中島聡が語る、Metaのスマートグラスが「次のスマートフォン」になる条件

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概要

AR/VRグラスを長年見てきた中島聡は、Metaのスマートグラスを「次のスマートフォン」の候補として最も有望な形と見ている。この動画は、AIの聞き手がマーク・ザッカーバーグの発言を紹介し、それに中島が答える形式で進む。中島によれば、今のハードウェアはすでにかなり良い線まで来ている。電池の持続時間、プライバシー、アプリケーションの三つを解決できれば、MetaがスマートグラスでAppleのような地位を取ることは十分に可能だという。

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ザッカーバーグの発言と中島の評価

聞き手はまず、ザッカーバーグの最近の発言を紹介する。AIを統合したグラスが、将来は日常生活でAIとやり取りする主な手段になる。さらに、そうしたデバイスを使わない人は認知面で不利な立場に置かれる、とまで述べているという。

中島はこのビジョンを「すごく正しい」と評価する。自分と同じものを見て、自分が聞いているものを聞くAIが24時間そばにいる。そういう状況が来れば、それを持たない人はハンデを背負うことになる、という見方に同意している。

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大型のVR/ARグラスに否定的な理由

中島がMetaのスマートグラスを推す背景には、大型のヘッドセットへの失望がある。中島はMetaのQuestもAppleのVision Proも所有している。それでも、重く大きなデバイスは長時間つけていられないという。Vision Proでも30分が限度で、それ以上は疲れてしまうと話す。

没入感は素晴らしく、大きなポテンシャルもあると中島は認める。手術中の医師や、プロトタイプを作るエンジンの設計者のような業務用途、そしてゲームには使い道がある。しかし、普通の人が1日に何時間もつける生活は来ないと中島は考えている。中島自身はVision Proに、小さなMacBookの代わりに巨大な画面を目の前に表示する働き方を期待していた。だが、疲れるので結局使えなかった。こうした経験から、中島はVRグラスと大型のARグラスには否定的になった。

対照的に、Metaのスマートグラスには大きなポテンシャルを感じているという。現時点では、アプリケーションとしてそれほど役に立つわけではないと中島は認める。それでも、テスラの自動運転の動画を撮った際には、自分の目線のまま録画できることがとても便利だったと語る。

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キラーアプリは「人の名前を覚えてくれる」こと

普及に向けた課題を聞かれた中島は、社会面ではプライバシーの問題が最も大きいだろうと答える。そのうえで、それを乗り越えた先に何があるかを具体的に描いてみせる。

中島が最も価値があると考えるのは、人の名前を覚えて、必要な場面でヒントをくれる機能だ。名前だけでなく、その人と以前どんな状況で会ったか、家族の名前や近況なども覚えておいてくれる。これがアプリとして提供されるのか、Metaのサービスとして提供されるのかは分からないが、それだけで月額料金を払う価値は十分にあるという。

この考えには中島自身の事情がある。中島は名前を覚えるのが苦手で、かなり苦労してきた。とくにアメリカでは、久しぶりに会った相手に「こんにちは」ではなく名前で呼びかけることが、親しみや敬意の表現になる。とっさに名前が出てこないのは恥ずかしいことなのだという。グラスがこれを解決してくれるなら、喜んで毎日かけると中島は言う。AIへの相談や検索、見たものの説明といった機能も、使うようになれば使うだろう。それでも、社交面で助けてくれることの価値はものすごく大きいと強調する。

中島はスマートグラスをまだ「黎明期」と位置づけている。ポテンシャルに気づいて使う人が少ないから広まっておらず、アプリケーションもまだない。それでも、名前やエピソードを覚えてくれる機能がキラーアプリケーションになり、普及する時代が来るだろうと見ている。

AIが常に見て、聞いて、場合によっては録画もしていることには、社会的に大きな反対運動が起こる姿も目に見える、と中島は認める。それでも、乗り越えた先には、AIが外部記憶のようになり、アシスタントとして支えてくれる世界があると中島は考える。中島が挙げる例は次のようなものだ。目の前の人について「この前会ったピーターさんだよ。ピーターさんの娘さんは確かそろそろ大学に入る時期だよ」とさりげなく教えてくれる。そういう体験が一度始まったら、もう戻れないのではないかと中島は話す。

メタバースは間違い、でもOculus買収は無駄ではなかった

中島は、ザッカーバーグが「メタバース」を打ち出したときにはがっかりしたと振り返る。ただ、ザッカーバーグの狙いは、AppleがiPhoneで成し遂げたことをグラスで実現することだったと中島は解釈している。その狙いのもとでOculusを買収し、メタバースというビジョンを出したのだという。

