スターゲート計画はなぜ足踏みし、Oracleだけが前に進むのか:中島聡氏が読むAIインフラの主導権争い

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概要

SoftBankが巨額投資を掲げたスターゲート計画について、新しい報道が2つ出た。SoftBankとOpenAIによる本来の計画は思うように進んでいない。一方で、OracleとOpenAIの間ではデータセンターの拡張が発表された。元Microsoftのソフトウェアエンジニアで起業家の中島聡氏は、この2つのニュースを並べて読み、背景事情を解説する。今回も中島氏は、関連記事2本をChatGPTに読ませ、ChatGPTがインタビュアーを務める対談形式で話を進めている。

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2つのニュース:SoftBank抜きで進むOracleとOpenAI

ChatGPTはまず、OpenAIとOracleが新たに4.5GW分のデータセンター容量を追加し、合計で5GW以上のキャパシティを確保すると発表したことを紹介した。中島氏は、ChatGPTの要約では十分に伝わっていないと断ったうえで、今回は2つのニュースがあると整理する。

1つ目は、SoftBankとOpenAIが進めるはずのスターゲート計画が、当初の想定どおりに一気に立ち上がっていないという報道である。細かな事情は分からないとしつつ、中島氏は2つの可能性を挙げる。SoftBankが資金をうまく集められていない可能性と、どちらがリスクを負うかでOpenAIとSoftBankの話し合いがまとまっていない可能性だ。2つ目は、SoftBankを含まない形でOracleとOpenAIの間ですでに進んでいたAIデータセンターが4.5GW分拡大し、合計5GWの巨大施設になるという発表である。

中島氏が面白いと見るのはこの対比だ。SoftBankを含む本来のスターゲート計画は停滞し、SoftBankを含まないOpenAIとOracleの話はどんどん進んでいる。

最初の発表の場にOracleがいた理由

この対比を理解するために、中島氏はスターゲート計画の経緯を振り返る。孫正義氏はまず、トランプ氏に1,000億ドルのAIインフラ投資をアメリカで行うと伝えに行った。トランプ氏の大統領就任後には、ホワイトハウスで投資額を5,000億ドル(約75兆円)に増やすと発表した。OpenAIがパートナーとなり、SoftBankが資金を出してOpenAI向けのAIインフラをアメリカに作る、という内容だった。

中島氏が注目するのは、その発表の場にOracleのCEOだったラリー・エリソン氏がいたことだ。孫氏としては、本来はSoftBankとOpenAIのプロジェクトとして5,000億ドルを打ち出したかったのだろう、と中島氏は推測する。ただ当時のエリソン氏は、イーロン・マスク氏と同じくトランプ氏とかなり近い関係にあった。そこにOracleがうまく乗ってきた、というのが中島氏の見方である。

さらにエリソン氏はその場で「もうすでに始まっている」と述べ、Oracleが建設中のデータセンターに軽く触れた。中島氏はこの点について、双方に利点があったと解釈する。Oracleは話に乗りたかった。孫氏には、計画がすでに動いているという実績を見せられる利点があった。また、トランプ氏に近いエリソン氏を巻き込めば、ホワイトハウスで発表できるという利点もあった。

Oracleのデータセンターはもともとスターゲートと無関係だった

中島氏によれば、Oracleが当時建設していたデータセンターは、SoftBankともスターゲートとも関係なく、Oracleが独自に立ち上げたものだった。OpenAIは本来、Microsoftとの契約上、Microsoftのデータセンターを使う約束になっていた。しかしOpenAIが求めるAIデータセンターの容量があまりに大きく、Microsoft1社では負いきれなくなった。そこでMicrosoftが他社に頼んでもよいと認め、名乗りを上げたのがOracleだったという。

つまりOracleは、その時点ですでにOpenAI向けのデータセンター構築を始めていた。最初の発表の主な目的はSoftBankの宣伝だったが、Oracleはそこに上手に入り込んだ。本来はスターゲートの一環でも何でもない、OpenAIとの間で進めていたデータセンターを、あたかもスターゲートの一部であるかのように宣伝した。これが中島氏の解釈である。

データベース企業からAIインフラ企業への転換

今後の業界への影響を問われた中島氏は、先を読むのは難しいと前置きしたうえで、1つ確かなことがあると言う。Oracleが、昔ながらのOracleデータベースのビジネスから、AIインフラ企業に変わろうとしていることだ。

AIインフラにはもちろん莫大な資金が必要で、確かな顧客も欠かせない。Oracleは、明らかに大きな需要を持つOpenAIを顧客として捕まえ、インフラに投資している。中島氏は、これによってOracleのビジネスモデルが大きくシフトしつつあると見る。AIインフラといえばMicrosoftやGoogle、加えてAmazonが挙がるが、Oracleはその一角に食い込み、データベースの会社からAIインフラの会社へ生まれ変わろうとしている、というのが中島氏の見立てである。最近は株価の調子も良い。

GPUの陳腐化が生む投資回収のリスク

ただし中島氏は、この戦略には相当なリスクがあると強調する。中島氏は今のAIブームを一時的なバブルではないと考えている。人間がやってきた仕事の8割ほどをAIやロボットが担う時代が来ようとしており、そのための投資であり技術革新なので、そこを押さえておく戦略自体は正しいという。

