「人生最後の片付け」の家で、病床のご主人のために景色を変える 古堅純子の1日作業・後編

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概要

整理収納の専門家、古堅純子が一軒家を1日で片付けるシリーズの後編である。この家は、病気のご主人が「一度でいいから綺麗な家に住みたい」と望んでいる家で、依頼者の妻は今回を「人生最後の片付け」と位置づけていた。古堅は「物を捨てない片付け」を掲げているが、この回では依頼者自身が次々と物を手放していく。家具の配置を検討する作業の様子から完成後のお披露目、家族の感想、そして後日届いたご主人の手紙までを追う。

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ご主人のベッドを中心にした家具の配置

前半の作業では、リビングの家具配置をめぐって何度も相談が交わされる。部屋にご主人のベッドがあるため、その周りが動きにくい。古堅たちは奥の物を出してもっと空間を作りたいと考え、ピアノを一旦出し、ベッドを壁側に付け、ソファも一時的に移動させる段取りを組んだ。古堅は、家具が一つなくなるだけで景色が大きく変わると話している。

色の問題も議論になった。周囲の家具が茶色で揃っているため、白い家具を置くと浮いてしまう。それなら白い家具は見えない場所に入れたほうが美しいのではないか、冷蔵庫の近くに白をまとめるのはどうか、といった案が出される。テレビの位置については、ご主人の場所から見えるか、距離が遠すぎないかを気にしていた。テレビ線の位置によっては、ご主人専用のテレビとして移動させる選択肢もあると検討している。

「捨てるのはこの人です」

作業中、依頼者の姉が驚いた様子で語る場面がある。妹がここまで捨てる気になったのを見たのは初めてで、とても嬉しいという。姉は、この一家には古堅の影響力が強いのだろうと話した。古堅側も、トラックまで用意された家は初めてだと応じている。

依頼者の判断は速く、「どうせ使わないから」と棚の中身をまとめて手放していく。古堅は冗談めかして、「私たちは1個も捨てませんからね。犯人はこの人ですからね」「私たちは捨てない片付けなんですからね」と念を押した。後で物がなくなっても自分たちのせいにしないでほしい、という笑いを交えたやりとりである。

古堅はまた、捨てても景色はそれほど変わらないとも話している。「捨てる、捨てない」をずっと続けていても景色が変わらないので、作業の後半になると結局あきらめて手放してしまう、という流れはよくあるという。一方で依頼者は、今回はたくさん捨てているのでやる気が上がったままだと話した。これまでも片付けに挑戦してきたが、つらくなって途中でやめてしまい、そのツケが回ってきたと振り返っている。古堅は、まだ途中の状態でも「枠はできた」ので、あとはどこまで頑張るかだと声をかけた。

押し入れの奥深く、真っ暗な「穴」からは大量の袋が出てくる。古堅は、コストコに行くたびに袋を忘れて買っているパターンではないかと笑いを誘った。

リビング:テレビを隣室へ、ソファを移動

作業終了後のお披露目は、リビングから始まる。一番大きな変化は、テレビがあった場所にソファが移ったことだ。古堅によれば、テレビがある場合とない場合とでは家具の置き方が変わる。今回のテーマは「お父さんが快適に暮らせる空間」だったので、ご主人を中心に考え、ご主人から見やすいようにテレビを隣の部屋へ移したという。依頼者の母は「こんな置き方があったんや」と驚き、姉は「違う家に来たみたい」と話した。

リビングに置かれた棚は、もともと押し入れの中にあったもので、実は一番最初にトラックに積み込もうとした物だったという。古堅が立っている位置はもともと雑然とした状態だったが、ご主人の目に最も入りやすい場所なので、静かな空間にするため壁に合わせて白でまとめた。同じ物が入っていても扉の中に収まっているだけで見え方が大きく変わる、と古堅は説明する。中には釣り道具など、普段よく使う物が入っている。

在宅勤務と息子の勉強スペース

古堅は、依頼者が今後在宅勤務をする可能性を踏まえた提案もした。仕事道具は一か所にまとめてある。この広さならダイニングテーブルを置いても圧迫感はないだろう、というのが古堅の見立てだ。この家族はこれまで床に座って食事をしていたが、別の場所にテーブルがあるので、それをここに持ってきて在宅ワークに使ってもいいと勧めた。