中島の評価では、メタバースというビジョンは間違いだった。しかし、Oculusを買ってVRグラスを色々試した結果として今のRay-Banのサングラスにたどり着いたのなら、多少遠回りしたとしても、とても良いことだという。中島はこの方向をぜひ突き詰めてほしいと語る。

ディスプレイは要らない、課題は電池

まだMetaが勝つと決まったわけではなく、Appleも色々と仕掛けてくるだろうと中島は前置きする。そのうえで、今のフォームファクターはハードウェアとしてかなり良い線まで来ていると見ている。

Metaのグラスにはディスプレイがない。しかし中島は、音声があるのだからディスプレイは要らないのではないかと考えている。必要なのは、ユーザーが見ているものを見て、聞いているものを聞き、外付けの電池なしで24時間動き続けることだという。

最大の課題は電池だ。現行モデルの持続時間を中島は正確には知らない。ただ、カメラで撮影を続けたりAIを動かし続けたりすれば、30分も持たないだろうと推測している。電池の問題を解決し、プライバシーの問題を乗り越え、本当のアシスタントになるアプリケーションに力を注げばよい。そうすれば、Metaが次のスマートフォンであるスマートグラスの市場でAppleの地位を取ることは十分に可能だと中島は述べる。

中島は冗談めかして、こう分かっていたらもっと株を買っておけばよかったとも語る。トランプ大統領の関税をめぐって株価が大きく下がったときに買えばよかった、という。ただし、すでに保持しているので、あまり言うべきではないのだろうとも付け加えている。

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広告と「ライフスタイル・ショッピング」の可能性

中島は、Metaの決算が好調だったことに触れたうえで、スマートグラスは広告との相性も良いと話す。日常生活では、店で商品を見たり、誰かが素敵な服を着ているのを見かけたりする。そうした場面で、いかにも広告らしい鬱陶しさなしに情報を出せるという。

たとえば、店で商品を手に取ったときに、アシスタントが「これは適正な値段です」と教えてくれる。あるいは「同じ製品がAmazonでもっと安く買えます」と教えてくれる。店頭より安くオンラインで買えることが分かり、その場で注文もできるなら、みんな注文するだろうと中島は言う。その取引の0.5%でもMetaが取れれば、かなり大きなビジネスになるという見立てだ。

中島はワインの例も挙げる。中島自身はワインを飲まないが、値段は気になるという。友人宅で出てきたワインの値段を知りたくても、目の前で携帯を取り出して写真を撮り、ChatGPTに「これいくら?」と聞くのは恥ずかしい。そこで、アシスタントがユーザーの関心をすでに把握していて、ワインがテーブルに出た途端に「このワインは120ドルくらいします」とさりげなく教えてくれる。それは楽しいかもしれないと中島は話す。ワイン好きの人であれば、そこで広告も出せる。「普通は120ドルですが、今週限定で某ワインセラーが86ドルで販売しています。注文しておきますか」と言われ、「じゃあ頼むわ」と返せるような体験だ。

話しながら中島は、Metaは広告だけでなくコマースもやったほうがよいのではないかと考え始める。Amazonは買収できないが、コマース事業を持つ会社を買う手はある。Shopifyはいまひとつピンとこないが、Stripeでもいいのかもしれない、とその場で思案している。中島が描くのは、オンラインショップに行くのでも実店舗に行くのでもなく、普通に生活していて見かけたものをアシスタントの助けを借りて買う姿だ。中島はこれを「ライフスタイル・ショッピング」と呼び、大きなポテンシャルがあるとして、自分がMetaにいたらこの話を突き詰めて考えると述べた。

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Metaが勝つとは限らないが、リーダーの存在が強み

聞き手が「ワクワクしますね」と応じると、中島は「君(AI)が本当にワクワクするかは疑問だけど」と返したうえで、Metaの勝利が決まったわけではないと念を押す。たとえば、自らをEコマース企業と考えるAmazonがスマートグラスを出し、そこで商売をする可能性がある。また、新しいベンチャー企業が、Metaより使いやすく電池の持つスマートグラスを出し、広告ビジネスなどで稼ぐ可能性もまだあるという。

それでも中島は、ザッカーバーグがスマートグラスのある未来やパーソナル・スーパーインテリジェンスについて語る内容を聞く限り、ビジョンとしては「バッチリなところ」にたどり着いていると評価する。巨額の資金が必要なビジネスで、そうしたリーダーがその方向へ突っ走っていけることは、Metaのユニークで有利な点だというのが中島の結論である。