問題は投資の中身だ。何十億ドル、何兆円という投資のかなりの部分が、NVIDIAの最新GPUに向かう。GPUの進化は激しく、これまで2年周期だった更新を、今後は毎年行うとされている。そうなると5年ほどで設備は陳腐化する。中島氏の試算の考え方では、例えば1兆円を投じるなら、5年では間に合わず、3年ほどで回収してその後に利益を上げるくらいの勢いが必要になる。技術もGPUも変わり続け、NVIDIA以外のライバルが現れる可能性もある。その中で最先端とはいえNVIDIAのGPUに巨額をつぎ込み、きちんとリターンを得られるかどうかは、まだ誰にも分かっていないと中島氏は言う。

OpenAIの需要と、Microsoftが避けたリスク

最大の顧客であるOpenAIについて、中島氏は、特にサム・アルトマン氏がいくらでも投資したいと考えていると説明する。AGIやASIと呼ばれる、全知全能の神のような、人類全体を合わせたよりもはるかに賢いAIを作る。それによって人間の仕事を置き換えるだけでなく、ノーベル賞級の発明をさせ、人類の科学技術全体を前に進めようという野心的なプロジェクトだという。そのためOpenAIは、AIインフラを用意してくれればいくらでも使うとMicrosoftに求めた。しかしMicrosoftは1社では負いきれないと判断し、一部をOracleやSoftBankに任せることにした。

ここから中島氏は、Oracleのリスクを指摘する。巨額の資金と巨大なインフラ、多数の顧客を持つMicrosoftでさえリスクが高いと見た部分を、Oracleが引き受けている。だからOracleにとってもリスクの高い話だという。Oracleが今後のAIインフラ企業となり、資金を回収して良いビジネスにできると考えるなら良い会社だが、リスクの高さを理解したうえで投資すべきだ、と中島氏は述べる。なお中島氏は、現時点でOracle株を持っていないと明言している。

SoftBankは投資会社としてAIインフラに賭ける

SoftBankもこの分野に名乗りを上げたい立場にある。Oracleとは立ち位置が違い、SoftBankは技術会社というより投資会社、あるいは持株会社として、AIインフラに大規模投資をしようとしている。中島氏は、どこからか資金を借りてくるのが得意な孫氏らしく、巨額の資金を借りてインフラ投資をするやり方だと評する。

では、なぜSoftBankはつまずいたのか。中島氏は、内部事情なので分からないと断ったうえで、いくつかの可能性を挙げる。資金集めが思ったほど進んでいないのかもしれない。どこがどこまでリスクを取るかで、OpenAIとSoftBankの間の決着がついていないのかもしれない。

本当の障害はOpenAIとMicrosoftの交渉だという読み

中島氏が最も有力と見る理由は、別のところにある。SoftBankはOpenAIに比較的長く投資してきた。直近のラウンドでの投資条件は、OpenAIが非営利団体から純粋な営利団体に変わることで、うまくいかなければ投資額を返すことになっているという。

営利化のプロセスでは、最大の投資家であるMicrosoftとの交渉が必要になる。中島氏によれば、OpenAIとMicrosoftの間には、例えば売上の20%を渡す、サーバーを使うときはまずMicrosoftのものを使う、OpenAIが持つ知的財産すべてにMicrosoftがアクセスできる、といった条件がついている。こうした条件を残したまま営利団体になって上場するのは無理だ。そのためOpenAIはMicrosoftに条件を外すよう求めて交渉しているが、これも難航している。

中島氏は、SoftBankとしてはこの交渉がはっきりしない限り、大きなリスクを取って投資したくないはずだと見る。スターゲート計画への思い切った投資がまだできない一番の理由はここにある、というのが中島氏の読みだ。中島氏が考える正しい筋書きは次の順序である。まずOpenAIがMicrosoftとの交渉をまとめ、本来の形の営利団体に移行する。次にSoftBankの出資を正式な株式に切り替え、SoftBankに納得してもらう。そのうえでSoftBankが大株主として巨額のインフラ投資を行う。

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交渉がまとまった後の課題:総額は増えず、電力が詰まる

交渉がうまく進んだ場合、他社や新規参入者にどんな影響があるか。この問いに対し、中島氏は見てみなければ分からないとしつつ、2つの見方を示した。

1つは投資総額についてだ。インフラ投資には莫大な資金がかかり、どの会社にもできるわけではない。そのため、SoftBankが投じた分がそのまま業界全体の純増になるとは限らず、他の企業が少し投資を減らすことが起きる可能性があると中島氏は見る。

もう1つは設置場所、とりわけ電力の問題である。どれだけの速さで電力を確保できるかが問われる。データセンターの敷地内に小型原発を設置する話も進んでいるが、技術的な課題に加えて、地方自治体や近隣住民の納得を得るという政治的な課題もあり、かなり大変だと中島氏は言う。そのうえで、AIインフラがこれ以上増えていけば電力がボトルネックになるのではないか、という見通しを示して話を締めくくった。