素人が99%、契約パートナーの8割が個人:エンターファンズ中川拓哉氏が語るライバー事務所の実態

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概要

ライバー事務所というと、儲かりそうだが素人には手が出しにくいという印象を持つ人が多い。M&A BANKのMC、島袋直樹氏もそう考えていた一人で、話を聞くうちに「誰でも始められるのではないか」と感じるようになったという。本動画では、ライバー事務所を運営する株式会社エンターファンズ代表取締役の中川拓哉氏に、ライバーになる人、事務所を立ち上げる人の実像を聞いている。中川氏の答えは一貫して、特別な経歴も多くのフォロワーも要らない、というものだった。

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芸能事務所への足がかりとしてのライバー事務所

中川氏によれば、エンターファンズが目指しているのは芸能事務所である。その最初の段階として、芸能のラインナップの一つであるライバーを所属させ、ライバー事務所を運営しているのが現状だという。

ここでいうライバーとは、TikTokなどのプラットフォームでライブ配信をする人のことだ。中川氏の説明では、スマホ1台で自分を映し、視聴者のコメントと会話したり、歌やDJ、ギター演奏、ゲームを披露したりする。

島袋氏がライブ配信に関心を持ったきっかけは、55億円で会社を売却したという平井氏がTikTokで配信を続けている様子を見たことだった。特別なことをせず普段の様子をずっと配信しているだけなので、「そんなのでいいのか」と尋ねると、それでいいと返ってきたという。島袋氏はそれまで、ライブ配信はアイドルがやるものだと思っていたが、実際には年齢やジャンルを問わずライバーが増えているのではないかと考えるようになった。

始める時点でフォロワー50人未満が8割以上

中川氏は、事務所によって違うだろうと断ったうえで、エンターファンズでは所属ライバーの99%が一般の人、つまり素人だと説明する。始める時点でフォロワーが50人未満の人が8割以上を占め、有名人でない人のほうが多い。

それで有名になれるのかという島袋氏の問いに、中川氏は、ライブ配信で有名になる人はたくさんいると答える。SNSのようにフォロワーを集める仕込みがあまり要らないため、始めた月から一気に伸びる人もいるという。ここでいう「伸びる」とは、フォロワー数ではなく、ポイントや投げ銭が飛ぶことを指している。島袋氏が自分でも投げ銭をもらえるかと冗談めかして聞くと、中川氏は十分ありうると答えた。

数十人の小さなコミュニティで上位に届く

島袋氏が特に印象を改めたのが、ファンの規模についての話だ。数人から数十人の視聴者でも大きな金額の投げ銭が起きるのかという問いに、中川氏はライブ配信はむしろそちらの形態だと説明する。東京ドームの5万5000席やKアリーナの2万3000席を埋めるアイドルグループのように、ファンの数で勝負する世界ではない。小さなコミュニティで盛り上がり、チーム同士で戦っていく雰囲気なので、30〜40人のファンがいればトップになる可能性も十分あるという。

投げ銭の額は、アプリによって違うものの、数百円からでき、高額なものでは数十万円に達することもあると中川氏は述べる。

視聴者が少ないことは不利とは限らない。島袋氏は、視聴者が1人しかいなければ相手も自分しか見ていないと分かったうえで話しかけてくれるのだから嬉しいはずだと言い、中川氏も少人数のほうが嬉しいと同意した。中川氏によれば、5人程度ならその人たちとの内輪のネタもでき、イベントの際にはその5人がみんなで人を連れてこようと動いて、たとえば50人に増えればそれはそれで盛り上がる。

中川氏自身も、試しに1週間だけ毎日配信したことがある。初日ごろに50〜60代の主婦の固定ファンがつき、その人は1週間毎日、最初から最後まで見に来てくれた。後半には視聴者がその1人だけで、1対1で話している回もあったという。

島袋氏は、何百人、何千人とアクセスを集めなければならないと思っていたが全く違った、とイメージが変わったことを語っている。

投げ銭は「推し」を勝たせる体験

トップクラスのライバーについて、中川氏は、男女問わず24時間配信を2ヶ月に1回行うような人も普通にいると話す。24時間も見る人がいるのかという問いに対して、中川氏が挙げたのは、頑張っている人を応援したいという「推し活」の醍醐味だった。

