった。八万氏が香港の投資家・事業家を案内した際、最初は「ここに人が来るイメージがまったく湧かない」と言われた。その人物が再訪したときには、どんよりしていた空気感が変わり、いい気が流れるようになったと驚いていたという。

宿泊施設「霞燦」の客室

宿泊施設「霞燦」には、お茶を点てて一服できる和の空間がある。部屋によってはサウナ、温泉、水風呂、外気浴スペースを備えている。山崎氏と事業展開していく計画もあるという。料金は1人あたりおおむね4万〜5万円程度と説明されている。

2階の客室にはサウナが付いていない。2階に泊まる客は離れの浴場を使う仕組みで、そこには硫黄の匂いがする温泉と水風呂、サウナがある。ほかにも、にごり湯ではない透明な湯の客室や、昼寝ができるロフト付きの客室、デイベッドのようなくつろぎスペースのある客室が紹介された。島袋氏は「ここに泊まりたい」と繰り返していた。

桷志田:屋外の壺で3年以上熟成させる黒酢

次に訪れたのは、島袋氏が鹿児島で非常に有名な黒酢ブランドと紹介する桷志田である。案内役の担当者によると、ブランド名は江戸時代に上級武士が田んぼを隠して米を作っていた「隠し田」に由来する。鹿児島弁で「隠し田」が訛って「かくいだ」になったという。敷地内の湧き水は大河ドラマ「西郷どん」にも登場したもので、第1工場ではこの水を使っている。

担当者は、創業当初から本物の黒酢を作りたいという思いで原料にこだわってきたと話す。黒酢は玄米、麹、水から作られるが、同社の黒酢はすべて有機の玄米で仕込んでいる。福山町は黒酢発祥の地ともいわれ、すべて屋外の壺で作る。時間がかかるため、同社では出荷までに3年以上熟成させている。熟成が進むとうま味成分であるアミノ酸が増え、コクのある黒酢になる。担当者は、3年以上熟成させてから出荷する製法は他ではまずやらないだろうと話す。また、麹作りのスペシャリストと呼ばれた職人(担当者は「赤池さん」という名前を挙げている)の手仕事を受け継いでいることも特徴として挙げた。

仕込みは春と秋の年2回だけである。屋外で作るため、その時期の気温でないと黒酢がうまく育たないという。福山の伝統製法では、壺に蒸した玄米、麹、水を入れた後、職人が手作業で壺の水面に麹を撒く。これを「振り麹」と呼ぶ。原料の麹は下に沈んでいるが、振り麹は水面に浮くように均一に撒く。麹で覆うことで雑菌の侵入を防ぐ役割があると担当者は説明する。発酵には空気が必要なので、壺の上部に空間を残すよう、あえて少なめに仕込むという。

2万本の壺と、熟成で変わる味

壺は山の麓まで並び、約2万本あるという。しかもここだけではない。1本1本の蓋を開けて発酵の具合を確認しながら管理し、発酵期間を終えると蓋をして熟成期間に入る。黒酢の壺畑のほかに、レストランと上の方にある畑も有機JAS認証を取得しており、今後はみかん畑も有機JASを取る予定だという。

撮影時点で最も新しい壺は、春の仕込みの3ロット目だった。蓋を開けると、アルコール発酵の匂いがして、表面に振り麹が浮いていた。最初は黄金色のきれいな麹が浮いているが、1カ月ほどで沈んで見えなくなる。1年ほど経った壺の中身は黒くなっているが、試飲すると色はまだ薄く、酸味が尖っていた。ここからメイラード反応で琥珀色に変わり、1年から3年のあいだにアミノ酸が増えていくという。5年ものは色が黒く、角が取れてまろやかになり、島袋氏もそのまま飲みやすいと評した。

担当者は、黒酢は腸内環境を整えるとされ、なかでもD-アミノ酸には活性酸素を除去して抗酸化力を高める働きがあるといわれると話す。黒酢には乳酸菌、酢酸菌、酵母菌がそろっていると言われ、最近は酢酸菌が花粉症の予防や肝機能に良いのではないかと研究されているとも紹介した。ただし薬ではないので、「効く」とは言えないとも付け加えている。

地震への備えを聞かれると、担当者は地震が一番怖いと答えた。保険には入っているという。大雨や桜島の降灰のときも壺はそのままで、台風の被害は壺が密集しているため今までそれほどなかったと話した。

特許製法の「泉」と機能性表示

同社が特許を取っているのが、大豆を使った酢「泉(いずみ)」である。原料が大豆と玄米であるため、玄米と水で作るという黒酢の定義からは外れ、「黒酢」とは呼べないという。担当者によれば、関西大学と共同で調べたところD-アミノ酸が非常に多く含まれていることがわかり、学会発表も2回行った。飲んでみると酸味はそれほど強くなく、全商品のなかで一番売れているのもこの泉だという。

黒酢は薬ではないため、効能をうたうには機能性表示が必要になる。同社は瓶入りの製品で、肥満気味の人の内臓脂肪を減らす機能性表示を取得している。カプセル製品では機能性表示が多いが、同社は瓶の製品で取得を進めており、次は血圧に関する表示を目指すという。泉についても機能性表示を申請中だ。