息子の勉強スペースは、ご主人のベッドの関係でこちらに移った。そのままの位置では勉強できないため、使うときは少し動かす必要がある。ただ、そうすると扉越しに父親と顔を合わせられる配置になる。古堅は、これまで父親にお尻を向けて勉強していたのが、今後は「今日はこんなことがあってね」と話しながら勉強できるし、母親も父親の顔を見ながら在宅ワークができると説明した。引き出しの出し入れは面倒かもしれないが、ざっくりしたボックスを置いて「使ったら戻す」を守ってほしいと伝えている。扉の前にはくれぐれも物でバリケードを作らないように、とも念を押した。

古堅は「この家は使ったら使いっぱなしの家族が全員揃っている」と指摘し、家族に「景色を壊さずに暮らす」と声を揃えて誓わせ、ノートに書いておくよう求めた。

「穴1号」:ハンガーラックと60kgの米

ご主人の部屋にあったハンガーラックはすべて撤去された。中身は「ものすごい深い穴」と呼ばれていた収納に移し、洗濯物がそこに収まる動線にしたという。扉を開けると、古堅いわく「できる家のクローゼット」のような状態になっていた。

この収納には衣類だけでなく、大量にあったウサギ用品、工具、袋類なども入った。さらに奥には、出しっぱなしだった米も収めた。依頼者はキャスター付きの台が好きで、使わないまま積み重ねていたという。そのキャスター台を2つつなげて上に箱を載せ、合計60kgの米を簡単に出し入れできるようにした。古堅は、こうした物は出しっぱなしになりがちだが、入れ物に入れてキャスターを付ければ、奥に置いても手を伸ばすだけで引き出せると説明する。鉄板やたこ焼き器もここから出せるようになり、依頼者の母は「本当に嬉しい」と喜んだ。

片付け後の廊下や踊り場は物がなくなり、声がコンサートホールのように響くほどになった。古堅は姉に「ここは物を置く場所じゃない」と伝えている。

息子の部屋:自分で判断した片付け

2階には息子の部屋、依頼者の寝室、もう一部屋がある。もう一部屋は撮影NGのため映していないが、作業はしたという。

息子の部屋は、本人がかなり自分で物を整理したと古堅は報告を受けていた。部屋を見た家族は「本当に自分でしたの?」と驚き、母は誰の部屋かわからないほどだと話した。姉も、以前は足の踏み場もなかった部屋がこうなるとは、と感想を述べている。

ただし、姉のリクエストで開けたクローゼットについて息子に尋ねると、「ほとんどやってもらった」と答えて笑いが起きた。古堅は、息子がしたのはおそらく自分に不要な物をトラックに運ぶことだったと言う。そのうえで、捨てられない人や時間のない人のために自分たちは1日でできることをするが、本人が不要な物を判断すればこれだけ整理される、ということがよくわかる部屋になったと説明した。不要な物が混在した状態で暮らしていたことにも気づいてもらえるだろう、と話している。古堅式では部屋の景色さえ整っていれば収納の中は多少乱れていても構わない、という考えも改めて示された。

息子は、片付けではスペースを作ることが大切だと思っていたが、必要な物とそうでない物を判断することが大切だと学べたので、生かしていきたいと語った。古堅は、自分は部屋の景色を重視しているとしたうえで、ここまで綺麗になると散らかしたくない、この状態を保ちたいという気持ちになるはずだと話す。扉の中に物を戻して閉めるだけで綺麗な状態が続くので、大人になってもずっと続けてほしいと伝えた。母親の力を借りずにこの部屋を仕上げられたことが良かった、とも評価している。

夫婦の寝室と、母親の収納

最後に紹介されたのは2階の寝室である。もともとは夫婦の寝室だったが、ここ数か月の間にいろいろなことが起き、依頼者は階下で寝るようになった。そのためこの部屋は整理できず、ベッドを息子の部屋に移しただけで手が回っていなかったという。