ライブ配信にはイベントが多く、そこでは投げ銭などを競う。応援しているライバーが勝つと、ファンは自分たちも一緒に勝ったような気持ちになる。中川氏はこれをF1のスポンサーのような感覚だと表現している。

契約950件超、8割以上が個人

エンターファンズには、ライバーが直接所属するケースと、ライブ配信事務所をやりたい人が同社と契約し、パートナーとして事務所を運営するケースの両方がある。パートナー契約は動画の時点で900〜950件ほどで、まもなく1000件に届く見込みだと中川氏は話す。そのうち8割以上が個人だという。

中川氏と島袋氏は、どのような人がパートナーになっているかを年代別に話している。

10代から学生の層では、学生団体を運営している学生が事務所をやる例がある。島袋氏は、大学のサークル単位でライバーチームを作ったり、アルバイト先で作ったりもできるのではないかと言い、中川氏は実際にやっている人がいると答えた。島袋氏はさらに、就職活動で「ライバーを1000人集めた」と言えば企業側は評価するだろうと話し、中川氏もそれは採用になると笑って応じた。

社会人では、一般企業に勤める男女が副業や週末起業のような形で始めるケースが多い。女性では看護師や保育士が、平日の仕事を続けながら夜や土日の時間を使って取り組む例が多く、同社のパートナーにも30〜40人以上いると中川氏は言う。島袋氏が介護職もいいのではないかと挙げると、中川氏は体力があればできると答えた。

30代では、女性は主婦が増えてきており、空いた時間に自分でも配信しながら事務所も運営する、両方やるという人も多い。島袋氏は、結婚や出産で仕事を離れ、社会との接点が減ってストレスが溜まっている人でも、自宅でできるライブ配信なら始められると話した。男性では、役職が上がってきて人を巻き込み、飲み会を開くのが好きなタイプが事務所を運営して成功するケースが多いと中川氏は述べる。島袋氏は保険の営業マンのような人を例に挙げていた。

法人が参入する二つの理由

パートナーには法人もいる。中川氏によれば、最も大きい会社は社員が100人ほどで、年商は200億〜300億円程度だったはずだという。業種は不動産、内装、飲食店などさまざまだ。

こうした会社が参入する理由として、中川氏は二つを挙げる。一つは、一般消費者向けのサービスを持つ会社にとって、既存の顧客に対してクロスセルのように紹介しやすいことだ。もう一つは、初期費用ゼロで始められるので新規事業として着手しやすく、失敗しても撤退しやすいことである。ただし中川氏は、真面目にやってもらわないと困ると念を押したうえで、同社は6年半の運営経験があり、どう立ち上げればよいかはある程度分かっているので、時間をかけてもらえれば結果は出るだろうと話している。

島袋氏は、企業がライブ配信によって簡単に自社メディアを作れる点にも注目した。福岡県久留米市にいる島袋氏の姉が養蜂の仕事に就いたという例を挙げ、蜂蜜を採る場面から販売までをライバーとして配信すれば、関心の強い人には魅力的に映るだろうと話す。中川氏は、そうして生まれたファンが半ばスタッフのように周囲に広め、さらにその先へと波及していくと説明し、実店舗への集客につなげつつ投げ銭も得たいという事業者も多いと答えた。

広告代理店での活用についても話が及んだ。島袋氏が、インターン生を集めてライバーにし、クライアントに「うちにはライバーが何人いる」とプロモーションを提案できるのではないかと言うと、中川氏は最近の実例を紹介した。ライブ配信の映像を撮りたい会社や、通販を手がける会社がライブコマースをしたい、アーカイブ動画で販売したいといった依頼があり、同社にも演者を派遣してほしい、番組収録を手伝ってほしいという案件が来るという。パートナーの社員やインターン生の中からライバーを見つけ、企業との仕事が始まるケースもあるようで、広がりがあると中川氏は述べる。

女性ライバーの安全をどう守るか

島袋氏は、特に女性の場合は怖さがあるのではないかと尋ねた。中川氏は、同社で行っている対策を具体的に説明している。

ファンからの贈り物は、基本的にすべて一度事務所に送ってもらい、事務所から本人に転送する。これで住所が知られることを防げる。また、たくさん投げ銭をしたのだから会ってほしいといったDMが来ることもよくあるが、DMは事務所が管理しているという建前で、事務所が代わりに対応する。そうすると多くの場合は収まるという。