飲み方について担当者は、食前や食事中に飲むと血糖値の上昇を抑えるとされ、ご飯と一緒にとるのが良いと勧める。本来は薄めて飲むのが望ましいという。黒豆を使った別製品「歩み」も紹介され、こちらは壺に付いた酢酸菌を採取して黒酢に戻して作っている。レブナイズとのコラボ商品も並んでいた。

フルーツ黒酢、食べる黒酢、調味料、コンブチャ

フルーツ黒酢は、生の果物を2週間ほど黒酢に漬け込んだものである。自社農園のみかん、県内産のいちご、鹿児島や熊本の無農薬ブルーベリーなどを使い、砂糖は北海道産の甜菜糖を使う。着色料や添加物は使っていない。4〜6倍に薄めて飲み、炭酸で割るとさらにおいしいという。女性に人気だと担当者は話す。

担当者によると、黒酢をどうやって食事に取り入れてもらうかを考えるうちに、ポン酢、食べる黒酢、ドレッシングと商品が増えていった。黒酢にはpHを抑える働きがあるため、pH調整剤を入れずに作れ、原材料表示には無添加の素材しか並ばない。子どもにも食べてもらえるようにしたという。

食べる黒酢はヒット商品で、昨年テレビ番組「マツコの知らない世界」で紹介された。担当者は、一般的な調味料は加熱殺菌で作るが、この商品は非加熱のまま無菌状態で製造していると説明する。有機醤油や、コレステロールゼロのグレープシードオイル、オリーブオイルを使っている。ご飯にのせて食べた島袋氏は「めちゃめちゃうまい」と評した。辛味の強いポン酢は、野菜ソムリエ協会が主催する激辛調味料選手権で最優秀賞を受けたといい、黒酢を使ったカツオの調味料も別の賞で優勝している。ほかにも柚子ポン酢、寿司のシャリ用の黒酢、エビチリソース、バターとわさび入りのステーキソースなどが紹介された。

コンブチャは、鹿児島県産の有機煎茶と甜菜糖に、乳酸菌、酢酸菌、酵母菌を加えて1カ月半ほど発酵させたものである。菌が糖を食べることで糖度が徐々に下がり、最終的に8度前後で出荷するという。フルーツのような甘みがあり、東京の抹茶関連の店舗でも今月から恵比寿で販売する予定だと話していた。

15年熟成の「泉」と黒酢レストラン

同社の「最高傑作」とされるのが、2週間ほど前に出来上がったばかりの15年熟成の有機「泉」である。15年前に有機で作ることは考えにくかったが、先代が仕込んでくれたものだという。15年寝かせるとまろやかになりコクも出るが、担当者はリスクも大きいと話す。雑菌が入ってうまくいかなかったり、蒸発したりして出荷できない壺もたくさんある。そのなかから取り上げて仕上げたのがこの製品で、有機で特許製法、熟成期間も最長という点で、担当者は「今のところは」最高傑作だと位置づけた。

一行は日本初という黒酢レストランに移り、コンブチャで乾杯した。

伊佐市の田んぼとやまびこの郷

最後の訪問先は、鹿児島県伊佐市の田んぼである。島袋氏によれば、今回のロケのスポンサーでもある山崎氏が、伊佐の米がとてもうまいのでぜひ食べてほしいと勧めたことから訪問が決まった。山崎氏は伊佐市について、空港から車で40分ほどの水がきれいな土地で、寒暖差が大きく「鹿児島の北海道」と呼ばれていると説明する。Wizはこの地の農業法人をサポートしており、お米の事業に携わろうとしているという。鹿児島で手がける事業は、レブナイズを含めて9つほどになる。

農業生産法人やまびこの郷で、一行は伊佐米を試食した。代表者によると、粒の大きさの割に甘みが強く、粘り気があるため冷めても同じ味がするのが特徴で、おにぎりにしてもおいしい。伊佐米としてブランド化しており、鹿児島県独自の特別栽培基準である「K-GAP」も取得している。化学肥料をなるべく使わず、緑肥を育てて田んぼにすき込むなど、県の基準に沿って栽培しているという。価格は5kgで4,860円とのことだった。

若い担い手は来ない、獣害と水とジャンボタニシ

農業法人としては平成25年に始め、今年で14年目になると代表者は話す。島袋氏が、都会からIターンやUターンで農業を始める人が増えているという記事を見かけると問いかけると、代表者は「いないですね」と即答した。周りは高齢者ばかりだという。都会に近い田舎暮らしならともかく、ここは完全な田舎なので、都会に出た地元出身者もなかなか戻ってこないという。

一番大変なことを尋ねられると、代表者は鳥獣被害を挙げた。鹿ならまだいいが、イノシシが田んぼに入ると米に匂いが付いてしまい、収穫前に入られた田んぼは使い物にならなくなるという。水も課題で、撮影した田んぼは最も上にあって水が来るため稲が青々と育っているが、下に行くほど水が回らず、稲の育ちが悪くなる。さらにジャンボタニシが下の田んぼほど多く発生し、稲の収量が落ちる原因になる。すべてにおいて管理が大変だと代表者は語り、前半のロケはこの田んぼの現場で終わる。