作業後は、ここで1人が寝られるうえ、布団を敷けばもう1人寝られるほどのスペースができた。家族は「超高級ホテル」と表現し、古堅も、散らかっていたときは廃墟にしか見えなかった家がくつろげる空間になったと話した。姉に捨ててくれと頼まれていた電気マッサージ機も残し、本を読んだりできるくつろぎの場所として配置した。

扉付きの収納は2か所ある。一方には依頼者の衣類を中心に収め、カーペットも一番上に入れた。古堅は、自分のスタッフは皆整理収納アドバイザー1級なので収納の中を綺麗に整えるのは得意だと説明する。大容量の収納なので下のほうには動かない物が埋まっているが、今使う物はすぐ取れるようにしたという。押し入れがすべてご主人用になったため、依頼者自身の収納が必要だった。依頼者は「本当に私の収納」と喜んだ。古堅は、この家は依頼者が頑張らなければ回らない、一番大変なのは依頼者だが倒れられては困るので、しっかり寝て掃除も簡単に済ませ、貴重な時間を使ってほしいと語った。

もう一方の大きな収納には、リビングにあった大量の袋類をはじめ、家のあちこちにあった「動いていない物」を集めた。物の量が多く一度には減らせないので、今大変な時期にある依頼者には、後で少しずつ確認してもらう形にしたという。

家族の感想:妹と姉の「人生最後の片付け」

依頼者は、動画を何度見ても自分ではなかなか景色が変わらず、物が多すぎることには気づいていたが変えられなかったと振り返った。自分1人では無理だと思い今回依頼したので、この状態を保ちながら物をどんどん減らしていきたいと話している。

姉は、妹に片付ける気があることは以前から知っていたが、そのわりに物が増え、減らせていなかったと語る。「片付けられるわけない」と言ったところ、妹は「今回こそは人生最後の片付けと思ってやるから協力してくれ」と頼んできたという。姉も動画を見て、変われるのではないかと期待した。当日、物を次々と手放していく妹を見て、変わっていると感じてとても嬉しく、作業を手伝ったと話した。

古堅の考え:物より大切なことに気づいたのではないか

古堅は、配置を変えるだけでもかなり変わる家だったとしたうえで、後で捨てるか今捨てるかで言えば、今捨てられるなら捨てたほうがスペースも収納も使いやすくなると述べた。

そのうえで古堅は、依頼者は物より大切なことに気づいたから今回物を手放せたのではないかと推測している。自分の考えを押し付けるのではなく、YouTubeを見てもらうなどして家族との時間が大事だと気づいてもらえれば、何が大切かは自然とわかるはずだという考えだ。家族みんなで協力して片付けてくれたことに感謝していると述べ、自分も何かしてあげたい気持ちから、後半はキッチンの床磨きなど掃除に回っていたと明かした。そのため後半はほとんどカメラに映っておらず放送が短くなるかもしれない、とも話している。最後に家族が「大成功」と答え、作業を締めくくった。

その後の家族のやりとり

帰宅した家族が家の中を見て回る様子も収められている。依頼者は、トラックにすべてを載せたわけではなく、マッサージ機もピアノも残っていると説明する。ピアノは後日引き取りに来てもらう予定で、家族の間では「一番弾けるのはママなのに」「弾ける人は弾きたいのだと思っていた」といった会話が交わされた。キャスター付きになった米が簡単に出せることや、声が響くほど片付いたことにも驚きの声が上がっている。

ご主人からの手紙

動画の最後には、ご主人からの手紙が紹介される。家を整えてもらったことへの礼に続けて、ご主人はまさか自分がこんな病気になるとは思っていなかったと記している。振り返ると、妻は片付け以外は本当に完璧だった。家のこと、子どもたちのこと、自分の親のことまで嫌な顔をせず、いつも楽しい時間を作ってくれた。ただ片付けについては、ほかのことで感謝を伝えたくてもイライラのほうが勝ってしまい、妻を傷つけたと思う、と綴っている。

あとどのくらいこの家で過ごせるかはわからないが、とにかく毎日が最高で、4人の時間が穏やかだ。手紙は、この空間への感謝の言葉で結ばれている。