郵便局留めやコンビニ留めを使う人もいるが、中川氏によれば、それでも住んでいる付近は推測されてしまう。そのため基本は事務所経由の転送が望ましい。ただ、誕生日に合わせて明後日までに届けたいといった場合は転送が間に合わないので、直接送ってもらうこともある。その際は、手間はかかるが自宅から2〜3駅離れた場所に送ってもらって受け取りに行く。熱心なファンの中には荷物にAirTagを仕込む人もいるので、受け取った後は自宅とは違う方向に20〜30分ほど歩き、iPhoneであれば「探す」アプリで検知されないかを確認する。ほかにもできることがいくつかあり、そうした対策を一緒に行うと中川氏は話す。

島袋氏は、こうしたことを教えてもらえるなら安心で、始めやすいのではないかと受け止めていた。

初期費用ゼロ、報酬は投げ銭の一部を本部とパートナーで分配

事務所を始める際の費用について、中川氏は初期費用は一切なく、担当者が1人つくと説明する。プランはいくつかあるが、基本的な仕組みは次のようなものだ。パートナーがライバーをスカウトし、そのライバーが配信して得た投げ銭の一部が事務所の報酬になる。その事務所報酬を本部とパートナーで分け合う。中川氏はこれを非常にシンプルな形だとしている。

島袋氏が、自分がライバーとして事務所を立ち上げ、出演した経営者たちに声をかけて芋づる式に広げられるかと聞くと、中川氏はそうやってかなり広げている人が、法人単位でもいると答えた。

SNSとライブ配信、それぞれの長所と短所

InstagramやYouTubeよりライバーをやるほうがいいのかという問いに、中川氏は相性があると答える。自身はライバーが好きで事業をしていると断ったうえで、ライブ配信の良さは瞬発力で、初月から稼げる可能性が高い点を挙げた。一方で、ずっと生放送であり、生放送を続けられるかどうかが問われる。SNSは収益を上げるまで時間がかかるが、投げ銭が飛ぶかどうかという話ではなく、広告収益などが継続していく。中川氏はこれを一長一短だと位置づけている。

配信アプリはそれぞれに「色」がある

TikTokのフォロワーが12歳の娘1人だけだという島袋氏が、アプリ選びも手伝ってもらえるのかと尋ねると、中川氏は複数のアプリに触れた。TikTokライブは最もレッドオーシャンであること、男性の素人が伸びやすいアプリがあること、17LIVE、ふわっちなどがあることを挙げ、さらに同社が特に力を入れている歌配信特化型のアプリについて、非常に伸びており将来性があると見ていると話した。アプリごとに色があるので、自分に最適なものを選べば、継続さえできればある程度はいけると中川氏は考えている。

普段の自分は暗いが、それでも大丈夫かという島袋氏の不安に対しては、配信の時にモードを切り替えるか、普段はそのままで勝負どころのイベントの日だけ「今日はオンでいく」と切り替えれば、かえって面白いと答えた。中川氏自身も普段は漫画・アニメ好きの根暗で、真面目にプランニングしないとだめなタイプだという。

視聴者向けの特典と本部の体制

終盤では、動画経由で問い合わせた人への特典が話された。報酬プランによって本部の担当者が伴走するケースとしないケースがあるが、動画経由で応募した人には最初の2ヶ月ほど伴走者をつけるという。たとえば、可能性のありそうなライバーを伸ばしたいが自信がない、という場合に、本部の担当者が一緒にグループに入ってサポートする。対象は3人、5人程度までといった形で対応できると中川氏は述べた。

また同社は、上位の事務所約50社と本部、さらに配信アプリ側の担当者も集めたオフラインの交流会を都内で開いている。参加するとスカウトやマネジメントのやり方の違いが分かり、一気に伸びる人が多いため、そこにも招待できるという。

問い合わせても本当に対応してもらえるのか不安になる人もいるだろうという島袋氏に対し、中川氏は、同社はライバー事務所の中で日本一社員数が多いはずで、正社員を採用して本部の運営に熱心に取り組んでおり、完璧ではないにせよ一生懸命やっていると語った。ライバーも事務所運営も、特別な経歴や大きなファン基盤がなくても始められる、ただし続けられるかどうかが鍵になる、というのが中川氏の一貫した見立てである。